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【スクライド】 君島「ロクデナシのブルース」 : ホライゾーン - SSまとめサイト

【スクライド】 君島「ロクデナシのブルース」

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2015-05-26 (火) 18:01  その他二次創作SS スクライド   コメント:1   このエントリーをはてなブックマークに追加
1: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:13:28.02 ID:j/66ZD1v0

スクライドssです。短いです。




2: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:14:52.26 ID:j/66ZD1v0

*************************


「お~い、カズマぁ~!」

今日の俺の気分はハイ!

なぜかって?報酬のワリには簡単な仕事が入ってきたんだよ!

こんな不景気の中、めったにないんだぜ?こういうこと

ルンルン気分で、俺はいつもみたいにあいつの家のドアを開ける。




3: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:15:39.91 ID:j/66ZD1v0

「お、おはようございます...」

「おはよう、かなみちゃん。カズマいるかな?」

おずおずと出てきて、俺を迎えてくれたかなみちゃん

相変わらずいじらしいね、うん。

きっと、大人になったら凄い別嬪さんになると思うんだよね。

「あの、カズくんはまだ寝てて...」

「った~、あのダメ人間が。いつも大変だね、かなみちゃん」

「もう慣れっこです」

そう言うかなみちゃんの呆れたような顔の中には、ちょっぴり喜びの表情も混じっていた

...こんなイイ娘が面倒みてくれるなんて、カズマくんは幸せ者ですね、ホント。

ちょっぴりムカついたから、叩き起こしてやろっと。




4: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:18:28.59 ID:j/66ZD1v0

「カ・ズ・マ・くぅ~ん、朝ですよ~」

古びた手術台の上で、グースカとイビキをかいて寝てたカズマの毛布をひっぺがすが、このバカは意にも介しやがらねえ

「むにゃ...なんだよ、かなみ...もう少し寝かせろよ...」

夢の中までかなみちゃんづくしですか、お前は。

しかたない。愛しのかなみちゃんに代わって、ここは一発ビシッと決めてやろう。

「オラァ!さっさと起きやがれ、このロリコn」





5: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:19:14.16 ID:j/66ZD1v0

――――――――――――――――――――

「んじゃ、ちょっくら行ってくるぜかなみ」

「早く帰ってきてね、カズくん!」

ニコッ、と満面の笑顔でカズマと俺を送りだしてくれたかなみちゃん

俺に向けられてるわけじゃないにしても、ヤロウ二人の空間の中では癒しとなってくれる

「それで、今日の依頼はなんなんだ?」

頭にできたタンコブをさすりながら、俺はカズマの問いに答える

「護衛だよ、護衛。今日はどこぞのお偉いさんを市街までお守りするのが依頼だ」

「...また、つまんねえ仕事だなおい」

カズマがいかにも不満そうに口を尖らせる




6: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:20:27.19 ID:j/66ZD1v0

「そう言うなって。そんなつまんねえ仕事でも、報酬はすげえんだからさ」

「いくらだ?」

「なんと二千だよ、二千!」

「...高いのか、それ?」

あいつの言葉を聞いて、俺は開いた口が塞がらなかった

こいつには金銭感覚というものがないのだろうか

...ほんと、俺と会うまでどうやって生きてきたんだろうな、コイツ

「かなみちゃんも、こんなボンクラのどこがいいんだか...」

「なんか言ったか?」

「なんでもありませんよ、っと。もうすぐ依頼主のとこに着くぜ」

車を止め、俺達は依頼主の待つ廃墟へ向かう

さぁて、さっさと終わらせて、あやせさんへのプレゼントでも買いにいくとしようかね





7: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:22:06.20 ID:j/66ZD1v0

―――――――――――――――――

夕焼けが映える荒野。

俺とカズマはボロボロになった車を、汗水垂らしながら押していた

「君島。お前たしか、楽な仕事だって言ってたよな」

「...言いましたね、確かに」

「だったらよ、なんで俺たちはこんなことしてんだ?」

「仕方ねーだろ!まさか、あんなにわんさかアルター使いがいるなんて思わなかったんだからよ!」

簡潔に述べると、だ。

俺たちは騙された。それはもう清々しいくらいに騙された。

俺たちが仕事で恨みを買った奴らが集まって、俺たちをボコるために、依頼して呼びつけたってわけだ。




8: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:24:57.54 ID:j/66ZD1v0

「金もこれっぽっちしか手に入らなかったしよぉ。無駄骨だったぜ」

カズマの手に握られている金額は百。2千と百じゃ、これっぽちと感じても仕方ない。

「...ま、金はあんま手に入らなかったけど、お前は楽しめたんじゃねえの?」

「まあな。久々のアルター戦だったから、スッキリしたぜ」

文句を垂れるワリには、カズマの顔は緩んでいる。

何年もツルんでりゃ分かる。基本的にコイツはスリルを楽しむケンカ馬鹿だってことは。

「...それより、どう言い訳する?」

「どうって...どうすりゃいいんだろうな」

車だけでなく、服も全身もボロボロ。

帰れば、カズマはかなみちゃんに大目玉をくらうだろう。

「こりゃ、牧場の手伝い増やされるだろうな...」

「がんばってね、カズマくん」

「他人ごとかよ!」





9: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:26:21.77 ID:j/66ZD1v0

――――――――――――

そんでもって、カズマの家。

「カズくん、これはどういうことなの?」

「いや、階段からズリゴケしてさ...」

「そんな嘘信じると思う?」

「思わないよなぁ...」

金はほとんど手に入らず、ボロボロになって帰ってきたとなれば、こうなるのは当たり前。

「ケンカしてくるくらいなら牧場を手伝ってよ。じゃないとご飯抜きだよ」

「わ、わかったから、それは勘弁!」

それにしても、いつ見ても信じられねえよなぁ。

荒野にその名が聞こえる"シェルブリットのカズマ"が、こんな幼い子に頭が上がらないなんてさ。




10: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:27:43.58 ID:j/66ZD1v0

「君島さんも!」

「へっ?」

「いつもカズくんを連れまわしてるんだから、明日はこっちを手伝ってください」

かなみちゃんが、こうも強く主張するなんて珍しいな。

...ちょっと、心配かけ過ぎちゃったかな?

