転載元:お嬢様「経営!ダンジョンマイスター!!」
お嬢様「よーし!みんな集合だー!!私から直々に話がある!!」
オーク娘「うにゃー」
メイド「お茶が入りましたわお嬢様」
お嬢様「うむ!それでだな皆の衆よ……」
オーク娘「あ、今日宝くじの当選発表の日なのにゃ。新聞新聞……」
メイド「おや、茶柱が立っていますわ。吉兆ですわお嬢様」
お嬢様「話を逸らすな貴様らーーーーーーーーー!!」
お嬢様「いいか!!我々の現状を忘れたワケではあるまいな!!」
オーク娘「うにゃ?なんか特別な事でもあったかにゃ?」
お嬢様「……活動資金が底を付きました」ズーン
メイド「気を落とさないでくださいましお嬢様。実家に帰ればお金など……」
お嬢様「うるしゃーい!!なんだこの状況!!昨日までちゃんと働いていたはずなのに!!」
オーク娘「正当な報酬も貰っていたはずだにゃ」
メイド「はいお嬢様。しかし今はこうして苦肉の策として洞窟の中で野宿ですわ」
オーク娘「近所の岬に住むお婆さんから教えてもらった場所にゃ、静かでいい所にゃ」
お嬢様「そもそもここにお宝があると聞いて来たのにそれも見つからず……チクショーーーーーー!!」ダンダンダンッ!!
オーク娘「まーそう焦らずに、今まで通りのんびりするにゃ。はいお菓子」
お嬢様「わーい!……って誤魔化すな!!貴様ら今まで我々が行ってきたここ三日の活動内容を思い出してみろ!!」
オーク娘「えっと、三日前は……何だったかにゃ?」
メイド「町で清掃業者のバイトで大掃除ですわ」
オーク娘「それで結構お金入ったにゃ」
お嬢様「二日目!!」
オーク娘「んー……何だったかにゃ?」
メイド「宅配業者のお手伝いで配達していましたわ」
オーク娘「それでさらにお金が入ったにゃ」
お嬢様「昨日!!」
オーク娘「それは覚えているにゃ!露店を開いて食べ物を売り歩いていたにゃ!」
メイド「ガス爆発に巻き込まれ全て消し飛びましたわ」
お嬢様「……」
お嬢様「……」ジワッ
メイド「お嬢様の泣き顔が可愛いですわ」
オーク娘「慰めろよ」
お嬢様「嘆かわしい!なんと嘆かわしい事か!!世の人々はこんなにも頑張っている我々に冷たい視線を浴びせるだけで誰も手を差し出そうともしなかった!」
メイド「御労しいお嬢様。お嬢様を蔑ろにするとはあの町の連中め……ッ!!」
オーク娘「ボス、爆発の後に飴ちゃん貰って頭撫でられて慰められていたにゃ」
お嬢様「奴ら私を子ども扱いしおってーーーーーーー!!」ジタバタ
オーク娘「そこ?」
メイド「私のお嬢様に気安く触りやがってあの町ぶっ壊してやろうかァ!?ああァン!?」
オーク娘「何だこの……何だ?」
お嬢様「くっ……そ、それでこれからの方針だが」
オーク娘「うにゅ?うにゃにゃ?」
メイド「お嬢様のありがたいお話が始まるというのに、その臭い口を閉じろメスブタ」
オーク娘「私の口臭はミント味にゃ!!それよりコレを見てみるにゃ!」
メイド「(味……?)で、何ですか新聞なんて指さして。貴女の役にも立たないようなそんな行動で飯が食えますか、さぁお嬢様そんな事より麗しきその声で私にどうか罵……いえ、ご命令を」
お嬢様「んー?ん!?」
オーク娘「なんか宝くじの数字が完全一致しているにゃ。これどれだけお金がもらえるんだにゃ?」
メイド「」
――――――
―――
―
お嬢様「だーっはっはっは!大金持ちなのだーッ!」
メイド「やりましたわお嬢様」
オーク娘「私の買った宝くじが当たったのに何で取り上げられているにゃ」
メイド「黙れ醜悪生物。お前が我々の活動資金から着服して買ったもんだろ、文句を言うな」
オーク娘「違うにゃ、月のお小遣いだにゃ……」グスン
お嬢様「なに安心しろ!お前へのお小遣いはしばらく弾ませてもらう事にする!何と言ってもお前の手柄なのだから!」
オーク娘「うにゃー!」パァァ
メイド「チッ、私からお嬢様を事あるごとに奪いやがってコイツ……」ボソッ
お嬢様「それで、この金を使って少々やってみたいことがあるのだが」
オーク娘「うにゃ?」
メイド「それは構いませんわお嬢様。そのお金は 全 て お嬢様のものなのですから。お菓子を買うなり贅沢するなりどうぞご自由に……」
お嬢様「馬鹿者!私は金持ちになる為に家を飛び出してきたわけではないのではない!私が一人で生活が出来る事を実家に知らしめる為にために大金が必要なのだ!何よりいい考えがある!」
メイド「し、失礼しました……と、申しますと?」
お嬢様「うむ!この金を元手に商売でも始めようと思ってな!」
メイド「聡明ですわお嬢様。さらに増やしていこうという算段ですわね」
オーク娘「商売にゃ?というと定食屋さんとか?パスタ売るにゃ?」
お嬢様「何でパスタオンリーなんだよ。ともかく、チマチマするより高収入の物を一発当てようと思っている!」
メイド「それはいい考えですわお嬢様。具体的には……」
オーク娘(ダメなパターンな気がするにゃ)
お嬢様「クックック……既に手筈は整っている!!」
メイド「流石ですわお嬢様」
お嬢様「偶然にも我々に協力してくれると申し出てくれた人材がいるのだ!では来てくれ!かむひあー!」
商人「はいはーい!ありがとうございます、通りすがりの旅商人の者でーす。以後、お見知りおきを」
オーク娘「着物着た犬の獣人にゃ。東洋人とはまた珍しい」
商人「狼です。そこはお間違えなく」
メイド「それはどうでもいい話ですわ。それで貴女、どうして我々に接触を?」
商人「いやぁ、そこのお嬢さんがとても凛々しくも美しかったもので、高貴な方だとお見受けしましてね?」
商人「そこで!まぁ私のちっぽけですが質のいい商品をもしかしたら有効活用してくれるのではないかと踏んだわけですよ!!」
お嬢様「フフン!そうかそうか、私から出るオーラは隠しきれなかったという訳か!」
メイド「眩しいですわお嬢様。この女性も見る目があるようで、ウフフフフフフ」
商人(ホントは換金所から大金もって出てくるのをたまたま見てただけですけどね。いやー楽な商売できそうだなオイ)
お嬢様「でだ、商人さん。今の私に相応しいものを売ってくれるとのことだが、早速見せてくれぃ!」
商人「はい!そちら方の要望にお応えして、一発ガツンと収入が見込めるツールをご用意いたしました!それがこちら……」ゴソゴソ
商人「お手軽簡単ダンジョン製作キットー!」濁声
お嬢様「おお!いかにもそれっぽい!!」
オーク娘「ダンジョン?」
メイド「製作キット?何を目的としてそんなものを……」
商人「上がる税収減る収入、そんな厳しい世の中だから、当ててみようか一攫千金!」
商人「夢見る少女じゃいられない、食っていくには元手が必要!そんな悩みを解決してくれる逸品がコイツという訳なのです!」
お嬢様「そ、それでそれで!どうやって使うのだ!?」ワクワク
メイド「期待に胸を膨らませるお嬢様……ああ、可愛いですわお嬢様」
商人「使い方は簡単、今ここにいる洞窟に設置して……よっこらセット。スイッチを押すだけ!!」ブイーン
オーク娘「うみみゃあああ!?なんか辺りが歪み始めたにゃ!!」
商人「洞窟を異界化させますので悪しからず」
メイド「地味にとんでもない事をしてますね」
お嬢様「おお、なんか広くなったのだ」
商人「擬似的に作り出したとはいえ、ダンジョンは発生した時点で誰の所有物でもありません。ここが誰かの所有地という訳ではない限り、冒険者ギルドに書類を提出すればすぐにダンジョンとして運営できるようになりますよ」
メイド「う、運営!?」
オーク娘「にゃ!?ダンジョンって誰かが開いてるものなのかにゃ!?」
商人「はっはー、お客さん知りませんね?今のご時世そんな危険な天然ものを国が放置しているワケないじゃないですか。冒険者ギルドとグルになって冒険者たちを誘き寄せるエサにしてるんですよ、こういうのは」
商人「そうすりゃ町の活性化にも繋がりますし、人の流れや物品の流れも容易に操作出来ますからねぇ」
メイド「あ、あまり聞きたい情報ではありませんでしたね……」
オーク娘「世界って怖いにゃ……」
お嬢様「うおー!すっげー!」
オーク娘「ボス!こっちに何かあるにゃ!」
商人「HAHAHA、気に入ってもらえたようで何よりです」
メイド「……それで、おいくらでしょうか」
商人「まぁ本体価格はザッとこんなもんで」カタカタ チーン
メイド「ンな!?足元見ている訳ではないでしょうね?」
商人「そーんな怖い顔しないでくださいよ。今回サービスで80%オフとお菓子つけますらかー、ホラホラ。ドーンと買っちゃってくださいな」
メイド「胡散臭い値引きですわね」
商人「……維持費も馬鹿にならない上に中身ほぼ空っぽのオプション別売りなのに誰がこんなもん通常価格で買うんですか。私もとっとと掃きたいんですよコレ」
メイド「ああ、そういう……」
メイド「しかし、それなら購入するのを渋ってしまいますわね」
商人「そう言わずに!ダンジョン経営は当てたら以後の収入は爆発的ですし、名のある冒険者さえ釣れれば一気に知名度も上がります。なんなら追加料金払って頂ければサクラも用意して……」
メイド「貴女、自分でコレを使わないのですか?」
商人「私は一攫千金当てるよりも、レアなアイテムを地道に売り買いしている方が性に合ってるので」
メイド「……」ジー
商人「そ、そんな目で見ないでくださいよー、アッハッハ」
お嬢様「ねーねーコレ買おうー?」
メイド「お、お嬢様!?」
商人「ほーらー、お宅のお嬢さんもそう言ってますしね?今ならリンゴ飴も付いちゃいますよー!」
お嬢様「わーい!」
メイド「ハァ……分かりました。資金もまだ余裕がありますし、お嬢様が喜ぶならそれで」
商人「毎度アリー!んじゃあここに手続きのサインを」
オーク娘「ボスー何食べてるにゃ?」
お嬢様「リンゴ飴ー。お前の分もあるぞー」
オーク娘「わーい!……じゃなくて見てみるにゃ!宝箱にゃ!」
お嬢様「おお!こんなものまで付いてくるのか!」
商人「おんや?異空間を作り出すだけだった気がしたんですがねぇ。前のコレの所有者の忘れ物ですかね?」
メイド「待て中古かよオイ」
オーク娘「早速開けてみるにゃ!」
お嬢様「ワクワクドキドキ……」
ボフン
オーク娘「うみみゃ!?」
お嬢様「グヴォッフォ!?」
メイド「お嬢様ああああああああああああああああ!?テメェなに晒すド腐れオーク!?お嬢様を傷物にする気かボケェ!!」
オーク娘「私のせいじゃないにゃ!宝箱の罠にゃ!!つーか私が一番の被害者だにゃ!?」
商人(!)
お嬢様「ケホッケホ……酷い目にあったのだ」
メイド「ええい処分ですわ処分!!こんなもの焼き捨ててしまいなさい!!」
オーク娘「えー、勿体ないにゃ」
メイド「ボケカスアホんだらぁ!!そんな事お嬢様が許す訳ねぇだろミミクソォ!!」
お嬢様「そうだな、釣った冒険者達に対してのトラップも必要だ。これも有効活用させてもらうとしよう」
メイド「仰せのままにお嬢様」ニコッ
オーク娘「何だこの扱いの差は」
商人「よっぽどでしたらそちら、私が引き取りましょうか?もう少し良い物と交換も出来ますが」
お嬢様「いいや!私に一杯食わせた罠箱だ!私が使ってやらんで誰が使うというのだ!」
メイド「寛大ですわお嬢様」
商人「うーん……ま、いいでしょう。了解です、それなら大切に扱ってください。ともかく今日は私は失礼しますね」
お嬢様「もう行ってしまうのか?」
商人「私も忙しい身ですのでねぇ、今後の商売の仕入れや弱みやなんたらや。色々と準備が必要になると思いますので。あ、これ私の携帯の電話番号です。何かあったら連絡ください」
メイド「はいどうも」
商人「それじゃあまた近いうちにー!」スタコラサッサ
お嬢様「行っちゃったな」
お嬢様「さーて!それでは手続きをしてダンジョンの経営を開始するとするぞ!」
メイド「英明ですわお嬢様。おいそこのオーク、お嬢様と私は冒険者ギルドへ行くのでとっとと馬車を用意してきなさい」
オーク娘「へいへーい、分かったにゃ用意してくりゃいいんだろもう」
お嬢様「フフフ、お宝に釣られた馬鹿な冒険者共よ……我が術中にはまるがいい!!」
メイド「勇ましいですわお嬢様」
お嬢様「そう!このダンジョンに数々の仕掛けに手も足も……仕掛け……釣るお宝……」
メイド「……あっ」
オーク娘「うにゃ?」
お嬢様「……」
お嬢様「そんなものどこにあるというのだあああああああーーーーーーーーーーーー!!?」
――――――
―――
―
数日後
商人「やーやー、まーたご指名いただいて光栄です」ニヨニヨ
メイド「テメェ始めからそのつもりだったろ」
商人「ええまぁ、先にもちゃーんと"オプション有り"という種の事を貴女に伝えたハズですが」
お嬢様「そうなのか?」
メイド「ぐっ、サラリと流れた話でしたので……不覚ッ!」
オーク娘「それより、どうして呼び出してから来るまで時間がかかったにゃ?」
お嬢様「そうだぞ、私が電話したのはあの後すぐだったのだぞ」
商人「こちらも色々と準備がありましてねぇ。ダンジョンのオブジェクトなんてそうそう扱ってませんので」
メイド「後から仕入れたのかよオイ」
お嬢様「それでどんなものがあるのだ!見せてくれ!」
商人「ほいほい、例えばこんなのですね。ライトアップ松明ー!」
メイド「……松明は元々ライトアップ代物でなくて?」
商人「ふふん、そんじょそこらの松明と一緒にしてもらっちゃあ困りますねぇ奥さん!」
オーク娘「じゃあ何が違うにゃ」
商人「ダンジョンの通路内って場所にもよりますが、まぁ基本的に暗くて狭くて進みづらい!これが何を意味するか分かりますか?」
お嬢様「?」
メイド「さぁ?そんなものなのではないですか?」
商人「分かってないですねぇ。落ちるんですよ!」
オーク娘「なにがにゃ?」
商人「客入りの回転数が」
メイド「身も蓋も無い事を言いますね」
お嬢様「まぁ確かにヒトが多く出入りするのは重要だが……」
オーク娘「あからさまに作られた感じがするにゃ。流石に私でも変だって気が付くにゃ」
商人「商売する上で客の出入りは計算に入れておいてください。とにかく今はお金が欲しい時期!変な拘りは破産に直結ですよ!」
商人「不自然だと思われない程度に散漫させておけばいいんですよ。ほら洞窟に掛けてあっても不自然じゃないナチュラルタイプ!20本セットでお安くしておきますから」
お嬢様「もっとこう罠とかを期待していたのだが」
商人「よくぞ気が付きました!!そんな希望もあるだろうと思いましてこんなものもご用意いたしました!!」
お嬢様「うおお!!」
オーク娘「こ、これは!!」
商人「振り子式ギロチン」
お嬢様「まって」
商人「何ですか、こういうの望んでたんでしょう?ほーら、こんなキュウリもスパンッと!」スパンッ!!
お嬢様「ダメだろ!?死人が出るぞ!?」
商人「ごっこ遊びでダンジョン経営出来ると思うなよ!!そんなんで世界を取れると思うなーッ!!」
お嬢様「取らねぇよ!?いや他にもっとあるだろ!?何で突然殺意に満ち溢れたもの出すかな!?」
商人「ダンジョンでの取得物は基本的に見つけた者勝ちになるんですよ。なのでダンジョン経営での利益は冒険者に追剥かけるか副収入かのどっちかになるんですよ」
メイド「何と合理的な事か」
お嬢様「納得するなよ!?流石に殺生は認めないぞ!?」
メイド「とのことです、もっとマイルドなのはございませんか?」
商人「まー私も血なまぐさい物は勘弁被りたいので一種のジョークですよ、あんまり死者を出すと国に目を付けられますからねぇ」
お嬢様「だったらやめろよ!?」
……
商人「お買い上げありがとうございましたー☆」
メイド「ま、また出費を……」
お嬢様「必要経費として割り切るのだ!」
オーク娘「まだまだお金はタップリあるにゃ!」
商人「まーダンジョンとしては一応形にはなった所でしょうか」
メイド「してやられた感がありますが……」
商人「今後冒険者の出入りが増えるにあたって物足りなさも出てくるでしょう。その時はまた私を呼んでください」
お嬢様「ああ!また頼むのだ!」
商人「ではではー」
お嬢様「フッフッフ!内装の準備も整った、冒険者ギルドに届けでも出した、適当なアイテムも買い足してダンジョンにばら撒いてやった!さぁ来たれ冒険者共!その身朽ち堕ち我が糧となるがよい!」
メイド「勇猛ですわお嬢様」
オーク娘「流石ボスだにゃ!それじゃあそろそろ外に出て様子を見守るにゃ」
お嬢様「え?」
メイド「は?」
オーク娘「ん?」
お嬢様「いや、我々の拠点はここだぞ?」
メイド「監視も兼ねなければなりませんし」
オーク娘「こんなダンジョンのど真ん中に居たら魔物だと間違われて冒険者から襲われるにゃ。下手すりゃ適当な理由付けてボコッてきそうにゃ。冒険者とはそういうものにゃ」
お嬢様「……」
メイド「……」
お嬢様「管理部屋とか無いの?」
メイド「ありませんわお嬢様」
お嬢様「ど、どどどどどどうしよう!このままでは我々が討伐されてしまうではないか!」アワアワ
メイド「こんな時こそ平常心ですわお嬢様、まだこのダンジョンの存在は知られてはいないハズ。正式にここの存在を知られるにはまだ時間が必要です、今からゆっくり脱出すれば何の問題もありませんわ」
「お、ここが新しく発見されたダンジョンか」
「一角千金狙ってきたが、どんな宝が眠っているのやら」
「フフフ、腕が鳴るわ!!」
オーク娘「にゃあーーーー!!冒険者がゾロゾロ入ってきたにゃー!!」
メイド「」
お嬢様「もうダメだぁ……お終いだぁ……勝てる訳がない……」
ピロン♪
お嬢様「ん?」
―case1・冒険者を撃退せよ―
お嬢様「ファ!?」
オーク娘「なんだにゃこの表記は!」
メイド「我々の頭上に浮かび上がりましたわね」
商人『お、繋がった繋がった』ザザー
オーク娘「そして突然の通信にゃ」
お嬢様「お、おい商人さん!これは一体何なのだ!?」
商人「まぁまぁ落ち着いて。軽ーいゲームですよ」
お嬢様「ゲーム?」
商人『このダンジョンキット、まぁ知っての通りマジックアイテムの一種なのですが』
商人『侵入してきた冒険者に合わせて、製作者側が行えるミッションが発生するんですよ』
メイド「また難儀な……」
商人『ダンジョン内を駆けずり回って冒険者たちの身ぐるみを剥いでやってください。彼らもそういう事承知でこの職業やってますし』
お嬢様「そ、そうは言われてもだな」
商人『大丈夫大丈夫!内部の事については貴方達に理がありますし、力で叶わなくとも仕掛けられたトラップの数々で応戦してやってください』
商人『それに、ミッションをクリアすればダンジョンに色んな機能が追加されていったりするのでなるべく消化してくのをお勧めしますよ』
オーク娘「本当にゲームみたいだにゃ」
お嬢様「くっ!こうなったらやってやる!二人とも!明日の生活がかかっている以上迷ってはいられぬぞ!」
メイド「承知いたしましたわお嬢様。例え日の中水の中お嬢様のスカートの中、どこまでもお供いたしますわ」
オーク娘「にゃ!!こんなところで潰れたくはないのにゃ!何とかして乗り切って見せるのにゃ!」
「ん?おーいそこのヒト達ー」
お嬢様「く、来るなら来い!相手になってやろるぞ!」
オーク娘「やろるぞー!」
「(やろるぞ?)ああいや、ひょっとして同業者?」
お嬢様「へ?」
「私達、ここのダンジョンの噂を聞きつけていち早く来たんだけれど」
「一番乗りだと思ったら他の冒険者が先に来ていたとはな」
「新しく発見された場所だから、まだ踏破もされていないと思ったんだがなぁ」
お嬢様「ん?あれ?」
メイド(お嬢様!ここは話を合わせますわよ!彼らは私達の事を冒険者だと思っております!)
お嬢様(お、おう!つまりこのまま油断させて罠に嵌めてしまえばいいという事だな!)
メイド(鋭敏ですわお嬢様。ではさっそく……)
オーク娘「あの部屋に沢山罠があるにゃ!行くんだったらあの部屋からの方がいいにゃ!」
お嬢様「」
メイド「」
メイド「テメェこの雌豚ァ!!何抜かしてやがる手筈と違うだろゴルァ!!」ギリギリ
オーク娘「はにゃ!?罠がある部屋に連れていくんじゃないのかにゃ!?」
お嬢様「何でそんな事を口に出した!?言え!!」
「お、あっちは罠部屋なのかい?」
「ありがとう、警戒して進めるよ」
「ええ、助かるわ。開けた場所に罠部屋が設置されているという事は、そこにお宝があるかもしれないって事だし」
メイド「……」
オーク娘「……誘導出来たにゃ」ドヤッ
お嬢様「お前そこまで考えて……」
メイド「ワケないですわお嬢様」
お嬢様「ともかく結果オーライというやつだ。それよりも、あそこの部屋にはどんな罠が仕掛けてある?」ヒソヒソ
メイド「罠の配置は全てアイツに一任したので私には……オイ、ちゃんと作動するんだろうな?」
オーク娘「私は工作の成績だけは良かったにゃ!大丈夫にゃ、問題にゃい!」
メイド「お遊戯でやってんじゃねぇんだよこっちは……」
「部屋が見えてきた」
「ん、随分と明るいな」
「怪しいわね……警戒しましょう」
オーク娘(見るにゃ!!この誰もが引っかかるような渾身の罠の配置を!!)
「……」
「……」
「……」
メイド「……バナナですわ」
お嬢様「バナナが部屋の中央に吊るしてあるな」
オーク娘「むっふん」ドヤァァ
オーク娘(誰もがあのバナナに目を向けるにゃ。釘付けにゃ!!そしてバナナを中心に罠が作動するにゃ!!)
お嬢様「……」
メイド「ここでコイツをあのバナナのある場所まで投げ飛ばせば罠が全始動してコイツを始末出来るのでしょうか」
オーク娘「酷い!?」
「あ、明らかに……何だ」
「このダンジョン踏破はそう難しく無さそうだな……」
「と、ともかくバナナは避けて行きましょうか」
お嬢様「全てにおいて後手後手だよ!?どうすんのせっかく用意したお宝持ってかれちゃうよ!?」
オーク娘「大丈夫だにゃー」
「しかし、バナナを中央に置いてそこを重点的に松明でライトアップって」
「しかも妙に部屋が広いし。まぁおかげで回り道が出来るんだけど」
「アッハッハ!案外バナナ祭る為に作ったダンジョンかもな!その名もゴリラのダンジy」ズボッ
「!?」
「え?何!?」
メイド「!?」
「あ、穴だ!!落とし穴だ!!」
「そ、そんな!?何でこんな隅っこの方に!?」
「先に進むのは不味い!!一旦引き返……うわああああああああああああああ!!」ズドンッ!!
「あ、アレーーーーーーーーーーーン!!」
お嬢様「引き返した瞬間壁があのヒト押し出したぞ!?」
メイド「あ、あれではしばらく立ち上がれませんわ」
「ぐッ!お、俺の事は気にするな……に、逃げるんだァ……」ガクッ
「クッ!後で必ず助けに来るから!!」
パッ
お嬢様「ファ!?」
メイド「今度は何ですの!?」
「あ、明かりが消えて……ッ!」
お嬢様「何も見えないのだ!」ウルウル
メイド「お嬢様、私にしっかり捕まっていてください!何が起こるか見当もつきませんわ!!」
ズガンッ
ドサッ
お嬢様「ヒィィ!!」
オーク娘「いっちょ上がりにゃ」
メイド「はい!?」
オーク娘「今明かりを点けるにゃ」パッ
「」
お嬢様「し、死んでいる!」
メイド「死んでいませんわお嬢様」
オーク娘「峰内ちにゃ、命に別状はないにゃ」モグモグ
メイド「こんな時になにを食ってんだよテメェは」
お嬢様「一体何が起こったのだ?」
オーク娘「中央のバナナに気を逸らせて置いて部屋の隅にいくつか落とし穴を設置しておいたにゃ」
オーク娘「同じルートで引き返した場合に壁のプッシュトラップが発動して他の落とし穴に落下させる手筈だったけどこっちは失敗にゃ。気絶したから良かったけど」
メイド「……部屋をやけに明るくしていた理由は……」
オーク娘「物理行使しなければならない場合の最終手段にゃ。生物が一番に反応して動きを止めるのは光、二番目が音にゃ。突然部屋の明るさが変われば誰だって驚くにゃ」
お嬢様「で、部屋の明かりを消した……と」
オーク娘「得物を誘い込むような情報工作は得意だと言ったハズにゃ」ニヤッ
メイド(コイツこええええええええええええええ)
オーク娘「ボス、さっさと身ぐるみ剥ぐにゃ。初の収入だにゃ」
お嬢様「お、おう!よくやった!それでは戦利品をいただくとしよう!!」
メイド「切り替えが早くて優秀ですわお嬢様。それではこの冒険者のようなボロ雑巾たちはダンジョンの外に捨ててきますわ」
お嬢様「お前の方が順応してるよね……」
メイド「ま、貴女にしては及第点といったところでしょうか。所で、仕掛けを無視してバナナを取りに行った場合はどうするつもりだったのですか?」
オーク娘「最悪、あのバナナは保険にするつもりだったにゃ。アレ、腐っているにゃ」
お嬢様「ハハ、またエグイ事をする」
オーク娘「食べたら最後、吐き気がしばらく止まらなくなるにゃオエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」
メイド「さっき食ってましたね」
お嬢様「そんなこったろうと思ってたよ」
……
―mission complete!―
商人「いやーやりましたね皆さん!」
メイド「肝が抉り取られるような気持でしたわ」
お嬢様「大丈夫?」
オーク娘「自分のお腹の欲求に耐えられなかったにゃ……」
商人「ノした冒険者さんたちは冒険者ギルドの方に送り付けておきます。これでここのダンジョンの危険度も他の冒険者さん達に認知されるでしょう!」
お嬢様「ん?それじゃあ誰も寄り付かなくなるんじゃないか?」
商人「ダンジョンは危険であればあるほど、いいお宝が眠っていると相場が決まっているんですよ。冒険者さん達はその最奥に眠る宝箱を開けた時の一喜一憂、カタルシスを欲しているのです」
商人「高難度のダンジョンを攻略したとなれば名前も売れて更なる利益につながりますからね。願ったり叶ったりですよ」
メイド「そしてより強い装備を持った冒険者たちがまた入ってくる……と」
商人「ご明察!!リンゴ飴一個プレゼントゥ!!」
メイド「あ、どうも」
お嬢様(いいなぁ)
お嬢様「あ、それでダンジョンから指定されたミッションをクリアしたのだが、何がもらえるんだ?」
商人「おお、そうでしたね!ダンジョン内で使える仕掛けが増えましたよ」
メイド「へぇ、何が出来るようになったのですか?」
商人「それは次の改築のお楽しみって事で」
お嬢様「クックック……これで私は一歩ダンジョンマイスターへと進んだという訳か!」
商人「アハハ……唐突に一番初めに見たような単語が初登場しましたが……」
商人「ともかくお疲れ様です。今日はもう侵入してくる冒険者さんは居なさそうなので、ゆっくり休んでください。ダンジョン内で欲しい機能があれば私に仰っていただければ追加しておきますよ」
お嬢様「そうかー」
メイド「そうですかー」
お嬢様「……」
お嬢様・メイド「管理室、ください」
商人「ですよねー」
オーク娘「うにゅぅ……」オエエエエ
――――――
―――
―
お嬢様「やーど宿宿ー♪」
オーク娘「フカフカのお布団にゃー♪」
メイド「……」
お嬢様「どうした、浮かない顔をしているな」
オーク娘「久しぶりの宿にゃ、そんな険しい顔をしなくてもいいにゃ」
メイド「いえ、お嬢様。一つお伺いしたいことが」
お嬢様「何なのだ?」
メイド「今我々がいる宿の事なのですが」
メイド「何 故 ダ ン ジ ョ ン の 真 横 に 存 在 し て い る の で す か」
お嬢様「はッ!そういえば昨日まで無かった気がするぞ!!」
オーク娘「ほ、本当にゃ!!今まで宿代ケチってずっとダンジョンで寝泊まりしていた気がするにゃ!!」
お嬢様「ど、どういうことだ!?まるで一夜城のように突然現れたではないか!!」
メイド「博識ですわお嬢様。しかしそもそもおかしいと思いませんか、こんな場所に宿が出来るなんて」
オーク娘「何でにゃ?近くに冒険者が待機できる場所があれば何かと便利にゃ」
メイド「必要時間的に考えてオカシイっつってんだろチビオーク」ギリギリ
オーク娘「うみみぁあああ!!そんな事で頭を締め付けるのはやめるにゃあ!!」
商人「あ、そこらへん気が付きました?」ヒョコッ
メイド「ま た お 前 か」
商人「いやぁ、保険として副収入も必要になるかなーと思いましてこちらも用意させてもらったんですよー」
お嬢様「なに!?この宿をか!?」
商人「はい、限りなく人件費と材料費を削りまくって急ピッチで作らせました!!お気に召しましたか?お値段こんな感じなんですがー」カタカタ チーン
メイド「そういえばそんな話してましたねぇ……ですが、まだ購入するとも何とも言っていないのですが」
商人「あー大丈夫です。名義は他人のものとなっていますので、こちらは無理にご購入していただかなくともいいですよ」
メイド「ほっ、これ以上出費がかさむのは痛手ですからね。ねぇお嬢様?」
お嬢様「いや、確かにダンジョンだけでやっていくのはまだ心許ない。いっそ商人さんが言うようにこの宿も買い取ってしまうのも手だろう!」
メイド「そういう訳です、ほらこのお金を持っていきなさい!」
商人「毎度アリー☆いやぁ太っ腹ですねぇ!!」
オーク娘「金銭感覚狂ってるにゃこの人達」
お嬢様「フハハハ!これで私たちの寝泊りする場所も確保できたわけだ!ついでに馬鹿な冒険者たちから財布の中身まで搾り取ってやるのだ!!」
商人「あ、人材までは派遣しませんので自分たちで何とかしてくださいね。あんまりな対応をしているとお客さんが寄ってこないので気を付けてください」
お嬢様「」
メイド「そこは私の家事スキルでなんとかいたしますわお嬢様」
オーク娘「それにしてもどうやってこんなに早く宿なんて作ったにゃ?」
メイド「まぁ気になりますわね、普通に考えて在り得ない事ですし」
商人「ああコレはですね私の人脈みたいなもんですよ、HAHAHA」
トントン
商人「おんや?誰でしょうね?どうぞー」
ガチャ
「うぃーっす」
お嬢様「?誰なのだ?」
商人「大工さんですね。今二階部分を作ってもらってたんですよ」
お嬢様「まだ未完成なの!?今はガワだけしか無いの!?」
「そろそろ上がっていいっすか?暗くてもう見えないんすよ」
商人「あ゛ぁん゛?何言ってんだお前ら!?まだ二階部分の屋根の取り付け終わってねぇじゃあねーか!!」
「そ、そう言われましても……こんな時間まで俺ら動かすってアンタどうかしてるよ……」
商人「うるせぇ!!テメェンとこの会社の顧客情報と裏帳簿を世に出されたくなかったらキリキリ働けオラァ!!社長からも素直に従えって命令来てんだろうが!!」バンッ!!
「ヒィッ!?」
お嬢様「」
オーク娘「」
メイド「」
商人「あのさ?何も金払わないなんて言ってなのよ?わかる?アンタらは言われたことだけしてりゃあいいの?OK?了解?ならとっとと続きを始めろ!!お客さん待たせてんだよこっちは!!」ガンガンガンッ!!
「し、失礼しました!!」
商人「総動員でやってんだからとっとと終わらせんかい!!手抜き工事常習犯のテメーら使ってやってるだけでもありがたいと思え!!そんで、帰ったらいつかニーア商会ぶっ潰してやるって社長に伝えとけコンチクショウ!!」
「で、でも休憩くらい……」
商人「二 度 と 商 売 道 具 握 れ な い よ う に し て や ろ う か ?」ゴリゴリ
「ヒィィィ!?」
メイド「あ、あの……」
商人「それじゃあダンジョン改築の件で話を進めましょうか!あ、私が見張っている内は建物の強度は大丈夫ですよ?安心してください!」ニコッ
オーク娘(このヒト物凄く怖いにゃ)ガクガクガク
お嬢様(堅気じゃない……堅気じゃないのだ……)ガクガクガク
メイド(人脈ってなんでしたっけ……?)
商人「あのさ?何も金払わないなんて言ってなのよ?わかる?アンタらは言われたことだけしてりゃあいいの?OK?了解?ならとっとと続きを始めろ!!お客さん待たせてんだよこっちは!!」ガンガンガンッ!!
「し、失礼しました!!」
商人「総動員でやってんだからとっとと終わらせんかい!!手抜き工事常習犯のテメーら使ってやってるだけでもありがたいと思え!!そんで、帰ったらいつかニーア商会ぶっ潰してやるって社長に伝えとけコンチクショウ!!」
「で、でも休憩くらい……」
商人「二 度 と 商 売 道 具 握 れ な い よ う に し て や ろ う か ?」ゴリゴリ
「ヒィィィ!?」
メイド「あ、あの……」
商人「それじゃあダンジョン改築の件で話を進めましょうか!あ、私が見張っている内は建物の強度は大丈夫ですよ?安心してください!」ニコッ
オーク娘(このヒト物凄く怖いにゃ)ガクガクガク
お嬢様(堅気じゃない……堅気じゃないのだ……)ガクガクガク
メイド(人脈ってなんでしたっけ……?)
――――――
―――
―
お嬢様「経営二日目なのだ!!」
メイド「朗らかですわお嬢様」
オーク娘「朝は弱いにゃぁ……」スヤァ
メイド「寝るなよ」
商人「皆さんおはようございまーす!無事に宿の方も完成したので、今日の終わりにまた覗いてやってください」
メイド「外に放置されている大工さんの屍の山は?」
商人「ニーア商会ってとこに送り返しておくので心配なさらず」
メイド「お嬢様の教育に不適切ですわ。とっとと片づけをお願いします」
(ひ、ひでぇ……)クタッ
お嬢様「いやー、しかし立派な管理室なのだ」
メイド「電子機器が盛りだくさんですわ」
オーク娘「うみみゃあ……機械いじりは得意じゃないにゃ。頭痛いにゃ」
商人「さて、前回ミッション達成をしたという事で今回から魔物の召喚が出来るようになりましたよ」
お嬢様「む、そういやダンジョンなのに何も住み着いていないのはおかしいと思っていたのだ」
商人「こうやって機能がアンロックされていく形のものですからね」
メイド「初っ端から魔王クラスや勇者クラスの冒険者が現れたらどうするつもりだったのですか」
商人「……では、この機能について詳しくお話しますね」
メイド「答えろよ」
商人「基本的にいつでも好きな時に召喚することが出来ます」
お嬢様「うおお!!それでは呼び放題ではないか!」
メイド「強い魔物を大量召喚すれば楽勝でなくて?」
商人「それがそうも上手くいかないのが世の常。呼び出す魔物の強さに比例して安くは無いコストが要求されます」
オーク娘「そりゃ魔物もタダ働きなんてまっぴらゴメンだにゃ」
メイド「具体的には?資金面ならまだ余裕がありますが」
商人「はい、お金は勿論ですが」
商人「規定以上の雇用費と住み込みですので最低限の衣食住、三年契約の生命保険の加入と最低週1日の休暇、加えて10時間以上の労働の禁止。あ、ですが残業が発生する場合はまた別途で給与の支払いが発生しますのでそこら辺気を付けてください」
お嬢様「ハハ、えらく現実的な事を言う」
商人「あ、これ召喚出来る魔物のカタログです。ザッと目を通してください」
メイド「お、お嬢様。割と馬鹿に出来ないお値段になってしまいますわ……」
お嬢様「魔人とか神とか載ってるぞ……」
オーク娘「そのヒト達の下に見た事が無い0の羅列が書いてあるにゃ……」
商人「まーそこら辺のカリスマを雇うにはこちらも魔王クラスにドカーンと稼いでなきゃ無理なんですけどねぇ」
メイド「大変差し出がましいと思いますがお嬢様、今回は見送りという形を取っても……」
オーク娘「そうにゃボス!高いお金出して呼び出しても役に立つかは分からないにゃ!私の罠設置だけで十分だにゃ!」
お嬢様「んー、でもなぁ。お前のトラップ部屋も結構限界があるだろう?だとしたら手数を増やす意味でも魔物を召喚した方がいいと思うのだが」
オーク娘「えー!」
商人「あ、ダンジョン内に置けるオブジェクトの数は限界があるので気を付けてくださいね。つーかもう結構いっぱいいっぱいですね」
メイド「魔物の召喚には大賛成ですわ!!テメェ反論するなら今すぐ追い出すぞオラァ!!お嬢様が絶対なんだよ!!文句あるか?ああ!?」
オーク娘「この熱い手のひら返しよ」
メイド「……お嬢様、こっちのちっこいのにしておきましょうね?」
お嬢様「えー……んー、分かった。お前が言うのならそうする」
オーク娘「しかしちゃっかりグレードを落としてくるにゃ」
商人「あはは……人材を召喚は私の管轄外なので流石に私も口を挟みませんが」
メイド「決まりましたわ」
お嬢様「この子を2体召喚するぞ!」
商人「どれどれ……ほほう、マネマネンドですか。対象に変身して惑わし混乱させる、ダンジョン内で意表を突くには中々いい選択だと思いますよ。コストも軽いですし」
商人「それじゃあダンジョンの機能を使って……」
お嬢様「ちょちょいのちょい!!」ボフン
「マネー」
「マネマネー」
オーク娘「おお!カタログで見るより可愛いにゃ!よぉ〜しよしよしよし」
お嬢様「抱っこしたらヒンヤリしてそうなのだ!代わるのだ!!」
メイド「博愛ですわお嬢様」
商人「いや、愛玩用に召喚されても困るんですけどね」
「……あんまり気安く触らないでくれよ」
オーク娘「!?」
「俺たちだって仕事で来てんだよ……」
「それが仕事内容だったら付き合うけどよ」
「生活掛かってんだよ……」
お嬢様「」
オーク娘「」
商人「ま、彼らには彼らの事情ってもんがあるので、過度な馴れ合いは禁物ですよ」
メイド「こう現実を突きつけられると胸が締め付けられますわ」
オーク娘「お?なんか画面に映ったにゃ」
お嬢様「ヒトだ……冒険者か!」
―――
銃剣士「ここだね、依頼のあったダンジョンは」
女盗賊「何だかなぁ。身にならなさそうな依頼なんて受けて……私まで何でアンタの手伝いしなきゃいけないのさ」
銃剣士「そう言わないで。人助けのついでに路銀を稼ぐのも悪くは無いでしょ」
女盗賊「悪 い ね。興味ないのに付き合わせて……ったく!」
―――
お嬢様「D A T E」
オーク娘「デートかよ」
メイド「ま、相手方の事情は知りませんが……」
「そんじゃあ一働きしてきますかな……よっこらせっと」
「あんまり、期待しないでくれよ。給料に見合った働きはするけどよ」
お嬢様「アッハイ」
メイド(それじゃあ期待できませんね)
「始めだけ適当に撹乱しておいてくれよ」
「変身してからお互いに入れ替わってあいつ等を罠に嵌めるからよ」
オーク娘「トラップ管理なら任せるにゃ!」
商人「そんじゃあ私はこの辺でお暇しますかね」
お嬢様「見ていかないのか?」
商人「次の仕入れがありますので」
メイド「どうせまた我々に吹っかける気でしょう」
商人「それは後ほどのお楽しみって事で……それでは!」
メイド「チッ、お嬢様!あの商人をなんとかしないといつか喰われてしまいますわ!」
お嬢様「ギブアンドテイクが成り立っている相手なのだ!そういう事を言うんじゃない!」
メイド「し、しかし……」
オーク娘「ボスのいう事は絶対にゃー。刃向うとメイドパンチが飛んでくるにゃー。本人も例外じゃないにゃー」
メイド「黙れ小娘」ギリギリ
オーク娘「痛い!?痛いにゃ!?」
お嬢様「さて、マネマネンド達は上手く出来るだろうか」
―――
女盗賊「そこ、落とし穴」
銃剣士「おっとっと」
女盗賊「動くな!すぐ横がバーナーの射程範囲内!」
銃剣士「うわっち!?」
女盗賊「引き返すな!!天井にロードローラーが引っかかってるの見えてないの!?」
銃剣士「何で!?」
女盗賊「知らないよ。実際あるんだもん」
銃剣士「ど、どうしてこうも罠に引っかかりそうになるかな……」
女盗賊「アンタは動きが正直すぎるの!何の疑いなく進みすぎ!」
銃剣士「アハハ……疑うって事は好きじゃないからさ」
―――
オーク娘「トラップがことごとく避けられているにゃ」
メイド「この役立たずめが!!」
オーク娘「むむむ、女の方は名のある冒険者と見たにゃ。フェイクは無視して隠れた罠を的確に看破しているにゃ」
お嬢様「うむうむ!これなら魔物を召喚した甲斐があったというものだ!」
メイド「流石ですわお嬢様。自身に絶対の自信を持つどこかのオークとは大違い」
オーク娘「言ってくれるにゃ……!よし!モノマネンドが二人に接近中にゃ!!ここで私がすかさず手助けするにゃ!!ぽちっとな」
―――
(よぅし、ここまで接近すれば大丈夫だろう)
(嬢ちゃんたち、いっちょやってくれや)
パッ
銃剣士「!?」
女盗賊「明かりが一斉に消えた……」
銃剣士「ッ!こっちの通路に一緒に来るんだ!僕から離れないで」
女盗賊「言われなくても。戦闘は一任するから、しっかりアタシを守りなさいよ」
銃剣士「ハハ、大丈夫だよ」
女盗賊「もう……!」
パッ
銃剣士「おっと、どうやら一時的なものだったみたいだね」
女盗賊「安心した、じゃあ行こうか」
―――
メイド「上手く分断出来たようですわね」
オーク娘「入れ替わりも出来たみたいだにゃ!」
お嬢様「フッフッフ!後は二手に分かれた連中をそれぞれ必殺の罠部屋に連れ込めば……!」
―――
銃剣士「うわー、ビックリしたね。突然松明の明かりが一斉に消えるなんて」
女盗賊「……」
銃剣士「どうしたの?」
女盗賊「ううん、明かりが消えたときに何かがこっちに向かって走ってきたような気がしたんだけど」
銃剣士「え、ええ!?本当かい?」
女盗賊「んー、その後何もなかったから気のせいだと思うんだけど……」
女盗賊「それに、さっきから罠が何だか人為的なものに感じるし」
銃剣士「多分要塞化かなにかされているんじゃないかな?個人でダンジョンを作る場合はあり合わせで罠を作ったりするようだし」
女盗賊「そうなの?」
銃剣士「うん。半自動化出来るから、人為的だとしても道楽でない限りは人が直接動かしているって事はあまり無いと思うよ。管理だけコンピューターに任せて本人が近くにいないって言うのはよくある事だから」
―――
お嬢様「よしよし!我々の存在を隠そうとしているな!」
メイド「出来た魔物ですわね。報酬を上乗せでもしておいてモチベーションを上げてやりましょう」
オーク娘「フフン!私のアシストがあったおかげにゃ!」
メイド「勿論貴女のお小遣いから引かせてもらうに決まっていますわ」
オーク娘「」
メイド「さて、もう片方も見てみますか」
お嬢様「そうだな。そっちも気になるぞ」
―――
ギヤアアァァァァァァァァ!!
