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米大統領候補が期待する不老不死を求め技術を愛するトランスヒューマニスト党とは? : ギズモード・ジャパン

米大統領候補が期待する不老不死を求め技術を愛するトランスヒューマニスト党とは?

2015.05.26 23:00
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あらゆる技術を駆使して、この貴重な生命をいつまでも残したいと。

こちらの記事は、2016年米国大統領選挙の候補、ゾルタン・イシュトヴァン(Zoltan Istvan)氏が米Gizmodoに寄稿した記事の翻訳です。彼は、民主党にも共和党にも属していません。彼は自ら立ち上げた「トランスヒューマニスト党(Transhumanist Party)」の代表として、米国大統領に立候補したんです。

トランスヒューマニスト党とはどんな政党なのか、彼らの価値観や主張はどんなものなのか…以下、イシュトヴァン氏からどうぞ(長いので読みやすさのために翻訳時に適宜太字を入れています)。


***


自分を大統領に選出してほしいと国家に求めるのは、大胆な試みです。特に、自分がサイエンスとテクノロジーで人類をラディカルに変化・改善させようと社会に働きかけるトランスヒューマニストであればなおさらです。でも私は今、それに取り組んでいます。

去年10月、私自身が新たに結成したトランスヒューマニスト党から2016年米国大統領候補として名乗りをあげました。そして仲間であるテクノ楽観主義者のコミュニティに対しあることを誓いました。それは、私の大統領選挙戦を人工心臓、脳インプラント、人工四肢、外骨格スーツ、無限の長寿などの実現を加速させる手段として利用することです。これらはすべて、トランスヒューマニストが人間の生活の標準にすることを目指す急進的サイエンスのごく一部に過ぎません。

トランスヒューマニスト党は異端だと思う人がいるかもしれませんが、そうではありません。この党は主に、科学者、エンジニア、未来学者、テクノロジー愛好家の集団です。我々には公式な有料の党員制度がありませんが、私と私のスタッフは、ソーシャルメディアやイベント参加者、寄付などを根拠に、米国内に約2万5000人の支持者がいると推定しています。我々に参加するボランティアは約40人いて、その数は週を追うごとに増えています。世界的には五大陸にわたり約25のトランスヒューマニスト党が存在し、それぞれの国家の枠組みの中で彼らが最良と考えるルールを持っています。

私の大統領選挙戦は目まぐるしいものです。たとえば今朝は、iPadから絶え間なく響くメッセージの受信音で目覚め、見てみると数十通のメール、Facebookのポスト、ツイートが届いていました。それらは、人工子宮や、人工知能研究の停止提案、メリーランド州ボルチモアの暴動にいたるまで、関連する私の政策を問うものでした。私はコーヒーを淹れると、なるべく多くの要望に答えました。

その後、私は選挙活動を取材するリアリティTV番組との退屈な交渉を始めました。4歳の娘を幼稚園に送ると机に向かい、ゲノムを編集する中国の研究者を支持するブログ記事を書き、バンクーバーで予定しているスピーチのスライドショーをまとめ、トランスヒューマニスト党のステッカーについてデザイナーと相談しました。午前の締めくくりに30分ほど、今年7月に西海岸から始める選挙活動バスツアーで使うバス会社をチェックしました。

正午には選挙関係の急ぎの仕事がほぼ片付いてきて、そろそろお昼のジョギングが楽しみになってきた頃、流れが断ち切られました。私のコミュニケーションマネジャーが、3Dプリントした銃に関する報道機関からの質問にどう答えるかを聞いてきたのです。これは厄介な問題です。

トランスヒューマニストは一般に、3Dプリントされたものならどんなものでも、特に人間の器官とか生物工学に関わるものなら高く評価しています。でも、今私が質問されているのは、命に関わる武器を作るのは行き過ぎかどうかということです。今や誰もが、Ebayで2,000ドル(約24万円)以下で3Dプリンタを買える時代です。

