建築家が問う、ガジェットの概念を変えうる1グラムの想さ
これ以上軽くする必要ってあるんですかね...?
スマートフォンやラップトップをはじめとする電子機器は日々軽く改良され続けていますが、昔は数百グラム単位で軽くなっていたものも、最近では数十グラムもしくは数グラム程度しか軽くなっていない製品も少なくありません。比べなければわからない程度の軽さをこれ以上求めることに意味があるのでしょうか。軽さとは一体何なのか、少し視野を広げて考えてみたいと思います。
フォスター君、きみの設計した建物の重さはいくらかね?
これはアップルの新本社社屋の設計を手がけるノーマン・フォスター氏に、師であるリチャード・バックミンスター・フラー氏がフォスター氏設計のセインズベリー視覚芸術センターを訪れた際に問いかけた言葉です。また、この言葉は映画「フォスター卿の建築術」の原題「How Much Does Your Building Weigh, Mr. Foster?」でタイトルとしても使われています。フォスター氏はこの質問に対しその場で即答することはできませんでしたが、後に計算してみると建物の総重量の約半分が外からは見えない基礎部分であることに気づきます。当時、建築はその高さや巨大さがもたらす崇高さに目が向けられていましたが、フォスター氏は建築の「軽さ」について考えるようになります。
建築が軽くなるというこは資材を運ぶために必要な燃料が減り環境負荷低減につながります。また、軽い屋根はそれを支える柱を減らすことができるため、より巨大で開放感のある空間を実現します。しかし、単純に部材を減らし軽くしただけでは従来の重厚な建築が持っていた耐震性、耐火性、耐久性、耐風性、防音性の全てを失ってしまいます。よって、軽い建築を成り立たせるためには、それを可能とする新しい技術や仕組みについて考えなければなりません。
はるかに軽く。はるかに先へ。
これは4月に発売された新しいMacBookのコピーですが、アップルもまた彼らの製品に軽さを求め続けています。それまで一番軽かったMacBookAirは重量1080gだったのに対し、新しいMacBookは920gと160g軽くなっています。この軽さを生み出すために、バタフライ構造のキーボードや感圧タッチトラックパッド、ファンレスを実現したIntel CoreMプロセッサを始めとする新技術の存在があります。
我々消費者にとっては軽くなるということは、単に日々持ち運ぶもののポータビリティ向上でしかないかもしれません。ましてや160gの軽さなんて紙のノート一冊分にしかすぎません。しかし極限まで軽さを追求するということは一方で、デザイナーにそれを実現させるための仕組みや技術について考えることを要求します。
1グラムの想さ
軽さを実現するためにフォスター氏は人の目から見えない基礎部分やより細部のディテールへと目を向けているのでしょう。そんな彼はまさにアップル新本社社屋の設計にふさわしい建築家であるといえるかもしれません。度々強調される軽さにはそれを使う人たちだけではなく、それを作る人たちにとっても大切な要素となるのです。昨日よりも軽くなったその重さは、未来へとつながるデザイナーの努力や想いの重さなのかもしれません。
軽さについて考えるということ、それはつまりイノベーションへとつながるのです。
source: アップル、フォスター卿の建築術
(kazoomii)
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