とある右方と超電磁砲
- 2015年05月01日 20:10
- SS、とある魔術の禁書目録
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神の右席、右方のフィアンマがとある少女の「世界」を救うお話
タイトル通りフィアンマさんと御坂美琴さんのSSです
何を血迷ったか、フィアンマさんにパートナを与えます
オッレルスさんとシルビアさんにはごめんなさいです
注意点
・とある魔術の禁書目録原作22巻までのネタバレがあります
・ほぼ初のSSなのでつたない部分が多いです
・美琴のパートナは上条さんだけだろう!など、受け付けない方はブラウザの戻るをクリック
・説明が省かれているところがちらほらあります
・独自解釈、俺設定があります
以上のことを踏まえたうえでご覧ください
ではプロローグ(のようなもの)を投下します
10月30日。
ロシアの広大な大地。それを一面埋め尽くす白い雪の“中”にその男はいた。
今にも埋もれてしまいそうだが、その男の特徴ははっきりとわかる。
赤。それ以外の言葉が当てはらないと思えるとほど、肌や目以外、服も、髪も、靴も、赤で染められていた。
顔は中性的で、髪型はセミロング、服装は極寒のロシアにはあまりにも似合わない薄い格好だった。
そして、雪に隠れてわからないが、彼の右腕は肩から失われている。
「……」
体はボロボロで、一見すると息がないように見える。
意識はあるものの、それも、もうそろそろ断ちかけていた。
(……ふん、アレイスターめ。口封じなどといいながら、俺様を殺し損ねたな)
彼の名は、『フィアンマ』。20億の信徒を抱えるローマ正教、
その最暗部にあたる禁断の組織『神の右席』の一員、『右方』を司る魔術師である。
彼はある目的のために、必要なものを戦争を起こしてまで手に入れようとした。
いや、手には入った。だが失敗した。フィアンマが求める“一番重要なもの”を持つ男の手により。
フィアンマは実力者だ。それも他の者を寄せ付けないほどの。だが敗れた。
そして、その男に敗れた後、フィアンマは男の“持ち物”の奥にあるものを見てしまった為、
科学サイドの総本山、学園都市の統括理事長であり、史上最強最悪の魔術師と呼ばれている
アレイスター=クロウリーに口封じのため襲撃された。
フィアンマが生きているのは、単純に彼の実力だろう。
(……“殺し損ねた”と強がったが、これは厳しいな)
フィアンマに今、特別な加護はない。実力で生き残ったが、このままでは凍死してしまうだろう。
ふと、フィアンマの頭に自分が狙った男の言葉が蘇る。
(「これから世界を確かめてみろ」、か……。どうやら無理のようだな)
フィアンマは心の中で微笑する。何もかも諦めたかのように。
(俺様もお前のように人一人分の「世界」とやらを救ってみたかったよ)
だんだん、意識が薄れていく。
もうじき、意識が完全に途絶えて、そのまま死に行くだろう。
そう、フィアンマが考えていたときだった。
「ちょ……ンタ!? ……丈夫っ!?」
人の声がフィアンマの耳に届いた。
おそらく自分を呼んでいる。そう感じたフィアンマは目を開こうとしたが、
(だ、れ……だ…………………)
目を開くことはおろか、声も発せないまま、意識が闇に飲まれて行った――――――――
フィアンマが目を覚ましたとき、目に入ってきたのは見知らぬ天井だった。
「……?」
少なくとも吹雪が吹き荒れる空ではなく、どこかの建物の天井。
(生きて……いる? そして誰かにここまで連れられたのか?)
フィアンマは生きていることを実感する。だが、驚きはない。
(意識を失う直前、何者かが叫んでるのを薄っすらだが覚えている。多分、そいつがここまで連れてきたのだろう)
ただ、フィアンマは感謝すべきか迷った。自分のような大罪人が生きていいのか、と。
そんなことを考えていると、部屋のドアが唐突に開き、人が入ってきた。
「あら、起きた?」
入ってきたのは一人の少女。少なくとも、フィアンマより遥かに若いだろう。
彼が人のことを言えるわけがないがロシアに来るにしては薄いように見える格好だった。
「よかった。このまま目を覚まさないんじゃないかと思ってたわ」
少女は心底安心したかのように胸を撫で下ろす。
「……日本人か……」
「日本語通じたのね。自己紹介しとくわね。私は御坂美琴、アンタは?」
何故、ため口なのか、などはフィアンマは気にせず彼も名乗る。
「……俺様は、フィアンマだ」
「フィアンマね、よろしく」
美琴と呼ばれる少女は、一切警戒せず、フィアンマに友好的な態度をとった。
フィアンマもそれに対し「よろしく」、と小さく返す。
「ところで、ここはどこだ?俺様はどうして助かった?」
さっそく、フィアンマは話題を切り出す。
「ここはロシアの病院よ。どうして助かったって、ここの医者が治療したに決まってるじゃない」
あたりまえでしょ、と美琴は言う。
「お礼を言うなら、医者に言ってね。私は連れてきただけだから」
連れてきたことも偉大である。だが、それを美琴は誇ったりしない。
自分を上げるような人間じゃない、所謂善人だろう、とフィアンマは美琴のことを結論付ける。
「大変だったわよ。今にも凍死しそうだった上に、見つけたときは右腕がなかったし、近くに落ちてた腕も冷凍保存できそうな状態だったしで。
綺麗に切れてたのと医者の腕が相まってなんとかくっ付いたけど……アンタの体ってファンタジー?」
美琴は笑ってそのときの事を語るが、フィアンマは驚いた。
(……何?)
