姉「なっ、バカじゃないの?急にそんな・・・かわいいなんて・・・」
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6:SS速報:2009/11/08(日) 04:50:13.58
姉「なっ、バカじゃないの? 急にそんな……かわいいなんて……」
姉「恥ずかしくなってきちゃったじゃんか」
姉「ねっ……男、私さ……」
姉「じ、実はね……昔から」
妹「っと、妄想はその辺にしときな」
姉「…………」
妹「一人で寂しく何やってんだよ。いいからさっさと飯作れカス」
妹「あと朝飯食べてないから多めで」
姉「…………何よ、お寝坊の癖に」
妹「……ッ」
妹「はっ、弟相手に飢えてる淫乱女に言われたくないなあ」
ばんっ。
妹「うおっ!?」
7:SS速報:2009/11/08(日) 05:14:29.95
姉「……今、お姉ちゃんは猛烈に怒ってます」
姉「幾らあなたが反抗期だからといっても、その言動は許せません」
妹「べ、別に許してもらうなんて思ってねえよ!」
姉「覚悟は出来てる?」
妹「くぅ……年増の癖して……」
姉「ま、まだ22よ! ぴちぴちよ!」
妹「くく、女子高生の私からしたらとんだ老婆よ」
姉「な、なんて憎たらしい妹! ふふ、そんなこと言うならあんたの胸のサイ……」
妹「──うわぁぁーそれだけはやめろぉー!」
がちゃ。
男「二人ともおはよぉ」
8:SS速報:2009/11/08(日) 05:22:48.73
男「って、ん? どうかした?」
姉「あ、男おはよ! いやね、この娘の胸のサイズを……」
妹「──なっ! 何でもねえよ!」
男「はぁ」
妹「だ、大体よー、元はと言えば姉貴がここで……」
姉「──あーーーー聞こえませーーーーん」
妹「くっ、姑息な手段に出やがって」
妹「しかし……このままだと埒があかねぇ」
姉「そ、そうね。これじゃあ互いのためにならないわ。失う物が大きすぎる」
妹「そもそも私が悪いのか疑問だけど、共倒れだけはごめんだ」
男「何の話さ?」
妹「お前は入ってくんな! 口くせえんだよっ!」
男「……えっ?」
12:SS速報:2009/11/08(日) 05:28:00.38
男「そ、そんな……ごめん……」
妹「あーもうくせぇから」
男「…………」
姉「ちょっと、こら妹!」
男「いいよ姉さん……俺が悪いんだから。血がでるくらい、めいっぱい歯磨きしてくるわ……」
姉「そ、それはやりすぎじゃ……」
がちゃ。
妹「ふぅ、やっと邪魔者が消えたか」
姉「妹」
妹「な、なんだよ……仕方ねぇだろ……」
14:SS速報:2009/11/08(日) 05:32:50.39
妹「あーでもしなきゃ、アイツいなくならなかったし……」
姉「それでも少しひどいわよ。男半泣きだったじゃない」
妹「…………」
姉「まーでも、今回は仕方ないか……。きちんとあとでフォローしときなさいよ」
妹「なんで私が──」
姉「ん」
妹「……ちッ。分かったよ分かりましたよーだ」
姉「ふふ、ならよろしい」
………………。
………………。
15:SS速報:2009/11/08(日) 06:04:27.89
男「とまあ、昨日こんなことがあったわけよ……」
翌日、早速俺は事の詳細を友人に話していた。
第三者の意見が聞きたくなったのだ。
友人「ほう」
男「お、お前はどう見る……? やっぱりこれって……」
友人「完全に嫌われてるな」
男「……そ、そんな馬鹿な」
友人「『口くせえんだよっ!』だろ。そりゃ臭かったんだよ」
やっぱり臭かったのか……。
調子に乗ってキムチごはんなんて食べたからか……。
16:SS速報:2009/11/08(日) 06:13:04.93
友人「そういうことの積み重ねが、結局は兄の権威を下げるんだよな」
友人「気がついた時にはもう手遅れ」
友人「小さい時はお兄ちゃん子だった妹も、次第に兄を邪険にし始める」
まさしく今の俺だった。
昔はあんなお兄ちゃん子だったのに、うぅ。
目をつぶれば、すぐさま美しき過去の記憶が蘇る。
男『ほら早くいくぞ』 妹『お、お兄ちゃん、待ってよぉー!』
あまりの現実との違いに、俺は血の涙を流した。
友人「エロゲーのようにはうまくいかんよ。現実にツンデレなどいない」
男「好きか、嫌いかの二択か」
友人「お前が突っ走ろうとしてんのはあれだよ」
17:SS速報:2009/11/08(日) 06:24:53.28
友人「『そこ邪魔』『兄なんていなきゃいいのに』『あーもう、死ねよ』」
男「そ、存在の否定!?」
とてつもない危機だった。
男「お、俺にはもう為す術はないのか……」
友人「一度兄嫌いが進行したらもう止まらんよ。諦めろ」
男「うぅ……うわあああん」
友人「んま、それでもあれだ」
男「えっ……?」
友人「お前はまだ救われてるよ。なんたって──」
……………。
……………。
19:SS速報:2009/11/08(日) 06:40:26.68
夕飯を食べた後、
俺はある部屋の前にいた。
こんこん。
姉『はーい』
男「あ、俺だけど……ちょっと今いいかな」
姉『んー? 男? 珍しいじゃん。でも、ちょっと待ってねー』
がさがさ。
姉『んー、もう少し待ってー』
がさがさ。
扉の奥から何やら忙しい音が聞こえる。
姉も、もう大学四年だ。
弟に見られたくないものの一つや二つあるに違いない。
20:SS速報:2009/11/08(日) 07:01:15.34
本来ならここはハプニングを装って、
ドアを無理矢理開けたほうがきっと良い選択なのだろう。
イベント発生は自ら切り開くものだ。
だが──
男「く……俺には後がない……」
友人との会話を俺は思い出す。
……………。
友人「一度兄嫌いが進行したらもう止まらんよ。諦めろ」
男「うぅ……うわあああん」
友人「んま、それでもあれだ」
男「えっ……?」
友人「お前はまだ救われてるよ。なんたって──」
22:SS速報:2009/11/08(日) 07:04:25.37
お姉ちゃんの小さな美乳に埋もれてないけど埋もれて泣きたい
24:SS速報:2009/11/08(日) 07:08:41.33
友人「──姉には嫌われてないじゃん」
……………。
真理だった。
それは俺の最後の希望だった。
妹に嫌われてしまったのは仕方がない。
いつまでも過去を悔やんでいても、その事実は一向に変わらないのだ。
であるからこそ、
今おれがやるべきことは──
がちゃ。
26:SS速報:2009/11/08(日) 07:30:45.76
姉「ふー……お待たせ」
姉「ちょっと色々ごちゃごちゃしてたんで時間かかっちゃった。ごめんね?」
男「ううん、全然良いよ」
く、ここでフォローだ! 好感度アップ!
