マーク・ザッカーバーグも悩み中? ネット中立性とインターネット普及活動の矛盾
すべての人がインターネットを使える社会はきっとすばらしい。でも先立つもの(お金)がないと…ねえ。
Internet.orgは、フェイスブックが進める世界中にインターネット接続環境を普及するためのプロジェクト。コンテンツプロバイダーが通信事業者に料金を支払うことで、ユーザーはデータ通信料金を負担せずにサービスを利用できるという取り組みが一部の新興国で進められています。
一見するとすばらしいこの取り組み、先日、思わぬ壁にぶつかりました。インドの複数のコンテンツプロバイダーが相次いでInternet.orgからの脱退を発表したのです。というのも、Internet.orgの取り組みが一部のコンテンツを優遇しているとも見えるため、「すべてのトラフィックを平等に扱う」というネット中立性の原則に反している恐れがあるから。インドでは最近ネット中立性に関する議論が激しさを増しており、通信事業者に料金を払えないような小規模スタートアップ企業を中心に、Internet.orgに反発する動きが広がっています。Internet.orgから手を引くことを発表したThe Times of Indiaは、「我々は、ネット中立性を支持しています。大企業、中小企業、すべての企業が消費者に最高のサービスを提供するため、公平な競争機会を生み出すものだからです」との声明を発表しています。
なかなか難しいこの問題に対して、フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏がフェイスブック上に自身の考えをポストしました。ザッカーバーグ氏の意見はよく言えば常識的、悪く言えば矛盾をはらんでいて、それがまたこの問題の難しさを浮き彫りにしている…とも言えます。
ネット中立性は、ネットワークオペレーターがアクセス制限によるサービスの差別を行わないようにするものです。これは私たちが尽力するオープンインターネットの重要な一部分です。
長文ポストでこんな理想を語ったザッカーバーグ氏。一方、返信コメントの中では現実的な問題も挙げています。
インターネットすべてを無料にするのはお金がかかりすぎます。モバイル事業者はインターネットトラフィックを流すために、何十億ドルも費やしています。もしすべてを無料にしなければいけないとしたら、モバイル事業者はビジネスをやめてしまうでしょう。
確かに。無料インターネットはすばらしい目標なんですが、さすがにすべてを無料にしたら通信事業者はたまったもんじゃないでしょう。
Internet.orgのやっていることは、ネット中立性規則が定める「ブロッキング・スロットリング・有料優先の禁止」に反しているかもしれません。だからといって、ザッカーバーグ氏の取り組みがムダだなんて言う人はいない気もしますよね。ネット中立性とどこでもつながるユニバーサルなインターネット環境は相容れないものなのかも…。少なくとも、今のところは。
source: Facebook, Wired, Reuters
Adam Clark Estes- Gizmodo US[原文]
(conejo)
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