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【アイマス】レモンのサプリメント|エレファント速報:SSまとめブログ

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【アイマス】レモンのサプリメント

1 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:32:36.14 ID:no/VhTCJo


早起きは三文の徳
果たしてこれは、眠れずに夜を明かした人間にも当てはまるのだろうか?

空が白みだし、仕方なく外へ出る。
当て所なく歩いていると自宅から少し離れた川にたどり着いた。

--このあたりなら、あまり迷惑にはならない、かな?

最近、こんなことばかり考えてしまっている。

そんな時、私は、彼女に、出会った


 ~~~、~~~~~、~~


朝日に照らされる川面を前にして、歌っている女性。
気づくと私の頬に一雫、涙が伝っていた。




2 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:33:36.89 ID:no/VhTCJo

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こちらが何とかしたいと思っても、そう上手くいかないのが現実というもので。
昼下がりの公園、私はベンチで頭を抱えていた。
そろそろ生きていくにも事欠く事態が迫っている。

「どうかしたのかね?」

封印していた思いが頭をもたげる気配を感じていると、いきなり声をかけられた。
驚いて顔を上げると、そこには人の好さそうな中年の男性がいた。

「良い若者が、昼間からそう暗い顔をするものではないよ。どうだね、私でよければ話を聞かせてはもらえないかな?」

不思議と警戒感を抱かせない、柔らかな印象の男性だった。

――――――
――――
――

「そうか、なるほど……」

気づくと私は、ここまでの経緯を粗方吐き出していた。

「つまり君は仕事がしたい、それも音楽に携われる仕事を」

私は頷きつつ嘆息する。
経験もコネもない人間が容易く足を踏み入れられる世界でないことは、この数ヶ月で痛感していた。

「ならば、ウチの事務所に来てみないかい?」

そういって差し出された名刺には
 株式会社765プロダクション 代表取締役社長 高木順二朗
そう記されていた。

「ほんの小一時間話をしただけの、氏素性も知れない男に正気ですか?」

「なに、人を見る目には自信がある」

連絡待っているよと言い残し、来た時と同じように唐突に彼は去って行った。
狐につままれたよう、とはまさにこんな時に使う言葉なのだろう。

「765プロダクション……」

だが、手渡された名刺が夢でないことを伝えてきた。
恩を返すチャンスが目の前にあるのだと。



3 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:34:08.58 ID:no/VhTCJo

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数日後
「諸君、我が765プロに新しい仲間が加わることとなった。そして、彼には諸君らのプロデュースを担当してもらう」

そう言って私を紹介する。

「はじめまして。今日からプロデューサーとして皆さんと共に働かせていただきます。右も左もわからない未熟者ですので、しばらくはご迷惑をおかけすることになると思います。一日も早く皆さんのお役に立てるように頑張りますので、よろしくお願いします」

困惑が8、歓迎が2といった割合で突き刺さる視線。
素人が突然プロデューサーに、と言われればそうもなるだろう。
むしろ、わずかながらにも歓迎の空気が感じられるほうが驚きだ。

ほどなく事務所は割れんばかりの喧騒に包まれる。
種々雑多な感情の輪に囲まれていると、その輪の少し外れた位置から無関心な視線を感じた。

そこに、彼女は、いた




4 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:35:54.85 ID:no/VhTCJo

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--君には如月君のプロデュースを担当してもらおうと思う

あの後、社長室でそう告げられた。
社長には、先日の公園で事態のあらましを知られてしまっている。
その上で一点を見つめて動けなくなった私の視線の先には彼女がいた。
何をかいわんや、である。

「千早ちゃんならレッスンスタジオで自主トレしてますよ。迎えに行ってあげたらどうですか?」

このあたりの地図を手にそう教えてくれたのは、事務員の音無さんだった。
傍目に分かるほどに落ち着きがなかったのだろうか。

「ありがとうございます、音無さん。さっそく行ってきます」

そう言って荷物片手に立ち上がると再び声をかけられた。

「千早ちゃん、ちょっと難しいところもある娘ですけど、根はとっても良い娘ですから。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」

優しい気遣いを受け、今度こそ事務所を出る。
