はじめに
おいでやす、バーグハンバーグバーグのまきのどすえ。
何故こんな話し方かというと、わたしは今、京都に来ているからです。そして市内の中心を流れる鴨川のへりに座って、せせらぎを眺めているところです。
大都市の中心を流れる川にしては透明度がむちゃくちゃ高く、時の流れがゆっくりと感じられるため、若き男女がこぞって「等間隔で座る」のが夏の風物詩となっております。
たまに鴨川等間隔の法則の写真見てひとりで笑ってる pic.twitter.com/Y8HTZraRMl
— 梨 (@rinpear) 2015, 5月 24
こんな感じで。
本日はわたしが全員殺しておきましたので、誰もいません。一安心ですね。
それは真っ赤な嘘なんですが、ところで皆さんは「ねこあつめ」というスマホアプリをご存知でしょうか?
「ねこあつめ」とは、庭先にごはんとグッズを置いておき、それらにつられて集まってきたねこ達をただ「眺める」という非常にシンプルなゲームです。
ねこが来たことはプッシュ通知では教えてくれず、本当に気まぐれ。出会うためには頻繁にアプリを立ち上げなければなりません。ふとした瞬間に起動して、「あ!このねこ初めて来てくれた!」という嬉しい出会いがあったりするのが「ねこあつめ」の醍醐味です。
また、出会ったねこを写真におさめておけば「ねこてちょう」でいつでもあの瞬間を振り返ることができます。全てのねこに出会って写真におさめると、何か嬉しくなる、そんなほんわかしたアプリなんです。
こんな感じで時間に縛られることもなく何気ない時に息抜きでプレイ出来る親切設計で、「癒やされる」「かわいい」とツイッターを中心にじわじわと話題が広まり、現在450万ダウンロードを突破した超絶人気アプリとなっております(公式ツイッターアカウントも開始2時間でフォロワーが2.5万人突破し、現時点で16万人以上)。
そんな驚異の癒し系アプリ「ねこあつめ」を作った株式会社ヒットポイントさんが京都にあるらしいので、「いっちょ取材してねこあつめの秘密を聞いてみっか!」と孫悟空ばりの口調で京都にやってきた、という次第です。
というわけで、五条大橋から鴨川沿いに北上し、河原町へやってきました。
そこから歩くこと数分、どうやらここのようですね。
「ねこカフェ 犬猫人(わんにゃんちゅう)」は・・・!!!!!
リアルねこあつめをやっとこう
あ〜!
やめてくれ〜〜!!!
しりだ〜!
は〜ねこって最高ですね。このねこカフェ「犬猫人(わんにゃんちゅう)」では、1Fが大人のねこ、2Fが子ねこの部屋になっています。基本料金では1Fのみ入れるのですが、追加料金を納めると隠し階段が開かれ、魅惑の子ねこルームに入ることが許されるのです。
そしてわたしは本日の京都遠征のために、あるものを用意いたしました。
それがこちら、「特製ねこあつめカチューシャ」です。
これをわたしのもじゃもじゃ頭(天然パーマ)に取り付けることで・・・
もじゃもじゃねこあつめおじさんの完成です!!!!!
てっぺんは「異常に出現率が低い」ことでユーザーをやきもきさせている、ハート柄がかわいい「くりーむさん」。
右側には「ちゃとらさん」。もじゃもじゃに突っ込んでるように作ってもらいました。丸みを帯びた体型とトレードマークであるしりの穴も再現しています。
左側は「しろくろさん」。この三種のねこが頭に群がるカチューシャを装着すれば、ねこもグイグイ集まってくるに違いありません!
ほ〜ら、ねこじゃらしだよ〜〜。(チロチロ
無視。
子ねこたち、異常に元気。そして紙袋にめちゃくちゃ執着しています。その緑のやつはヒットポイントさんに渡そうと思っていたつまらないもの(=お土産)なのに・・・。
そんなに気になるのであれば・・・と、中身を出して大きく広げて待ってみました。ちなみにもうカチューシャは外しています(安定しないから)。で、紙袋を広げていると・・・。
すぐさま入った。ハアハア・・・ぺろぺろ・・・。
一番元気なねこも、紙袋の楽しさに気づいたのか、入りたそうにしています。
こいつも即入った。マジねこあつめです。ここが桃源郷です。いや、桃源猫(とうげんぴょう)かな?
