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花陽「深夜バスに乗って」


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1: SS速報 2015/06/01(月) 23:12:00.51 ID:EymdjSj2.net

花陽「あれ?にこちゃんそれって今月のアイマガ?」

にこ「ええ…フムフム…ご当地アイドルも結構侮れないわね…」

花陽「すごいよね、OTEMO-YANとかShika⇒Okehanとか…」

にこ「これはμ'sもウカウカしてらんないわね…」

花陽「うん、地方だからネットでしか見たことないけど、それでも熱気が伝わってくるもんね。」

花陽「いいなあ…一度でいいから見てみたいなあ…」

にこ「行く?」

花陽「え?」

にこ「一緒に行く?って聞いてるの。ご当地アイドルのライブ。」





3: SS速報 2015/06/01(月) 23:17:29.04 ID:EymdjSj2.net

にこ「明日からしばらくお休みでしょ?にこもマ…お母さんがいるから妹達の面倒見なくていいし。」

花陽「え…でも…大阪、だよね。私、そんなにお小遣いないし…」

にこ「大丈夫よ。夜行バスなら5000円くらいでいけるわ。」

花陽「えぇ!?」

にこ「前からアンタとは一度、ただのアイドルマニアとして語らいたいと思ってたのよね。」

にこ「入部してからはμ's、μ'sばっかりだったし…どう?」

花陽「そ、それは…」

正直言ってすごく嬉しい。

にこちゃんとアイドルのことだけ考えて、アイドルのことだけ話していられるなんて、そんな夢の様な時間があっていいのかな。



にこ「決まりね。最近の夜行バスは未成年が乗っていても問題ないみたいだけど…ちゃんと親に言っておきなさいよ。」




6: SS速報 2015/06/01(月) 23:24:38.10 ID:EymdjSj2.net

花陽「―ごめんね、にこちゃん。遅くなっちゃって…」

にこ「別に、平気よ。まだ時間があるから少しお茶でも飲みましょ。」


バスターミナルの周りは夜だというのにとっても明るくて、まだ開いてるお店がたくさんあった。


にこ「何よアンタ、その荷物。大げさねえ。」

待合室でペットボトルのお茶を飲みながらにこちゃんが笑った。

花陽「え?だって…泊まりがけだから…」

にこ「最近のビジネスホテルなら大体のものは揃ってるわよ…それになんだかんだ言っても日本だしね。お財布さえあればなんとかなるわ。」

花陽「そ、そうなんだ…」

それでも、見渡せばたくさんの人が居た。

大きなボストンバッグを抱えてるおじさん。ハンドバッグひとつのお姉さん。お友達と笑ってる大学生…

こんな夜中に外にいるのも初めてだったから、なんだかすごく非現実的だった。




9: SS速報 2015/06/01(月) 23:31:56.51 ID:EymdjSj2.net

にこ「来たわね。乗りましょうか。」

花陽「う、うん…」

すごいすごい!夜中にこんな大きなバスが走っているなんて!

