RSS速報
2013年、フランス東部アルザス地方の古代の墓から、素人目にはとても奇妙に見えるもの、違和感のあるものが見つかった。西暦400年頃に亡くなったと思われる貴族の頭蓋が出土したのだが、その頭蓋の形状がとても変形していたのだ。
額は平たいのに、後頭部がまるでコーンのように円錐形に盛り上がっている。専門知識のない者が見たら、宇宙人グレイというエイリアンの頭蓋だと思っても無理はないだろう。
だがこれは、頭蓋にわざと力を加えて自然な頭の形を変形させる、人工頭蓋変形の一例なのである。これは珍しいことでもなんでもなく、かつては広い地域で行われていたのだ。
スポンサードリンク
人工頭蓋変形は、1900年代始めごろまで行われていた。フランス西部ドゥセーヴルでは、トゥルーズ型変形頭蓋として知られている。頭にバンドー(女性の頭に巻くリボンなど)を巻くことはフランスの小作農の間ではごく普通のことで、不慮の衝撃から守るために、赤ん坊の頭に当て布をしてきつく縛ったのだ。同じころ、ロシアやコーカサス地方、スカンディナビアでも、こうした人工頭蓋変形は行われていた。
人間の頭蓋の形を変形させることは、特殊なことではなかったようだ。時と場所を越えて一般的に行われていたことで、その意味合いはひとつに絞れない。
なぜ、どのようにこのようなことが行われたのかを理解すれば、頭の形を変えることを選んだ社会のことをもっと明らかにすることでできるだろう。
もともと、他の集団と区別するためだったり、個人の社会的地位を示すために頭蓋に圧力をかけて変形させる行為が行われた。ヨーロッパでは、フン族、サルマティア人、アヴァール族、アラン族などのように、中央アジアのコーカサス地方から移住してきた部族の間では一般的だった。特にこの地域では、もっとも初期のころに人工頭蓋変形を施されたとされる人の遺骸が発見されている。
頭をきつく固定されている子供たちはかわいそうな気もするが、その後の研究で、専門家たちは頭蓋変形は認識機能にダメージを与えることはないし、頭蓋容量にも特に違いがないと信じるようになった。2007年の論文によると、意図的に頭蓋変形が行われている社会に、マイナスの影響がある証拠は見当たらないようだ、見解をだしている。
イラクとトルコの国境近くのクルジスタンで、1960年に新石器時代の墓が発見された。このシャニダー洞窟は1万年以上前のもので、出てきた35体の遺体の中に意図的な頭蓋変形の初期の例が見られる。フン族やアラン族は、中央アジアから出てきたが、西方に攻め込んで(あるいは傭兵として)ローマ帝国へやってきたとき、頭蓋変形の技術も持ち込み、それが西や中央ヨーロッパの人々に受け入れられた。
ギリシャの詩人で紀元前750〜650年の間に生きていたヘシオドスの初期の文献にも、わたしたちの祖先が人工頭蓋変形を行っていたことが書かれている。自身の神話集『TheCatalogues of Women』の中で、ヘシオドスはアフリカやインドの部族が巨大な頭のことを言っていたことにふれている。
西洋医学の父ヒポクラテスは、紀元前400年頃に書いた自著『On Airs, Waters, and Places』 の中で、巨大頭蓋症についてふれているだけでなく、その技術も正しく習得していた。頭蓋が変形した人たちを神話化するのではなく、その方法や理由をわたしたちにおしえてくれる。"長い頭をもっている人ほど高貴だと考えられていた。赤ん坊は生まれてすぐは頭蓋がまだ固まっておらず柔らかい。まずは素手で赤子の頭の形を整え、布を巻いたりさまざまな工夫を凝らして、頭が長くなるように固定した"
この驚くべき施術を発見したのは、ヨーロッパの人間だけではない。中国の仏僧で旅人でもある玄奘三蔵法師は、17年に渡るインドへの旅が『西遊記』を書くきっかけになったが、中国西部の新疆ウイグル自治区カシュガルの人たちのことも記述している。"そこではごく一般的な両親から生まれた赤ん坊たちが、木の板で頭蓋をはさんで平たくされている"と。
フランスで発見されたこの写真は、人工頭蓋変形を施している人たちは移民で、その社会での地位が高い支配者階級だと広く言われていることと合致する。こうしたことは何千年も前には一般的だった奇妙な風習といってしまえばそれまでなのだが、真実とはほど遠い。