男「明日の朝まで待ってたって構わないよ!」
姉「あ、そう……なんだー」
引かれていた。
……………。
……………。
27:SS速報:2009/11/08(日) 07:32:37.91
姉「ふむふむ」
男「……ということなんだよ」
姉「あー……そういうこと。実は私も気になってたんだ」
男「えっ?」
姉「男は気づいてるかな? 妹さ、男のこと『アイツ』『お前』とかで呼んでるでしょ」
姉「私のことは『姉貴』って呼ぶけど、男の名前は最近妹から聞かない」
姉「昔は『お兄ちゃん』って呼んでたのにね、凄い変わりよう」
そういえばそうだ……。
全体的に言葉遣いが悪くなったので気づかなかった。
でもこれって。
例のあれがかなり進行してるってことだよな。
29:SS速報:2009/11/08(日) 08:16:38.96
男「それってさ……」
姉「あーうん。でも男が今考えてるようなことは違うと思うよ」
男「え……? でも……」
姉「『妹が男のこと嫌いになったからじゃないのか』って?」
男「うん。そうとしか考えられないよ」
姉「んー、多分違うと思うなあー」
姉「妹はさ、男」
男「?」
姉「…………」
男「え、何? 何なの?」
突然黙り込んだ姉さんは、俺の顔をじっと見つめている。
なんだ……? ごはんつぶでもついてたか?
33:SS速報:2009/11/08(日) 10:44:24.96
ま、まさか、鼻くそがへばりついてるとかないよな……。
鼻毛の処理は大丈夫だったっけ……?
俺は自らの憶測に怯えていた。
すると、閉じられていた彼女の口が開く。
姉「……やっぱ、やーめた」
男「ふぇ?」
姉「なんか割に合わない」
姉「勝手にひねくれてる癖して……何で私がフォローしないといけないのよ」
男「ね、姉さん……?」
姉「ふん。私、知らない」
女心は複雑だった。
39:SS速報:2009/11/08(日) 13:38:02.08
男「……えっと、それで俺はどうすれば……」
姉「う-ん」
男「こ、ここは一つ! 博識なお姉様、この私にどうかご教授下さいませ」
姉「…………」
男「ど、どうか何卒!」
姉「……ふぅ、仕方ない」
姉「弟にそこまで頼まれてるんだもん。助けになってあげないとね」
姉「ふふ、私もつくづく弟離れ出来ないみたい」
男「ね、姉さん!」
待ちに待った女神の到来だ。
こうなりゃ最早怖いものなんてなし。
あとは──
46:SS速報:2009/11/08(日) 16:07:46.59
姉「そうね……妹のことだから、直球にいっても無駄だと思う」
姉「だからさ、少し私に考えがあるんだ」
男「ズバリお願いします」
姉「わ、笑わないでよ!」
男「あ、うん」
何だ? 笑えるようなことなのか?
知能レベルが低い俺には全く想像つかなかった。
姉「────」
…………。
男「え?」
47:SS速報:2009/11/08(日) 16:12:08.28
ど、どうやら俺はどうかしてしまったようだ……。
尊敬する姉の口から発せられた言葉とは到底思えなかった。
何かがおかしい。
そうだ、きっと俺の聞き間違い──
姉「お……、お兄ちゃん♪」
……先行き不安だった。
大丈夫かよ、おい。
……………。
……………。
56:SS速報:2009/11/08(日) 19:42:36.77
翌日……朝。
男「ふはぁ……」
男「……はやいなあ」
リビングに入ると、いつものように姉さんが朝飯の用意をしていた。
単身赴任の父に付いていった母。
数年前から始まった家族三人だけの生活は姉抜きでは成り立たない。
家の家事のほとんどを姉さん一人で熟している。
俺も手伝おうと何度か試みたが、逆に彼女の仕事を増やすばかり。
今となっては彼女におんぶに抱っこ状態だ。
59:SS速報:2009/11/08(日) 20:14:54.80
姉『大丈夫よ、家事は私がやるから』
何でも出来る、自慢の姉だった。
うん、自慢の姉だったんだけど……。
姉「あっ、お兄ちゃん!」
男「ああ姉さ……ん、おはよ……」
あれ……?
なんかおかしくなかった?
