Apple Watchレビュー:ベータテストだと思ってます
ぜんぜんまだ完成されてない。
米GizmodoのSean Hollister記者がApple Watchをしばらく使ってみてレビューしてます。なかなか厳しそうですが、どうぞ!
これまで2週間ほどApple Watchを使ってきて、僕はある結論に達しました。それは、僕は数百ドル払って、アップル最新製品の栄えあるベータ・テスターになったんだってことです。でも僕は、それで良かったと思ってます。だってそのおかげで、このままじゃダメだってちゃんと指摘できるので。
Apple Watchって?
精巧に作られたアルミかスチール、または18金の腕時計で、内部にはアップル製コンピューターを載せています。そのコンピューターはiPhone(5以降)とペアリングして、BluetoothまたはWi-Fi経由で情報を受取ります。時刻や天気、株価情報を教えてくれたり、音楽を流したり、運動量や心拍数をトラッキングしたり、iPhoneを探したり、ナビになったり、必要に応じて電話をかけたりできます。もちろんクレジットカードなしでお金を払ったり、アラームを鳴らしたり、タイマーやリマインダーをセットしたり、メールを読んだり、カレンダーをチェックしたりも可能です。
あと一番大事なのは、アプリが使えるってことです。それも、たくさん。アプリがあることで、腕時計でできるとは思わなかったあらゆることができます。スマートウォッチは数多くありますが、アプリに関してはアップルにかなうものはありません。
どこがすごいの?
スマートウォッチが本当に意味のあるものなのか、一過性の騒ぎにすぎないのか、みんなApple Watch次第だと思って待望してました。だってアップルはガジェット需要の作り方、汲み取り方を知ってるはずだからです。これまで、iPodがMP3プレイヤー市場を席巻し、iPhoneがPalmやWindows Mobileを駆逐し、iPadが他のタブレットを圧倒してきました。アップルには、既存技術がまだ成功していない市場に滑りこみ、重要な材料(たとえばマルチタッチ)を投入して、その技術を使えるものにしてきた実績があるんです。
でもスマートフォンやMP3プレイヤーと違って、スマートウォッチにはまだまだ市場らしいものがありません。ベスト・スマートウォッチのはずのPebbleだって、去年は100万台売れただけなんです。みんながスマートウォッチを求めているのかどうか、それはまだまだ疑問です。
そして残念ながら、現在のApple Watchにはその答えはまだ出せていません。
これが未来の外観です
僕が金返せと言いたくなった理由を書く前に、良いことも言っときましょう。ハードウェアという観点では、Apple Watchは僕が使ったガジェットの中でもっとも美しいもののひとつです。それはこれまでのアップル製品と比べてもなお、ピュアでシンプルでタイムレスです。
今回僕が買ったのは一番ベーシックなモデル(アルミのケースに入った約4万2000円のApple Watch Sport、プレーンな白のバンドのやつ)です。セコくてすみません。でも一番ベーシックなこのモデルでさえ、フィット感や仕上げの美しさを愛でずにはいられません。
カーブしたガラスのエッジと、丸みを帯びた金属のフレームの完ぺきな合わさり具合。美しいAMOLEDスクリーンのインクのように深い黒。レーザーで彫られたデジタルクラウンの精巧さ。これらすべては、輝くスチールのApple Watchではより強調され、重厚になります。実際SportじゃないApple Watchは良い意味で重みがあり、ボタンの感触もずっと良くなります。
もうひとつうれしいのは、実際見てみるとすごく小さいってことです。42mmバージョンだって、比べると競合するAndroidスマートウォッチが異様に大きく見えるほどですが、38mmバージョンに至ってはミニチュアテクノロジーの驚異です。正直38mmのフレームは僕の手首にはめるには華奢過ぎるくらいですが、まあ、たまにはごつくないのもいいかって感じです。