女盗賊「やーんこわーい!」ダキッ!
銃剣士「ちょッ!?」
女盗賊「だってー!何だか悲鳴のようなものが聞こえるんだもーん!それに私か弱い女の子なんだもーん!だから私の事まもってー!」
銃剣士「はい!?」
女盗賊「いやーん!あふーん!」
銃剣士「こ、これは困ったなぁ」
―――
オーク娘「こ れ は ひ ど い」
メイド「オイ誰かあの粘土止めろ!!」
お嬢様「アイツは強制送還だな」
―――
銃剣士「そ、それより見てみなよ!そっちに何か部屋があるよ!」
女盗賊「むっふ〜ん!あら!素敵な部屋があるわね!!アタシも行きたいわ!ぜひ行ってみるわよ!!」
―――
メイド「よし、なんとか罠部屋に誘いこむことには成功したみたいですわ」
お嬢様「結果良ければ何とやらというやつか。その後仕留められるかで今後の事も考えてやろう!」
オーク娘「んー、んん?」
お嬢様「どした?変な顔して」
オーク娘「もう一組の動向がおかしいにゃ」
お嬢様「おかしい?」
―――
女盗賊「あ、こんなところに」
銃剣士「通路だね……隠してある」
女盗賊「ニヒヒ♪盗賊の感が働く働く♪行ってみようよ、ちょっと狭いけどさ」
銃剣士「こんなところを!?男の僕じゃちょっと無理じゃないかな?」
女盗賊「いいからいいから!それ突撃ィー!!」
銃剣士「うわあああああ!!」
―――
メイド「お嬢様、非常に不味いですわ!!あの女が入った通路は……」
オーク娘「ここにゃ!!管理室への隠し通路にゃ!!」
お嬢様「にゃにーーーーーーーーーーーー!?」
オーク娘「あわわわ!ヤバいにゃ!非常にヤバいにゃ!!殺られるにゃ……危険が危ないにゃあああ!!」
メイド「お嬢様、ここはモノマネンドに指令を出すべきですわ!」
お嬢様「クッ!仕方がない、プラン変更だ!!男に化けてるモノマネンドに通信!今すぐ変身を解いてとにかく驚かせて逃げ回れ!!注意を逸らすだけでいい!何とか持たせろ!!」
―――
(おっと、緊急事態ってやつかい)
―――
(やーれやれ、仕方がない。じゃあ変身解くぜ!)
「解!!」
ボフン!!
女盗賊「!?」
「へへ、まんまと騙されてくれたな」
女盗賊「あ、アンタ……ッ!!」
ボフン!!
「あ」
「……よう」
「……」
「……」
―――
お嬢様「」
メイド「」
オーク娘「」
―――
「すまねぇな嬢ちゃん」
「暗がりの中で手を握ったのはコイツだったみてぇだ」
―――
お嬢様「アホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
オーク娘「にゃああああああああああああああああああああああああ終わりにゃあああああああああああ!!」
メイド「は、腹を括りましょうお嬢様。こうなったらお嬢様だけでもお護りせねば……!!」チャキンッ!!
ガチャ
女盗賊「ここは……」
銃剣士「機械がやたらと多いみたいだけれど……」
オーク娘「きたあああああああああああああああああああ!!」
お嬢様「ぎゃああああああああいやあああああああああ!!殺されるーーーーーーーー!グワーーーーーーーーーー!!」
メイド「オラ!!行って来い脳筋!!テメェの役割は戦う事と盾になる事だオラァ!!」グイグイ
オーク娘「にゃあああ!?聞いてないにゃあ!?何をするやめろーーーーー!!」
女盗賊「ああ!!」
銃剣士「君たちは!!」
お嬢様「ヒィィ!!」
銃剣士「可愛いゴブリンの女の子にスライムのメイドさん!」
女盗賊「それにオークの娘……間違いないね」
お嬢様「……うぇい?」
銃剣士「依頼達成だ。ほらね、人助けも無駄ではなかっただろう?」
女盗賊「はいはい言ってろ」
銃剣士「君は"もうどうせ死んでる"って切り捨てた癖に」
女盗賊「いいでしょ別に!」
メイド「あ、あの……話が見えないのですが」
銃剣士「ああ、失礼。僕達、冒険者ギルドの依頼でここに来たんだけど」
女盗賊「その依頼って言うのが、"昨日ダンジョンで一緒になった少女達の安否を確かめてほしい"って随分とお人好しな依頼だったわけで」
銃剣士「彼ら、凄く神妙な顔をしていたよ。"自分たちが至らなかったばかりに彼女達を置き去りにしてしまった"って」
女盗賊「生きているなら生きているでギルドに顔出さないと余計な心配されるから、そこら辺マナーなんだけど?」
メイド「あー……」
オーク娘「昨日の……」
銃剣士「さて、元気そうに生きているって分かったんだし僕達はそろそろ行くね」
女盗賊「まったく、端金にしかならないような依頼受けて……時間の無駄ッたら無駄!」
銃剣士「だーかーら!いいだろこういうのも!!」
女盗賊「良くない!効率悪い!!大体アンタねー……」
銃剣士「でも、きっと彼らも喜ぶだろうね。もう僕はそれだけで十分だよ」
お嬢様(ああ……)
オーク娘(なんか……)
お嬢様・メイド・オーク娘(申し訳ねぇ……(ですわ))
――――――
―――
―
商人「み、皆さん。撃退の方は……う、うまくいったよう……で」ヨロヨロ
オーク娘「撃退は出来てないにゃ」
お嬢様「上手く回避できただけだぞ」
商人「そ、それは……何より……」
メイド「所で商人さん、貴女やけにボロボロですが。何かありましたのですか?」
商人「い、いえね?帰り道に突然ダンジョンの明かりが全部消灯いたしまして……」
商人「一つコイル発条を踏んだが最後、飛ばされて粘液まみれになるわフロアバーナーでコンガリ燃えるわアローウォールに引っかかるわ坂道で滑って岩に押しつぶされるわ連鎖連鎖で……コンチクショウ!!」
お嬢様(あー……)
オーク娘(さっき聞こえていた悲鳴はそれかにゃ)
メイド(ざまぁ)
商人「そ、それで。あの役立たずの魔物共はいかがいたしましょうか」
メイド「結果を残せなかった者は不要ですわ」
お嬢様「しばらく宿のほうでタダ働きさせてやるのだ」
オーク娘「商人さんの災難も元を辿ればコイツらの責任にゃ」
「ひでぇ!!」
「そんな殺生な!!」
メイド「シャラップ!!貴様らお嬢様を危険な目に合わせておいて無事で帰れると思うなよ!?」
商人「ま、まぁ今回の事は明らかにネンドさん達に非がありますので処遇はそちらにお任せします」
メイド「いい働き手が見つかりましたわぁ♪」ギリギリ
「ぐあああああああ」
「やめろォ!!」
商人「そ、それでは私はこれで……か、身体が痛い……」
オーク娘「お大事ににゃー」
メイド「今度は役に立つような機能の追加をお待ちしておりますわぁ♪ウフフフフフフフ」
――――――
―――
―
メイド「さぁキリキリ働きなさい!!奴隷共よ!!」
「くそぅ……」
「こんなハズでは……」
お嬢様「宿屋って結構忙しいのだな」ズズー
オーク娘「お客さん数組泊まっているだけで大混乱にゃ」ズズー
メイド「お前も働けボンクラオーク」
オーク娘「ボスと作戦会議中にゃ、忙しくて手が離せないにゃ。そっちこそ働くにゃ」
メイド「シメるぞ……と言いたいですが、私も用事があって少し外出しなければならないのですが」
オーク娘「うにゃ?」
お嬢様「ふぅ、しかしダンジョンの効率化を図らねば……現状宿の方が収入が大きいのが何とも言えんぞ」
オーク娘「あれから一週間経ってるけどなんか冒険者の入りが凄く悪いにゃ」
メイド「一時期話題になった程度ですからねぇ。今宿に泊まっている半数も冒険者ではなく通りすがりですし」
商人「それはこのダンジョンに目玉となる物が無いからですよ!」ニョキッ
お嬢様「うわ出た!?」
オーク娘「神出鬼没にゃ」
メイド「しばらく姿を見せないと思ったら」
商人「いえいえ、こちらも準備が整ったので話を持ち掛けに来ただけですよ」
メイド「で、何を売る気ですか?」
商人「ああ、大丈夫ですよ。そんなに身構えないでください!今回は貴方達に助っ人を用意しようと思いましてね?勿論無料の貸し出し!!」
お嬢様「助っ人?」
商人「はい!役に立たない魔物なんて召喚させてしまった心ばかりの謝罪をですね」
オーク娘「なんか信用ならんにゃ」
メイド「商人は損得で動く者。裏くらいあるのでしょう?」
商人「言ってしまえばそうなんですけどねー。まぁそう言わずに、受け取ってください!私の全身全霊!!カモーン用心棒!!」
剣士「通りすがりの剣士だ、三食飯付きで働いてやらんでも無い」
お嬢様「初回から高圧的なの来ちゃったよ」
剣士「……四食でも構わんぞ」
お嬢様「何で増えた!?」
幽霊「通りすがりの幽霊です。こんな球体な成りですが強いです、使ってください」
オーク娘「何だこの丸いの」
幽霊「うるせぇデブ!!ちぃとばかし胸が大きいからって調子に乗るなよ!!」
オーク娘「デブにデブって言われた!?」
子ウサギ「ウキュ!」
メイド「……」
子ウサギ「ウキュンウキュキュウ!」キメッ
メイド「お、おう」
商人「どうですか!!」
お嬢様(何だこの……何だ!?)
商人「ともかく戦力的に不安が残る貴方達にはちょうどいいんではないですか?」
メイド「お嬢様、流石にこれは怪しいですわ」
お嬢様「う、うむ。私の一存では決め兼ねるな、お前はどう思う?」
オーク娘「うにゅー……私の仕掛けた罠の邪魔にならなければどっちでもいいにゃ」
メイド「参考になりませんわ。やはり今回は引いてもらうべきかと」
お嬢様「しかし人手が欲しいのも事実だし……うーむ」
商人「分かりました、こうしましょう」
商人「この娘達に一冒険者としてダンジョンに挑んでもらいましょう」
お嬢様「なに?」
メイド「どういうことですか?」
商人「前にも言った通りサクラになってもらうんですよ。冒険者ギルドに来る冒険者たちはとりあえずダンジョンの情報を欲しがります」
商人「そこでこの娘達にダンジョン内で起きる在ること無い事を他の冒険者たちに振りまいてもらうんです」
商人「そうですねぇ、例えば……ダンジョンに珍しい魔物が現れた!とか、見た事の無い秘宝がそこらじゅうに眠っていた!とか」
お嬢様「私達が自分で出来る事じゃないか?」
商人「貴方達、以前の件で冒険者ではないとバレた上に元気そうに生還したって噂が広がっちゃってるんで裏で動くのには適していないと思いますよ?」
お嬢様「ぐぬぬ、自らの行動を制限してしまっているとは」
メイド「心中お察ししますわお嬢様」
オーク娘「仮に噂を広めたところで噂は噂にゃ。誰か信じるのかにゃ?」
商人「それなら大丈夫です。町のスーパーで半額セールやってるって聞いたらとりあえず顔を出すだけ出してみるでしょ?それと同じです」
オーク娘「た、確かに!?」
メイド「明らかに同系列ではないのですがそれは」
商人「話に尾ひれがついて行けばまた冒険者も多くダンジョンを訪れることになるでしょう。真偽が怪しいなんて言われたら、珍しい魔物だったらこの娘達に演じて貰えばいいし」
お嬢様「秘宝はどうするのだ?」
商人「元々ここのダンジョン……になる前の洞窟には"海鳴りの鈴"というレアなアイテムが隠されていたという事でしたので、それも誤魔化しきれるかと」
メイド「情報収集に余念がないですわね。ひょっとして貴女はそれを狙ってきたのではなくて?」
商人「欲しい物ではありますね。ま、今こうして貴方達が洞窟を弄って見つかっていないのなら本当にただの噂かもしれないですし」
お嬢様「このくらいならやらせてみてもいいかもしれんな」
メイド「了解ですわお嬢様。許可が下りましたのでどうぞご勝手に」
お嬢様「我々の邪魔をになるようなことは絶対にするのではないぞ!」
商人「だーいじょうぶ大丈夫!任せてください!オラお前ら!!気張っていくぞ!!」
剣士「……ふぁ……眠いな」
幽霊「あーメンドクサイなー」
子ウサギ「ウッキュウ」
オーク娘「このやる気の無さよ」
お嬢様「とりあえず方針は決まったな。連中を使って他の冒険者と接触させまくろう」
メイド「分かりましたわお嬢様、一時も奴らから目を離さないようにいたしますわ」
オーク娘「そういえばさっきどこかへ行くって言っていなかったかにゃ?なんか手紙をもっていたような気が」
メイド「ギクッ」
お嬢様「……おい、どこへ行こうとしていたのだ?」
メイド「わ、わわわわわたくしはどこへも行きませんわぁ!お嬢様一筋ですわ!!」
お嬢様「ジィー……」
メイド「……」ドキドキドキドキ
お嬢様「ふん!まぁいい、用を済ませたら早く帰ってくるのだぞ!」
メイド「承知いたしましたわッ!!」
お嬢様「それでは私は先にダンジョンへ行く。ではな」
メイド「行ってらっしゃいませお嬢様ァ」ニコニコ
オーク娘「にゃーんだ、私の見間違えだったかにゃ。それじゃあ私も……」
メイド「ブ チ 殺 し て や ろ う か 糞 ア マ ァ ア ア ア ア」ギリギリギリ
オーク娘「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛。なにするにゃ!?」
メイド「私がこっそりと隠していたものをワザワザ口に出すかコイツは!!にゃーにゃー言いやがってあざといんだよ!!猫かテメェーはよぉー!!」
オーク娘「うみみゃ!?オーク訛りだから仕方がないにゃ!!それより本当に手紙だったにゃ?」
メイド「はぁ……後で追及されても困りますので言ってしまいますと、お嬢様の実家へ送る手紙ですわ」
オーク娘「ボスの?」
メイド「貴女は途中で我々と合流したから知らないでしょうが、お嬢様は銘家の生まれで本物の大金持ちですわ」
オーク娘「マジかにゃ!?成りだけだと思ってたにゃ!?」
メイド「そんな人にメイドが付き添いますか」
オーク娘「いや、ただのロリコンの変態が付きまtに゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」ギリギリギリ
メイド「口を慎めよ下郎が。事情があって家を飛び出したお嬢様ですが、流石に旦那様も奥様も心配していらっしゃいますのでこうして定期的に手紙を」
オーク娘「痛いにゃ……ボスはその事知ってるのにゃ?」
メイド「勿論知りませんわ。知ったら私がお嬢様に怒られてしまいますし」
オーク娘「そうかにゃ、それなら黙って言ってくるにゃ。私も黙っておくから安心するにゃ」
メイド「……それ以上聞かないのですか?」
オーク娘「親しい中にも礼儀ありにゃ。ボスにはボスの考えがあって行動しているにゃ、私がボスの家庭事情に首を突っ込むべきではないにゃ。今楽しんでいるボスを暗い顔にはさせたくないにゃ」
メイド「貴女は……」
オーク娘「それじゃあ私も行ってくるにゃ。ボス一人にさせたら寂しくて泣いちゃうにゃ」
メイド「……フフ、分かりました。それではしばらくお嬢様をお願いします」
オーク娘「任せるにゃ!ボスとお話して私はもっと仲良くなるつもりでいるにゃ!」
オーク娘「ボスー!待つにゃーーーーー!!」
メイド「私は……彼女に対して少しキツく当たり過ぎていたかもしれませんね……」
お嬢様「おお、それでアイツはどこに行くって?」
オーク娘「ボスの両親に手g」
メイド「野 郎 ぶ っ 殺 し て や る」
オーク娘「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
―――――
―――
―
オーク娘「まったく酷い目に合ったにゃ」
お嬢様「さてと、ダンジョン内はどうなっているかな」
オーク娘「何だかんだでヒトは入っているにゃ」
お嬢様「人数は少ないがな……ん?そういえば4層以降に進んでいる冒険者がいないな」
オーク娘「罠の配置が熾烈過ぎたかもしれないにゃ。これじゃあ最終の15層に辿り着くのも夢のまた夢にゃ!頑張ボウケンシャー!」
お嬢様「むぅ、タワーディフェンスの勝利パターンが構築されてしまったみたいだ」
お嬢様「しかし、システム的にそういうのは不可能になっているのではないか?」
オーク娘「そうにゃ。攻略不可能の設置は出来ない様になっているにゃ。そんなことしたらあんまりにもあんまりにゃ」
お嬢様「うーむ……なんか本当にゲームみたいなことになってしまっているぞ」
オーク娘「魔物の配置もしていないから完全に罠師のダンジョン状態にゃ」
お嬢様「攻略したら罠が扱えそうな腕輪を手に入れそうだな」
オーク娘「勿論このダンジョンにそんなお宝は無いにゃ、多分」
お嬢様「ダンジョンの機能も完全に把握出来てないし、色々と不便だなぁ」
オーク娘「説明書的なものも無かったからにゃ。ともかく今は冒険者達の動向を見てみるにゃ」
ピロン♪
オーク娘「にゃ!?」
お嬢様「うわビックリした!?ここでミッション!?」
―case2・1時間経過まで冒険者の5層突破を防げ―
オーク娘「防衛ミッションみたいだにゃ」
お嬢様「うーむ、そもそも最高が4層止まりなのに」
オーク娘「まーいいにゃ。今回のミッションもいただきにゃ。私の罠配置にかかればちょちょいの……」
幽霊『あーあー、管理室管理室。聞こえますかー』
お嬢様「お、通信だ」
オーク娘「どうしたにゃ、宣伝は上手くいっているかにゃ?」
幽霊『うん、丁度冒険者の女の子と出くわしたから上手くあること無い事吹き込みまくったんだけどね』
幽霊『突 然 張 り 切 り だ し て 4 層 突 破 し て い き ま し た』
オーク娘「」
お嬢様「」
―――
少女「あー怖かったぁ、一気に駆け抜けるんだもん。私ドキドキしちゃったよ」
少女「え?……無理だよ!私はそこまで運動神経よくないもん!そっちと違って魔法専門!」
少女「で、でも大丈夫かな?5層まで来た冒険者っていなかったんだよね?私達が初めて……なら、前知識の無いエリアだから慎重に……」
少女「それはダメー!お願いゆっくりで!!私がついていけないから!!」
―――
オーク娘「どんな子が突破したのか見てみたら」
お嬢様「一人で延々と喋っている電波少女を見てしまったぞ」
メイド「アレですわお嬢様、一人になるとつい技名を叫んでしまったり気持ちよく歌を歌い始めちゃうアレです。私にも多々覚えがありますわ」
お嬢様「おおう、戻ったのか」
メイド「しかし、私が抜けている間に易々と突破されるとは情けないですねぇ!!ええ!?」
オーク娘「わ、私の罠は悪くないにゃ!先の冒険者たちのせいで設置位置がバレているせいにゃ!あとあの球体幽霊のせいにゃ!!」
お嬢様「……」
メイド「お嬢様?いかがなさいましたか?」
お嬢様「……いや、何でもないのだ」
お嬢様(……お前が何をしていたか知っているから、素直におかえりと言えなかった自分が恥ずかしいのだ)
メイド「それで、どういたしましょうかお嬢様?」
お嬢様「む、そうだな……この際商人の連れにはしっかり働いてもらおう。おい聞こえるか!今から皆5層へ向かいあの冒険者をあの手この手で止めるのだ!」
幽霊『すみません、おっかけて5層まで来たんだけど私トラバサミ踏んでさっきからずっと動けないんですよ』
オーク娘「幽霊なのに!?」
オーク娘「足が無いから身体半分がトラバサミにハマってるにゃ。何やったらそうなるにゃ」
メイド「まったく使えませんね。剣士さん、今どこにいますか?」
剣士『大丈夫だ、私なら既に5層のとある部屋にいる』
お嬢様「おお!流石だ!」
メイド「追加でタダ飯を要求してくるだけの度量はありますわね」
剣士『ああ、食い物を追っていたら5層の行き止まりの部屋に閉じ込められてしまった』ガシャーン
お嬢様「アホーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
剣士『美味いな。それに食べ物も豊富だ、これなら30分ぐらいはこの場で待機できる』モグモグ
お嬢様「喰っとる場合かー!!早く脱出して向かえー!!」
オーク娘「いや1日分程度の食糧を30分手……てかあの罠に引っかかる単純な奴がいるとは思わなかったにゃ」
メイド「貴女、確か数日前に自分で作って自分で引っかかっていませんでしたかしら?」
―――
少女「え?あ、うん、なんかあったのかな?騒がしいね」
少女「って、うわぁ!!」ビシュンッ!!
―――
お嬢様「よし!あの女、罠に引っかかったぞ!」
オーク娘「十字路に仕掛けた転移の罠にゃ。確率で壊れちゃうけどギャンブル性のある面白い罠にゃ!お、今回は壊れなかったにゃ」
メイド「あら、罠の扱いに長ける癖に確実性の無い方法を試すのですか?」
オーク娘「ある程度の法則性は見つけてあるにゃ。1,絶対に詰みにならない場所に飛ぶ2,同階層にしか飛ばない3,飛んだ先で罠は踏まない4,他の人物がいる場所に飛ぶ可能性が高い。なおこの項のみ1の条件を無視して優先される、にゃ!」
お嬢様「ほえー、よく調べたなそんな事」
オーク娘「自分で仕掛けたのを忘れて踏みまくったにゃ……」
メイド「だ ろ う な」
お嬢様「ん?ってことは……」
―――
ビシュンッ!!
少女「ッ!ああビックリした……あれ?ここどこ?」
剣士「ん?なんだお前は?」
―――
お嬢様「邂逅したな」
メイド「邂逅しましたわ」
お嬢様「何だろう、あんまりいい予感がしない」
メイド「私も同じ感想ですわお嬢様」
オーク娘「うにゃ?」
―――
少女「あ、冒険者さんですか?」
剣士「今はそういう事になっている、貴様は?」
少女「私も冒険者です!それはそれとして……ここはどこでしょう。出口がふさがれているように見えますが」
剣士「ああ、塞がれているんだ。この食料と引き換えにな」
少女「えぇー!じゃあここの食糧を全て食べないと出られないって事ですかー!?」
剣士「そうとも言う」モグモグ
―――
オーク娘「あの女サラッと嘘をついているにゃ」
メイド「ええいせめて宣伝をしろ宣伝を!何のためにお前をわざわざダンジョンに招き入れたと思ってんだ!」
お嬢さま「仕方がない。とにかく今はあの冒険者を止めることに専念した方がいい、閉じ込められたとはいえ安心できん。おい剣士さん聞こえるか?出来ればそこの女の子の足止めを頼みたい」
剣士『ん?了解だ、足を止めればいいんだな?』
ガシャーーン!!
お嬢様「なぬ!?」
オーク娘「な、何の音にゃ!?」
―――
少女「きゃああああああああ!?」
剣士「ほぅら、足を氷漬けにしてやったぞ?これで動けまい」
少女「な、何でこんなことをするんですか!!」
剣士「足を止めろと言われたんだ、だから止めてやっただけだ」
お嬢様『なに物理行使してんだよ!?もっと他にあるだろ!?』
剣士「魔法は物理じゃない、特殊だ」
お嬢様『何の話!?』
少女「い、いやぁ……助けてください……」ウルウル
剣士「まぁ安心しろ、そこでジッとしていれば私も何もせん。さて、食事の続きを……」
少女「ごめん……代わって」ボソッ
剣士「ん?今何か言ったか?」
少女「……」
少女?「……フフッ……」
剣士「ッ!」
少女?「よぉ、やってくれるじゃねぇかクソ女」
剣士「(気質が変わった……)お前、何者だ」
少女?「何者だって構わねぇさ。だが、"俺"を氷漬けにした落とし前くらいは付けてくれるんだろう?」
パキンッ
剣士「氷をいともたやすく砕いたか……クッヒヒヒ……面白いッ!!」チャキンッ
少女?「テメェ、魔法を使っておいて最終的には刀まで使うのかよ。まぁいい、得物は俺と同じ……いざ尋常に!!」
剣士「斬姫の錆にしてくれる!!」バッ
少女?「勝負ッ!!」バッ
―――
ガキンガキンッ
バチューンッ
お嬢様「あ、なんか始まったけど」
メイド「擬音だけでお楽しみくださいですわ」
オーク娘「ともかくこれで一時間が過ぎれば……」
ズドンッ!!
お嬢様「……そうはいかないよね」
―――
剣士「クヒヒヒヒヒ!!楽しい、楽しいぞ!!」ガギンッ
少女?「クッソ!!なんだよこいつ!?ああいう性格の奴は大体噛ませだろ!!滅茶苦茶強え!!」ギッ
お嬢様『くぉらあああああ!!フロア破壊しながら移動すんな!!』
剣士「そんなもの!いくらでも直せるだろう!だがこんな強い奴には中々出会えん、我慢しろ!!」
オーク娘『直すのは私にゃ!!我慢なんて出来ないにゃ!!』
剣士「鬱陶しい!通信切るぞ!!」ピッ
―――
メイド「アイツッ!通信機切りやがりましたわ!!」
ガッシャーン!!
ズガガガガガガ
お嬢様「ああ……ダンジョンが壊れていく……」
オーク娘「罠が……完璧な配置が……」
―――
剣士「ふん!威勢がいいのは始めだけか?」
少女?「戦いを楽しみやがって……チッ、シャーねぇ、こっちも全力で行くしかねぇか!!」
剣士「何だ、力を隠していたのか、気に入らん。さっさと来い、正面からぶっ潰してやる!」
少女?「ん?ああ、大丈夫だ、手筈通りに頼むぞ」
剣士「よそ見を……するなあああああああああああああ!!」バッ
少女?「ッ!速い!!」
剣士「終わりだ」
少女「ライズフラッシュ!」
剣士「魔法ッ!?くっ!目つぶしだと!?」
少女「こ、これでいいの?」
少女?(いいんだ!引くぞ!)
剣士「……」
剣士「チッ、逃げたか」チャキン
少女?(あっぶねぇ、あのまま攻撃してたら多分真っ二つになってたぞ)
少女「そ、そうなの?」
少女?(よし、走るのはここまででいい)
少女「う、うん……あ、ここは」
剣士「利口だな、目つぶしの後にてっきり追いうちをかけてくると思ったが……」
少女「あ、あのまま攻撃していたら真っ二つになっていた……だそうで」
剣士「ああ、悪いな。咄嗟の反撃になると手加減が出来ないからな。生憎、私は殺しはするなと姉からキツく言われていてな、感謝するぞ」
少女?(ケッ、生意気な口開けるのも今の内だ!)
剣士「さて……お前の中にいる"男"を出せ。もう一度奴と戦わせろ」
少女「き、気づいてたんですか!?」
少女?(見た目が女のままなのに性別まで指名だぜ、コイツ凄いな)
剣士「出さないのなら……こちらから引き摺りだす!!」バッ
少女?「アッハッハハハ!!バーーーーーーーーーーカ!!」ベロベロ
剣士「何ッ!?」ビシュン
少女?「アッハッハッハ!!ザマァ見ろ!!転移トラップだよ!!さっきの部屋へ逆戻りだ!かなり遠いぞ!」
少女(さっき私がふんじゃったやつだね)
少女?「ああ、あんなのまともに相手してたら疲れるだけだっての。さ、逃げてる最中に階段も見つけてあるから次の階層へ行くぞ」
少女(頼もしいんだか情けないんだか)
少女?「俺は確実に勝てる相手としか戦わねーの。お前の身体を守りながらやってんだから察しろ」
少女(フフ、ありがと)
―――
お嬢様「何だよあの二重人格!卑怯だろ!」
オーク娘「あーあー負けちゃったにゃ」
メイド「ギミックを逆に利用されてしまいましたね」
お嬢様「ふむ、しかしこうした強かな冒険者が攻略していくのだな」
オーク娘「あ゛ー、この階層罠の配置を見直すにゃ」
お嬢様「うむ、そうしてくれ……ん?」
メイド「おやおや、戦いはまだ終わっていなかったようですね」
―――
少女?「こ、コイツ……ッ!」
剣士「……ああ、次の下り階段に来ると思っていたよ」
少女(あー、あの罠ランダム転移だったかー)
剣士「さて、確かに私は頭がいい方ではないが、バカ呼ばわりされるのは心外だな」
少女?「ハァ……で、どうするつもりだ?」
剣士「続きだ……この境界線の狭間でな!!」スタッ
―――
ビー
―mission loss―
お嬢様「は!?」
オーク娘「何で!?」
―――
少女?「やるしかない……か!」
剣士「喪失、絶望……どんな表情を浮かべたところで強さなど変わらん、無意味だ!」←ドヤ顔で階段に足をかけている
―――
お嬢様「……」
メイド「……」
オーク娘「……」
「「「お前かああああああああああああああああああああああああああああ!!」」」キィィィィィン
剣士『ンが!?耳が!?』
少女?『今の内だ!!逃げるぞ!!』
剣士『あ、まて!!私と戦え!!今ならこの食いかけのパンやるから!!待て!!』ダダダダダ
メイド「後でお説教ですわね」
お嬢様「酷いオチだ……」
幽霊『あ゛ーあ゛ー、管理室管理室、聞こえますかー』
オーク娘「ボス、また通信だにゃ」
お嬢様「あーどした?何かあった?」
幽霊『なんか対応が雑だね……』
メイド「こっちは落ち込んでいる最中でございますわ。とっとと用件だけ言って引っ込みやがれ役立たず」
幽霊『酷い!?って、そうじゃなくてね』
お嬢様「ん?」
―――
ゴギャー!
ギャーッス!
ギエピー!
幽霊「フロアに突然魔物が沸いたーーーーーーーー!!助けてーーーーーーーーーーーッ!!」
お嬢様『』
メイド『』
オーク娘『』
――――――
―――
―
お嬢様「これはどういうことなのだ!」バンバン
メイド「説明を求めますわ!」バンバン
商人「え、ええとですね、説明と言われましても私からはどうにもこうにも……」
お嬢様「というかマニュアルくらい出せマニュアル!」
メイド「そうですわ!こういう珍妙な事態が発生した原因と対処も書かれているハズですわ!」
商人「いえね?あるにはあるんですが……」
お嬢様「何を渋っている!早く出せ!」
商人「も、もう……これですよコレ!」
オーク娘「えっと何々?……技名:ヴァニシュメンツ・アルティミット=アーム」
お嬢様「現実世界をも亡ぼしかねない高エネルギー波を拡張・分散させる。相手は魂の一欠けらさえ残さず消滅する。多元宇宙からエネルギーを供給しており、この技を使うたびに一つの異世界の生命エネルギーが枯渇し崩壊する」
商人「あ、それ私の黒歴史ノートだ。返してください!こっちですこっち!!」
メイド「読めたものではありませんわね」
お嬢様「酷いなオイ」
オーク娘「今度は随分と分厚い物が出てきたにゃ」
商人「読めるもんなら読んでみてください!」
お嬢様「ええっと、何々?」パラパラ
オーク娘「……うにゃ?」
メイド「これは……」
商人「読める訳ないじゃないですか、だって……」
お嬢様「……」
お嬢様「ヒエラティックテキストだコレーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
オーク娘「翼神竜でも出てくるのかにゃ」
メイド「スフィアモードですわ」
お嬢様「何だよこれ!!なんだよ!!」バンバン
メイド「説明書を今の今まで渡さなかった理由がこれですか」
商人「あ、アハハハ……このダンジョンツール自体かなりの年代物でしてね?私の調べ得た範囲のもので貴方達に使用方法をお教えしたのですが……」
メイド「危険性があったにも関わらず売りつけるとは、見上げた根性ですわ!!」
お嬢様「通りで安かったワケだ」
オーク娘「詐欺師め!!訴えてやるにゃ!!」
商人「訴えるだと!?ふざけんなコンチクショウ!!いいか私はな!?いいかよく聞け!?私は誤魔化しはすれど騙すようなやり口で物売りなんて絶対にやらないからな!?」
お嬢様「ダメだろそれ!?」
商人「ともかく、何かこの状態になるまでに変わった事はありませんでしたか?」
オーク娘「んー。変わった事かにゃ?」
メイド「あのオトコオンナと貴女の所の剣士が大暴れした程度でしょうか?」
お嬢様「……あ、ミッション」
商人「あー……失敗したんですか」
お嬢様「まさかペナルティとかあったり……」
商人「多分それですねー。あ、ほら、テキスト読めないですけど図解で何となく描かれていますよ。ミッション失敗したであろうヒトが挫折のポーズをとりながら魔法陣から次々と召喚される魔物の絵が」ペラペラ
商人「一か月間苦悩している日々が赤裸々に綴られているので効果もそのくらいの範囲なんでしょう」
お嬢様「やけに具体的な図解だな!?テキストいらないんじゃないか!?」
メイド「ともかく機能の一部なら安心ですわ。それに助かります」
オーク娘「何故ににゃ?」
メイド「お金を出して狙った魔物を召喚するよりも安上がりで大量に呼び出せるんですもの。まさか別料金とは言わないですわよね商人さん?」
商人「図解のどこにも書かれていないから恐らくノーコストでしょうね」
お嬢様「図で見るなよ……」
商人「ただ、問題が一つあって」
メイド「問題?」
商人「こちらで用意した魔物と違って、湧いて出た連中は完全に野生。以前貴方達が呼び出した者とは違い人間的理性と知性も持ち合わせていない。言う事を聞かないのはちょっと問題かと」
オーク娘「むー、不味いにゃ」
メイド「貴女もですか。何がですか?」
オーク娘「野生の魔物はピンキリにゃ。勘のいいやつは罠を避けて進むからまだいいけれど、極端に頭の良い奴や悪い奴は対処しにくいにゃ」
お嬢様「どういうことだ?」
オーク娘「頭の良い奴は罠を逆に利用して自分の狩りの道具に、下手すりゃ解除するのもいるにゃ。そして頭の悪い奴は……」
メイド「勝手に引っかかりまくって設置した罠を台無しにしてくれると」
オーク娘「困ったにゃ、こっちで指示出せないからどうしようもないにゃ」
商人「思うんですけど、こういうのって魔物の数が減ってくれるからいいんじゃないですか?」
オーク娘「設置には手間もコストがかかるにゃ。それに魔物はそれぞれ特性も違うからそいつに合った罠を使わないと無駄が多すぎるにゃ」
商人「へぇー、勉強になります。私普段は汎用性のあるものしか扱ってませんでしたからそこら辺の専門知識は抜け落ちていて」
メイド「貴女、罠関連の時だけやたら頭が良くなりますわね」
オーク娘「罠というより狩りにゃ。実家が魔物狩りで食いつないでるにゃ。そのおかげで私も狩りの技能だけは学校でも上位だったにゃ」
お嬢様「うむ!以前ニヤッとしたせいでそうじゃないかと疑っていたが、お前がそんな狡猾な性格じゃないと分かっただけでも嬉しいぞ!」
メイド「暖かですわお嬢様。なるほど、阿呆でも一つに特化はしているという事ですわね」
オーク娘「何だか褒められた気がしないにゃ」
メイド「褒めてませんからねぇ」
商人「それはそれで、冒険者ギルドでダンジョン難度が上がって冒険者を誘う餌に出来そうですね」
お嬢様「うむ、ここで方針を帰れば新たな集客が期待できるかもしれん。よし!早速作戦会議だ!後に続け!!」
メイド「勤勉ですわお嬢様」
オーク娘「あー、罠の種類と設置位置の考え直しにゃ」
商人「それじゃあ私も何か皆様をサポートする物でも考えておきますかねー……ん?なんか忘れてる気が……」
ギャーッス ゲシゲシ
幽霊「誰か助けてーーーーーーーー!動けないのーーーーーーーーーー!!蹴られてる!?殴られてる!!」ポヨンポヨン
ミュー ドスッドスッ
子ウサギ「ウッキュウ」ヤレヤレ←助けに来た
――――――
―――
―
メイド「お嬢様、ご報告があります」
お嬢様「……言ってみろ、いや!!言わなくても分かる!!だからやっぱり言うな!!」
メイド「はい、貝のように口を閉ざしますわ」
オーク娘「宝くじのお金が尽きたにゃ」
メイド「言うなバカやろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」ガッガッ
オーク娘「止めるにゃ!!現実を見るにゃ!!」
お嬢様「クッ、ダンジョンに注力し過ぎたせいで後先考えず投資してしまったか!」
メイド「幸いというのか何というか、宿の収入が爆発的に増えているおかげで喰うには困りませんわ」
お嬢様「我々も中々しぶといな……ともかく、ダンジョンに魔物が出現した事が大きかったな」
メイド「はい、腕試しも兼ねて低階層で駆け出し冒険者が。深階層では宝を求めてベテラン冒険者が多く入るようになりましたわ」
お嬢様「商人さん達が噂を広めてくれていたのもこの結果に繋がったのだろう、魔物が徘徊している事でレアアイテムがあるのではないか、という心理的な面も燻られているのだろう」
オーク娘「その分私の作業量が増えて大変にゃ」
メイド「嬉しい悲鳴と言いなさい、貴女は宿の仕事が出来ないのですからそれくらいやって当然ですわ」
お嬢様「それでだ、宝くじは使い切ったが宿で稼いだお金は実際に十分に溜まっている……そこで!」
メイド「保守的に行くのですね、分かりますわ。ここで下手にダンジョンに投資すると以前のような規格外の連中に突破された時のダメージの方が大きくなりますわ。ここは一度無駄を省くために規模の縮小を……」
お嬢様「ここいらで宿屋を大きくしようと思うのだ!!」
メイド「素敵な考えですわお嬢様!!」
オーク娘「何 故 攻 め に 入 る」
商人「アハハ……右に倣えもここまで来ると感服しますよ」
メイド「出たな諸悪の根源」
商人「夢を売る私に失礼な言い方をしますね」
お嬢様「半分ナイトメアを売られた気分だがまぁいい!相談があるのだ!」
商人「宿屋の拡張ですか?」
お嬢様「うむ、実は最近ダンジョンに入る冒険者が増えてな」
商人「部屋数が追いつかなくて客が他所に洩れてしまっているという訳ですね。ふーむ、宿の拡張は正直言うと私の専門外なんですけどねぇ」
お嬢様「ハハ、一夜で建てておいて何を言うか。ともかく頼む、検討だけでもしてほしいのだ」
メイド「実際に様々なご意見が寄せられていますわ。読み上げなさい!」
オーク娘「ほいほい、"出入りしている従業員みたいな娘達は可愛いけど対応する粘土野郎が不愛想"、"町から遠いから物資の補給が不便、ダンジョンの隣に建ってるならそのくらい対応しろバカ"、"もっと量のある飯を提供しろ、質より量だ、いいな?"」
オーク娘「"プレイルーム的なものが欲しい、俺たちだって四六時中冒険に従事してる訳じゃない、ふざけんな"、"スライムのメイドが小さい女の子をよく物色している、怖い"、"オークの女の子が壺割ってるの見た、もっとそこら辺徹底しろ"、"ゴブリンの女の子が突然高笑いをし始めた、うるさい"」
メイド「と、このような……」
商人「半分くらいアンタらに対しての悪口じゃねーか!?そこは自力で治せるだろ!?」
剣士「ちなみに言うと、食事量を要求しているのは私だ」
商人「お前は黙れよ!?早くダンジョン言って仕事してこい!!」
剣士「連れん奴だ、では行ってくる」
商人「ハァ……私達もお金出して泊まっている以上客として意見を言わせてもらいますけど、メイドさん以外対応がなっていないというのもまぁ事実です」
メイド「当然ですわ」ドヤァ
商人「だからといって出入りする小さい冒険者さんやそちらのお嬢さんを事あるごとに凝視しないでください。傍から見たら変態にしか見えませんよ」
メイド「ではお嬢様を優先で見るようにしますわ。今後気を付けましょう」
商人「お前、私の言葉通じてるか?」
商人「では分かりました。部屋数の方は明日までに何とかしましょう」
お嬢様「おお!出来るのか!」
商人「フフン!林檎ちゃんに不可能は無いのです!あ、費用の事ですが」カタカタチーン!