姉「もう、お兄ちゃんひどいぞ!」
姉「朝起こしてあげるのは私の役目なのにさ……」
男「…………」
60:SS速報:2009/11/08(日) 20:22:05.62
姉「ちょっと何惚けた振りしてるの? もうこっちは真面目なんだよ!」
男「あ、はい」
姉「……大体お兄ちゃんは人の話聞かなすぎです」
男「す、すみません」
姉「じー」
く、何だ何だそのジト目は。
俺が全面的に悪いみたいじゃないか!
言いたいことがあるなら口で言えー!
男「い、以後……気をつけます、すみませんでした」
姉「はい、よろしい」
たじたじだった。
64:SS速報:2009/11/08(日) 20:44:14.99
がちゃ。
妹「あーくそ、まじたりぃー……」
──あ、朝の挨拶発動!!
男「おっおっす!」
どもった。
妹「…………」
妹「姉貴、飯出来てる?」
無視ですね、はい。
姉「ん、そこに出てる」
妹「あ? どれよ? 見あたらないんだけど」
65:SS速報:2009/11/08(日) 20:49:31.37
姉「ほら、あれ」
……姉の指さす先は一箱のコーンフレーク。
妹「ちょいちょい冗談は歳だけにしてくれよ」
妹「その香ばしく焼けてるベーコンがあるじゃねえか」
男「うん、そうだね。良い臭いだ」
妹「字が違うよ字が。匂いだろうよ。どんだけくせえんだよベーコン」
妹「うん、それとな……」
男「ん? どうした?」
妹「近いから顔。もっと離れろカス」
男「うぅ……」
67:SS速報:2009/11/08(日) 20:54:22.30
姉「あーもう、男の子が泣かないの。それとベーコンはお兄ちゃんのだよ」
妹「は? 誰だよお兄ちゃんって?」
妹「んま、いいさ。どうせまたくだらないジョークなんだろ」
妹「こちとて腹が減ってんだ、ベーコンよこせ」
姉「あーもう!」
ばんっ。
68:SS速報:2009/11/08(日) 20:58:40.24
妹「うお……な、なんだよ!」
姉「あんたの朝食はそこのコーンフレークって言ってるでしょうが」
姉「一人で勝手に牛乳でもかけて食べなさい」
妹「ちょ、ちょっと待てよ! 何だよそれ、新手のいじめか!」
姉「はいお兄ちゃん、ベーコンエッグね」
男「おぉ、ありがとう」
とびきりの笑顔でお皿を差し出す姉さん。
何故だろう、誰かに包まれているようなそんな温かさ。
冷めきった胸の奥が……暖まる。
76:SS速報:2009/11/08(日) 21:21:19.34
妹「おいおい!」
姉「『ダイエットしたいからコーンフレークにしろ』」
妹「くっ……」
姉「あれだけ強気で言っときながら、三日も続かないじゃない」
姉「どうせ余ってもったいないんだから、あなたが責任を持ちなさい」
妹「な、なんで私一──」
姉「分かった?」
妹「…………」
姉「はい、じゃあそういうことで」
78:SS速報:2009/11/08(日) 21:25:25.53
妹「……鬼婆」
おいおい……火に油は──
姉「じゃあ、私もお兄ちゃんとご飯食べよっと」
姉「ほら、ちょっとそこどいて」
妹「なっ──」
姉「ふふ、お兄ちゃんのとなりー」
妹「……ッ」
そう言って俺の隣に座る姉さん。
鼻孔をくすぐるのは大人の女性の匂い。
そうか、そうだったんだ。
80:SS速報:2009/11/08(日) 21:27:48.44
俺はこんな風に妹と仲良くしたくて──
ただ単に時にはふざけ合ったり笑い合ったり、
そんな些細なことを望んでただけなんだ。
俺は、あの夜のことを思い出す。
……………。
姉「そうね……妹のことだから、直球にいっても無駄だと思う」
姉「だからさ、少し私に考えがあるんだ」
男「ズバリお願いします」
姉「わ、笑わないでよ!」
男「あ、うん」
81:SS速報:2009/11/08(日) 21:29:23.51
姉「お……、お兄ちゃん♪」
男「え?」
男「ね、姉さんどうした? 分かってると思うけど俺は姉さんの兄じ──」
姉「そ、そんなこと分かってるわよ!」
男「……なら?」
姉「明日から私は男のことを『お兄ちゃん』と呼びます」
男「…………」
82:SS速報:2009/11/08(日) 21:30:25.03
姉「まあ分からないと思うけど、騙されたと思って……ね?」
男「まあ……別に俺はいいけど」
姉「きっと変わるはずだよ」
男「?」
姉「あの子との関係も」
男「…………」
姉「……それとね」
84:SS速報:2009/11/08(日) 21:31:26.55
男「それと?」
姉「フフ、ないしょっ」
……………。
信じてみようと思う。
いつも俺の味方になってくれた姉さんを、
ただ純粋に信じてみようと思う。
他の兄妹や姉弟じゃありえないかもしれないけど、
みんなで仲良くやれるそんな日がきっと──
……………。
……………。
87:SS速報:2009/11/08(日) 21:39:35.49
ちょうど良いんで、ここで分岐しようと思います。
妹ルートか姉ルートのどっちがいいか。
>>94までの多数決で
それと題が姉なんで、姉の方に+1します。
88:SS速報:2009/11/08(日) 21:39:40.18
手数料
89:SS速報:2009/11/08(日) 21:39:55.51
いもうと
90:SS速報:2009/11/08(日) 21:40:48.38
姉
91:SS速報:2009/11/08(日) 21:41:40.52
妹子
92:SS速報:2009/11/08(日) 21:43:07.73
姉妹丼はありませんか?