アメリカをとってもみても、さまざまな部族の間で、子供たちは両親によって頭を固定されて変形させられている。マヤやインカでも、現在アメリカいるチョクトー族やチヌーク族と同じように、子供の頭蓋に手を加えていた。その理由は同じはずだ。子供たちをその社会構造に合うように育て、まわりに階級を知らしめるためなのだ。マヤの人たちにとっては、宗教的に重要な意味合いもあった。
スペインの南米征服についての年代記作家で、マヤ人の末裔であるゴンザロ・フェルナンデス・デ・オビエドは、わたしたちの先祖が、頭蓋があのように長いと高貴に見えると神に言われたから、頭蓋変形を行ったのだと説明している。
マヤの頭蓋変形にはふたつのスタイルがあり、その人の地位を示していたという。高い地位の者は、斜め上に頭の先端が高く伸びる円錐形の頭にする。一般大衆は側頭部はフラットで丸い頭蓋がそのまま高くなるようにする。これらの頭の形はジャガーの頭蓋骨を真似て武勇を表しているとか、コーン型の頭は豊穣のシンボルだと言われているが、歴史家や考古学者の間では議論が分かれている。
ペルー、イカの博物館に展示されている頭蓋骨
人工頭蓋変形の記録は、オーストラリアやカリブ海の島々にも残っている。これは古代の話ではなく、世界の辺境の地ではいまだに行われている。
ポリネシアでもまだこの風習は続いているし、コンゴのマンベトゥ族の人々の間でもある。バヌアツでは、頭の形は有名な国民的英雄や宗教と密接に関係している。バヌアツのマレクラ島出身のある人は、霊的な信仰がベースになって発生したと語る。長い頭をした人はハンサム、美人で、知恵があると思われているという。
ほかのどんな肉体改造もそうだが、美しいかどうかは見る人の目によって違う。アルザスで発見されたこの古代の貴族の女性は、亡くなってから千年以上たっても孤独ではないようだ。彼女と同じ頭の形や習慣を大切にする人たちがまだ現存しているのだから。
atlasobscura・karapaia・原文翻訳:konohazuku
▼あわせて読みたい
エイリアン疑惑?ペルーで見つかった頭がやけに細長い頭蓋骨(画像・動画)
メキシコで発掘されたやたら頭蓋骨の長い人骨
10の奇妙な考古学的発見
宇宙人と人間のハイブリッド「スターチャイルド」の頭蓋骨の映像
人間の頭蓋骨で作られた聖なる楽器、リラ。(19世紀、メトロポリタンコレクション)
高緯度に住む人ほど、頭蓋骨と目が大きい(英研究)
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
シェアする
この記事をシェア :
「知る」カテゴリの最新記事
「歴史・文化」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 5814 points | ペットボトルがいらない!持ち運べるし食べられる水の容器の作り方【ライフハック】 | |
2位 3456 points | やっぱ南半球は違うわ。オーストラリアに生えているキノコたち | |
3位 3400 points | 使徒・襲来?ニュージーランド上空で発見されたモジョっとした未確認飛行物体 | |
4位 2674 points | サイボーグになったけど、これでご飯が食べられるよ。3Dプリンターでチタン製の義顎を手に入れたアカウミガメ | |
5位 2124 points | 猫バスみたい!日本の陸上自衛隊のカモフラージュ車両がモッフモフだった。 |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
きっと「神」の姿を真似したんだろうね。
それが何かは脇に置くとしても、権威と智慧の象徴だった事は間違いない。
2. 匿名処理班
トレパネーションのほうがまだマシに思えるほど
(ビジュアル的に)強烈だなあ
3.
4. 匿名処理班
抱かれた赤ん坊の眼球眼窩付近の異様さ…
5. 匿名処理班
昔NHKでやっていたプリンセスプリンプリンに出てたルチ将軍の頭に似ているな
6. 匿名処理班
コーンヘッド
7. 匿名処理班
脳がおおきくなったりしないの!?