米国では銃が年間数千の事故死、殺人、強盗において不可欠な役割を果たしています。だから、それを早く・安く・匿名で、自宅でまたは車の中ですら作れるという事態をどう捉えるかは、非常に議論の分かれるところです。私は全般的には人に自由を与えるべきだと主張していますが、この質問にどう答えるべきかはわからないし、私のスタッフも同様でした。アドバイザーが「米国憲法の修正第2条(武器所有の権利)が3Dプリンタについてどう言っているかチェックすべきだ」と言い、我々は笑いました。そう、このトランスヒューマニストの時代に、226年前の文書で国を治めようとすることが馬鹿げているのです。

みんなが私にいつも聞くのは、彼らは私が大統領にならないとわかっているので(二大政党以外の候補は決して当選しません)、選挙活動が楽しいかということです。でも私はそんな風に考えたことはありません

私がこれまで唯一フォーカスしてきたのは、過去10年もそうだったのですが、死にたくないということです。トランスヒューマニストの多くと同様に死を恐れているわけではありませんが、生きていることは奇跡だと思うのです。宇宙内には生命の可能性がある惑星が20億個もある中、この地球上で人類は進化し、生き延び、繁栄しています。このままいけば人類はあと半世紀で技術的特異点(シンギュラリティ)に達し、文字通り超人類となるはずです。

生命という体験は全体としてクレイジーで美しく、貴重です。我々は生命を、あらゆる手段で保護・保存すべきです。それを実現するための合理的手段はテクノロジーとサイエンスしかないということ、それがまさにトランスヒューマニスト党結成の基礎を成す考え方です。トランスヒューマニストとは、生命への愛によって定義される人々なのです。

これには多くの人が賛同してくれていて、私は幸運を感じるとともに感謝しています。著名な老年学社のオーブリー・デ グレー氏が、最近アンチエイジング・アドバイザーとして署名してくれました。Humanity+の会長であるナターシャ・ヴィタモア博士は、トランスヒューマニズム・アドバイザーです。シンギュラリティ・ユニバーシティのホセ・コルデイロ博士は私のテクノロジー・アドバイザーです。元民主党の下院議員候補で、トランスジェンダーの億万長者起業家マーティーン・ロスブラット氏(私の個人的英雄)の息子であるガブリエル・ロスブラット氏は、私の政治アドバイザーです。

私の妻であり、Planned Parenthoodの産婦人科医、女性人権活動家でもあるリサ・メメル博士も、私の選挙活動の強力な支持者でその一員です。我々はともに世界を変え、サイエンスとテクノロジー、自分の体をしたいようにする権利がアメリカ文化と調和する時代を実現したいと思っています。

ただ残念ながらいろいろな面で、トランスヒューマニズムは米国の国家文化と調和していません。米国の人口の約75%がキリスト教徒で、米国議会議員はほぼ100%何らかの宗教に属しているので、私の目標達成は簡単ではありません。多くの米国人はトランスヒューマニズムの目標を意に介さず、私が「Deathist(死亡主義者)」文化と呼ぶものに参加しています。その文化においては、我々は聖書の教えに従い、死んで、天国に行ってイエスに会うべきだと言われているんです。

無神論者を公言し、知る限り米国初の無神論大統領候補である私にとっては、これはまったく納得できません。それでも私はこの選挙活動においてトランスヒューマニスト党においても、あらゆる宗教を受け入れ、人々の信仰を尊重し、オープンマインドであろうとしています。つまるところ、トランスヒューマニズムは今ある中でもっとも非差別的な思想かもしれません。そこに参加しようとする誰もを受け入れているのです。

だからといって、私に対する中傷が収まることはありません。一部の人は私の思想や選挙活動に対し露骨に腹を立てています。私はキリスト教の神学者が、私のことを反キリスト(訳注:キリスト教的には悪魔の具現化ともされる)ではないかと言っているのを聞いたこともあります。ばかげた言い草ですが、おかげで公のスピーチ用に防弾ベストを買うことになりました。憎しみのメール、ツイッターでの殺人予告がつねにあるので、そんな対策をとらざるをえません。