93:SS速報:2009/11/08(日) 21:43:18.24
範馬 勇次郎
94:SS速報:2009/11/08(日) 21:43:41.82
姉
97:SS速報:2009/11/08(日) 21:48:34.69
>>94までですと、半々ですね
その後の繰り上がりで姉ルートってことで一つ
101:SS速報:2009/11/08(日) 22:07:49.19
ガチャン。
男「じゃあ、いってきまーす」
姉「はーい気をつけてね、お兄ちゃん」
誰かに見送られて家を出る幸せは計り知れない。
だが、年上の女性にお兄ちゃんと呼ばれるのは少し照れくさかった。
妹「はっ、きもっ」
男「………うぅ」
妹「何のプレイだよ。やるにしても本当の妹の前でやるこたないだろ」
男「ご、ごもっとです」
102:SS速報:2009/11/08(日) 22:10:11.84
妹「……ッ」
妹「ああーーーもうイライラするぅー! があー!!」
男「お、おいおい、ご近所に迷惑だぞ……」
妹「あ? なんだお前も私にご説教か?」
男「いや……そういうわけじゃないけどさ……」
妹「……ちッ」
妹「………妹にびくびくしやがって……情けなくないのかよ……」
男「え? なんか言った?」
104:SS速報:2009/11/08(日) 22:17:06.74
妹「うっせぇっ! 何も言ってねえよー!」
男「な、なんでそんな怒ってるんだよ……」
妹「ぜんぶ気に入らないんだよあーもう! ううおおおお!」
妹は野獣だった。
妹「アんっ?」
男「……なんでもないです……しくしく」
……………。
……………。
107:SS速報:2009/11/08(日) 22:34:39.88
友人「進歩じゃないか! これはなんてこった!」
男「そうか?」
友人は興奮しているようだった。
数人の女子生徒がこちらを訝しむ目つきで見つめてくる。
友人「いいか、お前はまだことの重大さに気づいてないんだよ!」
友人「絶対的な兄嫌い症候群! 一度嫌われた即ジエンド!」
男「確かにそう言ってたな」
友人「どうだよお前」
男「ん?」
友人「あーもう、このにぶチンが! ほんと俺が変わって欲しいよ!」
男「意味がわかりません」
108:SS速報:2009/11/08(日) 22:35:39.99
友人「うおおおお! いいかっ!」
ばんっ。
あ、また女の子たちに睨まれてるよ……。
友人「何で男、今日は妹と登校してんだよっ!」
男「あっ」
そういえば……そうだった。
一緒に登校するなんて……中学生以来だ。
なんてこった。
友人「ホント羨ましい奴だな。いや、もう既に妬ましいね」
109:SS速報:2009/11/08(日) 22:36:28.61
男「本当にありがとう……いや、ほんとに」
感謝しなければ。
この眼鏡をかけたハンサムボーイに。
友人「は、別に構わんさ……。だが一つだけ」
男「何だ! 俺に出来ることがあれば何でもいいぞ!」
友人「別にそう難しいことじゃないさ」
友人「お前の姉ちゃんの下着のパン……」
友人「──ほごっ!」
男「南無」
……………。
……………。
112:SS速報:2009/11/08(日) 23:02:20.22
夕飯を食べ、姉と妹の口喧嘩がまたあって。
俺は今日もこの部屋の前へやってきた。
こんこん。
男「あ、俺だけどちょっといいかな?」
姉『は、はーい!』
姉『って……うぉおおおおおおお!』
ガタンバタンガタン!
男「ちょ、ど、どうした!?」
姉『うわああ……ちょっとやだあ……きゃああ』
113:SS速報:2009/11/08(日) 23:03:36.26
どうやら中で大変なことが起きているようだ。
家族の中で男は唯一俺だけ。
今こそ俺の本当の出番がやってきたようだ!
男「姉さん! 悪いけど開けるよ!」
姉『えっえぇ……いや、ああってぉ……だめぇえええ』
俺にはそれが助けを呼ぶ声にしか聞こえなかった。
男「失礼しますっ!」
がちゃ。
男「あ、ゴキブリ」
姉「いやあああ……もうやあああああ!!」
……………。
……パンッ。
……………。
115:SS速報:2009/11/08(日) 23:04:29.92
姉「うぅ……死んだ?」
男「イエス、マム」
姉「他にもいないかしら…? 私あの動きだけはほんとやなの」
姉「黒光りしているし、『かさかさ』『かさかさ』って」
姉「うわ……思い出したら吐きそうに……」
男「お、おいおい大丈夫かよ……」
男「とりあえず、死骸は俺がゴミの奥底に入れときます」
姉「ごめん、よろしくお願い……」
男「ういっす了解」
そういって俺は彼女の机にあるティシュを何枚から取ろうとした。
素手で持って行くような勇気はない……。
148:SS速報:2009/11/09(月) 15:29:58.13
あれ……?