Apple Watchのもっともいいところのひとつは、スポーツバンドの着け心地が驚くほど良いことです。Apple Watchのバンドは全部試しましたが、中でも楽しいのはマグネットで着脱できるミラネーゼループ、150ドル(日本価格1万7800円)です。でもやっぱり、シンプルでプレーンなスポーツバンドの気持ちよさは素晴らしいです。これなら、ひきはがしたくなることなく1日中着けていられます。バンドの着け方が直感と真逆なので最初は慣れが必要ですが、着けてしまえば揺りかごの心地良さです。柔らかくて邪魔にならず、ラップトップとか机に向かって着けていても取りたくなったりしません。
ストラップを本体から付け外しするやり方もすごく気に入ってます。特別な道具とか細かい作業は不要で、スライドすると小さなバネ式ボタンでしっかりロックされるんです。ただ挿しこむと、あとは機械が自動的にカチッとやってくれる、素敵な感触です。
アップルはウェアラブルテクノロジーの最初の課題を解決した、とは言えると思います。つまり、Apple Watchには魅力があります。ここで僕のベータテストが終わっていれば、僕はとってもハッピーでした。
スマートウォッチのジレンマ
でも、ウェアラブルテクノロジーの大問題が始まるのはここからです。それは、存在理由がほとんどないということです。Apple Watchを使うにはiPhoneも持っている必要がありますが、だったらiPhoneを使えばいいじゃないか、ということです。なぜいつもポケットとかバッグに大きな画面が入っているのに、わざわざ手首の上の小さなスクリーンをいじらなきゃいけないんでしょうか? 僕はこれを「スマートウォッチのジレンマ」と呼ぶことにしました。
それでもこの1、2年、その疑問に対しては机上の空論的回答をたくさん聞いてきました。つまり僕は、Apple Watchを使うことでその回答の正しさを検証していったんです。
「人といるときに電話を取り出すのは失礼だけど、腕時計をチェックするのはアリ」
実際腕時計を使っていれば自明なことですが、腕時計を見るという仕草は万国共通「あなたより大事な用事に遅れるのが心配だ」を意味します。それに2015年の今、腕時計を注視するのはスマートフォンを注視するよりずっとあやしい動作です。誰もがスマートフォンを持っていて、それを取り出しても誰も驚きません。でも僕がApple Watchを取り出すと、みんな気づきます。みんな、僕が贅沢品に数百ドル(もしかしたら数千ドル)払ったんだなって思います。そして自分たちと話もせずに、手首の上の機械をいじってるんだなと思うんです。
「ジョギングするとき電話を持たなくても、便利なガジェットを持って走れるんだよ」
これは、ウォッチが携帯電話ネットワークにつながってなければ通用しないことです。Apple WatchはWi-Fiにはつながるので、家にいるときはiPhoneをすぐそばに置かなくてもアプリを使ったり、ソファの中に埋まったiPhoneを鳴らしたり、(誰にも見られてなければ)手首に向かって話しかけて電話することもできます。
でもWi-Fiの範囲を一歩出た瞬間、すべてが機能しなくなります。といっても、ジョギングをトラックしたり、Apple Payでスターバックスラテを買ったり、Bluetoothヘッドフォンを持っていればある程度音楽も聞けます。でも、それくらいしかできません。だから暗い夜道で何かあっても警察に電話もできないし、家族とか友だちから緊急の電話があっても受けられないし、迷ってもGPSでナビしてもらうことはできません。
ってことは、結局iPhoneを持ち歩くことになります。
「スマートフォンじゃなくウォッチをチェックすれば、相当な時間の節約になるよ」または「手首から世界をコントロールするほうがクールじゃないか?」
もし本当にスマートに操作できて、ごちゃごちゃいじる必要がないんだったらその通りです。が、実際はたどたどしくいじくり回す感じです。だって正直、Apple Watchは使いにくいんです。
スマートウォッチのジレンマに対する、僕の答えはこうです。スマートウォッチを使う意義があるのは、それがスマートフォンでアプリを開くよりもっと早く、クールで、直感的にできるときだけです。スマートフォンをポケットから簡単に取り出せない、または取り出したくない状況とか、SFのマネをしたいときとか、それくらいです。