メイド「あー……以前よりもかなり高くなっていますが」
商人「これ以上は勘弁してくださいよ。今までは在庫処分でお安くしていたんですから、今回は完全に私の予想を超えたものですし」
お嬢様「サラッと酷い事を言ったのだ」
商人「それと、働き手がそろそろ必要だと思いましてそこらへんは先に知り合いに声を掛けさせてもらいました」
オーク娘「わざわざ商人さんが見つけてきたのかにゃ?」
商人「はい、見つけたというより相談を受けたというか。店を宿内に入れて欲しいとあちらからの申し出なので、コレは仲介費や彼らのお給料はいりません、むしろテナント代でお金取れますよ」
お嬢様「それならばさっそく連れて来てくれ!」
商人「はいはーい、そういうと思いましてもうこちらに来てもらいましたー!」
パスタ「どもー」
お嬢様「スゲェ名前の奴が来た」
パスタ「うわ!?なんだこの名前!?勇者名義じゃねーのか!?」
店員「勇者さん、勇者は飽和状態ですし紛らわしいからその名前で統一しましょう」
オーク娘「パスタにゃ!紛れも無いパスタにゃ!!」
メイド「大興奮ですわね。好物でしたっけ?」
オーク娘「いや、別に」
メイド(なんだコイツ……)
商人「こんな名前ですが、色んな料理を作れる腕利きなので厨房を貸切させて完全に任せるって言うのはどうでしょうか」
メイド「そうですわね、私一人でもいっぱいいっぱいでしたし」
商人「最悪なぜか客の私がヘルプに入ってましたからね」
メイド「料理できるの私達しか居ませんから……」
お嬢様「うむ!毎日おいしい料理を感謝しているのだ!」
メイド「その言葉で私は天に昇るような気持ちになりますわお嬢様ぁ!!」
オーク娘「いつもご苦労にゃ」
メイド「DEATH!!」
お嬢様「では準備もあるだろう、明日から入ってくれ」
パスタ「了解!じゃあ厨房はこっちが使いやすいようにさせてもらうよ」
店員「それでは今後ともよろしくお願いします!」
商人「絶対にパスタ作らないでくださいね」
パスタ「えー」
店員「えー、じゃねーよ」
お嬢様「な、なんか不安だがまー人手不足の一端は解消という事でイイか!」
オーク娘「粘土はどうするにゃ?」
「呼ばれて来てみたんだが」
「何だ?用済みかい?」
メイド「いいえ、使えないのなら使えないで裏方に回しましょう。これでも貴重な男手ですわ」
お嬢様「……変身させて娼婦でもやらすか」ボソッ
オーク娘「!?」
メイド「!!?」
「「ッ!?」」ビクッ
お嬢様「ん?勿論冗談だぞ?」
メイド(度重なる疲れでお嬢様が穢れてしまった……ッ!!)ガクガクブルブル
オーク娘(め、目に光が無かったにゃ……)ガクガクブルブル
商人「それと、プレイルームについてですが、そちらも是非働かせてほしいと申し出た方がいるのですが」
お嬢様「うむ、通せ通せ!人手が足りない今ならどんな人材でもウェルカムなのだ!」
商人「えーっと、後悔しませんね?」
メイド「はて?」
オーク娘「よっぽどなのかにゃ?」
商人「会えば分かりますよ、会えば……ではお入りください」
ガチャ
触手「……」
お嬢様「……」
メイド「……」
オーク娘「……」
商人「……」
触手「ど こ 見 て ん の よ !!」
お嬢様「お引き取り下さい」ニコッ
商人「はいはい帰った帰った、お呼びじゃないんだとよ」ズリズリ
触手「何よ!!ガン攻め拘束SMプレイルームを作ってくれるって話じゃなかったの!?」
商人「誰も何も言ってねぇよ」
触手「うっさいわね!!名前が微妙に私と被ってて気に入らないのよアンタ!!」
商人「被ってねぇよ!?"しょ"の字しか合致してないよ!?」
触手「キー!!ちょっと人気があるからって調子に乗らないで!!私だって本気を出せば筋骨隆々ダンディやほっそりハンサムなんてイ・チ・コ・ロよ!!」
触手「そう、私はヴァニティラヴハンター☆」
お嬢様「えい」グッチャアアアア
触手「ぎゃああああああああ!!?やめッ!やめろおおおお!!男に責められるならまだしも女の子供になんて、あああああん///やめろっつってんだろ!?」
お嬢様「アハ、アハ、アハハハハハハ」グシャッグシャッグシャアアア!!
触手「ぎゃあああああああああ!!」
触手「」チーン
メイド「過労が限界を超えましたわ、トリップしていらっしゃるようで」
商人「申し訳ないです……」
お嬢様「さて、ゴミは片付けたしダンジョンの整備だけして今日は休もう」
メイド「痛々しいですわお嬢様……それは私どもでやっておきますので今日はもうお休みください」
オーク娘「後でちゃんと報告するにゃ、だからもう休むにゃ」
お嬢様「アハ、アハ、アハハハハハハハ」
――――――
―――
―
商人「はい、先日の事は忘れて色々と整理しましょうか」
お嬢様「何があったのだ?あの日実はパスタと話をしてからの記憶が無いのだ」
メイド「あの後ぱったりと眠ってしまったのですわお嬢様、お気になさらないて下さいまし」
オーク娘「何も見なかった聞かなかったにゃ、いいにゃ?」
お嬢様「お、おう?」
商人「とりあえずご要望通り宿の拡張が終わりました。前回の会社は使えなかったので日が経ってしまいましたが形にはなりました」
オーク娘「あの大工さん達呼べなかったのかにゃ?」
商人「以前使ったニーア商会という会社の建築部が暴動を起こしたそうで。何でも理不尽な扱いと低賃金、並びに業務上の不正の露出で腹を立てたとか」
メイド「貴女のせいでなくて?」
商人「ただでさえ落ち目で仕事が無かったところを使ったんです。ああは言ってましたが個人的にチップも出してたのでこれでも感謝されたんですよ?」
お嬢様「案外律儀なのだな」
商人「そのおかげで今回は別の業者さんに頼みました。ま、こっちはこっちで普通で面白くないですね」
お嬢様「面白さを求めないでくれるかな?」
商人「それと、ご要望が多かったみたいなので宿泊スペースより先にプレイルームを作らせてもらったのですが……」
お嬢様「そっちはかなり好評なのだ。戦いに疲れた冒険者たちが阿呆のように遊戯に金を落としていくのだ。笑いが止まらんぞ!アッハッハ!」
メイド「お、お嬢様!?」
オーク娘「性格がひん曲がってきてるにゃ……」
商人「換金所はアイテム交換という事で別所で私が出していますが、これ以上台を増やしたり換金などの行為を行うと認可を取っていないので国にガサ入れされますので気を付けてください」
お嬢様「構わん、スロット10台とカードテーブルをもう二台追加で頼むぞ!」
商人「ど、どうなっても知りませんよ……」
お嬢様「そういえばパスタの料理も評判がいいそうだな」
商人「はい、そちらも安定していますね。料理はおいしいし店員さんが可愛いですし」
オーク娘「そういえば、メニュー表に10倍パスタなる物があったにゃ。アレはなんなのにゃ?」
商人「あの野郎!!あれほどパスタ作るなって言ったのに何やってんだ!?」
メイド「……彼がパスタを作るとどうなるのですか?」
商人「原初の地へ誘われるそうです」
メイド「??」
オーク娘「で、何が違うのにゃ?」
パスタ「おう!この生地自体には原料には―――と―――と―――が主に使われてるな!」
オーク娘「?よく聞こえなかったにゃ?」
パスタ「え?だから、―――と―――と―――……あれ、どうしてそこだけ声が出ないんだ……」
店員「聞くも悍ましいモノだからではないですか?」
ピィギャアアアアアア
メイド「……厨房から何かの叫び声が聞こえるのですが」
パスタ「いかんいかん、材料が」
お嬢様「材料!?」
店員「ちょっと黙らせてきますねー」テトテト
お嬢様「……よし」
商人「よしじゃねぇよ」
吟遊詩人「おーい、こっちに10倍パスタなる物を頼むよー。なにが10倍なのかなー」ポロロン
パスタ「あ、はーい、出来上がりがあるので持っていきまーす。ほら、頼むぞ粘土」
「何故俺たちがウェイターをしているんだ……」
「裏方じゃなかったのか……」
パスタ「つべこべ言うな、賄をパスタにするぞ」
「「ヒィッ!?」」
メイド「あら、上手く調教が出来ているようで」
オーク娘「パスタの何が恐ろしいのにゃ……」
お嬢様「あ、道具屋はどうなっているのだ?冒険者たちにとっては回復薬やマジックアイテムの補充は死活問題だろう」
商人「ヌッフッフ、ここにいるじゃないですか。最高の旅商人が!」ドヤッ
メイド「ああ、ちゃっかりしてますわ」
商人「……と、言いたかったんですけどねぇ」
オーク娘「最高じゃないと自覚したのかにゃ?」
商人「違ぇよ。外見てください外」
お嬢様「外?」
ガヤガヤ
「いらっしゃーいいらっしゃーい!」
「こっちの道具は安いよー」
「角ー、角はいらんかねー。出来立てほやほやユニコーンの角ー、100万だよー」ガラガラ
「ねぇ!!ネバネバ粘液いらないそこのボウヤ!!今ならお姉さんの斬りたて触手ついてるわよ!!これを毎日撫でまわして!!あああん///」
「オラ!!金の斧と銀の斧だ!!特価価格で何と1000万!!今なら何と泉の精霊のパンツ付き!そこのブルジョワ冒険者共!!買っていきやがれ!!」
ガヤガヤ
オーク娘「かなりの数の出店が出来ているにゃ」
お嬢様「アイツらーーー!!誰の許しを得てこんなところで物売りなどしているのだーーー!!」ガンガン
メイド「落ち着いてくださいませお嬢様」
商人「誰の土地でもないですから認可も必要ないですしねぇ。ダンジョンがあれば自然と集まってくるんですよ。つーかなんか見覚えのある連中が混ざってるなオイ」
オーク娘「記憶に新しい触手がいるにゃ」
お嬢様「触手……ウッ、頭が」
メイド「全てお忘れになってくださいお嬢様」
幽霊「それじゃあ私たちの仕事もそろそろ終わりかなー。これだけ繁盛すればもう問題ないよね」
子ウサギ「ウッキュウ」
お嬢様「……だれだっけ?」
商人「……何か頼んでましたっけ?」
幽霊「ヒデェなオイ!?こっちはずっと薄暗いダンジョンの中待機したんだよ!?宣伝しまくれ言ったのアンタだろ!?」
子ウサギ「ギュー」バタバタ
商人「あー、そんな事言ってましたね。はいお小遣い、適当に出店でなんか買ってきてください」
幽霊「わーい……じゃねーよ!?ふざけんなよ騙されないぞ!?ええいこうなったらこっちはこっちで勝手にダンジョン攻略して計画ぶっ潰してやる!!行こうウサギちゃん!」プンプン
子ウサギ「ウッキュウ!!」プンプン
お嬢様「止めなくていいのか?」
商人「トラバサミに引っかかって動けなくなるようなヒトですから攻略とか無理でしょうHAHAHA」
オーク娘「しっかり覚えてるじゃにゃいか」
剣士「……」
商人「貴女は貴女でどうしました」
剣士「ぶっちゃけてしまうとダンジョンに興味は無い。出店を回るから金をくれ」
商人「だ ろ う な」
「そうだ、お嬢」
お嬢様「どうしたのだモノマネンド1号」
「1号て……まぁいいか。お嬢宛てに手紙が来ていたぞ」
メイド「ッ!」
お嬢様「これは……」
オーク娘「うみみゃ?なんか立派なマークが付いているにゃ」
商人「おんや?見た事がありますね、確か銘家の……」
お嬢様「……」ビリッ
メイド「ああッ!」
オーク娘「や、破っちゃったにゃ!?」
お嬢様「どうせ帰って来いという催促だろう。今は必要無いのだ。さ、二人とも、ダンジョンに向かうぞ。今日も冒険者から搾り取ってやるのだ!!ニヒヒ!!」
メイド「お、お待ちくださいお嬢様ァーーー!」
オーク娘「……ボスは自分の親の事嫌いなのかにゃ」
商人「親御さんからの手紙でしたか……間が悪すぎですよ1号さん」
1号「だからその呼び方やめ……ッ!?名前が!?」
2号「それじゃあ俺は2号かよ……」
商人「深く首を突っ込む気はありませんが、お嬢さんも何か訳があるのでしょう」
オーク娘「私はお父さんもお母さんも大好きにゃ。だからボスがどうしてああいう態度を取るのがよく分からないにゃ」
商人「誰しもが貴女と同じようにとは行きませんが……流石に心底嫌っているという訳ではないみたいですよ。メイドさんから聞いた話だと、いい親子だって言ってましたし」
商人「ですが、親の言いなりにはなりたくない気持ちもあるんじゃないでしょうか。相当な箱入り娘だって話もしていましたし」
オーク娘「むー、何だか贅沢な悩みにゃ」
商人「私にもまぁ……覚えがあるのでお嬢さんの方に肩入れしてしまいますけど」
オーク娘「……ところで」
吟遊詩人だったもの「」
パスタ「ダメかー。まさか身体がトランスフォームを始めるとは」
店員「ダメでしたねー。もうこうなるって分かってやってたでしょ」
オーク娘「……」
商人「とりあえずパスタ禁止令を発令しましょうか」
――――――
―――
―
メイド「踏破率最大62%、冒険者12層に突入しましたわ」
オーク娘「20層まで開拓しておいてよかったにゃ。罠も配置し直してちゃんと機能しているにゃ」
お嬢様「よし、このまま経過を見るのだ」
メイド「しかし、有名どころの冒険者も来るようになりましたわね」
オーク娘「臆病風のジョニー、穴掘りビー、マッスル武田、騎士竜ヴェイド……うにゃ?ヴェイド?」
お嬢様「その筋ではない我々でも半分くらいは聞いたことのある有名人たちなのだ」
メイド「珍妙な名前が多いですわね」
お嬢様「だが、順調に進んで行っているのは……」
―――
銃剣士「OK、モンスターの方は処理出来るよ」
女盗賊「それじゃあ私は罠の解除するから、引きつけておいて」
銃剣士「ん、分かった。気を付けてね」
女盗賊「そっちも私ほったらかしにして勝手に死なないでよ?」
―――
少女「あわわわ……大した実力も無いのにこんな場所まで来ちゃった……」アタフタ
少女?(オドオドすんな。田舎もんに見られるぞ)
少女「だ、だってぇ……」
少女?(よっぽどヤバい時は俺が代わるから、お前は前にいる連中の後ろについて行け。そうすれば安全だ)
―――
オーク娘「結構前から入っていた二組にゃ」
メイド「あの白い衣装の変な剣を持った男と盗賊、そしてオトコオンナですわね」
お嬢様「有名どころを抑えてのトップなのだ。攻略が早い訳ではないからいいが」
メイド「そういえば一つ問題になっている事がありますわ」
お嬢様「何だ?」
メイド「ええ、冒険者のマナーがなっていないというか何というか……」
オーク娘「ダンジョン内がゴミだらけになってしまっているのにゃ。これで罠が上手く作動しないって事もたまにあるにゃ」
お嬢様「む、それは問題だな。自然身溢れる洞窟美が穢されてしまう」
オーク娘「人工物だけどにゃ」
メイド「口答えはしない!丁度いいですわ、私とこの脳ミソ筋肉で簡単に掃除をしてまいります」
オーク娘「うにゃ!?私もかにゃ!!」
メイド「当たり前ですわ。お嬢様の手を煩わせるわけにはいかないので」
オーク娘「うー……確かに魔物も闊歩しているから迂闊にボスをダンジョン内に出せはしにゃいけど」
お嬢様「では頼むぞ、私はここで管理を続ける。何かあったら呼ぶぞ」
メイド「了解しましたわお嬢様」ニコッ
……
オーク娘「ハァ、中々の重労働にゃ」ズガーーン
メイド「軽々魔物を叩き潰しておいてよく言いますわ」
オーク娘「アイツら邪魔だからどけなきゃいけないにゃ。今のうちに掃除するにゃ」
メイド「ええ、そのつもりですわ」
オーク娘「……何か、話があるにゃ?」
メイド「そういうところは察しがいいのですね。お嬢様の事でお話したかったのですが」
メイド「お嬢様はそりゃあもう大事に大事に育てられましたわ。それはもう目に入れても痛くないくらいに」
オーク娘「うにゃ」
メイド「私が」
オーク娘「お前かよ」
メイド「ですが、そんなお嬢様も日々の生活で退屈なさっていましたわ」
メイド「ある日、私に声を掛けられてある計画を話されたのです……」
―
―――
――――――
お嬢様「私は外が見たいのだ!連れて行くのだ!」
メイド「いけませんよお嬢様、ご主人様と奥様に言われたハズです。まだその時ではないと」
お嬢様「しかし、このままでは腐ってしまうのだ!銘家に生まれたかどうかなど私は関係ない!それでも私は一ゴブリンなのだ!外を見たいと思って何が悪いのだ!」
メイド「お嬢様、私も雇われている身。ご主人様を裏切るような事は出来ませんわ」
お嬢様「……う、うう」
メイド「お、お嬢様?」
お嬢様「どうしてダメなの?いつも一緒に色んなことして遊んでくれるのに……えぐっ、ううう」
メイド「」
――――――
―――
―
メイド「その日の夜、私は警備を掻い潜り、制止に入ったご主人様に目つぶしを食らわせお嬢様を連れて屋敷を脱出しましたわ」
オーク娘「誘拐だああああああああああああああ!?」
メイド「失礼な!愛の成せる技ですわ!!」
オーク娘「いや、アンタ目つぶし食らわせる必要も皆無だったろ。しかも計画って、計画にすらなって無いにゃ!?誘拐の段取りにゃ!?」
メイド「愛の逃避行の邪魔者を排除したまでですわ」
オーク娘「……誰が誰に雇われてたにゃ?」
メイド「お嬢様、ああお嬢様、お嬢様」
オーク娘「五七五読んで誤魔化すにゃ」
メイド「私も、1日2日程度でお嬢様が音を上げてお屋敷に帰られると思ったのですが、これがまた思っていた以上にハングリー精神に溢れていて」
メイド「せめて飛び出した事を無意味なことにしたくないと、ご主人様たちに"自分は守られていなくても立派に一人で生きている"と、そう伝えたいのでしょう」
メイド「きっと、それが出来るようになるまでお屋敷に戻られる気は無いでしょうし、何よりご主人様と奥様の言葉にも耳を貸さないでしょう」
オーク娘「一人って言うのは間違いにゃ。ボス一人じゃ何も出来ないにゃ。私達が3人揃って初めて大きいことが出来るにゃ」
メイド「……」
オーク娘「うにゃ!?な、なんだにゃ!?また殴るのかにゃ!?」
メイド「いいえ、きっとその考えでいいのでしょう。お嬢様も分かっていますわ。だからこそ、せめて自分で自分を認められるまでまだご両親に顔を見せたくないのでしょうし」
オーク娘「うにゃ?」
メイド「さて、長話でしたね。掃除も終わりましたし次のエリアに向かいましょう。オラとっとと歩け!!」
オーク娘「感情の起伏が激しいにゃ……」
……
お嬢様「……」
お嬢様「こっちは全部のエリアを覗けるんだ」
お嬢様「聞こえているぞ、バカ……」
―――
メイド(聞こえるように言ったのですわ、お嬢様)
剣士「しかし、お前もどうしてそう怒る。奴も冗談で言ったに決まっているだろう」モグモグ ポイッ
幽霊「あんね?流石に丸1日放置は辛かったのよ?ウサギちゃんが颯爽と助けに来てくれなかったら私あのまま魔物にグニャグニャに変形させられてたよ?」
子ウサギ「ウッキュン!」モグモグ ポイッ
剣士「アイツもアイツで忙しいんだ、私達まで頭が回らなかったのだろう。まぁいい、怒りは全てそこらの魔物にぶつけろ」モグモグ ポイッ
幽霊「つーかさっきからやたらゴミの出るもの食べてるよね……」
剣士「構わんだろう、どうせ魔物共が漁って食うか土に還る。放っておけ」モグモグ ポイッ
メイド「……」
オーク娘「……」
メイド・オーク娘「「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」」ガクガクガクガク
幽霊「」ビクッ
……
メイド「とりあえずゴミと原因を排除してまいりましたわ」
オーク娘「言っても厳重注意だけにゃ。あの娘達は話が通じて助かるにゃ」
お嬢様「うむ!ご苦労だったぞ!しかし……不味いな」
メイド「何か至らぬ点がございましたでしょうか?」
お嬢様「いや、そうではない。思った以上に進行が早い者が現れてしまったのだ」
オーク娘「うにゃ!?もう13層突破されてるにゃ!?」
メイド「驚くべき速さですわ……あの二組ですか?」
お嬢様「新参だ、昨日まで見かけなかったやつだ!」
オーク娘「にゃんですと!?」
―――
「纏え、応剣」
「応えよ、刃よ……ッ!」
グギャアアアアアア
「下らん、この程度か」
「私達が出張る程でも無かったですね」
「だが不自然なダンジョンの形成だ。調べるに越した事はない」
「そうですかそうですか、私はただ貴方が普段の鬱憤晴らしに政務をサボってここに来たようにしか思えなかったのですが」
「……チガウヨ?」
「今の間は何ですか」
―――
メイド「た、たった一撃でフロアの魔物が……」
お嬢様「け、消し飛んだのだ……」
オーク娘「んー?んんー?」
メイド「何ですか、いの一番に貴女がビビって変な声を上げると思っていたのに。期待外れですわ」
オーク娘「何を期待してたにゃ!?いや、何だろう。顔を隠しているからにゃんとも言えないけど、どこかで見た事のある太刀筋だと思ってにゃ?」
メイド「貴女にそんな実力の離れた冒険者がいる訳がないじゃないですか。頭腐ってるんですか?」
オーク娘「失礼だにゃ!?これでも昔は勇者候補として王都で学んでいたんだにゃ!?」
お嬢様「あら意外」
メイド「無駄なキャリアですわ。頭がよろしくない癖に」
オーク娘「筆記試験は壊滅だったにゃあ」
お嬢様「って!そんな会話をしている場合ではないぞ!」
メイド「そ、そうですわ!新参者がこうもあっさりとダンジョンを解体していくのは由々しき事態ですわ!!」
お嬢様「一度攻略されたという手垢が付けられたダンジョンというものはそれだけで著しく価値が落とされてしまうのだ……ッ!」
オーク娘「あ、そういう間にも他の三組も14層に突入してきたにゃ!」
メイド「キーーーーー!!っつーか何で三組なんだよ!?サラッと混ざってんじゃねーぞ商人ズ!?」
お嬢様「商人ズと言いつつ商人さんはこの中にいないけどな」
―――
「今日はこの辺にしておきましょう。道筋も分かっているし、明日にでも攻略できるでしょう」
「本当ならもっと早く下まで付き進めたんだけどな」
「何分、こういったダンジョンに挑む際には隅から隅までマッピングしなければ気が済まないタチで」
「へいへい、そーですかい」
―――
メイド「た、助かりましたわ!今日はもうお帰りになられるようで!」
お嬢様「あの覆面野郎とフード深く被った女を見かけ次第宿に無理やりにでも押し込めろ!!何としてでも時間を稼がせるぞ!!」
オーク娘「他はどうなってるかにゃあ」
―――
銃剣士「14階に降りてきたはいいけど……」
女盗賊「酷い荒らされ方だねぇ。幸い宝箱は触れられていないみたいだけど」
銃剣士「今日は引こう。この先に進んでもいい予感がしない」
女盗賊「宝は惜しいけど仕方ないか……引き際を見誤ると命がいくつあっても足りないしねぇ」
―――
少女?(化け物が爪痕残して立ち去った後みてーだな)
少女「さ、流石にこれ以上進むのは……」
少女?(俺たちの名前を売るにはまだまだ"箔"が必要なんだ。多少無理してでも進むぞ!)
少女「ヒィィ……もう帰ろうよぉ……」
少女?(あーもうわかったよ!!泣くな!!今日はもうこれでお終いだ!!)
―――
剣士「進めええええええええええええええ!!」バシッ!!バシッ!!
子ウサギ「ウッキュウ!!」バシッバシッ
幽霊「私の上に乗って楽するなよオラあああああああああああああ!!」シュゴオオオオオオ
―――
メイド「14層の惨状を目の当たりにした組は次々と帰還しているようですわ。これを幸いと取るべきか……」
お嬢様「一組おかしくない!?」
――――――
―――
―
翌日
お嬢様「……皆、集まったな?」
メイド「全員いますわお嬢様」
オーク娘「突然作戦会議とは何なのにゃ?」
お嬢様「昨日の出来事は覚えているな?」
商人「突如として謎の二人組が14階層で暴れまわったんでしたっけ?私はその場に居合わせなかったので伝手で聞いただけですが」
お嬢様「ダンジョンというものは攻略されていないからこそ価値が見出されると、そういう話だったな商人さん?」
商人「はい、その通りです。一度攻略されてしまうと、後はおこぼれや取り残し目当てかあるいは腕試しに来る冒険者くらいにしか収益は望めなくなります」
メイド「眼に見えて人が目減りすることが考えられますわ」
オーク娘「うにゃー、困るにゃ。せっかくここまで大きくしたのに」
お嬢様「階層をもっと深くして時間稼ぎなどは出来ないのか?」
商人「その場合は多くのコストをまた要求されますね。楽に出来る方法もあるようですけどこちらは不定期に発生するミッションのクリア報酬ですし」
メイド「難しいですわね。何としてでもあの二人を止めないと大変なことに……」
パスタ「た、たたた大変だあああああああああ!!」ダダダ
お嬢様「む?」
メイド「どうかなさいました?貴方のお店で中毒者でも出ましたか?」
オーク娘「飯食ってぶったおすくらいの事は平気でやってるにゃ。間違いではなさそうにゃ」
お嬢様「ウチは一切の責任は取らんぞ」
パスタ「違うよ!?俺ってそんなに信用無いかな!?」
店員「そんなことより大変なんです!外を見てください!!」
お嬢様「外?」
パスタ「ちょっ、そんな事って……」
1号「おうおう、酷いなこりゃ」
2号「誰だこんな事しやがったのは」
お嬢様「な、何があったのだ!?」
1号「ああ、嬢ちゃんいいとこに来た」
2号「見てみな、死活問題だぜ」
お嬢様「……?」
お嬢様「!?ああああああああああああああああああああああ!!」
ズズーン
メイド「だ、ダンジョンの入り口が……」
オーク娘「瓦礫でふさがれてしまっているにゃ!!一体誰がこんなことを!!」
少女?「ンな!?オイオイこっちは結構急ぎなんだぜ?」
女盗賊「うえぇ!?私のお宝は!?ねぇ!昨日取り漏らした宝箱の山々は!?」
銃剣士「参ったな、ギルドからの調査で来ていたのに。これじゃあ仕事が出来ないぞ」
「酷いな、自然に崩落したにしても偶然としては出来過ぎている」
「私達を警戒した……と考えてもいいかと」
オーク娘(んー、この二人やっぱりどこかであった事ある気がするにゃ)
商人「ハッ!この崩れ方は!」
メイド「知っているのか商人!」
商人「ああいえ、コレ単純に中から連鎖式に崩れたっぽいですね。下の階層のどこかが脆くなってたんじゃないですか?それでズガガーンと」
お嬢様「階層が?」
メイド「脆く?」
オーク娘「えーっと、確か昨日の時点で破損が酷かったのは14層だけにゃ。原因はそこにあるにゃ」
「ですって」
「oh...」
お嬢様「既に探索を始めていた冒険者たちはどうした!?無事か!?」
商人「あ、次々に帰還アイテムで脱出しています。一応入る冒険者さん達にはお配りしていたので。帰還ポイントもほら、そこに設置してあります」
メイド「ナイスサービスですわ」
商人「はぁ?サービスゥ?帰還アイテムと帰還ポイント設置も安くないんですよ?」
メイド「そんなこったろうと思ったよ」
「……用事を思い出した、今日は帰るか」
「そうですね、ここに居ても特に意味は無くなりましたし」
オーク娘「ちょっと待つにゃそこの怪しい二人組!事務所まで来てもらうにゃ!」バッ
「やべっ!逃げるぞ!」
「ったく、面倒事を……」
オーク娘「待つにゃ変質者ーーーー!!」ダダダ
お嬢様「不味いな、こんなタイミングで崩落事故(?)とは……この状態が長引けばせっかく大量に増えた冒険者たちを逃してしまう事になる」
商人「一応宿屋の施設自体は魅力的なので、ここを拠点にして他所へ向かう冒険者もいるからまだ何とかやっていけますが……」
メイド「しかし、それも入口をどうにかしなければ話になりませんわ。私達は宿屋の経営ではなくダンジョンの経営をしているのですから」
商人「公になっていないとはいえ、そりゃそうですよねぇ……」
お嬢様「……中に入ることが出来れば何とかなるか?」
商人「え?あ、はい、一応管理室から数値をチョメチョメすればある程度は修復できるハズです」
お嬢様「ふむ……」
お嬢様「クックックック、アーッハッハッハッハッハ!!」
メイド「お、お嬢様が!?」
1号「とうとう、壊れっちまったか」
2号「南無三」
お嬢様「違う!?馬鹿にすんな!?いい事を思いついたのだ!」
メイド「と、申しますと?」
お嬢様「この状況を逆手に取ろう!至急冒険者ギルドに宿屋名義で依頼を出すのだ!ダンジョンの入り口を塞いでいる瓦礫の除去作業だ!」
メイド「利発ですわお嬢様!冒険者にやらせればこちらが目立たずに済みますわ!」
商人「宿屋名義で出すのもまぁ利益の問題からしても不自然ではないですね」
お嬢様「更にだ!脱出用に作っておいた管理室直通の通路も設置してある!そこから管理室でダンジョンの数値をチョメチョメする!」
メイド「用意周到ですわお嬢様!」
お嬢様「ふふん!それだけでは終わらん!今のうちに冒険者の上位勢に対抗すべく仕掛けをありったけ用意しておくのだ!」
商人「なるほど、このアクシデントは準備期間として取ると」
お嬢様「崩壊の程度は分からんが、ダンジョン自体は完全に元に戻す必要も無い。新たな仕掛けを作り、冒険者たちにここを"不思議のダンジョン"と錯覚させるのだ!」
メイド「えっと、不思議のダンジョンってなんでしたかしら?」
商人「入る度に用意されたパターンのマップからランダムに抽選されて形を変えるダンジョンの事ですね。このキットにはその機能は備わっていないですが、手動でなら擬似的に出来ない事もありません。冒険者がその階に居ない事が条件ですが」
お嬢様「あえて新たな地形を現す事で知名度を上げる!古参の冒険者にはモチベーション的な意味で悪いが、ここいらで"後戻りはできない"という緊張感を持たせる!」
メイド「敏腕ですわお嬢様!冒険者たち自身の練度を上げるのですね!」
お嬢様「そうすれば自ずといい装備を持ってまたここに挑んでくるだろう。我らの肥やしとなる為にな!!」
お嬢様「では早速行動なのだ!1号2号パスタ組と商人さん!みんなで手分けして上位の冒険者達と接触して奴らの特徴を探るのだ!」
商人「管轄外ですが……ま、乗り掛かった舟ですし、そのくらいなら付き合いましょう!」
1号「聞き込みか……」
2号「苦手なんだよな」
パスタ「パスタの件で利用客減っちゃったから保障しかねる」
店員「私が間を持たせますから何とかしてください。あと自覚があるならパスタ作るな」
お嬢様「勝負は開通するまでの数日……ッ!本当ならば連中にはお引き取り願いたいところだがそんなそぶりは見せない!」
メイド「我々こそがやるしかありませんわ!」
お嬢様「ん?それよりアイツはどこ行ったのだ?」
メイド「あのオークめ……お嬢様が再起の計画を立てているというにも関わらずどこ行ってんだ!」
オーク娘「ここにいるにゃ、つーか逃げられたにゃ」ボロッ
商人「……あれ?ところで私の連れの二人と一匹みませんでした?昨日から姿を見せないんですけど……まさかダンジョンの中に入りっぱなしとかじゃないだろうな?」
―――
幽霊「瓦礫の中に隠れるのよ!!」
剣士「閉じ込められた!!」
子ウサギ「ウキュキュ……(罠か……)」
――――――
―――
―
銃剣士「しかし、ツいていないね。こんなことに巻き込まれるなんて」
女盗賊「あーもう!!なんで瓦礫の除去作業なんてしてんだか!」
銃剣士「ハハ……君はやってないじゃないか」
女盗賊「依頼を受けたのはアンタ!私は知らない!」
銃剣士「誰かがやらないと行けない事だし、何より他の冒険者も数多くこの依頼を受けている」
メイド「人数も集まっていますし、前金を出していますので悪い依頼では無いと思いますわ」
銃剣士「あ、メイドさん。こんにちは」
メイド「お茶が入りましたわ。どうぞ」
女盗賊「どうもどうもー」
メイド「貴女は依頼を受けてないでしょうに……」
女盗賊「まー堅い事は言わずにさ♪」
銃剣士「しかし、どうして貴女方がこのような依頼を?」
女盗賊「除去作業なんてほっといても誰かが勝手にやりそうなものだけどねー」
メイド「私どももこうしてダンジョンの真横に宿を経営している身、目玉となる物が無ければ商売あがったりですわ」
メイド「故に、こうして冒険者ギルドに依頼することで迅速に素早くダンジョンも再開できるというもの。放置していただけではいつ再開されるか分かりませんし」
銃剣士「なるほどね。一つの事柄で共倒れしてしまうとは、随分とシビアな業界だ」
女盗賊「いや、食い扶持潰される私達も笑えないから」
メイド「外に来ている商人のヒト達も意気消沈していますわ」
メイド「それよりも、お聞きしたいことがあるのですが」
女盗賊「聞きたい事?ダンジョンの収集物とか隠し場所は教えなよ、こっちだって仕事でやってんだから」
メイド「別にそんなものは興味ありませんわ(知ってますし)。私が知りたいのはお二人の関係ですわ」
女盗賊「は、ハァ!?な、なんだよそれ!!」
銃剣士「僕達の関係か……」
女盗賊「ちょッ!?アンタも何まんざらでもない顔してんだ!!」
メイド「おやおや、微笑ましいことで」
銃剣士「何てことは無いよ。僕と彼女は道を同じくした仲間ってところかな」
女盗賊「そっ、男女の仲を期待したのならお門違いってワケ」
メイド「男と女が旅をしていればそりゃあそう思われても仕方がないのではなくて?」
銃剣士「ハハ、まぁそうなるよね」
女盗賊「ならない!つーかそんな踏み込んだこと聞くな!」
メイド「これは失礼を。楽しそうに旅をしておられるのだと思いましてついつい」
銃剣士「こっちもこっちで訳ありだからあまり聞かれたい事ではないけれどね」
女盗賊「迷惑だっちゅーの」
メイド「利害の一致という事ですか……それでは、もし片方がピンチに陥ったら、貴方達は片方を助ける気でいますか?それとも……」
銃剣士「僕は助けるよ。彼女は僕の数少ない味方だ、仲間だ。決して見捨てるようなことはしない」
女盗賊「私は自分が一番だからコイツを差し出せと言われたらとっとと置いて逃げるけどね」フフン
メイド「と、申しておりますが?」
銃剣士「こんな娘だよ。"もしも"の事が起こればちゃんと行動してくれるいい子だよ」
女盗賊「今までそんな場面無かっただろうが」
銃剣士「フフ、どうだったかな。僕はいつも君に助けられている気がするんだけど」
女盗賊「勝手にそう思っとけ!」
メイド「ウフフ、仲が本当によろしいことで」
女盗賊「どこがだ!!」ダンダン
メイド(……よし決めた!)