8. 匿名処理班
人体、ひいては生命の神秘だなぁと思った。どんなに圧迫されても正常な機能を以て維持できるんだね。今で言うところのカラーコンタクトとか、タトゥーとか、そういうものにも通じてると思う。特殊だけど、悪くないね。
9. 匿名処理班
これ、脳に異常とかは起こらなかったんだろうか
10. 匿名処理班
もともとこのような形状の頭を持った人間がいて、特殊な能力を備えていたという仮定もあってしかるべきだと思う。だが、ある時その種類の人間が地球上から消滅した。ゆえに、その能力を再び得たいという希望がこういった形状を真似するようになったのではないか。そもそも、頭を伸ばすというのが単なる思いつきとは考えがたい。変形の頭骨もあるだろうが、発見されている全ての頭骨が変形されているのではないはず。
11. 匿名処理班
お釈迦さまは頭がもりってなってるよね
関係あるのかと思ったけどあまりなさそうだ
不思議だなあ
12. 匿名処理班
普通の頭蓋骨より容量が多く見える。
纏足や歯の矯正と同じで、見た目を良くするためだよね…
13. 匿名処理班
刺青とか抜歯とかピアスの延長線にあるような感じな気もするし
無くはない気もするな
頭だけじゃなく、纏足とかの例もあるし
オイラはやらんけど
14. 匿名処理班
ゾッとするね。
遭遇したくないな。
15. 匿名処理班
知能指数1300
16. 匿名処理班
お釈迦様の頭にあるコブは、肉髻(にっけい)だね。
知恵や悟りの象徴。
案外、そういう象徴的な意味合いで、人工的に変形させて作ったのかもね。
カトリックの司祭が儀式の時に被る冠も、似たような形をしてるしね。
17. 匿名処理班
石を押し付けて固定したりして、色々な形の頭を作ったそうだ もちろん障害が残って池沼のようになる それらをシャーマンの巫女のような存在として扱ったらしい 本で読んだ
18. 匿名処理班
絶壁頭なんで形を変えられるものなら変えたいです
いやこんなには結構ですけど
19. 匿名処理班
日本でも広田遺跡から見つかってるよ
日本列島では広田人以外に例がないらしいが
20. 匿名処理班
セガサターン
21. 匿名処理班
逆に、そのような風習が無くなった原因は何なのか?
22. 匿名処理班
>移民で、その社会での地位が高い支配者階級だと広く言われている
少数であったろう移民が原住民を支配していたということか
頭蓋変形以外の文化的な力は吸収されてしまったんだろうなぁ
23. 匿名処理班
インディーズジョーンズであったけど、こういう物を見ると第三種接近もあながち嘘じゃないと思えてしまう
24. 匿名処理班
何が詰まってるんだよ
25. 匿名処理班
宇宙人みたいだ。古代人は未来を予見していたのかな。
26. 匿名処理班
ひょっとしたら過去に来た宇宙圏外から来た
生物の真似をしていたり
でも日本の土偶にしろこのような顔多いのはなんでだろ
27. 匿名処理班
日本の変形頭蓋骨はもっとすごいけどな。
28. 匿名処理班
かっこいいなぁ
29. 匿名処理班
ぬらりひょんみたいだなぁ
30. 匿名処理班
ドラクエ1の『しりょうのきし』はこれだったんだ!
31. 匿名処理班
日本だとトンカラリンと呼ばれている太古の宗教的儀式が行われていたと思われる遺跡から、やはり人工的に、主に顔面を変形させられた巫女と思われる人物の頭蓋骨が出てますね。他の人とは異なる風貌を持つ事により、より神に近い存在であると知らしめる為と結論されると共に、顎が正常に動かない事を起因とした健康面での影響で早逝された様だ、と聞きました。
32. 匿名処理班
ルチ将軍思い出してる人がいてよかったw
33. 匿名処理班
小暮井総理大臣「見てください、彼らもまた地球人です。故に私も地球人です。宇宙人などではありません。」
34. 匿名処理班
人類は脳の容量が増える方向に進化してきたし、それに伴って文明も発達してきた。だから脳が大きい事は知能の面でやはり有利なんだろう。脳が大きい=優秀、そういう淘汰圧の中で、端的に脳の大きさを示すにはどうしたらいいか。大きさの違う玉を比較する時、勿論そのままでも重ねたりすれば分かるけど、一番分かり易いのは引き伸ばす事。大きいほど、より長く伸びる。
35. 匿名処理班
封神演義の仙人骨だな
36. 匿名処理班
エジプトもそうだよね。
板で挟んで縛る
37. 匿名処理班
巨頭オ
38. 匿名処理班
高頭部が長い人は「運動能力が高い」ようだ。
全く根拠はないのだが…身の回りや運動選手を観るとそう思う。
特に陸上・相撲なんかが。
39. 匿名処理班
レントゲン撮って脳の状態をみてみたい
40. 匿名処理班
人工頭蓋変形にすると頭が良くなるとか
そんな事は無いんだよね?
よく宇宙人との関連性を唱える人もいるけど
41. 匿名処理班
子供の目がえらいことになってますがな。