実際Apple Watchを使ってみて、そういうシチュエーションが一応あることはわかりました。ただ現状では、Apple Watchのまどろっこしいユーザーインターフェースに足を引っ張られています。それについて次にご説明します。
Apple Watchの操作
Apple Watchには実質3つのボタンとタッチスクリーン、そしてデジタルクラウンがあります。ボタンのひとつはデジタルクラウンが兼ねていて、別のボタンはスクリーンを強く押すことで使えます。ちょっと複雑なようですが、それほどじゃありません。ただ問題は、これらがいつも期待通りに動くとは限らないことです。
でもまず、デジタルクラウンの気持ち良さについて触れておきます。それはApple Watchの側面にある、美しいレーザーで彫られたダイアルで、この小さな機械における僕的お気に入りのパーツでもあります。デジタルクラウンのおかげで、通知やテキストメッセージ、メールのスレッド全体だって、夢のように滑らかにスクロールできます。ウォッチ上で何かを読むなんて意味不明と思っていましたが、このダイアルのおかげでそれがアリだと思えました。
でもアプリのスクロールに関しては、ぜんぜん気持ちよくありません。Apple Watchではこの小さなアプリアイコン群を、恐ろしく小さなスクリーンでカルーセル状にクルクル回さなきゃいけません。特に僕のは38mmだったので、スクリーンが小さすぎて、タップしたいアプリに触れずにうっかり別のアプリを立ち上げてしまうことがしょっちゅうありました。
上に書いたように、スクリーンを強く押すことでボタンを有効化できます。これがフォースタッチです。でもどのアプリでも、今フォースタッチが使えるってことを教えてはくれません。だから、とりあえず強押ししてみて何かできるかどうか自分で試さなきゃいけません。
Apple Watchでは、スクリーン上部から下スワイプすると最新の通知リストが見られて、下から上にスワイプすればグランスが見られます。グランスはよく見る情報や機能をぱっと表示してくれる機能です。現在位置とか今の心拍数、カレンダーの次の予定、音楽の操作ボタン、ウォッチをサイレントにする、などです(ちなみにApple Watchはサイレントモードにしたほうがいいです。通知音が大きくて、聞こえる範囲にいる人にはうっとうしいです)。
ただしこのスワイプ操作は、時計の文字盤画面からしか使えません。アプリのカルーセルとか、アプリを開いている画面からは使えないんです。
なのでホームボタンを押して文字盤表示に戻って、スワイプすればいいのか…というと、違います。「ホーム」ボタンは実質的には「戻る」ボタンで、1回押すごとに1ステップもどっていくだけです。
つまり、アプリ画面から文字盤に戻るにはホームボタンを3回押す必要があるんです。1回押してアプリカルーセル、もう1回でアプリカルーセルの真ん中に、そしてもう1回でやっと「ホーム」です。または、2回早押しするとアプリと文字盤を切り替えられます。ただしアプリカルーセルを開いているときはこの技が使えず、アプリとアプリカルーセルの間で切り替わるだけです。これだけじゃちょっと、わかりにくさがわかりにくいですね。
具体的な場面で説明してみます。音楽を聞いていて次の曲を飛ばしたいときとか、心拍数を見たいとき、グランスを見ようとホームボタンを2度押しするとします。でもちょっと、2回目押すのが遅すぎて、2度押しじゃなく1度押しを2回しただけになっちゃったとします。すると1回目でアプリカルーセルが表示され、2回目でアプリカルーセルの中心になります。でも自分では2度押ししたつもりなので、文字盤表示になったと思ってスワイプすると、ただアプリカルーセルがぐいっと動くだけです。チッと思いつつ文字盤に行こうとして再度ホームボタンを押すと、アプリカルーセルの真ん中に行きます。イラッとしてホームボタンを2度押しすると、文字盤ではなくアプリ画面に戻るだけです。僕はよく辛抱強いと言われますが、これにはもううんざりしました。