にこちゃんは慣れた様子で中に入っていく。

私は乗ろうとしたらバス会社の人(?)にとめられちゃった。

「大きな荷物はこちらへどうぞ。」

バスの下が開いて荷室になっていた。私は必要そうなものをカバンから取り出す。


花陽「わあ…こんなふうになってるんだ!」

にこ「一番安いのは4列だけどね。初めてのアンタにはキツイでしょ。今回は3列シートにしておいたわよ。」

花陽「?」

にこ「4列っていうのは要は普通のバスが夜走ってるのと同じよ。3列っていうのは座席が1つずつ独立してるやつのことね。」

花陽「へえ…」

確かに。普通のバスで一晩過ごせって言われたら結構しんどいかも。

にこ「最近はカプセルホテルみたいな個室もあるらしいけど…新幹線と変わらない値段するしね…」




11: SS速報 2015/06/01(月) 23:39:13.58 ID:EymdjSj2.net

そんなにこちゃんのボヤキを聞きながら席に座る。

わ、結構広いかも。

にこ「はい。」

花陽「え?アイマスクと…耳栓と…これは?」

にこ「枕よ。空気でふくらませるの。」

花陽「・・あ、ここだね。でも、これって必要なの?」

にこ「甘いわね…この三種の神器がないと全然違うのよ。騙されたと思って使ってみなさい。」

花陽「うん。ふーっ…」

にこちゃんから渡された枕に息を吹き込んで首にあてがう。あ、結構楽かも。

にこ「ね?これがあるとないとじゃ違うのよ。」

確かに。私はさらににこちゃんの言う通り、靴下になって前の足置きに足を載せた。

にこ「大人だったらお酒を飲んで寝ちゃうっていうのも有りなのかもしれないけど…にこ達はそうもいかないもんね。」

そう言うにこちゃんはすでに寝る体勢だ。服装も心なしかいつもよりゆったりしてるし…

すごいなあ、いろんなこと、知ってるんだなあ…




14: SS速報 2015/06/01(月) 23:45:02.80 ID:EymdjSj2.net

にこ「zzz…」

すごいなあ、もう寝ちゃった。

私はというと、なんとなく寝られずに窓の外を眺めてた。

オレンジ、赤、緑、青…・

真っ暗だと思ってた夜の世界は思っていたよりずっとカラフルだった。

海のそばに立つ大きな大きな工場の明かり。

あそこにはまだ働いてる人がいるんだよね。

そう思うとすごく不思議な気持ちになった。

花陽がすやすやと寝ている間にも働いてる人たちがいる。

そんなこと考えたこともなくて―

私は窓の外のオレンジ色をぼんやりと眺めていた。




15: SS速報 2015/06/01(月) 23:49:20.68 ID:EymdjSj2.net

にこ「――なよ――花陽。」

花陽「ふぇ?」

にこ「休憩よ。無理じゃなかったらお手洗いに行って、少し体を動かしなさい。」

花陽「え?え?ああ、うん…」

にこ「待って、ほら、上着着てきなさい。」


花陽「わあ…」

バスを降りた私の息が白く霞んで、消えていった。

サービスエリア。こんな夜に来たことなんてなかった。


にこ「ほら、ついてきなさい。離れるんじゃないわよ。」

花陽「あっ、待って、にこちゃん。」


夜のSAの車は中が見えなくて、なんだかちょっと怖かった。




16: SS速報 2015/06/01(月) 23:55:37.96 ID:EymdjSj2.net

花陽「わあ…!」

にこ「こら。アイドルがそんなものキラキラした目で見つめてんじゃないわよ。」

花陽「だって…だって・・これ!新米で、名物だって…!」

にこ「はいはい。また今度ね。お茶買って戻るわよ。」

花陽「ああ…!」


なんでだろう。人もまばらなフードコート。

寒々とした明かりの下で食べる御飯はすっごく美味しそうに思えたの。


にこ「いっちに…いっちに…」

花陽「いっちに…いっちに…」

息を白くしながら二人で屈伸する。

にこ「ま、別にやらなくてもいいんだけどね。一応。」

花陽「うん。」

バスのそばで屈伸運動。

これをしておくと体が痛くならないんだって。

時折、ブルルルーン!と大きな音をたてて、スポーツカーが走っていった。




17: SS速報 2015/06/02(火) 00:00:11.95 ID:l/G8cIvA.net

それから、席に戻って、高速道路の明かりを眺めてるうちに眠っちゃったみたい。



にこ「――花陽。ついたわよ。」

花陽「ふぇ…?」

あれ、なんでにこちゃん…?

ああ、そうだ。一緒に…アイドルを…

にこ「ほら、こっち…」

花陽「うん…」


花陽「え…何もない…」

にこ「当然よ。まだ朝5時だもの。」

にこちゃんが白い息をはきながら答えた。




19: SS速報 2015/06/02(火) 00:02:34.81 ID:l/G8cIvA.net

にこ「夜行バスはコレが嫌なのよねえ…」

にこちゃんがため息をつく。

にこ「さっ、取りあえず近くのファミレスにでも行きましょ。」

スマホをいじりながら歩き出す。

誰も歩いていない街。

私とにこちゃんだけの足音だけが響いた。






21: SS速報 2015/06/02(火) 00:07:44.18 ID:l/G8cIvA.net

街が動き出す。

小説や歌詞でそんなフレーズを見たけど。

実際見たのは初めてだった。


駅ビルの2階のファミレスから外を眺めると、段々とスーツ姿の人たちが増えていく。

花陽「わあ…」

にこ「…」

にこちゃんは優雅にコーヒーを飲んでいる。

すごいなあ。こういうの見ると、やっぱり先輩なんだなあって思う。

私は…こんな風になれるのかな…?