メイド(こいつらは私が直々に手を下してやる。こんの甘ったるい関係の連中など根絶やしにしてくれるわ!!)ギリギリ
……
少女?「"小国の姫行方不明、同盟国であるジストの捜索協力を拒否。その真偽は……"」パサッ
店員「Aランチセットお待たせしましたー」
少女?「あいよ、どうも。ん?テレビ欄?そんなもん見てどうすんだよ……」
パスタ「……」
店員「……」
少女?「何だよ、二人して俺を見て」
店員(独り言がちょっと多すぎないですか?)ヒソヒソ
パスタ(ちょっと痛い子かしら)ヒソヒソ
少女?(聞こえてるっての)
少女(アハハ……口に出して喋るとああなるよね)
少女?「ところでさ、なんかこの店ヒト少なくないか?ヒトもいなきゃあ活気も無いが」
パスタ「悪かったな」
店員「あー……ちょっとあのパスタってヒトが問題を起こしまして」
少女?「ふぅん。ま、安くて美味いからいいけどさ」モグモグ
店員「飲食店の問題とか真っ先にその食べているモノの関連なのによく食事を続行しますね」
1号「お客さん。お客さんって双子か何かか?ほい、コーヒー」
少女?「ん、どうも。で、どうしてそう思う?」
2号「お客さんによく似た可愛らしい女の子をダンジョンでよく見かけると聞いているからな」
1号「宿でもよく見かけるとよ」
少女?「どこにでもいるじゃねぇか……ま、アレも俺だよ。気にすんな」パサッ
パスタ「一粒で!」
店員「二度おいしい!!」
少女?「何がだよ」
少女?「そうだ、俺からも二つほど質問させてほしい」
パスタ「答えられる事ならな」
少女?「この写真の人間を探しているんだが」ピラッ
店員「あら、可愛い子」
パスタ「そうかァ?釣り目で生意気そうにしか見えないけどな」
少女?「悪かったな!?」
1号「どうしてアンタが反応するんだよ」
2号「悪いが知らんな」
少女?「そか、ならいい。ヒトが集まる所なら誰かしら知っていると思ったんだがなぁ」
1号「で、もう一つの質問は?」
少女?「ああ、魂を身体から無理矢理にでも引き離す魔法を知らないか?似たような物でもいい、それを探している」
パスタ「それなら知っているぞ」
店員「"契約魔法"ってやつですね!」
少女?「マジか!?」
少女「当たりだ!」
1号「うわビックリした!?」
2号「突然声色が変わったぞ……」
少女「あ、し、失礼しましたー!」
少女「そ、それで、どんな魔法なのでしょうか!私にも習得できるものなのでしょうか!」
パスタ「あー、残念ながら遥か古代の魔法の上に禁術扱いでな……」
店員「今扱えるヒトって多分いないんじゃないですかね?」
パスタ「理論が確立されてはいるが何故か成功しないんだったか?」
店員「最近挑戦した大魔法使いの人は失敗しちゃって2か月意識が戻らなかったそうですよ」
少女?「そういうの求めてないから!!もっと現実的なもの!!」
パスタ「我が儘だなぁ」
1号(魂抜き出す時点で現実離れしてるよ)
少女?「しゃーない。当初の予定通り、冒険者ギルドに名前だけ売って路銀稼ぎに戻るか」
少女(元の場所に帰らなきゃいけないしねー)
2号「お客さん、もしもその写真の男が居たり魔法の使い方が分かったりしたら飛びつくタチかい?」
少女?「当たり前だ!その為にやりたくも無い旅してんだよこっちは!」
1号「……」ニヤッ
2号「……」ニヤッ
パスタ(今更だけどあのハニワみてぇな粘土って何者なんだろうなぁ)
店員(ホント今更だな)
……
「除去作業の依頼、受けたいんだけど」
「ダメです。立場を考えてください」
「俺は勇者として俺の勤めを果たしたいだけだっての!」
「ダメなものはダメです、今はそれ以上でしょう。大人しく傍観でもしておいてください。大体ダンジョンの調査なんてのもオマケなのに攻略しようだなんて……」ブツブツ
「大義名分があって飛び出してきたんだが……ハァ、やっぱお前と来るんじゃなかった」
「半人前の癖に口だけは達者なのですね。ほとほと呆れかえります。実の無い空っぽの果実のような上辺だけ着飾った貴方が一人でふらついて何になるのです」
「ヒデェ毒舌だな」
「暴言を吐いているだけです」
「だが、目的の人物はしっかり見つけたからそれでいいだろう」
「後は"あの娘"のプライドを傷つけずにどう連れていくかが問題ですが……」
オーク娘「見つけたにゃ!!不審者二人!!こんな崖の上から宿屋を見つめてどうするつもりにゃ!!」ズザー
「まーた出たよ」
「あのヒトも何も変わっていませんね」
オーク娘「さあここでお縄を頂戴するにゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァ……」ズササー
「……」
「……そのまま崖下に滑り落ちて行ったぞ」
「相変わらずおバカなことで。やれやれってやつですね」
――――――
―――
―
ダンジョン管理室
ピコピコピコ
お嬢様「フ、フフフ……フフフフ!!自分の才能が恐ろしい!!」
お嬢様「手に入れた奴らの弱点を元にダンジョンの再構築をここまで完璧に行えてしまうとは!!
メイド「ご立派ですわお嬢様!!」
オーク娘「私の設置したトラップも絶好調にゃ!!ただ、完全に連中用に作ってあるから汎用性は無くなっているにゃ」
お嬢様「それもまた一興!!フッハハハハハハハ!!今回の大改装で並の冒険者たちは一からの出直し!!」
お嬢様「そしてトップ3の奴らは深階層にて各個撃破!!私のプランは完璧なのだ!!」
ピロン♪
オーク娘「うみみゃ!?」
メイド「ここでミッションだとぅ!?」
お嬢様「フフン!願ったり叶ったりだ!!最終決戦の場に相応しい課題を私に課すがいい!!」
―cace3・最下層の秘宝を守り抜け!―
メイド「最下層の?」
オーク娘「秘宝?そんなのあったかにゃ?」
お嬢様「む?20層には何があった?」
メイド「えっと……冒険者たちから奪った装備がズラッと並んでいる部屋がありますわ」
オーク娘「そういえば物置同然になっていたにゃ」
お嬢様「ふむ、もしもの為をためを思ってあれらを攻略者にくれてやろうと思ったのだが」
メイド「ダンジョンの攻略を根本から否定するようなミッションですわね」
お嬢様「しかし!やるしかないのだ!!」
オーク娘「時間制限書いていないけどどの程度守ればいいにゃ?」
商人「ヒエラティックテキストの図解を見ると、どうも一番初めに最深部に侵入したパーティを倒せばいいようですね」
メイド「居たのかよ。ってか図解ってそれもテキストの意味ないのでは……」
お嬢様「ならばよし!!あと数日以内に連中を仕留め!そして20層で覆面とフードの二人組に最後の戦いを挑む!!」
お嬢様「皆の者!私に続け!!私たちの戦いはこれからなのだ!!」
オーク娘「ご愛読ありがとうございましたにゃ!!」
メイド「次回の新作にご期待くださいですわ!」
商人「何言ってんだアンタら!?」
※続きます
……
銃剣士「参ったねこれは」
女盗賊「あ゛ー、私のお宝ー……」ガクッ
銃剣士「迷宮変化まで行われているとなると相当な技術がこのダンジョンに使われている……僕たちのいる世界では考えられないな」
女盗賊「魔術的要素をあまり感じないから多分そうなんだろうね」
銃剣士「ま、先に進めば色々と見えてくるよ。ほらそこ、宝箱があるよ」
女盗賊「うっひょー!拝借拝借♪」
―――
メイド「あの銃剣使いと盗賊のチームが7層のチェックポイントを回りましたわ」
お嬢様「クックック、知らず知らずのうちに誘き寄せられているとも知らずに」
オーク娘「やっぱり一度ダンジョンをリセットしちゃうと進みが悪いにゃ」
お嬢様「ふむ、他の冒険者達の歩みも遅いがそれも狙いだ」
メイド「早く深階層に辿り着くのはあの3チームでしょうし、余計な横やりが入らなくて済みますわ」
お嬢様「上の階層の冒険者達はそっちはそっちで四苦八苦しているしな!アッハッハッハ!」
オーク娘「徘徊している魔物の分布まで変わってるから準備不十分で脱落者続出にゃ」
メイド「装備品の回収が捗って美味しいですわ」
商人「あのヒト達はワザワザ8階層を丸々使って退治するそうですが……」
お嬢様「ああ、皆が手に入れた情報を元にそれぞれの弱点を付いた仕掛けを用意したのだ!」
オーク娘「覆面とフードの連中は情報を掴めなかったけどにゃ」
メイド「役立たずめが」
オーク娘「仕方ないにゃ!!あの二人が逃げるのが悪いのにゃ!」
メイド「あからさまに追う方もどうかと思いますわ」
お嬢様「まーまー落ち着け、その件についてはこちらも手は打ってあるさ」
メイド「柔軟ですわお嬢様」
商人「アンタ毎回違う言葉でお嬢さん褒めてるな」
メイド「その程度の事、メイドの嗜みですわ」
商人「それで、彼らに対する対策とは?」
お嬢様「まー見ていれば分かる!」
オーク娘「8層の突入を確認したにゃ!」
メイド「オーッホッホッホ!!それではこのワタクシめがあのノロケ組に裁きの鉄槌を下しますわぁ!」
―――
女盗賊「あー疲れた、よっこらせ」
銃剣士「結構あっさりここまで入れたね」
女盗賊「ダンジョンの構造自体に慣れたからじゃない?いくつかパターンがあるみたいだし、それで慣らされたのかも」
お嬢様(そりゃそうだ、そうなるように誘導していたのだからな)
ゴゴゴゴゴゴゴ
銃剣士「ん?」
女盗賊「何だろ、どこかで罠でも作動したのかな?」
銃剣士「僕は何も触っていないよ?」
女盗賊「私も同じく。じゃあ他の冒険者が引っかかったんでしょ。あーあー可哀想に」
メイド(可哀想な目にあうのはお前たちだ!そのもたれ掛った壁に運命を委ねるといいですわ!!)ピッ
ベコン
銃剣士「ッ!危ない!!」
女盗賊「へ?なっ!?壁が!!ちょっ!うわああああああああ!!」
銃剣士「しまった!間に合わない!!」
ズズズ……
銃剣士「閉じてしまった……どうして壁にいきなり穴なんか。おーい!!大丈夫かーい!?」
イテーヨ!!タスケロー!!
銃剣士「……うん、大丈夫そうだね。すぐにそちら向かう道を見つけるから待ってて!」
―――
商人「おんや、分断と来ましたか」
メイド「名付けて!!"死が二人を別つまでに合流できるかトラップ"ですわ!!」
商人「なんじゃそのネーミングセンスは」
メイド「黒歴史ノートぶちまけた貴女には言われたくはありませんわ」
お嬢様「あの二人の強みは戦闘は銃剣士に、探索は盗賊に任せていた所にあるのだ!」
メイド「はいお嬢様。しかしそれは時として弱点にもなり得ますわ」
オーク娘「どういうことにゃ?」
メイド「では、おつむの緩い貴女に特別解説をしてあげましょう」
オーク娘「にゃー」
メイド「あの手の役割を明確に分けたツーマンセルの冒険者は基本的に二人で行動していなければ機能しなくなりますわ」
商人「それで二手に無理矢理別れさせたと。でも、それでは不完全ではないですか?盗賊さんも戦闘が出来ない訳ではありませんし、あの銃剣士さんも探索が出来ない訳ではないですよ?」
メイド「ノンノン!次がこの二人の重要な所!」
お嬢様「あの銃剣士の男は決して仲間を見捨てはしないと言い切ったのだ。それは今までの行動を見ていても偽りはないだろう」
オーク娘「にゃるほど。そこを付け込んで罠に嵌めるのかにゃ?」
お嬢様「まだ生ぬるい!もう片方の盗賊の性格を存分に使わせてもらうつもりだ!」
―――
女盗賊「痛たたた……ったく、何でこんな仕掛けがあるんだよ」
女盗賊「ともかく、あいつは止めても私を探して回るだろうし。ここで大人しく待っていた方がいいかな」
ピロン♪
女盗賊「んー?なんだこれ?」
―隠し部屋解放!お宝解禁!―
女盗賊「なぬ!?どこだ!言え!!」
―表示される地図を参照―
女盗賊「うっへへへ、こりゃこんなところに止まってる訳にゃいかなくなったワケだ」
―――
オーク娘「……凄い勢いで引っかかったにゃ」
お嬢様「勿論罠の一種だからそんな隠し部屋なぞ存在しないぞ。この手の人間の扱いなんて造作もないことだ!操作する側からしてみれば楽なものなのだ!」
メイド「大賢ですわお嬢様。それではあの女を捕まえる準備をいたしましょう」
商人(やっべぇアレ私も多分引っかかるわ)
―――
銃剣士「……?」
銃剣士「……??」
銃剣士「!?!?おかしいぞ!?ここさっきも通った気がするんだけど!?」
―――
商人「こっちはこっちで何をしているんですか」
お嬢様「ん?そこには私は特に仕掛けを仕込んではいないぞ?」
オーク娘「時間経過と道を通った回数で通路が変形するようにしてあるにゃ。予想より早く合流されても困るからこういう措置をしたにゃ」
お嬢様「ハハ、地味にえげつない事をする」
メイド「お嬢様に黙って仕掛けを作るとは、首を刎ねられても文句は言えませんわ!!」
オーク娘「何でにゃ!?」
―――
銃剣士「さて、ようやく少し広い部屋に出たけれど……高い壁だなぁ。登るのは少し辛いか」
―――
オーク娘「うにゃ?今いる部屋は何にゃ?」
メイド「あ、あれ?おかしいですわね、もうとっくに盗賊の方が捕まっていてもおかしくないのですが」
お嬢様「本来ならあの場で捕えた盗賊をエサに銃剣士を仕留める罠が次々と作動する予定だったのだが……えぇっと」ピッポッパ
―――
女盗賊「おっ宝おっ宝楽しいな〜♪」
女盗賊「おお!あっちに宝箱ー♪……ぎゃあああ!!モンスター!!」
女盗賊「あ!あっちにも宝箱ー♪……ぎゃあああ!!モンスター!!」
―――
オーク娘「罠は踏まない癖に変なところで学習してないにゃ」
メイド「蛇行し過ぎて目的の場所にまだ辿り着いていないですわ!!」
お嬢様「ええい!ヒトという生き物はこれだから!!」
商人(私も絶対同じことしてるだろうなぁ)
―――
女盗賊「よっし!隠し部屋付近に到着!!」
お嬢様(よ、ようやくか……無駄に精神的に疲れたぞ)
メイド(アクシデントは付き物ですわお嬢様。後で疲れに効く特性ゼリーをお持ちいたしますわ。さ、気を取り直しましょう)
女盗賊「確か、この壁に向かって三回ノックして。現れるパネルにコマンド入力っと。上X下BLYRA……」
女盗賊「開いた!それじゃあ早速中のお宝を〜♪……ん?」
触手「フフフ、待っていたわ可愛い坊や!!さぁお姉さんと一緒に夜のランデv」
女盗賊「……」ガシャン
触手「痛い!?何でヒトが喋っている途中で閉める!?つーか男じゃねぇのかよ!?女かよ!?消え失せろ女にゃ興味ねぇんだよ!痛い!?お願い止……やめろっつってんだろ!?」
女盗賊「……」ガシャンガシャンガシャン
触手「」
―――
オーク娘「……」
メイド「……お嬢様」
お嬢様「使えそうなモノはとことん使おうとした結果なのだ。それ以上は聞くな」
メイド「お嬢様の行動を信じますわ」
商人「はーい触手さん聞こえますかー?そのヒト連れて指定の部屋まで来てください。そこで貴女好みの男のヒトが居ますから」
―――
女盗賊「はーなーせー!!」
触手「放せと言われてそうですかと放す奴がいると思わない事ね。さ、貴女をエサにあの可愛い子をゲットしちゃおうかしらね」
女盗賊「フン、アイツを舐めない方がいいぞ。正確な射撃でお前のそのずんぐりむっくりの本体から伸びた触手を一本ずつ削ぎ落とす事も出来るんだからな」
触手「あら、私は責めるのも責められるのも好きよ」
女盗賊(聞きたくなかったそんな事)
触手「目標地点に到着よ!!さぁ命乞いをおし!!この下にいるあの子に武装解除を促し自分だけが助かりたいと声高々に叫ぶといいわ!!」
女盗賊「くそっ!私に構うな!!早く私ごとコイツを撃てーーーーーー!!」
触手「……」
女盗賊「……」
触手・女盗賊「「 い ね ぇ し 」」
―――
お嬢様「……」
メイド「……」
オーク娘「あーもうグダグダにゃ」
商人「来るまでに時間をかけすぎましたね。とっとと他の場所の探索に向かったみたいです」
―――
女盗賊「……もう怒った」
触手「何がよ?ってぎゃあああああ!!仕込みナイフううううう!?」ザシュッ!!
女盗賊「私が戦闘出来ないと思ったかマヌケ!頭来た!!もう帰る!!」
触手「ちょッ!斬りつけておいて何よその態度!!私の乙女の柔肌あああああああああああ!!」ザシュッ
……
銃剣士「あ、いたいた!おーいどこ行っていたの?」
女盗賊「来るのが遅い!!もう帰るよ!!」
銃剣士「へ?お宝は?」
女盗賊「いらん!!」
銃剣士「アハハ、分かったよ。それじゃあ脱出アイテムを使おうか」
女盗賊「……理由は聞かないの?」
銃剣士「さしずめ、僕が君を見つけるのを遅れたから機嫌を悪くしたってところかな」
女盗賊「……迎えに来るって言ったのに」ムスッ
銃剣士「ゴメン、僕の配慮が足りなかったね」
女盗賊「ふん!まーいいけど、次遅れたら今度こそただじゃおかないからね!」
銃剣士「フフ、肝に銘じておくよ」
―――
お嬢様「なんだこの茶番」
メイド「落ち合ったときに大喧嘩で破局するという筋書きを想像していたのですがダメでしたわ。爆発しろ」
オーク娘「呆気ない幕切れだったにゃ」
商人「性格悪いですね貴方達」
メイド「最後まで甘ったるいモノを見せつけられましたが、まぁ結果オーライですわお嬢様」
お嬢様「う、うむ!なんか全てにおいて納得が出来んがまぁ良しとしよう!!」
商人「ふぅ、一つは片付いたって事ですね」
オーク娘「先が思いやられるにゃ……」
触手「……私は……何のために……」ガクッ
……
少女?「さぁて、話を聞きつけてまたダンジョンに潜ってみたが……」
少女(契約魔法の情報があるって話だったよね)
少女?「ああ、身体を手に入れなきゃ使えないが、学んでおくに越した事はない。元の身体に戻る為だったらなんだってやってやるさ」
―――
オーク娘「ん?」
お嬢様「今なんでもするって言ったよね?」
商人「聞こえてない聞こえてない」
メイド「手筈通り、彼女は9層で仕留める手筈となっておりますわ」
商人「6層には何を用意したのですか?別段他の階層と変わった所は無いようですが」
オーク娘「今回は誘き寄せまくって罠に嵌める戦法を取るにゃ!」
お嬢様「先の二人組は変にグダグダな状態で終わったが今回はキッチリと戦略を立てさせてもらったぞ!説明パネルかもーん!!」パチンッ
メイド「こちらに用意させていただきましたわぁ!」ガラガラ
商人「えっと、何々?」
お嬢様「まず奴らが居る階層にある画面を表示させるのだ!」
メイド「その後、引っかかった彼女が指定したポイントに一直線!」
オーク娘「そこでズドーンドギャギャーンといった具合にゃ」
商人「へぇ、何言ってるか全然分かりません」
お嬢様「まぁ見ているがよい!粘土どもにコピーさせた写真を6層に公開するぞ!」ピッ
―――
ピンポンパンポーン♪
少女?「ん?なんだ?」
―迷子のお呼び出しをします―
少女(迷子だって。大変だね、こんなダンジョン内で)
少女?「いや大変ってなんだよ!?何で洞窟内でアナウンスが流れるんだよ!?そこに疑問持てよ!?」
―この男の人が9層にて赤髪の女の子を待っています。心当たりのある方はすぐにお迎えに来てください―
ブォン
少女?「……」
少女(あれー、この顔どこかで……)
少女?「俺の身体あああああああああああああ!!」
少女(うわ!?脅かさないでよー!)
少女?「どこだ!?最短のルートはどこだ!!」
少女(お、落ち着いて!ダンジョンの構造が前と変わってるからそう簡単には……
―こちらの地点にエレベーターをご用意させていただきました、すぐにでも……―
少女?「あっちかあああああああああああ!!」ダダダダ
少女(キャーーーーーーー!!)
―――
お嬢様「フハハ!あっさり引っかかりおったわ!!」
メイド「見事ですわお嬢様」
オーク娘「さぁ9層に降りてきたが最後!私が用意した罠の数々が襲い掛かるにゃ!!」
―――
ゴウンゴウン
少女(本当にあったねエレベーター……)
少女?「ふ、フフフフ……飛んで火にいる夏の虫ってやつだ。こうもあっさりと目的の物を見つけるとはな」
少女(……)
少女?「どうした?喜べよ、ようやく元に戻れるかもしれないんだぜ?」
少女(絶対におかしいよ、こんな都合よく魔法の情報が入ったり身体が見つかったり……)
少女?「どうあれ行動しなきゃいけないだろ、例えそれが罠だったとしても。俺は一縷の望みにかけてその罠を踏んでいく覚悟をもってるんだ」
少女(それは知ってるけど……)
少女?「大丈夫だ、俺がいる限りはお前を危険な目に合わせたりはしねぇ。約束する」
少女(……うん!分かったよ。取り戻そうね、全てを!)
少女?「ああ、この先にあるすべてを!!」
―ピンポーン 9階です―
少女?「扉が……」
少女(開く……)
剣士「ん?」
少女?「あっ」
少女(あっ)
お嬢様()
剣士「……」
少女?「……」
剣士「見つけた」ニヤッ
少女?「いやああああああああああああああああああああああああ!!」ピピピピピ
少女(え!?ちょっと!?何で扉閉めるの!?何で逃げようとしてるの!?)
少女?「無理ッ!!絶対に無理!!蹂躙されて終わる!!前戦って歯が立たなかったんだもん!!」
少女(さっきの意気込みは何だったの!?)
少女?「夢でも見てたんじゃねぇか!?俺は俺の命が大事なんだよ!!元の身体とか知るか!!」
少女(酷い自己矛盾を見た)
剣士「逃がすかッ!!」ガキンッ!!
少女?「うわああああああああ!!エレベーターが氷漬けにされた!!」
少女(いやああああああ!!早く逃げてええええええええ!!)
剣士「クッヒヒヒ……アッハッハッハッハ!!」ガンッガンッガンッ
―――
商人「あーもうあの娘ったら、ここ数日見ないと思ってたらまーだダンジョン内をうろついてたんですか!」
オーク娘「……」
メイド「……お、お嬢様?」
お嬢様「だ、ダンジョン改築中になぜ弄れない階層があったのかと思っていたが、まだ中にヒトが居たのか……」
オーク娘「何で気が付かなかったにゃ!?」
お嬢様「だ、だってしばらくしたら弄れるようになってたから誤作動程度にしか思っていなかったのだ!」ウルウル
商人「他の階層に移動してただけですねそれ」
メイド「テメェお嬢様泣かせてんじゃねぇよ?あぁん!?」ギリギリ
オーク娘「そんなつもりはないにゃ!!誰かが突っ込まないと突っ込み不在になる状況だったから仕方なくにゃ!!」
オーク娘「あ!そ、それでも結果はいい方向に転がっているにゃ!画面を見るにゃ!」
メイド「あん?」
―――
剣士「逃げながら戦うのがお前のスタイルか?つまらん、見損なったぞ!」ジャキンジャキンッ!!
少女?「チッ!だったら見逃せっての!!」
剣士「生憎、一度標的を決めたら倒すまでとことん追跡するタチでな。悪く思うなよ」
少女(氷が後ろまで来てるよ!!)
少女?「畜生!手当たり次第凍らせたり切り刻んだりしやがって!少しは手加減しやがれ!!」
―――
お嬢様「ああーーーーーーー!!アイツ何してくれているのだ!!」
オーク娘「罠をぶっ壊しまくってるにゃ!!何考えてるにゃ!!」
お嬢様「それどころかダンジョンの備品まで次々と……ああ!あのフロアの柱、高かったのだぞ!!」
メイド「ああ宝箱まで……!これでは9層がハズレ階層扱いされてルート開拓後に素通りされてしまうのが目に見えてしまいますわ」
お嬢様「商人さん!アイツを止めろーーーーーーーーー!!」
商人「いやぁ、今あの娘達も冒険者扱いですので。神様視点の私たちが直接介入するのもどうかと」
お嬢様「誰が連れてきた疫病神だと思ってんだ!?」
オーク娘「うみみゃあ!?最後の罠部屋まで来てしまったにゃ!?」
お嬢様「にゃにーーーーー!!」
―――
剣士「フン、やれば出来るじゃないか。ここまで粘るとは……」
少女?「化け物が……」
少女(ど、どうするの?私の魔法で切り抜ける?)
少女?(無理だ。前みたいに反撃準備に入られたらお前じゃ避けられない)
少女(むぅ……)
剣士「まぁ、追いかけっこもそろそろ終わりとしよう。諦めて私に斬られるか、それとも有り金全部置いていくか……」
少女?「追剥目的だったのかよ!?タチ悪いなアンタ!?」
少女(ッ!!)
少女?「どうしたこんな時に!」
少女(あ、あれを見て!!)
ズーン
剣士「……ん?随分と存在感のある箱だな」
少女?「あの隙間から見えるのは……まさか!!」
少女?(俺の顔だ!!)
少女(……あれ?ちょ、ちょーっと近くに寄ってもらえる?)
少女?「ん?ああ、分かった」
剣士「……嫌な予感がするな」スッ
少女?「ほら、ここでイイか?っつーか早くここから俺の身体出そうぜ」
少女(あのさ、よーく見てからそういう事言おう?ね?)
少女?「んー?あれ?」
少女(……これ、ただの……)
少女?「写真引き延ばしたやつ貼り付けただけじゃねーか!?つーか中身何が入ってるんだよコレ!!」ガバッ
少女(ちょ!?そ、そんな不用意な……)
―はずれ―
少女?「」イラッ
少女?「」ゴゴゴゴゴゴ
少女(あ、あの……)
少女?「散々期待させやがってコレかよ!!管理者出て来い!!俺がぶった切ってやるああああああああ!!」グシャ
少女(ああ、そんな酷い……大体こんなダンジョンに管理者なんているわけ……)
―管理者権限により、条件が達成されました。自爆装置起動、爆発まで3・2・1―
少女?「へ?」
少女(あーあー……)
*チョドーン*
―――
オーク娘「や っ た ぜ」
お嬢様「結 果 だ け が 残 る」
メイド「貴女のところの娘は回避したみたいですわね」
商人「なんか申し訳ないですねー。あの娘危機回避能力高いもんで」
お嬢様「フフフ!気にするでない!誘き寄せてくれたと思えば大したことではない!」
メイド「お嬢様、今回の被害総額は軽くこのくらいかと」カタカタチーン
お嬢様「……必要経費だ!(泣)」
メイド「太っ腹ですわお嬢様……うう、懐が寒い」
オーク娘「ボスの前では口答えは厳禁だにゃー」
メイド「うるさい!!分かっていますわ!!」
商人「あのー、まぁ少しくらい私が負担しても……」
メイド「当たり前ですわ!!さぁ貴女はさっさと今の冒険者の装備品を回収して外に追い出してやりなさいな!!」
オーク娘「人使いが荒いにゃまったく」
―――
少女?「」プシュー
少女(そんなうまい話がある訳ないよねー……って言うか、このダンジョンって人工的なものなんだ。ふーん……)
……
お嬢様「だーっはっはっは!飲め飲め食え食え!今日は私の奢りだー!」
メイド「鷹揚ですわお嬢様」
商人「いいんですかね?私まで参加しちゃって」
オーク娘「当面の敵だった二組を撃破したにゃ。商人さんの協力もあったからこそ出来た事にゃ!」
剣士「ああ、感謝しろ」ガツガツ
メイド「お前は出て行けよ」
商人「他の二人はどこに行ったか分かりませんか?貴女と一緒に行動していると思ったのですが」
剣士「知らん。二手に分かれた後、合流しようと思ったときには待ち合わせ場所の構造が変わっていて結局逸れたままになってしまった」
店員「追加のお料理お持ちしましたよー」
オーク娘「よーし!そろそろ一緒に食べるにゃ!」
パスタ「いいのか?」
メイド「ええ、勤務時間外に作らせてしまったお詫びですわ」
1号「……」
2号「……」
メイド「お前たちは早く明日の準備でもして寝てろ」
1号「この扱いの差よ」
2号「賄い貰っているから文句も言えんが」
お嬢様「しかし、残る一組はかなりの強敵だ」
オーク娘「出来る限りの妨害はしたけど16層まであっさり突破されてしまったにゃ」
商人「罠を手当たり次第壊されていないだけマシですね。他の冒険者は大体5層前後をウロウロしてますし」
メイド「今日もまた引き上げてくれたからよかったものを、明日は無いと思った方がよろしいですわ」
お嬢様「うむ、奴らの事は探れなかったが、私が持てる全力をぶつけるつもりだ。なんなら最終手段も用意してある」
メイド「最終手段とは?」
お嬢様「それは秘密なのだ!だがミッション達成もしたいから出来るだけ20層でケリを付けるつもりでもいる!」
オーク娘「ハイリスクだにゃあ」
メイド「そうだ、お嬢様。デザートのゼリーをお持ちしましたわ」
お嬢様「わーい!青いプルプルのゼリーなのだ!」
パスタ「ほぉ、綺麗に作るもんだな」
メイド「お嬢様がいつも喜んでお食べになるので。私も身を削る思いで張り切って作っていますわ」
店員「作る側にとっては、食べる人の喜ぶ顔が一番嬉しい物。そう思いますよね?」
パスタ「えっ」
店員「えってなんだよクズ料理人」
お嬢様「甘くておいしいのだ〜♪」モニュモニュ
オーク娘「美味しそうだにゃあ」
メイド「"おいしそう"ではなく"美味しい"のです」
商人「よっぽどの自信作なんですか」
メイド「そりゃあもう」
お嬢様「うむ!口の中でプルプルと、まるで生きているかのように小躍りしているのだ。それでいてお腹の中でジワーっと広がっていく感じで……」
パスタ「好さげだな……なぁ、材料だけでも教えてくれないか?最悪作り方は自己流で出来るけど」
メイド「お嬢様だけが味わうものでございますわ。全てが秘匿情報となっておりますゆえ」
パスタ「ありゃ、残念」
剣士「……」
メイド「おや、どうなさいました?私をじっと見つめて。私はロr…小さい女の子にしか興味ありませんわよ?」
商人「言い直しても意味変わってねーぞ」
剣士「いや、お前」
メイド「何でしょう?」
剣士「……少し背が低くなったんじゃないか?」
メイド「私はスライムですので多少は可変しますわ。栄養でも取れば元の大きさに戻りますし」
剣士「そうか」ガツガツ
商人「アンタホントどうでもいい事に気が付くんだから。ウチの財布事情にも気が付いてほしい位ですけどね」
剣士「知っているが口に出さんだけだ」
商人「オイ」
お嬢様「おお!見ろ!ゼリーが私を目の前にして伸び縮みを始めたぞ!」プルプル
オーク娘「本当にゃ、ボスの言った通りまるで生きているみたいにゃ!」
メイド「ウフフフ、お嬢様に食べられることで至高の喜びを感じているのですわ」
プルプルプル
パスタ「……」
店員「……」
商人「……あの、ゼリーの材料ってもしかして」
パスタ「言うな」
店員「身を削るってそういう……」
メイド「お代わりもありますわ、お嬢様ァ。ウフフフフフフフフフフ」
お嬢様「いや、もういいのだ。ふぁ……私はそろそろ眠るとしよう」
メイド「ならば私が添い寝をして差し上げますわ!!」シュバッ
パスタ(動きキモッ)
お嬢さま「うむ、それでは部屋に戻ろう」キュッ
オーク娘「わかったにゃーボス」
メイド「!?」
メイド「お、お嬢様……何故そこのブタ娘の手を握っておられるのですか……」
オーク娘「ブタとは失礼にゃ。オークは普通のヒトと顔は変わらないにゃ」
商人「旧魔王軍にオークらしいオークの総隊長が居たそうですが」
オーク娘「それはヒトそれぞれにゃ」
メイド「シャラーップ!!テメェに話なんざしてねぇ!!お嬢様!!ワタクシめがお嬢様が眠りにつくまで隣で子守唄を歌い続けますわ!!」
お嬢様「イヤダー」
メイド「ホワイ!?何故!?」
お嬢様「だってお前」
お嬢様「寝る前にベタベタ引っ付いてきて嫌なんだもん」
メイド「」ピシッ
-
1: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:38:54.93 ID:+VhfUZM00
お嬢様「よーし!みんな集合だー!!私から直々に話がある!!」
オーク娘「うにゃー」
メイド「お茶が入りましたわお嬢様」
お嬢様「うむ!それでだな皆の衆よ……」
オーク娘「あ、今日宝くじの当選発表の日なのにゃ。新聞新聞……」
メイド「おや、茶柱が立っていますわ。吉兆ですわお嬢様」
お嬢様「話を逸らすな貴様らーーーーーーーーー!!」
2: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:41:33.03 ID:+VhfUZM00
お嬢様「いいか!!我々の現状を忘れたワケではあるまいな!!」
オーク娘「うにゃ?なんか特別な事でもあったかにゃ?」
お嬢様「……活動資金が底を付きました」ズーン
メイド「気を落とさないでくださいましお嬢様。実家に帰ればお金など……」
お嬢様「うるしゃーい!!なんだこの状況!!昨日までちゃんと働いていたはずなのに!!」
オーク娘「正当な報酬も貰っていたはずだにゃ」
メイド「はいお嬢様。しかし今はこうして苦肉の策として洞窟の中で野宿ですわ」
オーク娘「近所の岬に住むお婆さんから教えてもらった場所にゃ、静かでいい所にゃ」
お嬢様「そもそもここにお宝があると聞いて来たのにそれも見つからず……チクショーーーーーー!!」ダンダンダンッ!!
3: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:42:32.18 ID:+VhfUZM00
オーク娘「まーそう焦らずに、今まで通りのんびりするにゃ。はいお菓子」
お嬢様「わーい!……って誤魔化すな!!貴様ら今まで我々が行ってきたここ三日の活動内容を思い出してみろ!!」
オーク娘「えっと、三日前は……何だったかにゃ?」
メイド「町で清掃業者のバイトで大掃除ですわ」
オーク娘「それで結構お金入ったにゃ」
お嬢様「二日目!!」
オーク娘「んー……何だったかにゃ?」
メイド「宅配業者のお手伝いで配達していましたわ」
オーク娘「それでさらにお金が入ったにゃ」
お嬢様「昨日!!」
オーク娘「それは覚えているにゃ!露店を開いて食べ物を売り歩いていたにゃ!」
メイド「ガス爆発に巻き込まれ全て消し飛びましたわ」
お嬢様「……」
お嬢様「……」ジワッ
メイド「お嬢様の泣き顔が可愛いですわ」
オーク娘「慰めろよ」
4: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:43:06.43 ID:+VhfUZM00
お嬢様「嘆かわしい!なんと嘆かわしい事か!!世の人々はこんなにも頑張っている我々に冷たい視線を浴びせるだけで誰も手を差し出そうともしなかった!」
メイド「御労しいお嬢様。お嬢様を蔑ろにするとはあの町の連中め……ッ!!」
オーク娘「ボス、爆発の後に飴ちゃん貰って頭撫でられて慰められていたにゃ」
お嬢様「奴ら私を子ども扱いしおってーーーーーーー!!」ジタバタ
オーク娘「そこ?」
メイド「私のお嬢様に気安く触りやがってあの町ぶっ壊してやろうかァ!?ああァン!?」
オーク娘「何だこの……何だ?」
5: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:43:36.60 ID:+VhfUZM00
お嬢様「くっ……そ、それでこれからの方針だが」
オーク娘「うにゅ?うにゃにゃ?」
メイド「お嬢様のありがたいお話が始まるというのに、その臭い口を閉じろメスブタ」
オーク娘「私の口臭はミント味にゃ!!それよりコレを見てみるにゃ!」
メイド「(味……?)で、何ですか新聞なんて指さして。貴女の役にも立たないようなそんな行動で飯が食えますか、さぁお嬢様そんな事より麗しきその声で私にどうか罵……いえ、ご命令を」
お嬢様「んー?ん!?」
オーク娘「なんか宝くじの数字が完全一致しているにゃ。これどれだけお金がもらえるんだにゃ?」
メイド「」
6: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:44:33.60 ID:+VhfUZM00
――――――
―――
―
お嬢様「だーっはっはっは!大金持ちなのだーッ!」
メイド「やりましたわお嬢様」
オーク娘「私の買った宝くじが当たったのに何で取り上げられているにゃ」
メイド「黙れ醜悪生物。お前が我々の活動資金から着服して買ったもんだろ、文句を言うな」
オーク娘「違うにゃ、月のお小遣いだにゃ……」グスン
お嬢様「なに安心しろ!お前へのお小遣いはしばらく弾ませてもらう事にする!何と言ってもお前の手柄なのだから!」
オーク娘「うにゃー!」パァァ
メイド「チッ、私からお嬢様を事あるごとに奪いやがってコイツ……」ボソッ
7: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:45:15.88 ID:+VhfUZM00
お嬢様「それで、この金を使って少々やってみたいことがあるのだが」
オーク娘「うにゃ?」
メイド「それは構いませんわお嬢様。そのお金は 全 て お嬢様のものなのですから。お菓子を買うなり贅沢するなりどうぞご自由に……」
お嬢様「馬鹿者!私は金持ちになる為に家を飛び出してきたわけではないのではない!私が一人で生活が出来る事を実家に知らしめる為にために大金が必要なのだ!何よりいい考えがある!」
メイド「し、失礼しました……と、申しますと?」
お嬢様「うむ!この金を元手に商売でも始めようと思ってな!」
メイド「聡明ですわお嬢様。さらに増やしていこうという算段ですわね」
8: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:46:15.55 ID:+VhfUZM00
オーク娘「商売にゃ?というと定食屋さんとか?パスタ売るにゃ?」
お嬢様「何でパスタオンリーなんだよ。ともかく、チマチマするより高収入の物を一発当てようと思っている!」
メイド「それはいい考えですわお嬢様。具体的には……」
オーク娘(ダメなパターンな気がするにゃ)
お嬢様「クックック……既に手筈は整っている!!」
メイド「流石ですわお嬢様」
お嬢様「偶然にも我々に協力してくれると申し出てくれた人材がいるのだ!では来てくれ!かむひあー!」
9: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:46:56.21 ID:+VhfUZM00
商人「はいはーい!ありがとうございます、通りすがりの旅商人の者でーす。以後、お見知りおきを」
オーク娘「着物着た犬の獣人にゃ。東洋人とはまた珍しい」
商人「狼です。そこはお間違えなく」
メイド「それはどうでもいい話ですわ。それで貴女、どうして我々に接触を?」
商人「いやぁ、そこのお嬢さんがとても凛々しくも美しかったもので、高貴な方だとお見受けしましてね?」
商人「そこで!まぁ私のちっぽけですが質のいい商品をもしかしたら有効活用してくれるのではないかと踏んだわけですよ!!」
お嬢様「フフン!そうかそうか、私から出るオーラは隠しきれなかったという訳か!」
メイド「眩しいですわお嬢様。この女性も見る目があるようで、ウフフフフフフ」
商人(ホントは換金所から大金もって出てくるのをたまたま見てただけですけどね。いやー楽な商売できそうだなオイ)
10: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:47:46.32 ID:+VhfUZM00
お嬢様「でだ、商人さん。今の私に相応しいものを売ってくれるとのことだが、早速見せてくれぃ!」
商人「はい!そちら方の要望にお応えして、一発ガツンと収入が見込めるツールをご用意いたしました!それがこちら……」ゴソゴソ
商人「お手軽簡単ダンジョン製作キットー!」濁声
お嬢様「おお!いかにもそれっぽい!!」
オーク娘「ダンジョン?」
メイド「製作キット?何を目的としてそんなものを……」
商人「上がる税収減る収入、そんな厳しい世の中だから、当ててみようか一攫千金!」
商人「夢見る少女じゃいられない、食っていくには元手が必要!そんな悩みを解決してくれる逸品がコイツという訳なのです!」
11: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:48:46.28 ID:+VhfUZM00
お嬢様「そ、それでそれで!どうやって使うのだ!?」ワクワク
メイド「期待に胸を膨らませるお嬢様……ああ、可愛いですわお嬢様」
商人「使い方は簡単、今ここにいる洞窟に設置して……よっこらセット。スイッチを押すだけ!!」ブイーン
オーク娘「うみみゃあああ!?なんか辺りが歪み始めたにゃ!!」
商人「洞窟を異界化させますので悪しからず」
メイド「地味にとんでもない事をしてますね」
12: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:49:27.53 ID:+VhfUZM00
お嬢様「おお、なんか広くなったのだ」
商人「擬似的に作り出したとはいえ、ダンジョンは発生した時点で誰の所有物でもありません。ここが誰かの所有地という訳ではない限り、冒険者ギルドに書類を提出すればすぐにダンジョンとして運営できるようになりますよ」
メイド「う、運営!?」
オーク娘「にゃ!?ダンジョンって誰かが開いてるものなのかにゃ!?」
商人「はっはー、お客さん知りませんね?今のご時世そんな危険な天然ものを国が放置しているワケないじゃないですか。冒険者ギルドとグルになって冒険者たちを誘き寄せるエサにしてるんですよ、こういうのは」
商人「そうすりゃ町の活性化にも繋がりますし、人の流れや物品の流れも容易に操作出来ますからねぇ」
メイド「あ、あまり聞きたい情報ではありませんでしたね……」
オーク娘「世界って怖いにゃ……」
13: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:49:58.96 ID:+VhfUZM00
お嬢様「うおー!すっげー!」
オーク娘「ボス!こっちに何かあるにゃ!」
商人「HAHAHA、気に入ってもらえたようで何よりです」
メイド「……それで、おいくらでしょうか」
商人「まぁ本体価格はザッとこんなもんで」カタカタ チーン
メイド「ンな!?足元見ている訳ではないでしょうね?」
商人「そーんな怖い顔しないでくださいよ。今回サービスで80%オフとお菓子つけますらかー、ホラホラ。ドーンと買っちゃってくださいな」
メイド「胡散臭い値引きですわね」
商人「……維持費も馬鹿にならない上に中身ほぼ空っぽのオプション別売りなのに誰がこんなもん通常価格で買うんですか。私もとっとと掃きたいんですよコレ」
メイド「ああ、そういう……」
14: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:50:56.23 ID:+VhfUZM00
メイド「しかし、それなら購入するのを渋ってしまいますわね」
商人「そう言わずに!ダンジョン経営は当てたら以後の収入は爆発的ですし、名のある冒険者さえ釣れれば一気に知名度も上がります。なんなら追加料金払って頂ければサクラも用意して……」
メイド「貴女、自分でコレを使わないのですか?」
商人「私は一攫千金当てるよりも、レアなアイテムを地道に売り買いしている方が性に合ってるので」
メイド「……」ジー
商人「そ、そんな目で見ないでくださいよー、アッハッハ」
お嬢様「ねーねーコレ買おうー?」
メイド「お、お嬢様!?」
商人「ほーらー、お宅のお嬢さんもそう言ってますしね?今ならリンゴ飴も付いちゃいますよー!」
お嬢様「わーい!」
メイド「ハァ……分かりました。資金もまだ余裕がありますし、お嬢様が喜ぶならそれで」
商人「毎度アリー!んじゃあここに手続きのサインを」
15: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:51:43.44 ID:+VhfUZM00
オーク娘「ボスー何食べてるにゃ?」
お嬢様「リンゴ飴ー。お前の分もあるぞー」
オーク娘「わーい!……じゃなくて見てみるにゃ!宝箱にゃ!」
お嬢様「おお!こんなものまで付いてくるのか!」
商人「おんや?異空間を作り出すだけだった気がしたんですがねぇ。前のコレの所有者の忘れ物ですかね?」
メイド「待て中古かよオイ」
オーク娘「早速開けてみるにゃ!」
お嬢様「ワクワクドキドキ……」
16: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:52:36.51 ID:+VhfUZM00
ボフン
オーク娘「うみみゃ!?」
お嬢様「グヴォッフォ!?」
メイド「お嬢様ああああああああああああああああ!?テメェなに晒すド腐れオーク!?お嬢様を傷物にする気かボケェ!!」
オーク娘「私のせいじゃないにゃ!宝箱の罠にゃ!!つーか私が一番の被害者だにゃ!?」
商人(!)