2Fの子ねこゾーンは時間が限られているので、悲しいですがここで1Fに移動です。
1Fのおとなねこゾーンでは、落ち着きすぎてる大人ねこが静かに暮らしております。このねこはこの世の真理を全て知り尽くしたような達観した表情ですね。
対の状態で箱に収まり、お互いの腹をもみ合う、という神々にのみ許された至高の娯楽に興じているねこもおりました。この様子、永遠に見てしまいますね・・・。
このまま眺めていると5000年の月日が流れてしまいそうだったので、気持ちを切り替えて1Fでも紙袋戦法をやってみます。ほ〜れほ〜れ。
食い付きよすぎ。やはり成長してもねこはねこ・・・。
遊んでいるうちに、スポっと入ってしまいました。これは・・・!
これだ〜〜!!!!!!!
I・C・C・H・I、一致〜〜!!!!!!
たまたまこのカフェで出会ったスティーブの周りもご覧の有様。新婚旅行で日本に来ているらしいのですが、「アメリカにはこんなねこカフェは無いから最高だぜ!」と言っておりました。「ねこのかわいさは国籍を超える」という言葉はどうやら本当のようですね。今作った言葉ですけど。
そろそろちゃんと取材しにいこう
さて、リア充ならぬ「ねこ充」になったところで、そろそろヒットポイントさんにお邪魔します。土地勘がいまいち分からず「ま、京都の景観見ながら歩いて行くか」と思ったんですが、河原町から30分以上歩くハメになりました。二駅ぶん、です。この写真も若干ぐったりした背中ですね。
ようやく着きました!こちらがヒットポイントさんです。
というわけで、プロデューサーさんとデザイナーさんを交えて、色々お話を聞いてみましょう。
※今回はヒットポイント様の意向により「現実的な部分」を排除してお届けいたします。
本日はお時間いただきましてありがとうございます!
こちらこそありがとうございます。仮の姿で失礼します。
問題無しでございます。他のインタビュー記事でも顔出しはしてませんからね。
そうですね。「ねこあつめ」の世界観イメージを守って、その世界に浸ってもらいたいという思いがあるので、開発者として顔を出して行くということはやめておこうと。
素晴らしい志・・・!さてさて超人気アプリとして話題のねこあつめなんですが、以前と以後で何か変わったことはありましたか?
変わったことか・・・。
うーん、多少テンションは上がりましたが、特に大きな変化は無いですね。
意外!
強いて言うなら電話の子機が増えたぐらいですね。もともと音質が悪かったんですが、「ねこあつめ」がたくさんダウンロードされるようになってお電話での色々なお問い合わせが来るようになったので、子機を増設しようと。
「アプリが売れると子機が増える」、ですね。風が吹けば桶屋が儲かる的な。
そんな感じですね。あとはサーバーを一台増設しました。「ねこあつめ」は基本的にオフラインでプレイできるんですが、「今日のあいことば」を入力する時はオンラインになります。ダウンロード数がぐっと増えた時にサーバーが落ちてしまったので、そこは対応しておきました。
総合的に見ると、あんまり変わってないってことですね。
「今日のあいことば」を入力すると、グッズを購入する時にお金代わりになる「にぼし」がもらえる。基本的には庭先にやってきたねこが去り際に置いていくので、それを貯めて新たなグッズを購入するのがルーチン。
そもそもの開発のきっかけは何だったんでしょうか?
弊社はもともとRPGなどのアプリを制作しているのですが、空いた時間に好きにゲームを作っていいという制度があって、その時に息抜きで作ったんです。現在もデザイナーと二人で作っています。
息抜きで作ったのが思わぬヒットを生んだ・・・というわけですね。デザイナーさんが全てのデザインを担当してるんですね?こだわりなどはありますか?
