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http://japanese.engadget.com/2015/04/23/wifi-mit-99/?ncid=rss_truncated


WiFi電波で脈拍・呼吸を計る「バイタルラジオ」、MITが開発。精度99% - Engadget Japanese
(画像はWiFiルータのイメージです)
マサチューセッツ工科大学の研究者グループが、微弱な電波で室内の人物の脈拍や呼吸数を計測する技術 Vital-Radio を発表しました。

実験ではWiFiルータのような機器で電波を発して反射を解析することで、人物にセンサなどを身につけさせることなく、接触型センサの99%の精度で脈拍・呼吸の計測に成功しています。



脈拍や呼吸を正確に計測するには、従来は指や胸に取り付けて動きを読み取ったり、血の巡りによる皮膚の色の変化を読む接触・近接型のセンサを使うのが一般的です。赤外線や電波を使って非接触でバイタルサインを読む方法もあるものの、センサーに特定の距離で向きあったり、身動きせず横たわるなど環境に左右されます。

対するバイタルラジオは、胸や首筋のわずかな動きによる電波の変調をレーダーのように読み取ることで、接触型センサも特定の姿勢をとる必要もなく、正確に脈拍・呼吸をトラッキングします。


論文によると、5GHz〜7GHz帯で出力mW単位のFMCWラジオを使った実験では、装置から1mでの精度は脈拍が98.5%、呼吸が99.3%。装置から8m離れてもそれぞれ98.3%・98.7%と、距離を隔てても接触型のセンサとほとんど変わらない高精度で計測できたとされています。

電波を使うことで苦手そうな複数ユーザーの計測も、部屋に3人が同時にいる場合でそれぞれの脈拍・呼吸をやはり99%近い精度で認識しています。壁を隔てた場合、動きが大きな呼吸では99.2%、脈拍ではノイズが増えて90.1%。


部屋のどこにいても、邪魔なセンサを身につけずともここまで正確に計測できるならば、従来の方法はなんだったのかと思える技術です。しかし原理的な弱点もあり、

・計測対象がくっついていると、どちらの動きか分離できない。
・大きく動いていると脈拍・呼吸の動きを分離できず計測できない。(睡眠中やテレビを見ているとき、キーボードを打っているときなど比較的静かな動きであれば計測可能)
・人間の脈拍や呼吸によく似た定期的な動きがあると区別できない。扇風機や機械の振動などであれば性質からフィルタできるが、ペットの脈拍呼吸は拾ってしまう(数値から人間でなく動物と判断することはできるとして)

特に運動中の脈拍・呼吸変化を正確に測れないことから、スポーツやフィットネスには実質使えません(運動後に安静時に戻るまでの時間計測などはできますが)。


発表した研究者らは部屋にバイタルラジオを設置することで、居住者の健康状態をモニタしたり、子どもや高齢者の安否を確認するスマートホームを応用の可能性として挙げています。

さらにはユーザーの呼吸数や脈拍によって空調や音楽を調整する、あるいは能動的な動きを認識して部屋中どこでも、何も手に持たず家やコンピュータに指示を出すインターフェースとしての応用など。


Vital-Radio を発表したのはMIT計算機科学・人工知能研の Fadel Adib, Hongzi Mao, Zachary Kabelac, Dina Katabi, Robert C. Miller 氏。論文は " Smart Homes that Monitor Breathing and Heart Rate "。


WiFiルータに近いシンプルな装置で、壁の向こうでも数人居てもここまで正確にバイタルが計れるとは驚きですが、実は諜報機関あたりがすでに市販ルータの改変ファームウェアや隠し機能として利用していて、「監視対象が息を荒く動悸を激しくしたウェブページや動画リスト」を淡々と記録しているかもしれません。

(なお、トップの画像 D-Link AC5300 は単なる「かっこいいWiFiルータ」のイメージです。実験にはここまで物々しいアンテナ群は必要なく、目立たない小さなアンテナ2本を使っています)。

WiFi電波で脈拍・呼吸を計る「バイタルラジオ」、MITが開発。精度99%

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