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「これから起きるのは、モーツァルトの頃のような中世のシステム」☆Taku Takahashiが見つめる音楽のイノベーションとは? : ギズモード・ジャパン

「これから起きるのは、モーツァルトの頃のような中世のシステム」☆Taku Takahashiが見つめる音楽のイノベーションとは?

2015.06.29 21:00
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Apple MusicにAWA、LINE MUSIC、そして日本での展開が待たれるSpotify……世界の音楽事情は、いよいよサブスクリプションへ!となるのは間違いなさそうです。

そんなさまざまな音楽サブスクリプションサービスが立ち上がる中で、ほかとはちょっと違っているものがあります。それが「block.fm」。

block.fmは、世界中のシーンを担うDJたちがラジオプログラムを持つクラブミュージック専門のストリーミングサービス。ラジオ番組のほかにも、音楽ニュースやチケット情報なんかも配信されています。これまではインターネットラジオ局としてweb上で展開していましたが、このたびiOSアプリをリリースしたんです。


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block.fmを主宰するのはm-floでもおなじみの☆Taku Takahashiさん(画像右 以下、Takuさん)。日本のクラブシーンを引っ張り続けるDJ・プロデューサーであり、実はかなりのギークでもあるんです。


そして今回はアプリ開発に携わったCROSS BORDERSのクリエイティブディレクター前原孝寛さん(画像左)にもお話を伺いました。

「block.fm」の何が新しいのか? そして音楽業界にさまざまなイノベーションを起こしてきたビジョナリー(未来を見る人)である、Takuさんの考えるこれからのテクノロジーって?


「コース料理」を楽しめるチャンネル block.fm


Takuさんがアプリの重要性を感じたのは、block.fmのアクセスデータを見た3年ほど前のこと。スマホユーザーが圧倒的に増えてきているのを感じたのだそうです。

「スマホでインターネットができて、メールができて、電話ができて、音楽も聞ける。いまやスマホはみんなのライフスタイルのセントラルコンポーネント、僕らの若いころのステレオコンポでもあるし、カメラでもある。私生活における贅沢品から必需品に変わったわけです」(Takuさん)

アプリを開発するにあたり、お二人が重要だと考えたのが、「ユーザーがいかに快適に使えるか」。アプリをサクッと入れてサクッと聴ける、まさに今流行りのサブスクリプションサービスのようなこと。しかしこのサブスクリプションサービス“繁忙期”でのリリースに他意はないとTakuさんは言います。

「iTunesでは音楽をダウンロードして買うのが主流でした。それが今や世界的なトレンドとして“サブスクリプションシステム”がどんどん高まってきた。でもこの時期を狙っていたわけじゃなくて、この時期になってしまったというのが実情です」

前原さんも「たまたまAWA、LINE MUSICより少し早く出ただけで、皆さん考えてるのは同じことなんだな」と思ったそうです。


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block.fmアプリ


出揃いつつある日本の音楽サブスクリプションサービスですが、「提供する商品やサービスの数ではなく、利用期間に対して対価を支払う方式のこと」なので、好きな音楽がたくさんあるとこに入ればいいんでないの?と思うかもしれません。しかし、block.fmは何かが違う! Takuさんがその違いを語ります。

「日本の洗練されているものの中でDJという存在はすごく大きい。日本のDJの中には2000万円のギャラで1時間回すようなスーパースターはいないかもしれない。だけど海外のDJと接すると、『日本のDJの技術や選曲センスは、ローカルDJに至るまでレベルが高い』と言うんです。block.fmは始めた当初から、日本のトップDJ、選曲の技術が素晴らしい人たちが集まっています。初めて聞く曲でも、こうやって聞いたら心地いいよ、と提案するプロフェッショナルが集まっている。どちらかというと音楽を自由に聴けるアプリじゃないかもしれないけれど、これは新しい音楽との出会いを促進させるアプリなんじゃないかと思ってるんです」

Takuさんの言葉を受けて、前原さんがblock.fmの特徴について続けます。

「たくさん素材を並べているから自由に食べてということじゃなくて、蓋を開けたらたくさんの美味しい料理が待っている状態。たくさんのシェフ(DJ)がたくさんのコース料理を用意している。ほかのストリーミングサービスは競合ではなくて、block.fmで聞いて気に入った曲があれば、ほかのサービスでお気に入り登録をしてもらって何回も聞くとか、買うとか、そういう流れになってもいいと思うんです」


音楽は人の感情を変える


「日本でのストリーミングサービスがどういうふうに成功するか、その中で僕らのサービスがどういうふうにみんなのライフスタイルに入り込んでいくか……それはわかりません。ただ大事なのは、みんなが音楽と出会うこと。音楽を作っている人の生活のプラスになること。そしてDJたちの表現を見せられること。音楽って1曲で人の感情を変えることができますが、でも例えば曲Aの前に曲Bが入ることで、Aはぜんぜん違う聞こえ方をするんです。曲の混ぜ方や順番を変えることで1曲だけじゃなくて、いろんな曲をストーリーとして聞いてもらう。そして自分たちの好みのシチュエーションで流してもらえたらうれしい」(Takuさん)

block.fmは、そんじょそこらの音楽サービスとは違う気がします。何か新しい発見があるような、音楽の本来の楽しみ方ができるような。

「僕らが若いころは、クラブミュージック専門雑誌が元気だった。だけど日本の不景気とともにそういった特殊な情報が入っているものが雑誌として経営できなくなっていきました。ウェブでは今も続いていますが、全部が全部バラバラなんですよね。本屋さんに行ったら、音楽専門誌は音楽コーナーに集まっているじゃないですか? だからクラブ関連の情報を1カ所に集めたウェブの本棚みたいになりたいな、と思うんです」(Takuさん)