姉「あっ、ダメ!」
机の上にはピンクのカバーに包まれたティッシュ箱。
その近くにいつもは見慣れない一つの写真立てがあった。
男「これって……」
姉「ちょっ! ホント見ないで! お願いだから!」
男「そ、そうは言われても」
既に目に入ってしまったものはどうしようもなく。
シンプルな木枠の中には一枚の写真が。
一人の男と姉さんが仲よさげに写っていた。
姉「うぅ……」
150:SS速報:2009/11/09(月) 15:36:31.87
姉「絶対に見られたくなかったのに……」
男「ねぇ」
姉「な、なによ」
男「一つ聞いていい?」
姉「う、うん。覚悟は出来てる」
じゃあ遠慮なく聞こうか。
男「この男だれ?」
姉「あんただよっ!」
バシっ。
……………。
151:SS速報:2009/11/09(月) 15:43:23.59
男「た、叩かなくてもいいじゃん……」
男「しかし、小さいから一見分かんなかった」
姉「それでも自分を見間違えるって……」
男「んー、男はすぐに変わるからなあ」
男「毎日鏡見るたびに誰かと思うよ」
姉「それどんだけよ……」
今は姉さんの腕の中にある写真立て。
そういえば確か──
男「あー! 姉さんが卒業した時に撮ったやつか」
姉「……うぅ」
153:SS速報:2009/11/09(月) 15:53:11.01
四年前。
姉さんが高校を卒業したのを記念に我が家の前で撮った写真だった。
その頃はまだ父の転勤もなく、家族五人揃っていたのを覚えている。
写真は妹が気を利かせて撮ってくれた。
まーあの頃は今のようにヤンキー風味じゃなかったけど……。
男「飾っててくれたんだ」
姉「…………悪い?」
男「いや、別に悪くないよ。逆に嬉しいくらい」
姉「でも変じゃないかな?」
姉「弟とのツーショットを机に飾ってるって……」
男「まあ……普通の姉弟じゃないとは思うけど」
姉「うー……やっぱり」
154:SS速報:2009/11/09(月) 16:06:42.76
姉「家に遊びにきた友達はみんな同じこと言うのよね」
姉「『この隣の人誰?』『えっ……おとうと? うそっ?』」
姉「あまりにも同じ反応だから笑っちゃうわよ」
そう言った姉の顔は笑っているというより、
少し自分を自嘲しているようだった。
確かに彼氏との写真を置くようなボジションだよな。
姉の友達の気持ちが少し分かったような気がした。
でも……
男「それでも俺は嬉しいよ」
姉「……えっ?」
155:SS速報:2009/11/09(月) 16:11:55.21
男「弟冥利に尽きるっていうか……それだけ愛されてるのかなあって」
姉「………ふぇ?」
男「あっ、勿論『愛される』っていうのは家族としてってことだよ!」
姉「も、もちろん、そそそそうよ!」
男「はは、そんなにどもらなくても」
姉「うぅ、うるさい!」
姉「ちょっと不意をつかれただけだわ! ふー……落ち着け私……」
深呼吸をしていた。
男「まあ確かにちょっとは照れるけどね」
男「俺も実は似たようなことしてるし」
姉「!?」
156:SS速報:2009/11/09(月) 16:20:44.53
姉「えええっ!? う、嘘でしょ?!」
姉「嘘、いや、ほんとなのそれ!?」
男「そんなに驚くことかな?」
男「俺の場合は、姉さんと妹と三人で写ってるやつだけど……」
姉「あー……はいはい」
男「ど、どうしたさ?」
姉「いやね……分かってたけどさ」
姉「ふふ、少しでも期待した私が悲しい……」
今度はうなだれていた。
158:SS速報:2009/11/09(月) 16:43:30.37
男「しかし、姉さんにしては感情の起伏が激しいね」
姉「……別にいつもこんな感じよ」
姉「ただ少し普段は表に出さないようにしてるだけ」
それでも今みたいに激しく動揺する姿はあんまり見ることはなかった。
Gの例外を除いてだけど。
男「ちょっと近づいた感じがする」
姉「え、何が?」
男「いつもさ、俺にとっての姉さんは頼れる存在なんだよね」
姉「…………」
159:SS速報:2009/11/09(月) 16:48:32.84
男「それも頼れるだけじゃなくて、超凄すぎる人」
男「姉って思ってても、なんだか同じ人間じゃないような」
男「料理も出来て、勉強も出来て、スタイルは良いし、美人だし」
男「何でも出来る自慢の姉が……姉さんなんだ」
姉「……ッ」
姉「そ、そこまで言われるのはなんか照れる……」
でも、本当のことだった。
俺たちのいつも模範で、憧れで、だけど追いつけなくて。
手を伸ばせばすぐそこにいるのに、同じ舞台には上がれそうもない。
それが……俺の姉。
160:SS速報:2009/11/09(月) 16:49:57.08
男「だからなのかな」
姉「え?」
男「少し、寂しい気もするんだ……」
男「有能な姉さんが俺とかに構ってるのはもったいないような」
姉「そ、そんなこと……」
男「だからさっきは嬉しかった」
姉「…………」
男「何でか分からないけど、動揺した姉さんは新鮮だった」
男「あの一瞬だけ、同じ一緒の舞台に立てたような」
男「まあ実際は違うんだけどさ。それでもね」
姉「男……」
161:SS速報:2009/11/09(月) 16:51:00.95
姉「あのね……わたしさ」
男「ん?」
