世界中の数学者から日本のチョークへ愛をこめて
羽衣文具のフルタッチチョークがその80年の歴史に幕をおろした時に、世界中の数学者が泣いたのはご存知ですか?
あ、ご存知でしたか。日本でもテレビで紹介されていたのでそれを見た人も多いかもしれません。この羽衣フルタッチチョーク、通の間ではチョークのロールスロイスと呼ばれてるそうです。スタンフォード大学で博士号を取得中の数学者ダンさんもその愛用者の一人。日本のテレビ番組がその「伝説のチョーク」について取材しにスタンフォード大学に来た時にインタビューされました。
彼によると羽衣チョークの終わりは数学者にとって大きな悲劇とのこと…ってそれはさすがに冗談みたいですが、この日本のチョークが数学者に絶大な人気を誇っているのは事実。例えばこちらの数学者たちが集まる掲示板(英語)ではどこで羽衣チョークを購入できるか語り合って長いスレッドを作っています。ウィリアムズ大学の数学教授サトヤン・デバドスさんは自身のブログで羽衣チョークを「夢のチョーク」と大絶賛。一体何が魅力なんでしょうか。
まず最初に目につくのがチョークの外側にうすーくついたコーティング。エナメルっぽい薄いこれがあることで指に粉がつかないんですね。ちょっと太めで材質も硬め…とここまで言うとどのチョークの話がピンと来る人がほとんどじゃないでしょうか。「ウチの学校/予備校これだったよ」って人、たくさんいますよね。そう、これが欧米の数学者にとっては感動ものなんです。
しかし疑問なのは数学者にとって、なんでそんなにチョークが大事なの?という点。
15年分のチョークをストックしたというスタンフォード大学教授のブライアン・コンラッドさんによると、PowerPointは数学の問をステップごとに書き連ねるのに向いてないし、大事な時にバグるし、良くないとのこと。
面白いのはホワイトボードより黒板の方が全然優秀だと考えている点です。
ホワイトボードをキレイに使うってほんと面倒なんだよ。クリーニングの液は高いし、化学薬品は身体に悪いし。マーカーのインクが少なくなってるか目で見て分からないのは補充するタイミングのこととか、買い忘れとか考えると結構面倒なもんだよ。マーカーなんかよりチョークを1,2本持ち歩く方が理にかなってると思うけどね。
「でも若い世代は別にチョークなんてどうでもいいって思ってるかもしれないね」と遠い目をするコンラッド教授。
羽衣チョークの生産は株式会社馬印に移されたものの、生産量は半分に減るとのことです。ここまで探ると見えてくるのは、これはただのチョーク会社が潰れたお話じゃなくて、黒板という、ホワイトボードやタブレットに負けてしまった消えゆくメディアの話だったと分かりました。これからはレコード盤やメイソンジャーと同じカテゴリーで残っていくのでしょう。
この羽衣チョーク、今ならまだアマゾンで買えるのである間に買っておくと良いかもしれません。
Sarah Zhang - Gizmodo US[原文]
(塚本 紺)
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