ねこのデザインはプロデューサーと二人で考えていますが、庭先や動きに関しては自由に作らせてもらいました。やっぱり「自分で描いててカワイイと思えるものを描こう」という気持ちがこだわりになるかと思います。
分かります。ぼくも長年うさぎとねこの漫画を描いてますが、たまに「これは最高にかわいいな・・・」って思ったりしますからね。
そうですそうです。自分で顔が緩んじゃうようなものが出来たら、それは「いいモノ」だと思います。
ヒット後に一度アップデートがされ、庭先の模様替えと新しいねこが数匹追加されましたが、これは当初から予定されていたんでしょうか?
ねこやグッズを追加していく予定はありましたが、「庭先の模様替え」などは当初予定にはなく、ユーザーさんからの要望でいただいたのがきっかけです。
模様替えをすると部屋の雰囲気ががらっと変わるので気分転換になるんですよね。あと、新しく追加されたねこの中で、僕の頭にもついてる「くりーむさん」、全然来ないじゃないですか。あとこのくりーむさんのたからもの(※)さえ集まればコンプリートなんです!この「くりーむさんの来なさ」っていうのは理由があるんでしょうか?
(※)ねこと仲良くなると「たからもの」をくれる。それをコレクションするのも「ねこあつめ」の楽しみ方の一つ
おお、すごいやってくれてますね。くりーむさん、確かに来ないですね・・・。まあもともとねこは気まぐれなものですし、くりーむさんに関しては「他のねこよりもっと気まぐれさを出そう!」と思ってあの出現頻度になっています。ちょっと気まぐれ過ぎて他のレアねこさんより来る確率が低いので、もしかしたら今後調整加えるかもしれません。
いや〜今から確率変えるのはどうなんでしょう!?くりーむさんはあの出てこなさでツイッターでもかなり話題になっているので、そのままでもいいような気もします!
くりーむさんに関するツイート
「くりーむさん」でツイート検索すると、会えない人の嘆きが散見される
でも一番最初の設定より5倍は出るようにしているんですよ。
あれで5倍!?
アップデート後に導入された広告がユーザーに優しく、世界観を崩してないというのでかなり話題になっていましたが、あれはプロデューサーさんが考案したんでしょうか?
※メニュー画面を開くと、低確率で「チラシをくわえたねこ」が現れる。そのねこをユーザーが能動的にクリックしないと広告が表示されない仕組み
そうですね。「ゲーム中に出てくるものをタップしたら広告が出る」というスタイルは他社さんの別のアプリなどで既に使われている手法なんですよね。広告というものは運営をするために必要なものではあるんですが、「ねこあつめ」に関してはなるべく出したくないなと思っていました。後ろ向きだったんですが、「見られなくてもいいから何かしら入れてみよう」というモチベーションで、この形での導入でしたね。とは言え概ね評判はよくて驚いています。
昨今の無料アプリは広告表示が多いものがあったりするので、この手法は「発明」だと思いました。やはり世界観を守るためですね。
そうですね。「ねこあつめ」に浸れるように、ですね。スマホのアプリとしては広告や課金で収益をあげていくのが正しいあり方なんですが、金にぼし(普通のにぼしよりもいいグッズが買える)を購入してもらうことで収益をあげるようにしています。
なるほど。でも僕もずっとやっていますが、金にぼしに課金したことは無いんですよね・・・。そういう人に対して「金にぼし買えや!」と思ったことはありますか?
いやいや全く。当初は課金しなくても2〜3週間でコンプリートできるバランスにしていましたが、それでももっと早くクリアしたいという方が時短的に購入するというパターンが多いですね。ですが、無料でも長くやってくれていたとしたら、その人を軸にして知らない人にオススメしたり、スクリーンショットをツイートしたりして「ねこあつめ」を広げていただいているという認識があるので、「無料でやりやがって〜」という意識は全く無いです。
ゲーム画面をそのままツイートできるという導線も素晴らしいと思います。
「ユーザー同士で広げてもらう」ということが一番早いなと思っていて、SNSで広げやすい仕組みを考えながら作ってみました。
「ねこ」という強いコンテンツで、ねこをコレクションできて、その体験を切り取って人に伝える仕組みはすごいな〜と思っています。他のソシャゲは課金欲を刺激したりするものが増えてきているので、それにうんざりしてる人は多いと思うんですよね。その中でほとんど無料でプレイできて、広告臭が一切しないブランドを構築することは大事ですよね。
そう思います。
例えば実在のキャットフードを広告代わりに「期間限定アイテム」として出す・・・という案は無かったんでしょうか?
