許嫁「私が幸せな理由」
許嫁「深呼吸……深呼吸です」
許嫁「大丈夫、寝ている男子を起こすことくらい、漫画によくいる幼馴染なら誰でもやっています」
許嫁「結婚の約束までしている私なら、ちょちょいのちょいです。そうに決まっています」
許嫁「では失礼して……おじゃましまーす」
男「zzz」
許嫁「ぐっすり寝てますね。ふふ、かわいらしい寝顔です」
男「むにゃ……いいな、ずけ」
許嫁「っ」
許嫁「びっくりしました……起きてはいませんよね」
男「でか……いな」
許嫁「何がでしょう。背は低いですし……や、やはりこの胸でしょうか」
許嫁「男さんに喜ばれるんでしたら……母に言われ、早寝早起きを徹底した努力が報われましたね」
男「ケツ……」
許嫁「……」
許嫁「…………」
許嫁「朝です朝です起きてください」
許嫁「べしべしべし」
男「ん……んんっ?」
許嫁「朝ですべしべし朝ですべし」
男「痛……いてえ! 何だ朝っぱらからっ」
許嫁「あら男さんべしべしおはようございべし」
男「どうして顔をビンタされまくってんだよ俺!?」
男「うぅ……顔がひりひりする」
男母「ったく、ようやく起きてきた。ごめんなさいね許嫁ちゃん、手間かけさせて」
許嫁「大丈夫ですよ。これからずっとしていくことですしね」
男母「ところで、うちのどら息子の顔はどうして爆弾岩みたいになってるの? メガンテでもするの?」
男「聞いてくれよババア……許嫁が、俺をビンタしまくったんだ」
男母「誰がババアよ、マホトーンしてからたこ殴りされたいの?」
男母「おおかた、寝ぼけたあんたが許嫁ちゃんに抱きつきでもしたんじゃない?」
男「なるほど……そうだったのか。悪かったよ許嫁」
許嫁「いえ、その。私こそごめんなさい」
男「?」
男母「よしご飯完成っ。早く錬金しなくちゃ!」
許嫁「錬金……? あ、ゲームの話でしたか」
男「ダメだ許嫁、見るんじゃない。家事をおざなりにしてゲームに熱中する主婦なんて存在しないんだ……!」
◇学校
女「おはよー……ってうわ!? 男の顔が白子の怪物みたいになってる!?」
男「キモい例えすんな。おはよう」
許嫁「おはようございます」
女「んー、ねえねえ許嫁ちゃん、こいつどうしたの?」
許嫁「実はその、ちょっとやりすぎてしまいまして」
女「あーなるほどね。男がセクハラしたんでしょ? こいつってばほんと変態だから」
男「違う、寝ぼけてたんだ、俺は悪くない」
女「小学生のころ、クラスの女子全員のスカートをめくったやつが良く言うわー」
許嫁「男さん……ふふ、ふふふ。私に内緒でそんなことしたんですか」ゴゴゴ
男「許嫁さん!? 目も口も頬も笑ってません!」
女「大丈夫、言葉だけは笑ってるでしょ?」
男「しくしく」
許嫁「さあ男さん。どうしてそんなことをしたのですか? 私というものがありながら」
男「ち、違います! 若気の至りだったのです!」
女「ほんとよ、信じられないわ。いくら王様ゲームでスカート20人めくれって命令されたからって」
男「命令した悪魔は女じゃねえか!」
女「でも楽しかったでしょ?」
男「まあな!」キラ
許嫁「男さんっ!」
男「ごめんなさいごめんなさい! 今後は許嫁のスカートしかめくりません!」
許嫁「それならよ……くないですっ! 恥ずかしいからやめてください!」
男「…………」ピラ
許嫁「い、いやああーー!!」
男「女」
女「何よ」
男「天国は桃色をしていた」
女「地獄に直結してるわよ、あんたのいる天国」
許嫁「信じられません……こんなことされたら、私、どこにも嫁に行けません」
男「俺以外の誰のところに嫁に行くんだよ」
許嫁「そ、それは……」
男友「……」チラッ
男「……」
許嫁「……」
男友「……」チラッチラッ
男「おーい女友ー。男友が許嫁に色目使ってるぞー」
女友「なんですってー!?」
男友「ちょ、ば、男てめえ!」
許嫁「三枚目の役柄って大変ですね」
男「まあ幸せそうだしいいんじゃないか」
男友「 」
女友「浮気者、ここに眠る……っと」
許嫁「不名誉な墓銘が刻まれましたね」
男「南無」
男友「死んでたまるか!」
女友「しぶといわね」
男友「当たり前だ! オレはこれから、女友とあんなことやこんなことをしたいんだあ!!」
女友「大声で何を言うわけ!?///」
男「俺と許嫁ってさ、あいつらのおかげでバカップル扱いされずに済んでるよな」
許嫁「得難い友人ですね」
女「ほー? つまり許嫁ちゃんは、男とバカップルなりかけなのは認めるんだー?」
許嫁「ち、違いますっ。言葉の綾です!」
女「違うの? なら男、わたしとバカップルになろうよ」
男「冗談は胸だけにしてくれよな」ハハ
女「男……あんたってやつは」ゴゴゴ
許嫁「だめ、だめですっ。男さんは私の……っ」
許嫁「うぅ」
男「大丈夫だって許嫁」
許嫁「男さん……」
男「あまり言ってこなかったけどさ、俺、許嫁のこと、好きだぞ」
許嫁「わ、私も……男さんのことが、その……」
女「わたしの存在を踏み台にして盛り上がるの、やめてくれないかなあ」
女教師「よーしお前ら席に着け……ぉぅわっ! どうしたんだ男! 顔が花崗岩みたいになっているぞ!?」