お嬢様「ケホッケホ……酷い目にあったのだ」
メイド「ええい処分ですわ処分!!こんなもの焼き捨ててしまいなさい!!」
オーク娘「えー、勿体ないにゃ」
メイド「ボケカスアホんだらぁ!!そんな事お嬢様が許す訳ねぇだろミミクソォ!!」
お嬢様「そうだな、釣った冒険者達に対してのトラップも必要だ。これも有効活用させてもらうとしよう」
メイド「仰せのままにお嬢様」ニコッ
オーク娘「何だこの扱いの差は」
17: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:53:23.88 ID:+VhfUZM00
商人「よっぽどでしたらそちら、私が引き取りましょうか?もう少し良い物と交換も出来ますが」
お嬢様「いいや!私に一杯食わせた罠箱だ!私が使ってやらんで誰が使うというのだ!」
メイド「寛大ですわお嬢様」
商人「うーん……ま、いいでしょう。了解です、それなら大切に扱ってください。ともかく今日は私は失礼しますね」
お嬢様「もう行ってしまうのか?」
商人「私も忙しい身ですのでねぇ、今後の商売の仕入れや弱みやなんたらや。色々と準備が必要になると思いますので。あ、これ私の携帯の電話番号です。何かあったら連絡ください」
メイド「はいどうも」
商人「それじゃあまた近いうちにー!」スタコラサッサ
お嬢様「行っちゃったな」
18: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:54:22.55 ID:+VhfUZM00
お嬢様「さーて!それでは手続きをしてダンジョンの経営を開始するとするぞ!」
メイド「英明ですわお嬢様。おいそこのオーク、お嬢様と私は冒険者ギルドへ行くのでとっとと馬車を用意してきなさい」
オーク娘「へいへーい、分かったにゃ用意してくりゃいいんだろもう」
お嬢様「フフフ、お宝に釣られた馬鹿な冒険者共よ……我が術中にはまるがいい!!」
メイド「勇ましいですわお嬢様」
お嬢様「そう!このダンジョンに数々の仕掛けに手も足も……仕掛け……釣るお宝……」
メイド「……あっ」
オーク娘「うにゃ?」
お嬢様「……」
お嬢様「そんなものどこにあるというのだあああああああーーーーーーーーーーーー!!?」
19: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:55:06.48 ID:+VhfUZM00
――――――
―――
―
数日後
商人「やーやー、まーたご指名いただいて光栄です」ニヨニヨ
メイド「テメェ始めからそのつもりだったろ」
商人「ええまぁ、先にもちゃーんと"オプション有り"という種の事を貴女に伝えたハズですが」
お嬢様「そうなのか?」
メイド「ぐっ、サラリと流れた話でしたので……不覚ッ!」
オーク娘「それより、どうして呼び出してから来るまで時間がかかったにゃ?」
お嬢様「そうだぞ、私が電話したのはあの後すぐだったのだぞ」
商人「こちらも色々と準備がありましてねぇ。ダンジョンのオブジェクトなんてそうそう扱ってませんので」
メイド「後から仕入れたのかよオイ」
20: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:55:41.18 ID:+VhfUZM00
お嬢様「それでどんなものがあるのだ!見せてくれ!」
商人「ほいほい、例えばこんなのですね。ライトアップ松明ー!」
メイド「……松明は元々ライトアップ代物でなくて?」
商人「ふふん、そんじょそこらの松明と一緒にしてもらっちゃあ困りますねぇ奥さん!」
オーク娘「じゃあ何が違うにゃ」
商人「ダンジョンの通路内って場所にもよりますが、まぁ基本的に暗くて狭くて進みづらい!これが何を意味するか分かりますか?」
お嬢様「?」
メイド「さぁ?そんなものなのではないですか?」
商人「分かってないですねぇ。落ちるんですよ!」
オーク娘「なにがにゃ?」
商人「客入りの回転数が」
メイド「身も蓋も無い事を言いますね」
21: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:56:27.39 ID:+VhfUZM00
お嬢様「まぁ確かにヒトが多く出入りするのは重要だが……」
オーク娘「あからさまに作られた感じがするにゃ。流石に私でも変だって気が付くにゃ」
商人「商売する上で客の出入りは計算に入れておいてください。とにかく今はお金が欲しい時期!変な拘りは破産に直結ですよ!」
商人「不自然だと思われない程度に散漫させておけばいいんですよ。ほら洞窟に掛けてあっても不自然じゃないナチュラルタイプ!20本セットでお安くしておきますから」
お嬢様「もっとこう罠とかを期待していたのだが」
商人「よくぞ気が付きました!!そんな希望もあるだろうと思いましてこんなものもご用意いたしました!!」
お嬢様「うおお!!」
オーク娘「こ、これは!!」
商人「振り子式ギロチン」
お嬢様「まって」
22: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:57:42.26 ID:+VhfUZM00
商人「何ですか、こういうの望んでたんでしょう?ほーら、こんなキュウリもスパンッと!」スパンッ!!
お嬢様「ダメだろ!?死人が出るぞ!?」
商人「ごっこ遊びでダンジョン経営出来ると思うなよ!!そんなんで世界を取れると思うなーッ!!」
お嬢様「取らねぇよ!?いや他にもっとあるだろ!?何で突然殺意に満ち溢れたもの出すかな!?」
商人「ダンジョンでの取得物は基本的に見つけた者勝ちになるんですよ。なのでダンジョン経営での利益は冒険者に追剥かけるか副収入かのどっちかになるんですよ」
メイド「何と合理的な事か」
お嬢様「納得するなよ!?流石に殺生は認めないぞ!?」
メイド「とのことです、もっとマイルドなのはございませんか?」
商人「まー私も血なまぐさい物は勘弁被りたいので一種のジョークですよ、あんまり死者を出すと国に目を付けられますからねぇ」
お嬢様「だったらやめろよ!?」
23: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 17:59:02.15 ID:+VhfUZM00
……
商人「お買い上げありがとうございましたー☆」
メイド「ま、また出費を……」
お嬢様「必要経費として割り切るのだ!」
オーク娘「まだまだお金はタップリあるにゃ!」
商人「まーダンジョンとしては一応形にはなった所でしょうか」
メイド「してやられた感がありますが……」
商人「今後冒険者の出入りが増えるにあたって物足りなさも出てくるでしょう。その時はまた私を呼んでください」
お嬢様「ああ!また頼むのだ!」
商人「ではではー」
24: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:00:02.19 ID:+VhfUZM00
お嬢様「フッフッフ!内装の準備も整った、冒険者ギルドに届けでも出した、適当なアイテムも買い足してダンジョンにばら撒いてやった!さぁ来たれ冒険者共!その身朽ち堕ち我が糧となるがよい!」
メイド「勇猛ですわお嬢様」
オーク娘「流石ボスだにゃ!それじゃあそろそろ外に出て様子を見守るにゃ」
お嬢様「え?」
メイド「は?」
オーク娘「ん?」
お嬢様「いや、我々の拠点はここだぞ?」
メイド「監視も兼ねなければなりませんし」
オーク娘「こんなダンジョンのど真ん中に居たら魔物だと間違われて冒険者から襲われるにゃ。下手すりゃ適当な理由付けてボコッてきそうにゃ。冒険者とはそういうものにゃ」
お嬢様「……」
メイド「……」
お嬢様「管理部屋とか無いの?」
メイド「ありませんわお嬢様」
25: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:01:21.62 ID:+VhfUZM00
お嬢様「ど、どどどどどどうしよう!このままでは我々が討伐されてしまうではないか!」アワアワ
メイド「こんな時こそ平常心ですわお嬢様、まだこのダンジョンの存在は知られてはいないハズ。正式にここの存在を知られるにはまだ時間が必要です、今からゆっくり脱出すれば何の問題もありませんわ」
「お、ここが新しく発見されたダンジョンか」
「一角千金狙ってきたが、どんな宝が眠っているのやら」
「フフフ、腕が鳴るわ!!」
オーク娘「にゃあーーーー!!冒険者がゾロゾロ入ってきたにゃー!!」
メイド「」
お嬢様「もうダメだぁ……お終いだぁ……勝てる訳がない……」
ピロン♪
お嬢様「ん?」
26: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:02:17.47 ID:+VhfUZM00
―case1・冒険者を撃退せよ―
お嬢様「ファ!?」
オーク娘「なんだにゃこの表記は!」
メイド「我々の頭上に浮かび上がりましたわね」
商人『お、繋がった繋がった』ザザー
オーク娘「そして突然の通信にゃ」
お嬢様「お、おい商人さん!これは一体何なのだ!?」
商人「まぁまぁ落ち着いて。軽ーいゲームですよ」
お嬢様「ゲーム?」
27: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:02:57.09 ID:+VhfUZM00
商人『このダンジョンキット、まぁ知っての通りマジックアイテムの一種なのですが』
商人『侵入してきた冒険者に合わせて、製作者側が行えるミッションが発生するんですよ』
メイド「また難儀な……」
商人『ダンジョン内を駆けずり回って冒険者たちの身ぐるみを剥いでやってください。彼らもそういう事承知でこの職業やってますし』
お嬢様「そ、そうは言われてもだな」
商人『大丈夫大丈夫!内部の事については貴方達に理がありますし、力で叶わなくとも仕掛けられたトラップの数々で応戦してやってください』
商人『それに、ミッションをクリアすればダンジョンに色んな機能が追加されていったりするのでなるべく消化してくのをお勧めしますよ』
オーク娘「本当にゲームみたいだにゃ」
28: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:03:38.48 ID:+VhfUZM00
お嬢様「くっ!こうなったらやってやる!二人とも!明日の生活がかかっている以上迷ってはいられぬぞ!」
メイド「承知いたしましたわお嬢様。例え日の中水の中お嬢様のスカートの中、どこまでもお供いたしますわ」
オーク娘「にゃ!!こんなところで潰れたくはないのにゃ!何とかして乗り切って見せるのにゃ!」
「ん?おーいそこのヒト達ー」
お嬢様「く、来るなら来い!相手になってやろるぞ!」
オーク娘「やろるぞー!」
「(やろるぞ?)ああいや、ひょっとして同業者?」
お嬢様「へ?」
29: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:04:17.56 ID:+VhfUZM00
「私達、ここのダンジョンの噂を聞きつけていち早く来たんだけれど」
「一番乗りだと思ったら他の冒険者が先に来ていたとはな」
「新しく発見された場所だから、まだ踏破もされていないと思ったんだがなぁ」
お嬢様「ん?あれ?」
メイド(お嬢様!ここは話を合わせますわよ!彼らは私達の事を冒険者だと思っております!)
お嬢様(お、おう!つまりこのまま油断させて罠に嵌めてしまえばいいという事だな!)
メイド(鋭敏ですわお嬢様。ではさっそく……)
オーク娘「あの部屋に沢山罠があるにゃ!行くんだったらあの部屋からの方がいいにゃ!」
お嬢様「」
メイド「」
30: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:05:16.68 ID:+VhfUZM00
メイド「テメェこの雌豚ァ!!何抜かしてやがる手筈と違うだろゴルァ!!」ギリギリ
オーク娘「はにゃ!?罠がある部屋に連れていくんじゃないのかにゃ!?」
お嬢様「何でそんな事を口に出した!?言え!!」
「お、あっちは罠部屋なのかい?」
「ありがとう、警戒して進めるよ」
「ええ、助かるわ。開けた場所に罠部屋が設置されているという事は、そこにお宝があるかもしれないって事だし」
メイド「……」
オーク娘「……誘導出来たにゃ」ドヤッ
お嬢様「お前そこまで考えて……」
メイド「ワケないですわお嬢様」
31: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:05:48.18 ID:+VhfUZM00
お嬢様「ともかく結果オーライというやつだ。それよりも、あそこの部屋にはどんな罠が仕掛けてある?」ヒソヒソ
メイド「罠の配置は全てアイツに一任したので私には……オイ、ちゃんと作動するんだろうな?」
オーク娘「私は工作の成績だけは良かったにゃ!大丈夫にゃ、問題にゃい!」
メイド「お遊戯でやってんじゃねぇんだよこっちは……」
「部屋が見えてきた」
「ん、随分と明るいな」
「怪しいわね……警戒しましょう」
32: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:06:24.22 ID:+VhfUZM00
オーク娘(見るにゃ!!この誰もが引っかかるような渾身の罠の配置を!!)
「……」
「……」
「……」
メイド「……バナナですわ」
お嬢様「バナナが部屋の中央に吊るしてあるな」
オーク娘「むっふん」ドヤァァ
33: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:07:08.36 ID:+VhfUZM00
オーク娘(誰もがあのバナナに目を向けるにゃ。釘付けにゃ!!そしてバナナを中心に罠が作動するにゃ!!)
お嬢様「……」
メイド「ここでコイツをあのバナナのある場所まで投げ飛ばせば罠が全始動してコイツを始末出来るのでしょうか」
オーク娘「酷い!?」
「あ、明らかに……何だ」
「このダンジョン踏破はそう難しく無さそうだな……」
「と、ともかくバナナは避けて行きましょうか」
お嬢様「全てにおいて後手後手だよ!?どうすんのせっかく用意したお宝持ってかれちゃうよ!?」
オーク娘「大丈夫だにゃー」
34: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:07:48.39 ID:+VhfUZM00
「しかし、バナナを中央に置いてそこを重点的に松明でライトアップって」
「しかも妙に部屋が広いし。まぁおかげで回り道が出来るんだけど」
「アッハッハ!案外バナナ祭る為に作ったダンジョンかもな!その名もゴリラのダンジy」ズボッ
「!?」
「え?何!?」
メイド「!?」
35: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:08:25.74 ID:+VhfUZM00
「あ、穴だ!!落とし穴だ!!」
「そ、そんな!?何でこんな隅っこの方に!?」
「先に進むのは不味い!!一旦引き返……うわああああああああああああああ!!」ズドンッ!!
「あ、アレーーーーーーーーーーーン!!」
お嬢様「引き返した瞬間壁があのヒト押し出したぞ!?」
メイド「あ、あれではしばらく立ち上がれませんわ」
「ぐッ!お、俺の事は気にするな……に、逃げるんだァ……」ガクッ
「クッ!後で必ず助けに来るから!!」
パッ
お嬢様「ファ!?」
メイド「今度は何ですの!?」
「あ、明かりが消えて……ッ!」
36: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:08:57.43 ID:+VhfUZM00
お嬢様「何も見えないのだ!」ウルウル
メイド「お嬢様、私にしっかり捕まっていてください!何が起こるか見当もつきませんわ!!」
ズガンッ
ドサッ
お嬢様「ヒィィ!!」
オーク娘「いっちょ上がりにゃ」
メイド「はい!?」
37: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:09:27.26 ID:+VhfUZM00
オーク娘「今明かりを点けるにゃ」パッ
「」
お嬢様「し、死んでいる!」
メイド「死んでいませんわお嬢様」
オーク娘「峰内ちにゃ、命に別状はないにゃ」モグモグ
メイド「こんな時になにを食ってんだよテメェは」
38: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:10:51.69 ID:+VhfUZM00
お嬢様「一体何が起こったのだ?」
オーク娘「中央のバナナに気を逸らせて置いて部屋の隅にいくつか落とし穴を設置しておいたにゃ」
オーク娘「同じルートで引き返した場合に壁のプッシュトラップが発動して他の落とし穴に落下させる手筈だったけどこっちは失敗にゃ。気絶したから良かったけど」
メイド「……部屋をやけに明るくしていた理由は……」
オーク娘「物理行使しなければならない場合の最終手段にゃ。生物が一番に反応して動きを止めるのは光、二番目が音にゃ。突然部屋の明るさが変われば誰だって驚くにゃ」
お嬢様「で、部屋の明かりを消した……と」
オーク娘「得物を誘い込むような情報工作は得意だと言ったハズにゃ」ニヤッ
メイド(コイツこええええええええええええええ)
39: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:11:40.20 ID:+VhfUZM00
オーク娘「ボス、さっさと身ぐるみ剥ぐにゃ。初の収入だにゃ」
お嬢様「お、おう!よくやった!それでは戦利品をいただくとしよう!!」
メイド「切り替えが早くて優秀ですわお嬢様。それではこの冒険者のようなボロ雑巾たちはダンジョンの外に捨ててきますわ」
お嬢様「お前の方が順応してるよね……」
メイド「ま、貴女にしては及第点といったところでしょうか。所で、仕掛けを無視してバナナを取りに行った場合はどうするつもりだったのですか?」
オーク娘「最悪、あのバナナは保険にするつもりだったにゃ。アレ、腐っているにゃ」
お嬢様「ハハ、またエグイ事をする」
オーク娘「食べたら最後、吐き気がしばらく止まらなくなるにゃオエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」
メイド「さっき食ってましたね」
お嬢様「そんなこったろうと思ってたよ」
40: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:12:06.48 ID:+VhfUZM00
……
―mission complete!―
商人「いやーやりましたね皆さん!」
メイド「肝が抉り取られるような気持でしたわ」
お嬢様「大丈夫?」
オーク娘「自分のお腹の欲求に耐えられなかったにゃ……」
商人「ノした冒険者さんたちは冒険者ギルドの方に送り付けておきます。これでここのダンジョンの危険度も他の冒険者さん達に認知されるでしょう!」
41: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:12:40.36 ID:+VhfUZM00
お嬢様「ん?それじゃあ誰も寄り付かなくなるんじゃないか?」
商人「ダンジョンは危険であればあるほど、いいお宝が眠っていると相場が決まっているんですよ。冒険者さん達はその最奥に眠る宝箱を開けた時の一喜一憂、カタルシスを欲しているのです」
商人「高難度のダンジョンを攻略したとなれば名前も売れて更なる利益につながりますからね。願ったり叶ったりですよ」
メイド「そしてより強い装備を持った冒険者たちがまた入ってくる……と」
商人「ご明察!!リンゴ飴一個プレゼントゥ!!」
メイド「あ、どうも」
お嬢様(いいなぁ)
42: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/12(日) 18:14:02.85 ID:+VhfUZM00
お嬢様「あ、それでダンジョンから指定されたミッションをクリアしたのだが、何がもらえるんだ?」
商人「おお、そうでしたね!ダンジョン内で使える仕掛けが増えましたよ」
メイド「へぇ、何が出来るようになったのですか?」
商人「それは次の改築のお楽しみって事で」
お嬢様「クックック……これで私は一歩ダンジョンマイスターへと進んだという訳か!」
商人「アハハ……唐突に一番初めに見たような単語が初登場しましたが……」
商人「ともかくお疲れ様です。今日はもう侵入してくる冒険者さんは居なさそうなので、ゆっくり休んでください。ダンジョン内で欲しい機能があれば私に仰っていただければ追加しておきますよ」
お嬢様「そうかー」
メイド「そうですかー」
お嬢様「……」
お嬢様・メイド「管理室、ください」
商人「ですよねー」
オーク娘「うにゅぅ……」オエエエエ
48: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:12:45.18 ID:y2Sg8QH10
――――――
―――
―
お嬢様「やーど宿宿ー♪」
オーク娘「フカフカのお布団にゃー♪」
メイド「……」
お嬢様「どうした、浮かない顔をしているな」
オーク娘「久しぶりの宿にゃ、そんな険しい顔をしなくてもいいにゃ」
メイド「いえ、お嬢様。一つお伺いしたいことが」
お嬢様「何なのだ?」
メイド「今我々がいる宿の事なのですが」
メイド「何 故 ダ ン ジ ョ ン の 真 横 に 存 在 し て い る の で す か」
49: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:13:30.99 ID:y2Sg8QH10
お嬢様「はッ!そういえば昨日まで無かった気がするぞ!!」
オーク娘「ほ、本当にゃ!!今まで宿代ケチってずっとダンジョンで寝泊まりしていた気がするにゃ!!」
お嬢様「ど、どういうことだ!?まるで一夜城のように突然現れたではないか!!」
メイド「博識ですわお嬢様。しかしそもそもおかしいと思いませんか、こんな場所に宿が出来るなんて」
オーク娘「何でにゃ?近くに冒険者が待機できる場所があれば何かと便利にゃ」
メイド「必要時間的に考えてオカシイっつってんだろチビオーク」ギリギリ
オーク娘「うみみぁあああ!!そんな事で頭を締め付けるのはやめるにゃあ!!」
50: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:14:16.08 ID:y2Sg8QH10
商人「あ、そこらへん気が付きました?」ヒョコッ
メイド「ま た お 前 か」
商人「いやぁ、保険として副収入も必要になるかなーと思いましてこちらも用意させてもらったんですよー」
お嬢様「なに!?この宿をか!?」
商人「はい、限りなく人件費と材料費を削りまくって急ピッチで作らせました!!お気に召しましたか?お値段こんな感じなんですがー」カタカタ チーン
メイド「そういえばそんな話してましたねぇ……ですが、まだ購入するとも何とも言っていないのですが」
商人「あー大丈夫です。名義は他人のものとなっていますので、こちらは無理にご購入していただかなくともいいですよ」
メイド「ほっ、これ以上出費がかさむのは痛手ですからね。ねぇお嬢様?」
お嬢様「いや、確かにダンジョンだけでやっていくのはまだ心許ない。いっそ商人さんが言うようにこの宿も買い取ってしまうのも手だろう!」
メイド「そういう訳です、ほらこのお金を持っていきなさい!」
商人「毎度アリー☆いやぁ太っ腹ですねぇ!!」
オーク娘「金銭感覚狂ってるにゃこの人達」
51: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:15:22.71 ID:y2Sg8QH10
お嬢様「フハハハ!これで私たちの寝泊りする場所も確保できたわけだ!ついでに馬鹿な冒険者たちから財布の中身まで搾り取ってやるのだ!!」
商人「あ、人材までは派遣しませんので自分たちで何とかしてくださいね。あんまりな対応をしているとお客さんが寄ってこないので気を付けてください」
お嬢様「」
メイド「そこは私の家事スキルでなんとかいたしますわお嬢様」
オーク娘「それにしてもどうやってこんなに早く宿なんて作ったにゃ?」
メイド「まぁ気になりますわね、普通に考えて在り得ない事ですし」
商人「ああコレはですね私の人脈みたいなもんですよ、HAHAHA」
トントン
商人「おんや?誰でしょうね?どうぞー」
52: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:16:15.52 ID:y2Sg8QH10
ガチャ
「うぃーっす」
お嬢様「?誰なのだ?」
商人「大工さんですね。今二階部分を作ってもらってたんですよ」
お嬢様「まだ未完成なの!?今はガワだけしか無いの!?」
「そろそろ上がっていいっすか?暗くてもう見えないんすよ」
商人「あ゛ぁん゛?何言ってんだお前ら!?まだ二階部分の屋根の取り付け終わってねぇじゃあねーか!!」
「そ、そう言われましても……こんな時間まで俺ら動かすってアンタどうかしてるよ……」
商人「うるせぇ!!テメェンとこの会社の顧客情報と裏帳簿を世に出されたくなかったらキリキリ働けオラァ!!社長からも素直に従えって命令来てんだろうが!!」バンッ!!
「ヒィッ!?」
お嬢様「」
オーク娘「」
メイド「」
53: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:17:05.76 ID:y2Sg8QH10
商人「あのさ?何も金払わないなんて言ってなのよ?わかる?アンタらは言われたことだけしてりゃあいいの?OK?了解?ならとっとと続きを始めろ!!お客さん待たせてんだよこっちは!!」ガンガンガンッ!!
「し、失礼しました!!」
商人「総動員でやってんだからとっとと終わらせんかい!!手抜き工事常習犯のテメーら使ってやってるだけでもありがたいと思え!!そんで、帰ったらいつかニーア商会ぶっ潰してやるって社長に伝えとけコンチクショウ!!」
「で、でも休憩くらい……」
商人「二 度 と 商 売 道 具 握 れ な い よ う に し て や ろ う か ?」ゴリゴリ
「ヒィィィ!?」
メイド「あ、あの……」
商人「それじゃあダンジョン改築の件で話を進めましょうか!あ、私が見張っている内は建物の強度は大丈夫ですよ?安心してください!」ニコッ
オーク娘(このヒト物凄く怖いにゃ)ガクガクガク
お嬢様(堅気じゃない……堅気じゃないのだ……)ガクガクガク
メイド(人脈ってなんでしたっけ……?)
54: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:17:50.50 ID:y2Sg8QH10
商人「あのさ?何も金払わないなんて言ってなのよ?わかる?アンタらは言われたことだけしてりゃあいいの?OK?了解?ならとっとと続きを始めろ!!お客さん待たせてんだよこっちは!!」ガンガンガンッ!!
「し、失礼しました!!」
商人「総動員でやってんだからとっとと終わらせんかい!!手抜き工事常習犯のテメーら使ってやってるだけでもありがたいと思え!!そんで、帰ったらいつかニーア商会ぶっ潰してやるって社長に伝えとけコンチクショウ!!」
「で、でも休憩くらい……」
商人「二 度 と 商 売 道 具 握 れ な い よ う に し て や ろ う か ?」ゴリゴリ
「ヒィィィ!?」
メイド「あ、あの……」
商人「それじゃあダンジョン改築の件で話を進めましょうか!あ、私が見張っている内は建物の強度は大丈夫ですよ?安心してください!」ニコッ
オーク娘(このヒト物凄く怖いにゃ)ガクガクガク
お嬢様(堅気じゃない……堅気じゃないのだ……)ガクガクガク
メイド(人脈ってなんでしたっけ……?)
55: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:18:32.98 ID:y2Sg8QH10
――――――
―――
―
お嬢様「経営二日目なのだ!!」
メイド「朗らかですわお嬢様」
オーク娘「朝は弱いにゃぁ……」スヤァ
メイド「寝るなよ」
商人「皆さんおはようございまーす!無事に宿の方も完成したので、今日の終わりにまた覗いてやってください」
メイド「外に放置されている大工さんの屍の山は?」
商人「ニーア商会ってとこに送り返しておくので心配なさらず」
メイド「お嬢様の教育に不適切ですわ。とっとと片づけをお願いします」
(ひ、ひでぇ……)クタッ
56: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:19:30.20 ID:y2Sg8QH10
お嬢様「いやー、しかし立派な管理室なのだ」
メイド「電子機器が盛りだくさんですわ」
オーク娘「うみみゃあ……機械いじりは得意じゃないにゃ。頭痛いにゃ」
商人「さて、前回ミッション達成をしたという事で今回から魔物の召喚が出来るようになりましたよ」
お嬢様「む、そういやダンジョンなのに何も住み着いていないのはおかしいと思っていたのだ」
商人「こうやって機能がアンロックされていく形のものですからね」
メイド「初っ端から魔王クラスや勇者クラスの冒険者が現れたらどうするつもりだったのですか」
商人「……では、この機能について詳しくお話しますね」
メイド「答えろよ」
57: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:20:18.28 ID:y2Sg8QH10
商人「基本的にいつでも好きな時に召喚することが出来ます」
お嬢様「うおお!!それでは呼び放題ではないか!」
メイド「強い魔物を大量召喚すれば楽勝でなくて?」
商人「それがそうも上手くいかないのが世の常。呼び出す魔物の強さに比例して安くは無いコストが要求されます」
オーク娘「そりゃ魔物もタダ働きなんてまっぴらゴメンだにゃ」
メイド「具体的には?資金面ならまだ余裕がありますが」
商人「はい、お金は勿論ですが」
商人「規定以上の雇用費と住み込みですので最低限の衣食住、三年契約の生命保険の加入と最低週1日の休暇、加えて10時間以上の労働の禁止。あ、ですが残業が発生する場合はまた別途で給与の支払いが発生しますのでそこら辺気を付けてください」
お嬢様「ハハ、えらく現実的な事を言う」
58: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:21:06.01 ID:y2Sg8QH10
商人「あ、これ召喚出来る魔物のカタログです。ザッと目を通してください」
メイド「お、お嬢様。割と馬鹿に出来ないお値段になってしまいますわ……」
お嬢様「魔人とか神とか載ってるぞ……」
オーク娘「そのヒト達の下に見た事が無い0の羅列が書いてあるにゃ……」
商人「まーそこら辺のカリスマを雇うにはこちらも魔王クラスにドカーンと稼いでなきゃ無理なんですけどねぇ」
59: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:21:54.58 ID:y2Sg8QH10
メイド「大変差し出がましいと思いますがお嬢様、今回は見送りという形を取っても……」
オーク娘「そうにゃボス!高いお金出して呼び出しても役に立つかは分からないにゃ!私の罠設置だけで十分だにゃ!」
お嬢様「んー、でもなぁ。お前のトラップ部屋も結構限界があるだろう?だとしたら手数を増やす意味でも魔物を召喚した方がいいと思うのだが」
オーク娘「えー!」
商人「あ、ダンジョン内に置けるオブジェクトの数は限界があるので気を付けてくださいね。つーかもう結構いっぱいいっぱいですね」
メイド「魔物の召喚には大賛成ですわ!!テメェ反論するなら今すぐ追い出すぞオラァ!!お嬢様が絶対なんだよ!!文句あるか?ああ!?」
オーク娘「この熱い手のひら返しよ」
60: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:23:08.16 ID:y2Sg8QH10
メイド「……お嬢様、こっちのちっこいのにしておきましょうね?」
お嬢様「えー……んー、分かった。お前が言うのならそうする」
オーク娘「しかしちゃっかりグレードを落としてくるにゃ」
商人「あはは……人材を召喚は私の管轄外なので流石に私も口を挟みませんが」
メイド「決まりましたわ」
お嬢様「この子を2体召喚するぞ!」
商人「どれどれ……ほほう、マネマネンドですか。対象に変身して惑わし混乱させる、ダンジョン内で意表を突くには中々いい選択だと思いますよ。コストも軽いですし」
61: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:23:44.98 ID:y2Sg8QH10
商人「それじゃあダンジョンの機能を使って……」
お嬢様「ちょちょいのちょい!!」ボフン
「マネー」
「マネマネー」
オーク娘「おお!カタログで見るより可愛いにゃ!よぉ〜しよしよしよし」
お嬢様「抱っこしたらヒンヤリしてそうなのだ!代わるのだ!!」
メイド「博愛ですわお嬢様」
商人「いや、愛玩用に召喚されても困るんですけどね」
62: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:24:27.80 ID:y2Sg8QH10
「……あんまり気安く触らないでくれよ」
オーク娘「!?」
「俺たちだって仕事で来てんだよ……」
「それが仕事内容だったら付き合うけどよ」
「生活掛かってんだよ……」
お嬢様「」
オーク娘「」
商人「ま、彼らには彼らの事情ってもんがあるので、過度な馴れ合いは禁物ですよ」
メイド「こう現実を突きつけられると胸が締め付けられますわ」
63: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:25:19.09 ID:y2Sg8QH10
オーク娘「お?なんか画面に映ったにゃ」
お嬢様「ヒトだ……冒険者か!」
―――
銃剣士「ここだね、依頼のあったダンジョンは」
女盗賊「何だかなぁ。身にならなさそうな依頼なんて受けて……私まで何でアンタの手伝いしなきゃいけないのさ」
銃剣士「そう言わないで。人助けのついでに路銀を稼ぐのも悪くは無いでしょ」
女盗賊「悪 い ね。興味ないのに付き合わせて……ったく!」
―――
お嬢様「D A T E」
オーク娘「デートかよ」
メイド「ま、相手方の事情は知りませんが……」
64: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:26:19.30 ID:y2Sg8QH10
「そんじゃあ一働きしてきますかな……よっこらせっと」
「あんまり、期待しないでくれよ。給料に見合った働きはするけどよ」
お嬢様「アッハイ」
メイド(それじゃあ期待できませんね)
「始めだけ適当に撹乱しておいてくれよ」
「変身してからお互いに入れ替わってあいつ等を罠に嵌めるからよ」
オーク娘「トラップ管理なら任せるにゃ!」
65: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:26:52.71 ID:y2Sg8QH10
商人「そんじゃあ私はこの辺でお暇しますかね」
お嬢様「見ていかないのか?」
商人「次の仕入れがありますので」
メイド「どうせまた我々に吹っかける気でしょう」
商人「それは後ほどのお楽しみって事で……それでは!」
66: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:27:21.51 ID:y2Sg8QH10
メイド「チッ、お嬢様!あの商人をなんとかしないといつか喰われてしまいますわ!」
お嬢様「ギブアンドテイクが成り立っている相手なのだ!そういう事を言うんじゃない!」
メイド「し、しかし……」
オーク娘「ボスのいう事は絶対にゃー。刃向うとメイドパンチが飛んでくるにゃー。本人も例外じゃないにゃー」
メイド「黙れ小娘」ギリギリ
オーク娘「痛い!?痛いにゃ!?」
お嬢様「さて、マネマネンド達は上手く出来るだろうか」
67: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:27:57.51 ID:y2Sg8QH10
―――
女盗賊「そこ、落とし穴」
銃剣士「おっとっと」
女盗賊「動くな!すぐ横がバーナーの射程範囲内!」
銃剣士「うわっち!?」
女盗賊「引き返すな!!天井にロードローラーが引っかかってるの見えてないの!?」
銃剣士「何で!?」
女盗賊「知らないよ。実際あるんだもん」
銃剣士「ど、どうしてこうも罠に引っかかりそうになるかな……」
女盗賊「アンタは動きが正直すぎるの!何の疑いなく進みすぎ!」
銃剣士「アハハ……疑うって事は好きじゃないからさ」
―――
68: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:28:34.80 ID:y2Sg8QH10
オーク娘「トラップがことごとく避けられているにゃ」
メイド「この役立たずめが!!」
オーク娘「むむむ、女の方は名のある冒険者と見たにゃ。フェイクは無視して隠れた罠を的確に看破しているにゃ」
お嬢様「うむうむ!これなら魔物を召喚した甲斐があったというものだ!」
メイド「流石ですわお嬢様。自身に絶対の自信を持つどこかのオークとは大違い」
オーク娘「言ってくれるにゃ……!よし!モノマネンドが二人に接近中にゃ!!ここで私がすかさず手助けするにゃ!!ぽちっとな」
69: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:29:45.05 ID:y2Sg8QH10
―――
(よぅし、ここまで接近すれば大丈夫だろう)
(嬢ちゃんたち、いっちょやってくれや)
パッ
銃剣士「!?」
女盗賊「明かりが一斉に消えた……」
銃剣士「ッ!こっちの通路に一緒に来るんだ!僕から離れないで」
女盗賊「言われなくても。戦闘は一任するから、しっかりアタシを守りなさいよ」
銃剣士「ハハ、大丈夫だよ」
女盗賊「もう……!」
パッ
銃剣士「おっと、どうやら一時的なものだったみたいだね」
女盗賊「安心した、じゃあ行こうか」
―――
メイド「上手く分断出来たようですわね」
オーク娘「入れ替わりも出来たみたいだにゃ!」
お嬢様「フッフッフ!後は二手に分かれた連中をそれぞれ必殺の罠部屋に連れ込めば……!」
70: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:30:16.07 ID:y2Sg8QH10
―――
銃剣士「うわー、ビックリしたね。突然松明の明かりが一斉に消えるなんて」
女盗賊「……」
銃剣士「どうしたの?」
女盗賊「ううん、明かりが消えたときに何かがこっちに向かって走ってきたような気がしたんだけど」
銃剣士「え、ええ!?本当かい?」
女盗賊「んー、その後何もなかったから気のせいだと思うんだけど……」
女盗賊「それに、さっきから罠が何だか人為的なものに感じるし」
銃剣士「多分要塞化かなにかされているんじゃないかな?個人でダンジョンを作る場合はあり合わせで罠を作ったりするようだし」
女盗賊「そうなの?」
銃剣士「うん。半自動化出来るから、人為的だとしても道楽でない限りは人が直接動かしているって事はあまり無いと思うよ。管理だけコンピューターに任せて本人が近くにいないって言うのはよくある事だから」
―――
71: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:30:53.71 ID:y2Sg8QH10
お嬢様「よしよし!我々の存在を隠そうとしているな!」
メイド「出来た魔物ですわね。報酬を上乗せでもしておいてモチベーションを上げてやりましょう」
オーク娘「フフン!私のアシストがあったおかげにゃ!」
メイド「勿論貴女のお小遣いから引かせてもらうに決まっていますわ」
オーク娘「」
メイド「さて、もう片方も見てみますか」
お嬢様「そうだな。そっちも気になるぞ」
72: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:31:40.80 ID:y2Sg8QH10
―――
ギヤアアァァァァァァァァ!!