でも他の操作は、そこまでひどくありません。右下のボタンは1回押すと友だちが表示され、2回押すとApple Payが出てきて、長押しするとApple Watchがオフになります。でもどれも実際ほとんど使わないし、タッチスクリーンとホームボタンのコンビがあまりにひどいので、残るひとつのボタンはもう少し賢く使ってもらいたかったです。
この操作性のおかげで、Apple Watchのアプリ群は「iPhoneより早く、便利に、クールになる」というバーをクリアすることがなかなかできません。
以下、そのバーをクリアできていないポイント(たくさんある)と、多少は価値があると思えた使い方(ちょっとだけ)を列挙していきます。
ちゃんとできてないところ
■ 腕時計として
もちろんApple Watchは時計なので時刻が見られますが、それには手首を持ち上げて、画面がオンになるまで一瞬待たなきゃいけません。そんなに長い時間じゃなく、iPhoneのアンロックよりは早いです。とはいえ、時間が気になるときに待ち時間があるのはバカらしいです。しかも必ずしも毎回確実にオンになるわけではないので、20回に1回オンにならなかったときは余計にフラストレーションを感じます。
それから僕は、10パターンある文字盤どれもあんまり好きじゃありません。ウィジェットを追加して、カレンダーのイベントとか運動のゴールまでの進捗を表示できるのはほんとにクールですが…。あと、日の出・日没時刻をダイアルのフリックで見られるのも良いと思います。
■ スクリーンがしょっちゅう消える
Apple Watchのスクリーンは、オンにするときに手首を持ちあげなきゃいけないだけじゃなく、好むと好まざるとにかかわらず、自動的にオフになります。ときどき、使っているときにオフになる場合もあります。僕はアプリを開こうとしているときとか、時刻を見ているときとか、音声コマンドを伝えている途中でApple Watchが僕の声を聞いているはずのときにも、スクリーンがいきなりオフになりました。これはバッテリーのもち対策だとは思いますが、非常にイライラします。
■ まじめに運動したいとき
Apple Watchでは座っている時間が長過ぎると教えてくれて、カロリー燃焼量も正確にトラッキングしてくれることになっています。たしかに心拍数計も内蔵されていて、ときどき立ち上がるように指示してはくれます。が、どちらも本当に役に立ちません。たとえば、Apple Watchは僕が立ち机で仕事しているときにも毎回立ち上がるように言ってきます。この前は、座った直後に立ち上がれと言われました。
心拍数計は、オンにしたときしか動きません。あるときナーフ(スポンジガン)戦争ごっこでさんざん走り回ったんですが、Apple Watchがひとつもトラッキングしていないことに気付きました。普段の動きをトラックするセンサーは、激しい動きは捉えられないみたいです。アクティブな動きを捉えるには、Apple Watchに「これから運動するよ」と教えなきゃいけなくて、そうすると背面の緑のLEDが光るんですが、その分バッテリーライフが犠牲になります。
Apple Watchのバッテリーは、僕にはほとんど問題になっていません。寝る時間になっても、たいてい40~50%残っています。ただ心拍数計を1時間使ったときは、夜まで保ちませんでした。ただ少なくとも、歩数はつねにトラッキングしているみたいです。
■ パワーリザーブモード
バッテリー残量が10%になると、Apple Watchはパワーリザーブモードに切り替えるように勧めてきます。が、これは放っといてOKです。パワーリザーブモードでは時刻表示以外見られなくなり、それもボタンを押さなきゃ見えないんです。そして何かを一瞬だけ見ようと思ってオンにしても何も見えません。充電するまでほとんど何もできなくなります。
■ 通知の分類
Pebbleが出て以来、スマートウォッチって便利だなと思えた機能は、手元で通知が見られることです。スマートウォッチの唯一最重要機能と言ってもいいくらいです。だから、Apple Watchだと他のスマートウォッチより通知が見にくくて驚きました。
