転載元:ゲンドウ「お前がエヴァ初号機になれ」シンジ「できるわけないよ!」
ネルフ本部 格納庫
シンジ「ここは……」
ミサト「ここはエヴァンゲリオンの格納庫。……になるはずだった場所よ」
シンジ「なるはずだった?」
リツコ「ええ。色々と事情があってね。不要な場所になってしまっているの」
シンジ「そうなんですか」
ゲンドウ「――久しぶりだな、シンジ」
シンジ「父さん……。僕に話って……なに……?」
ゲンドウ「お前をここに呼んだ理由は一つだ。シンジ、お前がエヴァ初号機になれ」
シンジ「え……どういうこと……?」
ゲンドウ「お前がエヴァ初号機になるんだ」
シンジ「なるって……どういうこと……?」
ゲンドウ「なるなら早くしろ。でなければ、帰れ!」
シンジ「ちょっと待ってよ!! 意味が分からないよ!! 父さん!!! 説明してよ!! エヴァになるってなに!?」
ミサト「まぁ、そうよね。シンジくん、モニターを見て。説明するわ」ピッ
・【R-18】兄「女装してたら弟に告白された」【胸糞注意】
・男「俺のち○こはこの世で最も強い」
・ヴォルデモート「ポッターを倒して俺様が勝った」
・魔法使い「勇者さんは、私の命の恩人ですから」勇者「いいえ」
・【閲覧注意】貞子「俺!!お前の事好きだぜ!!ビデオ見てくれたから!!」
レイ『あれが敵。倒すべき、敵』
サキエル『……』ガオー
シンジ「この映像はなんですか?」
リツコ「5時間前の戦闘記録よ」
シンジ「このおかしな格好をした女の子は……?」
ミサト「おかしな格好ではないわ。この子はエヴァンゲリオン零号機、綾波レイよ」
シンジ「もう1人、コスプレしている人がいますけど」
ミサト「奇怪な格好、じゃなくて、奇怪な容姿をしているのは使徒と呼ばれる人類の敵」
シンジ「あれが、使徒……なんですか? あの、使徒ってもっと大きかったような……」
リツコ「そう。本来なら全長15メートル以上はあるはずの巨大生物だとされていたわ。けれど、実際は人間と変わらないサイズだった」
シンジ「それで……?」
ミサト「そんなに小さな使徒を相手にするだけならこちらが巨大な兵器を使うまでもないってことで予算を大幅カットされちゃったのよ」
リツコ「エヴァの開発は完全に頓挫。初号機を動かすどころか、ネルフスタッフも大勢辞めてもらったわ」
シンジ「そ、そんなことが……」
ミサト「だけど、使徒はこうして人類に牙を剥いている。あたしたちは使徒と戦わないといけないの。そうエヴァがなくてもね」
レイ『零号機、目標と接触します』
サキエル『……』ガオー
レイ『ふっ』バキッ
サキエル『……』イテッ
シンジ「あんな女の子が素手で……。腕も細いし……危ないんじゃあ……」
ミサト「この零号機は殆ど生身での戦闘訓練はしていなかったわ」
シンジ「この子はどうなったんですか!?」
ゲンドウ「シンジ、そんなことはどうでもいい。早く決めろ。初号機になるのか、ならないのか」
シンジ「……そんなのいきなりいわれたって、無理だよ。できるわけないじゃないか。突然、こんなところに呼び出されて、わけもわからないし」
ゲンドウ「お前にしかできないことだ。故にここへ呼んだ」
シンジ「それだけなの? 何か、他にも……」
ゲンドウ「ない。早く答えろ、シンジ。我々に時間はない」
シンジ「そんなの……そんなの……」
ミサト「なりなさい、シンジくん」
リツコ「碇シンジくん、エヴァになって」
レイ『んっ』パシンッ
サキエル『……』イタイッ
ゲンドウ「お前がエヴァ初号機になれ」
シンジ「できるわけないよ!! 勝手なことばかりいわないでよ!!! いきなり言われたってできるわけないじゃないか!!!」
ゲンドウ「……」
『碇司令! 使徒が本部に接近してきています!!』
ゲンドウ「初号機は使えなくなった。零号機を出せ」
リツコ「しかし、レイはまだ……」
ゲンドウ「構わん。まだ使える」
リツコ「……わかりました。ミサト」
ミサト「わかったわ」
シンジ「そんなの……できるわけ……」
レイ「はぁ……はぁ……」
ミサト「レイ。やれる?」
シンジ「あの子は……!?」
レイ『パレットライフルを使います』バララララッ!!!!
サキエル『……』イタタタッ
シンジ「……」
レイ「まだ……たたかえ……ます……」
ミサト「レイの状態は?」
リツコ「見たままよ。完治までは数週間かかるわね」
ミサト「この状態で戦わせても……」
リツコ「でも、戦わなければ私たちは死ぬ」
ミサト「……レイ、大丈夫ね?」
レイ「は、い……ぐっ……」
レイ『プログレッシブ・ナイフで』シャキン
サキエル『……』ヒィー
レイ「はぁ……はぁ……うっ……」
シンジ(この子、どこでこんな大怪我をしたんだろう)
サキエル『……』ダダダダッ
レイ『使徒が逃走。後を追います』
マヤ『零号機、気をつけてください! その先はまだ道路の修復作業が終わっていません!! 足を踏み外すと大変なことに――』
レイ『あっ』
ミサト『レイ!? どうしたの!! レイ!! 応答して!!』
ゲンドウ『レイ! 何があった!!』
リツコ『零号機の状態は!?』
マヤ『肘と膝を損傷!!』
ミサト「……」ピッ
シンジ「どうして戦闘記録を最後まで見せてくれないんですか」
ミサト「この後、レイは隙をつかれて使徒に襲われた……。そして、この状態よ」
レイ「うぅ……ぐっ……」
シンジ「……」
レイ「あ……んっ……わたし……が……たたかい、ます……」
シンジ「逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……」
シンジ「僕がなります!! 初号機になります!!」
ゲンドウ「そうか。赤木博士、初号機のパーツを」
リツコ「はい。シンジくん、これを装着して」
シンジ「これは……?」
リツコ「初号機に使うはずだったパーツで作った、そうね鎧だと思ってくれていいわ」
ミサト「デザインはエヴァ初号機を元にしているだけだから、気にしないで。これがあなたを守ってくれるはずよ」
シンジ「わかりました」カチャカチャ
リツコ「手首をスイッチを押してみて」
シンジ「ここですか?」ピッ
シンジ「これは……」
ミサト「A.T.フィールドよ。それで身を守りなさい」
シンジ「は、はい」
リツコ「では、向こうにアレに乗って」
シンジ「ここですか?」
ミサト「ありがとう、シンジくん。――エヴァンゲリオン初号機、リフト・オフ!!!」
市街
サキエル「……」ガオー
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
サキエル「……」
シンジ「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」ガクンッ!!!!
マヤ『初号機、リフト・オフ完了しました!!』
シンジ「し、死ぬかと……思った……」
ミサト『本来は初号機を市街地に上げるための装置だから。生身の人間にとってはちょっちスリルがあったでしょ』
シンジ「そういうことは最初に……」
サキエル「……」
マヤ『初号機!! 使徒との距離、100メートルです!!』
シンジ「あれが……使徒……」
サキエル「……」ガオー
リツコ『まずは歩くことだけを考えて。リフト・オフの影響で膝が笑っているわよ』
シンジ「え……そんなこと……あ、本当だ……足が震えて……」ガクガク
サキエル「……」ガオー
マヤ『使徒、接近!! 距離、80メートル!! 79、78、77……どんどん近づいています!!』
ミサト『シンジくん!! まずは歩いて!!』
シンジ「そんなこと言われても……」
シンジ「うわっ!」ドテッ
マヤ『初号機、転倒!! 膝を損傷!!』
シンジ「すりむいた……」
ミサト『あちゃぁ……。やっぱりダメか』
冬月『勝てるか』
ゲンドウ『勝ってもらわなければ、人類に先はない』
シンジ「いたいよ……」
サキエル「……」ガオー
マヤ『使徒、更に接近!! その距離、50メートル!!!」
ミサト「急いでシンジくん!!」
シンジ「で、でも……初号機のパーツが重くて……くっ……」
サキエル「……」ガオー
シンジ「あ……」
マヤ『使徒、初号機に接触!!』
ミサト『シンジくん!!!』
サキエル「……」ガシッ
シンジ「ぐっ……」
サキエル「……」ペチペチッ
シンジ「うあ!?」
サキエル「……」ペチペチッ
シンジ「うごっ……!?」
マヤ『左右の頬にダメージ!!』
ミサト『シンジくん、逃げて!!』
シンジ「にげろって言われても……」
サキエル「……」ペチンッ
シンジ「ぐあ!!」
サキエル「……」ブンッ
シンジ「うわぁぁぁぁぁああ!!!」ズサァァァ
マヤ『初号機、投げ飛ばされました!! その距離、1メートル!!』
リツコ『やはりダメか』
ミサト『作戦を中止!! 初号機の回収を急いで!!』
ゲンドウ『やめろ』
ミサト『しかし!!』
ゲンドウ『ここで初号機を回収すれば、終わりだ』
ミサト『くっ……』
シンジ「もうやだよ!! 父さん!! 助けてよ!! 父さん!!!」
サキエル「……」
シンジ「ひっ……」
リツコ『まずい!』
ミサト『シンジくん!!』
ゲンドウ『……』
ネルフ本部
サキエル『……』パシンッ!!!
シンジ『う……ぉ……!!』
マヤ「初号機、活動限界です!!」
ミサト「ダメだったのね。ごめんなさい、シンジくん」
リツコ「せめて、弐号機が間に合っていれば……」
マヤ「そんな……」
冬月「人類の最後とはあっけないものだな」
ゲンドウ「……」
ミサト「シンジくんは?」
マヤ「生きています。しかし、気を失って――』
シンジ『――どうしてだよ』
ミサト「え……」
シンジ『どうしていつも父さんは助けてくれないんだよ……おかしいよ……僕は……いつも1人で……1人ぼっちで……』
マヤ「初号機、再起動!!」
シンジ『遠足のお弁当だって僕が作って……参観日なんてきてくれたこともなくて……電話したっていつも留守番電話で……』
シンジ『会いたいっていうからきたのに……わけのわからないやつに殴られて……投げ飛ばされて……なんだよ、これ……なんなんだよ……』
マヤ「初号機に異常なエネルギー反応が!!」
ミサト「まさか!」
リツコ「暴走!?」
シンジ『うわぁぁああああああああ!!!!!』
サキエル『……』ビクッ
冬月「勝ったな」
ゲンドウ「ああ」
シンジ『どうして!!! どうして!!! どうして!!! どうして!!! どうして!!! どうして!!!』バキッドゴッベキッ
サキエル『……』イヤー
シンジ『どうしてだよ!!! どうしていつも父さんはそうなんだよ!!! うわぁぁああああああ!!!!!』
マヤ「酷い……」
ミサト「シンジくんがどういう生き方をしてきたのか、よくわかるわね」
ゲンドウ「……」
病室
シンジ「はっ……」
シンジ「……」
シンジ「知らない天井だ。僕はどうなったんだろう……」
レイ「気が付いた?」
シンジ「……君は」
レイ「エヴァ初号機、碇シンジにこれからの予定を伝えます」
シンジ「……」
レイ「明日、1000時にブリーフィングルームへ移動。その後、トレーニングルームでエヴァ零号機、綾波レイとの戦闘訓練。以上」
シンジ「怪我はもういいの?」
レイ「いいの」
シンジ「そうなんだ……」
レイ「それじゃ、またくるから」
シンジ「あ、うん」
シンジ「……手から血の臭いがする。どうしてだろう」
使徒かわいい
市街
ミサト「使徒は結局どうなったの?」
リツコ「分からないわ。まだ市街地に潜んでいるのか。それとももう第三新東京市にはいないかもしれないわ」
ミサト「逃がしたのは痛いわね」
リツコ「まさか、あれだけの傷を負いながら動けるなんてね。ありえないわ」
ミサト「まぁ、またその内顔を出すでしょうけど」
マヤ「あの、シンジくんの意識が戻りました」
ミサト「ホント、ありがとう。すぐに戻るわ。リツコ、あとのことはよろしくね」
リツコ「シンジくんに説明できるの?」
ミサト「それがあたしの仕事っ」
リツコ「……誰がどう説明したところで、彼の気持ちを動かせるかは疑問ね」
ミサト「……」
リツコ「もう一度、なってくれるかしら」
ミサト「なんとかなるって。ならないと、困るもの」
リツコ「大人のエゴね」
病室
ミサト「やっほー、シンジくん」
シンジ「ミサトさん……。どうも」
ミサト「良かったわ。1日以上、目を覚まさないから心配しちゃった」
シンジ「そうなんですか。僕はどうなったんですか?」
ミサト「貴方は初号機になって使徒を撃退した。それが全てよ」
シンジ「どうやって? 僕、何も覚えていなくて」
ミサト「かっこよかったわよぉ。いきなりカウンターパンチきめて、そこからシャイニングウィザードを――」
シンジ「……」
ミサト「とにかく、シンジくんは人類を守ったの。ありがとう」
シンジ「実感が全然ありません」
ミサト「いーじゃない。周囲のみんなは感謝してるんだから。素直に感謝されなさい」
シンジ「はい」
ミサト「で、これからのことなんだけど」
シンジ「これから、ですか?」
シンジ「綾波って子にいわれました。もう戦闘訓練が始まるんですよね」
ミサト「え? そんな話、私は……」
シンジ「僕の居場所はここにしかないみたいですから。僕はエヴァになります」
ミサト「いいの?」
シンジ「はい。構いません」
ミサト「そう……。それじゃあ、貴方の部屋を用意しなきゃいけないわね」
シンジ「すみません」
ミサト「こっちの仕事だから、気にしないで。本部で寝泊りするのが一番だけど……」
シンジ「……」
ミサト「そーだ、あたしの家にこない?」
シンジ「ミサトさんの……?」
ミサト「うん。それがいいかもね。それでいい?」
シンジ「あ、はい。僕はどこでも」
ミサト「ふふーん。ありがとっ。それじゃ手続きしてくるわ」テテテッ
シンジ「……とれないや、血の臭い」
市街 某所
サキエル「……」
「戻ってきたんだね。サキエル」
サキエル「……」ビクッ
「何故、ここにいるのかって顔をしているね」
サキエル「……」ウルウル
「僕は落ちた天使の最後を見届けるためにやってきたのさ」
サキエル「……」フルフル
「落ちた者を拾うほど、この世界は優しくないんだ」
サキエル「……」イヤイヤ
「君はもう舞台には上がれない。残念だったね」
サキエル「……」イヤァー
「君は負けたんだ。闘争と言う名の魔物にね」
サキエル「……」ヒィー
「終幕にしよう、サキエル」
サキエルたそ…
翌日 ネルフ本部 トレーニングルーム
レイ「ふっ」
シンジ「うわぁ!?」
レイ「んっ」
シンジ「ちょ、ちょっと待ってよ、綾波!!」
レイ「なに?」
シンジ「そのもう少し、手加減を……。綾波の動きがはやくて……」
レイ「貴方は死なないわ。ヘッドギアがあるもの」
シンジ「そういうことじゃなくて」
レイ「ふっ」
シンジ「ぐっ……!!」
リツコ「よくもう一度なってくれる気になったわね」
ミサト「思うところがあるんでしょう、きっと」
リツコ「それと、シンジくんと一緒に住むという件だけれど。おかしなことしないでよ」
ミサト「だから、昨日のは冗談でいっただけだってばぁ。中学生に手を出すわけないでしょうが」
シンジ「センターにいれて、スイッチ……」カチッ
レイ「そう。それだけで的には当たるわ」
シンジ「センターにいれて、スイッチ……センターにいれて、スイッチ……センターにいれて、スイッチ……」
レイ「それでいいわ」
シンジ「綾波……。一つ、いいかな?」
レイ「なに?」
シンジ「ミサトさんが綾波は生身での戦闘訓練をしたことがないって言ってたんだ。でも、なんだか慣れているみたい……」
レイ「気のせい」
シンジ「そうなんだ」
レイ「そう」
リツコ「自棄になっていなければいいけど」
ミサト「心配ないって。あたしがいるんだから」
リツコ「……そういえば、シンジくんも学校に通わせるらしいわね」
ミサト「できるだけ普通の生活をしてほしいのよ。シンジくんにはね」
リツコ「そう」
レイ「ふっ」
シンジ「くっ」ガッ
レイ「あ……」
シンジ「……初めて、綾波の攻撃をまともに受けられた」
レイ「碇くん、流石ね」
シンジ「綾波の教え方が上手かったからだよ」
レイ「そろそろ時間。終わりましょう」
シンジ「あぁ、うん」
ミサト「おつかれさまー。喉乾いたでしょ」ポイッ
シンジ「あ、ありがとうございます」
ミサト「どう。レイとは仲良くできそう?」
シンジ「わかりません……。でも、嫌な感じはしません」
ミサト「その調子で明日からの学園生活も満喫してきなさい」
シンジ「あ、はい……」
ミサト「ふふっ。それじゃ、帰りましょ。我が家へ」
学校
トウジ「すまんなぁ、転校生。ワイはお前をなぐらなあかん」
シンジ「な、なに、いきなり……」
トウジ「ウラァ!!」
シンジ「……」ガッ
トウジ「な、なにぃ?」
ケンスケ「トウジのパンチを受けた……」
シンジ「どうして、いきなり……。僕は何もしてないのに……」
トウジ「お前の所為で……お前の……」
ケンスケ「この前の戦闘でトウジの妹がね」
シンジ「え……?」
トウジ「お前がごっつ怖い顔で使徒をボッコボコにしてるところを妹が見てもうてな、それでおねしょが再発したんや。妹は毎日、毎日、枕とシーツをぬらしとる」
シンジ「そんなの関係ないじゃないか……僕だって戦いたくて……戦ってるわけじゃないのに……」
トウジ「……!」ドゴォッ
シンジ「ぐぁ……!」
シンジ「何やってるんだろう……人に殴られてまで……」
レイ「碇くん」
シンジ「綾波……?」
レイ「非常招集。先、行くから」
シンジ「……また、戦わないといけないんだ」
シンジ「どうして他人に殴られてまで……僕は戦わないといけないんだろう……」
レイ「碇くん」
シンジ「まだいたの?」
レイ「最初の防御は悪くなかったわ」
シンジ「……」
レイ「でも、その次は油断していたわね」
シンジ「ごめん……」
レイ「気をつけて」
シンジ「……」
シンジ(綾波って、不思議な子だな……)
ネルフ本部
マヤ「パターン青! 使徒です!」
ミサト「モニター」
マヤ「はい!」
シャムシエル『……』ニョロニョロ
サキエル『……』
ミサト「使徒が二体も……!!」
リツコ「心配はないわ。こちらもエヴァを二体保有しているもの」
ゲンドウ「ああ。問題ない」
ミサト「とはいっても、シンジくんはまだ戦闘も不慣れだし……」
冬月「しかし、零号機だけでは危険だろう」
ミサト「そうですが」
マヤ「碇シンジ、綾波レイ。ネルフ本部に到着しました」
ゲンドウ「ただちに二人を出撃させろ」
ミサト「了解」
市街地
シンジ「目標をセンターにいれて、スイッチ……目標をセンターにいれて、スイッチ……」
レイ「……」
ミサト『二人とも、聞こえる?』
シンジ「はい」
レイ「問題ありません」
ミサト『使徒はその路地を真っ直ぐ進んでいるわ。あと数十秒で接触するはずよ』
レイ「了解」
ミサト『がんばってね』
シンジ「……はい」
マヤ『使徒との距離、50メートル。40……30……20……10……』
ミサト『今よ!!』
シンジ「目標をセンターに入れて……。スイッチ!!」カチッ
サキエル「……!?」ビクッ
シャムシエル「……」ニョロニョロ
シンジ「うわぁぁああああ!!!」ズガガガガガガッ
レイ「碇くん、それだと粉塵で相手が見えないわ」
シンジ「ああぁあああぁああ!!!!」ズガガガガガ
レイ「……よけてっ」
シンジ「え……!」
シャムシエル「……」シュンッ
シンジ「うわっ!?」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
シンジ「くっ……! あぁぁああああ!!!」
シャムシエル「……」パシンッ
シンジ「ぐあ!?」
ミサト『シンジくん!! レイ、援護を!!』
レイ「無理です。使徒に捕縛されました」
サキエル「……」ギュゥゥ
ミサト『なんですって!?』
シンジ「はぁ……はぁ……はぁ……」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ミサト『シンジくん、退却よ!!』
シンジ「はぁ……はぁ……はぁ……!!」
シャムシエル「……」
シンジ「うわぁぁあああ!!!」ダダダダッ
シャムシエル「……」テテテッ
マヤ『初号機、戦線離脱!! 使徒、エヴァ初号機を追撃しています!!』
ミサト『レイは!?』
レイ「離れて」ググッ
サキエル「……」ギュゥゥ
リツコ『無理そうね』
ミサト『仕方ない! シンジくん!! その路地を右に曲がって!!』
シンジ「は、はい!!」
ミサト『それでいいわ! こちらで最適のルートを教えるから、指示通りに移動して!!』
学校
ケンスケ「やっぱり、あれは言いがかりにもほどがあるんじゃないか」
トウジ「うっさいわい。サクラがあの転校生のせいでイジメにあったらどう落とし前つける気や」
ケンスケ「そうはいっても、向こうは向こうで命がけで戦ってるわけなんだしさ、ああいうやりかたはどうかと思う」
トウジ「ふんっ」
ヒカリ「鈴原っ」
トウジ「なんや。いいんちょかいな」
ヒカリ「聞いたわよ。碇くんに酷いことしたんでしょ。ちゃんと謝ったの?」
トウジ「ワイはなんも悪いことはしてへん。ほっとけ」
ケンスケ「その碇を理不尽な理由で殴ったんだ」
ヒカリ「どうしてそんなことするの!? 碇くんが学校にこなくなったら、鈴原はどう責任をとるつもりなのよ!!」
トウジ「あの程度で心が折れるなら、使徒とは戦われへんなぁ」
ヒカリ「な……!!」
ケンスケ「流石にそれは――」
シンジ「こっちですね!! って、ここは学校じゃないか!! 学校でいいんですか、ミサトさん!!」
トウジ「転校生!? なにしてんねん!!」
シンジ「君は!!」
ケンスケ「謝るチャンスだ」
ヒカリ「ちゃんと謝って」
トウジ「なんでワイが――」
シンジ「くっ……!!」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ヒカリ「きゃぁ!?」
ケンスケ「まさか、使徒!? こんな近くで見ることができるなんて!!」
トウジ「これが使徒かいな……」
ミサト『シンジくん、そのまま校舎の中へ逃げなさい!』
シンジ「でも、僕の後ろに、その、クラスメイトがいるんです」
ミサト『ちっ。まだ帰ってなかったのね』
マヤ『シンジくんとレイには非常招集をかけたので一般生徒はやっと午後の授業が終わったところですね』
リツコ『他の生徒は関係ないわ。そのまま逃げなさい』
シンジ「で、でも……」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ヒカリ「い、いや……」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ミサト『シンジくん! 周囲の生徒の安全を最優先!!』
リツコ『何を言っているの、ミサト! 今、初号機を失うわけにはいかないのよ!?』
ミサト『守りなさい! それが貴方の役目よ!!』
シンジ「僕は……」
シャムシエル「……」シュッ
ヒカリ「え――」
トウジ「あかんっ!!」
シンジ「ぐっ……ぅ……」パシッ
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ヒカリ「いか、り、くん……」
ケンスケ「触手から、委員長を守った……」
シャムシエル「……」ジュゥゥ
シンジ「あぁああぁああああああ……!!!!」
マヤ『両手を損傷!!! 使徒の触手によるダメージです!!』
トウジ「転校、せい……」
ヒカリ「やめて! やめて!!」
シンジ「このぉぉぉ!!!」グイッ
シャムシエル「……」ズサァァァ
マヤ『使徒、転倒!!』
シンジ「もう帰って!! 帰ってよ!! 帰ってよぉぉぉ!!!」ゲシッゲシッ
シャムシエル「……」イタッイタッ
シンジ「僕は守らなきゃいけないんだ!!! 知らない人も!! 嫌いな人も!!! みんなを守らなきゃいけないんだ!!! 君たちが現れるから!!!」ゲシッゲシッ
マヤ『初号機、使徒に対して執拗に蹴りを浴びせています!!」
シンジ「かえってよぉ!!!」ドガッ
シャムシエル「……」テテテッ
マヤ『使徒、逃げ出しました!!』
シンジ「はぁ……はぁ……はぁ……」
トウジ「転校生……」
ヒカリ「……」
ケンスケ「あの、碇?」
シンジ「はぁ……はぁ……」
ケンスケ「大丈夫か?」
シンジ「はぁ……はぁ……」
ミサト『よくやったわ、シンジくん。戻ってきて』
シンジ「あや、なみは……?」
レイ『私は無傷だけれど、使徒には逃げられたわ』
シンジ「そう……よかった……。今から、戻ります」
ミサト『待ってるわ』
シンジ「帰ろう……」
トウジ「転校生。その……あー……」
シンジ「……僕は与えられた任務をこなしただけだから、気にしないで」
シンジが普通の運動能力しかないからシュール過ぎるwww
ヒカリ「碇くん、本当にありがとう!」
ケンスケ「助かったよ」
シンジ「それじゃ、僕は戻るから」
トウジ「ま、またんかい」
シンジ「……」
トウジ「礼は言わんぞ。それがお前の仕事なんやろ」
シンジ「……」
ヒカリ「ちょっと!」
トウジ「ほら、ここ。ワシを一発どつかんかい。それで貸し一つでええやろ」
シンジ「どうして?」
トウジ「いいから、なぐらんかい!! ワシの気がおさまらんのや!!」
ケンスケ「こういうめんどくさい奴だから、一発殴ってやってよ」
シンジ「それじゃあ……」ドゴォッ!!!
