スマホをテレビ化するアプリ「TV SideView」
AV機器といえば連携アプリがあって当然になってきた今日このごろ、ソニーは iOS / Android対応の TV SideView (テレビ サイドビュー)アプリを無料で配信しています。TV SideView の表の顔は『リモコン&テレビ番組表』。テレビ欄そのままの番組表を快適にブラウズしたり、対応機器のリモコン代わりになる手軽な便利アプリです。
しかしその本性は、
- 出演者やキーワードで録画番組や放送予定の番組を探したり、そのまま YouTubeやWikipediaにもつながったりする検索機能
- 録画・視聴履歴からのおすすめや、予約ランキングを通じて自分が見たかった番組を発見するキュレーション機能
- BDレコーダー連携で、気になったら外出先でもすぐ番組を予約できるどこでも録画予約、宅内でも外出先でも、スマホでライブ放送や録画番組が見られるどこでも視聴
(※どこでも視聴を利用するには、最新の TV SideView アプリのインストールおよび初回のみ課金(Android:463円+税、iOS:556円+税)が必要です。価格は2015年4月3日時点。予告なしに改訂される場合があります。
※BDレコーダー本体とインターネット接続、および対応端末とホームネットワークで接続する必要があります。)
アイドルプロデューサー兼業 情報環境研究者が見た新しいテレビ術
TV SideViewが実現する新しいテレビの活用について、気鋭のメディア論者であり、アイドルプロデューサーでもある社会学者 濱野智史 氏に語ってもらいました。濱野氏はドルオタ(アイドルオタク)をこじらせすぎてとうとう自分でアイドルグループを立ち上げてしまったことで話題になりましたが、ドルオタといえば自分が好きな「推し」の出演を見逃さないためテレビ放送のチェックと録画は欠かさない、テレビ&レコーダーのヘビーユーザーでもあります。特にレコーダーはアイドルにハマってからアイドルオタク活動のために購入し、一時期は2TBのハードディスク2台が常に満杯だったとか。アイドルオタクとしての濱野氏はテレビをどう活用していたのか聞いてみました。
濱野智史 (はまの さとし)
批評家・情報環境研究者・社会学者。Facebookなどウェブコミュニティ/ネットサービスを情報社会論から分析した著書に『アーキテクチャの生態系』(NTT出版)。
2011年、アイドルグループAKB48に熱狂的にハマり、以降アイドル評論を多数執筆。2012年には『前田敦子はキリストを超えた− 〈宗教〉としてのAKB48』(ちくま新書)を上梓。地下アイドルの現場にも足を運ぶようになり、2014年にはついにみずからアイドルグループPIP: Platonics Idol Platform を立ち上げ。総合プロデューサを務める。
「会いに行けるアイドル」オタにBDレコーダーが絶対必要な理由
「最近は大学生なんかあまりテレビを買わないですよね。スマホがあるし。私も20代後半まではほとんどテレビは見てませんでした。それが30代になってAKBにハマって急にテレビを見るようになった。
AKBはテレビにいつも出ているようですが、アイドルオタクにとってはAKBなら誰が出ていても良いわけではなくて、好きな娘、推しメンが出ていないと意味がない。わたしの場合は、そこまで人気がないんだけどこれから上昇する娘を推したいので、そういう娘のメディア情報ってすんげえ大事なんです。
テレビに出るのはやはりアイドルとして活動の主だし、ライブなどで会いに行けるアイドルとはいっても、テレビ出演を見ていないと握手会やイベントで話題にできない。今までテレビの向こうの人って会いに行けないから、「見ましたよ」なんていう必要なかったんですね。それが握手会などで直に会いに行けるアイドルの時代になったことで、逆にアイドル本人と会話するためにテレビのチェックが重要になった。AKBのようにテレビに出るアイドルのオタクにはテレビとBDレコーダーと、それこそTV SideViewのようなメディア情報の詳しいチェックは必須です。
テレビ離れと言われながらも、やはり知り合いがテレビに出るというのは一大事で、わたしもNHKのニュースに毎週出ていたときは妻の親戚から何度もすごいねと言われました。本人的には単なる仕事なので何もすごくないんですが。
