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提督「矢矧が好きだ」【艦これ】|エレファント速報:SSまとめブログ

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提督「矢矧が好きだ」【艦これ】

2: ◆7ekwL0V8mo:2015/02/17(火) 21:40:20.41 ID:+jx4k9Xs0

一つの鎮守府に三人の提督っていうのも今じゃ珍しい話じゃない。

増える艦娘と居なくならない深海棲艦。大きくなり続ける鎮守府を一人で管理するのは難しくなってしまった。

「へえ、ここが鎮守府なんだね。可愛い子が多そうだ」

少し軽い感じの彼は艦娘管理を。社交性に長け、一人一人の状態を見極める能力がある。

「おい……私達は深海棲艦を駆逐するために来たんだぞ」

お堅い眼鏡の彼は艦隊指揮を。戦力を把握し、適切に運用して実戦に対応する能力がある。

「案内役との待ち合わせは、ここだよな」

「そのはずだよ。僕が聞いた感じじゃ可愛い子の声だったなぁ」

「なんだそれは……む、アレか」

そして俺は平時業務を。物品管理、事務仕事はできる……ほとんど雑用だ。

そんな俺達の下に来たのは、長く艶のある黒髪をなびかせた一人の少女。

「――お待ちしていました。軽巡矢矧、御三方の案内を務めさせていただきます」

それが、彼女との最初の出会いだった。



3: ◆7ekwL0V8mo:2015/02/17(火) 21:45:14.68 ID:+jx4k9Xs0

着任から、はや数ヶ月。

春の花見も夏の祭りも終えてしまえば、鎮守府も秋に向けて次第に落ち着いていく。

俺達新任提督もそれなりに慣れてくる……頃ではあるんだが。

「提督、これは私のほうで処理してもいいのかしら?」

「ああ、頼むよ」

「分かったわ」

矢矧が黒髪を揺らし、目線を俺から机上に向ければそこで会話は途切れてしまう。仕事中ということもあるけれど、そもそも俺自身の口下手さの問題もあった。

話すのが嫌な訳じゃない。むしろ話したいとすら思うのだけれど。

「……時報ね。もう上がってもいいかしら」

「ああ。お疲れ様」

「ええ、明日もよろしく」

「ああ」

伝えたい言葉は多くても、俺の口から漏れるのは「ああ」の一言ばかり。

……もしも好きだと言えたなら。

日毎に重くなる心は、少しでも救われるのだろうか。



4: ◆7ekwL0V8mo:2015/02/17(火) 21:51:14.81 ID:+jx4k9Xs0

彼女の笑顔は、一度として俺のために向けられたことが無い。

俺が見られるのはいつも、誰かのための笑顔だけだ。

「でさあ、僕がこう言ったら加賀ちゃんが苦笑いなのよ……っと、おーい矢矧ちゃーん!」

「あら、2人ともどうしたの?」

「今からお茶でも、ってね。コイツがぶらぶらしてたからナンパしちゃったよ」

部屋まで押しかけてきたクセに、よく言うよ。

矢矧もそれは分かっているんだろう。困ったように、隣りの彼に笑いかけながら言うんだ。

「もう……ダメよ、迷惑かけたりしたら。ねえ提督?」

「ああ、いい迷惑だよ」

それだけが俺と彼女の交わした会話。

大げさで楽しくて面白い彼との話に花を咲かせる彼女は、それだけで魅力的だ。

俺では、彼女のこんな顔は引きだせない。

「それじゃあね矢矧ちゃん、今度デートする?」

「ふふ、遠慮しておくわ。お疲れ様」

「お疲れ様……ありがとな」

お礼の言葉を受けた後、彼は怪訝な顔をして、すぐに人好きのする笑みを浮かべた。

俺の言葉は間違いなく本心だ。

矢矧の笑顔を見せてくれて、本当にありがとう。



8: ◆7ekwL0V8mo:2015/02/17(火) 21:55:40.71 ID:+jx4k9Xs0

「提督さん! こんにちはっ」

「ああ、阿賀野。どうしたんだ?」

「えー? ご用は無いけど挨拶よ。ほらほら提督さん、こんにちはー」

楽しげな阿賀野の声は、まるで幼稚園の先生のようだ。

反発する心は微塵にもわかず、思わず苦笑しながら子供のように返す。

「こんにちは阿賀野。矢矧なら今日は司令部の方だぞ」

「ええ、知ってるわ。矢矧ったら昨日の夜、遅くまで各陣形の利点について勉強してたもの。あの真面目さんの講義に一生懸命なのね」

「……良い事じゃないか」

ヘタクソな作り笑顔も遅れる返事も、阿賀野にはまったく通じない。

そっと頬に手を添えられて、いつものように優しく言われてしまう。

「提督さん。矢矧はあの真面目提督さんの講義が好きみたい」

「っ……」

「提督さんはどうするの?」

励ますように、叱咤するように。見つめてくる阿賀野の瞳は俺の心を覗き込んでくる。

そして俺はいつもと同じように目を逸らし、同じ答えを返すだけ。

「いいんじゃ、ないか? 向上心があってあの真面目な性格なら十分信頼できるし――」

「提督さん」

ほんの一言で俺の言葉は遮られ、代わりに阿賀野の言葉が響く。

「勇気を出して、ね?」

いつもと同じように彼女の言葉に応えられない。

