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まるでフィクションのような、にわかには信じがたい症候群、奇病は非常に稀ながらも存在する。症例が少ない為、画期的な治療法を確立するには困難を極めるが、一部は効果的な治療法が解明されたものもある。
今回はそんな奇病・症候群を、治療法を含めながら10例ほどみていこう。
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1. 進行性骨化性線維異形症(FOP、ストーン・マン・シンドローム)
進行性骨化性線維異形症(FOP)は、体中の筋肉を骨に変えてしまう遺伝子疾患である。骨・筋肉・靭帯などに存在するACVR1という遺伝子は細胞を育て、子供から大人へと成長する際に軟骨を骨に変える役割を担っている。しかし、FOPの遺伝疾患ではこの変化の為のプロセスが制御されず、その人物の障害を通して、筋肉や靭帯等を骨に変えてしまうのである。結果的に関節が骨になってしまい、患者は関節を動かす事さえままならなくなるのだ。
この疾患は100万人から200万人に一人に起こる遺伝子疾患であり、現在に至るまで治療法は存在しない。手術をして骨を取り除けばいい、と思う人もいるかもしれないが、この疾患による骨化は「物理的な損傷が起きた部位」に激しく引き起こされるため、一度手術をしてしまえば、その手術をした一部で急速に骨化が進行してしまい、逆効果となるのだ。
2. コタール症候群(もしくは歩く死体症候群)
コタール症候群は非常に珍しい精神障害である。コタール症候群の患者は心の底から「自分は身体の一部が損傷している」と信じているのである。こういった患者は「私には脳が無い」とか、「私は死んでいる」と心の底から信じているのだ。患者の多くは食事を取らず、風呂にも入らず、一日の大半を墓場で過ごしている。彼らは墓場に行く事で「仲間のもとに帰れる」と信じているのだ。
コタール症候群の多くは脳の「顔から人の心を読み取る」部位に異常がある事が判明しており、これが理由で患者の多くは自分の顔や肉体を見ると心身の不一致を感じてしまう。結果的に患者は自らが死んでいる、損傷しているという想像に取りつかれるのだ。幾つかの治療法は試されており、電気けいれん療法等は特に効果的なのだそうだ。
自分はもう死んでいる。自分がゾンビと思い込んでしまう奇妙な病「コタール症候群」
3. 寒さアレルギー
あと半年もすれば今年も冬に突入だ。寒さアレルギーの人はそろそろ準備した方がいいだろう。寒さアレルギーの人は寒い風に当たると、体内でヒスタミンが過剰に分泌され、ピーナッツや蜂などに対するアレルギーと似たような症状を引き起こす。症状としては痒み、腫れ等が見られ、重篤な場合は喉や舌の腫れ等も引き起こされ、命にかかわる症状となる。
寒さだけによって引き起こされる物かは確認されていないが、取りあえず抗ヒスタミン剤が有効な治療法である事は確認されている。
4. いぼ状表皮発育異常症(ツリーマン・シンドローム)
もし皮膚が木の表面のようになってきたら、それはいぼ状表皮発育異常症かも知れない。別名ツリーマン・シンドロームと呼ばれている。これは、太陽の光によって活性化され、悪化するのがイボ状表皮発育異常症だ。こういったイボは幼いころには大きな問題とはならないが、年齢を重ねるごとに症状は悪化する。
イボはEVER1とEVER2という遺伝子の変異によって引き起こされる事が分かっているが、この遺伝子がどうやってイボを引き起こす症状に発展するのかはよくわかっていない。症状をある程度緩和させる事は出来るが、現在の医療では完治する事は不可能である。
5. 色素性乾皮症(ヴァンパイア・シンドローム)
人はビタミンDを作る為に太陽の光を必要とするが、長時間紫外線に当たると皮膚を傷める事は誰しも知っている事だろう。100万人に1人に発生するという色素性乾皮症は、紫外線に対して非常に過敏になってしまう疾患だ。色素性乾皮症の患者は、体中を紫外線から守らなければ酷い日焼けと皮膚の損傷を引き起こしてしまう。彼らは日焼けに細心の注意を払わなければすぐに皮膚がんになってしまうのだ。
色素性乾皮症は常染色体劣等遺伝性の皮膚疾患でDNAを修復する役割のある「ヌクレオチド除去修復」酵素に異常をもたらす疾患だ。こういった患者は太陽から引き起こされた皮膚のDNA損傷を治す事が出来ず、壊れた皮膚細胞が蓄積していってしまうそうだ。ある程度の治療は可能だが、一番は太陽から身を守るという対症療法だと言われている。まさにヴァンパイアのような生活を強いられる事になるのだ。