トウジ「ぐっ……うぉ……ぇ……!?」
ヒカリ「鈴原!?」
ネルフ本部
シンジ「ただいま、戻りました」
ミサト「おかえりなさい」
シンジ「……」
リツコ「ミサト、今回の一件は問題よ。貴方の独断で初号機を危険に晒したのだから」
ミサト「わかってるわよぉ。でも、結果的にはグッドでしょ」
リツコ「どうかしら。使徒には逃げられたのだから、バッドかもしれないわよ」
シンジ「すみません。僕が捕まえられたはずの使徒を取り逃がしました」
ミサト「シンジくんは悪くないわ。寧ろ、褒められることをしたのよ。胸をはりなさい」
シンジ「でも、僕はこの手でクラスメイトを殴りました。エヴァ初号機の硬い装甲に守られた手で」
マヤ「あれは向こうから殴って欲しいといってきたからで……」
シンジ「僕も罰を受けます」
ミサト「シンジくん……?」
シンジ「罰を受けますよ。なんでも言ってください」
リツコ「重症ね。とりあえず、少し休んでもらいましょう」
廊下
シンジ「……」
レイ「碇くん。どこにいくの?」
シンジ「謹慎処分だって。12時間だけ」
レイ「そう。一般生徒を殴ったから?」
シンジ「うん」
レイ「どうして殴ったの?」
シンジ「殴ってくれっていったから」
レイ「断れなかったの?」
シンジ「断っても無駄だと思った」
レイ「その場をすぐに離れられなかったの?」
シンジ「無理だよ。きっと、引き止められた」
レイ「自分から問題を起こせば、ここにいなくてもよくなるって思ったの?」
シンジ「なんだよ……それの何がいけないんだ……」
レイ「……」
シンジ「ここに呼ばれていきなり「お前はエヴァンゲリオンだ」なんて父さんに言われて、おかしな奴と戦わされて、逃げたくても逃げれなくて……!!」
シンジ「知らない相手にも恨まれて!! そんなの嫌なんだよ!!」
レイ「なら、逃げれば?」
シンジ「できるわけないよ!! 父さんが許してくれない!!」
レイ「そんなことはないわ」
シンジ「黙れよ!! 綾波は何も知らないだけじゃないか!! 父さんは……あいつは……サイテーの人間なんだ!!」
レイ「……」スッ
シンジ「ふっ!」ガッ
レイ「……」
シンジ「綾波の平手打ちは、もう見切ってるよ」
レイ「……」ドゴォッ!!!
シンジ「ぐ……ぉえ……!?」
レイ「さよなら」
シンジ「膝蹴り……まで……してくるんだね……あや、なみ……」
シンジ(本当に、僕は何をしているんだろう……。女の子にまで喚き散らして……最低なのは僕のほうじゃないか……)
レイTUEEEEEEEEEEE
なんでサキエルにボコボコにされたんだろう、この子
市街 某所
サキエル「……」ヨロヨロ
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「おかえり、二人とも。酷い有様だね」
サキエル・シャムシエル「「……!!」」
「落ちた天使と共にいっても失敗したんだね」
サキエル・シャムシエル「「……」」ガタガタガタ
「悲哀の旋律が、流れてくる。君たちの傷を見ると、そんな錯覚すら抱いてしまう」
サキエル「……!」
「予想外にリリンが強かった? そんな言い訳が通用するほど、運命は君たちに都合よくできていないんだ。悲しいね」
シャムシエル「……」ニョロニョロ!!!
「もういいんだ。哀れな者ほどよく喋るというけれど、本当だった」
サキエル・シャムシエル「「……」」ガタガタガタ
「天使はまた地上へと落ちた。悲しみの連鎖をここで断ち切ろう」
サキエル・シャムシエル「「……」」ガタガタガタ
「怯えなくてもいいんだ。怖がらなくてもいい。さぁ、出ておいで。第5の使者、ラミエル」
ラミエル「……」キャー
サキエル「……!」
「雷を司る天使の名を冠した、この子と共に行くんだ」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「確かに。リリンの手に収まるほどの大きさしかないけれど、それでも君たちよりは良い音を奏でてくれるはずさ」
サキエル「……」
「疑念を抱くのはいいことだよ。いつでも疑念から希望に変わるからね」
サキエル「……?」
「僕が信じられないかい?」
シャムシエル「……」ニョロニョロ!!
「心配はいらない。共にいけば分かるはずだ。ラミエルの本当の力がね」
ラミエル「……」キャー
「行ってくるんだ。そして、必ず……」
ラミエル「……」クルックルクルッ
数日後 葛城宅
ミサト「シンジくん、起きてる?」
シンジ「……」
ミサト「……今日も学校を休んだみたいね」
シンジ「別に行く必要がないと思ったので」
ミサト「明日はちゃんと学校に行きなさい」
シンジ「エヴァにはちゃんとなりますよ。なればいいんでしょ」
ミサト「……」
シンジ「それでいいじゃないですか。どうして学校に行かないといけないんですか。僕はちゃんとエヴァになっていますよ」
シンジ「綾波との戦闘訓練だってきちんとしているじゃないですか。いつもいつも綾波には殴られっぱなしですけど、それでもちゃんとやってるじゃないですか」
シンジ「学校ぐらい、いいじゃないですか」
ミサト「分かったわ。もういい」
シンジ「……」
ミサト「シンジくん。おやすみ」
シンジ「僕は……ちゃんとエヴァになってるじゃないか……」
翌日 ネルフ本部
レイ「ふっ」ドゴォ!!!
シンジ「がはっ……!?」
ミサト「……」
リツコ「お疲れ、ミサト。はい、差し入れ」
ミサト「あら、ありがとう。この缶コーヒー、おいくら?」
リツコ「おごりよ」
ミサト「いただきますっ、赤木はーかせ」
リツコ「それで不登校は治ったの?」
ミサト「ダメね。鈴原くんと顔を合わせたくないみたいで」
リツコ「それでミサトは多感な中学生を放置しているわけね」
ミサト「そういうわけじゃないけど、どう接して良いのかわかんなくて」
リツコ「貴方みたいな人を保護者失格というのよ」
ミサト「ほんとにね。もうすこし上手くできると思ったんだけど」
リツコ「それにしてもレイは手加減をしないのね。シンジくんの治療もそれなりの労力がかかっているのに」
休憩所
レイ「先に帰るから」
シンジ「あぁ……うん……」
レイ「さよなら」
シンジ「……」
レイ「碇くん」
シンジ「帰らないの?」
レイ「これ、新しい座席表。昨日、席替えがあったから」
シンジ「そうなんだ」
レイ「碇くんは私の隣」
シンジ「そうなんだ」
レイ「……」
シンジ「なに?」
レイ「さよなら」
シンジ(綾波の考えていることは全然分からないな……。こんなの貰っても、僕は学校になんていく気がないのに……)
シンジ「僕も帰ろう……」
ミサト「シンジくん」
シンジ「……なんですか」
ミサト「ええと……その……」
シンジ「僕は帰ります」
ミサト「ごめんなさい」
シンジ「……」
ミサト「正直に言うわね。あたし、シンジくんとは上手くやっていく自信がないの。だから、ごめんなさい」
シンジ「それを僕に言うんですか」
ミサト「ええ」
シンジ「そうですか。僕、今日から本部で寝泊りをしたらいいんですか?」
ミサト「ただ、戦ってるときの貴方は、とてもかっこよかったわ」
シンジ「……」
ミサト「そんなシンジくんと一緒に生活ができてよかったと思うし、これからだってあたしは貴方の帰る場所であり続けたい」
シンジ「でも、上手くやっていく自信がないんですよね。ミサトさんは何を言いたいんですか」
ミサト「そう。このままだと上手くやっていく自信がないの。シンジくんの協力がないとね」
シンジ「僕の……?」
ミサト「あたしは貴方の母親になろうとかお姉さんになろうとか、そんな大それたことは考えてないわ」
シンジ「……」
ミサト「だけどね、辛いことがあったら甘えていいし、いつでもこの胸をかしてあげるわ」
シンジ「そんなこと言われても……」
ミサト「本当に逃げ出したいのなら言って。いくらでも手を貸してあげる」
シンジ「嘘だ。そんなの」
ミサト「シンジくんのためなら、ネルフぐらいやめてやるわ。そのときはシンちゃんがあたしを養ってね」
シンジ「本気で言ってますか?」
ミサト「割とね」
シンジ「……」
ミサト「お父さんに言わなくてもいい。1人で抱え込まないで」
シンジ「どうしてそこまで優しくしてくれるんですか?」
ミサト「まぁ、あの……色々……シンジくんには悪いことしたし……」
市街
シンジ(ミサトさん、僕に何を隠しているんだろう……)
トウジ「お!?」
ケンスケ「あ!!」
シンジ「あ……」
トウジ「ま、またんかい!!」
シンジ「な、なに……?」
トウジ「あれから1回も学校こんとなにしてんねん」
ケンスケ「みんな、結構心配してるんだ」
シンジ「ごめん。忙しくて」
トウジ「綾波は毎日きとるのにか」
シンジ「綾波が……」
ケンスケ「あの日のことを気にしているんだろ。もうトウジは忘れたっていってるから、碇も気にしないでくれよ」
トウジ「そうや! 男がウジウジしててもあかん! どっしりとかまえとけ!!」
シンジ「僕にはそんなことできないよ」
トウジ「なんでやねん。あのときのシンジはかっこよかったやんけ」
シンジ「かっこいい?」
トウジ「そうや。サクラもな、もうおねしょはせんようになったし、ワシが助けられたって話をしたら「シンジさんにちゃんとお礼が言いたい」っていっとるぐらいや」
シンジ「そう……」
トウジ「せやから、また学校にきてきれ。ついでにサクラにもあったってくれ」
シンジ「……」
ケンスケ「無理にとは言わない。トウジがあれだけのことをしたんだし」
トウジ「なんやねん!! ちゃんとシンジには殴られたやろ!!」
ケンスケ「そういう問題じゃないんだって」
トウジ「なら、どういうことやねん!! 説明せえや!!」
シンジ「僕はかっこよくなんてないんだ」
トウジ「は? そんなことあらへんって」
シンジ「僕はただ、戦えって言われたから戦ってるだけなんだ。何もかっこよくなんて……」
トウジ「お、おい」
シンジ「それじゃあ……」
公園
シンジ「僕は……僕は……」
キャー!!
シンジ「え?」
ラミエル「……」ヒューン!!!
シンジ「何か飛んでく――」
ラミエル「……」キャー!!
シンジ「うわぁ!?」
ラミエル「……」キャー?
シンジ「な、なんだ、これ……? 胸に飛んできたからよかったけど、頭に当たってたらあぶなかった」
サキエル「……」
シンジ「し、使徒……!?」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
シンジ「ま、まさか、この小さな物体も……」
ラミエル「……」キャー♪
サキエル「……」ガシッ
ラミエル「……」キャー
シンジ「まさか、君がそれを僕に投げてきたの?」
サキエル「……」コクッ
シンジ「どうしてそんなことするんだよ!!」
サキエル「……」シュッ
シンジ「くるっ!!」
ラミエル「……」キャー!
シンジ「この速度なら回避できる――」
ラミエル「……」キャァー
シンジ「軌道が変化し――」
ラミエル「……」ドンッ!!
シンジ「ぐっ……!! よ、よけられない……」
ラミエル「……」キャー
シンジ「また、来る!! 逃げなきゃ……!! 逃げなきゃ……!!」
ネルフ本部
マヤ「パターン青!! 使徒です!!」
ゲンドウ「モニターに出せ」
マヤ「は、はい!!」ピッ
ラミエル『……』ガッキン!!ガッキン!!
シンジ『痛い!! いたいよ!! やめてよぉ!! 誰か助けてよ!! ミサトさん!! ミサトさぁぁぁん!!!』
ラミエル『……』グリグリグリグリ!!!
シンジ『うわぁああああああ!!!! あああああぁっぁぁああああ!!!!』
マヤ「使徒! シンジくんの胸部で高速回転を始めました!!」
冬月「正八面体の使徒。あの形で回転されたら痛いな」
ゲンドウ「ああ。初号機を回収しろ」
リツコ「了解。――ミサト、聞こえる?」
ミサト『ほいほーい。どうかしたぁ?』
リツコ「すぐに現場へ向かって。シンジくんが使徒にやられているわ」
ミサト『なんですって!?』
冬月さんなんでそんなにのんびりとしてるんですか
公園
シンジ「あああぁあああぁああ!!!!」
ラミエル「……」グリグリグリグリ!!!!!
サキエル「……」オロオロ
シャムシエル「……」ニョロニョロ
シンジ(ぼくは……ここで死ぬんだ……こんなわけの分からないところで……死ぬんだ……)
シンジ(ぼくは……母さん……)
バキッ!!
ラミエル「……」キャー
シンジ「え……」
サキエル・シャムシエル「「……!」」
レイ「碇くん、大丈夫?」
シンジ「あ、綾波……」
サキエル「……」ガオー
レイ「……私と戦うの?」
サキエル「……!」ビクッ
レイ「どうするの?」
サキエル「……」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ラミエル「……」キャー?
サキエル「……」ダダダッ
ラミエル「……」キャー
シンジ「使徒が……去っていく……」
レイ「怪我は?」
シンジ「綾波……ありがと……う……」
レイ「碇くん?」
シンジ「……」
レイ「……」
ミサト「レイ!! シンジくんは!?」
レイ「ここに。碇くんは胸部から出血をしています。早く医療班を」
ネルフ本部
ゲンドウ「初号機の状態はどうだ」
リツコ「胸部を2針縫う程度の傷は負いましたが、許容範囲内です」
冬月「つまり、次の戦闘にも支障はないということか」
ゲンドウ「でなければ困る。初号機はこの世に1体しか存在しない」
リツコ「しかし、初号機も生身の人間です。あまり無理な稼働を強いては壊れるのも早まります」
ゲンドウ「この程度で壊れるなら、それまでのことだ。予備を用意すればいい」
ミサト「司令、それではあまりにも……」
ゲンドウ「使徒の襲撃は近くあるはずだ。初号機の修理は早急に行え。以上だ」
冬月「修理か」
ミサト「司令!!」
リツコ「やめなさい、ミサト」
ミサト「でも! リツコだって、今の命令はおかしいって思うでしょ!?」
リツコ「そうね。だけど、人類のためには時として非情にならなければいけないときもある。違う?」
ミサト「……シンジくんの様子を見てくるわ」
医務室
シンジ「……はっ」
シンジ「また、知らない天井だ」
レイ「起きた?」
シンジ「綾波……」
レイ「次の指令を伝えます。1800時に――」
シンジ「ちょっと待っ……ぐっ……」
レイ「胸の傷、まだ完治していないから」
シンジ「僕は、どれぐらい寝てたの?」
レイ「15時間ほど」
シンジ「そう……なんだ……」
レイ「その間に使徒が現れたわ」
シンジ「使徒が……」
レイ「モニターを見て。いつでも使徒の様子を見れるようになっているから」
シンジ「え……?」
サキエル『……』ガリガリ
シャムシエル『……』ニョローン
ラミエル『……』グリグリグリグリグリ!!!!!
シンジ「あれは何をしているの?」
レイ「赤木博士によると使徒三体は地面を掘って、ここネルフ本部を目指しているみたい」
シンジ「掘ってここまで来る事ができるの?」
レイ「18層に及ぶ特殊装甲があるから、あれで進むとなると79万8400時間後にはここへ到達することになる」
シンジ「ええと……日数にすると……」
レイ「90年ぐらい」
シンジ「放っておいてもいいんじゃないかな。あの正八面体の使徒なんて自分の体を回転させて掘っているし、そのうち削れていって消えちゃうかもしれないじゃないか」
レイ「でも、使徒の殲滅は命令だから」
シンジ「嫌だよ……もうあんな怖い思いをするのは……」
レイ「いやなの?」
シンジ「当たり前じゃないか!」
レイ「なら、逃げれば? あとのことは私が引き継ぐ」
シンジ「え……」
レイ「さよなら」
シンジ「綾波……」
シンジ(これでいいんだ……。綾波は強いし、きっと負けることはないはずだし……)
シンジ「でも、綾波はあの最初の使徒に負けて、大怪我をしていたような……」
シンジ「ううん。それでも、僕が戦うより綾波が戦ったほうがいいじゃないか。楽に使徒を倒せるはず」
シンジ「僕なんて……本当は必要じゃないんだ……」
シンジ「父さんが必要なのは……エヴァンゲリオン初号機で……僕じゃない……」
シンジ「……」
ラミエル『……』キャー
シンジ「なんだろう?」
レイ『それ以上、掘らせない』
シンジ「綾波!?」
ラミエル『……』キャー?
レイ『来る……』
公園
ラミエル「……」キャー
レイ「くっ……」
サキエル「……」ガオー
ミサト『一人じゃ無理よ!! 撤退しなさい!!』
シャムシエル「……」パシンッ!!!
レイ「うっ!」
ミサト『命令よ!! そこから離脱しなさい!!』
ラミエル「……」キャーッ
レイ「あ……」
ラミエル「……」グリグリグリグリグリ!!!!!!
レイ「んっ……あ……ぃ……!!」
ラミエル「……」グリグリグリグリグリ!!!!!
レイ「ん……ふ……ぁ……」
ゲンドウ『逃げろ、レイ!!』
病室
レイ『あっ……ん……うっ……』
ラミエル『……』グリグリグリグリグリグリグリ!!!!!!
シンジ「綾波が……!!」
シンジ「でも、僕が助けに行っても……結果は同じだし……意味がないよね……」
シンジ「使徒なんて倒せっこないんだ。何が初号機だよ」
シンジ「僕はただの中学生なんだ。あんなやつらに勝てるわけないじゃないか」
シンジ「父さんは……何を考えてるのか……よくわからないよ……」
ラミエル『……』グリグリグリグリグリ!!!!!!
レイ『んっ……ん……』
シンジ「僕じゃ助けられない……嫌なことや痛いことから逃げて何が悪いんだよ……」
シンジ「僕は……僕は……」
シンジ「ただ無理矢理……戦わされて……」
シンジ「それだけじゃないか……だから……」
ネルフ本部 管制室
ラミエル『……』グリグリグリグリグリグリグリ!!!!!!
レイ『あっ……は……ぃ……く……』
マヤ「エヴァ零号機の体温が上昇しています!! このままでは危険です!!」
ゲンドウ「レイ!!」
ミサト「逃げなさい! レイ!!」
マヤ「ダメです! こちらの音声、届いていません!!」
リツコ「万事休すか」
冬月「初号機は?」
マヤ「病室にいるはずです」
冬月「ここまでか。碇、零号機を破棄するときではないのか」
ゲンドウ「今ここで零号機を失えば、シナリオの大幅な変更を余儀なくされる。そのときではない」
冬月「だが」
『やめろぉぉぉ!!! 綾波を、はなせっ!!!』
ミサト「この声……!」
公園
ラミエル「……」キャー?
レイ「え……」
シンジ「うわぁああああ!!」バキッ!!!
ラミエル「……」キャァー
レイ「い、かり……くん……」
シンジ「はぁ……はぁ……あ、やなみ……」
レイ「たすけに……きえてくれたの……」
シンジ「僕にでもできることがあるかもって考えたら、いつの間にか病室を抜け出して、ここまで……」
レイ「そう……」
サキエル「……」ガオー!!!
シャムシエル「……」ニョロニョロ!!
ラミエル「……」キャー!
レイ「使徒が戦闘態勢に入ったみたい」
シンジ「ここで死ぬかもしれないね、僕たち……」
レイ「貴方は死なないわ」
シンジ「え?」
レイ「私が守るもの」
シンジ「ちょっと……」
サキエル「……」ガオー!!!
レイ「ふっ」ドゴォ!!!!
サキエル「……」グハッ
シャムシエル「……」シュンッ!!!!
レイ「無駄よ。フィールド、展開」ギィィン
シャムシエル「……!?」
レイ「目標、射程距離。攻撃、開始」バキッ!!!
シャムシエル「……」イタイ!!
シンジ「綾波……やっぱりすごく強いんだ……」
ラミエル「……」キャー!!!
シンジ「しまっ――」
ラミエルはサッカーボールみたいに思いっきり遠くに蹴っ飛ばせば何とかならないかな?ww
レイ「させない」ガシッ
ラミエル「……!?」
レイ「碇くん、今のうちに」
シンジ「え……?」
レイ「私が使徒の動きを握って止めている間に……」ギュゥゥ
ラミエル「……」キャー!!!
シンジ「わ、わかった!」
レイ「訓練を思いだして」
シンジ「目標を……センターにいれて……」
ラミエル「……」キャー!!!!
シンジ「スイッチ!」ドゴォ!!!
ラミエル「……」キャァァ…
シンジ「はぁ……はぁ……し、使徒は……?」
レイ「向こうに飛んで行ったわ。追いましょう」
シンジ「う、うんっ」
シンジ「滑り台のほうにはいなかったよ」
レイ「……」
シンジ「綾波? どうしたの?」
レイ「……」
シンジ「綾波!? 綾波!! しっかりして!!」
レイ「ごめんなさい……少し、疲れて……」
シンジ「よかった……」
レイ「どうしたの?」
シンジ「安心して……それで……」
レイ「どうして泣いているの?」
シンジ「僕が逃げたせいで……綾波が危険な目にあって……でも、なんとか助けられて……綾波が無事で……安心して……嬉しくて……僕もよくわからないや……」
レイ「ごめんなさい。こういうとき、どんな顔をすればいいか、わからないの」
シンジ「笑えば、いいと思うよ」
レイ「……こう?」
シンジ「うん。そんな感じ」
ネルフ本部
マヤ「初号機、零号機。共に無事です!」
ミサト「二人の回収を急いで」
マヤ「回収班、伊吹マヤ。いってきます」
ミサト「はい。気をつけてね」
リツコ「人員が足りないと1人で何役もしないといけないから、大変ね」
ミサト「予算をカットしたヤツらに現場の大変さを教えてやりたいわ」
リツコ「そうね。人員の補充は急務ね」
ミサト「あてでもあるの?」
リツコ「一応ね。でも、応じてくれるかどうかわからないわ」
ミサト「なんでもいいから連れてきてよ。このままじゃ仕事が回らないわ」
リツコ「まずは碇司令に掛け合ってみないとね」
ミサト「お願いね、リツコ」
リツコ「ええ。それに次からはシンジくんたちも更に大変でしょうし」
ミサト「それ、どういう意味?」
司令室
冬月「弐号機の派遣か」
ゲンドウ「惣流・アスカ・ラングレー……。弐号機に選ばれた者か」
冬月「諸事情により、式波・アスカ・ラングレーに名前が変わったようだ。これが新しい名簿になる」
ゲンドウ「そうか」
冬月「私は早計だと思うがな。このタイミングでの弐号機投入はゼーレの脚本に存在していないはず」
ゲンドウ「我々の計画には入っている。多少の前後はあるが、誤差の範囲であり、修正も可能だ」
冬月「お前がそういうのなら、構わんがね」
ゲンドウ「計画に狂いはない」
冬月「使徒を三体取り逃がしている現状では、弐号機を投入せざるを得ないな」
ゲンドウ「それに、手札は多いほうがいい」
冬月「揃いすぎていると、相手に警戒されるぞ」
ゲンドウ「我々の到達する場所は同じだ。相手など、関係ない」
冬月「そうだな……」
ゲンドウ「到達するためならば、どのような札も集め、そして躊躇いなく切っていく。そう決めたはずだ」
翌日 市街
シンジ「あ……」
レイ「碇くん」
シンジ「お、おはよう」
レイ「学校、行くの?」
シンジ「うん。少し、怖いけど、行くよ」
レイ「どうして?」
シンジ「逃げたら楽だけど、楽なだけだから」
レイ「……」
シンジ「この前、綾波を助けにいったとき、なんとかなったから。その、もしかしたら色んなものも、僕が考えているほど大したことないんじゃないかって思えて」
レイ「そう」
シンジ「だから、これからは逃げずにやっていこうって、決めたんだ」
レイ「……」
シンジ「綾波、一緒に行かない?」
レイ「ええ。行きましょう」
学校
ケンスケ「今日も碇は休みか。誰かのせいで」
トウジ「なんやねん!! いつまでも引き摺る、シンジの性根が――」
シンジ「あ、ごめん……僕の所為で……」
ケンスケ「碇!」
トウジ「うぉ!?」
シンジ「ごめん。鈴原くん」
トウジ「いや、なんも言うてへん!! シンジ、あのときは命がけで守ってくれて、ホンマに感謝しとる!! 改めて、その、礼を……」
シンジ「そんな。僕のほうこそ、妹さんに怖い思いをさせちゃったし」
トウジ「あんなんはもうええっていうたやろ」
シンジ「そう、だね。えっと、鈴原くん――」
トウジ「トウジや」
シンジ「え?」
トウジ「鈴原トウジや。トウジでええ。鈴原くんなんて、気色悪いわ」
シンジ「……うん。トウジ、ありがとう」
数日後 ネルフ本部
リツコ「そう。学校へ行きだしたのね」
ミサト「ええ。友達もできたみたいよ。この前、家に帰ったら靴がたくさんあって驚いちゃった」
リツコ「いい傾向ね。このまま初号機としての技能もあげてくれたら助かるわ」
ミサト「シンちゃんをあまり兵器としてみないでくれる?」
リツコ「あら。情が移ったの? ミサトだって最初は司令の指示通りに動いていたじゃない」
ミサト「司令の指示に背くことはできなかったから、というのは少し違うわね。あのときは確かにあたしもシンジくんに初号機になってもらいたかったわ」
リツコ「そのときは兵器としてみていたでしょう」
ミサト「そうね。けど、今は違うわ。やっぱり、あたしには向いてない仕事かもね。あんたみたいに冷徹になれないもの」
リツコ「酷い言い方するわ。まるで血が流れていないみたいじゃない」
ミサト「で、アスカはいつくるわけ?」
リツコ「そうね。予定ではそろそろ到着していてもおかしくないのだけれど」
ミサト「使徒の襲撃がいつあるかわからないのに、暢気なもんよね」
リツコ「同感だけど、こればかりはね。向こうは船だから」
ミサト「早く来て欲しいわ、ホント」
海上 船 甲板
アスカ「くしゅん! あー、誰か私の噂をしているわね」
アスカ「……ん?」ググッ
マリ「お! 引いてる引いてるぅ」
アスカ「今日のディナーはこれよ!!!」
マリ「ファイトだにゃー」
アスカ「おんどりゃぁぁぁ!!!!」グイッ
マリ「こりゃ、大物かぁ?」
ザッパーン!!