確かに、かつてないほどに緊張している。
音無さんが思っているのとはおそらく違う理由で緊張しているのだけれども。



5 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:39:06.16 ID:no/VhTCJo

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目的地に着き、如月さんのトレーニングが一区切りつくのを待って部屋に入る。

「……貴方は」

驚きと疑問と、如月さんはそんな表情を向けてくる。

「お疲れ様です、如月さん。突然ですが、如月さんのプロデュースを担当することになったので挨拶に来ました」

前置きも何もあったもんじゃない。
やはり私は相当に緊張しているらしい。

「貴方が、私の、プロデューサーに?」

「ええ。それで顔合わせというか、これからよろしくお願いしますのあいさつというか」

「わかりました」

ひどくあっさりと承諾された。
拍子抜けして彼女の眼を見ると、そこに期待の色はうかがえなかった。
まあ、半人前以前の人間がプロデューサーでは仕方がない、か。



6 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:40:15.79 ID:no/VhTCJo

「それでですね。今後の方針を決めるためにも聞いておきたいことが。如月さんは、どんなアイドルになりたいですか?」

「……アイドルには興味ありません。私は歌手になりたいんです」

「成程。如月さんは歌手志望なんですね。でもアイドルとしてデビューしている以上、歌だけでは厳しいと思いますよ?」

「私は、歌が歌いたいんです」

「もちろん、如月さんの意志は尊重します。ただ、多少の回り道は我慢してくださいね」

「……はい」

明らかに納得していない返答。
歌唱力に関しては圧倒的な技術と情熱を持つ一方、その他のことを切り捨てている感がある。
社長との話の中で抱いた感想は、的外れなものではなかったようだ。
ストイックといえば聞こえはいいが、危うさと表裏一体のそれは、かつての自分を見ているようだった。

「レッスンにはなるべく立ち会います。といっても勉強中の身なので、素人並みの感想しか言えないと思いますが。仕事についても、歌関係の仕事が取れるよう、頑張ります」

「よろしくお願いします、プロデューサー」




7 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:41:33.67 ID:no/VhTCJo

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「如月さん、それが食事ですか?」

事務所のソファーに腰かけた彼女の前にあるのは、黄色い箱の某バランス栄養食。
それと数秒で栄養補給できるらしいゼリー飲料。

「はい」

「今日はたまたま、ですよね?」

「いえ、大体こんな感じですが」

何か問題が?といわんばかりの表情。
足りない分はサプリメントで補ってますから、と言われてもこれは駄目だ。

「死にますよ?」

思わず物騒なセリフが出てしまった。
案の定彼女は目を白黒させている。
だが、あながち間違いでもないのでこのまま説得を試みる。



8 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:42:07.31 ID:no/VhTCJo

「サプリメントというものは足りない部分を補完するためのもの、あくまで脇役です。主役がちゃんとしていなければ意味を成しません。いくら素晴らしい伴奏があっても、主旋律が存在しない楽曲は評価されますか?」

彼女の目が見開かれる。
どうやら少しは伝わったらしい。

「でも、私は一人暮らしで、料理も決して得意では……」

一人暮らし、と言った時に彼女の目が若干曇ったようだが、とりあえず触れずにおく。
何も完璧に自炊しろとかそういう話ではない。
それに、彼女には仲間がいるんだから頼ればいいだけの話だ。

「簡単で、適当に作れる料理を事務所のみんなに教えてもらえばいいんです。で、最低でも一日一食は普通の食事をとるようにしてください」

頼めば嬉々として作って来そうな娘もいる。
これをきっかけにもう少し仲間と打ち解けられればいいのだが、そんな考えが頭をよぎる。



9 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:46:54.86 ID:no/VhTCJo

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そうして日々はあっという間に過ぎていく。
先輩プロデューサーの秋月さんのしごきに食らいつき、音無さんのさり気ないフォローに助けられ。
どうにかこうにかプロデューサーとして恰好がついてきた頃、ようやく仕事を取ることができた。

「如月さん、歌の仕事ですよ」

「!!」

事務所でそう切り出すと、如月さんは今まで見たことのない鋭さで反応した。

「といっても、ローカルTVの深夜番組、その中のほんの数分のコーナーへの出演をかけたオーディションなんですけどね」

「舞台の大小は関係ありません。歌えるチャンスがあるのならば、全力を尽くすだけです」