諦めた阿賀野が困ったように笑うまで、俺達の奇妙な光景は続いていた。



9: ◆7ekwL0V8mo:2015/02/17(火) 22:01:49.98 ID:+jx4k9Xs0

月に一度、俺達三人は艦娘たちの評価をする。練度に作戦指揮能力、他艦娘との交流などから翌月の計画を建てるためだ。

「矢矧に関しては私からは以上だ。この所、彼女の戦術的指揮の向上が著しい。来月は旗艦として一層の練度向上が見込めるだろう」

「ちょっと待った、矢矧は僕の方でも欲しいんだよね。駆逐艦や重巡、戦艦ともしっかり話せる貴重な人材だよ」

自分の畑の仕事をこなせる艦娘は取り合いだ。旗艦としての務めも、艦娘のまとめ係になるのも、重要な仕事だ。

「矢矧の事務処理能力は高い。この所、資材関係がシビアだから調整の上手い彼女がいるとありがたい」

だから、三人で取り合いになる時には。

「とはいえ、俺の方は緊急じゃないな。トラック泊地急襲の大規模作戦が控えている以上、実戦指揮に回ってもらった方がいいか」

俺は後回しだ。例え二人が微妙な表情をしていようとも、俺は身を引かないといけない。

それを二人も分かっているからこそ、矢矧の勤務先はすぐに決まる。

「では矢矧は来月、私の方で預かる。次に酒匂だが」

「あの子は少し心配だね。僕の方で阿賀野型のいない艦隊に馴染ませてみるよ」

会議は淡々と進んでいく。艦娘の数は多く、俺の恋情なんてものに介入されては困るんだ。



10: ◆7ekwL0V8mo:2015/02/17(火) 22:07:29.17 ID:+jx4k9Xs0

その日が矢矧にとって少し特別な日だと知ったのは、阿賀野のお蔭だった。

「よければ何かあげてみて? 多分、喜んでくれるから」

何がいいだろう。悩んで悩んで、雷に頼っていいのよ! と言われながらも考えた。

ふと、秘書艦になって貰った数日の間の事を思い出す。


『どうにも借り物のペンは使いにくいわね……』

『自分のペンとか万年筆は持たないのか?』

『買おうと思ったことはあるけど、なかなかね。あった方がいいんでしょうけど』

『そうか』


万年筆。思いついてみればなるほど、彼女の雰囲気にも似合っている気がした。

休みの日に街に出ては文具屋を訪ね、少し高めの物を探した。まるで少年のようだったけれど、高鳴る胸も、案外悪くない。

そうして見つけた藍色のシャープなシルエットの万年筆。包んで貰うだけでも内心紅潮しながら、その日を待った。



11: ◆7ekwL0V8mo:2015/02/17(火) 22:11:17.51 ID target="_blank" href="http://elephant.2chblog.jp/archives/52096208.html">【艦これ】「私は深い海の底から貴方を想い続ける」
  • 提督「……」加賀「……」
  • 提督「榛名をいじめようと思う」
  • 夕張「提督の夜のデータ」
  • 青葉「なになに、なにが聞きたいんですか?」提督「青葉のこと」
  • 大井「ちっ、なんて指揮……」提督「今なんつったオイ」
  • 提督「酒でも飲ませてみるか」
  • 吹雪「司令官、中はダメって言ったじゃないですか……」
  • 【艦これ】後藤喜一「はあ……私が提督、ですか……?」【パトレイバー】
  • 提督「うちの秘書艦夕雲さん」
  • ってからだった。

    「私も……好きよ」

    言葉にしてしまえば一秒で足りる言葉。けれど今までは、いつまで経っても喉から登って来なかったその言葉。

    私の一番言いたかった言葉で――一番、欲しかった言葉。

    「ムードが無いと思うのだけれど?」

    「……悪い」

    見つめ合うわけでもなく、二人っきりの場所でもない。人混みの中で歩きながらなんて、きっと最低に近いシチュエーションのはず。

    それでも、自分の手の平に感じる彼の手の平の熱に、緩んでしまう頬を抑えることはできない。

    だから、軽口で誤魔化してしまおう。そして――。

    「帰ったら阿賀野姉さん達に報告するから。後で怒られてちょうだい」

    「それは困ったな……分かった。明日は平身低頭で業務に励むさ」

    少しだけ。頭を彼の肩に乗せるくらいは、甘えてみてもいいわよね?



    174: ◆7ekwL0V8mo:2015/05/10(日) 20:03:34.97 ID:W4uBlZHh0

    ここまでで。長い間空けてしまって申し訳ありませんでした。
    これで完結とさせていただこうと思います。ありがとうございました。



    転載元
    提督「矢矧が好きだ」【艦これ】
    http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424176787/

    はじめに

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    ありがとうございます(`・ω・´)

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