雛苺の卒業式
- § 桜田ジュンの部屋
- 真紅「ふんっ! ふんっ! どうよっ! 食らいなさい! おらっ!」バゴッ
ジュン「やめろ! やめろー! 痛い! 痛いって!」
翠星石「あっ!? こら、何をやっているですか真紅! 備品のパイプ椅子で遊ぶなです!」
真紅「遊んでいるわけじゃあないわ。パイプ椅子は人を叩くためのものでしょう?」
ジュン「違うよ! 馬鹿ッ!」
真紅「まあ、下僕のくせに私に対して何て口の利き方を!? もっと仕置きが必要のようね!」バゴッ
ジュン「グワーッ!?」
翠星石「だからやめろですってば。折角、この部屋でチビ苺の卒業式をやってやろうってことで
関係者のために用意したパイプ椅子が曲がるですぅ!」
ジュン「パイプ椅子の心配かよ」
真紅「大丈夫、パイプ椅子が曲がっても時間巻き戻しで直るから」バキッ
ジュン「グハァッ!? 僕の方の心配もしてェーッ!」
真紅「大丈夫、骨の一本や二本なら折れても時間巻き戻しで治るから」ドコォッ
ジュン「ゲスの極みか、てめぇ…ッ!」
のり「はいはーい! 盛り上がっているところ悪いけど、そろそろ卒業生入場の時間よ~」
真紅「あら、もうそんな時間?」
ジュン「姉ちゃん! いたなら、もっと早く止めてくれよ真紅を!」
のり「えっ? これってヒナちゃんの卒業式の前座で会場を温めるための
余興で『ドールVS人間のガチパイプ椅子プロレスリング』だって真紅ちゃんが…」
ジュン「何処の世界に前座にプロレスやる卒業式があるんだよ…ッ!」
真紅「ジュン! そんなことは今はどうでもいいわ。早く座りなさい」
翠星石「ですぅ。部屋の中が静かにならないと卒業生のチビ苺が入って来れないじゃあねーですか」
ジュン「いやいやいやいやいやいや! どうでも良くないだろ! ついさっきまで特に意味の無い暴力に僕は…」
のり「静かにって言ってるでしょうジュン君? ヒナちゃん待ちくたびれちゃうわ」
ジュン「ぬぅぐぐぐ…」
真紅「雛苺の晴れの舞台をこれ以上汚さないで頂戴ジュン」
のり「そうよぉ~。突然、ヒナちゃんが卒業式やりたい、やってくれなきゃ舌を噛み切って死ぬとまで
言い出したんだから、ちゃんと最後まで卒業式をやり通してヒナちゃんを満足させなきゃ」
ジュン「くっ…!」
翠星石「はい、チビ人間が静かになるまでに30秒かかりました~」
真紅「やれやれだわ」
のり「では卒業生のヒナちゃんの入場です! 皆様、拍手でお迎えくださ~い」
真紅「わーっ」パチパチパチ
翠星石「わーっ」パチパチパチ
ジュン「……」ペチペチ
雛苺「うぃ、苦しゅうないのよ」ノッシノッシ
巴「あ、ヒナふんぞり返ってるとこけるわよ」
雛苺「ヒナはそんな凡ミスしないの」ノッシノッシ
ジュン「何で柏葉も一緒なんだよ…?」
巴「私はヒナの保護者役なの桜田君」
ジュン「だとしても、卒業生と一緒に入場ってのはおかしい…」
のり「巴ちゃん! 保護者用の来賓席はこっちよ。座って座って」
巴「はい。ありがとうございます」
真紅「ジュンが素直に殴られなかったせいでパイプ椅子が微妙に歪んでるけどね」
ジュン「巻き戻しで直るんじゃなかったのかよ」
真紅「人形が物品の生き死にを自由にしようだなんておこがましいとは思わない?」
ジュン「……」
のり「はい! そしてヒナちゃん、卒業生の席はこっちよ~」
雛苺「うぃー!」トテテテ
翠星石「ふぅ~、ようやくチビ苺の卒業式が始まったです」
ジュン「随分と大掛かりなオママゴトなことで…」
のり「では、これよりヒナちゃんの桜田家卒業式を始めます。開式の辞としてジュン君による『すべらない話』の披露です」
ジュン「はぁーッ!?」
真紅「さあ、早くなさいジュン」
翠星石「一発ドカンと頼むですよ~」
ジュン「いやいやいやいやいやいやいや! 何それ! 卒業式ですべらない話を!?」
雛苺「ポップでキッチュでアンニュイなのをヒナは期待してるの」