女盗賊「やーんこわーい!」ダキッ!
銃剣士「ちょッ!?」
女盗賊「だってー!何だか悲鳴のようなものが聞こえるんだもーん!それに私か弱い女の子なんだもーん!だから私の事まもってー!」
銃剣士「はい!?」
女盗賊「いやーん!あふーん!」
銃剣士「こ、これは困ったなぁ」
―――
オーク娘「こ れ は ひ ど い」
メイド「オイ誰かあの粘土止めろ!!」
お嬢様「アイツは強制送還だな」
73: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:32:21.02 ID:y2Sg8QH10
―――
銃剣士「そ、それより見てみなよ!そっちに何か部屋があるよ!」
女盗賊「むっふ〜ん!あら!素敵な部屋があるわね!!アタシも行きたいわ!ぜひ行ってみるわよ!!」
―――
メイド「よし、なんとか罠部屋に誘いこむことには成功したみたいですわ」
お嬢様「結果良ければ何とやらというやつか。その後仕留められるかで今後の事も考えてやろう!」
オーク娘「んー、んん?」
お嬢様「どした?変な顔して」
オーク娘「もう一組の動向がおかしいにゃ」
お嬢様「おかしい?」
74: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:32:49.89 ID:y2Sg8QH10
―――
女盗賊「あ、こんなところに」
銃剣士「通路だね……隠してある」
女盗賊「ニヒヒ♪盗賊の感が働く働く♪行ってみようよ、ちょっと狭いけどさ」
銃剣士「こんなところを!?男の僕じゃちょっと無理じゃないかな?」
女盗賊「いいからいいから!それ突撃ィー!!」
銃剣士「うわあああああ!!」
―――
メイド「お嬢様、非常に不味いですわ!!あの女が入った通路は……」
オーク娘「ここにゃ!!管理室への隠し通路にゃ!!」
お嬢様「にゃにーーーーーーーーーーーー!?」
75: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:33:44.51 ID:y2Sg8QH10
オーク娘「あわわわ!ヤバいにゃ!非常にヤバいにゃ!!殺られるにゃ……危険が危ないにゃあああ!!」
メイド「お嬢様、ここはモノマネンドに指令を出すべきですわ!」
お嬢様「クッ!仕方がない、プラン変更だ!!男に化けてるモノマネンドに通信!今すぐ変身を解いてとにかく驚かせて逃げ回れ!!注意を逸らすだけでいい!何とか持たせろ!!」
―――
(おっと、緊急事態ってやつかい)
―――
(やーれやれ、仕方がない。じゃあ変身解くぜ!)
「解!!」
ボフン!!
76: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:34:13.11 ID:y2Sg8QH10
女盗賊「!?」
「へへ、まんまと騙されてくれたな」
女盗賊「あ、アンタ……ッ!!」
ボフン!!
「あ」
「……よう」
「……」
「……」
―――
お嬢様「」
メイド「」
オーク娘「」
77: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:35:10.99 ID:y2Sg8QH10
―――
「すまねぇな嬢ちゃん」
「暗がりの中で手を握ったのはコイツだったみてぇだ」
―――
お嬢様「アホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
オーク娘「にゃああああああああああああああああああああああああ終わりにゃあああああああああああ!!」
メイド「は、腹を括りましょうお嬢様。こうなったらお嬢様だけでもお護りせねば……!!」チャキンッ!!
78: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:35:46.79 ID:y2Sg8QH10
ガチャ
女盗賊「ここは……」
銃剣士「機械がやたらと多いみたいだけれど……」
オーク娘「きたあああああああああああああああああああ!!」
お嬢様「ぎゃああああああああいやあああああああああ!!殺されるーーーーーーーー!グワーーーーーーーーーー!!」
メイド「オラ!!行って来い脳筋!!テメェの役割は戦う事と盾になる事だオラァ!!」グイグイ
オーク娘「にゃあああ!?聞いてないにゃあ!?何をするやめろーーーーー!!」
女盗賊「ああ!!」
銃剣士「君たちは!!」
お嬢様「ヒィィ!!」
79: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:36:49.31 ID:y2Sg8QH10
銃剣士「可愛いゴブリンの女の子にスライムのメイドさん!」
女盗賊「それにオークの娘……間違いないね」
お嬢様「……うぇい?」
銃剣士「依頼達成だ。ほらね、人助けも無駄ではなかっただろう?」
女盗賊「はいはい言ってろ」
銃剣士「君は"もうどうせ死んでる"って切り捨てた癖に」
女盗賊「いいでしょ別に!」
メイド「あ、あの……話が見えないのですが」
80: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:37:32.64 ID:y2Sg8QH10
銃剣士「ああ、失礼。僕達、冒険者ギルドの依頼でここに来たんだけど」
女盗賊「その依頼って言うのが、"昨日ダンジョンで一緒になった少女達の安否を確かめてほしい"って随分とお人好しな依頼だったわけで」
銃剣士「彼ら、凄く神妙な顔をしていたよ。"自分たちが至らなかったばかりに彼女達を置き去りにしてしまった"って」
女盗賊「生きているなら生きているでギルドに顔出さないと余計な心配されるから、そこら辺マナーなんだけど?」
メイド「あー……」
オーク娘「昨日の……」
81: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:38:02.15 ID:y2Sg8QH10
銃剣士「さて、元気そうに生きているって分かったんだし僕達はそろそろ行くね」
女盗賊「まったく、端金にしかならないような依頼受けて……時間の無駄ッたら無駄!」
銃剣士「だーかーら!いいだろこういうのも!!」
女盗賊「良くない!効率悪い!!大体アンタねー……」
銃剣士「でも、きっと彼らも喜ぶだろうね。もう僕はそれだけで十分だよ」
お嬢様(ああ……)
オーク娘(なんか……)
お嬢様・メイド・オーク娘(申し訳ねぇ……(ですわ))
82: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:38:39.92 ID:y2Sg8QH10
――――――
―――
―
商人「み、皆さん。撃退の方は……う、うまくいったよう……で」ヨロヨロ
オーク娘「撃退は出来てないにゃ」
お嬢様「上手く回避できただけだぞ」
商人「そ、それは……何より……」
メイド「所で商人さん、貴女やけにボロボロですが。何かありましたのですか?」
83: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:39:29.54 ID:y2Sg8QH10
商人「い、いえね?帰り道に突然ダンジョンの明かりが全部消灯いたしまして……」
商人「一つコイル発条を踏んだが最後、飛ばされて粘液まみれになるわフロアバーナーでコンガリ燃えるわアローウォールに引っかかるわ坂道で滑って岩に押しつぶされるわ連鎖連鎖で……コンチクショウ!!」
お嬢様(あー……)
オーク娘(さっき聞こえていた悲鳴はそれかにゃ)
メイド(ざまぁ)
84: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/14(火) 00:40:21.59 ID:y2Sg8QH10
商人「そ、それで。あの役立たずの魔物共はいかがいたしましょうか」
メイド「結果を残せなかった者は不要ですわ」
お嬢様「しばらく宿のほうでタダ働きさせてやるのだ」
オーク娘「商人さんの災難も元を辿ればコイツらの責任にゃ」
「ひでぇ!!」
「そんな殺生な!!」
メイド「シャラップ!!貴様らお嬢様を危険な目に合わせておいて無事で帰れると思うなよ!?」
商人「ま、まぁ今回の事は明らかにネンドさん達に非がありますので処遇はそちらにお任せします」
メイド「いい働き手が見つかりましたわぁ♪」ギリギリ
「ぐあああああああ」
「やめろォ!!」
商人「そ、それでは私はこれで……か、身体が痛い……」
オーク娘「お大事ににゃー」
メイド「今度は役に立つような機能の追加をお待ちしておりますわぁ♪ウフフフフフフフ」
89: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 00:45:34.09 ID:kHbA70+L0
――――――
―――
―
メイド「さぁキリキリ働きなさい!!奴隷共よ!!」
「くそぅ……」
「こんなハズでは……」
お嬢様「宿屋って結構忙しいのだな」ズズー
オーク娘「お客さん数組泊まっているだけで大混乱にゃ」ズズー
メイド「お前も働けボンクラオーク」
オーク娘「ボスと作戦会議中にゃ、忙しくて手が離せないにゃ。そっちこそ働くにゃ」
メイド「シメるぞ……と言いたいですが、私も用事があって少し外出しなければならないのですが」
オーク娘「うにゃ?」
90: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 00:46:12.43 ID:kHbA70+L0
お嬢様「ふぅ、しかしダンジョンの効率化を図らねば……現状宿の方が収入が大きいのが何とも言えんぞ」
オーク娘「あれから一週間経ってるけどなんか冒険者の入りが凄く悪いにゃ」
メイド「一時期話題になった程度ですからねぇ。今宿に泊まっている半数も冒険者ではなく通りすがりですし」
商人「それはこのダンジョンに目玉となる物が無いからですよ!」ニョキッ
お嬢様「うわ出た!?」
オーク娘「神出鬼没にゃ」
メイド「しばらく姿を見せないと思ったら」
商人「いえいえ、こちらも準備が整ったので話を持ち掛けに来ただけですよ」
91: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 00:47:28.36 ID:kHbA70+L0
メイド「で、何を売る気ですか?」
商人「ああ、大丈夫ですよ。そんなに身構えないでください!今回は貴方達に助っ人を用意しようと思いましてね?勿論無料の貸し出し!!」
お嬢様「助っ人?」
商人「はい!役に立たない魔物なんて召喚させてしまった心ばかりの謝罪をですね」
オーク娘「なんか信用ならんにゃ」
メイド「商人は損得で動く者。裏くらいあるのでしょう?」
商人「言ってしまえばそうなんですけどねー。まぁそう言わずに、受け取ってください!私の全身全霊!!カモーン用心棒!!」
92: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 00:48:26.29 ID:kHbA70+L0
剣士「通りすがりの剣士だ、三食飯付きで働いてやらんでも無い」
お嬢様「初回から高圧的なの来ちゃったよ」
剣士「……四食でも構わんぞ」
お嬢様「何で増えた!?」
幽霊「通りすがりの幽霊です。こんな球体な成りですが強いです、使ってください」
オーク娘「何だこの丸いの」
幽霊「うるせぇデブ!!ちぃとばかし胸が大きいからって調子に乗るなよ!!」
オーク娘「デブにデブって言われた!?」
子ウサギ「ウキュ!」
メイド「……」
子ウサギ「ウキュンウキュキュウ!」キメッ
メイド「お、おう」
93: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 00:49:19.46 ID:kHbA70+L0
商人「どうですか!!」
お嬢様(何だこの……何だ!?)
商人「ともかく戦力的に不安が残る貴方達にはちょうどいいんではないですか?」
メイド「お嬢様、流石にこれは怪しいですわ」
お嬢様「う、うむ。私の一存では決め兼ねるな、お前はどう思う?」
オーク娘「うにゅー……私の仕掛けた罠の邪魔にならなければどっちでもいいにゃ」
メイド「参考になりませんわ。やはり今回は引いてもらうべきかと」
お嬢様「しかし人手が欲しいのも事実だし……うーむ」
94: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 00:50:29.25 ID:kHbA70+L0
商人「分かりました、こうしましょう」
商人「この娘達に一冒険者としてダンジョンに挑んでもらいましょう」
お嬢様「なに?」
メイド「どういうことですか?」
商人「前にも言った通りサクラになってもらうんですよ。冒険者ギルドに来る冒険者たちはとりあえずダンジョンの情報を欲しがります」
商人「そこでこの娘達にダンジョン内で起きる在ること無い事を他の冒険者たちに振りまいてもらうんです」
商人「そうですねぇ、例えば……ダンジョンに珍しい魔物が現れた!とか、見た事の無い秘宝がそこらじゅうに眠っていた!とか」
95: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 00:51:02.08 ID:kHbA70+L0
お嬢様「私達が自分で出来る事じゃないか?」
商人「貴方達、以前の件で冒険者ではないとバレた上に元気そうに生還したって噂が広がっちゃってるんで裏で動くのには適していないと思いますよ?」
お嬢様「ぐぬぬ、自らの行動を制限してしまっているとは」
メイド「心中お察ししますわお嬢様」
オーク娘「仮に噂を広めたところで噂は噂にゃ。誰か信じるのかにゃ?」
商人「それなら大丈夫です。町のスーパーで半額セールやってるって聞いたらとりあえず顔を出すだけ出してみるでしょ?それと同じです」
オーク娘「た、確かに!?」
メイド「明らかに同系列ではないのですがそれは」
96: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 00:51:39.49 ID:kHbA70+L0
商人「話に尾ひれがついて行けばまた冒険者も多くダンジョンを訪れることになるでしょう。真偽が怪しいなんて言われたら、珍しい魔物だったらこの娘達に演じて貰えばいいし」
お嬢様「秘宝はどうするのだ?」
商人「元々ここのダンジョン……になる前の洞窟には"海鳴りの鈴"というレアなアイテムが隠されていたという事でしたので、それも誤魔化しきれるかと」
メイド「情報収集に余念がないですわね。ひょっとして貴女はそれを狙ってきたのではなくて?」
商人「欲しい物ではありますね。ま、今こうして貴方達が洞窟を弄って見つかっていないのなら本当にただの噂かもしれないですし」
97: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 00:53:04.08 ID:kHbA70+L0
お嬢様「このくらいならやらせてみてもいいかもしれんな」
メイド「了解ですわお嬢様。許可が下りましたのでどうぞご勝手に」
お嬢様「我々の邪魔をになるようなことは絶対にするのではないぞ!」
商人「だーいじょうぶ大丈夫!任せてください!オラお前ら!!気張っていくぞ!!」
剣士「……ふぁ……眠いな」
幽霊「あーメンドクサイなー」
子ウサギ「ウッキュウ」
オーク娘「このやる気の無さよ」
98: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 00:53:46.90 ID:kHbA70+L0
お嬢様「とりあえず方針は決まったな。連中を使って他の冒険者と接触させまくろう」
メイド「分かりましたわお嬢様、一時も奴らから目を離さないようにいたしますわ」
オーク娘「そういえばさっきどこかへ行くって言っていなかったかにゃ?なんか手紙をもっていたような気が」
メイド「ギクッ」
お嬢様「……おい、どこへ行こうとしていたのだ?」
メイド「わ、わわわわわたくしはどこへも行きませんわぁ!お嬢様一筋ですわ!!」
お嬢様「ジィー……」
99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/15(水) 00:55:05.74 ID:kHbA70+L0
メイド「……」ドキドキドキドキ
お嬢様「ふん!まぁいい、用を済ませたら早く帰ってくるのだぞ!」
メイド「承知いたしましたわッ!!」
お嬢様「それでは私は先にダンジョンへ行く。ではな」
メイド「行ってらっしゃいませお嬢様ァ」ニコニコ
100: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 00:56:21.48 ID:kHbA70+L0
オーク娘「にゃーんだ、私の見間違えだったかにゃ。それじゃあ私も……」
メイド「ブ チ 殺 し て や ろ う か 糞 ア マ ァ ア ア ア ア」ギリギリギリ
オーク娘「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛。なにするにゃ!?」
メイド「私がこっそりと隠していたものをワザワザ口に出すかコイツは!!にゃーにゃー言いやがってあざといんだよ!!猫かテメェーはよぉー!!」
オーク娘「うみみゃ!?オーク訛りだから仕方がないにゃ!!それより本当に手紙だったにゃ?」
メイド「はぁ……後で追及されても困りますので言ってしまいますと、お嬢様の実家へ送る手紙ですわ」
オーク娘「ボスの?」
101: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 01:02:47.79 ID:kHbA70+L0
メイド「貴女は途中で我々と合流したから知らないでしょうが、お嬢様は銘家の生まれで本物の大金持ちですわ」
オーク娘「マジかにゃ!?成りだけだと思ってたにゃ!?」
メイド「そんな人にメイドが付き添いますか」
オーク娘「いや、ただのロリコンの変態が付きまtに゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」ギリギリギリ
メイド「口を慎めよ下郎が。事情があって家を飛び出したお嬢様ですが、流石に旦那様も奥様も心配していらっしゃいますのでこうして定期的に手紙を」
オーク娘「痛いにゃ……ボスはその事知ってるのにゃ?」
メイド「勿論知りませんわ。知ったら私がお嬢様に怒られてしまいますし」
102: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/15(水) 01:04:00.19 ID:kHbA70+L0
オーク娘「そうかにゃ、それなら黙って言ってくるにゃ。私も黙っておくから安心するにゃ」
メイド「……それ以上聞かないのですか?」
オーク娘「親しい中にも礼儀ありにゃ。ボスにはボスの考えがあって行動しているにゃ、私がボスの家庭事情に首を突っ込むべきではないにゃ。今楽しんでいるボスを暗い顔にはさせたくないにゃ」
メイド「貴女は……」
オーク娘「それじゃあ私も行ってくるにゃ。ボス一人にさせたら寂しくて泣いちゃうにゃ」
メイド「……フフ、分かりました。それではしばらくお嬢様をお願いします」
オーク娘「任せるにゃ!ボスとお話して私はもっと仲良くなるつもりでいるにゃ!」
オーク娘「ボスー!待つにゃーーーーー!!」
メイド「私は……彼女に対して少しキツく当たり過ぎていたかもしれませんね……」
お嬢様「おお、それでアイツはどこに行くって?」
オーク娘「ボスの両親に手g」
メイド「野 郎 ぶ っ 殺 し て や る」
オーク娘「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
116: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:32:44.30 ID:wHg45/Rz0
―――――
―――
―
オーク娘「まったく酷い目に合ったにゃ」
お嬢様「さてと、ダンジョン内はどうなっているかな」
オーク娘「何だかんだでヒトは入っているにゃ」
お嬢様「人数は少ないがな……ん?そういえば4層以降に進んでいる冒険者がいないな」
オーク娘「罠の配置が熾烈過ぎたかもしれないにゃ。これじゃあ最終の15層に辿り着くのも夢のまた夢にゃ!頑張ボウケンシャー!」
お嬢様「むぅ、タワーディフェンスの勝利パターンが構築されてしまったみたいだ」
117: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:33:23.38 ID:wHg45/Rz0
お嬢様「しかし、システム的にそういうのは不可能になっているのではないか?」
オーク娘「そうにゃ。攻略不可能の設置は出来ない様になっているにゃ。そんなことしたらあんまりにもあんまりにゃ」
お嬢様「うーむ……なんか本当にゲームみたいなことになってしまっているぞ」
オーク娘「魔物の配置もしていないから完全に罠師のダンジョン状態にゃ」
お嬢様「攻略したら罠が扱えそうな腕輪を手に入れそうだな」
オーク娘「勿論このダンジョンにそんなお宝は無いにゃ、多分」
118: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:34:04.39 ID:wHg45/Rz0
お嬢様「ダンジョンの機能も完全に把握出来てないし、色々と不便だなぁ」
オーク娘「説明書的なものも無かったからにゃ。ともかく今は冒険者達の動向を見てみるにゃ」
ピロン♪
オーク娘「にゃ!?」
お嬢様「うわビックリした!?ここでミッション!?」
119: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:34:58.94 ID:wHg45/Rz0
―case2・1時間経過まで冒険者の5層突破を防げ―
オーク娘「防衛ミッションみたいだにゃ」
お嬢様「うーむ、そもそも最高が4層止まりなのに」
オーク娘「まーいいにゃ。今回のミッションもいただきにゃ。私の罠配置にかかればちょちょいの……」
幽霊『あーあー、管理室管理室。聞こえますかー』
お嬢様「お、通信だ」
オーク娘「どうしたにゃ、宣伝は上手くいっているかにゃ?」
幽霊『うん、丁度冒険者の女の子と出くわしたから上手くあること無い事吹き込みまくったんだけどね』
幽霊『突 然 張 り 切 り だ し て 4 層 突 破 し て い き ま し た』
オーク娘「」
お嬢様「」
120: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:35:34.20 ID:wHg45/Rz0
―――
少女「あー怖かったぁ、一気に駆け抜けるんだもん。私ドキドキしちゃったよ」
少女「え?……無理だよ!私はそこまで運動神経よくないもん!そっちと違って魔法専門!」
少女「で、でも大丈夫かな?5層まで来た冒険者っていなかったんだよね?私達が初めて……なら、前知識の無いエリアだから慎重に……」
少女「それはダメー!お願いゆっくりで!!私がついていけないから!!」
―――
オーク娘「どんな子が突破したのか見てみたら」
お嬢様「一人で延々と喋っている電波少女を見てしまったぞ」
メイド「アレですわお嬢様、一人になるとつい技名を叫んでしまったり気持ちよく歌を歌い始めちゃうアレです。私にも多々覚えがありますわ」
お嬢様「おおう、戻ったのか」
121: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:36:00.08 ID:wHg45/Rz0
メイド「しかし、私が抜けている間に易々と突破されるとは情けないですねぇ!!ええ!?」
オーク娘「わ、私の罠は悪くないにゃ!先の冒険者たちのせいで設置位置がバレているせいにゃ!あとあの球体幽霊のせいにゃ!!」
お嬢様「……」
メイド「お嬢様?いかがなさいましたか?」
お嬢様「……いや、何でもないのだ」
お嬢様(……お前が何をしていたか知っているから、素直におかえりと言えなかった自分が恥ずかしいのだ)
122: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:36:46.64 ID:wHg45/Rz0
メイド「それで、どういたしましょうかお嬢様?」
お嬢様「む、そうだな……この際商人の連れにはしっかり働いてもらおう。おい聞こえるか!今から皆5層へ向かいあの冒険者をあの手この手で止めるのだ!」
幽霊『すみません、おっかけて5層まで来たんだけど私トラバサミ踏んでさっきからずっと動けないんですよ』
オーク娘「幽霊なのに!?」
オーク娘「足が無いから身体半分がトラバサミにハマってるにゃ。何やったらそうなるにゃ」
メイド「まったく使えませんね。剣士さん、今どこにいますか?」
剣士『大丈夫だ、私なら既に5層のとある部屋にいる』
お嬢様「おお!流石だ!」
メイド「追加でタダ飯を要求してくるだけの度量はありますわね」
剣士『ああ、食い物を追っていたら5層の行き止まりの部屋に閉じ込められてしまった』ガシャーン
お嬢様「アホーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
剣士『美味いな。それに食べ物も豊富だ、これなら30分ぐらいはこの場で待機できる』モグモグ
お嬢様「喰っとる場合かー!!早く脱出して向かえー!!」
オーク娘「いや1日分程度の食糧を30分手……てかあの罠に引っかかる単純な奴がいるとは思わなかったにゃ」
メイド「貴女、確か数日前に自分で作って自分で引っかかっていませんでしたかしら?」
123: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:39:07.38 ID:wHg45/Rz0
―――
少女「え?あ、うん、なんかあったのかな?騒がしいね」
少女「って、うわぁ!!」ビシュンッ!!
―――
お嬢様「よし!あの女、罠に引っかかったぞ!」
オーク娘「十字路に仕掛けた転移の罠にゃ。確率で壊れちゃうけどギャンブル性のある面白い罠にゃ!お、今回は壊れなかったにゃ」
メイド「あら、罠の扱いに長ける癖に確実性の無い方法を試すのですか?」
オーク娘「ある程度の法則性は見つけてあるにゃ。1,絶対に詰みにならない場所に飛ぶ2,同階層にしか飛ばない3,飛んだ先で罠は踏まない4,他の人物がいる場所に飛ぶ可能性が高い。なおこの項のみ1の条件を無視して優先される、にゃ!」
お嬢様「ほえー、よく調べたなそんな事」
オーク娘「自分で仕掛けたのを忘れて踏みまくったにゃ……」
メイド「だ ろ う な」
お嬢様「ん?ってことは……」
124: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:39:50.70 ID:wHg45/Rz0
―――
ビシュンッ!!
少女「ッ!ああビックリした……あれ?ここどこ?」
剣士「ん?なんだお前は?」
―――
お嬢様「邂逅したな」
メイド「邂逅しましたわ」
お嬢様「何だろう、あんまりいい予感がしない」
メイド「私も同じ感想ですわお嬢様」
オーク娘「うにゃ?」
125: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:41:09.96 ID:wHg45/Rz0
―――
少女「あ、冒険者さんですか?」
剣士「今はそういう事になっている、貴様は?」
少女「私も冒険者です!それはそれとして……ここはどこでしょう。出口がふさがれているように見えますが」
剣士「ああ、塞がれているんだ。この食料と引き換えにな」
少女「えぇー!じゃあここの食糧を全て食べないと出られないって事ですかー!?」
剣士「そうとも言う」モグモグ
―――
オーク娘「あの女サラッと嘘をついているにゃ」
メイド「ええいせめて宣伝をしろ宣伝を!何のためにお前をわざわざダンジョンに招き入れたと思ってんだ!」
お嬢さま「仕方がない。とにかく今はあの冒険者を止めることに専念した方がいい、閉じ込められたとはいえ安心できん。おい剣士さん聞こえるか?出来ればそこの女の子の足止めを頼みたい」
剣士『ん?了解だ、足を止めればいいんだな?』
126: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:41:42.42 ID:wHg45/Rz0
ガシャーーン!!
お嬢様「なぬ!?」
オーク娘「な、何の音にゃ!?」
―――
少女「きゃああああああああ!?」
剣士「ほぅら、足を氷漬けにしてやったぞ?これで動けまい」
少女「な、何でこんなことをするんですか!!」
剣士「足を止めろと言われたんだ、だから止めてやっただけだ」
お嬢様『なに物理行使してんだよ!?もっと他にあるだろ!?』
剣士「魔法は物理じゃない、特殊だ」
お嬢様『何の話!?』
127: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:42:31.74 ID:wHg45/Rz0
少女「い、いやぁ……助けてください……」ウルウル
剣士「まぁ安心しろ、そこでジッとしていれば私も何もせん。さて、食事の続きを……」
少女「ごめん……代わって」ボソッ
剣士「ん?今何か言ったか?」
少女「……」
少女?「……フフッ……」
剣士「ッ!」
128: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:43:02.57 ID:wHg45/Rz0
少女?「よぉ、やってくれるじゃねぇかクソ女」
剣士「(気質が変わった……)お前、何者だ」
少女?「何者だって構わねぇさ。だが、"俺"を氷漬けにした落とし前くらいは付けてくれるんだろう?」
パキンッ
剣士「氷をいともたやすく砕いたか……クッヒヒヒ……面白いッ!!」チャキンッ
少女?「テメェ、魔法を使っておいて最終的には刀まで使うのかよ。まぁいい、得物は俺と同じ……いざ尋常に!!」
剣士「斬姫の錆にしてくれる!!」バッ
少女?「勝負ッ!!」バッ
129: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:43:44.67 ID:wHg45/Rz0
―――
ガキンガキンッ
バチューンッ
お嬢様「あ、なんか始まったけど」
メイド「擬音だけでお楽しみくださいですわ」
オーク娘「ともかくこれで一時間が過ぎれば……」
ズドンッ!!
お嬢様「……そうはいかないよね」
130: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:44:12.25 ID:wHg45/Rz0
―――
剣士「クヒヒヒヒヒ!!楽しい、楽しいぞ!!」ガギンッ
少女?「クッソ!!なんだよこいつ!?ああいう性格の奴は大体噛ませだろ!!滅茶苦茶強え!!」ギッ
お嬢様『くぉらあああああ!!フロア破壊しながら移動すんな!!』
剣士「そんなもの!いくらでも直せるだろう!だがこんな強い奴には中々出会えん、我慢しろ!!」
オーク娘『直すのは私にゃ!!我慢なんて出来ないにゃ!!』
剣士「鬱陶しい!通信切るぞ!!」ピッ
―――
メイド「アイツッ!通信機切りやがりましたわ!!」
ガッシャーン!!
ズガガガガガガ
お嬢様「ああ……ダンジョンが壊れていく……」
オーク娘「罠が……完璧な配置が……」
131: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:44:46.51 ID:wHg45/Rz0
―――
剣士「ふん!威勢がいいのは始めだけか?」
少女?「戦いを楽しみやがって……チッ、シャーねぇ、こっちも全力で行くしかねぇか!!」
剣士「何だ、力を隠していたのか、気に入らん。さっさと来い、正面からぶっ潰してやる!」
少女?「ん?ああ、大丈夫だ、手筈通りに頼むぞ」
剣士「よそ見を……するなあああああああああああああ!!」バッ
少女?「ッ!速い!!」
剣士「終わりだ」
132: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:45:14.13 ID:wHg45/Rz0
少女「ライズフラッシュ!」
剣士「魔法ッ!?くっ!目つぶしだと!?」
少女「こ、これでいいの?」
少女?(いいんだ!引くぞ!)
剣士「……」
剣士「チッ、逃げたか」チャキン
少女?(あっぶねぇ、あのまま攻撃してたら多分真っ二つになってたぞ)
少女「そ、そうなの?」
133: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:45:54.00 ID:wHg45/Rz0
少女?(よし、走るのはここまででいい)
少女「う、うん……あ、ここは」
剣士「利口だな、目つぶしの後にてっきり追いうちをかけてくると思ったが……」
少女「あ、あのまま攻撃していたら真っ二つになっていた……だそうで」
剣士「ああ、悪いな。咄嗟の反撃になると手加減が出来ないからな。生憎、私は殺しはするなと姉からキツく言われていてな、感謝するぞ」
少女?(ケッ、生意気な口開けるのも今の内だ!)
剣士「さて……お前の中にいる"男"を出せ。もう一度奴と戦わせろ」
少女「き、気づいてたんですか!?」
少女?(見た目が女のままなのに性別まで指名だぜ、コイツ凄いな)
剣士「出さないのなら……こちらから引き摺りだす!!」バッ
134: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:46:25.49 ID:wHg45/Rz0
少女?「アッハッハハハ!!バーーーーーーーーーーカ!!」ベロベロ
剣士「何ッ!?」ビシュン
少女?「アッハッハッハ!!ザマァ見ろ!!転移トラップだよ!!さっきの部屋へ逆戻りだ!かなり遠いぞ!」
少女(さっき私がふんじゃったやつだね)
少女?「ああ、あんなのまともに相手してたら疲れるだけだっての。さ、逃げてる最中に階段も見つけてあるから次の階層へ行くぞ」
少女(頼もしいんだか情けないんだか)
少女?「俺は確実に勝てる相手としか戦わねーの。お前の身体を守りながらやってんだから察しろ」
少女(フフ、ありがと)
135: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:47:02.70 ID:wHg45/Rz0
―――
お嬢様「何だよあの二重人格!卑怯だろ!」
オーク娘「あーあー負けちゃったにゃ」
メイド「ギミックを逆に利用されてしまいましたね」
お嬢様「ふむ、しかしこうした強かな冒険者が攻略していくのだな」
オーク娘「あ゛ー、この階層罠の配置を見直すにゃ」
お嬢様「うむ、そうしてくれ……ん?」
メイド「おやおや、戦いはまだ終わっていなかったようですね」
―――
少女?「こ、コイツ……ッ!」
剣士「……ああ、次の下り階段に来ると思っていたよ」
少女(あー、あの罠ランダム転移だったかー)
剣士「さて、確かに私は頭がいい方ではないが、バカ呼ばわりされるのは心外だな」
少女?「ハァ……で、どうするつもりだ?」
剣士「続きだ……この境界線の狭間でな!!」スタッ
―――
ビー
―mission loss―
お嬢様「は!?」
オーク娘「何で!?」
136: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:48:32.49 ID:wHg45/Rz0
―――
少女?「やるしかない……か!」
剣士「喪失、絶望……どんな表情を浮かべたところで強さなど変わらん、無意味だ!」←ドヤ顔で階段に足をかけている
―――
お嬢様「……」
メイド「……」
オーク娘「……」
「「「お前かああああああああああああああああああああああああああああ!!」」」キィィィィィン
剣士『ンが!?耳が!?』
少女?『今の内だ!!逃げるぞ!!』
剣士『あ、まて!!私と戦え!!今ならこの食いかけのパンやるから!!待て!!』ダダダダダ
137: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:49:15.86 ID:wHg45/Rz0
メイド「後でお説教ですわね」
お嬢様「酷いオチだ……」
幽霊『あ゛ーあ゛ー、管理室管理室、聞こえますかー』
オーク娘「ボス、また通信だにゃ」
お嬢様「あーどした?何かあった?」
幽霊『なんか対応が雑だね……』
メイド「こっちは落ち込んでいる最中でございますわ。とっとと用件だけ言って引っ込みやがれ役立たず」
幽霊『酷い!?って、そうじゃなくてね』
お嬢様「ん?」
―――
ゴギャー!
ギャーッス!
ギエピー!
幽霊「フロアに突然魔物が沸いたーーーーーーーー!!助けてーーーーーーーーーーーッ!!」
お嬢様『』
メイド『』
オーク娘『』
138: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:49:53.22 ID:wHg45/Rz0
――――――
―――
―
お嬢様「これはどういうことなのだ!」バンバン
メイド「説明を求めますわ!」バンバン
商人「え、ええとですね、説明と言われましても私からはどうにもこうにも……」
お嬢様「というかマニュアルくらい出せマニュアル!」
メイド「そうですわ!こういう珍妙な事態が発生した原因と対処も書かれているハズですわ!」
商人「いえね?あるにはあるんですが……」
お嬢様「何を渋っている!早く出せ!」
商人「も、もう……これですよコレ!」
139: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:50:46.20 ID:wHg45/Rz0
オーク娘「えっと何々?……技名:ヴァニシュメンツ・アルティミット=アーム」
お嬢様「現実世界をも亡ぼしかねない高エネルギー波を拡張・分散させる。相手は魂の一欠けらさえ残さず消滅する。多元宇宙からエネルギーを供給しており、この技を使うたびに一つの異世界の生命エネルギーが枯渇し崩壊する」
商人「あ、それ私の黒歴史ノートだ。返してください!こっちですこっち!!」
メイド「読めたものではありませんわね」
お嬢様「酷いなオイ」
オーク娘「今度は随分と分厚い物が出てきたにゃ」
140: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:52:07.09 ID:wHg45/Rz0
商人「読めるもんなら読んでみてください!」
お嬢様「ええっと、何々?」パラパラ
オーク娘「……うにゃ?」
メイド「これは……」
商人「読める訳ないじゃないですか、だって……」
お嬢様「……」
お嬢様「ヒエラティックテキストだコレーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
オーク娘「翼神竜でも出てくるのかにゃ」
メイド「スフィアモードですわ」
141: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:52:53.18 ID:wHg45/Rz0
お嬢様「何だよこれ!!なんだよ!!」バンバン
メイド「説明書を今の今まで渡さなかった理由がこれですか」
商人「あ、アハハハ……このダンジョンツール自体かなりの年代物でしてね?私の調べ得た範囲のもので貴方達に使用方法をお教えしたのですが……」
メイド「危険性があったにも関わらず売りつけるとは、見上げた根性ですわ!!」
お嬢様「通りで安かったワケだ」
オーク娘「詐欺師め!!訴えてやるにゃ!!」
商人「訴えるだと!?ふざけんなコンチクショウ!!いいか私はな!?いいかよく聞け!?私は誤魔化しはすれど騙すようなやり口で物売りなんて絶対にやらないからな!?」
お嬢様「ダメだろそれ!?」
142: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:53:20.81 ID:wHg45/Rz0
商人「ともかく、何かこの状態になるまでに変わった事はありませんでしたか?」
オーク娘「んー。変わった事かにゃ?」
メイド「あのオトコオンナと貴女の所の剣士が大暴れした程度でしょうか?」
お嬢様「……あ、ミッション」
商人「あー……失敗したんですか」
お嬢様「まさかペナルティとかあったり……」
商人「多分それですねー。あ、ほら、テキスト読めないですけど図解で何となく描かれていますよ。ミッション失敗したであろうヒトが挫折のポーズをとりながら魔法陣から次々と召喚される魔物の絵が」ペラペラ
143: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:53:47.13 ID:wHg45/Rz0
商人「一か月間苦悩している日々が赤裸々に綴られているので効果もそのくらいの範囲なんでしょう」
お嬢様「やけに具体的な図解だな!?テキストいらないんじゃないか!?」
メイド「ともかく機能の一部なら安心ですわ。それに助かります」
オーク娘「何故ににゃ?」
メイド「お金を出して狙った魔物を召喚するよりも安上がりで大量に呼び出せるんですもの。まさか別料金とは言わないですわよね商人さん?」
商人「図解のどこにも書かれていないから恐らくノーコストでしょうね」
お嬢様「図で見るなよ……」
144: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:54:38.87 ID:wHg45/Rz0
商人「ただ、問題が一つあって」
メイド「問題?」
商人「こちらで用意した魔物と違って、湧いて出た連中は完全に野生。以前貴方達が呼び出した者とは違い人間的理性と知性も持ち合わせていない。言う事を聞かないのはちょっと問題かと」
オーク娘「むー、不味いにゃ」
メイド「貴女もですか。何がですか?」
オーク娘「野生の魔物はピンキリにゃ。勘のいいやつは罠を避けて進むからまだいいけれど、極端に頭の良い奴や悪い奴は対処しにくいにゃ」
お嬢様「どういうことだ?」
オーク娘「頭の良い奴は罠を逆に利用して自分の狩りの道具に、下手すりゃ解除するのもいるにゃ。そして頭の悪い奴は……」
メイド「勝手に引っかかりまくって設置した罠を台無しにしてくれると」
オーク娘「困ったにゃ、こっちで指示出せないからどうしようもないにゃ」
145: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:55:18.25 ID:wHg45/Rz0
商人「思うんですけど、こういうのって魔物の数が減ってくれるからいいんじゃないですか?」
オーク娘「設置には手間もコストがかかるにゃ。それに魔物はそれぞれ特性も違うからそいつに合った罠を使わないと無駄が多すぎるにゃ」
商人「へぇー、勉強になります。私普段は汎用性のあるものしか扱ってませんでしたからそこら辺の専門知識は抜け落ちていて」
メイド「貴女、罠関連の時だけやたら頭が良くなりますわね」
オーク娘「罠というより狩りにゃ。実家が魔物狩りで食いつないでるにゃ。そのおかげで私も狩りの技能だけは学校でも上位だったにゃ」
お嬢様「うむ!以前ニヤッとしたせいでそうじゃないかと疑っていたが、お前がそんな狡猾な性格じゃないと分かっただけでも嬉しいぞ!」
メイド「暖かですわお嬢様。なるほど、阿呆でも一つに特化はしているという事ですわね」
オーク娘「何だか褒められた気がしないにゃ」
メイド「褒めてませんからねぇ」
146: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/18(土) 02:56:44.47 ID:wHg45/Rz0
商人「それはそれで、冒険者ギルドでダンジョン難度が上がって冒険者を誘う餌に出来そうですね」
お嬢様「うむ、ここで方針を帰れば新たな集客が期待できるかもしれん。よし!早速作戦会議だ!後に続け!!」
メイド「勤勉ですわお嬢様」
オーク娘「あー、罠の種類と設置位置の考え直しにゃ」
商人「それじゃあ私も何か皆様をサポートする物でも考えておきますかねー……ん?なんか忘れてる気が……」
ギャーッス ゲシゲシ
幽霊「誰か助けてーーーーーーーー!動けないのーーーーーーーーーー!!蹴られてる!?殴られてる!!」ポヨンポヨン
ミュー ドスッドスッ
子ウサギ「ウッキュウ」ヤレヤレ←助けに来た
154: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:50:35.08 ID:szPfpWQM0
――――――
―――
―
メイド「お嬢様、ご報告があります」
お嬢様「……言ってみろ、いや!!言わなくても分かる!!だからやっぱり言うな!!」
メイド「はい、貝のように口を閉ざしますわ」
オーク娘「宝くじのお金が尽きたにゃ」
メイド「言うなバカやろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」ガッガッ
オーク娘「止めるにゃ!!現実を見るにゃ!!」
お嬢様「クッ、ダンジョンに注力し過ぎたせいで後先考えず投資してしまったか!」
155: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:51:02.27 ID:szPfpWQM0
メイド「幸いというのか何というか、宿の収入が爆発的に増えているおかげで喰うには困りませんわ」
お嬢様「我々も中々しぶといな……ともかく、ダンジョンに魔物が出現した事が大きかったな」
メイド「はい、腕試しも兼ねて低階層で駆け出し冒険者が。深階層では宝を求めてベテラン冒険者が多く入るようになりましたわ」
お嬢様「商人さん達が噂を広めてくれていたのもこの結果に繋がったのだろう、魔物が徘徊している事でレアアイテムがあるのではないか、という心理的な面も燻られているのだろう」
オーク娘「その分私の作業量が増えて大変にゃ」
メイド「嬉しい悲鳴と言いなさい、貴女は宿の仕事が出来ないのですからそれくらいやって当然ですわ」
156: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:51:41.86 ID:szPfpWQM0
お嬢様「それでだ、宝くじは使い切ったが宿で稼いだお金は実際に十分に溜まっている……そこで!」
メイド「保守的に行くのですね、分かりますわ。ここで下手にダンジョンに投資すると以前のような規格外の連中に突破された時のダメージの方が大きくなりますわ。ここは一度無駄を省くために規模の縮小を……」
お嬢様「ここいらで宿屋を大きくしようと思うのだ!!」
メイド「素敵な考えですわお嬢様!!」
オーク娘「何 故 攻 め に 入 る」
商人「アハハ……右に倣えもここまで来ると感服しますよ」
メイド「出たな諸悪の根源」
商人「夢を売る私に失礼な言い方をしますね」
お嬢様「半分ナイトメアを売られた気分だがまぁいい!相談があるのだ!」
157: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:52:14.66 ID:szPfpWQM0
商人「宿屋の拡張ですか?」
お嬢様「うむ、実は最近ダンジョンに入る冒険者が増えてな」
商人「部屋数が追いつかなくて客が他所に洩れてしまっているという訳ですね。ふーむ、宿の拡張は正直言うと私の専門外なんですけどねぇ」
お嬢様「ハハ、一夜で建てておいて何を言うか。ともかく頼む、検討だけでもしてほしいのだ」
メイド「実際に様々なご意見が寄せられていますわ。読み上げなさい!」
オーク娘「ほいほい、"出入りしている従業員みたいな娘達は可愛いけど対応する粘土野郎が不愛想"、"町から遠いから物資の補給が不便、ダンジョンの隣に建ってるならそのくらい対応しろバカ"、"もっと量のある飯を提供しろ、質より量だ、いいな?"」
オーク娘「"プレイルーム的なものが欲しい、俺たちだって四六時中冒険に従事してる訳じゃない、ふざけんな"、"スライムのメイドが小さい女の子をよく物色している、怖い"、"オークの女の子が壺割ってるの見た、もっとそこら辺徹底しろ"、"ゴブリンの女の子が突然高笑いをし始めた、うるさい"」
メイド「と、このような……」
商人「半分くらいアンタらに対しての悪口じゃねーか!?そこは自力で治せるだろ!?」
158: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:52:46.82 ID:szPfpWQM0
剣士「ちなみに言うと、食事量を要求しているのは私だ」
商人「お前は黙れよ!?早くダンジョン言って仕事してこい!!」
剣士「連れん奴だ、では行ってくる」
商人「ハァ……私達もお金出して泊まっている以上客として意見を言わせてもらいますけど、メイドさん以外対応がなっていないというのもまぁ事実です」
メイド「当然ですわ」ドヤァ
商人「だからといって出入りする小さい冒険者さんやそちらのお嬢さんを事あるごとに凝視しないでください。傍から見たら変態にしか見えませんよ」
メイド「ではお嬢様を優先で見るようにしますわ。今後気を付けましょう」
商人「お前、私の言葉通じてるか?」
159: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:53:13.82 ID:szPfpWQM0
商人「では分かりました。部屋数の方は明日までに何とかしましょう」
お嬢様「おお!出来るのか!」
商人「フフン!林檎ちゃんに不可能は無いのです!あ、費用の事ですが」カタカタチーン!
