ラスボス「なんでワシより中ボスの方が人気があるんだ!」
ザコ「はい、もしもし」ガチャッ
ザコ「あ、はい!」
ザコ「えぇと……ラスボス様は、ただいま外出中でして……」
ザコ「はい、はい! 必ず伝えます!」ペコペコ
ザコ「……」ガチャッ
ザコ(これは重大な用件だぞ……! ちゃんと伝えなきゃ……!)ゴクッ…
ラスボス「戻ったぞ」
ザコ「ラスボス様、お帰りなさいませ! 実は先ほど──」
ラスボス「ええい、それどころではない!」
ラスボス「中ボスだ! 中ボスのやつを呼べい!」
ザコ「は、はいっ!」スタタッ
ザコ(なんだなんだ……? えらく機嫌が悪いぞ……!?)
ラスボス「うむ……」ギロッ
中ボス「……?」
中ボス「あの、ご用件は?」
ラスボス「実はな、我々の人気について調べてみたのだ」
ラスボス「この世界ではなく、我々の“外の世界”における人気をな」
中ボス「人気……ですか」
ラスボス「ワシはっ!」バンッ!
ラスボス「少なくとも、悪役の中での人気ナンバーワンはワシだと思っていた」
ラスボス「──なのにどうだ!?」
ラスボス「主人公を操り、ワシらを倒す『プレイヤー』からの意見はこうだったのだ!」
・ラスボスより中ボス戦のが燃えた
・ラスボスの名前忘れた
・中ボスの時は正座したけど、ラスボスの時はしなかった
・このゲームのラスボスって典型的なラスボス(笑)だよな
ラスボス「──と!」
中ボス「はぁ……なるほど」
ラスボス「なぜワシよりキサマ如きの方が人気があるのだ!?」
ラスボス「ワシの方が、キサマより偉く、大きく、強いというのに!」
中ボス「……」
中ボス「そりゃあそうですよ」
ラスボス「なっ!?」
中ボス「なんだったら、お教えしましょうか?」
中ボス「オレの方があなたより人気がある理由を……」
ラスボス「むむ……いいだろう、申してみよ!」
中ボス「必然的に出番も多い」
中ボス「出番が多ければ当然『プレイヤー』の印象にも残ります」
中ボス「印象に残れば、当然人気も出るというわけです」
ラスボス「うむむ……」
中ボス「オレは主人公と幾度も敵対し、単なる敵味方以上の因縁が出来上がっていきます」
中ボス「好敵手、といいかえてもいいかもしれません」
中ボス「主人公よりオレに感情移入してしまう『プレイヤー』も多いでしょうな」
ラスボス「ぐぬぬ……」
ラスボス「し、しかし、強さは……強さはワシの方が上だ!」
ラスボス「なのになんで、キサマの方が強かったとかいわれてしまうのだ!」
中ボス「あいにくですが、それにも明確な理由があるのですよ」
ラスボス「バ、バカなっ!」
中ボス「たしかにあなたとオレで強さを比較したら、あなたの方が強い」
中ボス「体力も攻撃力も防御力も、あなたの方が上だ」
中ボス「覚えている技や術も、あなたの方がずっと多い」
中ボス「しかも、ラストバトルということで準備も万端ですから」
中ボス「あなたをあっさり倒してしまう『プレイヤー』も多いんです」
中ボス「一方、オレと戦う時の主人公はまだまだ未熟だ」
中ボス「ろくな準備もできず、オレと戦うはめになることだってある」
中ボス「だから、体感的にはオレのが強く感じてしまうんですよ」
中ボス「ようは、防寒具を着込んだ-10℃と全裸の0℃、どっちが寒いかという話です」
中ボス「全裸での0℃の方が寒いに決まってますよね?」
中ボス「長年の苦労が報われたって感じですよ、いやホント」
ラスボス「な、な、なんだとォ~!」
ラスボス「ちょいと人気があるからといってつけ上がりおって……」
中ボス「つけ上がる? オレは事実を申し上げてるだけですよ」
中ボス「最後の最後だけ登場して、目的もイマイチ不明瞭で、無駄にでかくて」
中ボス「エンディングとスタッフロールを見るための障害にすぎないアンタが」
中ボス「人気なんか出るわけないでしょう?」
ラスボス「キ、キサマァッ! ほ、ほざきおったな! 抜かしおったな!」
ラスボス「ワシの手足に過ぎん、前座に過ぎん中ボス風情がァ!」
ラスボス「どんなに人気があろうと、しょせんキサマは中間管理職なんだよ!」
中ボス「こっちもよ……アンタみたいなポッと出にラストバトルを取られるのは」
中ボス「我慢ならなかったんだ!」
中ボス「ちょうどいい!」
中ボス「今日ここで! 下剋上して! オレがラスボスになってやる!」
中ボス「中ボスもラスボスもオレがやってやるんだァ!」
ラスボス「なんだとぉ! ワシに反逆するつもりか!」
ラスボス「よかろう……返り討ちにしてやる! キサマなどもういらん!」
ドゴォンッ!
