王子「囚われの姫君に恋をした」
王子が訪れたのは無人の城。
王子の胸は、冒険心でウズウズ落ち着きがなかった。
王子「おおぉ~、これが魔王の玉座かぁ~!」
主を失った玉座に腰掛け、威張ったポーズを取ってみる。
つい先日まで、人間と争っていた魔王。
今は亡き魔物達の王は、毎日ここで、この光景を見ていたのか。
王子「さーてさて」
そんなちょっとした魔王ごっこもすぐに飽き、彼は城内を駆ける。何か他に面白いものはないか――そんな期待を抱きながら。
王子「…ん?」
ふと、窓の外を見た。
少し離れた所に、塔がそびえ立っている。
王子「何だ…あの塔?」
塔の前まで来たが、その扉は開かなかった。
塔の周辺をぐるぐる回ってみる。他に入り口はない。
ここの探索は諦めるのが賢明か。
だが。
王子(生憎、俺は賢明じゃないんだよな~)
せっかくここまで来たというのに、このワクワクを我慢してたまるものか。
王子(この硬いドア、ぶち破れそうにはないな。とすると…)
王子は塔を高く見上げた。
王子は外壁の凹凸を上手く利用して、塔をよじ上っていた。
目指すはてっぺん。そこには小窓があったのだ。
王子(固く封じられた塔の中に待ち受けるもの…きっと何かあるに違いない!)
王子の頭の中は既に、お宝の山だとか、ドラゴンの卵だとか、そんなファンタジックな妄想に包まれていた。
王子「ん~っ」
小窓との距離もあとわずか。
手を伸ばして、もう少し、もう少し…。
王子「よっしゃ!」ガシッ
小窓に手が届くと、王子は軽快に窓に飛び移る。
王子「さあっ!その姿を見せよっ!」バッ
姫「…え?」
王子「え?」
王子「…」ポカン
質素な部屋の片隅には、王子と同い年位の少女がいた。
着ていたドレスは色もデザインも控えめで、目立った装飾品は身につけていない。しかし白く滑らかな肌、美しく輝く金色の髪、澄んだ青い目、何よりも――
王子(何て綺麗な人なんだ…!!)
彼女自身が、どんな宝石にも劣らぬ美しさを誇っていた。
王子「あ、あのっ、俺っ、王子って言いますっ!」
姫「王子…様?」
王子「あ、貴方の名は!?」
姫「姫……」
姫は一言だけ名を呟くと、こちらを不思議そうに見つめた。
王子はその瞳から目をそらせなかった。まるで魔法にかかったかのように。
ドクンドクン。心臓は高鳴りを抑えきれない。
王子と姫。2人だけがいるその空間に心地よさを覚えながらも、王子は願望を頭に浮かべていた。
王子(この出会いは正に、運命の――)
グウウゥゥ~
王子「え?」
姫「…」
姫「お腹…空いた」パタッ
王子「姫様あああぁぁ!?」
王子「いやぁ…ただの即席おにぎりっすよ?」
姫「ありがとう、ありがとう…3日も食べてなくて」グスグス
姫は泣きながら、王子に貰った非常食を食べていた。
その表情は、姫の外見年齢にしてはかなり子供っぽい。
王子「3日前…つーと、勇者が魔王を倒した日だな」
姫「えっ!?…倒されたんですか、魔王が…」
王子「そう。魔王軍の残党は残党狩りを恐れて、魔王城から逃亡したと聞く。今じゃこの魔王城、魔物の姿も見当たらないっすよ」
姫「そう…なんですか…」
王子「ところで姫様はどうしてここに?」
姫「私は…」
姫は一瞬躊躇した後、答えた。
姫「私は長い間、ここに囚われていました…ですので、外の事情に疎くて」
王子「そうだったのか」
と、王子の頭に妄想が浮かぶ。
囚われの姫と、姫を救い出す王子。まるで童話のような話の流れ。そして童話ではお決まりのように、ラストで王子と姫は――
王子(ハッピーエ~ンドッ)グッ
姫「あの?」
王子「姫様っ!」
姫「は、はい」
王子「今すぐ貴方を連れ出してみせましょう!この私にお任せあれ!」
使い慣れぬ一人称を使い、王子は精一杯かっこつけた。
だがしかし。
姫「それは無理なんです」
王子「ぬあぁ!?」
撃沈した。
姫はそう言うと、全開の小窓に向けて手を差し出す。
だがそこには見えない壁があるかのように、姫の手は途中で止まった。
姫「この通り…私は塔から出られないのです」
王子(何てこった)
姫に呪いをかけた者は、呪いをとかないまま魔王城から逃げ出したのか。
その身勝手さに、王子は怒りを覚えた。
王子「魔法使いを連れてきましょう!それで貴方の呪いを解いてみせる!」
姫「無理だと思います…私に呪いをかけたのは、魔王軍でも随一の魔法の使い手で…」
王子「なら我が国イチの魔法使いを連れてくる。それで姫様は自由の身だ!」
王子は姫の手を握る。
王子「俺にお任せあれ!」
姫「え、えぇ」
困惑した様子の姫の様子に気づかずに、王子は瞳をキラキラ輝かせていた。
魔法使い「何じゃこりゃ。わけわからんですわ」
王子「何ィ!?」
勇者の仲間であり、今や世界トップクラスの魔法の使い手は、早々に音をあげた。
魔法使い「こんな仕組みも何もわからん呪い、どうしようもないっすわ」
王子「で、でも…色々やってみれば何とかなるんじゃないのか!?」
魔法使い「それは素人の意見ですよ王子~。よくわからん呪いを下手にいじったら、姫様が爆発する危険だってあるんですよ?」
王子「ええぇ…」
せっかく姫を助けられると思ったのに。王子はがっくりと肩を落とした。
姫「いいんです、そんな気はしていましたから」
王子「いやいや良くない良くない!」
姫「ありがとうございます王子様…でも私、これ以上貴方に迷惑はかけられませんわ」
王子「迷惑だなんて!むしろ本望というか、貴方を救いたい!!」