姉「…………」
姉さんは一度、自分の言おうとしていることを頭の中で整理しているようだった。
少し無言の時間が経った後、彼女はおもむろに口を開く。
姉「私は男が好き」
男「え?」
姉「妹が好き、父さんが好き、母さんが好き」
姉「家族のことが大好きなんだ」
男「うん」
162:SS速報:2009/11/09(月) 16:52:03.25
姉「だからね、いいの」
姉「母さんの代わりに家事をやるのだって、私がやりたいからやってる」
姉「あれはね、自己満足なんだ」
男「そ、そんなことないって!」
姉「ううん、私は家族の役に立ってる──」
姉「そんなただ普通の証が欲しかった、すぐ分かるものでね」
男「…………」
姉「私、母さんにもの凄く憧れてたんだ」
姉「誰にでも好かれて、いつも家族の中心にいた母さん」
姉「だから私も男と一緒かもね」
163:SS速報:2009/11/09(月) 16:52:49.36
姉「追いつきたい追いつきたいって……そんな風に思ってた」
男「姉さん……」
姉「でもね」
姉さんは笑っていた。
それは自分と同じ相手を労るような、そんな笑顔だった。
姉「父さんが転勤するって時に母さんが私にこう言ったんだ」
姉「『もうあなたなら大丈夫』ってね」
男「え?」
初耳だった。
姉「その時に分かった」
164:SS速報:2009/11/09(月) 16:54:12.32
姉「追いつけない、追い越したいって思ってたけど……」
姉「本当はただ認められたかったんだって」
男「認められたい……」
姉「男はどう?」
男「…………」
姉「別に私と男はいつもおなじ舞台に立ってるよ」
姉「ただちょっと、私のほうが先に生まれただけ」
姉「私はね、男」
姉「あなたのこと信頼してるから」
姉「頼りにしてるからさ」
男「あ……」
165:SS速報:2009/11/09(月) 16:57:15.98
姉「妹の件、頑張ろ」
男「う、うん」
……………。
そのあと少し話をして彼女の部屋を出た。
しかし、しばらく経っても胸の動悸は収まらなかった。
あの姉さんの一言。
『あなたのこと信頼してるから』
追い付きたかった。
でも、差は常に離される一方で。
166:SS速報:2009/11/09(月) 16:58:04.47
大学と同時に一人暮らしをしてみたらどうかと、
父さんが姉さんに勧めていたのを半ば諦めの目で見ていた。
結局は父さんの急な転勤でおじゃんになったけど。
俺と姉との差が開いていた事実は変わらない。
そう、変わらないはずだったんだ。
でも。
『頼りにしてるからさ』
俺はその言葉を何度も反芻しながら……
いつの間にか眠りについていた。
……………。
……………。
178:SS速報:2009/11/09(月) 21:25:44.10
──翌日
姉「あー!」
姉「もう、お兄ちゃんったら! ほらっ」
男「えっ?」
姉の指が俺の顔に近づき……
姉「ここ、ご飯粒ついてるよ」
そしてそのまま彼女の口の中へ。
男「あ、ありがと」
姉「ふふ、ほんとだらしないんだから」
案外、まんざらでもなさそうだった。
179:SS速報:2009/11/09(月) 21:26:44.27
妹「…………」
びちょびちょ。
真正面に座る、鋭い眼孔の妹。
動きはコーンフレークに牛乳をかけたまま止まっていた。
あ、溢れてるぞっ!
妹「……ふ」
妹「ふ、はは……」
姉「はーい、お兄ちゃん、あーん♪」
バンッ!
男「ひぃっ」
181:SS速報:2009/11/09(月) 21:29:33.92
姉「もう食事中に何よ。それと牛乳」
妹「良いんだよ! 私は牛乳スープにして食べたいんだよ!」
妹「それより今日もその茶番に付き合わされるのか!」
妹「まあ半分……いや、七割ぐらい譲って私がこれ食うのは仕方ない」
妹「私が頼んだやつが残ってたわけだしな」
姉「自業自得ね」
姉「だけど、 何だよその『お兄ちゃん』って!」
姉「何よ」
180:SS速報:2009/11/09(月) 21:27:27.43
妹「お、おかしいだろ……。何で姉が弟のこと『お兄ちゃん』って」
姉「そういう姉弟も世の中にはいるわ」
いるわけなかった。
妹「くそっ、 ああいえばこういいやがって……」
姉「別に妹に関係ないじゃない」
妹「関係あるっ!」
姉「どこが?」
妹「それ私に対するあてつけなんだろ?」
妹「そうなんだろ、そうって言えよ! 白状しろっ!」
182:SS速報:2009/11/09(月) 21:30:28.31
姉「自意識過剰じゃないの?」
妹「う、嘘付けっ! 私には分かるんだ!」
結構修羅場になっていた。
そろそろ仲裁しといたほうが良いかもしれない。
男「まっ、まあまあ」
妹「うるせっ! お前はひっこんでろカスッ!」
男「うぅ……」
ええ、分かってましたとも……
流れ的に分かってましたけどね……。
183:SS速報:2009/11/09(月) 21:32:29.59
姉「ちょっと、怒りをお兄ちゃんにぶつけないでよ」
妹「だからちげええええええ!!」
姉「ああもううるさいわね」
妹「そいつはお前の弟だよっ! ブラザー!」
姉「お兄ちゃん♪」
妹「うおおおおおおおっ!」
妹「それはーー私のお兄ちゃんだあああああ!」
…………え?
あれ、いまなんて?
