戻る

このページは以下URLのキャッシュです
http://japanese.engadget.com/2015/05/10/gps-grid/?ncid=rss_truncated


センチ単位の精密GPSをモバイルで実現する『GRID』、サムスンが製品化へ - Engadget Japanese


米テキサス大学オースティン校の研究者グループが、モバイル機器でセンチメートル単位の精密なGPS測位を可能にするレシーバ 『GRID』を発表しました。







一般的なモバイル機器用GPSの精度はせいぜい数メートルで、地図に現在地を表示しても通りのどちら側に居るのか分からなかったり、WiFiアクセスポイントなど他の手段を併用してようやく「だいたいこの辺り」まで絞り込めるのが現状です。

米国テキサス大学オースティン校Department of Aerospace Engineering and Engineering Mechanicsの研究者 Todd Humphreys 氏率いるチームが発表したのは、一般的なモバイル機器と同等の安価なアンテナを使いつつ、ソフトウェアの改良で測位精度を従来の約100倍にあたるセンチメートル単位に向上させたGPS受信機『GRID』。

スマートフォンなどのGPS精度が一般にメートル単位なのはGPSシステムの原理的な限界ではなくアンテナ側やソフトウェアの制約によるもので、業務用や研究用途にはもっと大型で高価なアンテナを使った高精度なGPS受信機がすでに存在しています。

一方、今回 Humphreys氏らが発表した『GRID』は一般的なモバイル機器に使われるような安価なアンテナで『搬送波位相測定』をおこない、ソフトウェア側で建物による反射などのエラーも訂正し高い精度を実現する点が意義とされています。



センチ単位で絶対位置が掴めることの利点のひとつは、三次元座標だけでなく機器の傾きや回転など方向(オリエンテーション)も取得できること。ハンフリーズ氏はGRIDの活用例として、VRヘッドセットに搭載して屋外でも着用者の動きや位置に同期した仮想現実や拡張現実の実現を挙げています。

上の動画はVRヘッドセットとGRIDを使い、頭部の位置をリアルタイムに測位するデモ。その場で動かずに飛び跳ねたり、のけぞったりして頭を動かすだけで測定結果が追従する様子、何メートルも歩くことなくGPSをポインタのように使い字を書いてみせる様子が示されています。

現在のGRIDはモバイル機器で動いているわけではなく、「モバイル機器と同様の」安価なアンテナと、外部のプロセッサを使っています。開発者によれば、いずれ携帯電話のプロセッサでも動作可能とのこと。

(デモに使われているサムスンのVRヘッドセットGear VRでは傾きや加速度を取得できるものの、頭部位置のトラッキングには本来対応していません。VRヘッドセットの本命と目される Oculus Rift は着用者の頭の位置をトラッキングできるものの、ヘッドセットのLEDを外部のカメラで撮影する方式のため、カメラで捉えられる比較的狭い範囲でしか認識できない制約があります。)


そのほか応用の可能性として挙げられるのは、ドローンやロボットなどの精度向上(配達ドローンが正確な位置に荷物を置いてゆく)、自動運転車やアシストの安全性向上(視界が通っていなくても、自動車どうしが正確な位置をお互いに認識してアクシデントを減らす)、モバイル機器や小型ドローンなどによる精緻な3D地図の作成など。


一方弱点や制約としては、GRIDでは高い建物のあいだなど従来のGPS受信機で精度が落ちる場面でのエラー訂正も向上しているものの、原理的にはGPSそのものであるため、屋内や地下などGPS衛星からの電波が全く届かない場所ではやはり使えません。

またロボットの自律制御などには、地図にない障害物を認識するためLIDAR(レーザー)やカメラ、超音波などによるセンシングは引き続き必要になります。しかしGPSがセンチ単位で信用できるようになれば、複数方式の併用にも大きなインパクトが期待できます。

Humphreys氏らはGRIDの研究成果を GPS World誌で発表済み。また事業化を目指してスタートアップ企業 Radiosense を設立し、すでにサムスンとの協業で従来のスマートフォンやタブレットなどに取り付けるアクセサリの開発を進めています。アクセサリの商品化時期や価格、あるいはGRIDレシーバー内蔵モバイル機器の発売予定などはまだ分かっていません。
センチ単位の精密GPSをモバイルで実現する『GRID』、サムスンが製品化へ

0 コメント