6. 象皮病
象皮病とはリンパ腺の障害によって引き起こされる皮膚と細胞組織の過剰な腫れあがりだ。こういった腫れの症状は主に足や男性生殖器に多く発生する。象皮症の元となるリンパ線の障害の多くは蚊を媒介として弾きこされる事が分かっており、現在世界に4000万人の患者が居ると考えられて居る。
寄生虫を取り除くための薬は存在するので、早期発見は象皮症を食い止める一番の方法だ。男性生殖器に症状が発生した場合、外科的治療は可能だが、足に症状が現れた場合、残念なことに治療法は存在しない。
日本でも江戸時代に象皮病が蔓延していたようで、葛飾北斎の画に象皮病の患者が描かれていることや、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』に象皮病の症状のことを詠んだ歌がある。幕末の維新の志士である西郷隆盛は、象皮病に感染したため、晩年は男性生殖器が人の頭大に腫れ上がっていたという。
7. 多毛症(ウェアウルフ・シンドローム)
多毛症とは名前が示す通り、身体や顔に大量の毛が生えてしまう病気だ。オオカミのような外見になってしまう事から別名「ウェアウルフ・シンドローム(狼男症候群)」と呼ばれる。
この病気には先天性と後天性が存在する。先天的にこの病気を持っている人は、他にも幾つかの遺伝性疾患を持っている場合が多いが、後天的にこの病気を持った人の多くは発毛治療の副作用としてこの症状を得てしまったケースが多い。治療法としては「物理的に抜く」治療やレーザー治療が用いられるが、あまり満足の言える成果は出ていない。
8. 水アレルギー
私達の身体を作り上げる物質の殆どが水であることを考えると、水アレルギーというものがいかに不思議なものかは想像できるだろう。水アレルギーと呼ばれているが、ヒスタミンが過剰に分泌されないため、「本当のアレルギー」とは言えないが、それでも水との接触から数分後に痒みや腫れを引き起こす症状に苦しむ人が稀に存在する。
この疾患は稀で、何故引き起こされるのかもわかっていない。ある説では「水自体に対するアレルギーではなく、水の中に存在する不純物に対するアレルギーなのではないか?」と言われている。しかし、不純物を取り除いた精製水でさえ水アレルギーを発症させてしまう。最も有効的な治療法はカプサイシンの局所的塗布だ。
9. 他人の手症候群(エイリアン・ハンド・シンドローム)
「右手は左手がやっている事を知らない」と言う言い回しがあるが、実はそういった症状に苦しむ人が本当に存在する。エイリアン・ハンド・シンドロームは自らの意志とは全く関係なく、片方の腕が動いてしまう病気である。
脳損傷や脳漿の外科的治療の副作用として稀に引き起こされるこの病気に治療法はない。しかし神経を集中して、常に両手を動かす事で症状が緩和される事は判明している。
10. 外国語様アクセント症候群
人の訛り・抑揚・アクセントは、その人物がどこから来たのか、どういった背景から来たのかを教えてくれる。だが、「外国語様アクセント症候群」の患者は、全く知らない国の訛りを何故か会得してしまい、その訛りでしか話せなくなってしまうという不思議な病気である。
外国語様アクセント症候群は脳梗塞や脳損傷等によって引き起こされる事が多い。この症状に苦しむ人は会話の最中に言葉のトーンを変えたり、舌の動きを完全に変えてしまったりする。その為、会話中に幾つもの訛りが登場する場合もあるようだ。
唯一の治療法は言語障害治療のみであり、損傷した脳に正しい訛りを刷り込んで行き続けるしかないのだ。
via:iflscience・原文翻訳:riki7119
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コメント
1. 匿名処理班
ツリーマンってほんとに木みたいだな すげえ
2. 匿名処理班
大学を大阪で過ごしたら外国語様アクセント症候群にかかったわ
違う?
3. 匿名処理班
エイリアンハンドシンドロームって
なんだかミギーを想起してしまうな。
防御頼んだらやってくれそう
4. 匿名処理班
何だ筋肉が骨になるって…
発生学的に近い位置のものだけど、素材からして全く別物じゃないか…
人体はまだまだ不思議がいっぱいだ
5.