男「もっとましな例えはありませんでしたか?」
女教師「そんなことはいい! それよりどうした、イジメか!? 先生が放課後の保健室で相談に乗ろうか?」
女「何するつもりよ二九歳」
女友「必死すぎてちょっと引くわよね……」
女教師「うるさいな! わたしはもう後がないんだよ!」
許嫁「だからって人の婚約者に粉をかけるのはやめてください」
女教師「おっかしいな……どうしてわたしの人生には婚約者が現れなかったんだ?」
女「日頃の行いとかじゃ?」
女教師「……ところで女、あんたそのグループで一人だけフリーだったな? 先生が放課後の保健室で相談に乗ろうか?」
女「わたしに何するつもりですかっ!」
女教師「いやほら、同性愛者だったら結婚しない理由として親に話せるし」
男「ご両親が泣きますよ」
許嫁「ちょっと重たいカミングアウトですものね」
女教師「ま、冗談はさておき進路調査票を配るぞ。来週頭が期限だから、遅れないよう提出するようにな」
男友「なあ、女友はどうするんだ?」
女友「ちょっとは余裕を持って入れそうな大学。あんたは?」
男友「ぎりぎり入れそうな大学を狙う。……悪い、学校は別々だと思う」
女友「しょうがないわよ。あんたのが頭いいんだし」
男友「たださ、できるだけ女友の大学と近いとこを探すよ。一緒にいる時間、できるだけほしいしな」
女友「も、もう……」
男友「――――」ジッ
女友「――――」ジッ
女教師「見ない見えない見えてない。ああそうだわたしは見えてないぞー!」
女「先生、一枚足りませーん」
女教師「おっと、悪かったな」
男「さて、俺もどうするか」
許嫁「男さん、行きたい大学は決まってませんでしたか?」
男「第一志望はな。この近くで理学の専攻科があるの、一つしかないし」
女「えーっと……書き書き」
男「でもこれ、一応第五志望まで埋めないとだろ?」
許嫁「どうせなら遠方の大学も検討してみては?」
男「んー、親がなんて言うかわからないからな」
許嫁「私と一緒に住むということでしたら、多少は生活費も安くあがりますし」
女「よしできた」
許嫁「教員免許が取れるなら、私は大学にこだわりがありませんしね」
男「……ん、そうだな」
女「これをこっそり許嫁ちゃんのやつと入れ替えて、っと」
男「そうだ、女はもう決まってるのか?」
女「わたしはまだだよ。……ねえ許嫁ちゃん。わたしと一緒に進路調査票を書こうよ」
許嫁「いいですよ。大学を調べなが……ひぅ!?」
男「ひぅ?」
女「おやぁ、どうしたの許嫁ちゃん? あらあらー! もう、許嫁ちゃんってば大胆なんだからっ」
男「んー? ……おい許嫁。男のお嫁さんとか書いてあるの、見間違いか?」
許嫁「わ、私が書いたんじゃありませんっ」
女「でもそれじゃあ提出できないよ? はいこれ。さっき一枚余分にもらったんだー」
許嫁「っ! 女さん、計りましたね!?」
女教師「もうやだこのクラス」
許嫁「そろそろ次の授業が始まりますね」
男「だな。ほら許嫁、教科書」
許嫁「私からもどうぞ」
女「……二人ってさ、授業前によく教科書を交換しあってるけど、それって何の儀式? イチャイチャ獣の召還?」
許嫁「いえ、あの、そういうイチャイチャとかではないです……」
男「今日やるページの空いた部分に、前回の復習をかねた問題を作ってるんだよ。で、お互いにそれを問き合ってる」
許嫁「勉強になっていいですよね」
女「砂糖吐きそう……」
◇授業後
女(しかしこんなことでへこたれる女さんではありません)
女「許嫁ちゃん、ちょっと教科書貸してー。イタズラ書きを消してたら、教科書破けちゃって」
許嫁「もう、仕方ないですね。自分の教科書だからって、あまり落書きしちゃダメですよ?」
女「わかってるよ。ありがとねー」
女(よし、もう問題が書いてある。綺麗な字だな、うらやましい)
女(とりあえず、女の子らしい丸文字で書き足して……っと)
女(教科書、この後は見ないまま男に渡してくれるよね?)
女「もう大丈夫、ありがとね」
許嫁「いえ、どういたしまして」
~~~
◇次回授業時
男「っ!?」ガタッ
女教師「どうした男? わたしに惚れたか?」
許嫁「……先生。そういう冗談はよくないと思いますよ。男さんは別ですが、勘違いする男子が現れるかもしれません」
女教師「安心しろ。彼女にベタ惚れしてる男子相手にしか言わないから」
許嫁「それならいいんですが」
許嫁「……ちょっと待ってください! 変なこと言わないでくれませんか!?」
男「…………」
男(び、びっくりした……許嫁、こういうこと書いてくるやつじゃないと思ってた)
『愛してますよ男さん(ハート)』
男(ちょっと無神経すぎたな……俺も返してやるか)
◇次々回授業時
許嫁「ひぅ!?」
女教師「……最近、わたしの授業を邪魔するのが流行っている
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- 2015年04月27日 00:00
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