魔法使い(あーこりゃ完全にホの字だな)アチャー
王子「魔法使い、先に帰って父上に伝えるんだ!姫様の呪いを解ける者を、世界中から探し出すようにと!」
魔法使い「ハイハイ。そいじゃお先~」
王子「何をおっしゃる。困っている人がいたら助けるのは当然でしょう」
王子は自信満々に答える。
そう、仮にここに囚われていたのが男だったり醜女だったとしても、王子は同じ行動を取っていただろう。
王族としての責任感にはやや欠ける王子だが、1人の人間としての正義感は強かった。
姫「いいえ。本当にお優しいです」
王子「?」
だから、何故そんな風に言われたのか理解はできなかった。
王子「そうだっ!」
だが王子には正義感の他に、勿論、下心も存在していた。
王子「姫様、毎日ここに来ても良いでしょうか?」
姫「はい?」
王子「ほら呪いが解けるまで姫様はここから出られないし、食事が必要でしょう?それに…」
姫「それに…?」
王子「…俺と、友達になって欲しいんです!」
姫「友達…ですか?」
姫は不思議そうに首を傾げた。
王子「あっ、俺と会ってくれるだけでいいんです。それで色々お話できれば」
姫「会ってお話する…それが友達?」
王子「まぁそんな所です…駄目ですか?」
姫「そんな、駄目だなんて」
王子(よっしゃ!)ガッツポーズ
王子はその返答だけで浮かれていた。
王子「それじゃあ今日はもう遅いので、明日から来ますね!待っていて下さい姫様!」
姫「えぇ…お気を付けて」
王子「おやすみなさい姫様!」
王子はビシッとポーズを取ると、窓から飛び降りた。
王子「うわあああぁぁぁぁ」ドーン
姫「お、王子様ぁ!?」アワワ
王子「~♪」
数日分の食料を背負った王子は、鼻歌を歌いながら外壁をよじ上っていた。
体が軽い。これも、あの窓の先で美しい姫が待っているおかげか。
王子「姫様ぁ~!おはようございまーす!」
姫「あら王子様、おはようございます」
王子「食料を…おや」
ふと変化に気付いた。
姫の耳には、昨日つけていなかったイヤリングが光っていた。
王子「そのイヤリング、お似合いですよ姫様」
姫「あ…お気づきですか王子様」
王子「そりゃ勿論」
昨日姫が着ていたドレスのことだって、王子には思い出せる。
昨日見た印象では格好が控えめな姫だったが、今日は昨日より少し華やかになっている。
姫「お友達が来るということで、少し格好に気を使ってみたのですけれど…」
王子「良いです」グッ
姫「そ、そうですか?」
王子「姫様自身勿論お美しいのですが、人が来るからちょっとアクセサリーをつけてみる…そのお洒落心が女性を可愛くするんですね」グッ
姫「や、やだ恥ずかしい…」
王子「そうでしたね」
王子(いかん、自分が言ったことを忘れていた。でも「姫様をじっと見ていられるだけでいいんです」なんて、口が裂けても言えるか)
王子「姫様のことを聞いても良いでしょうか」
姫「私のこと…ですか?」
王子「はい。姫様はどちらの国から来られたのですか?」
姫「私は…」
姫はうつむいた。心なしか表情も声も重くなった。
王子(…もしかして俺、禁句言っちゃった?)
魔王との争いで滅びた国もいくつかは存在する。
もし彼女が、そんな亡国の姫だったとしたら…。
王子「わー!いいですいいです、今の質問ナシで!じゃあ、姫様はー…えーと、えーと」
姫「王子様のことが聞きたいです」
王子「…俺の?」
姫「えぇ…駄目ですか?」
姫は不安そうな目で見つめてきた。
そんな目で見つめられたら…。
王子(うひょぉ!俺に興味持ってくれてるーっ!!)
王子の心は打ち抜かれていた。
姫「勇者…魔王を討った方ですね」
王子「そうそう。一応俺は勇者と幼馴染でもあるんです。で、勇者は俺の姉様と恋仲でもあり、近々結婚すると思う」
姫「それは…大変ですね。世界的な英雄と親戚関係になるなんて」
王子「あ、まぁそうだね」
羨ましいとか、誇らしいことですねとか、そう言われることが多いのだが、姫の反応は変わっていた。
やはり姫も王族の者、感性が自分と近い。
王子(勇者が義兄、かぁ…)
姫「王子様と勇者様はお友達でしたの?」
王子「そうだねー…
コメント一覧
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- 2015年05月17日 20:50
- 長さの割にはつまらんな
文章下手だし地の文は排除したほうが良さげ
つまらないな
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- 2015年05月17日 21:02
- もうちょっと再会するまでの王子の頑張りを書こうよ…
序盤の掴みはよかったのに
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- 2015年05月17日 21:22
- 既視感がある
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- 2015年05月17日 21:37
- とても良かった
やっぱり王道というのはこうじゃなくちゃな
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- 2015年05月17日 21:58
-
ちょっと拙い部分もあるけど、俺は好きだよ
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