こういうことがあると、いろいろな意味で精神的にやられます。トランスヒューマニスト党と私の選挙活動の主な目標は、戦争や暴力行為、防衛から費用を取りあげ、その資源を人々の健康のための医療や、繁栄、幸福の実現に向けて注ぐことだからです。トランスヒューマニストは、暴力や分裂、差別、意図的な対立を作るつもりはないのです。

トランスヒューマニズムとは環境主義と同じように社会運動であり、人々をひとつの方向とアプローチにまとめようとするものです。そのアプローチは、世界がすべての人にとって改善していることを示す近年のさまざまな情報に裏付けられています。過去30年、サイエンスとテクノロジーは乳児死亡率を下げ、すべての人の寿命を延ばし、より多くの雇用を生み、戦争を減らし、全体的な健康レベルを高め、世界をより良くしてきました。テクノロジーがいかに生活を改善したかを考えれば、その進歩を加速し、トランスヒューマニストの時代を受け入れることは理にかなっています

もちろんそういう意味では、全米国人が考え方としてトランスヒューマニズムに反対しているわけではありません。きちんと説得して軽く背中を押せば、より多くの米国人がトランスヒューマニズムを受け入れ、参加すると思います。私はそんな思いで新たな支持者を求めています。トランスヒューマニスト党の基礎をなすサイエンスとテクノロジー愛好家だけでなく、トランスヒューマニズムを政治の主流に切り込ませる新たな支持基盤を作りたいのです。

私の2016年の選挙戦略は、次の3つの集団をターゲットにしています。無神論者LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の人たち、そして障がいを持つ人のコミュニティです。彼らを足し上げると米国では3,000万人ほどになり、その一部はすでにトランスヒューマニストコミュニティの中で大きな人数を占め、価値観を共有しています。私はサイエンスとテクノロジーの支持者を動かし、「誰かを傷つけない限り自分の体にはしたいことをする権利がある」という考え方、形態的自由という思想を達成したいのです。

他の民主党、共和党の大統領候補とは違い、私の選挙活動は厳密には政治的ではありません。もちろん税金や社会保障、国際関係、その他いわゆる大統領候補が聞かれるようなトピックに対しては聞かれれば答えるようにします。でも、私は政治的イデオロギーをぶちまけたり、特定の政党に属したりするつもりもありません。左寄りとか右寄りとかも気にしませんし、それはトランスヒューマニスト党に参加するほとんどの人も同じです。我々は、社会全体の存在と我々の急速に進化する未来に影響を与えるような変化を起こすために存在します。我々は政府と人々に、トランスヒューマニストにインスパイアされた国家はすべての人を利するだけでなく、人類にとってエキサイティングな一歩となるのだと納得させたいのです。

たとえばトランスヒューマニストは、宇宙産業を再燃させ、人々を太陽系全体に送りたいと考えています。我々は巨大な海上国家プロジェクトを作り、あらゆる種類の人や科学実験がそこで受け入れられるようにしたいのです。人間が起こしたあらゆる環境問題の解決法を教えてくれる超人工知能を作り出したいのです。我々が宣戦布告する相手は、薬物や公民権を奪われたマイノリティ、石油依存の小国ではなく、がんやアルツハイマー、そして加齢です。

我々は全国共通のベーシックインカムを設定することで経済的不平等をなくし、大学や幼稚園を含めてあらゆるレベルにおいてすべての人の教育を無料にしたいと考えています。我々はアメリカン・ドリームを再定義したいのです。ロボットが我々の仕事をする一方、人間は21世紀の進歩の果実に支えられ、余暇を楽しみ世界を探索し、したいことを何でもできる生活を送るのです。

私が2016年の選挙で当選する可能性はほとんどないのはわかっているので、この選挙活動は奇妙で騒々しい試みです。でも私が見据えているのは、選挙とは別の重要なタスクです。それは、トランスヒューマニスト党を育て、テクノ楽観主義者のビジョンのもとに国をまとめる政策を作り、普通の人がサイエンスを通じて無限の命を求められるようにすることです。これこそ、私が選挙活動の凸凹道にありながら、日々心と頭を集中させている大事な仕事なのです。


Image by Michael Hession

Zoltan Istvan - Gizmodo US[原文
(miho)

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