ガギエル「……」ピチピチ
マリ「なにこれ、まずそー」
アスカ「ちっ。ハズレね」
マリ「どうする?」
アスカ「とりあえず、焼いてみたら? 案外美味しいかもしれないし」
ガギエル「……」ピチピチ
市街 某所
「ガギエルが、永久の旅へ出発してしまったようだね」
サキエル「……!!」
シャムシエル「……」ニョローン
ラミエル「……」キャー?
「そう。リリンにやられたんだ。あの子もまた堕天使となった。悲しみの螺旋はいつになったら終焉を迎えるのか……」
サキエル「……」
「君たちがもう少し、しっかりしていれば、こんなことにならずに済んだのにね」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「今回は関係ない? いいや、大いにある」
ラミエル「……」キャー
「リリンを倒せていれば、この犠牲は生まれなかった。違うかい?」
サキエル・シャムシエル「「……!?」」ビクッ
ラミエル「……」キャー
「次で終わりにしよう。僕だってこれ以上、誰かが怯える顔はみたくないんだ」
使徒が初めてやられたぞおい
使徒って食えるのか…
食ったのか……
つまりS2機関が体内に……!?
焼いただけで食べたとは書いてないから丸焦げになった可能性
ギャグっぽく仕上げてるけど、
エヴァがロボット物じゃなくて特撮ヒーロー物だったらこんな感じになってたと思う
学校 通学路
トウジ「でな、そのときめっちゃバランス崩してこけよってん。傑作やろ」
ケンスケ「その話はするなって」
シンジ「あはは」
レイ「碇くん」
シンジ「え?」
トウジ「お、なんや。また夫婦でデートかいな」
シンジ「そんなんじゃないって!」
レイ「緊急招集。一緒に行きましょう」
シンジ「まさか、使徒?」
レイ「いいえ。でも、すぐに来て欲しいって」
シンジ「そうなんだ。なんだろう」
レイ「葛城一尉からの伝言。会わせたい人がいるって」
シンジ「分かった。とにかく行こう、綾波。それじゃあ、またね、トウジ」
トウジ「おう。シンジ、またなー」
港
シンジ「急に呼び出されたから驚きましたよ」
ミサト「いやー、ごめんね。お友達と遊ぶ約束でもしてた?」
シンジ「いえ、そんなことはないんですけど」
ミサト「これからね、新しい仲間がここへ到着するのよ。ま、その顔合わせをね」
シンジ「新しい仲間、ですか」
レイ「その仲間もエヴァンゲリオンなのですか?」
ミサト「もちのロンよ。ちょっち気の強いところもあるけど、基本的には良い子だし、なにより美人だから」
シンジ「美人……」
ミサト「そうよー。隙があれば、口説いてもいいわよん」
シンジ「そ、そんなことしませんよ!!」
アスカ「ぐーてんたーく!」
ミサト「はーい、グーテンターク、アスカ。久しぶりね」
アスカ「前に来日したのが1年前ぐらいだっけ。それはそうとミサト、ちょっと痩せた?」
ミサト「いいえ、500グラムプラスよ。それより、あなたのパートナーはどうしたの?」
アスカ「ここに来る前に魚を釣ってたのよ。こっちに来るまでの食料も殆ど積めなかったし」
ミサト「あら。ごめんね。行ってくれたら郵送したのに」
アスカ「ミサトを頼ろうなんて思ってなかったわ。だから、釣りをしてたの」
ミサト「それで?」
アスカ「で、へんてこな魚を釣り上げたのよ。見た目はグロかったけど、割と大きかったし、焼いてみればなんとかなるって思ったわけ」
ミサト「食べたの?」
アスカ「ううん。焼いたらすっごい臭いで、食べる前に気分が悪くなっちゃったわよ。あれは食べられないちゅーの」
ミサト「んで、パートナーのマリは?」
アスカ「その臭いで完全にノックダウンよ。船の中でくたばってるわ」
ミサト「そうなの。それじゃ、私が介護でもしてあげようかしらね。その間にアスカは後ろの二人と挨拶を済ませておいて」
アスカ「ん?」
シンジ「あ、えっと……」
レイ「……」
アスカ「あんた、ダレ?」
シンジ「あ、あの、その、シンジ。碇シンジです。一応、エヴァンゲリオン初号機、なんだけど」
アスカ「あんたが、エヴァ初号機ですってぇ?」
シンジ「う、うん」
アスカ「えー? そんな風には見えない、わねっ!」バッ
シンジ「え――」
レイ「……」ガシッ
アスカ「なによ」
レイ「今、貴方が碇くんを蹴ろうとしたから」
アスカ「足払いをしてやろうと思っただけ。あまりにも無警戒だったから」
シンジ「綾波、僕を守ってくれたの?」
レイ「……」
アスカ「女に守られて恥ずかしくないわけぇ?」
シンジ「うっ……」
アスカ「噂は聞いてるわ。親の七光りでエヴァになれただけなんでしょ、アンタ」
シンジ「七光りって……僕は……エヴァになりたくて、なったわけじゃないし……そもそも戦うことも好きじゃないんだ……」
アスカ「はぁ? アンタ、バカぁ? 七光りだろうがえこ贔屓にされていようが、エヴァになった以上は戦わないといけないの」
シンジ「そんなの僕が望んだことじゃない」
アスカ「ウルトラバカなの?」
レイ「……」
アスカ「アンタもさっきからなんなの? 一年前からなんにもかわんないわね、この無表情女。少しぐらい笑ってみらればどうなのよ」
レイ「……」
アスカ「睨むんじゃないわよ」
ミサト「みんなー、おまたせー」
マリ「きぶん、わるぅ……はくぅ……はかせてぇ……」
アスカ「まだ治ってなかったわけ?」
マリ「あんな牛乳ふいたあとの雑巾が生乾きして、そのあとおっさんの唾液まで染み込ませたような臭いをかいだら、こうなるにゃー」
アスカ「軟弱よね。そんな感じだからいつまでたっても仮設5号機のままなのよ」
ミサト「改めて紹介するわね。新しい仲間の惣流・アスカ・ラングレーと真希波・マリ・イラストリアスよ」
アスカ「ミサト、違う。もう式波。式波・アスカ・ラングレー」
ミサト「ああ。ごめんなさい。そういえば……」
アスカ「パパはもう家族じゃないのっ」
シンジ「式波さんって、結構大変なんだね」
アスカ「別に同情なんて欲しくないけど?」
シンジ「そ、そういうわけじゃ……」
マリ「んー? この子がゲンドウくんの?」
ミサト「そうよ。碇シンジくん。隣にいるのは綾波レイ。マリは知ってるでしょ?」
マリ「まぁねー。とくに碇シンジくんのことはよぉーく、知ってるぅ」
ミサト「どこかで聞いたの?」
マリ「うんにゃ。一度、会ってる」
ミサト「どこで?」
マリ「それは――」
ピリリリ……ピリリリ……
ミサト「はい?」
リツコ『パターン青。使徒が市街に出現したわ。現場へ急行して」
ミサト「こんなときに使徒!? ええい、折角焼肉でも行こうと思ってたのに」
アスカ「そんなのあとよ、あと。どこに使徒がでてきたの? 早く教えて、ミサト」
市街
イスラフェル「……」ズンズン
サキエル「……」
アスカ「目標確認。行くわよ」
ミサト「アスカ、ちょっと待ちなさい。まだシンジくんとレイのパーツが届いていないわ。5分待ちなさい。それとも初号機と零号機なしで戦うつもり?」
アスカ「あんな弱そうなやつ私一人だけで十分よ!」ダダダッ
ミサト「待ちなさい!! アスカ!!」
マリ「あーあ、いっちゃったぁ」
シンジ「アスカは強そうだし、なんとかなるんじゃないですか?」
ミサト「どうかしら。アスカは確かに強いけど、実戦経験がゼロだし」
シンジ「そ、そんな。なら、どうしてアスカはあんなに自信満々に……?」
アスカ「この先は通行止め。引き返せばぁ?」
イスラフェル「……」
アスカ「ここを通りたかったら私を倒すことね。無理だろうけど」
でもまあ使徒を初めて完全に倒したわけだし弱いわけないよね(フラグ)
イスラフェル「……?」
サキエル「……」コクコクッ
アスカ「なに相談してんのよ。相談したって、このアスカ様を倒せるわけないでしょう」
イスラフェル「……」ポキポキ
アスカ「やる気ね。――コネ眼鏡!!」
マリ「りょうかーい。そーれっ」ポイッ
アスカ「ジャイアント・ストロング・エントリー!!」カチャカチャ
シンジ「どういうことですか?」
ミサト「エヴァのパーツを装着するときの掛け声みたいね」
シンジ「意味があるんですか?」
マリ「はい、最後が頭」
アスカ「装着完了!! エヴァ弐号機、見、ざ――」
イスラフェル「……」パシンッ
アスカ「あんっ」
レイ「あ……」
アスカ「何よ!! 変身中は攻撃しないのが――」
イスラフェル「……」パシンッパシンッ
アスカ「あんっ、あんっ」
シンジ「ミサトさん、このままじゃあ!!」
ミサト「でも、まだ初号機と零号機のパーツが到着していないし……」
シンジ「だけど……!!」
アスカ「うぅ……変身中に攻撃するなんて……サイテー……」
マリ「これは私もいっちょやるかぁ」
アスカ「あんたなんかが加勢しても何の足しにもならないけど、変身するなら早くしなさいよね」
マリ「はいはい。そんじゃあ加勢しますよ、お姫さま!」
マリ「ファイナル・アトミック・エントリー!!」
サキエル「……」ドゴォッ
マリ「ぐっ……!? いったぁ……今のはきいたにゃぁ……」
アスカ「こいつら、手ごわいじゃない。私たちのデビュー戦としてはまぁまぁの相手ってわけね」
レイ「……」
アスカ「いい気になるのはここまでよ!! これで終わりにしてやる!!」
イスラフェル「……」
アスカ「ソニックグレイヴ!!」ジャキン
シンジ「凄そうな武器だ。あれなら勝てるかも」
アスカ「おりゃぁぁあぁあぁああ!!!!」ザンッ!!
イスラフェル「……」ギャァァ
ミサト「決まった!!」
アスカ「ふん。また勝っちゃったわね。あといくつ勝利を重ねればいいのか教えて欲しいわ」
マリ「正義は勝つ!!」
サキエル「……」
レイ「まだ残っているけど」
イスラフェル「……」ゴゴゴゴッ
シンジ「な、なに、あれ……使徒が……」
イスラフェル甲乙「「……」」
ミサト「分裂した!?」
アスカ「アンタ、バカぁ? 分裂したら能力が半減するって相場がきまってんのよ!!」
マリ「そーだ、そーだ」
イスラフェル甲「……」パシンッ
アスカ「あんっ」
イスラフェル乙「……」ドゴォッ!!!
マリ「が……!?」
イスラフェル甲「……」ガシッ
アスカ「ちょっと!! どこ触ってるのよ!! このヘンタイ!! スケベ!! チカン!!」
イスラフェル甲「……」ポイッ
アスカ「いやぁぁあああ!!!」
シンジ「式波さん!!」
レイ「軽々と投げ飛ばした……」
イスラフェル乙「……」ポイッ
マリ「やーらーれーたー」
ミサト「これは撤退したほうがよさそうね。みんな、態勢を整えるわ!! 逃げて!!」
ネルフ本部
リツコ「無様ね」
アスカ「まさか分裂しても能力が落ちないなんて予想外だっただけ」
マリ「あいつ、切ったら切った分だけ分裂しそうじゃない?」
アスカ「サイズが小さくなるわけでもなさそうだし、厄介よね」
シンジ「それじゃあ絶対に倒せないってこと?」
アスカ「この世に絶対に倒せない敵はいないの。そんなこともしらないわけ?」
シンジ「ごめん……」
ミサト「……」
レイ「何か作戦は?」
ミサト「切ったら分裂してしまうのは、再生できるだけの部分が残っているからなんでしょうね」
リツコ「つまり、倒す際に再生できる余地を残さなければなんとかなるかもしれない、ということね」
ミサト「そういうこと」
リツコ「となると、使徒を倒す方法は……」
ミサト「エヴァ二機による同時攻撃以外にないかもね」
冬月「エヴァ二機でのコアを同時破壊か」
ミサト「成功確率は決して低くありません。MAGIによる回答も賛成2、条件付賛成1でした」
ゲンドウ「反対する理由はない。葛城一尉に任せる」
ミサト「ありがとうございます。では、この作戦を実行するために許可を頂きたいことがあるのですが」
ゲンドウ「なんだ」
ミサト「碇シンジ、式波・アスカ・ラングレーの両名にはしばらく共同生活してもらおうかなと思いまして」
冬月「共同生活か」
ミサト「この作戦においては何よりも二人のシンクロ率が高くなければなりません」
ゲンドウ「その二人を選出した理由は?」
ミサト「レイとシンジくんでは能力に差がありすぎますし、マリは相手に合わせることが苦手みたいなので」
冬月「消去法か」
ミサト「アスカ自身も出撃したいと強く希望していましたから」
ゲンドウ「わかった。二人が生活する部屋はどうするつもりだ」
ミサト「私の家を使います」
ゲンドウ「そうか。あとのことは頼む」
葛城宅
アスカ「ぬあんで、私が男と一緒に生活しなきゃいけないわけぇ!?」
ミサト「今回の作戦のため」
アスカ「いやよ!! 寝てる間に何かされたら誰が責任とってくれるのよ!? この七光り自身!?」
シンジ「ぼ、僕だって選ぶ権利があるよ……」
アスカ「はぁ!? あんた、私じゃ不満だっていうの!?」
マリ「やったじゃん、姫ぇ。前から、一度でいいからかっこいい男と同棲したいっていってたし」
アスカ「言ってないわよ!!」
ミサト「とにかくこれは決まったことよ、諦めなさい」
レイ「使徒の動きはどうなっているんですか」
ミサト「市街を延々とウロウロしているみたいね。多分、本部へ行くための道を探しているんだと思うわ」
シンジ「あの、使徒って何の目的でネルフ本部を目指しているんですか?」
ミサト「分からないわ。けれど、人類の敵であることは確かなの」
シンジ「そうですか」
アスカ「そんなことに疑問を持つ奴、初めてみたわ。ホント、バカね」
ミサト「早速、訓練を始めましょうか。あまり悠長にしていられないわ」
シンジ「どんな訓練をするんですか?」
ミサト「目的は使徒のコアを同時すること。動きを完璧にシンクロさせる必要があるわ」
アスカ「その動きを合わせる練習をするわけね」
ミサト「はい、正解。軽いダンスレッスンだと言えば分かりやすいかしら」
アスカ「なんで私がこんなやつと生活してダンスレッスンまで受けなきゃいけないのよ。最悪ね」
シンジ「な、なにもそこまで言わなくても……」
アスカ「私は弐号機に選ばれた超エリートなの。それが――」
レイ「そこまで言う必要、ある?」
アスカ「あんたは関係ないでしょ」
レイ「そこまで言う必要はあるの?」
アスカ「うっ……」
マリ「みんな、仲良くしたほうがいいんじゃにゃい」
ミサト「ほら、シンジくんとアスカは着替えてきて。訓練、すぐにはじめるわよん」
アスカ「はいはい。あー、メンドー」
アスカ「ジャイアント・ストロング・エントリー!!!」
シンジ「……」
アスカ「ちょっと、なにぼけっとしてるわけ?」
シンジ「え?」
アスカ「あんたもエヴァンゲリオンの端くれならあるでしょ。あんたのセンスがどんなものか私が見てあげるわ」
シンジ「どういうこと?」
アスカ「はぁぁ!? もしかして変身前の決め台詞すらないわけぇ?」
シンジ「そんなのあるわけないよ。綾波だって静かに装着してるし」
アスカ「無自覚もいいとこだわ。そんなことだから使徒を取り逃がすのよ。しかも三回も」
シンジ「それは式波さんだって……しかも、負けてるし……」
アスカ「いいから、まずは決め台詞からね。私がかっこいいの考えてあげるわ」
シンジ「い、いらないよ。それに、恥ずかしいし……」
アスカ「決め台詞があってこそのエヴァ。それがないなら、私は訓練なんてしないわ」
シンジ「そんな……」
アスカ「大丈夫よ。私がアンタにぴったりな決め台詞を考案するから。少し待ってなさい」
アスカ「うーん……」
シンジ「あの、そろそろ訓練を……」
アスカ「好きな言葉とかある? そういうのを入れてもいいのよね」
シンジ「だから、訓練……」
アスカ「アルティメット・ブレイブ・エントリーとか、どう?」
シンジ「えっと……」
ミサト「んぐっ……んぐっ……。ぷはぁ!! くぅー!! この一杯のために生きていると言っても過言じゃないわぁ」
マリ「あちゃぁ、ああなると姫様は長いからねぇ」
レイ「意味のないことに時間をかけるのね」
マリ「これぐらいはいいとおもうけど」
レイ「そう?」
マリ「こっちだって命がけで戦ってるわけだもん。これもらおっと」
ミサト「未成年でしょ、マリぃ」
マリ「ふふん。もう立派な大人だったりして。特にスタイルとか」
レイ「……」
ミサト「すかー……すかぁー……」
マリ「すぅ……すぅ……」
シンジ「結局、今日は訓練できなかったね」
レイ「そうね」
アスカ「バーニング・サンダー・エントリー……。しっくりこないわね」
シンジ「あの、式波さん。ミサトさんも寝ちゃったし、明日にしない?」
アスカ「邪魔しないで」
シンジ「でも、ほら、もう0時まわっちゃったから」
アスカ「これが完成しないと訓練でも実戦でも気合がはいんないでしょ」
シンジ「そんなことないよ。今までもなんとかなってきたし」
アスカ「今まではね。でも、これからは違うわ。そもそもまずは名乗りで相手をビビらせるところから戦いは始まってるんだから」
シンジ「だから、式波さんは決め台詞に拘ってるの」
アスカ「あとそのほうがヒーローっぽいでしょ」
シンジ「ヒーローになりたいんだ」
アスカ「なりたいじゃないわ。私たちはエヴァンゲリオンなのよ。ヒーローなの。人類を守る、正義のね」
シンジ「そうかもしれないけど、僕はまだ実感がなくて」
アスカ「三度も使徒を取り逃がしていればそうでしょうね」
シンジ「ごめん……」
レイ「貴方はヒーローになるためにエヴァンゲリオンになったの?」
アスカ「そうよ。ママがエヴァの研究員だったから、小さいときから憧れてた。小さいときから訓練だってやってきた」
レイ「そう」
アスカ「私はエヴァになる以外の道は見えてなかった。だからこうしてる」
シンジ「エヴァになりたくてなったんだ……。なんだか、すごいね」
アスカ「そう? 褒めても何もでないわよ」
シンジ「羨ましいよ……好きなことができる式波さんが……」
アスカ「アンタ、超絶バカね」
シンジ「え?」
アスカ「確かに私はエヴァに憧れてたし、自分から選んだ道だったけど、好きなことなんてひとっつもないわ。今だってこうしていたくもない場所にいるんだから」
シンジ「けど、自分で道を選べただけマシだよ。僕なんて、無理矢理、ここに……」
アスカ「なら、なんでこの前の戦闘で自分からこの無愛想女を助けにいったわけ?」
シンジ「どうしてそのことを知ってるのさ」
アスカ「使徒のことなんだか情報ぐらい耳にはいってくるわよ。なにせ、超エリートのアスカ様なんですから」
シンジ「あの、ときは、綾波を助けたくて……」
アスカ「それでいいじゃない」
シンジ「え?」
アスカ「戦う理由、エヴァになる理由。それで十分でしょ」
シンジ「それでって……」
アスカ「だって、あんたはその理由だけで戦いにいったんだから。バカなあんたにはそれで十分ってことよ」
シンジ「……」
アスカ「嫌な事があろうが、好きなことがなかろうが、理由があれば戦える。理由が本当にないなら、戦えないじゃない。戦うのって怖いしね」
シンジ「式波さんも、怖いって思うんだ」
アスカ「とーぜん。まぁ、私は弱くないし、負けない自信しかないけど」
レイ「貴方は今日、負けたわ」
アスカ「黙ってなさいよ!!」
シンジ「戦う理由……僕が戦う理由……エヴァになる理由……」
アスカ「ふわぁ……。流石に眠くなってきちゃったわね」
シンジ「そっか……。今はそれでいいのかもしれない」
アスカ「あ?」
シンジ「あのとき、綾波を助けられて嬉しかったのは本当だし、綾波が戦い続けるなら、僕も戦えるかもしれない」
レイ「……」
シンジ「やっぱり、僕は難しく考えてただけなのかも。式波さんの言うとおり、単純な理由でも怖いことや痛いことに立ち向かえる気がしてきた」
アスカ「そーそー。アンタみたいな単純な男には単純な理由でいいのよ。で、その戦闘の恐怖をもっとやわらげる方法があるんだけど?」
シンジ「どんな方法なの?」
アスカ「名乗りよ。自分が正義の味方になった気分になれば、緊張もしなくなるってもんよ」
シンジ「そっか、式波さんが決め台詞を言うのは怖いからっていうのもあるんだ」
アスカ「べっつに私はそこまで怖がりじゃないわよ!! 失礼ね!!」
レイ「恐怖をなくすため……でも恐怖ってなに……」
シンジ「式波さん。僕も考えるよ、決め台詞。ううん、これは僕自身が決めなきゃいけないことなんだと思う」
アスカ「やっと自覚が出てきたみたいね。そこまで言うなら付き合ってあげてもいいわよ」
シンジ「ありがとう」
急にアスカがかわいく思えてきた
ええ娘や…
翌朝
ミサト「んー、すっかり寝ちゃったわね」
マリ「グッモーニン、ミサト」
ミサト「どうしたの、ニヤニヤしちゃって」
マリ「あれを見てたら嫌でも緩むって」
アスカ「ジャイアント・ストロング・エントリー!!」
シンジ「シャ、シャイニング・エナジー・エントリー」
アスカ「赤い魂のルフラン! エヴァンゲリオン弐号機!!」
シンジ「残酷な青のテーゼ、エヴァンゲリオン初号機」
アスカ「参、上!!」
シンジ「さんじょう」
アスカ「もう少し声を出しなさいよ。折角、ビシっと決めてるんだから」
シンジ「朝からそんなに声がでないよ」
ミサト「あら、中々良い感じにシンクロしてるわね。今回の作戦、上手くいくかも」
ネルフ本部
冬月「使徒の様子はどうなっている」
マヤ「依然として第三新東京市内をうろついています。市民から気味が悪いからなんとかして欲しいとの声が多くあがっています」
冬月「だろうな」
ゲンドウ「奴等はまだここへの道を発見していないようだな」
冬月「使徒の目的を考えれば見つければ即ここまで来るだろうからな。あれから既に五日経過していて本部が平穏を保っているということがなによりの証明になる」
ゲンドウ「ああ。葛城一尉、初号機と弐号機による同時破壊の件はどうなっている」
ミサト「順調です。想像以上に二人のシンクロ率が高く、本作戦は本日にも決行できます」
ゲンドウ「そうか。では、準備が整い次第、作戦を開始しろ」
ミサト「了解!」
冬月「しかし、碇。今回も初号機と零号機でよかったのではないか。弐号機と5号機はあくまでもバックアップのはず」
ゲンドウ「シナリオ通りにことを運んでいるだけだ」
冬月「シナリオを意識しすぎると、シナリオに操られてしまうかもしれんぞ」
ゲンドウ「構わん。利害は一致している」
冬月「なるほど。実にお前らしいな」
市街
イスラフェル「……」キョロキョロ
サキエル「……」キョロキョロ
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「そんなところを探したって、あんたたちの行きたい場所は見つからないわよ」
サキエル・シャムシエル・イスラフェル「「……!」」
アスカ「まぁ、このアスカ様がいる限り、絶対にたどり着けないけどね」
イスラフェル「……」ムカッ
サキエル「……」プンプン
アスカ「ふっふーん。前回の私とはわけが違うんだから。行くわよ、シンジ!! わかってるわね!!」
シンジ「わ、分かってるよ。62秒でケリをつける」
シャムシエル「……」ニョロロン
アスカ「あんたたちなんて62秒あれば十分なのよ!!」
イスラフェル「……」ガオー!!!