インターネットラジオ局として始まったblock.fmですが、前原さんも同じように「ウェブ上でバラバラになっている音楽ニュースのキュレーションをして、情報にもっと触れる機会を増やしたい」と考えているそうで、キュレーションメディアのような存在とも言えそうです。

「自分が面白いもの、自分がカッコいいと思うもの、自分が感動したもの……そういった自分になんらかの感情をもたらしてくれたものをみんなとシェアしたいし、それに楽しいじゃないですか? そういうのってすごくライフスタイルの中で楽しい時間なんですよね」(Takuさん)


イノベーション=「いかに必要なものを提示できるか」


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ところでTakuさんの考える「イノベーション」とはどういうものでしょうか? Takuさんは、それは発明だけに限らないと言います。
 
「一部に発明もあるけれど、要はその人にとって必要とされる何かを提示できることなんじゃないかなと考えています。新しいものを提案するのもアリだし、昔あったものを掘り起こすこともイノベーションなんじゃないか。仕組みがどうこうというより、その人のライフスタイルとって、いかに必要であるものを提示するか。それがイノベーションなんだと感じています。DJミックスのようにこの曲とこの曲を混ぜること、それもイノベーションかもしれない

DJミックス=イノベーション、これはTakuさんにしかない発想だと思います。さらにイノベーションについてTakuさんが続けます。

「モノの進化の仕方は、今の世界に生きていると刺激的なことが起こりすぎるから当たり前に感じるけど、ものすごいスピードで変わっている。技術の発展とともに新しい道徳が生まれるし、それと同時に、AIのように作って初めて、“これは人権ってどうなるの?”って考えが出てくるものもある。発明とともに、イノベーションとともに、新しい道徳が生まれてくる、そういうところがありますよね」

そういう意味で考えると音楽は進んでいる気がしました。ジェネレーティヴ・ミュージック(音楽を自動生成する試み)は随分前からあるし、著作権の考え方も常に進化している。今世の中が直面している問題は、音楽の分野ではズーッと前から存在しているような気がしますよね、Takuさん?

「これから起きるのは、モーツァルトのころのような中世のシステムかもしれません。パトロン、つまりあしながおじさんのような人がいて……そんなシステムがメインストリームになる。クラウドファウンディングって、つまりそういうことですよね? デジタルになってスピード感が変わってきているけど、やっていることは中世期の画家や作曲家を援助してきたシステムに近い。レコード会社のあり方がそういうふうに変わってきている。ミュージシャンにとって暮らしていけるかどうかを考えると、これはイノベーションになりますね」


block.fmは現代のインフラ


スマホやカメラが進化し続ける時代は終わりに近づいていて、だんだんと進化がインフラにシフトしている。これから、人の暮らし、エネルギー、ユーティリティ、音楽を聞く環境、そういうものがフォーカスされていくのは明白です。block.fmもアーティストの生活を変えるようなイノベーションを起こしています。最後にお二人は、このインフラ時代をどう考えているのでしょうか? 前原さんが語ります。

音楽って目には見えないじゃないですか、そもそもインフラなんです。水道、ガス、電気と一緒。音楽好きですって言わない人でも、無音の空間では発狂すると思うんです。そういう意味では音楽ってインフラなものだと思っています。アプリ制作をしていて思ったんです。何を作っているんだろう? そこで、僕は電気とか水道の工事屋さんだと思ったら、ストンと腑に落ちたんです。水道や電気がない時代、それを作ることによって便利になった。同じようにクラブミュージックをどこでも聞けるようにしたら便利になる」

Takuさんもインフラについてこう続けます。

「AppleもWindowsも使いますが、Appleがすごいなって思ったのは、インテルのCPUに変えたとき(Intel Mac:2005年のWWDCで、これまで採用しなかった高性能のインテル製CPUをMac製品に搭載することを発表。大きな衝撃を与えた)。どうしてもiPodのほうが目立ってしまうけど、実はこれもAppleにおけるイノベーションだと思う。今必要なものは何か、それを見ているときがイノベーションだと思うんです。

インフラに関して、こうなったら便利になるというアイディアはあるけど、技術がまだそこまでない……やりたいこと、技術、コスト、それが合う時期と合わない時期がある。例えば、Apple Watchみたいなものからディスプレイがなくなって、パッと空中に情報を表示できたら便利かもしれない。でもコスト的に今はできない。将来的にはそうなるかもしれないけれど。必ずそういう時期は来る。今は、持っている技術でできることをより快適にする、そういうことが求められているタイミング。

今はデバイスが過渡期でつらい時期ですよね? ユーザーは新しいものを出してくれっていうけど、んじゃ飛べばいいわけ?と(笑)。だからこそ今インフラを気にするのは大事なことで、それに価値を感じるべきだと思う。あと、すごく速いCPUを持ったゲーム機でもろくなゲームがなかったらどうしようもない。筐体よりもコンテンツを重視するタイミングに来ているのではないかと」

block.fmを使うことで、我々のライフスタイルがちょっぴり豊かになります。でもそれって、今後来るべき大きなインフラ革命の前触れかもしれませんよ。Takuさんと前原さんの話を聞いて少しだけ先の未来が見えてきた、そんな気がしました。


source: block.fm

(ホシデトモタカ)

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