ありがたい事にヒット以降そういうお話を色んな企業さまからいただくのですが、丁重にお断りしています。やはり現実味が出てきてしまうので・・・。それと、期間限定アイテムとなると、それが欲しい人も欲しくない人も出てきますし、大前提として「いつ、どのタイミングで始めても公平に最後まで楽しめるものにしたい」と思っていたので、期間限定ものはこの中には入れないようにしています。単純にのんびりしたゲームにしたいんですよね。
徹底した世界観の構築・・・素晴らしすぎる・・・。確かにのんびりしたゲームですよね。攻略サイトとか見ても「このグッズを置けば◯%の確率でこのねこが来る」みたいな解析とかもリークされてないですから。
そこまで入り組んだ法則は無いですが、かといってリアルに数値を公開しちゃうと「結局データだ」となってしまうので、今後も公開するつもりはないですね。とはいえ効率のいいにぼしの稼ぎ方はいくらでもあるし、それは秘密にしておくことはあまりしていません。グッズで言えばアスレチックタワーEX、あとはぷりんすさん、ねこまたさん、こいこいさんが多めににぼしをくれるので、そのねこ達がくるグッズを置いておきましょう。
まんぞくさん(太ったねこで、ご飯を食い尽くしてしまう・ご飯が無いとねこは来ない)が出現した時、「すぐどかしてご飯を補充する(=別のねこは来るが、まんぞくさんからのにぼしは少ない)」か、「帰るまで待つ(=ご飯がないので別のねこは来ないが、まんぞくさんからのにぼしは多い)」かで、葛藤しますよね・・・!
ねこあつめあるあるですね。
おそらく多くのユーザーさんが気になっているところですが、アップデートの予定はありますか?
Appleさんの審査があるので具体的にこの日と言えないのが心苦しいのですが、6月上旬を予定しております。新ねこや新グッズも新たに追加されます。
新しいねこやグッズを見せてもらうことって、できますか・・・!??!?
隠すようなことですけど、まあ隠すようなことでもないので、グッズぐらいなら。
これが「カフェデラックス(仮)」です
おお〜ねこがちょこんと入り込んでる姿が想像できますね!早く使いたい〜〜!アップデートも楽しみですが、やっぱりお二方のガツガツしなささっていうのが「ねこあつめ」のゆるさの根源なんじゃないかな〜と実感しました。ピュアな気持ちで作って、それが成功して、それを保とうとすればするほど利益につなげようと思いがちですからね。
ありがとうございます。一定以上の利益をあげることができれば、あとは世界観を崩さないようにするのが一番大事なことですね。「ねこあつめ」自体も広がるきっかけになったのは実際にプレイしてファンになってくれた方々ですし、そこを裏切ってしまうとねこあつめ自体もつぶれてしまうので、そこだけは意識してやっていきたいですね。
とはいえ肩の力を抜いて作ったものが気に入ってもらえたので、これからも同じように同じ温度で「ねこあつめ」を可愛がってもらえたらな、と思っています。こちらが変に色めきだったりすると温度差が生まれてしまうので、今のふわっとした感じでこれからも作っていきたいです。
ありがとうございました!
おわりに
「ねこあつめ」制作に関わったお二人からお話をうかがって、まったりとした雰囲気の中にも熱い思いを感じ取ることができました。 今後はファンブックやメラミンカップといったグッズ展開も予定されているそうなので、これからもあのほんわかした空気でたくさんの人々に癒やしを与えていただきたいですね!
【ねこあつめ公式サイトはこちら】
【ねこあつめダウンロードはこちら】
【前半のねこカフェはこちら】
〜京都の猫カフェ・Cafe犬猫人(wan nyan chu)
作者: まきのゆうき
株式会社バーグハンバーグバーグのWEBディレクター。姉妹メディア「オモコロ」で開設当初から「うさねこ」という4コマ漫画を連載中。髪の毛は強めの天然パーマで、初めて行った美容院では「最後にパーマあてたのいつですか?」とよく聞かれる。Twitterアカウント→@yuuki