サキエル「……」プンプンッ!!!
アスカ「ジャイアント・ストロング・エントリー!!!!」
シンジ「シャイニング・エナジー・エントリー!」
イスラフェル「……」ダダダダッ
サキエル「……」ガオー
レイ「行かせない」ガシッ
サキエル「……!!」
マリ「足止めはさせてもらうにゃ」ガシッ
イスラフェル「……!!」
シャムシエル「……」ニョローン
マリ「1体、そっちにいった!!」
アスカ「ちょっとまってよ! この特殊装甲、少し付けにくいんだから!」
シャムシエル「……」シュッ
アスカ「ちっ、触手が――」
シンジ「させない!! フィールド、全開!!」ギィィン
アスカ「へぇ、やるじゃない、バカシンジのくせに」
アスカ「赤い魂のルフラン! エヴァンゲリオン弐号機!!」
シンジ「残酷な青のテーゼ、エヴァンゲリオン初号機!」
シンジ・アスカ「「参上!!」」
マリ「ひゅー、かっこいいじゃん」
レイ「……」
シャムシエル「……」
イスラフェル「……」
サキエル「……」パチパチパチ!!
アスカ「ユニゾン作戦、開始!! 各自散開!!」
シンジ「了解!!」
マリ「仕事はきっちりさせてもらうよ」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
レイ「貴方の相手は私」
サキエル「……!?」ビクッ
アスカ「まずはソニックグレイヴ!!」ジャキン
サキエル楽しんでるwwww
イスラフェル「……」ガオーン
アスカ「おんどりゃぁぁあああ!!!!」ザンッ!!!!
イスラフェル「……」ギャァァ
シンジ「よし」
アスカ「ここからが本番よ、シンジ」
シンジ「うん。僕はアスカにあわせるだけだから、好きなように動いてよ」
アスカ「ふん。この超エリートの私についてくるなんて、生意気なこといわないで!!!」
イスラフェル甲「……」ジャーン
イスラフェル乙「……」ドヤッ
アスカ「コンビネーション・プレリュード!」
イスラフェル甲乙「「……!」」
シンジ・アスカ「「アインス! ツヴァイ! ドライ!」」バキッ!!ドゴォ!!!
イスラフェル甲乙「「……」」イタイッイタイッ
アスカ「続いて、コンビネーション・シンフォニア!」
マリ「相変わらず姫のネーミングセンス、しびれるぅ」
シンジ・アスカ「「フィーア! フンフ! ゼクス!!」」
イスラフェル甲乙「「……」」ガッタイ!
イスラフェル「……」ガオー
シンジ「融合した!! アスカ!!」
アスカ「わかってるっちゅーの!! コンビネーション・フィナーレ!!」
レイ「ふっ」グキッ
サキエル「……!!!」ギブ!ギブ!!
アスカ「これでトドメよ!! エヴァンゲリオン合体攻撃、ユニゾンキック!!」
イスラフェル「……!」
シンジ・アスカ「「ズィーベン!!!」」ドゴォ!!!
イスラフェル「……!!」アンギャァ!!
ドォォォォン!!!!
アスカ「悪は潰えたわ」
シンジ「正義は勝つ」
リツコ『……恥ずかしくないの?』
ネルフ本部
アスカ『恥ずかしくなんてないわよ!! これがエヴァンゲリオンのあるべき姿なんだから!!』
マリ『さっすがお姫さま。相変わらず英語とフランス語とドイツ語を織り交ぜてくるね』
アスカ『まぁ、私ぐらいになると黄金比がわかっているもの』
レイ『そういうことではないと思うけど』
シンジ『でも、楽しかった。ありがとう、アスカ』
アスカ『なんでお礼をいうわけ?』
シンジ『アスカの言うとおり、ヒーローになりきってみたら、怖くなかったから』
アスカ『でっしょ。もっと称えてくれてもいいわよ』
ミサト「みんな! よくやってくれたわ! 帰ったら、ゆっくりお風呂にでも浸かりましょう」
アスカ『いいわね。シンジが掃除しなさいよ』
シンジ『たまにはアスカがしてよ』
アスカ『ぬあんでエリートの私がお風呂掃除なんて雑用をしなきゃいけないのよ。そういうのはシンジの仕事でしょ』
シンジ『一緒に住んでるなら交代でやろうよ!!』
リツコ「それはそうと他の使徒はどこにいるの?」
市街 某所
サキエル「……」ヨロヨロ
シャムシエル「……」フラフラ
「おかえり、二人とも。今回も随分と悲壮感漂う姿をしているね」
サキエル「……!」
「ちゃんと見ていたよ。ラミエルを撫でながらね」ナデナデ
ラミエル「……」キャー♪
シャムシエル「……」ニョロー
「嫉妬は醜いね。役目を全うできない哀れな者が抱く劣情だ」
サキエル「……」
「そう。音楽を司るイスラフェルもやられたんだね。この連鎖はいつまで続くんだろう」
シャムシエル「……」
「そうか。イスラフェルは逃げ出したんだね。恐怖とは時として心を侵し、変えてしまう。仕方のないことだよ」
「ちなみに二人が逃げ出すことはできないよ。落ちた天使を監視し、使役するのが僕の役目だからね」
サキエル・シャムシエル「「……」」
市街
マリ「やっばいなぁ。姫とワンコくんの連携に見惚れたら使徒を見失っちゃったじゃん」
レイ「……」
マリ「私はともかく綾波レイまで失敗するなんてね。珍しいこともあるもんだ。なんか考え事でもしてた?」
レイ「……別に。今は使徒を探さないと」
マリ「はいはーい」
アスカ「アンタがちゃんとみてないからでしょうが!! なんで私の所為なのよ!!」
シンジ「アスカの所為とは言ってないよ。でも、決め台詞をいうときも使徒の様子はみておこうって言ったじゃないか」
アスカ「シンジがみていればいいでしょ!」
シンジ「あの位置だと使徒が見えなかったっていってるじゃないか!」
アスカ「知らないわよ!!」
リツコ『随分と仲がよくなったのね。名前で呼び合っているし』
ミサト『ぶふふふ。そうなのよ、奥さん。若いもんはいいわよねぇ』
マヤ『不潔です』
アスカ「そんなんじゃないわよ!! ふざけんな!!」
葛城宅 浴室
マリ「いい湯だな、ハハハン。いい湯だな、ハハハン。湯気が天井からポタリと背中に〜」
アスカ「あーもーサイテー!! 結局、使徒を倒せたかどうかわっかんないじゃない!!」
レイ「……」ゴシゴシ
アスカ「私の撃墜数は0のままってどうなのよ!」
マリ「つめてえな、ハハハン。つめてえな、ハハハン。ここは北国、登別の湯〜」
アスカ「あんたもいつまで暢気に歌ってるわけ?」
マリ「湯に浸かると自然と歌がでちゃうもんだって。心の洗濯ってやつ」
アスカ「成果がなかったのよ。少しは焦ればぁ?」
マリ「そういう数字には興味ないからにゃぁ。姫様と王子様がいてくれたら使徒なんて怖く無さそうだしぃ」
アスカ「エヴァとしての自覚がないやつはここにもいるわけね」
マリ「わるいねぇ」
アスカ「ちょーイライラする! なんで揃いも揃ってこんなやつばっかりなのよ!!」ガンッ!!!!
サンダルフォン「……」ギャー!!!
アスカ「ん? げ、なんか潰しちゃった。なにこれ、虫? きもちわるっ。シンジのやつ、お風呂掃除手を抜いたわね」
リビング
ミサト「楽しそうな声がお風呂場から聞こえてくること」
シンジ「すみません。使徒をまた……」
ミサト「いいから、気にしないで。ちゃんと撃退はできたんだし」
シンジ「そうかもしれないですけど……」
ミサト「そうそう。碇司令から伝言があるの」
シンジ「父さんから?」
ミサト「よくやったな。だってさ」
シンジ「……」
ミサト「シンちゃん、うれしい?」
シンジ「そ、そんなことは……」
ミサト「嘘つかないの。嬉しいときは素直に喜びなさい」
アスカ『ちょっとシンジー!! 気持ち悪い虫がお風呂場にいたんだけどー!! 手で潰しちゃったじゃない!! どうしてくれるわけー!? 責任取りなさいよー!!』
シンジ「お風呂にはいってるんだから、洗えばいいじゃないか」
アスカ『そういう問題じゃないのよ!! ほんっとにバカシンジなんだから!!』
サンダルフォン…
早くシンジにオフロダイバーさせなきゃ(使命感)
シャムシェルが生きてるってことは4号機は作られないしアメリカは爆発しないし量産機は作られないってことかしら
いい加減にしろ(褒め言葉)
アスカが地味にキルカウント増やしてるww
翌日
シンジ「よっと。ミサトさーん、アスカー」
ミサト「あさごはんー?」
アスカ「ねむ……」
シンジ「はい。急いで食べてくださいね」
ミサト「はぁーい、いただきまーす」
アスカ「朝はパンがいいって言ってるでしょ」
シンジ「いいじゃないか、別に。僕が作ってるんだし」
アスカ「なによ! リクエストに応えられないなんてシェフ失格ね! ふんっ」
シンジ「なら、アスカは食べなくてもいいよ」
アスカ「食べるわよ!」
ミサト「大体、アスカはここに住む必要ないのよ? レイやマリみたいに家だってこっちが用意してあげるのに」
アスカ「また荷物を移動させるなんて面倒じゃないの」
シンジ「僕と住むのは嫌っていってなかったっけ」
アスカ「引越しの面倒さとアンタと一緒に住むのを天秤にかけただけよ。別にバカシンジとなんて住みたくないわっ」
学校
シンジ「おはよう」
トウジ「おー、おはようさん。昨日は大活躍やったみたいやのう。いや、昨日もか」
シンジ「そんなことないよ。あれはアスカがいたからで」
ケンスケ「お、いつの間にか名前で、しかも呼び捨てなんて。二人にどんな変化があったのか気になるところだ」
トウジ「なんやなんや。第二の嫁かいな。かー、エヴァってモテるんやな」
シンジ「そ、そんなのじゃないよ!!」
アスカ「またあの3バカがなにか言ってるわね」
ヒカリ「あの、式波さん」
アスカ「ん? ヒカリだっけ? アスカでいいわよ」
ヒカリ「え、あ、いいの?」
アスカ「それで、何か用事?」
ヒカリ「えっと、今日のお昼、一緒に食べない? その、アスカとは色々お話したいなって思ってて」
アスカ「ふぅーん。そういうことならもっと早く言ってくれたらよかったのに」
ヒカリ「任務のことで忙しそうだったし、話しかけにくかったんだ。でも、これからは遠慮しないようにするね」
屋上
レイ「……」
マリ「考え事かにゃ」
レイ「何か用?」
マリ「なんにも変わんないね。昔よりは少し可愛げが出てきた気もするけど」
レイ「私は何も変わらないわ。そう思うなら貴方が変わっただけ」
マリ「そう? 昔のあんただったら、一緒にお風呂なんて絶対に入らなかったと思うな」
レイ「……」
マリ「変わったのはあんたのほうじゃない、綾波レイ」
レイ「私は何も変わらない。私はエヴァ零号機としてここにいるだけ。そう言われた」
マリ「ゲンドウくんに?」
レイ「みんなに」
マリ「ま、あんたがそう思ってるならいいけど、そういうのって面白くなくない?」
レイ「別に。私は使徒と戦うだけだから」
マリ「そーいうのが面白くないって言ってんだけどなぁ」
ネルフ本部
冬月「これで撃退できた使徒は4体。2体の欠番は予定外だな」
ゲンドウ「構わん。欠番が出たところで我々の計画に支障はない」
冬月「しかし、また欠番が出てくるようならば、考えなくてはならないぞ」
ゲンドウ「……」
冬月「そのとき、お前がどのような結論を出すのか、楽しみでもあるが」
ゲンドウ「使徒の目的は確実に地下に眠る鍵だ。それを奪われなければ何も起こりはしない」
冬月「使徒が何故、あのような姿で人間の前に現れたのかも、見当がついているのか」
ゲンドウ「ああ。奴等もまた進化し現代に目覚めた者だ。その時代に適応する」
冬月「巨人では住みにくい世界になったということか」
ゲンドウ「第三新東京市が要塞都市になったときに奴等は進化した。ここへ容易に侵入できるようにな」
冬月「その結果、奴等は本来の力を失いながらも、エヴァンゲリオンの開発を阻止したということか」
ゲンドウ「だが、シナリオ通りにことは進まなくてはならない」
冬月「そのためのチルドレンだからな」
ゲンドウ「シンジたちならばエヴァがなくても成し遂げる。間違いなく」
食堂
ミサト「いやー、順調ねー」
リツコ「なんの話?」
ミサト「使徒のことに決まってるでしょ」
リツコ「そうね。予想以上の成果ではあるわ」
ミサト「レイだけなら、ここまで上手くいかなかったでしょうしね」
リツコ「そもそも使徒に対して人類では敵わないとされてきた。人の手に余る存在をこうも簡単に撃退できるのは少し肩透かしね」
ミサト「それがいいんじゃないの。平和が一番よ」
リツコ「その平和の犠牲が子どもの精神なら安いものね」
ミサト「言い方が悪くない?」
リツコ「事実よ。アスカやマリにしてもそれなりのストレスはもっているはずだもの」
ミサト「そのケアをあたしたち、大人がやればいいんでしょう」
リツコ「ミサトにそれができるとは思え――」
バンッ!!
ミサト「え!? なに、停電!?」
管制室
冬月「何があった」
マヤ「分かりません! 突然、全ての電力がダウンしました!!」
冬月「修復作業を急げ」
マヤ「ですが、整備班は二人だけです! 大規模のものだととても手が回りません!」
ゲンドウ「それでも急がせろ。冬月」
冬月「分かっている」
マヤ「副司令、どちらに?」
冬月「本部のことならば任せろ」
マヤ「さ、流石です!」
ゲンドウ「原因を調べろ」
マヤ「電力が復旧するまでは無理です!」
ゲンドウ「なんとかしろ」
マヤ「無理です!」
ゲンドウ「……」
ネルフ本部 入口
アスカ「なんで開かないのよ!!」ガンッ
シンジ「やめなよ、アスカ」
マリ「んー、電気が通ってないんじゃない?」
レイ「……」
アスカ「何かあったのかしら?」
シンジ「ミサトさんに連絡してみよう」
レイ「使徒……」
マリ「え、マジぃ? それだと結構ピンチじゃん」
シンジ「あ、ミサトさん? あの、僕たち本部の入口まで着ているんですけど」
ミサト『ごめんなさい。今、原因不明の停電ででんてこまいなの。またあとで連絡するわ」
シンジ「え!? ちょっと待ってください!! ミサトさん!!」
アスカ「なんだって?」
シンジ「本部が停電しているんだって。原因はわからないみたい」
アスカ「なによそれ。マズいじゃないの。なんとかして中に入るわよ」
送電室
リツコ「この大規模なシステムダウンの原因が判明したわ」
ミサト「なんだったわけ?」
リツコ「何者かによって発電施設及び送電施設を破壊されていたみたいね。予備発電のものも丁寧にね」
ミサト「ここって完全に独立したものだったはずでしょ? ってことは、本部に侵入して破壊したってことになるわよ」
リツコ「そうよ」
ミサト「まさか。そんなことをする理由がどこにもないじゃない。今現在のネルフはただの貧乏組織よ」
リツコ「それでも確実に成果は出しているわ。それをよく思わない組織がいるということね」
ミサト「そんな奴がいるわけ」
リツコ「いるからこうなったんじゃないかしら」
ミサト「ちっ。面倒ね」
リツコ「それより、シンジくんたちはどうしたの? ここへ来ているんでしょう?」
ミサト「さぁ、あとで連絡するって言っておいたから、家に戻ってるんじゃない?」
リツコ「そうね。ここにいるよりはまだ安全かもしれないわね」
ミサト「さてと、とりあえずは施設の復旧を急がないと、なんにもできないわ。ほら、リツコも手伝って」カチャカチャ
通気口内
マリ「しあわせはーあるいてこないーだーからあるいていくんだねぇ。いちにち、いっぽ、みっかでさんぽ、さーんぽすすんでにほさがるぅ」
レイ「……」
アスカ「ふっふーん。一度、やってみたかったのよね。通気口から侵入するの」
シンジ「これどこに続いてるの?」
アスカ「知らない」
シンジ「それならどこにでるか分からないじゃないか」
アスカ「中に入ればあとは庭みたいなもんでしょ」
シンジ「本部はすごく広いんだよ。アスカだってまだこっちにきて一週間ちょっとだし、見てないところもたくさんあるでしょ」
アスカ「なんとかなるわよ。黙って私についてきたらいいのよ」
シンジ「めちゃくちゃだね……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
アスカ「きゃぁ!! このスケベ!!!」ドガッ
シンジ「いた! なにするんだよ!!」
アスカ「今、私のお尻を触ったからでしょうが! このエロシンジ!!」
シンジ「どうして僕がアスカのお尻を触らなくちゃいけないんだ。触れって言われても触らないよ」
アスカ「なによそれ、ムカつくぅ!」
シンジ「なんでそこで怒るんだよ」
マリ「乙女心は密の味ってね」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「んっ……」ビクッ
マリ「お?」
レイ「……」
マリ「誰かにお尻、触られた?」
レイ「貴女じゃないの?」
マリ「私はこうやって鷲づかみにする!」モミモミッ
レイ「やめて」
アスカ「何かがいるみたいね。とにかくここを抜けるわよ」
シンジ「はやく進んでよ、アスカ」
アスカ「私に命令しないでっ」
送電室
冬月「送電線が溶けているな」
ミサト「切られているんじゃないんですか?」
冬月「一見しただけだと鋭利な刃物で切られたようだが、よく見ると……」
ミサト「切断面が溶けてる……」
冬月「となれば答えは一つしかあるまい」
ミサト「テロ、ですね」
リツコ「やはり人の手によるものだったわね」
冬月「人類にとって最大の敵は人類ということか」
ミサト「しかし、ネルフを直接的に攻撃する理由がないように思えます」
リツコ「言ったはずよ。私たちの活躍が気に入らない誰かだと」
冬月「その可能性が高いだろうな」
ミサト「戦自の連中だってこっちに丸投げしてるのに?」
リツコ「もっと上の人間じゃないかしら」
冬月「経費の大幅削減のツケが回ってきたか」
格納庫
アスカ「よっと! はー、出てこれたー」
シンジ「ここはエヴァンゲリオンの格納庫、だよね」
レイ「正確には格納庫になるはずだったところね」
マリ「シャバの空気、サイコー」
アスカ「さ、ミサトのところまでいそぐわよ!!」
シンジ「どうやって行くの? 電力が通ってないなら、ドアも開かないし」
アスカ「手動でなんとかなるわよ」
シンジ「でも……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
アスカ「きゃぁ!?」
マリ「姫、お尻にでっかいクモが這ってる」
アスカ「いやー!! シンジ、とりなさいよ!!」
シンジ「こ、こんなに大きなクモには触りたくないよ」
アスカ「あんたそれでも男なの!?」
シンジ「そんなこと言われても……」
アスカ「いいからとって!!」
レイ「はい」
アスカ「お……」
レイ「とれたわ」
マトリエル「……」ジタバタ
マリ「クモに似てるけど、クモじゃないっぽい」
シンジ「な、なんていう虫なんだろう……」
レイ「見たことないわ」
アスカ「とりあえず、殺しなさいよ。気持ち悪い」
レイ「それは……」
マトリエル「……」ジタバタ
レイ「……」
アスカ「なにしてるわけ?」
シンジ「綾波は可哀相だから殺したくないって思ってるんじゃないかな?」
アスカ「はぁ? なんでそうなるわけ? この女にそんな慈悲深い考えがあるとは思えないけど」
シンジ「綾波だってそういう優しいところはあるよ」
マリ「あったんだぁ」
レイ「分からない。でも、そういうことはあまりしたくないって思ってる」
アスカ「自分のことが分からないってこと?」
レイ「そうかもしれないわ」
アスカ「変なの」
レイ「そうね。私、変かも」
アスカ「やっと気づいたわけ? アンタ、バカぁ?」
シンジ「そこまでいうことないじゃないか」
アスカ「はぁ? この女の味方するの? いいじゃない、お似合いね。結婚でもすればぁ?」
シンジ「どうしてそうなるんだよ!」
マリ「ふふーん。やっぱり、可愛げあるじゃん」
レイ「どうして……こんな気持ち……わからない……」
マトリエル「……」ジタバタ
数時間後 管制室
ミサト「復旧作業、終了しました!!」
ゲンドウ「予定より2時間早まったようだな。よくやった」
ミサト「ありがとうございます!!」
マヤ「さすが、先輩ですね!」
リツコ「殆ど、副司令がやってくれたけどね」
ゲンドウ「冬月もよくやってくれたな」
冬月「これぐらいのことはする」
ゲンドウ「使徒の可能性は?」
冬月「ないとは言えんがあまり考えなくてもいいだろう」
ゲンドウ「奴等がここへ侵入したとなれば既に事は始まっているか」
冬月「ああ。電力だけをダウンさせるのもおかしい」
ゲンドウ「内部に犯人がいるかもしれん。頼む」
冬月「既に犯人探しは始まっている」
ゲンドウ「そうか」
シンジ「ここかな?」
ミサト「あ、シンジくん!」
シンジ「ミサトさん!!」
アスカ「なーんだ、ここだったんだ」
マリ「いやー、迷いに迷った」
アスカ「一年前に弐号機の実験で松代に寄っただけだったのがいけなかったわね。ここの案内もさせるべきだったわ」
ミサト「あれ、レイは一緒じゃないの?」
シンジ「えっと、綾波は……その……」
アスカ「えこ贔屓なら帰ったわよ」
ミサト「貴方たちだけここに来たってこと?」
マリ「そーそー。ミサトが心配でね」
ミサト「嬉しいこといってくれるじゃない」
シンジ「心配したのは本当ですよ」
ミサト「シンちゃんったら、かわいいんだから、もー」ギュゥゥ
アスカ「ちょっと! 保護者がそんなことしてもいいの!?」
綾波宅
レイ「……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「今日からここがあなたの部屋」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「どうしてあなたを拾ったのか、まだわからないけれど、これでよかったと思う」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「他人になんて興味なかったのに。他の生き物に触れようと思ったこともないのに」
レイ「変わったのは私……? どうして……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「碇くんに出会ってから……」
レイ「碇くん……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「碇くんのことを考えるとポカポカする……」
レイ「わからない……何もわからない……」
飼うのかよww
市街 某所
「そうか。また星になったんだね。さようなら」
ラミエル「……」キャー?
「また一つ、儚い生命が空に上がっていったよ。悲しいね。この世界は運命の輪の中にいる。リリンも僕たちも鳥かごの鳥と同じだ」
ラミエル「……」キャー…
「大丈夫だよ、ラミエル。悲劇を繰り返さないために、僕は、僕たちはいるのだからね」
ラミエル「……」キャー♪
サキエル「……?」
「第8の使者、サンダルフォンが既にこの世の輪廻から外れたのは知っているね。マトリエルも今や囚われの身」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「そして、たった今、10番目の使者であるサハクィエルが大気圏で燃え尽きたよ。あの小さな体躯では地上へ墜ちることもできなかったようだ」
サキエル「……」
「けれど絶望は今、希望へと昇華した。僕たちの光はまだ閉ざされてはいない」
ラミエル「……」キャーッ
「ああ、次の使者が必ず……僕たちの悲願を……」
サキエル「……」カタカタカタ
「準備はできたかい?」
サキエル「……」コクッ
「では、リリンの巣に送り込むんだ」
サキエル「……」ポチッ
ラミエル「……」キャー?