189:SS速報:2009/11/09(月) 22:05:12.99
妹「って、あ……」
姉「ぷぷ」
男「妹! いま──」
妹「ち、ちげえよっ! 姉貴につられただけだから!」
妹「だから勘違いすんじゃねえぞクソが!」
男「……そ、そんな……」
姉「ぷはははははははは」
妹「そこっ! すでに笑うの隠しきれてねえよ!」
姉「ふふ、これを笑わずして何を笑うか」
190:SS速報:2009/11/09(月) 22:06:22.07
姉「妹の不幸は蜜の味~ははは」
妹「……く、この女……どんだけ最低だよ……」
姉「そう言いながら今日も先行かないんだね」
妹「……は、何言って──」
妹「……ッ」
姉「いつもならこの時間、既に学校向かってない?」
姉「昨日からやけに出るのが遅いわね、何か理由でも?」
あ、確かに。
191:SS速報:2009/11/09(月) 22:07:28.08
妹「べ、別にちょっとゆっくりしてこうかと思っただけだよ!」
妹「変な意味はねぇからな! ぜーったいぜったい余計なこと言うなよ!」
姉「ふ、ならいいけど」
妹「くっ……」
……………。
こうして今日も俺たち兄妹は一緒に登校したのだった。
ただその間、妹は超不機嫌だったけどさ……ぐすん。
……………。
……………。
200:SS速報:2009/11/09(月) 23:05:19.21
友人「ツンデレ」
男「は……?」
友人「だからそれツンデレだよ」
男「な、ななな、そんな馬鹿な」
友人「まだ分からないのか? じゃあもう一度言ってやる」
そう言って己の机の上に立ち上がった。
そして……
友人「お前の妹はツンデレだよっくそったれえええええ!!」
宣言した、壮絶に宣言した。
う、周りの視線が今日も痛いぜ。
201:SS速報:2009/11/09(月) 23:06:15.57
友人「はあ……どこのエロゲだよ……」
友人「お前みたいなヤツが本当にこの世界にいるなんてな」
友人「俺に変わってくれよ……てか、姉妹を俺にくれ」
男「それは断る」
友人「はー……軽く鬱入る今日この頃です」
しかし、ツンデレってあのツンデレだよな。
本当に妹がそうなんだろうか……。
まだ確信がもてない俺だった。
友人「で、お前どうすんの?」
202:SS速報:2009/11/09(月) 23:07:16.40
男「ん? どうするって?」
友人「だからさ、妹と姉」
男「?」
良く分からなかった。
友人「いいか、今お前はものすごく幸せな状況にいるんだ」
友人「どれくらい凄いかと言うとな、『地球は実は右回転でした』ぐらい凄い」
男「それは凄すぎだろ……」
友人「俺からしたらそうなんだよ。兄嫌いの法則忘れんな」
あれは物理法則じゃないだろ……。
突っ込みどころ満載だった。
203:SS速報:2009/11/09(月) 23:08:19.07
友人「まあいい」
友人「でだ」
男「もう何だよ……」
友人「状況を再確認すんぞ」
友人「お前は今、姉に好かれて妹も満更じゃないみたいだ」
友人「どうする?」
男「どうするって……」
友人「じゃあはっきり言うよ」
友人「フラグ立てるなら、妹と姉のどっち?」
…………。
206:SS速報:2009/11/09(月) 23:12:37.42
男「………姉かな」
二人とも俺にとっては大切な家族には変わりないが、
どちらが気になっているかと問われたら、姉さんを選ばざるを得なかった。
友人「な、なにっ!?」
男「……なんで驚くんだよ……」
友人「いや、この流れならツンデレの妹かと……」
友人「くそっ、せっかくお前が妹選ぶなら、あとは俺が頂いてやろうと思ってたのに……」
男「相手も選ぶ権利あるから」
友人「うぅ……あのわがままボディがお前に蹂躙されるなんて……」
友人「正直うらやましいですッ!!」
きもかった。
……………。
……………。
207:SS速報:2009/11/09(月) 23:26:00.18
わがままボディ懐かしいなwww
251:SS速報:2009/11/10(火) 16:13:59.69
それから、数日が経った。
何も変わらない当たり前の日々が続く中で、
次第に妹とと俺の関係は良好へと進んでいるようだった。
ふとしたきっかけで彼女と離す機会を得て、
普段では分からなかったその心の重荷に触れた。
妹もまたもがいていたのだ。
誰もが素直に生きるのが難しいこの世界。
家族との狭間でただ苦しんでいた。
ずれ。すれ違い。
次第に彼女の純粋な心を真っ暗なものが覆い隠す。
気づいた時には手遅れで。
素直になれない自分を嫌悪しながら、
それでもいいと思ってしまう自分もいる。
252:SS速報:2009/11/10(火) 16:15:34.40
俺はそれを初めて知ったとき、
己の未熟さを痛感した。
理由なくして変化はないのだ。
小さな機微を見逃した俺は、彼女の苦しみに気づくことが出来なかった。
だけど──
これからは違う。
すぐ昔のようにとはいかないけれど、
少しずつでいい。
ほんの少しずつ、仲良かった頃の二人に戻っていけばいいのだ。
そう、長い時間をかけて……。
今日もまた俺は生きる。
……………。
……………。
255:SS速報:2009/11/10(火) 16:57:11.12
男「ふぁー……」
男「うしっ! 今日もまた一日頑張るぞっ」
自分にそう言い聞かせて。
俺は階段を降り、リビングへ入った。
そうだ、まずは朝の挨拶が大事だったな。
よし!