ラスボス「ぬおおおおおおおっ!」
ドゴォッ! メキィッ! ズギャアッ! バゴンッ! ズドォッ!
ザコ(こ、これは……! 予想もしてなかった事態になったぞ……!)
ザコ(おっと、こうしちゃいられない! すぐにあの人を呼んでこないと!)スタタッ
中ボス「オラァァァァァッ!」
ズガァッ! ドボァッ! バキィッ!
ラスボス「ハァ……ハァ……」
中ボス「ハァ……ハァ……」
ザコ「お待ち下さい!」
ラスボス「む!? キサマなどお呼びでないわ!」
中ボス「ザコが出る幕はない! すっこんでろ!」
ザコ「たしかに私の出る幕はないでしょうね」
ザコ「ですが──この人なら出る幕はあるはずです」
ラスボス「キ、キサマは……隠しボスッ!?」
中ボス「なんでこんなところに!」
隠しボス「ザコ君に君たちを止めてくれ、と頼まれて参上したのだよ」
隠しボス「私は『プレイヤー』がクリア後に戦える存在……」
隠しボス「私の実力は、君たちよりもずっと上だ」
隠しボス「さぁ、私の顔に免じて下らない争いは──」
隠しボス「!?」
中ボス「オレはな、ある意味ラスボスよりテメェが気に食わねえんだ!」
中ボス「本編のストーリーに関わるわけでもないのにデカイツラしやがって!」
中ボス「漁夫の利でも狙ってんのか、あぁん!?」
ラスボス「そのとおり!」
ラスボス「キサマのせいで、ワシは『プレイヤー』から通過点扱いされるのだ!」
ラスボス「隠しボスなんだから、永遠に隠れていればよいのだ!」
隠しボス「な、なんだとォ!?」
隠しボス「隠しボスの隠しボスたる強さ、存分に見せつけてくれよう!」
中ボス「来いやァ!」
ラスボス「こうなればキサマも相手してやる!」
隠しボス「ウガアアアアアアアッ!!!」
中ボス「オラァァァァァッ!!!」
ラスボス「ぬおあああああああっ!!!」
ドゴンッ…… ズガンッ…… ズガッ…… ドゴッ…… バキィ……
────
──────
ザコ「……あ、もしもし」
ザコ「ゲームプロデューサーですか?」
ザコ「実は先ほどお電話いただいた件なんですが……」
ザコ「我々のゲームから、外伝として『悪役キャラのスピンオフ作品』を作る件です」
ザコ「実は……主人公候補に挙がっていたラスボス様、中ボス様、そして隠しボス様が」
ザコ「全員共倒れになって、長期入院することになりましてですねぇ~」
ザコ「……あっ、はい! かしこまりました!」
ザコ「では私が主人公になれるということですね! 分かりました!」ペコペコ
ザコ「精一杯がんばります! よろしくお願いします!」ペコペコ
ザコ「……」ガチャッ
ザコ「真の“下剋上”“漁夫の利”ってのはこういうものなんだよ」ニヤッ
END
転載元
ラスボス「なんでワシより中ボスの方が人気があるんだ!」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1431236532/
ラスボス「なんでワシより中ボスの方が人気があるんだ!」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1431236532/
コメント一覧
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- 2015年05月10日 23:55
- DQVのことかな
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- 2015年05月10日 23:58
- ミルドラースさん何やってんすか
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- 2015年05月10日 23:59
- だってミルドラースさん影薄いし…
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- 2015年05月11日 00:01
- ゲマさんはさらに出番増えたしな…
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