「彼は姿が見えないほど小さく、リリンが作り出した電回路網を渡り歩くことができる」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「そうさ。リリンの巣がどこにあるのかはわかった。そしてリリンの僕となった者たちの居所もね。あとは出来うる限り、外から壁を排除しなくてはいけない」
サキエル「……」
「力だけが全てではないからね。リリンは知恵の果実を口にした者達だ。力で屈することはない」
サキエル「……」
「今までもただ巣を探していただけのはずだよ。僕たちは力による侵略はしていない」
シャムシエル「……?」
「僕も犠牲は出したくないんだ。まだ、ね」
ネルフ本部
マヤ「先輩、少しいいですか?」
リツコ「どうしたの?」
マヤ「外部からハッキングを受けているようなんですけど」
リツコ「ここを狙うなんて大胆ね」
マヤ「MAGIの演算速度に勝てると思っているのでしょうか?」
リツコ「思っているからこういうことができるんじゃないかしら」
マヤ「どうします?」
リツコ「そうね。まずはブロックしてみましょう」カタカタ
マヤ「あ、ウイルスを送り込まれたみたいです」
リツコ「MAGIには自浄できるプログラムもあるから心配ないわ」
マヤ「ホントですね。ウイルスが死滅していきます」
リツコ「もう大丈夫みたいね。マヤ、食事でもどう?」
マヤ「いきますっ!」
リツコ「ふふ。それじゃあ、行きましょう」
市街 某所
サキエル「……」
「ダメだったんだね。イロウル、君のことは忘れないよ」
ラミエル「……」キャー…
シャムシエル「……」ニョローン
「この拾った機械の箱一つではリリンの頭脳に太刀打ちできないようだね」
サキエル「……!」
「イロウルもよくやってくれたと思うけれど、やはり性能の差には敵わないのさ」
サキエル「……」
「落ち込むことはないよ。イロウルは生きていた証を僕たちに残してくれた」
サキエル「……?」
「メールの受信ボックスに何か届いていないかい?」
サキエル「……」カタカタ
イロウル:サヨナラ サキ ニ イキマス ツイシン カギ ハ アソコ ニ アルミタイ デス
「ありがとう、イロウル。これでまた一つ、僕たちは前に進める」
うーんこの無能指揮官
このマトリエルはゴキブリとか駆除してくれそうだな
マトリエル軍曹か、頼りになるな……
ネルフ本部 トレーニングルーム
アスカ「はっ! でぇい!!」
シンジ「くっ……!」
アスカ「チャーンス! これで最後よ!! アスカパーンチ!!」
シンジ「これぐらいなら!」ガッ
アスカ「なっ! バカシンジのくせに私の必殺技を受けるなんてしゃらくさい!!」
シンジ「や!!」バキッ
アスカ「きゃぁ!?」
ミサト『はーい、そこまでー。シンちゃんのかちー』
シンジ「やった……アスカに勝った……」
アスカ「ちっ。ちょっと油断しちゃったわね。もう一度よ!」
ミサト『トレーニングはもうおしまいよ、アスカ。また明日にしなさい』
アスカ「でも! 私がシンジに負けたままなんて!!」
ミサト『シンちゃんだって強くなっている証拠よ』
アスカ「むぅ……。ふんっ! 総合力じゃ私が上なんだから!! 私がシンジより弱いわけじゃないの!! そこは間違えないでよね!!」
シンジ「それは分かってるよ。今のは偶々上手くいっただけだし」
アスカ「そうよ。よく分かってるじゃない。でも、男としてはてんでダメね。そこは否定しなきゃ」
シンジ「アスカはほんと、難しいよね」
アスカ「簡単な女じゃないって言いなさい」
レイ「碇くん」
シンジ「あやな――」
マトリエル「……」カサカサカサカサ
アスカ「ちょっと! あんた、何連れてきてるのよ!!」
レイ「この子はお留守番、できないと思って」
シンジ「か、可愛がってるんだね」
レイ「わからないけど、この子と一緒にいると落ち着く気がする」
マトリエル「……」カサカサカサ
アスカ「気持ち悪い」
シンジ「そのクモ……かな? 名前とか決めたの?」
レイ「名前……。名前をつけないといけないの?」
シンジ「いけないってわけじゃないけど、呼ぶときとか困らないかな?」
レイ「そうね……」
アスカ「別にクモでいいじゃない」
シンジ「綾波は大切にしてるみたいだし、そういう言い方はしなくてもいいじゃないか」
レイ「ペ、ペンペン、とか」
シンジ「え?」
アスカ「ペンペン?」
レイ「……ダメ?」
シンジ「う、ううん! 良い名前だとおもうよ! 可愛いし!!」
アスカ「なんでペンペンなの?」
レイ「出会ったとき、お尻を触られたから。お尻から連想できる音はペンペン」
アスカ「あんたって本当に変なやつね」
シンジ「僕は良いと思うよ。これからは僕もペンペンって呼ぶから」
レイ「ありがとう、碇くん。ペンペンをよろしく」
マトリエル「……」カサカサカサカサ
シンジ「それじゃあ綾波、また明日、学校でね」
レイ「ええ」
アスカ「ペンペンを学校まで連れてこないでよ」
レイ「わかったわ」
アスカ「ホントにわかってんの」
シンジ「流石に綾波も学校までは連れてこないよ」
アスカ「どーだか」
レイ「ペンペン……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサ
レイ「……」
マリ「へー、笑えるようになったんだ」
レイ「なに?」
マリ「自然に『ありがとう』まで言っちゃってるし。随分と可愛くなったじゃん。一年前とは大違い」
レイ「ありがとう、感謝の言葉、初めての言葉……。そうね、私は変わってしまったみたい」
マリ「人としては良いことだけど、それが綾波レイとして良い方に向かうかは別の話かもね」
翌日 学校
トウジ「やっぱりエヴァになると色々と特典とかあるんか?」
シンジ「特典って?」
ケンスケ「あの葛城ミサトさんからごほうびのキスとか!」
トウジ「伊吹マヤさんから抱きしめてもらえるとか!!」
シンジ「そ、そんなのないよ!」
アスカ「まーた、あの3バカは、朝からバカな話をしているわね」
ヒカリ「ちょっと鈴原! そういう話は慎みなさいよ!」
トウジ「うっさいわい! これは男にとっては大事な話なんや!!」
レイ「おはよう」
シンジ「え……」
ケンスケ「綾波が……」
トウジ「おはようって……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
アスカ「げ!?」
ヒカリ「きゃー!!!」
トウジ「なんや、あれ!!」
ケンスケ「クモ、いや、ザトウムシっぽいなぁ。あんなに大きなのは初めてみたけど」
シンジ「あ、綾波!!」
レイ「なに?」
アスカ「ペンペンを連れてこないでって言ったでしょうが!!」
レイ「私も何度かついて来ちゃダメって言ったのだけど、どうしてもついてくるから……ごめんなさい……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
ヒカリ「いやー!! クモー!!」
アスカ「ほら! 大パニックよ!! どう落とし前つけるつもり!?」
レイ「大丈夫。ペンペン、まて」
マトリエル「……」ピタッ
シンジ「止まった……」
トウジ「なんや、このクモ、躾けられとるんかい」
ケンスケ「すごい。虫を躾けるなんて普通できないのに」
レイ「ペンペンは言葉を理解できるみたいだから」
ケンスケ「益々すごい!! 虫に人間の言葉がわかるなんて!!」
マトリエル「……」
トウジ「天才蜘蛛か、こいつ」
アスカ「ホントにクモなの?」
レイ「ペンペン、躍って」
マトリエル「……」クイックイッ
シンジ「こんな芸まで!? 綾波、一晩でこんなに仕込んだんの!?」
レイ「鏡の前で踊っていたから、そのときに「躍れるの?」ってか聞いたら、「躍れる」って」
シンジ「ペンペンがそういったの?」
レイ「そう言った気がするだけ」
ケンスケ「でも、実際に綾波の言葉で躍りだすなら理解しているのは確実ってことになる」
トウジ「とりあえず天才なクモってことやろ。しかし、言葉を理解できるならなんか可愛くみえてくるな」
レイ「そう、思う?」
トウジ「やっぱり、こっちの言葉に反応してくれるのは嬉しいで」
レイ「嬉しい……。ありがとう」
トウジ「え……」
レイ「そう思ってくれるだけで、嬉しい」
トウジ「あ、ああ、まぁ、あれや、正直な感想をいうただけやしな」
ケンスケ「お、トウジが照れてる」
トウジ「いうな!!」
シンジ「綾波があんなに自然と笑ってるところ、学校だとはじめて見たかも」
アスカ「むっかつくわね。無愛想女って呼べなくなるじゃない」
シンジ「それは最初から呼ばないであげてよ」
アスカ「はいはい。シンジ様は綾波レイに惚れこんでるものねー」
シンジ「ち、ちがうよ!!」
レイ「噛んだりしないし、毒ももっていないわ。多分」
ヒカリ「多分ってなに!?」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
ヒカリ「やっぱりダメー!!!」
ネルフ本部
マヤ「市民の目撃情報からこのような物体を確認しました。モニターに出します」ピッ
レリエル『……』フワフワ
ミサト「なに、あの白黒のバルーンみたいなの。使徒なの?」
マヤ「パターンはオレンジです。A.T.フィールドも確認できません」
リツコ「対象物の詳細は不明ね」
ミサト「突いたら割れるんじゃないの?」
リツコ「やってみたら? 私はしないけれど」
ミサト「そんなのあたしだってしたくないわよ」
ゲンドウ「エヴァを出せ」
ミサト「司令、対象物の詳細が判明するまでは様子を見たほうが……」
ゲンドウ「奴は使徒だ。何らかの方法でこちらの目を誤魔化そうとしている」
ミサト「そう結論を出すのは早計では」
ゲンドウ「これは命令だ、葛城一尉」
ミサト「……分かりました。エヴァを発進させます」
市街
レリエル「……」
アスカ「目標を肉眼で確認。赤きサイクロンチーム。いつでもいけるわ」
シンジ「いつからそんなチーム名になったの」
ミサト『ごめんなさいね。もう少し時間をかけて情報収集をしてから貴方たちには動いて欲しかったんだけど』
アスカ「いいわよ、別に。あんなの使徒以外にないじゃない」
シンジ「僕もそう思います」
ミサト『そうね。貴方たちに第三新東京市の未来を託すわ』
アスカ「いっくわよ!!」
シンジ「うん!」
マリ『こっちもオッケー』
レイ『指示を』
アスカ「零号機と5号機はその場で待機! また使徒が仲間をつれてきている可能性があるわ!!」
マリ『そのときはまた時間稼ぎね。りょーかい』
レイ『了解』
アスカ「赤い魂のルフラン! エヴァンゲリオン弐号機!!」
シンジ「残酷な青のテーゼ、エヴァンゲリオン初号機!」
シンジ・アスカ「「参!! 上!!」」
レリエル「……」
アスカ「反応がないわね」
シンジ「どうするの?」
アスカ「あれできめるわよ!」
シンジ「わかったよ」
アスカ「フォーメーション!! デルタ!!」
シンジ「スーパーダイナミック……」
アスカ「ボンバァァァァ!!!」
レリエル「……」スッ
シンジ「消えた……!?」
アスカ「なによこいつ!!」
マヤ『パターン青!! 使徒です!! 初号機と弐号機の直下に出現しました!!』
シンジ「直下って……?」
ミサト『逃げて! シンジくん!! アスカ!! その影が使徒よ!!』
アスカ「影ですって!?」
シンジ「うわっ!? なんだよこれ!!」
アスカ「引き摺り込まれる……!!」
マリ「助けて欲しいかな、お姫さま?」
アスカ「さっさと引きあげなさいよ!!」
マリ「はいはい」
レイ「碇くん、手を」
シンジ「綾波、ありがとう」ギュッ
レイ「ふっ……!」ググッ
マリ「よっこいせーのせー」ググッ
アスカ「ちょっと!! しっかりひっぱってよ!!」
シンジ「このままだと綾波たちまで――」
レイ「あ……」ズルッ
ネルフ本部
ミサト「シンジくん……たちは……」
マヤ「完全にロスト……。反応がなくなりました……」
リツコ「こちらから呼びかけてみて」
マヤ「ダメです。こちらから幾ら呼びかけても音声は届いていません」
リツコ「そう」
ミサト「そんな……!!」
リツコ「エヴァ4機の消失は大きな痛手ね」
ミサト「違う! 失ったのは子どもたちのほうでしょう!? エヴァじゃないわ!!」
リツコ「そうね」
ミサト「リツコ……どうしてあなたは冷静なの……」
リツコ「こういう事態は想定しているべきよ。あなたみたく取り乱さないようにね」
ミサト「そうね……それができれば……どんなにこの仕事が楽か……」
冬月「碇、いいのか」
ゲンドウ「ここでエヴァを失ったときは、人類の最後というだけだ」
虚数空間
シンジ「ん……ここは……?」
アスカ「シンジー、みてみてー」
シンジ「アスカ、無事だったんだ」
アスカ「ここ浮けるわよ。一度で良いから重力と言う名の楔を引きちぎって飛んでみたかったのよね」
シンジ「……」
マリ「ここは使徒の胃袋ってところか。まいったね」
シンジ「使徒に取り込まれたってこと?」
マリ「しょーゆーこと。出口も入口もない場所って感じがする」
シンジ「僕たち、ここから出ることができないの?」
マリ「あるいはそうかもしれない」
シンジ「そんなことって……」
レイ「脱出する方法を探しましょう」
シンジ「綾波……」
レイ「早く出ないと……ペンペンのごはんが……」
アスカ「4回転宙返りからのスーパーサンダーキック!!」
マリ「姫様、遊んでないで一緒に脱出する方法を考えない?」
アスカ「こういうのは中からは脱出できないって相場が決まってるのよ。ミサトがなんとかしてくるのを待ったほうがいいわね」
マリ「それが無理なら私たちは王子様を取り合って子孫を残しあいっこしなきゃいけなくなるなぁ」
アスカ「な……」
マリ「王子様には側室が付き物だけど、大丈夫かなぁ。体、もつかぁ?」
アスカ「な、なんで私がシンジとそんな、こと、しなくちゃいけないのよ!!!」
マリ「そんなことってどんなこと?」
アスカ「うっさい!! 脱出方法を探すわよ!! コネ眼鏡!!!!」
マリ「えー? アダムとイブ×3でいいじゃん?」
アスカ「私をイブにいれんな!!」
シンジ「ダメだ……上も下も右も左もない……」
レイ「ここには境目がないのね」
シンジ「こんなのどうやって出れば……」
レイ「分からないわ」
マリ「ここに取り込まれてから、もうすぐ5時間ってところかな」
アスカ「まだ、出れないわけ……?」
マリ「外からでも開けられそうにないってことかにゃ」
アスカ「……」
シンジ「なんだか、寒くなってきた気がする……」
レイ「特殊装甲には一応生命維持装置がついているから、それが切れかけているのかもしれないわ」
シンジ「そ、そんなのがあったんだ」
レイ「体温を一定に保つだけみたいだけれど」
シンジ「それならもし、装置が切れたら……」
レイ「低温度で死ぬかもしれないわね」
アスカ「嫌!!」
シンジ「アスカ?」
アスカ「死ぬのは嫌!! 出して!! ここからだして!!」
シンジ「アスカ!! 落ち着いてよ!!」
アスカ「死ぬのはいやぁ!!」
マリ「姫様、まだ時間はあるって。焦ることないから」
アスカ「でも……でも……!! こんなのもう無理じゃない!! 私たち、ここは出れないのよ!?」
マリ「ヘーキ、ヘーキ。正義の味方は不死身なんだし」
アスカ「ちがう! 私は普通の人間だもん!! こんなところにいたら死んじゃうじゃない!!」
シンジ「アスカ……」
レイ「彼女の本当の姿なのね」
マリ「虚勢を張っている分、脆いところもあるの。大目にみてくれると助かる」
レイ「私は気にしないわ」
マリ「それでいいよ。サンキュ」
アスカ「ママにあわせて!! あわせてぇ!!!」
シンジ「落ち着いて、まだ僕たちは生きてるから。なんとかなるよ」
アスカ「なによ!! それならシンジがなんとかしてよ!! ここから出してよ!!」
シンジ「……」
アスカ「出来もしないのにそんなこといわないで!! うぅ……うっ……」
シンジ「ごめん……」
マリ「あーあ、ここまでかぁ。短い人生だったけど、それなりに充実してたし、まぁ、いいかなぁ」
シンジ「そういう考え方ができるって凄いね」
マリ「そう? ま、仮設5号機としてもう少し活躍したかったっていうのはあるけど」
シンジ「マリさんはどうしてエヴァになったの?」
マリ「運命って信じる方?」
シンジ「どういうこと?」
マリ「碇シンジくん。君と一度、会ってる」
シンジ「そう、なの?」
マリ「エヴァンゲリオンの研究員でもあった碇ユイとその夫、碇ゲンドウに連れられて、エヴァを見に来てたよね」
シンジ「え……?」
マリ「そのとき、私も傍にいた。それだけ」
シンジ「どうして……そういえば……そんなことも……でも、それって……すごく小さいときだったような……」
マリ「あの場には姫様もいたし、綾波レイもいた。だから、これは運命って奴」
シンジ「運命……」
アスカ「ここで死ぬのも……運命なの……?」
マリ「そうなるにゃー。そろそろ腹をくくってもいいんじゃない? かなり寒くなってきてるし」
アスカ「死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……」
シンジ「諦めるしかないのかな」
レイ「ペンペンが心配……」
マリ「動物の心配をする綾波レイが見れただけでも、この世界に生まれた甲斐はあったかな」
レイ「貴女は一体……」
マリ「そだっ! どーせ死ぬなら、これを見せておくか」
シンジ「こんなときに何」
マリ「冥土の土産っていうんでしょ、こういうの」
シンジ「その端末は?」
マリ「昔、あまりにも微笑ましいから記念に撮影しておいたのがあるわけ。その動画がはいってる。私の宝物」
シンジ「何を撮影したの?」
マリ「まぁまぁ、みんなで見てよ」
アスカ「興味ない……」
マリ「いーから、いーから。はい、再生」ピッ
アスカ『わたしなのー!!』
レイ『わたしがさき』
アスカ「これ……私……?」
レイ「私、なの?」
マリ「可愛いじゃん」
シンジ「あの、この子ってもしかして……」
アスカ『シンジはわたしとけっこんするのー!』
レイ『わたしがさきにけっこんする』
シンジ『やめてよー』
『シンジはモテモテね』
『いいねぇ。将来はプレイボーイかぁ?』
アスカ「ぶふっ!!」
レイ「……」
シンジ「あ、えーと……どうして、こうなったんだろう……」
ネルフ本部
ミサト「いいから!! どうしたら助けられるか考えて!!」
リツコ「現段階ではサルベージできる可能性は0に近いといっているわ。つまり、助ける術がないの」
ミサト「それを考えるのが貴女の仕事でしょ!?」
リツコ「無駄なことは考えないようにしているの」
ミサト「リツコ!!」
リツコ「現実をみなさい、ミサト。消えたエヴァよりも新たなエヴァを用意するほうが――」
ミサト「……!!」パシンッ!!!
リツコ「……私をぶっても何も変わらないわよ、葛城一尉」
ミサト「くっ……」
マヤ「大変です!! 使徒から高エネルギー反応が!!」
ミサト「え……」
リツコ「なんですって?」
レリエル『……』ピキピキピキ
ミサト「あの白黒のバルーンに亀裂が……なにが起こるの……?」
レリエル『……』ピキピキピキッ
『ああぁぁああぁぁぁぁ……!!!!』
ミサト「この声は……」
アスカ『あぁあぁぁあああぁぁぁぁ!!!!』バリーン!!!!