「ハハハッ、お前も怒られてやんの!」

「...カズくん、反省してるの?」

「...すんません」

縮こまるカズマを見て

「...ぷっ」

俺が吹き出し、それにつられてかなみちゃんもクスクスと笑い始める。

「な、なんだよ!?なにがおかしいんだよ!?」

「だ、だってさ...あははっ」



カズマがとまどう顔を見せて。

俺たちの笑い声が夕陽に溶け込んで。

そんな、珍しくもないなんでもなくてくだらない光景。

けど、それでも俺は充分だった。





―――充分に幸せだったんだ。




11: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:29:55.86 ID:j/66ZD1v0

***********************


「うぅ...」

全身が痛い。特に、胸のあたりは今にも泣きだしそうなくらい痛い。

その痛みが、俺に現実を突き付けてくる。

俺がカズマを連れだして、かなみちゃんがちょっと心配しながら見送ってくれて、また二人でやらかして、怒られて...

「そうだよな...かなみちゃんが、俺たちの仕事のこと知ってるわけねえもんなぁ...」

そんな、馬鹿みたいななんでもない日常が夢だったことに気付かされた。

「どうしてこうなったんだっけ...」

口にして、思い出す。

かなみちゃんを連れて逃げて、カズマを連れて帰ると約束してあの子を置いてきた。

そしたら、HOLYの奴らに追っかけられて、撃たれて、それで...

「急がねえと...」

そうだ。あんな都合のいい夢を見ている暇なんざねえ。俺、カズマを迎えに行かなくちゃ...!





12: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:32:00.05 ID:j/66ZD1v0

アクセルを踏み込み、車を発進させようとする。が

「あれっ?」

足に力が入らない。いや、足だけじゃねえ。全身だ。

腕も、腰も、頭すら動かせない。目蓋も重くなってきやがった。

...なんだよ、おい。俺は、ここで終わっちまうのかよ!?

あやせさんだってまだ助けてねえんだぞ!クズは所詮クズだってか?ふざけんな!

いくら頭で思っても、身体がついてこない。

ああ、ここで死ぬんだなと、なんとなく納得しかけてしまう。

ちくしょう...すまねえ、かなみちゃん。すまねえ、カズマ。

...ちっぽけな人生だったなぁ、俺。




13: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:33:05.82 ID:j/66ZD1v0

―――違う。そうじゃねえ




『こんなところで愚痴ってなんになる!?決めつけんな、やるんだよ!』

そうじゃねえよなあ、カズマ。

『一度こうと決めたら、自分が選んだんなら決して迷うな。迷えばそれが他者に伝染する。選んだら進め。進み続けろ』

確かに俺たちはクズだ。最底辺の人間だ。けどよ...

『さあ、てめえの意地を見せてみろ!』

そんな俺にだって、譲れねえものがあるんだよ!





14: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:34:00.62 ID:j/66ZD1v0

あの日常を取り戻せるなら、俺はなんだってやってやる。

死なんてものが邪魔するなら、そいつだって蹴っ飛ばしてみせる。

そんな想いを込めて、俺はアクセルを踏む足に力を込めた。

見てろよ、HOLY共。俺たちを見下してる奴ら。

見ててくれ、カズマ。かなみちゃん。あやせさん。

ちっぽけかもしれねえが...こいつが俺の反逆だ!





15: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:37:34.51 ID:j/66ZD1v0

車がゆっくりと動き出す。

傷が塞がったわけじゃない。塞ぐことなんてできない。おれはアルター使いじゃない一般人だからな。

全身がダルイのに、どこからか力が漲ってくる奇妙な感覚だ。

「は、はは...人間、死ぬ気になりゃなんでもできるんだな」

...陽が暮れてきた。

いまごろ、カズマは全部片付けて待ちくたびれてるのだろうか。それとも、まだ戦っているのだろうか。だったら手伝ってやんなきゃな。

「...待ってろよ、カズマ。この君島さんがすぐに迎えに行ってやるからよ」

アクセルに力を込め、車を走らせる。

そうだ。俺は、あれを夢でなんて終わらせる気はない。

あいつと一緒に帰って、あの夢を現実にするんだ。

なぁに、心配なんかいらねえさ。

俺とお前が組めばなんにだって負けやしない。

なんたって、俺たちは最強のコンビだからな



終わり




17: ◆do4ng07cO. 2015/05/15(金) 02:40:44.52 ID:j/66ZD1v0

終わりです。12話で君島が撃たれたところをイメージして書きました。
読んでくれた方はありがとうございます。




18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/15(金) 03:28:22.75 ID:jcqyT3nlO

乙 珍しいスクライドssが見れてよかった



19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/15(金) 04:44:50.25 ID:nfcu9CIAO


やっぱ夢だったか
良かったと思う




22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/15(金) 23:19:09.28 ID:0+9i1B+/o

乙でーす
スクライド格好いいいきざまの人大杉




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その他二次創作SS スクライド   コメント:1   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
45691. 名前 : tanaka◆- 投稿日 : 2015/05/26(火) 20:18 ▼このコメントに返信する
もうちょい後のカズマに背負われて事切れる辺りまであったら最高だった。

でもここまででも十分に俺得だった。

至福
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