ほとんどはちゃんと届く感じですが、ときどきあてにならないことがあったり、やたら遅くなったり、ムダにまとまって届いたりしました。デジタルクラウンでメッセージをスクロールできるんだから「Facebookの通知が3件あります」とか「Gmailメッセージが2件あります」とかまとめる必要はないと思います。それに、通知を消すのもひとつずつタップかスワイプしたり、フォースタッチで全消ししたりが必要で面倒です。
GmailをApple Watchで読んだり、さらに返信したりしたいと思っている人もいるかもしれませんが、それは無理です。Apple WatchにはGmailアプリがないし、GmailのiPhoneアプリがApple Watchに送ってくるメッセージの最初がわずかに読めるくらいです。アップルのメールアプリならメッセージは読めますが、Gmailをプッシュはしてこないので、手動でクラウドからメッセージを落として来なきゃいけません。それに返信はどうやってもできません。iPhoneを取り出すほうがずっと簡単です。
■ ハンドオフ
Apple Watchで何かを読み始めたら、それをハンドオフ機能でiPhoneに引き継げるはず、です。たとえば上に書いたGmailの通知みたいなときです。でもこれが必ずしも毎回うまくはいかなくて、どうすれば確実にできるのかいまだにわかりません。ときどき、iPhoneをアンロックするときにハンドオフが使えることを示す小さなアイコンが表示されています。それでiPhoneをアンロックすると、意図したアプリが立ち上がるときもあるんですが、立ち上がらないときもあるんです。
またハンドオフは、iPhoneのアンロックは昔の方法、つまりTouch ID以前の方法ですると思っているみたいです。Touch IDのほうがホームボタンを押すだけだから当然簡単なんですが、それだとハンドオフされません。なので再度ロックしてパスコードでアンロックしなきゃいけないんですが、これがアップルが意図した仕様なのかどうかはわかりません。
■ グランス
上のほうの「Apple Watchの操作」を読んでください。
■ 音楽の操作
Apple Watchからはダイアル操作で部屋の向こう側にあるiPhoneの音量コントロールができて、それはすごく良いと思います。でもそれには、まずタッチスクリーンのごく小さなボタンをタップして任意の音楽アプリを選ぶか、音楽再生用のグランスを引っ張りだすかが必要なんです(後者が面倒な理由については、上のほうの「Apple Watchの操作」の項参照)。
さらに場合によってはアプリとグランスの間を切り替える必要があります。というのは、一部のアプリではまだアプリの中にボリュームコントロール機能が入ってないからです。それから、Apple Watchの内蔵スピーカーではオーディオ再生はできません。音質が悪いとかじゃなく機能的にできないので、Bluetoothスピーカーを外付けしなきゃいけません。この点でもiPhoneがあればいいや、となります。
■ ほぼすべての通話
街中でApple Watchを顔に近づけて電話しながら歩いていると、かなりマヌケです。Apple Watchを耳と口に交互にくっつけることになるんです。だからここでも、iPhoneでいいじゃん、になります。
■ 車の中ですることほぼすべて
カーナビについても少し触れておきます。実はこれはそれなりにクールです。でもそれ以外の部分、ドライブ体験全体としてはかなりブロークンです。もう、この状態でよく発売したなってレベルのブロークンです。iPhoneがApple Watchと車に同時につながっていると、電話がかかってきたときはもう車にはつながりません。Apple Watchにもつながりません。iPhoneだけに着信します。どういうわけだか、最先端ワイヤレス技術同士がお互いを打ち消し合っているようです。でもさすがに、多分アップデートで解消されるんでしょうね。
あ、あと運転中にSiriを立ち上げるとき、いちいち確認のために小さなタッチスクリーンのボタンを押すのは苦痛です。聞き返さないで、頼んだことをスッとやってほしいです。
■ サードパーティアプリのぼぼすべて