マヤ「エヴァ弐号機を確認!!!」
リツコ「暴走、しているの?」
アスカ『私はあんなこといわないんだからぁぁぁぁ!!!!』
マヤ「使徒、消滅!!」
ミサト「どういうこと!?」
マヤ「使徒内部より強力なA.T.フィールドを確認しました!」
リツコ「そのフィールドが使徒のフィールドを打ち破ったということね」
冬月「心の壁を打ち破るのはやはり心の壁か」
ゲンドウ「ああ」
アスカ『いやぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!』
ミサト「アスカになにがあったっていうの……」
市街
シンジ「う……ん……ここは……」
ミサト「シンジくん! 気が付いたのね!?」
シンジ「ミサトさん……? 僕は……」
ミサト「ここで気を失っていたのよ。痛いところはある?」
シンジ「いえ、それより、他のみんなは……」
ミサト「みんな生きているわ」
シンジ「よかった……」
リツコ「シンジくん。少しいいかしら」
シンジ「え?」
ミサト「あとにして」
リツコ「使徒の内部で何があったのか覚えている?」
シンジ「あ……えと……覚えていません……」
リツコ「そう」
ミサト「やめて、リツコ。今はシンジくんたちを休ませるほうが先よ」
ネルフ本部 司令室
マリ「こうして面と向かってお話しするのは久しぶりだね、ゲンドウくんっ」
ゲンドウ「何も変わらないな。時間が止まっているかのようだ」
マリ「事実、私の体はあのときのまま。エヴァのプロトタイプとして呼ばれたときから」
ゲンドウ「そうだな」
マリ「感謝したほうがいいかにゃ。若い体を維持できる今を」
ゲンドウ「それはお前自身に任せる」
マリ「碇ユイはずっと謝ってたけど、ゲンドウくんは非を認めないよね。まぁ、そうでなきゃゲンドウくんじゃないけど」
ゲンドウ「ここへお前を呼んだのはほかでもない。使徒内部で何があったかを報告してもらうためだ」
冬月「黙秘権はないと思ってくれ」
マリ「冬月先生も相変わらずで少し安心した。あの虚数空間から脱出できたのは、これのおかげ」
ゲンドウ「これをシンジに見せたのか」
マリ「死ぬって思ったからね。知らないで死ぬのは可哀相でしょ」
ゲンドウ「……」
冬月「碇の息子が感付くのも時間の問題か」
医務室
アスカ「……」
シンジ『あの……入ってもいいかな……?」
アスカ「あいてる」
シンジ「お邪魔します……」
アスカ「……アンタ、覚えてる?」
シンジ「な、なにを?」
アスカ「あの中で何があったのか」
シンジ「ええと……その……」
アスカ「覚えてるのね」
シンジ「ごめん……」
アスカ「なんでコネ眼鏡があんなもの持ってたのかはわかんないけど、あれは、あれよ。わかるわね」
シンジ「わ、わかってるよ。む、昔のことだもんね」
アスカ「そうよ。昔のことなの。いいわね」
シンジ「う、うん……」
通路
レイ「ペンペン、ごめんなさい。はい、ごはん」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「嬉しいのね」
シンジ「はぁ……僕はどうしたら……」
レイ「碇、くん」
シンジ「あ、綾波……」
レイ「……」
シンジ「あの……」
レイ「ペンペン、行きましょう」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
シンジ「綾波! 待ってよ!!」
レイ「今、ペンペンの散歩中だから、ごめんなさい」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
シンジ「あ、そ、それなら仕方ないね……」
市街 某所
「レリエルまで世界の輪から外れてしまうなんてね。リリンはとても強く健やかにこの世界を蹂躙している」
サキエル「……」
「そう。レリエルは僕たちに残してくれたものがあるんだ。それもまた一つの光となるよ」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「13の天使は既に放たれている。イロウルの残した情報によれば、また一つリリンの僕がこの特異点に召喚されることになっているみたいだね」
ラミエル「……」キャー
「ラミエルの言う通りだよ。僕たちは屍の上を進むしかない。もう一度、やり直すためにね」
サキエル「……」
「レリエルが遺したもの、イロウルが遺したもの、マトリエルが遺したもの。これらはパズルのピースのようなものさ」
「一つ一つは何の意味も持たない欠片だけど、あわせたときに1枚の大きな絵が完成する」
「その絵を見て、バルディエルは動き出した」
サキエル「……」ガオー
「いいね。そうしよう。終焉のときは確実に近づいているのだから」
ラミエル「……」キャ-ッ
葛城宅
ミサト「……」
シンジ「あの、アスカ……ごはん……」
アスカ「あとで食べる」
シンジ「そ、そう……ごめん……」
アスカ「謝らないでよ。気持ち悪い」
シンジ「ごめん……」
ミサト「ねえ、シンちゃん。最近、アスカとなにかあった?」
シンジ「え? な、なにもないですよ」
ミサト「それにしてはよそよそしいというか」
シンジ「気のせいですよ。アスカはいつもあんな感じだったじゃないですか」
ミサト「そうだったかしら?」
シンジ「そうですよ。それより、ミサトさん、お酒のみますか?」
ミサト「のむ!」
シンジ「はい、どうぞ」
学校 教室
レイ「ペンペン、ジャンプ」
マトリエル「……」ピョンピョン
レイ「上手よ」
シンジ「おはよう」
トウジ「おはようさん」
ケンスケ「おはよう、碇」
レイ「……」
シンジ「あ、綾波、おはよう」
レイ「……」コクッ
シンジ「……」
トウジ「最近、綾波がまた喋らんようになってきたな」
ケンスケ「確かに。前の状態とはちょっと違う気がするけど」
トウジ「シンジだけを避けとる感じやな」
ケンスケ「碇はアスカともここ数日は話してない気がするなぁ」
ネルフ本部 トレーニングルーム
シンジ「はっ!」ポカッ
アスカ「痛い」
シンジ「ごめん……」
アスカ「気をつけなさいよ」
シンジ「ごめん……」
リツコ「最近のアスカ、どうしたの? 全然、訓練に身が入ってないみたいだけど」
ミサト「それがさっぱり。あの一件以降、変なのよね」
リツコ「何かあったのは間違いないけれど、私たちじゃ調べようがないわね」
ミサト「どうにかしないとね……。シンジくんも様子がおかしいし」
リツコ「……気分転換になるかはわからないけど、アスカにやってもらいましょうか」
ミサト「なにをよ」
リツコ「3号機のパーツがもうすぐ届くことになっているのよ。その性能を試すための実験をね」
ミサト「3号機までこっちで見るわけ?」
リツコ「各国のネルフ支部は順番に随時解体されているもの。手に余るものが本部に回ってくるのは道理よ」
司令室
冬月「遂に来たな」
ゲンドウ「ああ。3号機が我らの手の中に入れば終わりだ」
冬月「全ての手札が揃ったか」
ゲンドウ「あとは使徒の出方次第だ」
冬月「使徒の欠番は4体にも及ぶ。のんびりはしていられんな」
ゲンドウ「問題ない。若干の修正が必要になるだけだ」
冬月「これで奴等動かなければ、終わりだな」
ゲンドウ「動かぬわけがない。使徒が出現していることは既に周知されている」
冬月「では、やはり……」
ゲンドウ「エヴァシリーズは完成しつつある」
冬月「そうか。運命とは恐ろしいものだな。碇の息子とて例外ではなかったか」
ゲンドウ「輪廻の渦中にいるのがシンジだ」
冬月「世界の命運は碇の息子に託されたか」
ゲンドウ「エヴァ初号機となったときから、託されている」
休憩室
アスカ「3号機の機能実験?」
ミサト「そ。アスカが適任だって、リツコが推薦したの」
アスカ「ふぅん」
シンジ「危なくないんですか?」
マリ「お。未来の旦那さまが心配してるぅ」
アスカ「……」
マリ「こわっ。睨まれた」
ミサト「やる?」
アスカ「……やるわ」
ミサト「ありがと。実験は松代でやるから」
アスカ「ああ。弐号機の実験をしたところね」
ミサト「そうよ。当日は一緒にいきましょ」
アスカ「わかったわ」
シンジ「アスカ……」
レイ「ペンペン、おすわり」
マトリエル「……」クイッ
レイ「良い子ね」
シンジ「あ、綾波」
レイ「……」
シンジ「えっと、今度、アスカが松代で3号機の実験に参加するんだって」
レイ「……」
シンジ「それで、あの、心配だから、一緒にいかない?」
レイ「それは命令?」
シンジ「違うけど」
レイ「なら、行く必要はないわ」
シンジ「そ、そんなこといわないで……」
レイ「ごめんなさい。今は碇くんと話したくないの……。胸が苦しくなるから……」
シンジ「あ……そ、そう……なんだ……ごめん……」
レイ「さよなら」
数日後 葛城宅
ミサト「アスカー、準備できたー? もういくわよん」
アスカ「オッケー。いきましょ、ミサト」
シンジ「えっと……」
アスカ「なに?」
シンジ「気をつけてね」
アスカ「ふんっ」
ミサト「ねえ、アスカ? シンジくんと大喧嘩したの?」
アスカ「べっつに」
ミサト「嘘でしょー。二人の様子、おかしすぎるもの」
アスカ「シンジのことは話題にしないで!!」
ミサト「なにがあったの? いい加減に話してくれない?」
アスカ「シンジのことは一瞬でもいいから忘れたいの!!!」
ミサト「そこまでのことがあったのね。いいわ。当人たちで解決して。もしできないなら、すぐに相談すること」
アスカ「相談なんてできるわけないわよ……まったく……」
実験施設
ミサト『アスカー。準備はいい?』
アスカ「ええ。3号機のパーツ、悪くないわ」
ミサト『よろしい。実験内容は頭に入ってるわね』
アスカ「とどのつまりは使徒との戦闘を想定した模擬戦でしょ」
ミサト『それを理解しているのならいうことなしよ。がんばってね』
アスカ「はいはい」
アスカ「ふぅー……」
アスカ「ミサトにまで気を遣われるなんて、私もヤキが回ったわね」
アスカ「……いつまでも逃げていても仕方ないもの。帰ったらシンジを話してみないと」
アスカ「よしっ。いくわよ、アスカ」
アスカ「――漆黒のビューティフルワールド、エヴァンゲリオン3号機!!!」
バルディエル『……』オォォォォン
アスカ「え……なにこれ……体が……しめつけ、られ……」
アスカ「いや……はいってこないで……!!」
ネルフ本部
マヤ「松代実験施設より緊急入電!!」
ゲンドウ「どうした」
ミサト『すみません、司令!! アスカ、いえ、エヴァ3号機が実験施設を抜け出しました!!』
ゲンドウ「3号機の行方は?」
ミサト『不明です! ただいま全力で探しているのですが……』
ゲンドウ「3号機を追跡しろ。信号がでているはずだ」
マヤ「はい!」
ゲンドウ「葛城一尉は他のスタッフをつれ、こちらに帰還しろ」
ミサト『了解!』
冬月「使徒か」
ゲンドウ「ああ。それしか考えられん」
冬月「先手を打たれたか」
ゲンドウ「構わん。使徒ならば殲滅するだけだ。エヴァ出撃準備」
マヤ「はい! エヴァを呼び出します!」
葛城宅
シンジ「今頃、アスカは実験中なのかな」
ピリリリ……
シンジ「はい、碇です」
マヤ『シンジくん! 今すぐ本部に来てください!』
シンジ「使徒ですか?」
マヤ『いえ、そうじゃ……あぁ……!?』
シンジ「どうしたんですか?」
マヤ『パターン青!! 使徒です!! 使徒がシンジくんの近くまで迫っています!!』
シンジ「ここに来るんですか!?」
マヤ『早くそこを離れてください!! 危険です!!』
シンジ「わ、わかりました!!」
シンジ「急がなきゃ……!! 使徒が……!!」
アスカ「――ただいま」
シンジ「ア、スカ……? お、おかえり……。どうしたの、エヴァになったままだけど……」
アスカ「……」
シンジ「どうしたの? それ、重くない?」
アスカ「ねえ、シンジ。キス、しよっか?」
シンジ「え……?」
アスカ「したくない?」
シンジ「えっと、その……どうしちゃったの……アスカ……」
アスカ「私はしたいな……」
シンジ「ちょ、ちょっと、アスカ……」
アスカ「ねえ、シンジ。キス、しよ」
シンジ「な、なんで……」
アスカ「シンジのことが好きだからよ」
シンジ「なっ……」
ゲンドウ『シンジ、聞こえるか』
シンジ「父さん!?」
ゲンドウ『目の前にいるのは使徒だ。殲滅しろ』
シンジ「使徒って……アスカだよ……」
ゲンドウ『間違いなく、使徒だ。やれ、シンジ』
シンジ「そ、そんなこと……」
アスカ「お父さんもやれっていってるし、やろっか?」
シンジ「なにを!?」
アスカ「わかってるくせに。意地悪なシンジ。ふふ」
シンジ「アスカ!! 待ってよ!! こんなのおかしいよ!!」
アスカ「おかしくないわ。私はずっとシンジのことが好きだったのよ」
シンジ「正気に戻ってよ!! アスカ!!」
アスカ「最初は頼りない奴だって思ってたけど、結構かっこいいところあるし、優しいし、気も合うし……」
シンジ「アスカが何を言っているのかわからないよ!!」
アスカ「小さいときに結婚の約束までしてるし……これって運命だと思うの……」
シンジ「やめてよ!! こんなのアスカじゃないよ!!」
アスカ「ねえ、シンジぃ、わたしとやるの?」
ゲンドウ『早くやれ、シンジ』
ゲンドウが変態に見えてきた
シンジ「できるわけないよ!!!」
マヤ『もうすぐパーツが届きます!! それまで耐えてください!!』
アスカ「シンジ、おねがい。いいことしよ」
シンジ「きっとこの3号機がアスカをおかしくしてるんだ!! これを引き剥がせば……!!」ベリッ
アスカ「あんっ。そんなに私のが見たいの? いいわよ、シンジだけ特別にみせてあげるわ」ベリベリ
シンジ「え……え……」
アスカ「みて、この下にはなにも着けてないの」ベリベリ
シンジ「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ゲンドウ『シンジ、何をしている。躊躇うな』
アスカ「恥ずかしいけど、シンジになら見せてもいいわ」ベリベリ
シンジ「やめてよ!!! アスカ!!! うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
バンッ!!!!
シンジ「え!?」
アスカ「ダレ!?」
レイ「……」
マヤ『エヴァ零号機、到着!! 初号機のパーツを持っている5号機はまだですか!?』
シンジ「綾波……」
アスカ「ふん。誰かと思えば泥棒猫じゃない。私とシンジの時間を邪魔しないでくれる?」
レイ「……」
アスカ「早く出て行きなさいよ!!!」
レイ「……」
アスカ「なによ、その目! 文句でもあるわけぇ!?」
レイ「……ない」
アスカ「あん?」
レイ「……渡さない」
アスカ「なんですって? よくきこえなーい」
レイ「碇くんは、貴女に渡さない」ドゴォッ!!!
アスカ「ごっ……!? やったわね……!! おんどりゃぁぁ!!!」ドゴォッ!!!
レイ「ぐっ……!」
シンジ「やめて……やめてよ……」
市街
マヤ『5号機! 応答してください!!』
マリ「それは無理な注文だ!」
サキエル「……」ガオー
シャムシエル「……」パシンッ
マリ「おっと! ここはこいつでいくかぁ」ジャキン
ラミエル「……」キャー
マリ「ちっ! まだいるってかぁ!?」
ラミエル「……」グリグリグリグリグリグリグリ!!!!!
マリ「んぎぃ! そこはきくぅ!」
マヤ『5号機!! 応答してください!!』
ラミエル「……」グリグリグリグリグリグリグリ!!!!!
マリ「ん……あっ……そこ、マジで……やめてぇ……」ビクビクッ
シャムシエル「……」パシンッ!!!
マリ「あんっ。こりゃ、ダメだ……。初号機パーツは届けられそうにないにゃぁ……」
地球の隅っこでなーにやってだこいつらは
ラミエルがローターに見えてきた
葛城宅
アスカ「私はシンジのことが好きなの! 愛しているの!! 邪魔しないで!!」バキッ!!!
レイ「ずっ……。好きとか、愛しているとか、分からないけれど、貴女にだけは碇くんを渡したくない」
アスカ「はんっ。自分の感情すらわからない女はそのまま指をくわえて私とシンジが愛し合うところをみていればいいのよ」
レイ「私が碇くんのことをどう想っているのか、どう感じているのかは分からない。でも、碇くんのことを考えるとぽかぽかする」
アスカ「はぁ?」
レイ「胸のあたりがぽかぽかする」
アスカ「それって好きってことじゃない!!」ブンッ
レイ「そうなの?」ガッ
アスカ「こいつ……! 私の拳を……!!」
レイ「好きってこういう気持ちなの? 分からないわ」ドゴォッ
アスカ「ごっほ……!?」
レイ「好きがどういうものなのかは知らない。けれど、使徒に碇くんは渡さない」
アスカ「嫉妬は見苦しいわよ。シンジは私と愛し合ってるの!! あんたを選んだりもしないの!! 諦めたらぁ!?」バキッ
レイ「うっ……ぐ……。絶対に渡さないわ」ドゴォ!!!
ネルフ本部
アスカ『きえろぉぉ!!! 泥棒猫ぉ!!!』ベキッ!!!
レイ『私は消えない』ボキッベキッ
アスカ『あぁあぁぁぁあああ!!!』
シンジ『父さん!! 聞こえてるんだろ!? 二人を止めてよ!!!』
マヤ「酷い……」
リツコ「これが女の戰いね」
冬月「いいのか、碇?」
ゲンドウ「ふっ。止める理由などない」
アスカ『ころしてやる……ころしてやる……ころしてやる……ころしてやる……ころしてやる……!!!』
レイ『貴女じゃ、無理』
アスカ『こちとら、10年以上前からシンジと婚約してるんだからぁぁぁぁぁ!!!!』
レイ『そんなの関係ないわ』
シンジ『とまれとまれとまれとまれとまれとまれ……!!』
リツコ「シンジくん。祈るだけでは止まらないと思うけど」
葛城宅
アスカ「シンジは私のものなんだからぁぁぁ……!!!」グニーッ
レイ「ふぃふぁふぃふんふぁふぁふぁふぁふぁふぃ」
アスカ「黙れ!!」ガンッ!!!
レイ「いっ……」
アスカ「こいつでラストぉぉぉぉぉ!!!!」
レイ「くっ……回避が……」
シンジ「やめてよ、アスカ!!」ガッ
アスカ「シンジ……!! どうして……どうして……その女を守るわけ……」
シンジ「僕は……その……」
アスカ「そう、やっぱり……シンジはそいつのほうが、好きなのね……」
シンジ「違う!! そうじゃなくて!!」
レイ「……違うの?」
シンジ「あ、そういう違うじゃなくて!」
レイ「なら、どういう違うなの?」
シンジ「だから、それは……」
アスカ「ここではっきりさせるのもいいわね。シンジはとーぜん、私のことが好きでしょ? ねぇ」ギュゥゥ
シンジ「あの……」
レイ「離れて」ググッ
アスカ「はにゃれりゅもんですかぁー!!」
シンジ「やめてよ!! 二人とも!!」
マヤ『シンジくん、結論を出せば、アスカの暴走は止まるかもしれません!!』
シンジ「本当ですか!?」
リツコ『半分は賭けね。悪化する事態も考えられるもの』
シンジ「だったら、答えなんて出せないですよ!!」
ゲンドウ『シンジ、何故戦わない。奴は使徒だ。お前の知っている者ではない。ならば、答えは一つしかあるまい』
シンジ「勝手なことばかり言わないでよ!!」
アスカ「あんたもシンジに近づかないで!!」ググッ
レイ「ふぁふぁふぃふぁふぃふぃふぉ」
シンジ「僕は……僕は……!!」
マリ「はぁ……はぁ……やーっと、たどりつけたぁ……。流石に使徒三体はきっついなぁ」
サキエル「……」ヨロヨロ
マリ「しつこい、なっ!!」ドゴォッ!!!
サキエル「……」ギャー!!!
マリ「ごっめーん。ちょっとおくれたー、みんな無事ー?」
シンジ「……」
マリ「おぉ、王子様は無傷っぽいね」
シンジ「マリ……さん……」
マリ「なんかあった?」
シンジ「あれ……」
マリ「んー?」
レイ「まだ、やるの?」
アスカ「ぐ……ぅ……ごほっ……ま、だ……よ……まだ……あきらめ……な……い……」
レイ「……」
マリ「あっりゃー、どっちも血だらけで、顔も腫れあがってんじゃん。ナイス、キャットファイト」
シンジ「どうにかして二人を止めてよ!! 僕じゃ無理なんだ!! 僕じゃ……」
マリ「しゃーない。ミサトー。使徒がパーツにとりついてる説は信頼できんの?」
ミサト『まず間違いないわ。実験開始直後にパーツから使徒の反応がでていたもの』
マリ「だったら、パーツをひん剥くしかないじゃん」
シンジ「え? それって……」
マリ「ひめー、ちょいとごめんよ」
アスカ「なにを――」
マリ「おりゃー」ベリベリベリベリ!!!!!!
アスカ「お……」
シンジ「う……わ……」
レイ「……」
マリ「なんで、何も着てないの?」
アスカ「あ……あぁ……あぁぁ……」
シンジ「アスカ、だ、だいじょうぶ――」
アスカ「いやぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
ネルフ本部
マリ「こいつが今回の使徒っぽいね」ドサッ
バルディエル「……」タスケテー
リツコ「このパーツに使徒がいるのね」
ミサト「これは厳重に封印したほうがよさそうね」
リツコ「そうね。貴重なサンプルではあるけれど、このままにはできないわ」
マリ「ゲンドウくんとしては残念だったかな」
ゲンドウ「3号機のパーツは凍結させる。その後、使用を禁ずる。以上だ」
リツコ「分かりました」
バルディエル「……」ヤメテー
マヤ「これで使徒は倒せたと言って良いですけど……」
ミサト「問題はアスカね」
マリ「姫のことは気にしても仕方ないって。派手に告白したんなら、あとは開き直るか引きこもるかしかない」
ミサト「前者であることを祈るわ」
マリ「姫の性格的に後者になりそうだけどにゃ。さーどうなるか、たっのしみぃ」
葛城宅 アスカの部屋
アスカ「……」
『アスカー、起きてよ。綾波も今日見た事は忘れるって言ってるから』
アスカ「……」
『ごはんも出来たよ。一緒に食べよう』
アスカ「……」
『綾波も心配してるから』
アスカ「……」
『僕も忘れるよ。全部。今日のことはもう忘れるよ。それでいい?』
『碇くん、どう?』
『ダメ。返事もしてくれない』
『そう……』
『綾波、帰るならおくっていくけど』
アスカ「……」
アスカ「うぅー!!」バタバタ!!
翌日
『ちょっと、アスカー? 学校へは行かないの? シンちゃんは先に行ったわよー』
アスカ「……」
『あんなことがあったばかりだから、無理にとは言わないけど、気にしないほうがいいわよ。あれは全部、使徒の仕業なんだから』
アスカ「……」
『貴女は今までに何度もこの街を救ってきたヒーローなのよ。そんな小さなことに躓いちゃダメよ』
アスカ「……」
『シンちゃんもレイもマリもみーんな、アスカの心配をしてるんだから。いい加減、声ぐらいは聞かせて』
アスカ「……」
『アスカ!』
アスカ「……」
『……ごはんは冷蔵庫の中にあるわ。温めて食べるのよ。それじゃ、行ってきます』
アスカ「……」
アスカ「うぅ……」
アスカ「うぅー!!」バタバタ!!!
学校
トウジ「式波は休みか?」
シンジ「うん。色々あって」
ヒカリ「もしかして大怪我したの?」
シンジ「怪我……なのかな……あれは……」
ヒカリ「心配だわ。今日の帰り、お見舞いに行ってもいい?」
シンジ「うん。アスカもきっと喜ぶと思うよ」
ケンスケ「今の言い方だと式波は普通の怪我じゃないってことか」
シンジ「そうだね……」
トウジ「エヴァになると大変なんやな」
ケンスケ「肉体よりも精神的な負担のほうが大きいだろうからなぁ」
トウジ「そうやなぁ。なんていってもシンジはワシらの街を守ってくれてる英雄やいわれてしまうし、そのプレッシャーは半端なもんやないしな」
シンジ「トウジ……」
トウジ「感謝してるで。ホンマに。だから、なんかあったらすぐに相談せぇよ。できることならなんでもしたる! これは男の約束や!!」
シンジ「ありがとう……」
ネルフ本部
リツコ「現状ではエヴァ弐号機の稼動は絶望的といえます」
ゲンドウ「そうか」
マヤ「これからは零号機、初号機、仮設5号機だけの運用になりますね」
ゲンドウ「仮設5号機を弐号機に書き換えろ」
ミサト「ちょっと待ってください! それは事実上の更迭では……」
ゲンドウ「使えぬエヴァに用はない」
ミサト「アスカは今、ほんの少し気持ちの整理がつかないだけです!! もう少し時間をください!!」
ゲンドウ「弐号機のパーツは5号機に回せ。これからは5号機を弐号機として運用する」
ミサト「司令!!」
リツコ「ダメよ」
ミサト「けど!!」
リツコ「次の使徒がいつ来るか分からない以上、こうするしかないでしょう。事実、5号機のパーツよりも弐号機のパーツは高性能。眠らせておく理由がないわ」
ミサト「アスカは、どうなるの? アスカだって、今までがんばってきたじゃない。使えないからってここで見捨てるわけ?」
リツコ「人類に残された時間は少ないのよ。作戦本部長の貴女がそんなことでどうするの?」
トレーニングルーム
シンジ「え……それ……どういうことですか……?」
ミサト「言ったとおりよ。今後、アスカは戦力として考えないように。訓練も貴方たち3人だけでやっていきなさい」
レイ「……」
マリ「弐号機は私に回してくれんの?」
ミサト「ええ。これからマリが弐号機よ。がんばってね」
マリ「オッケー」
シンジ「待ってください、ミサトさん!! アスカはどうなるんですか!?」
ミサト「……ネルフの財政を考えれば、もうここにはいられないわね」
シンジ「どうして急にそんなことになるんですか!?」
ミサト「すぐに出撃できないエヴァは使えないからよ」
シンジ「アスカだってエヴァとして街を守ってきたじゃないですか!! 見捨てるなんておかしいですよ!!!」
ミサト「これは司令の命令なの。覆すことはできないわ」
シンジ「父さんが……? わかりました。僕が父さんに直接言ってきます」
ミサト「シンジくん!!」
司令室
ゲンドウ「……入れ」
シンジ「失礼します」
ゲンドウ「何か用か」
シンジ「アスカのことです」
ゲンドウ「なんだ」
シンジ「弐号機はアスカです。どうしてマリさんが弐号機になるんですか」
ゲンドウ「現弐号機が戦える状態ではないからだ」
シンジ「あんなことがあったんです。しばらくは仕方ないじゃないですか」
ゲンドウ「即戦力にならん者を置いておけるほどの余裕はない」
シンジ「アスカは命がけで戦ってきたんです。本当は怖いのにそれを誤魔化しながら戦ってきたんです」
ゲンドウ「だからなんだ」
シンジ「な……」
ゲンドウ「動けぬエヴァなど、邪魔だ」
シンジ「どうしてだよ……どうしていつも……父さんは……」
ゲンドウ「用件はそれだけか、ならば出て行け」
シンジ「どうして父さんはいつもそうなんだよ!! 僕のことだって邪魔だっていって親戚におしつけて……!! 次は邪魔だからって必死に戦ってきたアスカを見捨てるの!?」
ゲンドウ「今はお前が必要であり、現弐号機は不必要だ」
シンジ「そうやって父さんは自分の都合で他人に迷惑をかけるんだ」
ゲンドウ「これ以上、お前と話すことはない。出て行け」
シンジ「父さんにとって、必要なのは僕じゃなくて、エヴァなんだろ」
ゲンドウ「そうだ」
シンジ「……っ」
ゲンドウ「初号機であるお前が必要だ」
シンジ「そう……やっぱり……薄々は気づいていたけど……やっぱり、そうなんだ……。父さんが必要なのは……僕じゃないんだ……」
ゲンドウ「これからの予定もある。早く出て行け」
シンジ「……てやる」
ゲンドウ「なに?」
シンジ「エヴァなんてやめてやる」
ゲンドウ「……」
シンジ「これ以上、父さんの思い通りになんてさせるもんか」
ゲンドウ「子どもの駄々に付きあうほど暇ではない」
シンジ「僕は本気だよ、父さん」
ゲンドウ「大人になれシンジ。今、ここを離れてもお前は自己満足するだけだ」
シンジ「それでいいよ。こんなところに、父さんがいるところにいたくない。エヴァなんて、苦しいだけだし、ずっと辞めたかった」
ゲンドウ「また逃げるのか?」
シンジ「逃げて何が悪いの。父さんは初号機がいなくなると困るんだろうけど、僕には関係ない。少しは困ればいいんだ」
ゲンドウ「考え直せ、シンジ。使徒の脅威は全人類を飲み込むほどのものだ」
シンジ「知らないよ。僕はエヴァなんてしたくない。なりたくもない」
ゲンドウ「……」
シンジ「父さんの言いなりになんてならない」
ゲンドウ「そうか。では、貴様は用済みだ。早急に出て行け」
シンジ「言われなくても出て行きますよ」
ゲンドウ「好きにしろ」
シンジ「しますよ」
市街 某所
「バルディエルも堕落してしまった。これで全ての希望は光を失い、闇へと染められた」
サキエル「……」
「君たちの失敗が主な要因であるけどね」
シャムシエル「……」ニョローン
「もういいんだよ。誰も苦しまなくていい。終焉と収束の扉は開いた」
ラミエル「……」キャー?
「終わりの始まり。始原にして終極。輪廻の根源となる『力』を司る天使が舞い降りる」
サキエル「……!」
「その名はゼルエル。全てを『力』のみで制す天使が動くんだ」
シャムシエル「……!」ニョロニョロ
「もう遅いよ。終末は既に僕らの頭上にある」
ラミエル「……」キャー!