巴「上手にできたら、学級委員長として私から梅岡先生にも卒業式の一環に提案するから」
ジュン「あの先生、本気にしそうだからマジでやめて柏葉」
のり「準備はいい? ジュン君、早くね」
翠星石「この後もプログラムは目白押しですから、巻きで頼むですぅ」
ジュン「えっ!? え~と、え~と…それじゃあ、え~と…」
真紅「早く。のろまな子は嫌いよ」
ジュン「で、では毎度馬鹿馬鹿しい謎かけを一つ…」
翠星石「謎かけですか」
ジュン「卒業式とかけまして、薬味をかけすぎた秋刀魚と説きます」
巴「その心は…?」
ジュン「どちらも巣立ち(スダチ)が目に沁みます」
のり「…ッッ!!!」
真紅「ほう…」
翠星石「これは…なかなか」
雛苺「うゆゆ?」
ジュン「い、いかがなものでしょう?」
真紅「まあギリギリ及第点って感じね。でもジュンのドヤ顔がむかついたから一発殴らせて」
ジュン「嫌です」
雛苺「ヒナには何だか良く分からなかったの」
翠星石「ふぅーむ、チビ人間は追い詰めれば意外とやる男ですね」
のり「咄嗟に思いついたにしては凄いわジュン君!」
ジュン「いやあ、そんな…」
巴「誰かの芸人のパクリとか?」
ジュン「か、柏葉…っ!?」
のり「では続きまして校歌斉唱です。全員、起立!」
雛苺「うぃー!」シュバッ
ジュン「えっ!? 校歌!? まさかうちの中学校の校歌を歌うのか?」
翠星石「何を馬鹿な。この桜田家のテーマを歌うに決まっているですよ」
ジュン「桜田家のテーマ…? そんなの…」
巴「もう、曲が始まったわよ桜田君」
ジュン「この音楽は…?」
♪~♪♪~~
翠星石「♪深海へぇ~眠ったぁ物語が…」
真紅「♪灼熱のぉ砂を波立てて…」
のり「♪宿命を~」
巴「♪まぁたぁ~」
雛苺「♪呼ぉびぃさ~ま~す~ぅ」
ジュン「何でJOJO!? せめて『薔薇食み』とかにしろよ! あと何だそのコンビネーション!?
絶対、練習してるだろ! 僕だけ除け者でそんなことして楽しいのかよ? 柏葉までっ!?」
真紅達『♪終着の地を焦がす寡黙な炎ぉ~」
ジュン「ああ…っ、異論を挟まず歌い続けるわけね…」
真紅達『オラオラオラオラ オラオラオラオラ オラオラオラオラ オラオラオラオラ』
ジュン「やっと、終わった…」
翠星石「♪雨のようなエメラルド砂漠に降ればぁ~」
ジュン「二番目も歌うの!?」
真紅達『オラオラオラオラ オラオラオラオラ オラ~ッ』
ジュン「今度こそ本当に終わったか…」
のり「それでは皆様、ご着席ください」
巴「はい」
ジュン「…柏葉はこの選曲に何の疑問も無いの?」
巴「ヒナがこれ好きだって言ってたから」
ジュン「ああ、そう…」
のり「では、これより卒業証書&卒業アルバムの授与です」
雛苺「わぁい!」
のり「卒業生のヒナちゃん、前へ来てくださ~い!」
雛苺「うぃー!」シュタタ
のり「卒業生代表、雛苺様。貴女は桜田家において優秀な成績を修められましたので…」
ジュン「優秀ねぇ…」
翠星石「おや? 何ですか、随分と含みのある言いっぷりですねぇチビ人間」
ジュン「どう考えても落第乙女だと思うんだけどな…」
真紅「大丈夫。桜田家は薔薇乙女にとって義務教育みたいなもんだから」
ジュン「ああ、そう…。道理でうちの負担がでかかったわけだ」
翠星石「真紅、それチビ苺のフォローになってねぇですよ」
のり「さあ、これが巴ちゃんに清書してもらった卒業証書よヒナちゃん」
雛苺「うぃー! ヒナの宝物にするのー!」
のり「そしてこっちが皆からの寄せ書きよ」
ジュン「寄せ書き…ッ!?」
真紅「はっ!? し、しまった! ジュンがかつての圧倒的トラウマを思い出してパブロフなゲロを…!?」
翠星石「え? チビ人間まだ克服できてなかったのですか!?」
のり「この寄せ書きはね、皆から本当に心を込めて書いてもらったのよ」
雛苺「わぁい! 水銀燈、雪華綺晶、薔薇水晶からもお祝いの言葉が…!