同じように、AKBのなかでもちょっと下の子たちにとってはテレビに出られるのは一大事で、ファンにとってもやっとウチの推しメンがテレビ出た!と。変な言い方をすれば、いわゆる「ワシが育てた」感もある。だから絶対に見なきゃアカンのです。
わたしでいうと、ちょうど2012年の冬くらいに、今でも好きですが当時の推しメンだった島崎遥香さん、ぱるるがちょうど売り出し時期で。あるバラエティ番組で、ぱるるの推し企画があったんです。そのための単独ライブイベントが急なスケジュールで決まって、わたしももちろん行きました。
テレビ主導なので取材が入っているんですが、おたくは普通は取材に映るのを嫌がるんですね。ドルオタがバレたら嫌だとか(笑)。わたしは平気でピースサインとかしまくっていたら、数日後の握手会当日に放送された番組を見た知り合いがツイッターで、「濱野いま映ってたぞw」と(笑)。
その握手会は東京のテレビ局の近くだったんですが、わたしももちろん並んで、島崎さんに「あの番組、俺も映ってたらしいよ〜」なんて話ができたということがありました。彼女はわたしが何を言っているのか分からなかったらしく、?映るわけないじゃんみたいな反応でしたが。何かおかしな人だと思われていたのかもしれませんね。
翌日に今度は札幌で握手会がありまして、私は飛行機のチケットを取っていてわざわざ東京から飛ぶわけですよ。そこまでする人はめったにいないんですが。札幌でまた島崎さんに会って話を聞いたら、今度は握手会での話題がほぼ100%テレビのことだったと。それで「へ~そうなんだ〜良かったね〜」なんて会話ができる!と。
だからそのときはテレビは超必須で、島崎で検索して全部見る!みたいな。レコーダーを買ったのもAKBにハマったからです。大手のアイドルのファンになって、推しメンが出てるから、はテレビから離れていた人がテレビを買う理由になりますね。しかもTV SideViewのようなアプリがあれば、検索でテレビ放送もネットコンテンツも探せる。公演や握手会に遠征中でも自宅のBDレコーダーの番組が見られるのは大きいですね。」
スマホでできることの意味。「テレビ離れ」の正体
「TV SideViewはアプリなので、このテレビの機能がTwitterやネットとつながったスマホのなかにあることが重要だと思います。スマホが普及してますますテレビ離れが、という人もいますが、いわゆる「テレビ離れ」を巡る議論には肯定側と否定側でかなり乖離がある。確かにかつて生活の中心だった時代に比べれば見られなくなったと言われますが、たとえばTwitterで一番の話題は何か?といえばテレビなわけです。
なぜならテレビはリアルタイムのコンテンツで、ソーシャルメディアは基本的にながら見で使えるから。たとえば両手にコントローラを持ってゲームをしていたら、テレビを見ながらと違ってリアルタイムにツイートはできないわけです。だからこそソーシャルを組み込むいろいろな試みがあるのですが。
ネットはともかく、現実でテレビが話題になりにくくなったことはあります。しかしリサーチャーとしてインタビュー調査をしたら、大学生なども実は意外とテレビを見ている。それでは、たとえば学校で友人と話題にしたか?というと、していないという。
ここで何が起きているかというと、見てはいるのだけど、周囲の誰もがテレビを見ていることを前提にしなくなった。特に若者はそれこそ空気を読みますから、自分は見たけれど、誰も見ていなかったらどうしよう、とますますテレビの話題はしなくなる。こうした「想像上のテレビ離れ」が、テレビ関係者の主張以上にテレビ離れが言われる正体のひとつですね。
こうした意識のうえでのテレビ離れを抑制するという意味でも、ネットにつながったスマホとテレビはまだまだ可能性がある。TV SideViewのモバイル試聴のように、ネットでリアルタイムに話題になった番組を、どこにいても直接スマホで見られるというのは分かりやすい例です。
各世代の「ながら見」の実態についても調べたことがあるんですが、リモコンの普及で生まれた「ザッピング」という視聴スタイル、最近は言葉自体あまり聞かなくなりましたが、これが明らかに減っている。なぜならいまは常にスマホを持っていて、テレビがつまらなければわざわざチャンネルを変えて番組を探すよりも、そのまま手元のスマホを見ているんです。