「さぁ、ゼルエル。奏でるんだ。この世に捧げる鎮魂歌をね」
サキエル「……」ガタガタガタ
葛城宅
シンジ「アスカ、それじゃあ僕は先に行くよ。気が向いたら、電話してほしい」
ミサト「シンジくん、本当に行くのね」
シンジ「はい」
ミサト「話を聞いたときは驚いたわ。アスカのためにエヴァを辞めるなんて」
シンジ「別にアスカのためじゃないです。僕は前から辞めたかっただけです。正直、訓練だって痛いし、苦しいだけだし、楽しいことなんて何一つありませんでした」
ミサト「アスカに勝ったとき、喜んでいたように見えたけど」
シンジ「気のせいじゃないですか」
ミサト「司令が貴方を褒めていたって言ったら、喜んでいなかったの?」
シンジ「いませんよ」
ミサト「……そう」
シンジ「今まで、お世話になりました。ミサトさんたちと過ごした毎日は……」
ミサト「つまらなかった?」
シンジ「……はい」
ミサト「そうよね……。さようなら、シンジくん。私は、楽しかったわ」
市街
シンジ「……」
トウジ「シンジー!!」
ケンスケ「いかりー!!」
シンジ「あ……」
トウジ「はぁ……はぁ……。ど、どういうことや!?」
ケンスケ「急に転校ってどういうことだよ」
シンジ「僕はもうエヴァをやめたから。ここにいる理由がなくなったんだ」
トウジ「エヴァをやめたんか」
ケンスケ「やめたって……」
シンジ「うん。もういいかなって。エヴァになるのも疲れたんだ」
トウジ「そうなんか――」
ドォォォォン!!!
シンジ「うっ!? この爆発は……!?」
トウジ「なんや!? 使徒か!?」
ネルフ本部
マヤ「パターン青!! 使徒です!! モニター、出ます!!」
ゼルエル『……』ドヤァ
冬月「来てしまったな。最強の使徒。最強の拒絶タイプが」
ゲンドウ「零号機と弐号機を出せ」
マヤ「弐号機は既に出撃準備が整っています!!」
マリ『こっちはいつでもいけるにゃぁ』
マヤ「弐号機、出撃してください」
マリ『いっちょ、いくかぁ!』
ミサト「遅れました! 状況は!?」
リツコ「今、始まったところよ」
ミサト「マリだけ? レイはどうしたの?」
マヤ「まだ更衣室から出てきていません」
ミサト「何をしているのよ、レイは」
リツコ「流石に更衣室に監視カメラは置けないから、分からないわね」
市街
ゼルエル「……」ピカッ!!!
ドォォォォン!!!
ゼルエル「……」ドヤァ
マリ「そのドヤ顔もここまでにしない?」
ゼルエル「……?」
マリ「んー。姫の使っていたパーツ、やっぱりいいなぁ。5号機も気に入ってたけど、やっぱ使うなら性能が良いほうだよね」
ゼルエル「……」ゴゴゴッ
マリ「お。やる気かぁ? こっちはもう後には退けないから、やるだけのことはやってやるぞぉ」
ゼルエル「……」ピカッ!!!
マリ「おぉ。きたきたぁ。まずは、ソニックグレイヴで!!」ジャキン!!!
ゼルエル「……!」
マリ「ファーストアタックはもらったぁ!!」
ゼルエル「……」ギィィィン
マリ「A.T.フィールド、厚っ! にゃろぉ、反則染みてるなぁ」
ゼルエル「……」ピカッ!!!
ドォォォォン!!!
マリ「ほいっと。強烈な光線だ。今までの使徒とはノリが違うね」
ゼルエル「……」イラッ
マリ「次はこいつで!」
ゼルエル「……」シュルルル!!!
マリ「な――」
ゼルエル「……」バキィ!!!
マリ「あぅ!?」
ゼルエル「……」ドヤァ
マリ「腕を伸ばせるなんてきいてなーい!」
ゼルエル「……」ゴォォォ
マリ「はやっ」
ゼルエル「……」ドゴォ!!!!
マリ「ぐっ……ぇ……!?」
ネルフ本部 更衣室
レイ「……」
マトリエル「……」カサカサカサカサ
レイ「行かなきゃ。5号機の人も戦ってる」
マトリエル「……」
レイ「ペンペンはここにいて」
マトリエル「……」クイッ
レイ「良い子ね。私は必ず、戻ってくるわ」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサ
レイ「碇くんが戦わなくていい世界にする」
レイ「それが今の私の気持ち。私の想い」
レイ「そして私は……」
マトリエル「……」カサカサカサカサ
レイ「私は今、生きたいと思っている。碇くんのいるこの世界で。だから、戦う。それが私の戦う理由」
レイ「零号機。出撃します」
市街
ゼルエル「……」ガンッ!!!
マリ「が……ぐっ……!! いったぁ……このままじゃ、かてないにゃ……」
マリ「仕方ない。あれを使うとしますか。あんまり好きじゃないけど」
ゼルエル「……?」
マリ「モード反転!! 裏コード!! ザ・ビースト!!」
ミサト『マリ!! 何をしているの!?』
リツコ『それを使えば人でいられなくなるのよ!?』
マリ「知ってるっつーの。だから、使うんだってば」
ゼルエル「……」
マリ「ウゥゥゥ……!! ワンワン!! ワンワン!!」
ゼルエル「……!?」
マリ「ガァァァウ!!!」ガブッ!!!
ゼルエル「……」イテー
リツコ『あれが人の理性を捨て、本能だけになったエヴァの姿……』
マリ「ワンワンワンワンワンワンワン!!!!」
ゼルエル「……」
マヤ『弐号機!! 使徒の周りを回り始めました!!』
ミサト『威嚇しているの!?』
リツコ『彼女は既に本能だけで生きている獣と化しているわ。何を考えているかなんてわかるはずがない』
マリ「ワオワオォォン!!!」
ゼルエル「……」パシンッ!!!!
マリ「キャン!!」
ミサト『やっぱりダメか……』
レイ「――零号機、行動を開始します」
ミサト『レイ!』
レイ「ここで使徒を倒して、碇くんが困らない世界にする」
ゼルエル「……」ペシンッ
レイ「あぅ」
マヤ『零号機! 行動不能!!』
葛城宅 リビング
アスカ「……」
チンッ
アスカ「いただきます」
『第三新東京市民のみなさん!! 見てください!! あれが使徒です!!』
アスカ「使徒……」
『あの使徒はいたるところを破壊しながらどこかへと向かっています!! 近隣のみなさんは避難してください!!』
アスカ「……」
ゼルエル『……』ゴゴゴゴゴッ
『し、使徒がこちらに……!!』
レイ『させない』
『エヴァンゲリオンです!! エヴァンゲリオンが私たちを守ってくれるようです!!』
ゼルエル『……』ペシンッ
レイ『くっ……!!』
アスカ「はむっ……」モグモグ
市街
シンジ「なんだか大変なことになっているみたいだね」
トウジ「ほんまにこのまま街からでるんか? 使徒がこの街を壊しとる、こんな状況で」
シンジ「僕はもうエヴァじゃないんだ。使徒と戦う理由もないよ」
トウジ「……」
シンジ「軽蔑するならしたらいいよ。でも、僕は――」
トウジ「軽蔑なんてするかい、ボケ。感謝してもしきれんぐらいや」
シンジ「え……」
ケンスケ「碇は今までずっとここを守ってくれてたじゃないか。お礼はしても、軽蔑なんてしない」
シンジ「でも……僕は苦しいことから逃げるのに……」
トウジ「逃げたらええやろ。シンジはようやった。ここまで疲れさせたのはワシらの所為でもある」
ケンスケ「碇がここを離れるっていうなら、全力で守らないとね」
トウジ「その通りや。ダチが折角しんどいことから解放されるんや。使徒なんかに邪魔させるかい」
シンジ「何をするつもりなの?」
トウジ「ここにはもうワシらの知ってるヒーローはおらん。おるのは、親友だけ。親友を守るのは男の仕事や。まかせとけ」
シンジ「使徒は普通の人間じゃ勝てないってミサトさんが言ってたんだ」
トウジ「シンジも普通の人間やんけ」
シンジ「僕はエヴァンゲリオンになれたからで……」
トウジ「シンジはワシらとアホなことで笑いあってた。アホなこと言い合って、いいんちょに怒られた。十分、普通や」
シンジ「違う……」
トウジ「違わん!! はよ、いけ。ここに使徒がきても、シンジが街を出るまではとめたる!!」
ケンスケ「来ないことに越したことはないけどね」
トウジ「ふん。来るならきたらええねん!」
シンジ「やめてよ……僕はそこまでしてもらえるほどのことなんて……何もしていないのに……」
トウジ「なんやと?」
シンジ「僕は綾波、ううん、みんなを守れる自分が好きだった。かっこいいって思ってた。だから、エヴァになって戦ってたんだ」
ケンスケ「……」
シンジ「……それも違う。僕はただ父さんに認めてもらいたくて、エヴァになっていただけなんだ。トウジたちを助けたくて、守りたくて戦ってたわけじゃないんだ」
トウジ「そう、なんか」
シンジ「だけど、結局父さんは僕のことなんて見てくれてなかった。だから、僕はエヴァをやめたんだよ。僕はヒーローなんかじゃないんだ」
-
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 20:05:44.15 ID:Ego2NBZdo
ネルフ本部 格納庫
シンジ「ここは……」
ミサト「ここはエヴァンゲリオンの格納庫。……になるはずだった場所よ」
シンジ「なるはずだった?」
リツコ「ええ。色々と事情があってね。不要な場所になってしまっているの」
シンジ「そうなんですか」
ゲンドウ「――久しぶりだな、シンジ」
シンジ「父さん……。僕に話って……なに……?」
ゲンドウ「お前をここに呼んだ理由は一つだ。シンジ、お前がエヴァ初号機になれ」
シンジ「え……どういうこと……?」
ゲンドウ「お前がエヴァ初号機になるんだ」
シンジ「なるって……どういうこと……?」
ゲンドウ「なるなら早くしろ。でなければ、帰れ!」
シンジ「ちょっと待ってよ!! 意味が分からないよ!! 父さん!!! 説明してよ!! エヴァになるってなに!?」
ミサト「まぁ、そうよね。シンジくん、モニターを見て。説明するわ」ピッ
・【R-18】兄「女装してたら弟に告白された」【胸糞注意】
・男「俺のち○こはこの世で最も強い」
・ヴォルデモート「ポッターを倒して俺様が勝った」
・魔法使い「勇者さんは、私の命の恩人ですから」勇者「いいえ」
・【閲覧注意】貞子「俺!!お前の事好きだぜ!!ビデオ見てくれたから!!」
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 20:14:36.82 ID:Ego2NBZdo
レイ『あれが敵。倒すべき、敵』
サキエル『……』ガオー
シンジ「この映像はなんですか?」
リツコ「5時間前の戦闘記録よ」
シンジ「このおかしな格好をした女の子は……?」
ミサト「おかしな格好ではないわ。この子はエヴァンゲリオン零号機、綾波レイよ」
シンジ「もう1人、コスプレしている人がいますけど」
ミサト「奇怪な格好、じゃなくて、奇怪な容姿をしているのは使徒と呼ばれる人類の敵」
シンジ「あれが、使徒……なんですか? あの、使徒ってもっと大きかったような……」
リツコ「そう。本来なら全長15メートル以上はあるはずの巨大生物だとされていたわ。けれど、実際は人間と変わらないサイズだった」
シンジ「それで……?」
ミサト「そんなに小さな使徒を相手にするだけならこちらが巨大な兵器を使うまでもないってことで予算を大幅カットされちゃったのよ」
リツコ「エヴァの開発は完全に頓挫。初号機を動かすどころか、ネルフスタッフも大勢辞めてもらったわ」
シンジ「そ、そんなことが……」
ミサト「だけど、使徒はこうして人類に牙を剥いている。あたしたちは使徒と戦わないといけないの。そうエヴァがなくてもね」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 20:22:18.35 ID:Ego2NBZdo
レイ『零号機、目標と接触します』
サキエル『……』ガオー
レイ『ふっ』バキッ
サキエル『……』イテッ
シンジ「あんな女の子が素手で……。腕も細いし……危ないんじゃあ……」
ミサト「この零号機は殆ど生身での戦闘訓練はしていなかったわ」
シンジ「この子はどうなったんですか!?」
ゲンドウ「シンジ、そんなことはどうでもいい。早く決めろ。初号機になるのか、ならないのか」
シンジ「……そんなのいきなりいわれたって、無理だよ。できるわけないじゃないか。突然、こんなところに呼び出されて、わけもわからないし」
ゲンドウ「お前にしかできないことだ。故にここへ呼んだ」
シンジ「それだけなの? 何か、他にも……」
ゲンドウ「ない。早く答えろ、シンジ。我々に時間はない」
シンジ「そんなの……そんなの……」
ミサト「なりなさい、シンジくん」
リツコ「碇シンジくん、エヴァになって」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 20:28:29.68 ID:Ego2NBZdo
レイ『んっ』パシンッ
サキエル『……』イタイッ
ゲンドウ「お前がエヴァ初号機になれ」
シンジ「できるわけないよ!! 勝手なことばかりいわないでよ!!! いきなり言われたってできるわけないじゃないか!!!」
ゲンドウ「……」
『碇司令! 使徒が本部に接近してきています!!』
ゲンドウ「初号機は使えなくなった。零号機を出せ」
リツコ「しかし、レイはまだ……」
ゲンドウ「構わん。まだ使える」
リツコ「……わかりました。ミサト」
ミサト「わかったわ」
シンジ「そんなの……できるわけ……」
レイ「はぁ……はぁ……」
ミサト「レイ。やれる?」
シンジ「あの子は……!?」
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 20:34:10.86 ID:Ego2NBZdo
レイ『パレットライフルを使います』バララララッ!!!!
サキエル『……』イタタタッ
シンジ「……」
レイ「まだ……たたかえ……ます……」
ミサト「レイの状態は?」
リツコ「見たままよ。完治までは数週間かかるわね」
ミサト「この状態で戦わせても……」
リツコ「でも、戦わなければ私たちは死ぬ」
ミサト「……レイ、大丈夫ね?」
レイ「は、い……ぐっ……」
レイ『プログレッシブ・ナイフで』シャキン
サキエル『……』ヒィー
レイ「はぁ……はぁ……うっ……」
シンジ(この子、どこでこんな大怪我をしたんだろう)
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 20:42:35.64 ID:Ego2NBZdo
サキエル『……』ダダダダッ
レイ『使徒が逃走。後を追います』
マヤ『零号機、気をつけてください! その先はまだ道路の修復作業が終わっていません!! 足を踏み外すと大変なことに――』
レイ『あっ』
ミサト『レイ!? どうしたの!! レイ!! 応答して!!』
ゲンドウ『レイ! 何があった!!』
リツコ『零号機の状態は!?』
マヤ『肘と膝を損傷!!』
ミサト「……」ピッ
シンジ「どうして戦闘記録を最後まで見せてくれないんですか」
ミサト「この後、レイは隙をつかれて使徒に襲われた……。そして、この状態よ」
レイ「うぅ……ぐっ……」
シンジ「……」
レイ「あ……んっ……わたし……が……たたかい、ます……」
シンジ「逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 20:50:03.00 ID:Ego2NBZdo
シンジ「僕がなります!! 初号機になります!!」
ゲンドウ「そうか。赤木博士、初号機のパーツを」
リツコ「はい。シンジくん、これを装着して」
シンジ「これは……?」
リツコ「初号機に使うはずだったパーツで作った、そうね鎧だと思ってくれていいわ」
ミサト「デザインはエヴァ初号機を元にしているだけだから、気にしないで。これがあなたを守ってくれるはずよ」
シンジ「わかりました」カチャカチャ
リツコ「手首をスイッチを押してみて」
シンジ「ここですか?」ピッ
シンジ「これは……」
ミサト「A.T.フィールドよ。それで身を守りなさい」
シンジ「は、はい」
リツコ「では、向こうにアレに乗って」
シンジ「ここですか?」
ミサト「ありがとう、シンジくん。――エヴァンゲリオン初号機、リフト・オフ!!!」
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 20:55:05.47 ID:Ego2NBZdo
市街
サキエル「……」ガオー
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
サキエル「……」
シンジ「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」ガクンッ!!!!
マヤ『初号機、リフト・オフ完了しました!!』
シンジ「し、死ぬかと……思った……」
ミサト『本来は初号機を市街地に上げるための装置だから。生身の人間にとってはちょっちスリルがあったでしょ』
シンジ「そういうことは最初に……」
サキエル「……」
マヤ『初号機!! 使徒との距離、100メートルです!!』
シンジ「あれが……使徒……」
サキエル「……」ガオー
リツコ『まずは歩くことだけを考えて。リフト・オフの影響で膝が笑っているわよ』
シンジ「え……そんなこと……あ、本当だ……足が震えて……」ガクガク
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:00:46.79 ID:Ego2NBZdo
サキエル「……」ガオー
マヤ『使徒、接近!! 距離、80メートル!! 79、78、77……どんどん近づいています!!』
ミサト『シンジくん!! まずは歩いて!!』
シンジ「そんなこと言われても……」
シンジ「うわっ!」ドテッ
マヤ『初号機、転倒!! 膝を損傷!!』
シンジ「すりむいた……」
ミサト『あちゃぁ……。やっぱりダメか』
冬月『勝てるか』
ゲンドウ『勝ってもらわなければ、人類に先はない』
シンジ「いたいよ……」
サキエル「……」ガオー
マヤ『使徒、更に接近!! その距離、50メートル!!!」
ミサト「急いでシンジくん!!」
シンジ「で、でも……初号機のパーツが重くて……くっ……」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:05:02.52 ID:Ego2NBZdo
サキエル「……」ガオー
シンジ「あ……」
マヤ『使徒、初号機に接触!!』
ミサト『シンジくん!!!』
サキエル「……」ガシッ
シンジ「ぐっ……」
サキエル「……」ペチペチッ
シンジ「うあ!?」
サキエル「……」ペチペチッ
シンジ「うごっ……!?」
マヤ『左右の頬にダメージ!!』
ミサト『シンジくん、逃げて!!』
シンジ「にげろって言われても……」
サキエル「……」ペチンッ
シンジ「ぐあ!!」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:09:18.77 ID:Ego2NBZdo
サキエル「……」ブンッ
シンジ「うわぁぁぁぁぁああ!!!」ズサァァァ
マヤ『初号機、投げ飛ばされました!! その距離、1メートル!!』
リツコ『やはりダメか』
ミサト『作戦を中止!! 初号機の回収を急いで!!』
ゲンドウ『やめろ』
ミサト『しかし!!』
ゲンドウ『ここで初号機を回収すれば、終わりだ』
ミサト『くっ……』
シンジ「もうやだよ!! 父さん!! 助けてよ!! 父さん!!!」
サキエル「……」
シンジ「ひっ……」
リツコ『まずい!』
ミサト『シンジくん!!』
ゲンドウ『……』
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:15:23.34 ID:Ego2NBZdo
ネルフ本部
サキエル『……』パシンッ!!!