メイド「あー……以前よりもかなり高くなっていますが」
商人「これ以上は勘弁してくださいよ。今までは在庫処分でお安くしていたんですから、今回は完全に私の予想を超えたものですし」
お嬢様「サラッと酷い事を言ったのだ」
160: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:53:41.90 ID:szPfpWQM0
商人「それと、働き手がそろそろ必要だと思いましてそこらへんは先に知り合いに声を掛けさせてもらいました」
オーク娘「わざわざ商人さんが見つけてきたのかにゃ?」
商人「はい、見つけたというより相談を受けたというか。店を宿内に入れて欲しいとあちらからの申し出なので、コレは仲介費や彼らのお給料はいりません、むしろテナント代でお金取れますよ」
お嬢様「それならばさっそく連れて来てくれ!」
商人「はいはーい、そういうと思いましてもうこちらに来てもらいましたー!」
パスタ「どもー」
お嬢様「スゲェ名前の奴が来た」
161: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:54:07.49 ID:szPfpWQM0
パスタ「うわ!?なんだこの名前!?勇者名義じゃねーのか!?」
店員「勇者さん、勇者は飽和状態ですし紛らわしいからその名前で統一しましょう」
オーク娘「パスタにゃ!紛れも無いパスタにゃ!!」
メイド「大興奮ですわね。好物でしたっけ?」
オーク娘「いや、別に」
メイド(なんだコイツ……)
162: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:54:36.79 ID:szPfpWQM0
商人「こんな名前ですが、色んな料理を作れる腕利きなので厨房を貸切させて完全に任せるって言うのはどうでしょうか」
メイド「そうですわね、私一人でもいっぱいいっぱいでしたし」
商人「最悪なぜか客の私がヘルプに入ってましたからね」
メイド「料理できるの私達しか居ませんから……」
お嬢様「うむ!毎日おいしい料理を感謝しているのだ!」
メイド「その言葉で私は天に昇るような気持ちになりますわお嬢様ぁ!!」
オーク娘「いつもご苦労にゃ」
メイド「DEATH!!」
163: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:55:02.83 ID:szPfpWQM0
お嬢様「では準備もあるだろう、明日から入ってくれ」
パスタ「了解!じゃあ厨房はこっちが使いやすいようにさせてもらうよ」
店員「それでは今後ともよろしくお願いします!」
商人「絶対にパスタ作らないでくださいね」
パスタ「えー」
店員「えー、じゃねーよ」
164: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:55:32.23 ID:szPfpWQM0
お嬢様「な、なんか不安だがまー人手不足の一端は解消という事でイイか!」
オーク娘「粘土はどうするにゃ?」
「呼ばれて来てみたんだが」
「何だ?用済みかい?」
メイド「いいえ、使えないのなら使えないで裏方に回しましょう。これでも貴重な男手ですわ」
お嬢様「……変身させて娼婦でもやらすか」ボソッ
オーク娘「!?」
メイド「!!?」
「「ッ!?」」ビクッ
お嬢様「ん?勿論冗談だぞ?」
メイド(度重なる疲れでお嬢様が穢れてしまった……ッ!!)ガクガクブルブル
オーク娘(め、目に光が無かったにゃ……)ガクガクブルブル
165: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:55:58.78 ID:szPfpWQM0
商人「それと、プレイルームについてですが、そちらも是非働かせてほしいと申し出た方がいるのですが」
お嬢様「うむ、通せ通せ!人手が足りない今ならどんな人材でもウェルカムなのだ!」
商人「えーっと、後悔しませんね?」
メイド「はて?」
オーク娘「よっぽどなのかにゃ?」
商人「会えば分かりますよ、会えば……ではお入りください」
ガチャ
166: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:56:26.26 ID:szPfpWQM0
触手「……」
お嬢様「……」
メイド「……」
オーク娘「……」
商人「……」
触手「ど こ 見 て ん の よ !!」
お嬢様「お引き取り下さい」ニコッ
167: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:57:09.23 ID:szPfpWQM0
商人「はいはい帰った帰った、お呼びじゃないんだとよ」ズリズリ
触手「何よ!!ガン攻め拘束SMプレイルームを作ってくれるって話じゃなかったの!?」
商人「誰も何も言ってねぇよ」
触手「うっさいわね!!名前が微妙に私と被ってて気に入らないのよアンタ!!」
商人「被ってねぇよ!?"しょ"の字しか合致してないよ!?」
触手「キー!!ちょっと人気があるからって調子に乗らないで!!私だって本気を出せば筋骨隆々ダンディやほっそりハンサムなんてイ・チ・コ・ロよ!!」
触手「そう、私はヴァニティラヴハンター☆」
お嬢様「えい」グッチャアアアア
触手「ぎゃああああああああ!!?やめッ!やめろおおおお!!男に責められるならまだしも女の子供になんて、あああああん///やめろっつってんだろ!?」
お嬢様「アハ、アハ、アハハハハハハ」グシャッグシャッグシャアアア!!
触手「ぎゃあああああああああ!!」
168: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/19(日) 19:57:51.10 ID:szPfpWQM0
触手「」チーン
メイド「過労が限界を超えましたわ、トリップしていらっしゃるようで」
商人「申し訳ないです……」
お嬢様「さて、ゴミは片付けたしダンジョンの整備だけして今日は休もう」
メイド「痛々しいですわお嬢様……それは私どもでやっておきますので今日はもうお休みください」
オーク娘「後でちゃんと報告するにゃ、だからもう休むにゃ」
お嬢様「アハ、アハ、アハハハハハハハ」
176: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:18:32.68 ID:hT1LLVSU0
――――――
―――
―
商人「はい、先日の事は忘れて色々と整理しましょうか」
お嬢様「何があったのだ?あの日実はパスタと話をしてからの記憶が無いのだ」
メイド「あの後ぱったりと眠ってしまったのですわお嬢様、お気になさらないて下さいまし」
オーク娘「何も見なかった聞かなかったにゃ、いいにゃ?」
お嬢様「お、おう?」
177: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:19:03.74 ID:hT1LLVSU0
商人「とりあえずご要望通り宿の拡張が終わりました。前回の会社は使えなかったので日が経ってしまいましたが形にはなりました」
オーク娘「あの大工さん達呼べなかったのかにゃ?」
商人「以前使ったニーア商会という会社の建築部が暴動を起こしたそうで。何でも理不尽な扱いと低賃金、並びに業務上の不正の露出で腹を立てたとか」
メイド「貴女のせいでなくて?」
商人「ただでさえ落ち目で仕事が無かったところを使ったんです。ああは言ってましたが個人的にチップも出してたのでこれでも感謝されたんですよ?」
お嬢様「案外律儀なのだな」
商人「そのおかげで今回は別の業者さんに頼みました。ま、こっちはこっちで普通で面白くないですね」
お嬢様「面白さを求めないでくれるかな?」
178: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:19:31.21 ID:hT1LLVSU0
商人「それと、ご要望が多かったみたいなので宿泊スペースより先にプレイルームを作らせてもらったのですが……」
お嬢様「そっちはかなり好評なのだ。戦いに疲れた冒険者たちが阿呆のように遊戯に金を落としていくのだ。笑いが止まらんぞ!アッハッハ!」
メイド「お、お嬢様!?」
オーク娘「性格がひん曲がってきてるにゃ……」
商人「換金所はアイテム交換という事で別所で私が出していますが、これ以上台を増やしたり換金などの行為を行うと認可を取っていないので国にガサ入れされますので気を付けてください」
お嬢様「構わん、スロット10台とカードテーブルをもう二台追加で頼むぞ!」
商人「ど、どうなっても知りませんよ……」
179: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:20:05.14 ID:hT1LLVSU0
お嬢様「そういえばパスタの料理も評判がいいそうだな」
商人「はい、そちらも安定していますね。料理はおいしいし店員さんが可愛いですし」
オーク娘「そういえば、メニュー表に10倍パスタなる物があったにゃ。アレはなんなのにゃ?」
商人「あの野郎!!あれほどパスタ作るなって言ったのに何やってんだ!?」
メイド「……彼がパスタを作るとどうなるのですか?」
商人「原初の地へ誘われるそうです」
メイド「??」
180: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:20:37.26 ID:hT1LLVSU0
オーク娘「で、何が違うのにゃ?」
パスタ「おう!この生地自体には原料には―――と―――と―――が主に使われてるな!」
オーク娘「?よく聞こえなかったにゃ?」
パスタ「え?だから、―――と―――と―――……あれ、どうしてそこだけ声が出ないんだ……」
店員「聞くも悍ましいモノだからではないですか?」
ピィギャアアアアアア
メイド「……厨房から何かの叫び声が聞こえるのですが」
パスタ「いかんいかん、材料が」
お嬢様「材料!?」
店員「ちょっと黙らせてきますねー」テトテト
お嬢様「……よし」
商人「よしじゃねぇよ」
181: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:21:14.66 ID:hT1LLVSU0
吟遊詩人「おーい、こっちに10倍パスタなる物を頼むよー。なにが10倍なのかなー」ポロロン
パスタ「あ、はーい、出来上がりがあるので持っていきまーす。ほら、頼むぞ粘土」
「何故俺たちがウェイターをしているんだ……」
「裏方じゃなかったのか……」
パスタ「つべこべ言うな、賄をパスタにするぞ」
「「ヒィッ!?」」
メイド「あら、上手く調教が出来ているようで」
オーク娘「パスタの何が恐ろしいのにゃ……」
182: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:21:44.80 ID:hT1LLVSU0
お嬢様「あ、道具屋はどうなっているのだ?冒険者たちにとっては回復薬やマジックアイテムの補充は死活問題だろう」
商人「ヌッフッフ、ここにいるじゃないですか。最高の旅商人が!」ドヤッ
メイド「ああ、ちゃっかりしてますわ」
商人「……と、言いたかったんですけどねぇ」
オーク娘「最高じゃないと自覚したのかにゃ?」
商人「違ぇよ。外見てください外」
お嬢様「外?」
183: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:22:11.53 ID:hT1LLVSU0
ガヤガヤ
「いらっしゃーいいらっしゃーい!」
「こっちの道具は安いよー」
「角ー、角はいらんかねー。出来立てほやほやユニコーンの角ー、100万だよー」ガラガラ
「ねぇ!!ネバネバ粘液いらないそこのボウヤ!!今ならお姉さんの斬りたて触手ついてるわよ!!これを毎日撫でまわして!!あああん///」
「オラ!!金の斧と銀の斧だ!!特価価格で何と1000万!!今なら何と泉の精霊のパンツ付き!そこのブルジョワ冒険者共!!買っていきやがれ!!」
ガヤガヤ
184: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:23:03.22 ID:hT1LLVSU0
オーク娘「かなりの数の出店が出来ているにゃ」
お嬢様「アイツらーーー!!誰の許しを得てこんなところで物売りなどしているのだーーー!!」ガンガン
メイド「落ち着いてくださいませお嬢様」
商人「誰の土地でもないですから認可も必要ないですしねぇ。ダンジョンがあれば自然と集まってくるんですよ。つーかなんか見覚えのある連中が混ざってるなオイ」
オーク娘「記憶に新しい触手がいるにゃ」
お嬢様「触手……ウッ、頭が」
メイド「全てお忘れになってくださいお嬢様」
185: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:23:30.02 ID:hT1LLVSU0
幽霊「それじゃあ私たちの仕事もそろそろ終わりかなー。これだけ繁盛すればもう問題ないよね」
子ウサギ「ウッキュウ」
お嬢様「……だれだっけ?」
商人「……何か頼んでましたっけ?」
幽霊「ヒデェなオイ!?こっちはずっと薄暗いダンジョンの中待機したんだよ!?宣伝しまくれ言ったのアンタだろ!?」
子ウサギ「ギュー」バタバタ
商人「あー、そんな事言ってましたね。はいお小遣い、適当に出店でなんか買ってきてください」
幽霊「わーい……じゃねーよ!?ふざけんなよ騙されないぞ!?ええいこうなったらこっちはこっちで勝手にダンジョン攻略して計画ぶっ潰してやる!!行こうウサギちゃん!」プンプン
子ウサギ「ウッキュウ!!」プンプン
186: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:24:00.17 ID:hT1LLVSU0
お嬢様「止めなくていいのか?」
商人「トラバサミに引っかかって動けなくなるようなヒトですから攻略とか無理でしょうHAHAHA」
オーク娘「しっかり覚えてるじゃにゃいか」
剣士「……」
商人「貴女は貴女でどうしました」
剣士「ぶっちゃけてしまうとダンジョンに興味は無い。出店を回るから金をくれ」
商人「だ ろ う な」
188: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:24:22.90 ID:hT1LLVSU0
「そうだ、お嬢」
お嬢様「どうしたのだモノマネンド1号」
「1号て……まぁいいか。お嬢宛てに手紙が来ていたぞ」
メイド「ッ!」
お嬢様「これは……」
オーク娘「うみみゃ?なんか立派なマークが付いているにゃ」
商人「おんや?見た事がありますね、確か銘家の……」
お嬢様「……」ビリッ
メイド「ああッ!」
オーク娘「や、破っちゃったにゃ!?」
189: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:25:02.93 ID:hT1LLVSU0
お嬢様「どうせ帰って来いという催促だろう。今は必要無いのだ。さ、二人とも、ダンジョンに向かうぞ。今日も冒険者から搾り取ってやるのだ!!ニヒヒ!!」
メイド「お、お待ちくださいお嬢様ァーーー!」
オーク娘「……ボスは自分の親の事嫌いなのかにゃ」
商人「親御さんからの手紙でしたか……間が悪すぎですよ1号さん」
1号「だからその呼び方やめ……ッ!?名前が!?」
2号「それじゃあ俺は2号かよ……」
190: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:25:32.83 ID:hT1LLVSU0
商人「深く首を突っ込む気はありませんが、お嬢さんも何か訳があるのでしょう」
オーク娘「私はお父さんもお母さんも大好きにゃ。だからボスがどうしてああいう態度を取るのがよく分からないにゃ」
商人「誰しもが貴女と同じようにとは行きませんが……流石に心底嫌っているという訳ではないみたいですよ。メイドさんから聞いた話だと、いい親子だって言ってましたし」
商人「ですが、親の言いなりにはなりたくない気持ちもあるんじゃないでしょうか。相当な箱入り娘だって話もしていましたし」
オーク娘「むー、何だか贅沢な悩みにゃ」
商人「私にもまぁ……覚えがあるのでお嬢さんの方に肩入れしてしまいますけど」
191: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:26:00.80 ID:hT1LLVSU0
オーク娘「……ところで」
吟遊詩人だったもの「」
パスタ「ダメかー。まさか身体がトランスフォームを始めるとは」
店員「ダメでしたねー。もうこうなるって分かってやってたでしょ」
オーク娘「……」
商人「とりあえずパスタ禁止令を発令しましょうか」
192: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:26:27.06 ID:hT1LLVSU0
――――――
―――
―
メイド「踏破率最大62%、冒険者12層に突入しましたわ」
オーク娘「20層まで開拓しておいてよかったにゃ。罠も配置し直してちゃんと機能しているにゃ」
お嬢様「よし、このまま経過を見るのだ」
メイド「しかし、有名どころの冒険者も来るようになりましたわね」
オーク娘「臆病風のジョニー、穴掘りビー、マッスル武田、騎士竜ヴェイド……うにゃ?ヴェイド?」
お嬢様「その筋ではない我々でも半分くらいは聞いたことのある有名人たちなのだ」
メイド「珍妙な名前が多いですわね」
193: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:27:02.30 ID:hT1LLVSU0
お嬢様「だが、順調に進んで行っているのは……」
―――
銃剣士「OK、モンスターの方は処理出来るよ」
女盗賊「それじゃあ私は罠の解除するから、引きつけておいて」
銃剣士「ん、分かった。気を付けてね」
女盗賊「そっちも私ほったらかしにして勝手に死なないでよ?」
―――
少女「あわわわ……大した実力も無いのにこんな場所まで来ちゃった……」アタフタ
少女?(オドオドすんな。田舎もんに見られるぞ)
少女「だ、だってぇ……」
少女?(よっぽどヤバい時は俺が代わるから、お前は前にいる連中の後ろについて行け。そうすれば安全だ)
194: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:27:35.68 ID:hT1LLVSU0
―――
オーク娘「結構前から入っていた二組にゃ」
メイド「あの白い衣装の変な剣を持った男と盗賊、そしてオトコオンナですわね」
お嬢様「有名どころを抑えてのトップなのだ。攻略が早い訳ではないからいいが」
メイド「そういえば一つ問題になっている事がありますわ」
お嬢様「何だ?」
195: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:28:10.34 ID:hT1LLVSU0
メイド「ええ、冒険者のマナーがなっていないというか何というか……」
オーク娘「ダンジョン内がゴミだらけになってしまっているのにゃ。これで罠が上手く作動しないって事もたまにあるにゃ」
お嬢様「む、それは問題だな。自然身溢れる洞窟美が穢されてしまう」
オーク娘「人工物だけどにゃ」
メイド「口答えはしない!丁度いいですわ、私とこの脳ミソ筋肉で簡単に掃除をしてまいります」
オーク娘「うにゃ!?私もかにゃ!!」
メイド「当たり前ですわ。お嬢様の手を煩わせるわけにはいかないので」
オーク娘「うー……確かに魔物も闊歩しているから迂闊にボスをダンジョン内に出せはしにゃいけど」
お嬢様「では頼むぞ、私はここで管理を続ける。何かあったら呼ぶぞ」
メイド「了解しましたわお嬢様」ニコッ
196: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:28:53.75 ID:hT1LLVSU0
……
オーク娘「ハァ、中々の重労働にゃ」ズガーーン
メイド「軽々魔物を叩き潰しておいてよく言いますわ」
オーク娘「アイツら邪魔だからどけなきゃいけないにゃ。今のうちに掃除するにゃ」
メイド「ええ、そのつもりですわ」
オーク娘「……何か、話があるにゃ?」
メイド「そういうところは察しがいいのですね。お嬢様の事でお話したかったのですが」
197: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:29:20.27 ID:hT1LLVSU0
メイド「お嬢様はそりゃあもう大事に大事に育てられましたわ。それはもう目に入れても痛くないくらいに」
オーク娘「うにゃ」
メイド「私が」
オーク娘「お前かよ」
メイド「ですが、そんなお嬢様も日々の生活で退屈なさっていましたわ」
メイド「ある日、私に声を掛けられてある計画を話されたのです……」
198: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:30:00.01 ID:hT1LLVSU0
―
―――
――――――
お嬢様「私は外が見たいのだ!連れて行くのだ!」
メイド「いけませんよお嬢様、ご主人様と奥様に言われたハズです。まだその時ではないと」
お嬢様「しかし、このままでは腐ってしまうのだ!銘家に生まれたかどうかなど私は関係ない!それでも私は一ゴブリンなのだ!外を見たいと思って何が悪いのだ!」
メイド「お嬢様、私も雇われている身。ご主人様を裏切るような事は出来ませんわ」
お嬢様「……う、うう」
メイド「お、お嬢様?」
お嬢様「どうしてダメなの?いつも一緒に色んなことして遊んでくれるのに……えぐっ、ううう」
メイド「」
199: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:30:53.21 ID:hT1LLVSU0
――――――
―――
―
メイド「その日の夜、私は警備を掻い潜り、制止に入ったご主人様に目つぶしを食らわせお嬢様を連れて屋敷を脱出しましたわ」
オーク娘「誘拐だああああああああああああああ!?」
メイド「失礼な!愛の成せる技ですわ!!」
オーク娘「いや、アンタ目つぶし食らわせる必要も皆無だったろ。しかも計画って、計画にすらなって無いにゃ!?誘拐の段取りにゃ!?」
メイド「愛の逃避行の邪魔者を排除したまでですわ」
オーク娘「……誰が誰に雇われてたにゃ?」
メイド「お嬢様、ああお嬢様、お嬢様」
オーク娘「五七五読んで誤魔化すにゃ」
200: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:31:48.45 ID:hT1LLVSU0
メイド「私も、1日2日程度でお嬢様が音を上げてお屋敷に帰られると思ったのですが、これがまた思っていた以上にハングリー精神に溢れていて」
メイド「せめて飛び出した事を無意味なことにしたくないと、ご主人様たちに"自分は守られていなくても立派に一人で生きている"と、そう伝えたいのでしょう」
メイド「きっと、それが出来るようになるまでお屋敷に戻られる気は無いでしょうし、何よりご主人様と奥様の言葉にも耳を貸さないでしょう」
オーク娘「一人って言うのは間違いにゃ。ボス一人じゃ何も出来ないにゃ。私達が3人揃って初めて大きいことが出来るにゃ」
メイド「……」
オーク娘「うにゃ!?な、なんだにゃ!?また殴るのかにゃ!?」
メイド「いいえ、きっとその考えでいいのでしょう。お嬢様も分かっていますわ。だからこそ、せめて自分で自分を認められるまでまだご両親に顔を見せたくないのでしょうし」
オーク娘「うにゃ?」
メイド「さて、長話でしたね。掃除も終わりましたし次のエリアに向かいましょう。オラとっとと歩け!!」
オーク娘「感情の起伏が激しいにゃ……」
201: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/20(月) 01:38:54.94 ID:hT1LLVSU0
……
お嬢様「……」
お嬢様「こっちは全部のエリアを覗けるんだ」
お嬢様「聞こえているぞ、バカ……」
―――
メイド(聞こえるように言ったのですわ、お嬢様)
剣士「しかし、お前もどうしてそう怒る。奴も冗談で言ったに決まっているだろう」モグモグ ポイッ
幽霊「あんね?流石に丸1日放置は辛かったのよ?ウサギちゃんが颯爽と助けに来てくれなかったら私あのまま魔物にグニャグニャに変形させられてたよ?」
子ウサギ「ウッキュン!」モグモグ ポイッ
剣士「アイツもアイツで忙しいんだ、私達まで頭が回らなかったのだろう。まぁいい、怒りは全てそこらの魔物にぶつけろ」モグモグ ポイッ
幽霊「つーかさっきからやたらゴミの出るもの食べてるよね……」
剣士「構わんだろう、どうせ魔物共が漁って食うか土に還る。放っておけ」モグモグ ポイッ
メイド「……」
オーク娘「……」
メイド・オーク娘「「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」」ガクガクガクガク
幽霊「」ビクッ
209: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/22(水) 01:40:18.92 ID:b1WE16n80
……
メイド「とりあえずゴミと原因を排除してまいりましたわ」
オーク娘「言っても厳重注意だけにゃ。あの娘達は話が通じて助かるにゃ」
お嬢様「うむ!ご苦労だったぞ!しかし……不味いな」
メイド「何か至らぬ点がございましたでしょうか?」
お嬢様「いや、そうではない。思った以上に進行が早い者が現れてしまったのだ」
オーク娘「うにゃ!?もう13層突破されてるにゃ!?」
メイド「驚くべき速さですわ……あの二組ですか?」
お嬢様「新参だ、昨日まで見かけなかったやつだ!」
オーク娘「にゃんですと!?」
210: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/22(水) 01:40:54.53 ID:b1WE16n80
―――
「纏え、応剣」
「応えよ、刃よ……ッ!」
グギャアアアアアア
「下らん、この程度か」
「私達が出張る程でも無かったですね」
「だが不自然なダンジョンの形成だ。調べるに越した事はない」
「そうですかそうですか、私はただ貴方が普段の鬱憤晴らしに政務をサボってここに来たようにしか思えなかったのですが」
「……チガウヨ?」
「今の間は何ですか」
―――
211: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/22(水) 01:41:43.02 ID:b1WE16n80
メイド「た、たった一撃でフロアの魔物が……」
お嬢様「け、消し飛んだのだ……」
オーク娘「んー?んんー?」
メイド「何ですか、いの一番に貴女がビビって変な声を上げると思っていたのに。期待外れですわ」
オーク娘「何を期待してたにゃ!?いや、何だろう。顔を隠しているからにゃんとも言えないけど、どこかで見た事のある太刀筋だと思ってにゃ?」
メイド「貴女にそんな実力の離れた冒険者がいる訳がないじゃないですか。頭腐ってるんですか?」
オーク娘「失礼だにゃ!?これでも昔は勇者候補として王都で学んでいたんだにゃ!?」
お嬢様「あら意外」
メイド「無駄なキャリアですわ。頭がよろしくない癖に」
オーク娘「筆記試験は壊滅だったにゃあ」
212: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/22(水) 01:42:15.44 ID:b1WE16n80
お嬢様「って!そんな会話をしている場合ではないぞ!」
メイド「そ、そうですわ!新参者がこうもあっさりとダンジョンを解体していくのは由々しき事態ですわ!!」
お嬢様「一度攻略されたという手垢が付けられたダンジョンというものはそれだけで著しく価値が落とされてしまうのだ……ッ!」
オーク娘「あ、そういう間にも他の三組も14層に突入してきたにゃ!」
メイド「キーーーーー!!っつーか何で三組なんだよ!?サラッと混ざってんじゃねーぞ商人ズ!?」
お嬢様「商人ズと言いつつ商人さんはこの中にいないけどな」
213: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/22(水) 01:43:03.43 ID:b1WE16n80
―――
「今日はこの辺にしておきましょう。道筋も分かっているし、明日にでも攻略できるでしょう」
「本当ならもっと早く下まで付き進めたんだけどな」
「何分、こういったダンジョンに挑む際には隅から隅までマッピングしなければ気が済まないタチで」
「へいへい、そーですかい」
―――
メイド「た、助かりましたわ!今日はもうお帰りになられるようで!」
お嬢様「あの覆面野郎とフード深く被った女を見かけ次第宿に無理やりにでも押し込めろ!!何としてでも時間を稼がせるぞ!!」
オーク娘「他はどうなってるかにゃあ」
214: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/22(水) 01:43:36.05 ID:b1WE16n80
―――
銃剣士「14階に降りてきたはいいけど……」
女盗賊「酷い荒らされ方だねぇ。幸い宝箱は触れられていないみたいだけど」
銃剣士「今日は引こう。この先に進んでもいい予感がしない」
女盗賊「宝は惜しいけど仕方ないか……引き際を見誤ると命がいくつあっても足りないしねぇ」
―――
少女?(化け物が爪痕残して立ち去った後みてーだな)
少女「さ、流石にこれ以上進むのは……」
少女?(俺たちの名前を売るにはまだまだ"箔"が必要なんだ。多少無理してでも進むぞ!)
少女「ヒィィ……もう帰ろうよぉ……」
少女?(あーもうわかったよ!!泣くな!!今日はもうこれでお終いだ!!)
―――
剣士「進めええええええええええええええ!!」バシッ!!バシッ!!
子ウサギ「ウッキュウ!!」バシッバシッ
幽霊「私の上に乗って楽するなよオラあああああああああああああ!!」シュゴオオオオオオ
―――
メイド「14層の惨状を目の当たりにした組は次々と帰還しているようですわ。これを幸いと取るべきか……」
お嬢様「一組おかしくない!?」
218: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:22:01.70 ID:kVdXZD8Q0
――――――
―――
―
翌日
お嬢様「……皆、集まったな?」
メイド「全員いますわお嬢様」
オーク娘「突然作戦会議とは何なのにゃ?」
お嬢様「昨日の出来事は覚えているな?」
商人「突如として謎の二人組が14階層で暴れまわったんでしたっけ?私はその場に居合わせなかったので伝手で聞いただけですが」
219: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:22:40.39 ID:kVdXZD8Q0
お嬢様「ダンジョンというものは攻略されていないからこそ価値が見出されると、そういう話だったな商人さん?」
商人「はい、その通りです。一度攻略されてしまうと、後はおこぼれや取り残し目当てかあるいは腕試しに来る冒険者くらいにしか収益は望めなくなります」
メイド「眼に見えて人が目減りすることが考えられますわ」
オーク娘「うにゃー、困るにゃ。せっかくここまで大きくしたのに」
お嬢様「階層をもっと深くして時間稼ぎなどは出来ないのか?」
商人「その場合は多くのコストをまた要求されますね。楽に出来る方法もあるようですけどこちらは不定期に発生するミッションのクリア報酬ですし」
メイド「難しいですわね。何としてでもあの二人を止めないと大変なことに……」
パスタ「た、たたた大変だあああああああああ!!」ダダダ
お嬢様「む?」
220: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:23:11.71 ID:kVdXZD8Q0
メイド「どうかなさいました?貴方のお店で中毒者でも出ましたか?」
オーク娘「飯食ってぶったおすくらいの事は平気でやってるにゃ。間違いではなさそうにゃ」
お嬢様「ウチは一切の責任は取らんぞ」
パスタ「違うよ!?俺ってそんなに信用無いかな!?」
店員「そんなことより大変なんです!外を見てください!!」
お嬢様「外?」
パスタ「ちょっ、そんな事って……」
221: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:23:39.10 ID:kVdXZD8Q0
1号「おうおう、酷いなこりゃ」
2号「誰だこんな事しやがったのは」
お嬢様「な、何があったのだ!?」
1号「ああ、嬢ちゃんいいとこに来た」
2号「見てみな、死活問題だぜ」
お嬢様「……?」
お嬢様「!?ああああああああああああああああああああああ!!」
222: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:24:12.49 ID:kVdXZD8Q0
ズズーン
メイド「だ、ダンジョンの入り口が……」
オーク娘「瓦礫でふさがれてしまっているにゃ!!一体誰がこんなことを!!」
少女?「ンな!?オイオイこっちは結構急ぎなんだぜ?」
女盗賊「うえぇ!?私のお宝は!?ねぇ!昨日取り漏らした宝箱の山々は!?」
銃剣士「参ったな、ギルドからの調査で来ていたのに。これじゃあ仕事が出来ないぞ」
「酷いな、自然に崩落したにしても偶然としては出来過ぎている」
「私達を警戒した……と考えてもいいかと」
オーク娘(んー、この二人やっぱりどこかであった事ある気がするにゃ)
223: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:24:40.80 ID:kVdXZD8Q0
商人「ハッ!この崩れ方は!」
メイド「知っているのか商人!」
商人「ああいえ、コレ単純に中から連鎖式に崩れたっぽいですね。下の階層のどこかが脆くなってたんじゃないですか?それでズガガーンと」
お嬢様「階層が?」
メイド「脆く?」
オーク娘「えーっと、確か昨日の時点で破損が酷かったのは14層だけにゃ。原因はそこにあるにゃ」
「ですって」
「oh...」
224: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:25:17.80 ID:kVdXZD8Q0
お嬢様「既に探索を始めていた冒険者たちはどうした!?無事か!?」
商人「あ、次々に帰還アイテムで脱出しています。一応入る冒険者さん達にはお配りしていたので。帰還ポイントもほら、そこに設置してあります」
メイド「ナイスサービスですわ」
商人「はぁ?サービスゥ?帰還アイテムと帰還ポイント設置も安くないんですよ?」
メイド「そんなこったろうと思ったよ」
「……用事を思い出した、今日は帰るか」
「そうですね、ここに居ても特に意味は無くなりましたし」
オーク娘「ちょっと待つにゃそこの怪しい二人組!事務所まで来てもらうにゃ!」バッ
「やべっ!逃げるぞ!」
「ったく、面倒事を……」
オーク娘「待つにゃ変質者ーーーー!!」ダダダ
225: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:25:44.97 ID:kVdXZD8Q0
お嬢様「不味いな、こんなタイミングで崩落事故(?)とは……この状態が長引けばせっかく大量に増えた冒険者たちを逃してしまう事になる」
商人「一応宿屋の施設自体は魅力的なので、ここを拠点にして他所へ向かう冒険者もいるからまだ何とかやっていけますが……」
メイド「しかし、それも入口をどうにかしなければ話になりませんわ。私達は宿屋の経営ではなくダンジョンの経営をしているのですから」
商人「公になっていないとはいえ、そりゃそうですよねぇ……」
お嬢様「……中に入ることが出来れば何とかなるか?」
商人「え?あ、はい、一応管理室から数値をチョメチョメすればある程度は修復できるハズです」
お嬢様「ふむ……」
226: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:26:30.85 ID:kVdXZD8Q0
お嬢様「クックックック、アーッハッハッハッハッハ!!」
メイド「お、お嬢様が!?」
1号「とうとう、壊れっちまったか」
2号「南無三」
お嬢様「違う!?馬鹿にすんな!?いい事を思いついたのだ!」
メイド「と、申しますと?」
227: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:27:00.56 ID:kVdXZD8Q0
お嬢様「この状況を逆手に取ろう!至急冒険者ギルドに宿屋名義で依頼を出すのだ!ダンジョンの入り口を塞いでいる瓦礫の除去作業だ!」
メイド「利発ですわお嬢様!冒険者にやらせればこちらが目立たずに済みますわ!」
商人「宿屋名義で出すのもまぁ利益の問題からしても不自然ではないですね」
お嬢様「更にだ!脱出用に作っておいた管理室直通の通路も設置してある!そこから管理室でダンジョンの数値をチョメチョメする!」
メイド「用意周到ですわお嬢様!」
お嬢様「ふふん!それだけでは終わらん!今のうちに冒険者の上位勢に対抗すべく仕掛けをありったけ用意しておくのだ!」
商人「なるほど、このアクシデントは準備期間として取ると」
228: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:29:04.19 ID:kVdXZD8Q0
お嬢様「崩壊の程度は分からんが、ダンジョン自体は完全に元に戻す必要も無い。新たな仕掛けを作り、冒険者たちにここを"不思議のダンジョン"と錯覚させるのだ!」
メイド「えっと、不思議のダンジョンってなんでしたかしら?」
商人「入る度に用意されたパターンのマップからランダムに抽選されて形を変えるダンジョンの事ですね。このキットにはその機能は備わっていないですが、手動でなら擬似的に出来ない事もありません。冒険者がその階に居ない事が条件ですが」
お嬢様「あえて新たな地形を現す事で知名度を上げる!古参の冒険者にはモチベーション的な意味で悪いが、ここいらで"後戻りはできない"という緊張感を持たせる!」
メイド「敏腕ですわお嬢様!冒険者たち自身の練度を上げるのですね!」
お嬢様「そうすれば自ずといい装備を持ってまたここに挑んでくるだろう。我らの肥やしとなる為にな!!」
お嬢様「では早速行動なのだ!1号2号パスタ組と商人さん!みんなで手分けして上位の冒険者達と接触して奴らの特徴を探るのだ!」
商人「管轄外ですが……ま、乗り掛かった舟ですし、そのくらいなら付き合いましょう!」
1号「聞き込みか……」
2号「苦手なんだよな」
パスタ「パスタの件で利用客減っちゃったから保障しかねる」
店員「私が間を持たせますから何とかしてください。あと自覚があるならパスタ作るな」
229: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/23(木) 01:29:38.82 ID:kVdXZD8Q0
お嬢様「勝負は開通するまでの数日……ッ!本当ならば連中にはお引き取り願いたいところだがそんなそぶりは見せない!」
メイド「我々こそがやるしかありませんわ!」
お嬢様「ん?それよりアイツはどこ行ったのだ?」
メイド「あのオークめ……お嬢様が再起の計画を立てているというにも関わらずどこ行ってんだ!」
オーク娘「ここにいるにゃ、つーか逃げられたにゃ」ボロッ
商人「……あれ?ところで私の連れの二人と一匹みませんでした?昨日から姿を見せないんですけど……まさかダンジョンの中に入りっぱなしとかじゃないだろうな?」
―――
幽霊「瓦礫の中に隠れるのよ!!」
剣士「閉じ込められた!!」
子ウサギ「ウキュキュ……(罠か……)」
235: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 21:53:47.22 ID:OHrH91U40
――――――
―――
―
銃剣士「しかし、ツいていないね。こんなことに巻き込まれるなんて」
女盗賊「あーもう!!なんで瓦礫の除去作業なんてしてんだか!」
銃剣士「ハハ……君はやってないじゃないか」
女盗賊「依頼を受けたのはアンタ!私は知らない!」
銃剣士「誰かがやらないと行けない事だし、何より他の冒険者も数多くこの依頼を受けている」
メイド「人数も集まっていますし、前金を出していますので悪い依頼では無いと思いますわ」
銃剣士「あ、メイドさん。こんにちは」
メイド「お茶が入りましたわ。どうぞ」
女盗賊「どうもどうもー」
メイド「貴女は依頼を受けてないでしょうに……」
女盗賊「まー堅い事は言わずにさ♪」
236: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 21:54:22.52 ID:OHrH91U40
銃剣士「しかし、どうして貴女方がこのような依頼を?」
女盗賊「除去作業なんてほっといても誰かが勝手にやりそうなものだけどねー」
メイド「私どももこうしてダンジョンの真横に宿を経営している身、目玉となる物が無ければ商売あがったりですわ」
メイド「故に、こうして冒険者ギルドに依頼することで迅速に素早くダンジョンも再開できるというもの。放置していただけではいつ再開されるか分かりませんし」
銃剣士「なるほどね。一つの事柄で共倒れしてしまうとは、随分とシビアな業界だ」
女盗賊「いや、食い扶持潰される私達も笑えないから」
メイド「外に来ている商人のヒト達も意気消沈していますわ」
237: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 21:54:57.00 ID:OHrH91U40
メイド「それよりも、お聞きしたいことがあるのですが」
女盗賊「聞きたい事?ダンジョンの収集物とか隠し場所は教えなよ、こっちだって仕事でやってんだから」
メイド「別にそんなものは興味ありませんわ(知ってますし)。私が知りたいのはお二人の関係ですわ」
女盗賊「は、ハァ!?な、なんだよそれ!!」
銃剣士「僕達の関係か……」
女盗賊「ちょッ!?アンタも何まんざらでもない顔してんだ!!」
メイド「おやおや、微笑ましいことで」
238: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 21:55:38.05 ID:OHrH91U40
銃剣士「何てことは無いよ。僕と彼女は道を同じくした仲間ってところかな」
女盗賊「そっ、男女の仲を期待したのならお門違いってワケ」
メイド「男と女が旅をしていればそりゃあそう思われても仕方がないのではなくて?」
銃剣士「ハハ、まぁそうなるよね」
女盗賊「ならない!つーかそんな踏み込んだこと聞くな!」
メイド「これは失礼を。楽しそうに旅をしておられるのだと思いましてついつい」
銃剣士「こっちもこっちで訳ありだからあまり聞かれたい事ではないけれどね」
女盗賊「迷惑だっちゅーの」
239: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 21:56:18.58 ID:OHrH91U40
メイド「利害の一致という事ですか……それでは、もし片方がピンチに陥ったら、貴方達は片方を助ける気でいますか?それとも……」
銃剣士「僕は助けるよ。彼女は僕の数少ない味方だ、仲間だ。決して見捨てるようなことはしない」
女盗賊「私は自分が一番だからコイツを差し出せと言われたらとっとと置いて逃げるけどね」フフン
メイド「と、申しておりますが?」
銃剣士「こんな娘だよ。"もしも"の事が起こればちゃんと行動してくれるいい子だよ」
女盗賊「今までそんな場面無かっただろうが」
銃剣士「フフ、どうだったかな。僕はいつも君に助けられている気がするんだけど」
女盗賊「勝手にそう思っとけ!」
メイド「ウフフ、仲が本当によろしいことで」
女盗賊「どこがだ!!」ダンダン
メイド(……よし決めた!)