男「姉さん、おはようっ!」
姉「 あーうん、おはよ」
姉「なんか今日はいつもより元気が良いのね」
男「そうなんだ。今日は俺、何でも出来るような気がする」
256:SS速報:2009/11/10(火) 16:58:15.02
姉「ふふ、いいけど羽目外しすぎないようにね」
男「分かってる分かってるって」
俺はそう姉さんに笑いかけながら、目の端で彼女の姿を探した。
妹「…………」
いつもの席で、
どことなく視線を泳がしながら……
妹はちんまりと座っていた。
男「…………」
男「妹」
俺は彼女の名を呼ぶ。
257:SS速報:2009/11/10(火) 16:59:45.62
妹「ふ、ふぇ……?」
俯いた顔が上がり、少し怯えた表情が現れる。
そうだ、そうだった。
昔の妹は、確かいつもこんな様子だった。
何故か守ってやりたくなるような、そんな女の子だったんだ。
でも……
妹「な、なんだよっ! 人の顔を見て、にやにやすんな!」
妹「寝ぼけてんならもう一度顔洗ってこいカスっ!」
258:SS速報:2009/11/10(火) 17:00:46.10
変わらないものなんてない。
人だって日々変わっていく。それに例外はない。
男「あーごめんな」
妹「…………ふんっ」
だけど俺は気づいたんだ。
男「なー妹」
妹「あン?」
男「おはよう」
…………。
259:SS速報:2009/11/10(火) 17:01:56.71
妹「…………」
妹「……あ」
変わらないものなんてないけれど、
でも彼女の本質は、今もなお残っているはずだから。
妹「うぅ……」
妹「あ、ああっ、兄貴……おはよ」
姉「え?」
俺はそう強く心に言い聞かせた。
……………。
……………。
275:SS速報:2009/11/10(火) 21:43:35.19
姉「今日の朝のあれは一体何だったの?」
男「ん、あれって?」
その日の夕食後、俺はまた姉の部屋にいた。
姉は続ける。
姉「ほら、妹」
姉「急に朝の挨拶の返事してるし、『兄貴』って」
男「ああ、そのことか」
姉「私の知らないとこで何かあった?」
男「ん、まあね」
276:SS速報:2009/11/10(火) 21:44:30.05
深くは語らなかった。
妹が姉に劣等感を持っていたという現実は、
彼女の心を少なからず傷つけるだろう。
家族のためになりたいと思ったその善意が、
逆に徒になってしまったなんて……そんな事実は厳しすぎる。
姉「うん? それだけ?」
男「……ああ、ごめん」
姉「えっと……あんまり私には話せないこと?」
男「別にそういうわけじゃないけどさ」
このときばかりは、あまりにも鋭い姉さんが嫌になった。
でも何とか気づかれないようにしないと……。
277:SS速報:2009/11/10(火) 21:45:28.00
男「妹も勝手に話されると嫌かもしれないし……」
男「本人が自分で言えるときまで待ってあげられないかな?」
姉「……んー、良く分かんないけど」
姉「二人の仲が改善したってことでいいの?」
男「うん」
男「すぐには無理かもしれないけど」
男「昔みたいに……仲良くできればいいなって」
姉「そう、なら良かった」
そう言って姉さんはただ笑っていた。
278:SS速報:2009/11/10(火) 21:46:22.15
恐らく内心は感づくものがあったのかもしれない。
だが俺の躊躇う姿を見て、これ以上は聞くまいと判断したのだろう。
あの姉さんのことだ……何も気づかれない訳がない。
それでも今はその気遣いが有り難かった。
姉「ふーん」
姉「じゃあ、もうお兄ちゃんごっこも終わりかあー」
男「あっ……そうか」
姉「ふふ、なに寂しい?」
279:SS速報:2009/11/10(火) 21:47:13.12
男「べ、別にそんなことないさ」
姉「あらまー強がっちゃって……もっと甘えていいんだよ」
男「すでに十分甘やかされてます、はい」
姉「お兄ちゃんもっと甘えて~♪」
男「や、やめいっ!」
姉「やーです♪ ……そらっ!」
瞬間、姉はベットに座っている俺に抱きつく。
男「う、うおっ!」
280:SS速報:2009/11/10(火) 21:48:04.86
姉「ふふふ、離さないぞ~」
姉さんの両腕は俺の身体をがっちりと掴み、
成熟した女性の柔らかい感触が……俺を包み込む。
男「ちょっ」
男「てか当たってる当たってるよっ!」
姉「ん? 何がー?」
男「ちょっそこだめ! くすぐったいって、うははは!」
彼女の顔がごろごろと子猫のように俺の首もとをくすぐる。
姉「ふふふーここかここかー」
男「ぐははははっ! もう、だめ首だけはあっー!」
282:SS速報:2009/11/10(火) 21:48:47.50
既に俺の顔は真っ赤だろう。
下部からわき起こった熱も笑いこける中で薄らいでゆく。
テントが張るような事態はなんとか避けそうだ。
姉「どうだどうだー! うりゃうりゃー」
男「うふひひひひ、もうだめふふはははっ!」
がちゃ。
妹「ちょっとこんな時間に何やっ──」
妹「…………」
283:SS速報:2009/11/10(火) 21:50:00.06
姉「…………うす」
男「ふはっは……は……は………」
妹「おいお前ら正座」
姉・男「「はい……」」
リアルに緊急事態発動。
……………。
その後、誤解した妹を説得するのに
犠牲として両頬を差し出さなければならなかった。
痛い……。
……………。
……………。
285:SS速報:2009/11/10(火) 22:14:21.98
お兄ちゃん、殺していい?
あはっ、お兄ちゃんの中、温かいね。
凄ぉい。もう、こんなにびしょびしょだよ。血管少ないトコ狙って刺したんだけどな。
ねぇ、痛い?もっと痛くしたげよっか?
うわぁ、さすがにお腹は血が一杯出るね。
あ、腸が見えるよ。あたしね、焼き肉とかでホルモンが一番好きなんだぁ。ちょっとだけ貰うね。
へぇー、内臓には痛覚が無いって言うけど、ホントなんだね。つまんない。
あれ?どうしたの、お兄ちゃん?
あっ、横隔膜傷付けちゃったんだ。
呼吸、出来ないの?苦しそう。すごく、かわいいよ
大好き、お兄ちゃん
287:SS速報:2009/11/10(火) 22:52:31.62
なんかすごくgdgdになってしまったので、
この辺で終わろうと思います……。
ここまで駄文に付き合って頂いた方、本当にありがとうございました。
皆さんに幸あらんことを。
291:SS速報:2009/11/10(火) 23:11:57.36
乙
俺は好きだぜ!
俺は好きだぜ!
294:SS速報:2009/11/11(水) 03:00:29.86
乙ー
296:SS速報:2009/11/11(水) 06:03:14.89
乙カレー
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