Apple Watchにはすでに3,500以上のアプリがありますが、そのほとんどはゴミです。何がダメかって、使ってみるまでわからないんです。アップルはApple Watchのサードパーティアプリの一部をプロモーションしていますが、それ以外は自分で探す必要があります。しかもApple WatchアプリはiPhoneアプリの一部と考えられているため、レビューで高評価のアプリを入れてみたらApple Watchアプリのほうはぜんぜんダメということもあるんです。僕は多少でも面白そうなアプリを片っ端から入れてみましたが、その結果多くのアプリに共通するこんな欠点が見えてきました。
- タッチスクリーンボタンを使っていて、小さすぎて押せないアプリ(Blackjackなど)
- iPhoneアプリの機能とぜんぜん関係ない機能(Buzzfeedアプリで見られるのは日替わりクイズだけ)
- ゲームアプリと言いつつもゲームじゃなく、iPhoneアプリのオマケにすぎないもの(Modern Combat 5をプレイしたくても、できません)
- iPhone側で手動でアクティベートしないとApple Watchにインストールできないアプリ(多すぎて名前も挙げられません)
- 手続き上iPhoneからサービスへのログインが必要なんだけど、そもそもiPhoneバージョンはあんまり使わない気がするアプリ(同上)
- 読み込みが永遠に終わらないか(Flipboard)、途中でクラッシュするアプリ
- 通常のコンテンツに比べてあえて情報量を減らしているアプリ
一番最後のが、一番残念でした。だってせっかくデジタルクラウンがあって、テキストをたくさんスクロールできるようになってるからです。ツイートを5つずつ、Yahoo! News Digestを1記事ずつスクロールできるのは感涙ものです。だからインスタグラムでは最新9画像しか見られないのが悲しいです、あの正方形の写真の連続と「とりあえずハート付けとけ」っていうメンタリティは、Apple Watchにぴったりだと思うんですが…。
■ Apple Pay
僕はもっとApple Payを使いたいですし、いつか使ってよかったと思うかもしれません。が、店員さんの前で時計を取り出して支払いをしようとする動作がマヌケに見えそうで気になってしまいます。そしてそれを決行したとき、お店側がApple Payに対応してないともっと恥ずかしいです(今までに2回ありました)。
僕がApple Watchで本当にしてること
■ Siri
ちょっと考えると奇妙なんですが、これは本当です。Apple Watchで一番信頼できる操作方法は、音声コマンドなんです。僕はタッチスクリーンに本当にうんざりしていて、実際あらゆる操作にSiriを使っています。デジタルクラウンを長押ししてちょっと話しかけると、アプリやテキストメッセージやカレンダーのイベントが立ち上がります。
■ テキストメッセージへの返信
僕の奥さんはよくテキストメッセージを送ってきます。でも僕はあまり返信しません。僕はメッセージが届いても気づかないことが多いし、気づいてもぼーっとしてることがあるし、返信するのも嫌いです。でも音声コマンドを使えば、Apple Watchにフレーズを言うだけです。音楽がかかってたり、車のエンジンの音がしたり、うるさい部屋にいたりするときでも、認識精度は高いです。グーグルにも音声認識がありますが、ノイズキャンセリングに関してはアップルのほうが良いような気がします。
■ 出先でちょっとだけ電話を受ける
企業のPRの人からよく電話がかかってくるので、それには出たいと思っています。でも僕は、電話を取る動作もあまり好きじゃありません。が、Apple Watchならハンズフリーで電話に出られるので、空いている手ではニュースを読んだりできて、電話の相手にも気づかれません。音質も電話のスピーカーと同等で、このサイズのデバイスとしてはかなり良いと思います。
■ iPhoneを探す
仕事中に電話を取るのが好きじゃない理由のひとつは、自分がしょっちゅう変な場所に置いてしまうからです。でもApple Watchのボタンとスクリーンをちょっと操作すれば、iPhoneが鳴ってくれます。
■ ターンバイターンのナビ(サイレントで)