ああっ! 今、大人気のゆるキャラのばらっしーからもメッセージがあるの!」
翠星石「翠星石と蒼星石も心をこめて書いたです」
真紅「当然、私もよ」
のり「こっちは巴ちゃん、みっちゃんさん、オディールさんに結菱さんとめぐちゃん。ほら大きいジュン君と
パパのローゼンさんからもオメデトウってあるし、ヒナちゃんの友達のネコさんの手形もあるのよ!」
雛苺「すごいのー! すごすぎるのよ! オモテナシの宝石箱や~っ!」
巴「大喜びね、ヒナ」
ジュン「僕、書いてねーぞ」
真紅「ゲロで色紙を汚されたくなかったからビッグジュンに代筆を頼んだわ」
ジュン「……」
のり「続いて在校生送辞です。真紅ちゃん、翠星石ちゃんよろしくお願いいたします」
真紅「ラジャーだわ。ほら、行くわよ翠星石」
翠星石「合点です。ええと、原稿原稿…」ガサゴソ
ジュン「姉の方が在校生で、妹が卒業生って変な感じだよな」
巴「そう言われればそうね。けどヒナより妹となると…」
のり「ゆっきーちゃん、送辞とかやってくれるキャラクターじゃないものねぇ」
巴「そもそもこの卒業式自体、突貫だったから出席者が私達だけなわけだし」
ジュン「寄せ書き、よく準備できたな」
のり「ホーリエちゃん達が過労死寸前まで頑張ってくれたのよ」
ジュン「あんまり表に出てこない割には重労働をこなしていたんだな人工精霊…」
真紅「…コホン、在校生送辞!」
翠星石「厳しい寒さが残る中にも春の衣擦れを感じることの出来る季節となりました…」
ジュン(衣擦れじゃなくて訪れじゃないのか? 原稿を持ってるのに何で間違えるんだ…?)
翠星石「本日、晴れてこの桜田家卒業式を迎えられた第六期生の雛苺様、ご卒業おめでとうございます!」
真紅「おめでとうございます!」
雛苺「うぃー! ありがとうなのー!」
真紅「巣立っていく貴女様は今後の広い世界への期待と不安で胸焼けしていることでしょう」
翠星石「そういう時は無理をせず、救心とかの薬(ヤク)を服用することをお勧めするですぅ」
真紅「ドラッグに頼ることは決して恥ではありません。
自らの不摂生や到らないところを補完してくれる現代医学、なんと素晴らしいことか」
雛苺「まったくなのー! 真紅達のアドバイスを大切にして、ヒナは今後ドラッグを片時も離さないのよ!」
ジュン「ヤクとかドラッグとかじゃなくて普通に薬(くすり)って言え、せめて」
のり「ヒナちゃんに漢字の読み方や英語をお勉強してもらうための高度な送辞じゃあないの?」
巴「なるほど。真紅ちゃんと翠星石ちゃんの送辞には、そんなヒナの成長を願うメッセージが」
ジュン「……」
翠星石「本日は誠にご卒業おめでとうございました!」
雛苺「ヒナも感謝感激なのね」
のり「さあ、ついに卒業式メインイベント! 卒業生答辞よ! ヒナちゃんがんばって!」
雛苺「うぃ!」
真紅「聞かせてもらうわよ雛苺。あなたが桜田家で学んだ全てを」
翠星石「チビ苺
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- 冒頭のジュンはなんで殴られてたんだよ…
本当に理由のない暴力なら、真紅がゲスではなく単なるキティガイってことにならんか?
今更か
- :-:2015/04/25(土) 23:55:21
- シーライフとか…そういったことを…そりゃ雛苺も強くなりますね…
- :-:2015/04/25(土) 23:55:50
- 雛も最近逞しくなって来たよなw