メイド(こいつらは私が直々に手を下してやる。こんの甘ったるい関係の連中など根絶やしにしてくれるわ!!)ギリギリ
240: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 21:57:49.34 ID:OHrH91U40
……
少女?「"小国の姫行方不明、同盟国であるジストの捜索協力を拒否。その真偽は……"」パサッ
店員「Aランチセットお待たせしましたー」
少女?「あいよ、どうも。ん?テレビ欄?そんなもん見てどうすんだよ……」
パスタ「……」
店員「……」
少女?「何だよ、二人して俺を見て」
店員(独り言がちょっと多すぎないですか?)ヒソヒソ
パスタ(ちょっと痛い子かしら)ヒソヒソ
少女?(聞こえてるっての)
少女(アハハ……口に出して喋るとああなるよね)
241: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 21:58:21.75 ID:OHrH91U40
少女?「ところでさ、なんかこの店ヒト少なくないか?ヒトもいなきゃあ活気も無いが」
パスタ「悪かったな」
店員「あー……ちょっとあのパスタってヒトが問題を起こしまして」
少女?「ふぅん。ま、安くて美味いからいいけどさ」モグモグ
店員「飲食店の問題とか真っ先にその食べているモノの関連なのによく食事を続行しますね」
1号「お客さん。お客さんって双子か何かか?ほい、コーヒー」
少女?「ん、どうも。で、どうしてそう思う?」
242: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 21:58:56.28 ID:OHrH91U40
2号「お客さんによく似た可愛らしい女の子をダンジョンでよく見かけると聞いているからな」
1号「宿でもよく見かけるとよ」
少女?「どこにでもいるじゃねぇか……ま、アレも俺だよ。気にすんな」パサッ
パスタ「一粒で!」
店員「二度おいしい!!」
少女?「何がだよ」
243: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 21:59:34.93 ID:OHrH91U40
少女?「そうだ、俺からも二つほど質問させてほしい」
パスタ「答えられる事ならな」
少女?「この写真の人間を探しているんだが」ピラッ
店員「あら、可愛い子」
パスタ「そうかァ?釣り目で生意気そうにしか見えないけどな」
少女?「悪かったな!?」
1号「どうしてアンタが反応するんだよ」
244: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 22:00:20.25 ID:OHrH91U40
2号「悪いが知らんな」
少女?「そか、ならいい。ヒトが集まる所なら誰かしら知っていると思ったんだがなぁ」
1号「で、もう一つの質問は?」
少女?「ああ、魂を身体から無理矢理にでも引き離す魔法を知らないか?似たような物でもいい、それを探している」
パスタ「それなら知っているぞ」
店員「"契約魔法"ってやつですね!」
少女?「マジか!?」
少女「当たりだ!」
1号「うわビックリした!?」
2号「突然声色が変わったぞ……」
245: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 22:01:23.21 ID:OHrH91U40
少女「あ、し、失礼しましたー!」
少女「そ、それで、どんな魔法なのでしょうか!私にも習得できるものなのでしょうか!」
パスタ「あー、残念ながら遥か古代の魔法の上に禁術扱いでな……」
店員「今扱えるヒトって多分いないんじゃないですかね?」
パスタ「理論が確立されてはいるが何故か成功しないんだったか?」
店員「最近挑戦した大魔法使いの人は失敗しちゃって2か月意識が戻らなかったそうですよ」
少女?「そういうの求めてないから!!もっと現実的なもの!!」
パスタ「我が儘だなぁ」
1号(魂抜き出す時点で現実離れしてるよ)
246: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 22:01:56.01 ID:OHrH91U40
少女?「しゃーない。当初の予定通り、冒険者ギルドに名前だけ売って路銀稼ぎに戻るか」
少女(元の場所に帰らなきゃいけないしねー)
2号「お客さん、もしもその写真の男が居たり魔法の使い方が分かったりしたら飛びつくタチかい?」
少女?「当たり前だ!その為にやりたくも無い旅してんだよこっちは!」
1号「……」ニヤッ
2号「……」ニヤッ
パスタ(今更だけどあのハニワみてぇな粘土って何者なんだろうなぁ)
店員(ホント今更だな)
247: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 22:02:47.45 ID:OHrH91U40
……
「除去作業の依頼、受けたいんだけど」
「ダメです。立場を考えてください」
「俺は勇者として俺の勤めを果たしたいだけだっての!」
「ダメなものはダメです、今はそれ以上でしょう。大人しく傍観でもしておいてください。大体ダンジョンの調査なんてのもオマケなのに攻略しようだなんて……」ブツブツ
「大義名分があって飛び出してきたんだが……ハァ、やっぱお前と来るんじゃなかった」
「半人前の癖に口だけは達者なのですね。ほとほと呆れかえります。実の無い空っぽの果実のような上辺だけ着飾った貴方が一人でふらついて何になるのです」
「ヒデェ毒舌だな」
「暴言を吐いているだけです」
248: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 22:03:45.12 ID:OHrH91U40
「だが、目的の人物はしっかり見つけたからそれでいいだろう」
「後は"あの娘"のプライドを傷つけずにどう連れていくかが問題ですが……」
オーク娘「見つけたにゃ!!不審者二人!!こんな崖の上から宿屋を見つめてどうするつもりにゃ!!」ズザー
「まーた出たよ」
「あのヒトも何も変わっていませんね」
オーク娘「さあここでお縄を頂戴するにゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァ……」ズササー
「……」
「……そのまま崖下に滑り落ちて行ったぞ」
「相変わらずおバカなことで。やれやれってやつですね」
249: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 22:04:25.21 ID:OHrH91U40
――――――
―――
―
ダンジョン管理室
ピコピコピコ
お嬢様「フ、フフフ……フフフフ!!自分の才能が恐ろしい!!」
お嬢様「手に入れた奴らの弱点を元にダンジョンの再構築をここまで完璧に行えてしまうとは!!
メイド「ご立派ですわお嬢様!!」
オーク娘「私の設置したトラップも絶好調にゃ!!ただ、完全に連中用に作ってあるから汎用性は無くなっているにゃ」
お嬢様「それもまた一興!!フッハハハハハハハ!!今回の大改装で並の冒険者たちは一からの出直し!!」
お嬢様「そしてトップ3の奴らは深階層にて各個撃破!!私のプランは完璧なのだ!!」
250: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 22:05:19.96 ID:OHrH91U40
ピロン♪
オーク娘「うみみゃ!?」
メイド「ここでミッションだとぅ!?」
お嬢様「フフン!願ったり叶ったりだ!!最終決戦の場に相応しい課題を私に課すがいい!!」
―cace3・最下層の秘宝を守り抜け!―
メイド「最下層の?」
オーク娘「秘宝?そんなのあったかにゃ?」
251: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 22:06:16.76 ID:OHrH91U40
お嬢様「む?20層には何があった?」
メイド「えっと……冒険者たちから奪った装備がズラッと並んでいる部屋がありますわ」
オーク娘「そういえば物置同然になっていたにゃ」
お嬢様「ふむ、もしもの為をためを思ってあれらを攻略者にくれてやろうと思ったのだが」
メイド「ダンジョンの攻略を根本から否定するようなミッションですわね」
お嬢様「しかし!やるしかないのだ!!」
オーク娘「時間制限書いていないけどどの程度守ればいいにゃ?」
商人「ヒエラティックテキストの図解を見ると、どうも一番初めに最深部に侵入したパーティを倒せばいいようですね」
メイド「居たのかよ。ってか図解ってそれもテキストの意味ないのでは……」
252: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/24(金) 22:07:08.77 ID:OHrH91U40
お嬢様「ならばよし!!あと数日以内に連中を仕留め!そして20層で覆面とフードの二人組に最後の戦いを挑む!!」
お嬢様「皆の者!私に続け!!私たちの戦いはこれからなのだ!!」
オーク娘「ご愛読ありがとうございましたにゃ!!」
メイド「次回の新作にご期待くださいですわ!」
商人「何言ってんだアンタら!?」
※続きます
266: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:15:52.09 ID:jtVQaJEO0
……
銃剣士「参ったねこれは」
女盗賊「あ゛ー、私のお宝ー……」ガクッ
銃剣士「迷宮変化まで行われているとなると相当な技術がこのダンジョンに使われている……僕たちのいる世界では考えられないな」
女盗賊「魔術的要素をあまり感じないから多分そうなんだろうね」
銃剣士「ま、先に進めば色々と見えてくるよ。ほらそこ、宝箱があるよ」
女盗賊「うっひょー!拝借拝借♪」
267: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:16:23.53 ID:jtVQaJEO0
―――
メイド「あの銃剣使いと盗賊のチームが7層のチェックポイントを回りましたわ」
お嬢様「クックック、知らず知らずのうちに誘き寄せられているとも知らずに」
オーク娘「やっぱり一度ダンジョンをリセットしちゃうと進みが悪いにゃ」
お嬢様「ふむ、他の冒険者達の歩みも遅いがそれも狙いだ」
メイド「早く深階層に辿り着くのはあの3チームでしょうし、余計な横やりが入らなくて済みますわ」
お嬢様「上の階層の冒険者達はそっちはそっちで四苦八苦しているしな!アッハッハッハ!」
オーク娘「徘徊している魔物の分布まで変わってるから準備不十分で脱落者続出にゃ」
メイド「装備品の回収が捗って美味しいですわ」
268: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:17:06.14 ID:jtVQaJEO0
商人「あのヒト達はワザワザ8階層を丸々使って退治するそうですが……」
お嬢様「ああ、皆が手に入れた情報を元にそれぞれの弱点を付いた仕掛けを用意したのだ!」
オーク娘「覆面とフードの連中は情報を掴めなかったけどにゃ」
メイド「役立たずめが」
オーク娘「仕方ないにゃ!!あの二人が逃げるのが悪いのにゃ!」
メイド「あからさまに追う方もどうかと思いますわ」
お嬢様「まーまー落ち着け、その件についてはこちらも手は打ってあるさ」
メイド「柔軟ですわお嬢様」
商人「アンタ毎回違う言葉でお嬢さん褒めてるな」
メイド「その程度の事、メイドの嗜みですわ」
269: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:17:44.24 ID:jtVQaJEO0
商人「それで、彼らに対する対策とは?」
お嬢様「まー見ていれば分かる!」
オーク娘「8層の突入を確認したにゃ!」
メイド「オーッホッホッホ!!それではこのワタクシめがあのノロケ組に裁きの鉄槌を下しますわぁ!」
―――
女盗賊「あー疲れた、よっこらせ」
銃剣士「結構あっさりここまで入れたね」
女盗賊「ダンジョンの構造自体に慣れたからじゃない?いくつかパターンがあるみたいだし、それで慣らされたのかも」
お嬢様(そりゃそうだ、そうなるように誘導していたのだからな)
270: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:18:26.14 ID:jtVQaJEO0
ゴゴゴゴゴゴゴ
銃剣士「ん?」
女盗賊「何だろ、どこかで罠でも作動したのかな?」
銃剣士「僕は何も触っていないよ?」
女盗賊「私も同じく。じゃあ他の冒険者が引っかかったんでしょ。あーあー可哀想に」
メイド(可哀想な目にあうのはお前たちだ!そのもたれ掛った壁に運命を委ねるといいですわ!!)ピッ
271: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:18:52.04 ID:jtVQaJEO0
ベコン
銃剣士「ッ!危ない!!」
女盗賊「へ?なっ!?壁が!!ちょっ!うわああああああああ!!」
銃剣士「しまった!間に合わない!!」
ズズズ……
銃剣士「閉じてしまった……どうして壁にいきなり穴なんか。おーい!!大丈夫かーい!?」
イテーヨ!!タスケロー!!
銃剣士「……うん、大丈夫そうだね。すぐにそちら向かう道を見つけるから待ってて!」
272: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:19:25.20 ID:jtVQaJEO0
―――
商人「おんや、分断と来ましたか」
メイド「名付けて!!"死が二人を別つまでに合流できるかトラップ"ですわ!!」
商人「なんじゃそのネーミングセンスは」
メイド「黒歴史ノートぶちまけた貴女には言われたくはありませんわ」
お嬢様「あの二人の強みは戦闘は銃剣士に、探索は盗賊に任せていた所にあるのだ!」
メイド「はいお嬢様。しかしそれは時として弱点にもなり得ますわ」
オーク娘「どういうことにゃ?」
273: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:19:52.16 ID:jtVQaJEO0
メイド「では、おつむの緩い貴女に特別解説をしてあげましょう」
オーク娘「にゃー」
メイド「あの手の役割を明確に分けたツーマンセルの冒険者は基本的に二人で行動していなければ機能しなくなりますわ」
商人「それで二手に無理矢理別れさせたと。でも、それでは不完全ではないですか?盗賊さんも戦闘が出来ない訳ではありませんし、あの銃剣士さんも探索が出来ない訳ではないですよ?」
メイド「ノンノン!次がこの二人の重要な所!」
お嬢様「あの銃剣士の男は決して仲間を見捨てはしないと言い切ったのだ。それは今までの行動を見ていても偽りはないだろう」
274: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:20:25.75 ID:jtVQaJEO0
オーク娘「にゃるほど。そこを付け込んで罠に嵌めるのかにゃ?」
お嬢様「まだ生ぬるい!もう片方の盗賊の性格を存分に使わせてもらうつもりだ!」
―――
女盗賊「痛たたた……ったく、何でこんな仕掛けがあるんだよ」
女盗賊「ともかく、あいつは止めても私を探して回るだろうし。ここで大人しく待っていた方がいいかな」
ピロン♪
女盗賊「んー?なんだこれ?」
275: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:20:51.91 ID:jtVQaJEO0
―隠し部屋解放!お宝解禁!―
女盗賊「なぬ!?どこだ!言え!!」
―表示される地図を参照―
女盗賊「うっへへへ、こりゃこんなところに止まってる訳にゃいかなくなったワケだ」
―――
オーク娘「……凄い勢いで引っかかったにゃ」
お嬢様「勿論罠の一種だからそんな隠し部屋なぞ存在しないぞ。この手の人間の扱いなんて造作もないことだ!操作する側からしてみれば楽なものなのだ!」
メイド「大賢ですわお嬢様。それではあの女を捕まえる準備をいたしましょう」
商人(やっべぇアレ私も多分引っかかるわ)
276: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:21:22.26 ID:jtVQaJEO0
―――
銃剣士「……?」
銃剣士「……??」
銃剣士「!?!?おかしいぞ!?ここさっきも通った気がするんだけど!?」
―――
商人「こっちはこっちで何をしているんですか」
お嬢様「ん?そこには私は特に仕掛けを仕込んではいないぞ?」
オーク娘「時間経過と道を通った回数で通路が変形するようにしてあるにゃ。予想より早く合流されても困るからこういう措置をしたにゃ」
お嬢様「ハハ、地味にえげつない事をする」
メイド「お嬢様に黙って仕掛けを作るとは、首を刎ねられても文句は言えませんわ!!」
オーク娘「何でにゃ!?」
277: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:21:50.28 ID:jtVQaJEO0
―――
銃剣士「さて、ようやく少し広い部屋に出たけれど……高い壁だなぁ。登るのは少し辛いか」
―――
オーク娘「うにゃ?今いる部屋は何にゃ?」
メイド「あ、あれ?おかしいですわね、もうとっくに盗賊の方が捕まっていてもおかしくないのですが」
お嬢様「本来ならあの場で捕えた盗賊をエサに銃剣士を仕留める罠が次々と作動する予定だったのだが……えぇっと」ピッポッパ
278: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:22:21.78 ID:jtVQaJEO0
―――
女盗賊「おっ宝おっ宝楽しいな〜♪」
女盗賊「おお!あっちに宝箱ー♪……ぎゃあああ!!モンスター!!」
女盗賊「あ!あっちにも宝箱ー♪……ぎゃあああ!!モンスター!!」
―――
オーク娘「罠は踏まない癖に変なところで学習してないにゃ」
メイド「蛇行し過ぎて目的の場所にまだ辿り着いていないですわ!!」
お嬢様「ええい!ヒトという生き物はこれだから!!」
商人(私も絶対同じことしてるだろうなぁ)
279: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:22:52.62 ID:jtVQaJEO0
―――
女盗賊「よっし!隠し部屋付近に到着!!」
お嬢様(よ、ようやくか……無駄に精神的に疲れたぞ)
メイド(アクシデントは付き物ですわお嬢様。後で疲れに効く特性ゼリーをお持ちいたしますわ。さ、気を取り直しましょう)
女盗賊「確か、この壁に向かって三回ノックして。現れるパネルにコマンド入力っと。上X下BLYRA……」
女盗賊「開いた!それじゃあ早速中のお宝を〜♪……ん?」
触手「フフフ、待っていたわ可愛い坊や!!さぁお姉さんと一緒に夜のランデv」
女盗賊「……」ガシャン
触手「痛い!?何でヒトが喋っている途中で閉める!?つーか男じゃねぇのかよ!?女かよ!?消え失せろ女にゃ興味ねぇんだよ!痛い!?お願い止……やめろっつってんだろ!?」
女盗賊「……」ガシャンガシャンガシャン
触手「」
280: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:23:23.12 ID:jtVQaJEO0
―――
オーク娘「……」
メイド「……お嬢様」
お嬢様「使えそうなモノはとことん使おうとした結果なのだ。それ以上は聞くな」
メイド「お嬢様の行動を信じますわ」
商人「はーい触手さん聞こえますかー?そのヒト連れて指定の部屋まで来てください。そこで貴女好みの男のヒトが居ますから」
281: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:23:52.82 ID:jtVQaJEO0
―――
女盗賊「はーなーせー!!」
触手「放せと言われてそうですかと放す奴がいると思わない事ね。さ、貴女をエサにあの可愛い子をゲットしちゃおうかしらね」
女盗賊「フン、アイツを舐めない方がいいぞ。正確な射撃でお前のそのずんぐりむっくりの本体から伸びた触手を一本ずつ削ぎ落とす事も出来るんだからな」
触手「あら、私は責めるのも責められるのも好きよ」
女盗賊(聞きたくなかったそんな事)
触手「目標地点に到着よ!!さぁ命乞いをおし!!この下にいるあの子に武装解除を促し自分だけが助かりたいと声高々に叫ぶといいわ!!」
女盗賊「くそっ!私に構うな!!早く私ごとコイツを撃てーーーーーー!!」
触手「……」
女盗賊「……」
触手・女盗賊「「 い ね ぇ し 」」
282: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:26:01.58 ID:jtVQaJEO0
―――
お嬢様「……」
メイド「……」
オーク娘「あーもうグダグダにゃ」
商人「来るまでに時間をかけすぎましたね。とっとと他の場所の探索に向かったみたいです」
―――
女盗賊「……もう怒った」
触手「何がよ?ってぎゃあああああ!!仕込みナイフううううう!?」ザシュッ!!
女盗賊「私が戦闘出来ないと思ったかマヌケ!頭来た!!もう帰る!!」
触手「ちょッ!斬りつけておいて何よその態度!!私の乙女の柔肌あああああああああああ!!」ザシュッ
283: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:26:51.49 ID:jtVQaJEO0
……
銃剣士「あ、いたいた!おーいどこ行っていたの?」
女盗賊「来るのが遅い!!もう帰るよ!!」
銃剣士「へ?お宝は?」
女盗賊「いらん!!」
銃剣士「アハハ、分かったよ。それじゃあ脱出アイテムを使おうか」
女盗賊「……理由は聞かないの?」
銃剣士「さしずめ、僕が君を見つけるのを遅れたから機嫌を悪くしたってところかな」
女盗賊「……迎えに来るって言ったのに」ムスッ
銃剣士「ゴメン、僕の配慮が足りなかったね」
女盗賊「ふん!まーいいけど、次遅れたら今度こそただじゃおかないからね!」
銃剣士「フフ、肝に銘じておくよ」
284: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/28(火) 01:28:49.98 ID:jtVQaJEO0
―――
お嬢様「なんだこの茶番」
メイド「落ち合ったときに大喧嘩で破局するという筋書きを想像していたのですがダメでしたわ。爆発しろ」
オーク娘「呆気ない幕切れだったにゃ」
商人「性格悪いですね貴方達」
メイド「最後まで甘ったるいモノを見せつけられましたが、まぁ結果オーライですわお嬢様」
お嬢様「う、うむ!なんか全てにおいて納得が出来んがまぁ良しとしよう!!」
商人「ふぅ、一つは片付いたって事ですね」
オーク娘「先が思いやられるにゃ……」
触手「……私は……何のために……」ガクッ
289: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:27:20.82 ID:YyTM34/k0
……
少女?「さぁて、話を聞きつけてまたダンジョンに潜ってみたが……」
少女(契約魔法の情報があるって話だったよね)
少女?「ああ、身体を手に入れなきゃ使えないが、学んでおくに越した事はない。元の身体に戻る為だったらなんだってやってやるさ」
―――
オーク娘「ん?」
お嬢様「今なんでもするって言ったよね?」
商人「聞こえてない聞こえてない」
メイド「手筈通り、彼女は9層で仕留める手筈となっておりますわ」
290: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:27:59.41 ID:YyTM34/k0
商人「6層には何を用意したのですか?別段他の階層と変わった所は無いようですが」
オーク娘「今回は誘き寄せまくって罠に嵌める戦法を取るにゃ!」
お嬢様「先の二人組は変にグダグダな状態で終わったが今回はキッチリと戦略を立てさせてもらったぞ!説明パネルかもーん!!」パチンッ
メイド「こちらに用意させていただきましたわぁ!」ガラガラ
商人「えっと、何々?」
お嬢様「まず奴らが居る階層にある画面を表示させるのだ!」
メイド「その後、引っかかった彼女が指定したポイントに一直線!」
オーク娘「そこでズドーンドギャギャーンといった具合にゃ」
商人「へぇ、何言ってるか全然分かりません」
291: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:28:27.73 ID:YyTM34/k0
お嬢様「まぁ見ているがよい!粘土どもにコピーさせた写真を6層に公開するぞ!」ピッ
―――
ピンポンパンポーン♪
少女?「ん?なんだ?」
―迷子のお呼び出しをします―
少女(迷子だって。大変だね、こんなダンジョン内で)
少女?「いや大変ってなんだよ!?何で洞窟内でアナウンスが流れるんだよ!?そこに疑問持てよ!?」
―この男の人が9層にて赤髪の女の子を待っています。心当たりのある方はすぐにお迎えに来てください―
ブォン
少女?「……」
少女(あれー、この顔どこかで……)
少女?「俺の身体あああああああああああああ!!」
少女(うわ!?脅かさないでよー!)
292: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:29:32.43 ID:YyTM34/k0
少女?「どこだ!?最短のルートはどこだ!!」
少女(お、落ち着いて!ダンジョンの構造が前と変わってるからそう簡単には……
―こちらの地点にエレベーターをご用意させていただきました、すぐにでも……―
少女?「あっちかあああああああああああ!!」ダダダダ
少女(キャーーーーーーー!!)
―――
お嬢様「フハハ!あっさり引っかかりおったわ!!」
メイド「見事ですわお嬢様」
オーク娘「さぁ9層に降りてきたが最後!私が用意した罠の数々が襲い掛かるにゃ!!」
293: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:30:12.46 ID:YyTM34/k0
―――
ゴウンゴウン
少女(本当にあったねエレベーター……)
少女?「ふ、フフフフ……飛んで火にいる夏の虫ってやつだ。こうもあっさりと目的の物を見つけるとはな」
少女(……)
少女?「どうした?喜べよ、ようやく元に戻れるかもしれないんだぜ?」
少女(絶対におかしいよ、こんな都合よく魔法の情報が入ったり身体が見つかったり……)
少女?「どうあれ行動しなきゃいけないだろ、例えそれが罠だったとしても。俺は一縷の望みにかけてその罠を踏んでいく覚悟をもってるんだ」
少女(それは知ってるけど……)
294: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:30:41.21 ID:YyTM34/k0
少女?「大丈夫だ、俺がいる限りはお前を危険な目に合わせたりはしねぇ。約束する」
少女(……うん!分かったよ。取り戻そうね、全てを!)
少女?「ああ、この先にあるすべてを!!」
―ピンポーン 9階です―
少女?「扉が……」
少女(開く……)
剣士「ん?」
少女?「あっ」
少女(あっ)
お嬢様()
295: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:31:11.98 ID:YyTM34/k0
剣士「……」
少女?「……」
剣士「見つけた」ニヤッ
少女?「いやああああああああああああああああああああああああ!!」ピピピピピ
少女(え!?ちょっと!?何で扉閉めるの!?何で逃げようとしてるの!?)
少女?「無理ッ!!絶対に無理!!蹂躙されて終わる!!前戦って歯が立たなかったんだもん!!」
少女(さっきの意気込みは何だったの!?)
少女?「夢でも見てたんじゃねぇか!?俺は俺の命が大事なんだよ!!元の身体とか知るか!!」
少女(酷い自己矛盾を見た)
296: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:32:08.18 ID:YyTM34/k0
剣士「逃がすかッ!!」ガキンッ!!
少女?「うわああああああああ!!エレベーターが氷漬けにされた!!」
少女(いやああああああ!!早く逃げてええええええええ!!)
剣士「クッヒヒヒ……アッハッハッハッハ!!」ガンッガンッガンッ
―――
商人「あーもうあの娘ったら、ここ数日見ないと思ってたらまーだダンジョン内をうろついてたんですか!」
オーク娘「……」
メイド「……お、お嬢様?」
お嬢様「だ、ダンジョン改築中になぜ弄れない階層があったのかと思っていたが、まだ中にヒトが居たのか……」
オーク娘「何で気が付かなかったにゃ!?」
お嬢様「だ、だってしばらくしたら弄れるようになってたから誤作動程度にしか思っていなかったのだ!」ウルウル
商人「他の階層に移動してただけですねそれ」
メイド「テメェお嬢様泣かせてんじゃねぇよ?あぁん!?」ギリギリ
オーク娘「そんなつもりはないにゃ!!誰かが突っ込まないと突っ込み不在になる状況だったから仕方なくにゃ!!」
297: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:32:38.77 ID:YyTM34/k0
オーク娘「あ!そ、それでも結果はいい方向に転がっているにゃ!画面を見るにゃ!」
メイド「あん?」
―――
剣士「逃げながら戦うのがお前のスタイルか?つまらん、見損なったぞ!」ジャキンジャキンッ!!
少女?「チッ!だったら見逃せっての!!」
剣士「生憎、一度標的を決めたら倒すまでとことん追跡するタチでな。悪く思うなよ」
少女(氷が後ろまで来てるよ!!)
少女?「畜生!手当たり次第凍らせたり切り刻んだりしやがって!少しは手加減しやがれ!!」
298: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:33:20.48 ID:YyTM34/k0
―――
お嬢様「ああーーーーーーー!!アイツ何してくれているのだ!!」
オーク娘「罠をぶっ壊しまくってるにゃ!!何考えてるにゃ!!」
お嬢様「それどころかダンジョンの備品まで次々と……ああ!あのフロアの柱、高かったのだぞ!!」
メイド「ああ宝箱まで……!これでは9層がハズレ階層扱いされてルート開拓後に素通りされてしまうのが目に見えてしまいますわ」
お嬢様「商人さん!アイツを止めろーーーーーーーーー!!」
商人「いやぁ、今あの娘達も冒険者扱いですので。神様視点の私たちが直接介入するのもどうかと」
お嬢様「誰が連れてきた疫病神だと思ってんだ!?」
オーク娘「うみみゃあ!?最後の罠部屋まで来てしまったにゃ!?」
お嬢様「にゃにーーーーー!!」
299: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:34:09.02 ID:YyTM34/k0
―――
剣士「フン、やれば出来るじゃないか。ここまで粘るとは……」
少女?「化け物が……」
少女(ど、どうするの?私の魔法で切り抜ける?)
少女?(無理だ。前みたいに反撃準備に入られたらお前じゃ避けられない)
少女(むぅ……)
剣士「まぁ、追いかけっこもそろそろ終わりとしよう。諦めて私に斬られるか、それとも有り金全部置いていくか……」
少女?「追剥目的だったのかよ!?タチ悪いなアンタ!?」
少女(ッ!!)
少女?「どうしたこんな時に!」
少女(あ、あれを見て!!)
300: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:34:55.05 ID:YyTM34/k0
ズーン
剣士「……ん?随分と存在感のある箱だな」
少女?「あの隙間から見えるのは……まさか!!」
少女?(俺の顔だ!!)
少女(……あれ?ちょ、ちょーっと近くに寄ってもらえる?)
少女?「ん?ああ、分かった」
剣士「……嫌な予感がするな」スッ
301: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:35:27.57 ID:YyTM34/k0
少女?「ほら、ここでイイか?っつーか早くここから俺の身体出そうぜ」
少女(あのさ、よーく見てからそういう事言おう?ね?)
少女?「んー?あれ?」
少女(……これ、ただの……)
少女?「写真引き延ばしたやつ貼り付けただけじゃねーか!?つーか中身何が入ってるんだよコレ!!」ガバッ
少女(ちょ!?そ、そんな不用意な……)
―はずれ―
少女?「」イラッ
302: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:36:40.35 ID:YyTM34/k0
少女?「」ゴゴゴゴゴゴ
少女(あ、あの……)
少女?「散々期待させやがってコレかよ!!管理者出て来い!!俺がぶった切ってやるああああああああ!!」グシャ
少女(ああ、そんな酷い……大体こんなダンジョンに管理者なんているわけ……)
―管理者権限により、条件が達成されました。自爆装置起動、爆発まで3・2・1―
少女?「へ?」
少女(あーあー……)
303: ◆cZ/h8axXSU 2015/04/29(水) 00:38:18.63 ID:YyTM34/k0
*チョドーン*
―――
オーク娘「や っ た ぜ」
お嬢様「結 果 だ け が 残 る」
メイド「貴女のところの娘は回避したみたいですわね」
商人「なんか申し訳ないですねー。あの娘危機回避能力高いもんで」
お嬢様「フフフ!気にするでない!誘き寄せてくれたと思えば大したことではない!」
メイド「お嬢様、今回の被害総額は軽くこのくらいかと」カタカタチーン
お嬢様「……必要経費だ!(泣)」
メイド「太っ腹ですわお嬢様……うう、懐が寒い」
オーク娘「ボスの前では口答えは厳禁だにゃー」
メイド「うるさい!!分かっていますわ!!」
商人「あのー、まぁ少しくらい私が負担しても……」
メイド「当たり前ですわ!!さぁ貴女はさっさと今の冒険者の装備品を回収して外に追い出してやりなさいな!!」
オーク娘「人使いが荒いにゃまったく」
―――
少女?「」プシュー
少女(そんなうまい話がある訳ないよねー……って言うか、このダンジョンって人工的なものなんだ。ふーん……)
309: ◆cZ/h8axXSU 2015/05/01(金) 01:18:33.23 ID:3a2Tu2aw0
……
お嬢様「だーっはっはっは!飲め飲め食え食え!今日は私の奢りだー!」
メイド「鷹揚ですわお嬢様」
商人「いいんですかね?私まで参加しちゃって」
オーク娘「当面の敵だった二組を撃破したにゃ。商人さんの協力もあったからこそ出来た事にゃ!」
剣士「ああ、感謝しろ」ガツガツ
メイド「お前は出て行けよ」
商人「他の二人はどこに行ったか分かりませんか?貴女と一緒に行動していると思ったのですが」
剣士「知らん。二手に分かれた後、合流しようと思ったときには待ち合わせ場所の構造が変わっていて結局逸れたままになってしまった」
310: ◆cZ/h8axXSU 2015/05/01(金) 01:19:49.02 ID:3a2Tu2aw0
店員「追加のお料理お持ちしましたよー」
オーク娘「よーし!そろそろ一緒に食べるにゃ!」
パスタ「いいのか?」
メイド「ええ、勤務時間外に作らせてしまったお詫びですわ」
1号「……」
2号「……」
メイド「お前たちは早く明日の準備でもして寝てろ」
1号「この扱いの差よ」
2号「賄い貰っているから文句も言えんが」
311: ◆cZ/h8axXSU 2015/05/01(金) 01:20:42.43 ID:3a2Tu2aw0
お嬢様「しかし、残る一組はかなりの強敵だ」
オーク娘「出来る限りの妨害はしたけど16層まであっさり突破されてしまったにゃ」
商人「罠を手当たり次第壊されていないだけマシですね。他の冒険者は大体5層前後をウロウロしてますし」
メイド「今日もまた引き上げてくれたからよかったものを、明日は無いと思った方がよろしいですわ」
お嬢様「うむ、奴らの事は探れなかったが、私が持てる全力をぶつけるつもりだ。なんなら最終手段も用意してある」
メイド「最終手段とは?」
お嬢様「それは秘密なのだ!だがミッション達成もしたいから出来るだけ20層でケリを付けるつもりでもいる!」
オーク娘「ハイリスクだにゃあ」
312: ◆cZ/h8axXSU 2015/05/01(金) 01:21:14.48 ID:3a2Tu2aw0
メイド「そうだ、お嬢様。デザートのゼリーをお持ちしましたわ」
お嬢様「わーい!青いプルプルのゼリーなのだ!」
パスタ「ほぉ、綺麗に作るもんだな」
メイド「お嬢様がいつも喜んでお食べになるので。私も身を削る思いで張り切って作っていますわ」
店員「作る側にとっては、食べる人の喜ぶ顔が一番嬉しい物。そう思いますよね?」
パスタ「えっ」
店員「えってなんだよクズ料理人」
313: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/01(金) 01:21:45.35 ID:3a2Tu2aw0
お嬢様「甘くておいしいのだ〜♪」モニュモニュ
オーク娘「美味しそうだにゃあ」
メイド「"おいしそう"ではなく"美味しい"のです」
商人「よっぽどの自信作なんですか」
メイド「そりゃあもう」
お嬢様「うむ!口の中でプルプルと、まるで生きているかのように小躍りしているのだ。それでいてお腹の中でジワーっと広がっていく感じで……」
パスタ「好さげだな……なぁ、材料だけでも教えてくれないか?最悪作り方は自己流で出来るけど」
メイド「お嬢様だけが味わうものでございますわ。全てが秘匿情報となっておりますゆえ」
パスタ「ありゃ、残念」
314: ◆cZ/h8axXSU 2015/05/01(金) 01:22:23.20 ID:3a2Tu2aw0
剣士「……」
メイド「おや、どうなさいました?私をじっと見つめて。私はロr…小さい女の子にしか興味ありませんわよ?」
商人「言い直しても意味変わってねーぞ」
剣士「いや、お前」
メイド「何でしょう?」
剣士「……少し背が低くなったんじゃないか?」
メイド「私はスライムですので多少は可変しますわ。栄養でも取れば元の大きさに戻りますし」
剣士「そうか」ガツガツ
315: ◆cZ/h8axXSU 2015/05/01(金) 01:23:17.40 ID:3a2Tu2aw0
商人「アンタホントどうでもいい事に気が付くんだから。ウチの財布事情にも気が付いてほしい位ですけどね」
剣士「知っているが口に出さんだけだ」
商人「オイ」
お嬢様「おお!見ろ!ゼリーが私を目の前にして伸び縮みを始めたぞ!」プルプル
オーク娘「本当にゃ、ボスの言った通りまるで生きているみたいにゃ!」
メイド「ウフフフ、お嬢様に食べられることで至高の喜びを感じているのですわ」
316: ◆cZ/h8axXSU 2015/05/01(金) 01:23:54.74 ID:3a2Tu2aw0
プルプルプル
パスタ「……」
店員「……」
商人「……あの、ゼリーの材料ってもしかして」
パスタ「言うな」
店員「身を削るってそういう……」
メイド「お代わりもありますわ、お嬢様ァ。ウフフフフフフフフフフ」
317: ◆cZ/h8axXSU 2015/05/01(金) 01:24:29.46 ID:3a2Tu2aw0
お嬢様「いや、もういいのだ。ふぁ……私はそろそろ眠るとしよう」
メイド「ならば私が添い寝をして差し上げますわ!!」シュバッ
パスタ(動きキモッ)
お嬢さま「うむ、それでは部屋に戻ろう」キュッ
オーク娘「わかったにゃーボス」
メイド「!?」
318: ◆cZ/h8axXSU 2015/05/01(金) 01:25:14.69 ID:3a2Tu2aw0
メイド「お、お嬢様……何故そこのブタ娘の手を握っておられるのですか……」
オーク娘「ブタとは失礼にゃ。オークは普通のヒトと顔は変わらないにゃ」
商人「旧魔王軍にオークらしいオークの総隊長が居たそうですが」
オーク娘「それはヒトそれぞれにゃ」
メイド「シャラーップ!!テメェに話なんざしてねぇ!!お嬢様!!ワタクシめがお嬢様が眠りにつくまで隣で子守唄を歌い続けますわ!!」
お嬢様「イヤダー」
メイド「ホワイ!?何故!?」
お嬢様「だってお前」
お嬢様「寝る前にベタベタ引っ付いてきて嫌なんだもん」
メイド「」ピシッ