多少は落胆の色を見せるかと思っていたが、彼女は歌に対してはどこまでも真摯だ。

「そうですね。これまでのレッスンの成果をしっかりと発揮できれば、そんなに難しくないと思います。ただ……」

「ただ?何か問題があるのでしょうか」

「このオーディションは、歌だけでは駄目なんですよ。“アイドルとしての”如月さんの力が評価の対象なんです」

「……そういうこと、ですか」



10 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:47:33.63 ID:no/VhTCJo

如月さんはアイドルとしての自分に価値を見出していないらしい。
日々の言動や、レッスンへ取り組む姿勢からも薄々感じていたことではある。
折を見て話をしてはいるのだが、今に至るまで効果は出ていないようだ。
自分の不甲斐なさを悔いても仕方がない、とにかくこのチャンスを掴むことだ。

「歌手でもアイドルでも、人の目に留まらなければ始まりません。頑張りましょう」

「わかりました。精いっぱい頑張ります」

完全に納得してもらうことはできなかったようだが、チャンスであることは分かってもらえただろうか。
ともかく、目の前に目標があるのとないのとでは張り合いが違うはず。
オーディションに向けて私は私でできることをしていこう。




12 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:48:15.05 ID:no/VhTCJo

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ボーカル面では問題なし。
一方でビジュアル、ダンスといった面では疑問符が付く。
傍で見ているだけの私と、レッスン担当の先生との意見は残念ながら一致した。
審査員の好みによってはオーディション落選の可能性もある。
むしろ、その確率のほうが高そうだ。

技術云々の話ではなく、意識の問題だというのは分かる。
だが、私みたいな人間の言葉がはたして届くかどうか……

「仕方ない。アイツの力を借りるか」




13 : ◆Hnf2jpSB.k 2015/05/23(土) 15:50:05.25 ID:no/VhTCJo

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「如月さん、私の知り合いから『ウチのライブハウスで歌ってみないか』っていう話があるんですが」

「行きます」

「謝礼も何も出ない、前座その1ですよ?」

「構いません」

「わかりました。先方には話しておきます」

――――――
――――
――

「如月さん、お疲れ様。どうでした?」

舞台袖に帰ってきた彼女に水を渡しながら尋ねる。
御世辞にも盛り上がったとは言えないステージに、彼女の表情は暗い。

「実力不足を痛感しました」

「そうですか。ところで、ここのマスターが話をしたいそうです」

その言葉を合図に、私とは腐れ縁の、ここのマスターが入ってきた。
彼は、開口
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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年05月23日 20:01
      • ちーたん可愛い!
        が、ちーたんを自分の体を顧みないサプリメントキャラにしたアニマスの
        影響は大きいようだな......
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年05月23日 20:11
      • 2ページ目が71...だと...
      • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年05月23日 20:50
      • くさいなぁ
      • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年05月23日 21:28
      • 久しぶりに普通のプロデュースもの読んだ気がするわ。
      • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年05月23日 22:03
      • 千早はPがインスタント食っただけで説教する子だからな
      • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年05月23日 22:17
      • 久々に見る雰囲気だな
        こういうのだいすき
      • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年05月23日 23:36
      • こういうアイドルをプロデュースしつつP自身も成長してく系のSSって、
        アニマス放送中やその後半年くらいは多かったなあ 何か久しぶりな感覚

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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