Moto Xだと、電話はロックしたままただ「Okay Google Now, 家までナビして」と言うだけでターンバイターンのGPSナビができます。でもApple Watchはそこまで完ぺきじゃないにしろ、スクリーンをオンにして「Hey Siri, 家までナビして」と言って10秒ほど待って、さらに超小さいスクリーンのボタンをタップすれば、ナビが始まります。
そこを越えれば、あとは随時手首をチラチラ見て次に曲がるポイントをチェックしたり、たまにスクロールしてその次の角をチェックしたりもできます。曲がり角に近づくたびに手首を軽くたたいてきて、そのたたき方の違いで左に曲がるのか右に曲がるのかもわかります。
もし車とiPhoneの連携が切れないままで(上の「不満なところ>車の中ですることほぼすべて」参照)、音量調整のためにグランスを表示させるのが大変じゃなければ、ナビ機能はもっと頻繁に使いたいです。あと、曲がり角を知らせるタイミングは、もっと車のスピードを考慮して調整すべきだと思います。
■ リマインダ
リマインダをiPhoneから入力しようとすると、iPhoneをアンロックする頃にはもうリマインドする内容を忘れていたりします。Apple Watchなら(というかAndroid Wearのウォッチでも)、ただ「Hey Siri、家に着いたらゴミ出しをリマインドして」と言うだけです。僕はアラームの設定も同じようにしています。サンフランシスコのダウンタウンのメーター式駐車場に停めるときは、駐車制限時間までに車を移動するのを忘れないように、音声コマンドでアラームを設定しておきます。EvernoteとかTrelloでも同様に、とりあえず音声でアイデアを入れておいて、あとで整理するようにしています。
■ Shazam
今聞いている音楽が何か、Apple Watchを2回押すだけですぐわかるようになっています。iPhoneでアイコンを探す必要はありません。もちろんウォッチ上でアイコンを探す必要はあるんですが、こっちのほうがずっと早くて便利です。ただ、グーグルのデバイスでできるみたいに、Siriに直接曲名を聞けるほうが簡単で良いと思います。今SiriはiPhoneでShazamを使えと言ってくるので、あんまり賢くない感じです。
■ Lifeline
最近僕がハマったゲームアプリのLifelineは、物語の展開の中でプレイヤーがどう行動するか選んでいくタイプのゲームで、使うと通知がたくさん来るようになります。プレイヤーは墜落した宇宙船の唯一の生存者と通信回路を持っていて、生き残った彼は孤独で悲嘆にくれて、どうすればいいかわからない状態です。プレイヤーは彼にアドバイスして生き延びさせ、彼の状況報告を待たなきゃいけません。それには数分、数時間、または一晩かかることもあります。彼は1日中いつでも連絡してきます。
これはiPhoneでもプレイできて、そうすれば良い感じのBGMも聞けます。でもメッセージがApple Watchに届くと、宇宙から手首のコミュニケーターに連絡してくる感じがしてすごく良いです。これは、僕がApple WatchにおいてiPhoneでするよりクールだと実感できた数少ないことのひとつです。
■ Dark Sky
僕は天気をあまりチェックしませんが、このアプリがあればもう大丈夫です。Dark Skyでは、今いる場所にこれからすぐ雨が降ってくるってときを教えてくれます。ローカルな情報が、見逃しようのない手首にプッシュされてくるっていうのが、スマートウォッチのあるべき姿だと思います。
僕がApple Watchでしてることのリストはこれだけです。なんだか少ないことに気づかれたでしょうか。僕がApple Watchを返品したくなる理由が、これでおわかりいただけると思います。
好きなところ
- ハードウェアのルック&フィールが好きです。群を抜く素晴らしさです。
- 情報の守られ方がクールです。Apple Watchが手首に装着されているかどうかを心拍数計から認識し、手首に付いているときはアンロックされていて、外れるとすぐロックされます。再度アンロックするには、iPhoneでパスコードを入れるか、指紋認証のTouch IDを使うかすればOKです。