23: SS速報 2015/06/02(火) 00:12:42.72 ID:l/G8cIvA.net

花陽「――~~~!!」

にこ「――~~~!!」

花陽「もう、さいっこうで~~~~~!!!」

にこ「やっぱり生は~~~~~!!」

こういう時、私とにこちゃんは便利。


詳細な言葉なんていらない。お互い、思ってることがわかるから。


コンビニで買った夕ごはんを食べるのももどかしく、ライブについて語った。

ビジネスホテルの小さなお部屋。

私はベッドに。にこちゃんは椅子に腰掛けて。

帰りに食べたおうどんさんはノーカンで。




24: SS速報 2015/06/02(火) 00:19:02.32 ID:l/G8cIvA.net

どうしてかな。

普段はそんなことないのに、コンビニで売ってるものがすっごく美味しく見えたの。

アレも、コレも…なんだかちょっと大人になったみたいで、普段読まない雑誌まで買っちゃった。

それから、二人でコンビニ袋を抱えて、人気のないオフィス街を歩きました。




花陽「あがったよ、にこちゃん。」

にこ「――うん」

私がシャワーを浴び終わった後、にこちゃんはスマホ片手にケーキを食べてました。

にこ「じゃあ、失礼するわね。先、寝てていいから。」

そう言ってにこちゃんがユニットバスの中に消えていく。

花陽「えへへ…」

私は、さっき買ったロールケーキの封を開けた。




25: SS速報 2015/06/02(火) 00:24:12.54 ID:l/G8cIvA.net

花陽「わあ…///」

家では絶対に読まない雑誌の恋愛特集なんて読んでたらにこちゃんがお風呂から出てきた。

にこ「何よ、寝てなかったの?」

にこちゃん、髪下ろすと雰囲気変わるなあ…

にこ「アイドルに夜更かしは厳禁よ。さっさと寝ましょ。」

花陽「あ、うん…」

もうちょっと、色々話したかったな…



花陽「あ、ごめんね、にこちゃん。ちょっとおトイレ…」

にこ「うん…」

にこちゃんはもうベッドに入ってる。

花陽「…あれ?」

浴槽にお湯が張ってある。

にこ「―それ、そのままでいいわよ。」




26: SS速報 2015/06/02(火) 00:27:56.81 ID:l/G8cIvA.net

花陽「え?」

にこ「こういうとこって乾燥するでしょ?だから、そうしておくといい感じに加湿されるのよ。」

にこ「あと、乾かしたいものがあったら浴室に干しておくといいわよ。ずっと乾燥かかってるから。」

花陽「へえ、さすがだね、にこちゃん。」

にこ「別に…」

花陽「…おやすみ。」

電気を消して、ベッドに入り込む。

…うぅ、これ、なんだか封筒に入るみたい…



――どこか遠くで 救急車のサイレンが鳴ってる……




27: SS速報 2015/06/02(火) 00:32:15.85 ID:l/G8cIvA.net

にこ「――ねえ、花陽。」

花陽「…ぅ…」

にこ「…アイドル、好き?」

花陽「ふぇ…?」

にこ「――乃果はあんなんだし――あんたさえよかったら――」

花陽「…」


なんだろう…にこちゃんが…何か……言って、る……


にこ「―どう――アンタだったら――」

花陽「ぇ……」


ダメ…眠くて…


明日は…にこちゃんと…○○城を見てから……みんなにおみやげを…買っ、て……




にこ「―寝ちゃったのね。…おやすみ。」

――にこちゃんの声が どこか 遠くで 聞こえた。


~おしまい~




29: SS速報 2015/06/02(火) 00:35:43.02 ID:sa6KCN3x.net

おつ




30: SS速報 2015/06/02(火) 00:36:07.24 ID:sU9/v28S.net

乙にゃ
乗ってみたいなー俺もなー










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