フィアンマは右肩から先を見る。そこにはアレイスターに切り落とされたはずの腕がしっかりと付いていた。
気づかなかった、というより気にかけなかったのだろう。
ただ、フィアンマが驚いたのはくっ付いたことではない。このロシアに腕が存在していたことだった。
(くそ、アレイスターの奴、俺様の右腕は不要ということか)
フィアンマは、少し憤りを感じた。今まで自分の右腕に宿る力は絶対なものだと思っていた。
それを、たった一人の男に直接ではないが否定されたのだ。
(そこまで“あれ”に執着するか……)
その“あれ”を求めていたフィアンマが言えた口ではないが。
「どうかした?体調でも悪いの?」
「いや、大丈夫だ。心配するな」
黙り続けていたため、美琴がフィアンマに声をかけるが、それにフィアンマは適当に返す。
「そう。それならいいんだけど……。ところで実はアンタに聞いてほしいことがあるの」
「何だ」
特に困ることはないのでフィアンマは聞くことにした。
――――――――――――――――――――
フィアンマは美琴の話を聞いていた。
薄々わかってはいたが、彼女は学園都市の能力者らしい。しかも、レベル5とやらの第3位に君臨するという。
彼女はある少年、フィアンマの求めた『幻想殺し』を持つ男、上条当麻を探しにここに来たらしい。
(惚れているのかなどと、野暮なことは聞かないフィアンマである)
彼女は上条当麻の捕獲部隊(恐らく、アレイスターが仕向けようとしたのだろう)を潰し、
空に浮かぶ空中要塞に接近する方法を探し、そして、たどり着いた。
……が、上条当麻は助けを拒絶。そのまま空中要塞とともに北極海に落下して行ったそうだ。
しかし、彼女はあきらめず、地上でどうにか上条当麻を探す方法を模索していたら、
倒れていたフィアンマを見つけた、とのことだった。
「ふむ。じゃあ、俺様の話も聞いてもらうとしようか」
「いいわ」
フィアンマは語った。自分のしたこと、見たこと、すべて。
自分はローマ正教の最暗部『神の右席』所属の魔術師であることも、
その力を使って、戦争の引き金を引き、自分の必要とするものを集めていたことも。
そして、集めることによって世界を救おうとしたことも。
……アレイスターにやられたことも。
今となっては馬鹿馬鹿しいことばかりだった、とフィアンマは笑って語る。
上条当麻が空中要塞ベツレヘムの星とともに北極海に落下したことに関わっていることも話した。
「ふぅん、魔術ねぇ。本当に能力開発じゃないものだったとはね。統括理事長も……」
美琴はぶつぶつと何か呟いていた。
フィアンマは不思議なものを見るかのような顔で、
「何故だ……?」
と美琴に問いかけた。
「何がよ?」
「何故、俺様を拒絶しない? 俺様はお前の追っていた上条当麻を消したような男だぞ?」
フィアンマがすべてを話したのには理由がある。
自分を拒絶してもらいたかったから。どうしてそうしてもらいたいのかはわからない。
ただ、怒りを向けられるべきだと感じたからかもしれない。
もしかしたら、美琴に自分と一緒にいてもらいたくなかったからかもしれない。
どうして、そのような考えが出るかはわからなかったが、目の前の少女にはとにかく拒絶されて去ってもらいたかった。
「アンタの話を聞く限りじゃ、アンタ、アイツに影響されたんでしょ? だから、理事長と戦った。
確かにアンタは取り返しの付かないようなことをしたかもしれない。でも、それをきかっけに
変わろうとしている。そんな人を拒絶するなんて権利、私には持ち合わせていない」
「……」
フィアンマは美琴の言葉に黙っていた。
たった一人の少女と話し合っただけだが、少しだけ『世界』というものがわかった気がする、
とフィアンマは感じていた。だが、まだ何かが足りない。
「俺様を……許すのか?」
「許す、なんて言ってないわよ。だから私に付き合ってもらう。これでいいでしょ?」
この少女に付き合う。そうすることで、足りないものがわかるのなら。
許されなくていい、『世界』を、この少女の『世界』だけでも知ることが、
救うことができるなら、とフィアンマは考え、答えを出す。
「いいだろう。お前に付き合ってやる。俺様に遅れをとるなよ?」
結局、拒絶してほしかった理由は出てこなかったが、この少女と一緒にいることで
答えが出るだろう、とフィアンマは結論付ける。
「そっちこそ。これからよろしくね、フィアンマ」
美琴は笑いながらフィアンマに手を差し出す。
「よろしく、美琴」
フィアンマも笑って手を差し出し、握手をした。
おまけ
「ところで……」
「なんだ?」
「一人称が『俺様』ってどうなのよ」
「俺様が気に入ったから『俺様』だ。悪いか?」
「いや、でも……俺様主義って……くふっ」
「おい……今、笑っただろ」
「笑って……もう無理、耐えられない、あっははははは!」
「……そこまで、笑うことないだろう……」
その日、大笑いしている日本人の少女と、しょげている赤髪の男という、面白い光景がロシアのとある病院で見られた。
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