- Apple Watchのバンドは素晴らしいです。スポーツバンドの場合ストラップがS/MとM/Lの2本同梱されているので、ほとんどの手首のサイズに合わせられます。最初僕はバンドが小さすぎないかと心配でしたが、ちゃんと大きいのも1本箱に入ってました。
- Apple Watchを着けたまま泳ぐことはできませんが、シャワーは大丈夫だし、シャワー中にちょっとくらい使っても大丈夫です。水滴があたっても、タッチスクリーンが勝手に動いたりはしません。ただデジタルクラウンは回しちゃダメみたいです。僕がシャワー中にデジタルクラウンを回したら、そのあとちょっときしんで、動作がおかしくなりました。あと、濡れたあとはストラップを繋ぐ部分に水がたまってることがあるので、必ずきれいにしましょう。
- Apple Watchを狂ったように使わない限り、たとえば歩数以外のあらゆる運動をトラッキングしたりしない限り、バッテリーはさほど問題になりません。電話と同様に毎晩充電は必要ですが、1日1回の充電が2日とか3日に1回になったとしても大して変わらない気がします。バッテリーが1週間保つとかなら別ですが、ハンパに2~3日程度保つと毎晩充電する習慣ができないので、むしろ良くないんじゃないでしょうか。
好きじゃないところ
- アップルがこのインターフェースの(未)完成度で発売したことが驚きです。すぐ直していってくれることを祈ります!
- なんでiOSみたいにホームボタンを押してもホームに行かないんでしょうか?
- なんで使っている最中にスクリーンがいきなりオフになるんでしょうか?
- iPhoneとつながってないとき、どのアプリは使えてどのアプリは使えないのかすぐにはわかりません。
- ワイヤレス充電は良いと思いますが、マグネットがもうちょっと強くしっかりつながっててくれればと思います。ベッドわきで充電しているとき、うっかりぶつかって充電器が外れてしまって、朝にはバッテリーがほとんどゼロになっていたことがありました。
買うべき?
ノーです。ほぼ確実にノーです。今Apple Watchを買う理由はたったひとつ、ブロークンだっていいから、新しい今までと違うガジェットがどうしてもほしい、ということだけです。
ただ救いは、アップルの第1世代製品はいつもこんな風だってことです。初代MacBook Airも、初代iPodも、初代iPhoneもみんなこんなものでした。iPhoneなんか契約縛り付きで500ドル(約6万円)もして、App Storeもないし3Gも使えないしメールのプッシュ機能もなかったんです。でも1年後、iPhone 3Gは速度2倍、メモリ2倍、機能全部入りで200ドル(約2万4000円)になりました。
ただiPhoneと違うのは、スマートウォッチを必要としてる人がいないってことです。それは、あってもなくてもいいものです。そしてアプリのレベルには高いバーがあって、第1弾で出ているアプリのデベロッパーは、アップル推奨のものですら、それをほとんどクリアできていません。Apple Watchを成功させるには、デベロッパー側はかなり頭を使う必要があり、アップル側ももっとキュレーションが必要です。
ベータテストした僕としては、デベロッパーにこうアドバイスしたいです。アプリは、あの素晴らしい手応えのあるデジタルクラウン中心に設計すべきだと。スクリーンの小さなキャンバスだけではなく、ダイアルがあることでスクロールはどこまでも快適になります。指先より小さなタッチスクリーンボタンは使っちゃだめです。既存のiPhoneアプリのオマケでなく、新しくて今までとは違う、Apple Watch専用の何かを作ってほしいです。既存アプリがある場合は、そこからアクションを起こせるような通知をプッシュしてくれるのが良いです。ユーザーがiPhoneを取り出せない、または取り出さないようなシチュエーション用の体験を設計してほしいです。そして必ず、iPhoneを取り出すよりずっと早くできるようにしてほしいです。
今はまだ、Apple Watchを買うべきじゃありません。期待を込めて言えば、来年にはベータを脱することと思いますので。
Sean Hollister - Gizmodo US[原文]
(miho)