6. 匿名処理班
寒さアレルギーの人が多毛症になったら、万事解決w
7.
8. 匿名処理班
1,4,6,8が精神的にもかなりきついものがありそう
医療発達してるように思えるのに、まだまだ治療法見つかってないのがこれだけあることに驚くよ
9. 匿名処理班
「外国語様アクセント症候群」って、見知らぬ外国人にカタコトの日本語で道を尋ねられると、こっちの説明までたどたどしい日本語になってしまう現象のことかと思ったら違った。
「オーウ、これ、道まっすぐ、あれ、コンビニ、ソコを右でーす!」
10. 匿名処理班
寒さアレルギーというレベルには程遠いのですが、私は寒冷じんましんが出ます。もっとも、かゆみは出なくて赤いぶつぶつみたいなのが出現するくらいですが・・・。でも子供の時に医者にそう診断されたので思い込みじゃないのに誰も信じてくれないよぅ(泣)
11. 匿名処理班
色素性乾皮症ってどっかで聞いたと思ったらタイヨウのうたか
12. 匿名処理班
1が凄い!初めて知った
13. ・・・
外国語様アクセント症候群は、外傷や脳溢血なんかで脳の言語野にダメージを受けて、上手く言葉を綴れなくなっている様子が、たまたま何か特定の外国語訛りに似ているだけの話だと聞いたな
14. 匿名処理班
寒さアレルギーというか、寒冷蕁麻疹は意外と多いよ。
気温だけでなく水温が低くてもなるから、プールに入ると大変です。
15. 匿名処理班
世界には71万人もの人間がいるのだから、まれな病気でも数は多いはずだ…
16. 匿名処理班
進行性骨化性線維異形症って原因さえ掴まれれば
事故による欠損や生まれてから無いような障害が
一気に解決できる病気になるけど遺伝子レベルじゃ
人がどうあがいても無理
もしブラックジャックならどう治療するのかちょっとだけ
気になる
17.
18. 匿名処理班
軽い水アレルギーだわ。
体調が悪い時にプールとか温泉に入ると、身体の所々が薄く腫れる。
19. 匿名処理班
4番、恐ろしス
20. 匿名処理班
プロアクティブのCMを思い出した
21. ぐわんげ
筋肉が骨化する病気は以前TVで見たな
症状が悪化していよいよ関節が動かなくなる時が迫ると
どんなポーズで身体を固定するか医者に聞かれるらしい
あとは死ぬまでそのポーズなんだと…
そして筋肉が骨化するのはもの凄い痛いらしい
想像を絶する病気だよ
22. 匿名処理班
はるか昔にこういう症状を負った人が妖怪やモンスターとされたのかもなぁ。
この世には不思議なことがまだまだあるんだな…
23. 匿名処理班
ツリーマンは摘出手術でだいぶ改善してると聞く
タイの国王が無償で治療させてるはず
あとビタミンCの大量摂取も効果的だそうだ
筋肉が骨になるって病気は研究が進んでいて
原因遺伝子まで特定できてるらしい
上手くすれば骨を筋肉にする元に戻す薬が
できるかもしれない
苦しんでる人のためにも早く治療法ができればいいな
24. 匿名処理班
FOPは日本で難病指定されてまだ日の浅い病気なんだよね。
山中教授のiPS細胞がこの難病の人たちの体を傷つけることを極力なくして
治療薬・進行を抑える薬を開発する研究に使われてるんだよ。
25. 匿名処理班
とりあえずツリーマン達があの巨大な手のサイズでどうやって服に袖を通したのかが気になって夜も眠れない
26.
27. 匿名処理班
こういう珍しい病気の治療が中々進まないのは、まず患者の絶対数が少ないのと、少ないせいで研究費が出ないせいなんじゃないかと思うけどどうなんだろう
28. 匿名処理班
※21
成長痛と呼ばれるものを思い出した
あれのひどいやつがずっと続いて、しかも動けないとなったら正気を保つ自信がないわ
※23が書いてるように研究が進んでいるなら、本当に早く治療法が確立しますように
29. 匿名処理班
FOPこえー。
30. 匿名処理班
ツリーマンって遺伝子の欠陥、異常で免疫が働かずイボが増殖していると聞く。
でも何故樹木のようになるのか理解できない。
思ったのだが、赤の他人の健康な四肢を移植して治療するのは、どうだろうか?もしくは遺伝子治療は?