シンジ『う……ぉ……!!』
マヤ「初号機、活動限界です!!」
ミサト「ダメだったのね。ごめんなさい、シンジくん」
リツコ「せめて、弐号機が間に合っていれば……」
マヤ「そんな……」
冬月「人類の最後とはあっけないものだな」
ゲンドウ「……」
ミサト「シンジくんは?」
マヤ「生きています。しかし、気を失って――』
シンジ『――どうしてだよ』
ミサト「え……」
シンジ『どうしていつも父さんは助けてくれないんだよ……おかしいよ……僕は……いつも1人で……1人ぼっちで……』
マヤ「初号機、再起動!!」
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:21:15.52 ID:Ego2NBZdo
シンジ『遠足のお弁当だって僕が作って……参観日なんてきてくれたこともなくて……電話したっていつも留守番電話で……』
シンジ『会いたいっていうからきたのに……わけのわからないやつに殴られて……投げ飛ばされて……なんだよ、これ……なんなんだよ……』
マヤ「初号機に異常なエネルギー反応が!!」
ミサト「まさか!」
リツコ「暴走!?」
シンジ『うわぁぁああああああああ!!!!!』
サキエル『……』ビクッ
冬月「勝ったな」
ゲンドウ「ああ」
シンジ『どうして!!! どうして!!! どうして!!! どうして!!! どうして!!! どうして!!!』バキッドゴッベキッ
サキエル『……』イヤー
シンジ『どうしてだよ!!! どうしていつも父さんはそうなんだよ!!! うわぁぁああああああ!!!!!』
マヤ「酷い……」
ミサト「シンジくんがどういう生き方をしてきたのか、よくわかるわね」
ゲンドウ「……」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:27:12.57 ID:Ego2NBZdo
病室
シンジ「はっ……」
シンジ「……」
シンジ「知らない天井だ。僕はどうなったんだろう……」
レイ「気が付いた?」
シンジ「……君は」
レイ「エヴァ初号機、碇シンジにこれからの予定を伝えます」
シンジ「……」
レイ「明日、1000時にブリーフィングルームへ移動。その後、トレーニングルームでエヴァ零号機、綾波レイとの戦闘訓練。以上」
シンジ「怪我はもういいの?」
レイ「いいの」
シンジ「そうなんだ……」
レイ「それじゃ、またくるから」
シンジ「あ、うん」
シンジ「……手から血の臭いがする。どうしてだろう」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:29:33.40 ID:twWgq0b5O
使徒かわいい
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:33:04.51 ID:Ego2NBZdo
市街
ミサト「使徒は結局どうなったの?」
リツコ「分からないわ。まだ市街地に潜んでいるのか。それとももう第三新東京市にはいないかもしれないわ」
ミサト「逃がしたのは痛いわね」
リツコ「まさか、あれだけの傷を負いながら動けるなんてね。ありえないわ」
ミサト「まぁ、またその内顔を出すでしょうけど」
マヤ「あの、シンジくんの意識が戻りました」
ミサト「ホント、ありがとう。すぐに戻るわ。リツコ、あとのことはよろしくね」
リツコ「シンジくんに説明できるの?」
ミサト「それがあたしの仕事っ」
リツコ「……誰がどう説明したところで、彼の気持ちを動かせるかは疑問ね」
ミサト「……」
リツコ「もう一度、なってくれるかしら」
ミサト「なんとかなるって。ならないと、困るもの」
リツコ「大人のエゴね」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:38:54.81 ID:Ego2NBZdo
病室
ミサト「やっほー、シンジくん」
シンジ「ミサトさん……。どうも」
ミサト「良かったわ。1日以上、目を覚まさないから心配しちゃった」
シンジ「そうなんですか。僕はどうなったんですか?」
ミサト「貴方は初号機になって使徒を撃退した。それが全てよ」
シンジ「どうやって? 僕、何も覚えていなくて」
ミサト「かっこよかったわよぉ。いきなりカウンターパンチきめて、そこからシャイニングウィザードを――」
シンジ「……」
ミサト「とにかく、シンジくんは人類を守ったの。ありがとう」
シンジ「実感が全然ありません」
ミサト「いーじゃない。周囲のみんなは感謝してるんだから。素直に感謝されなさい」
シンジ「はい」
ミサト「で、これからのことなんだけど」
シンジ「これから、ですか?」
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:46:22.72 ID:Ego2NBZdo
シンジ「綾波って子にいわれました。もう戦闘訓練が始まるんですよね」
ミサト「え? そんな話、私は……」
シンジ「僕の居場所はここにしかないみたいですから。僕はエヴァになります」
ミサト「いいの?」
シンジ「はい。構いません」
ミサト「そう……。それじゃあ、貴方の部屋を用意しなきゃいけないわね」
シンジ「すみません」
ミサト「こっちの仕事だから、気にしないで。本部で寝泊りするのが一番だけど……」
シンジ「……」
ミサト「そーだ、あたしの家にこない?」
シンジ「ミサトさんの……?」
ミサト「うん。それがいいかもね。それでいい?」
シンジ「あ、はい。僕はどこでも」
ミサト「ふふーん。ありがとっ。それじゃ手続きしてくるわ」テテテッ
シンジ「……とれないや、血の臭い」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:54:34.10 ID:Ego2NBZdo
市街 某所
サキエル「……」
「戻ってきたんだね。サキエル」
サキエル「……」ビクッ
「何故、ここにいるのかって顔をしているね」
サキエル「……」ウルウル
「僕は落ちた天使の最後を見届けるためにやってきたのさ」
サキエル「……」フルフル
「落ちた者を拾うほど、この世界は優しくないんだ」
サキエル「……」イヤイヤ
「君はもう舞台には上がれない。残念だったね」
サキエル「……」イヤァー
「君は負けたんだ。闘争と言う名の魔物にね」
サキエル「……」ヒィー
「終幕にしよう、サキエル」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:58:19.01 ID:twWgq0b5O
サキエルたそ…
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 21:59:20.83 ID:Ego2NBZdo
翌日 ネルフ本部 トレーニングルーム
レイ「ふっ」
シンジ「うわぁ!?」
レイ「んっ」
シンジ「ちょ、ちょっと待ってよ、綾波!!」
レイ「なに?」
シンジ「そのもう少し、手加減を……。綾波の動きがはやくて……」
レイ「貴方は死なないわ。ヘッドギアがあるもの」
シンジ「そういうことじゃなくて」
レイ「ふっ」
シンジ「ぐっ……!!」
リツコ「よくもう一度なってくれる気になったわね」
ミサト「思うところがあるんでしょう、きっと」
リツコ「それと、シンジくんと一緒に住むという件だけれど。おかしなことしないでよ」
ミサト「だから、昨日のは冗談でいっただけだってばぁ。中学生に手を出すわけないでしょうが」
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 22:06:56.41 ID:Ego2NBZdo
シンジ「センターにいれて、スイッチ……」カチッ
レイ「そう。それだけで的には当たるわ」
シンジ「センターにいれて、スイッチ……センターにいれて、スイッチ……センターにいれて、スイッチ……」
レイ「それでいいわ」
シンジ「綾波……。一つ、いいかな?」
レイ「なに?」
シンジ「ミサトさんが綾波は生身での戦闘訓練をしたことがないって言ってたんだ。でも、なんだか慣れているみたい……」
レイ「気のせい」
シンジ「そうなんだ」
レイ「そう」
リツコ「自棄になっていなければいいけど」
ミサト「心配ないって。あたしがいるんだから」
リツコ「……そういえば、シンジくんも学校に通わせるらしいわね」
ミサト「できるだけ普通の生活をしてほしいのよ。シンジくんにはね」
リツコ「そう」
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 22:17:24.76 ID:Ego2NBZdo
レイ「ふっ」
シンジ「くっ」ガッ
レイ「あ……」
シンジ「……初めて、綾波の攻撃をまともに受けられた」
レイ「碇くん、流石ね」
シンジ「綾波の教え方が上手かったからだよ」
レイ「そろそろ時間。終わりましょう」
シンジ「あぁ、うん」
ミサト「おつかれさまー。喉乾いたでしょ」ポイッ
シンジ「あ、ありがとうございます」
ミサト「どう。レイとは仲良くできそう?」
シンジ「わかりません……。でも、嫌な感じはしません」
ミサト「その調子で明日からの学園生活も満喫してきなさい」
シンジ「あ、はい……」
ミサト「ふふっ。それじゃ、帰りましょ。我が家へ」
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 22:26:30.54 ID:Ego2NBZdo
学校
トウジ「すまんなぁ、転校生。ワイはお前をなぐらなあかん」
シンジ「な、なに、いきなり……」
トウジ「ウラァ!!」
シンジ「……」ガッ
トウジ「な、なにぃ?」
ケンスケ「トウジのパンチを受けた……」
シンジ「どうして、いきなり……。僕は何もしてないのに……」
トウジ「お前の所為で……お前の……」
ケンスケ「この前の戦闘でトウジの妹がね」
シンジ「え……?」
トウジ「お前がごっつ怖い顔で使徒をボッコボコにしてるところを妹が見てもうてな、それでおねしょが再発したんや。妹は毎日、毎日、枕とシーツをぬらしとる」
シンジ「そんなの関係ないじゃないか……僕だって戦いたくて……戦ってるわけじゃないのに……」
トウジ「……!」ドゴォッ
シンジ「ぐぁ……!」
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/30(土) 22:37:57.68 ID:Ego2NBZdo
シンジ「何やってるんだろう……人に殴られてまで……」
レイ「碇くん」
シンジ「綾波……?」
レイ「非常招集。先、行くから」
シンジ「……また、戦わないといけないんだ」
シンジ「どうして他人に殴られてまで……僕は戦わないといけないんだろう……」
レイ「碇くん」
シンジ「まだいたの?」
レイ「最初の防御は悪くなかったわ」
シンジ「……」
レイ「でも、その次は油断していたわね」
シンジ「ごめん……」
レイ「気をつけて」
シンジ「……」
シンジ(綾波って、不思議な子だな……)
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 00:25:06.59 ID:g4dXcWlTo
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 19:52:52.95 ID:NKWuVdKNo
ネルフ本部
マヤ「パターン青! 使徒です!」
ミサト「モニター」
マヤ「はい!」
シャムシエル『……』ニョロニョロ
サキエル『……』
ミサト「使徒が二体も……!!」
リツコ「心配はないわ。こちらもエヴァを二体保有しているもの」
ゲンドウ「ああ。問題ない」
ミサト「とはいっても、シンジくんはまだ戦闘も不慣れだし……」
冬月「しかし、零号機だけでは危険だろう」
ミサト「そうですが」
マヤ「碇シンジ、綾波レイ。ネルフ本部に到着しました」
ゲンドウ「ただちに二人を出撃させろ」
ミサト「了解」
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 19:57:22.23 ID:NKWuVdKNo
市街地
シンジ「目標をセンターにいれて、スイッチ……目標をセンターにいれて、スイッチ……」
レイ「……」
ミサト『二人とも、聞こえる?』
シンジ「はい」
レイ「問題ありません」
ミサト『使徒はその路地を真っ直ぐ進んでいるわ。あと数十秒で接触するはずよ』
レイ「了解」
ミサト『がんばってね』
シンジ「……はい」
マヤ『使徒との距離、50メートル。40……30……20……10……』
ミサト『今よ!!』
シンジ「目標をセンターに入れて……。スイッチ!!」カチッ
サキエル「……!?」ビクッ
シャムシエル「……」ニョロニョロ
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 20:02:52.94 ID:NKWuVdKNo
シンジ「うわぁぁああああ!!!」ズガガガガガガッ
レイ「碇くん、それだと粉塵で相手が見えないわ」
シンジ「ああぁあああぁああ!!!!」ズガガガガガ
レイ「……よけてっ」
シンジ「え……!」
シャムシエル「……」シュンッ
シンジ「うわっ!?」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
シンジ「くっ……! あぁぁああああ!!!」
シャムシエル「……」パシンッ
シンジ「ぐあ!?」
ミサト『シンジくん!! レイ、援護を!!』
レイ「無理です。使徒に捕縛されました」
サキエル「……」ギュゥゥ
ミサト『なんですって!?』
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 20:07:36.59 ID:NKWuVdKNo
シンジ「はぁ……はぁ……はぁ……」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ミサト『シンジくん、退却よ!!』
シンジ「はぁ……はぁ……はぁ……!!」
シャムシエル「……」
シンジ「うわぁぁあああ!!!」ダダダダッ
シャムシエル「……」テテテッ
マヤ『初号機、戦線離脱!! 使徒、エヴァ初号機を追撃しています!!』
ミサト『レイは!?』
レイ「離れて」ググッ
サキエル「……」ギュゥゥ
リツコ『無理そうね』
ミサト『仕方ない! シンジくん!! その路地を右に曲がって!!』
シンジ「は、はい!!」
ミサト『それでいいわ! こちらで最適のルートを教えるから、指示通りに移動して!!』
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 20:13:53.19 ID:NKWuVdKNo
学校
ケンスケ「やっぱり、あれは言いがかりにもほどがあるんじゃないか」
トウジ「うっさいわい。サクラがあの転校生のせいでイジメにあったらどう落とし前つける気や」
ケンスケ「そうはいっても、向こうは向こうで命がけで戦ってるわけなんだしさ、ああいうやりかたはどうかと思う」
トウジ「ふんっ」
ヒカリ「鈴原っ」
トウジ「なんや。いいんちょかいな」
ヒカリ「聞いたわよ。碇くんに酷いことしたんでしょ。ちゃんと謝ったの?」
トウジ「ワイはなんも悪いことはしてへん。ほっとけ」
ケンスケ「その碇を理不尽な理由で殴ったんだ」
ヒカリ「どうしてそんなことするの!? 碇くんが学校にこなくなったら、鈴原はどう責任をとるつもりなのよ!!」
トウジ「あの程度で心が折れるなら、使徒とは戦われへんなぁ」
ヒカリ「な……!!」
ケンスケ「流石にそれは――」
シンジ「こっちですね!! って、ここは学校じゃないか!! 学校でいいんですか、ミサトさん!!」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 20:20:02.54 ID:NKWuVdKNo
トウジ「転校生!? なにしてんねん!!」
シンジ「君は!!」
ケンスケ「謝るチャンスだ」
ヒカリ「ちゃんと謝って」
トウジ「なんでワイが――」
シンジ「くっ……!!」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ヒカリ「きゃぁ!?」
ケンスケ「まさか、使徒!? こんな近くで見ることができるなんて!!」
トウジ「これが使徒かいな……」
ミサト『シンジくん、そのまま校舎の中へ逃げなさい!』
シンジ「でも、僕の後ろに、その、クラスメイトがいるんです」
ミサト『ちっ。まだ帰ってなかったのね』
マヤ『シンジくんとレイには非常招集をかけたので一般生徒はやっと午後の授業が終わったところですね』
リツコ『他の生徒は関係ないわ。そのまま逃げなさい』
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 20:25:37.68 ID:NKWuVdKNo
シンジ「で、でも……」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ヒカリ「い、いや……」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ミサト『シンジくん! 周囲の生徒の安全を最優先!!』
リツコ『何を言っているの、ミサト! 今、初号機を失うわけにはいかないのよ!?』
ミサト『守りなさい! それが貴方の役目よ!!』
シンジ「僕は……」
シャムシエル「……」シュッ
ヒカリ「え――」
トウジ「あかんっ!!」
シンジ「ぐっ……ぅ……」パシッ
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ヒカリ「いか、り、くん……」
ケンスケ「触手から、委員長を守った……」
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 20:33:34.05 ID:NKWuVdKNo
シャムシエル「……」ジュゥゥ
シンジ「あぁああぁああああああ……!!!!」
マヤ『両手を損傷!!! 使徒の触手によるダメージです!!』
トウジ「転校、せい……」
ヒカリ「やめて! やめて!!」
シンジ「このぉぉぉ!!!」グイッ
シャムシエル「……」ズサァァァ
マヤ『使徒、転倒!!』
シンジ「もう帰って!! 帰ってよ!! 帰ってよぉぉぉ!!!」ゲシッゲシッ
シャムシエル「……」イタッイタッ
シンジ「僕は守らなきゃいけないんだ!!! 知らない人も!! 嫌いな人も!!! みんなを守らなきゃいけないんだ!!! 君たちが現れるから!!!」ゲシッゲシッ
マヤ『初号機、使徒に対して執拗に蹴りを浴びせています!!」
シンジ「かえってよぉ!!!」ドガッ
シャムシエル「……」テテテッ
マヤ『使徒、逃げ出しました!!』
45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 20:39:09.63 ID:NKWuVdKNo
シンジ「はぁ……はぁ……はぁ……」
トウジ「転校生……」
ヒカリ「……」
ケンスケ「あの、碇?」
シンジ「はぁ……はぁ……」
ケンスケ「大丈夫か?」
シンジ「はぁ……はぁ……」
ミサト『よくやったわ、シンジくん。戻ってきて』
シンジ「あや、なみは……?」
レイ『私は無傷だけれど、使徒には逃げられたわ』
シンジ「そう……よかった……。今から、戻ります」
ミサト『待ってるわ』
シンジ「帰ろう……」
トウジ「転校生。その……あー……」
シンジ「……僕は与えられた任務をこなしただけだから、気にしないで」
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 20:39:47.69 ID:BHdwhMrio
シンジが普通の運動能力しかないからシュール過ぎるwww
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 20:49:16.09 ID:NKWuVdKNo
ヒカリ「碇くん、本当にありがとう!」
ケンスケ「助かったよ」
シンジ「それじゃ、僕は戻るから」
トウジ「ま、またんかい」
シンジ「……」
トウジ「礼は言わんぞ。それがお前の仕事なんやろ」
シンジ「……」
ヒカリ「ちょっと!」
トウジ「ほら、ここ。ワシを一発どつかんかい。それで貸し一つでええやろ」
シンジ「どうして?」
トウジ「いいから、なぐらんかい!! ワシの気がおさまらんのや!!」
ケンスケ「こういうめんどくさい奴だから、一発殴ってやってよ」
シンジ「それじゃあ……」ドゴォッ!!!
トウジ「ぐっ……うぉ……ぇ……!?」
ヒカリ「鈴原!?」
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 20:56:33.28 ID:NKWuVdKNo
ネルフ本部
シンジ「ただいま、戻りました」
ミサト「おかえりなさい」
シンジ「……」
リツコ「ミサト、今回の一件は問題よ。貴方の独断で初号機を危険に晒したのだから」
ミサト「わかってるわよぉ。でも、結果的にはグッドでしょ」
リツコ「どうかしら。使徒には逃げられたのだから、バッドかもしれないわよ」
シンジ「すみません。僕が捕まえられたはずの使徒を取り逃がしました」
ミサト「シンジくんは悪くないわ。寧ろ、褒められることをしたのよ。胸をはりなさい」
シンジ「でも、僕はこの手でクラスメイトを殴りました。エヴァ初号機の硬い装甲に守られた手で」
マヤ「あれは向こうから殴って欲しいといってきたからで……」
シンジ「僕も罰を受けます」
ミサト「シンジくん……?」
シンジ「罰を受けますよ。なんでも言ってください」
リツコ「重症ね。とりあえず、少し休んでもらいましょう」
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 21:02:26.79 ID:NKWuVdKNo
廊下
シンジ「……」
レイ「碇くん。どこにいくの?」
シンジ「謹慎処分だって。12時間だけ」
レイ「そう。一般生徒を殴ったから?」
シンジ「うん」
レイ「どうして殴ったの?」
シンジ「殴ってくれっていったから」
レイ「断れなかったの?」
シンジ「断っても無駄だと思った」
レイ「その場をすぐに離れられなかったの?」
シンジ「無理だよ。きっと、引き止められた」
レイ「自分から問題を起こせば、ここにいなくてもよくなるって思ったの?」
シンジ「なんだよ……それの何がいけないんだ……」
レイ「……」
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 21:11:20.87 ID:NKWuVdKNo
シンジ「ここに呼ばれていきなり「お前はエヴァンゲリオンだ」なんて父さんに言われて、おかしな奴と戦わされて、逃げたくても逃げれなくて……!!」
シンジ「知らない相手にも恨まれて!! そんなの嫌なんだよ!!」
レイ「なら、逃げれば?」
シンジ「できるわけないよ!! 父さんが許してくれない!!」
レイ「そんなことはないわ」
シンジ「黙れよ!! 綾波は何も知らないだけじゃないか!! 父さんは……あいつは……サイテーの人間なんだ!!」
レイ「……」スッ
シンジ「ふっ!」ガッ
レイ「……」
シンジ「綾波の平手打ちは、もう見切ってるよ」
レイ「……」ドゴォッ!!!
シンジ「ぐ……ぉえ……!?」
レイ「さよなら」
シンジ「膝蹴り……まで……してくるんだね……あや、なみ……」
シンジ(本当に、僕は何をしているんだろう……。女の子にまで喚き散らして……最低なのは僕のほうじゃないか……)
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 21:16:32.56 ID:WXGeoVuko
レイTUEEEEEEEEEEE
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 21:20:22.71 ID:wDJ5/cF3o
なんでサキエルにボコボコにされたんだろう、この子
53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 21:21:06.70 ID:NKWuVdKNo
市街 某所
サキエル「……」ヨロヨロ
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「おかえり、二人とも。酷い有様だね」
サキエル・シャムシエル「「……!!」」
「落ちた天使と共にいっても失敗したんだね」
サキエル・シャムシエル「「……」」ガタガタガタ
「悲哀の旋律が、流れてくる。君たちの傷を見ると、そんな錯覚すら抱いてしまう」
サキエル「……!」
「予想外にリリンが強かった? そんな言い訳が通用するほど、運命は君たちに都合よくできていないんだ。悲しいね」
シャムシエル「……」ニョロニョロ!!!
「もういいんだ。哀れな者ほどよく喋るというけれど、本当だった」
サキエル・シャムシエル「「……」」ガタガタガタ
「天使はまた地上へと落ちた。悲しみの連鎖をここで断ち切ろう」
サキエル・シャムシエル「「……」」ガタガタガタ
54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 21:33:06.15 ID:NKWuVdKNo
「怯えなくてもいいんだ。怖がらなくてもいい。さぁ、出ておいで。第5の使者、ラミエル」
ラミエル「……」キャー
サキエル「……!」
「雷を司る天使の名を冠した、この子と共に行くんだ」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「確かに。リリンの手に収まるほどの大きさしかないけれど、それでも君たちよりは良い音を奏でてくれるはずさ」
サキエル「……」
「疑念を抱くのはいいことだよ。いつでも疑念から希望に変わるからね」
サキエル「……?」
「僕が信じられないかい?」
シャムシエル「……」ニョロニョロ!!
「心配はいらない。共にいけば分かるはずだ。ラミエルの本当の力がね」
ラミエル「……」キャー
「行ってくるんだ。そして、必ず……」
ラミエル「……」クルックルクルッ
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 21:40:30.85 ID:NKWuVdKNo
数日後 葛城宅
ミサト「シンジくん、起きてる?」
シンジ「……」
ミサト「……今日も学校を休んだみたいね」
シンジ「別に行く必要がないと思ったので」
ミサト「明日はちゃんと学校に行きなさい」
シンジ「エヴァにはちゃんとなりますよ。なればいいんでしょ」
ミサト「……」
シンジ「それでいいじゃないですか。どうして学校に行かないといけないんですか。僕はちゃんとエヴァになっていますよ」
シンジ「綾波との戦闘訓練だってきちんとしているじゃないですか。いつもいつも綾波には殴られっぱなしですけど、それでもちゃんとやってるじゃないですか」
シンジ「学校ぐらい、いいじゃないですか」
ミサト「分かったわ。もういい」
シンジ「……」
ミサト「シンジくん。おやすみ」
シンジ「僕は……ちゃんとエヴァになってるじゃないか……」
56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 21:46:34.14 ID:NKWuVdKNo
翌日 ネルフ本部
レイ「ふっ」ドゴォ!!!
シンジ「がはっ……!?」
ミサト「……」
リツコ「お疲れ、ミサト。はい、差し入れ」
ミサト「あら、ありがとう。この缶コーヒー、おいくら?」
リツコ「おごりよ」
ミサト「いただきますっ、赤木はーかせ」
リツコ「それで不登校は治ったの?」
ミサト「ダメね。鈴原くんと顔を合わせたくないみたいで」
リツコ「それでミサトは多感な中学生を放置しているわけね」
ミサト「そういうわけじゃないけど、どう接して良いのかわかんなくて」
リツコ「貴方みたいな人を保護者失格というのよ」
ミサト「ほんとにね。もうすこし上手くできると思ったんだけど」
リツコ「それにしてもレイは手加減をしないのね。シンジくんの治療もそれなりの労力がかかっているのに」
57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 21:50:13.05 ID:NKWuVdKNo
休憩所
レイ「先に帰るから」
シンジ「あぁ……うん……」
レイ「さよなら」
シンジ「……」
レイ「碇くん」
シンジ「帰らないの?」
レイ「これ、新しい座席表。昨日、席替えがあったから」
シンジ「そうなんだ」
レイ「碇くんは私の隣」
シンジ「そうなんだ」
レイ「……」
シンジ「なに?」
レイ「さよなら」
シンジ(綾波の考えていることは全然分からないな……。こんなの貰っても、僕は学校になんていく気がないのに……)
58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 22:02:07.14 ID:NKWuVdKNo
シンジ「僕も帰ろう……」
ミサト「シンジくん」
シンジ「……なんですか」
ミサト「ええと……その……」
シンジ「僕は帰ります」
ミサト「ごめんなさい」
シンジ「……」
ミサト「正直に言うわね。あたし、シンジくんとは上手くやっていく自信がないの。だから、ごめんなさい」
シンジ「それを僕に言うんですか」
ミサト「ええ」
シンジ「そうですか。僕、今日から本部で寝泊りをしたらいいんですか?」
ミサト「ただ、戦ってるときの貴方は、とてもかっこよかったわ」
シンジ「……」
ミサト「そんなシンジくんと一緒に生活ができてよかったと思うし、これからだってあたしは貴方の帰る場所であり続けたい」
シンジ「でも、上手くやっていく自信がないんですよね。ミサトさんは何を言いたいんですか」
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 22:09:10.21 ID:NKWuVdKNo
ミサト「そう。このままだと上手くやっていく自信がないの。シンジくんの協力がないとね」
シンジ「僕の……?」
ミサト「あたしは貴方の母親になろうとかお姉さんになろうとか、そんな大それたことは考えてないわ」
シンジ「……」
ミサト「だけどね、辛いことがあったら甘えていいし、いつでもこの胸をかしてあげるわ」
シンジ「そんなこと言われても……」
ミサト「本当に逃げ出したいのなら言って。いくらでも手を貸してあげる」
シンジ「嘘だ。そんなの」
ミサト「シンジくんのためなら、ネルフぐらいやめてやるわ。そのときはシンちゃんがあたしを養ってね」
シンジ「本気で言ってますか?」
ミサト「割とね」
シンジ「……」
ミサト「お父さんに言わなくてもいい。1人で抱え込まないで」
シンジ「どうしてそこまで優しくしてくれるんですか?」
ミサト「まぁ、あの……色々……シンジくんには悪いことしたし……」
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 22:13:10.78 ID:NKWuVdKNo
市街
シンジ(ミサトさん、僕に何を隠しているんだろう……)
トウジ「お!?」
ケンスケ「あ!!」
シンジ「あ……」
トウジ「ま、またんかい!!」
シンジ「な、なに……?」
トウジ「あれから1回も学校こんとなにしてんねん」
ケンスケ「みんな、結構心配してるんだ」
シンジ「ごめん。忙しくて」
トウジ「綾波は毎日きとるのにか」
シンジ「綾波が……」
ケンスケ「あの日のことを気にしているんだろ。もうトウジは忘れたっていってるから、碇も気にしないでくれよ」
トウジ「そうや! 男がウジウジしててもあかん! どっしりとかまえとけ!!」
シンジ「僕にはそんなことできないよ」
61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 22:18:49.29 ID:NKWuVdKNo
トウジ「なんでやねん。あのときのシンジはかっこよかったやんけ」
シンジ「かっこいい?」
トウジ「そうや。サクラもな、もうおねしょはせんようになったし、ワシが助けられたって話をしたら「シンジさんにちゃんとお礼が言いたい」っていっとるぐらいや」
シンジ「そう……」
トウジ「せやから、また学校にきてきれ。ついでにサクラにもあったってくれ」
シンジ「……」
ケンスケ「無理にとは言わない。トウジがあれだけのことをしたんだし」
トウジ「なんやねん!! ちゃんとシンジには殴られたやろ!!」
ケンスケ「そういう問題じゃないんだって」
トウジ「なら、どういうことやねん!! 説明せえや!!」
シンジ「僕はかっこよくなんてないんだ」
トウジ「は? そんなことあらへんって」
シンジ「僕はただ、戦えって言われたから戦ってるだけなんだ。何もかっこよくなんて……」
トウジ「お、おい」
シンジ「それじゃあ……」
62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 22:22:45.21 ID:NKWuVdKNo
公園
シンジ「僕は……僕は……」
キャー!!
シンジ「え?」
ラミエル「……」ヒューン!!!
シンジ「何か飛んでく――」
ラミエル「……」キャー!!
シンジ「うわぁ!?」
ラミエル「……」キャー?
シンジ「な、なんだ、これ……? 胸に飛んできたからよかったけど、頭に当たってたらあぶなかった」
サキエル「……」
シンジ「し、使徒……!?」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
シンジ「ま、まさか、この小さな物体も……」
ラミエル「……」キャー♪
63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 22:27:02.00 ID:NKWuVdKNo
サキエル「……」ガシッ
ラミエル「……」キャー
シンジ「まさか、君がそれを僕に投げてきたの?」
サキエル「……」コクッ
シンジ「どうしてそんなことするんだよ!!」
サキエル「……」シュッ
シンジ「くるっ!!」
ラミエル「……」キャー!
シンジ「この速度なら回避できる――」
ラミエル「……」キャァー
シンジ「軌道が変化し――」
ラミエル「……」ドンッ!!
シンジ「ぐっ……!! よ、よけられない……」
ラミエル「……」キャー
シンジ「また、来る!! 逃げなきゃ……!! 逃げなきゃ……!!」
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/31(日) 22:33:14.32 ID:NKWuVdKNo
ネルフ本部
マヤ「パターン青!! 使徒です!!」
ゲンドウ「モニターに出せ」
マヤ「は、はい!!」ピッ
ラミエル『……』ガッキン!!ガッキン!!
シンジ『痛い!! いたいよ!! やめてよぉ!! 誰か助けてよ!! ミサトさん!! ミサトさぁぁぁん!!!』
ラミエル『……』グリグリグリグリ!!!
シンジ『うわぁああああああ!!!! あああああぁっぁぁああああ!!!!』
マヤ「使徒! シンジくんの胸部で高速回転を始めました!!」
冬月「正八面体の使徒。あの形で回転されたら痛いな」
ゲンドウ「ああ。初号機を回収しろ」
リツコ「了解。――ミサト、聞こえる?」
ミサト『ほいほーい。どうかしたぁ?』
リツコ「すぐに現場へ向かって。シンジくんが使徒にやられているわ」
ミサト『なんですって!?』
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/01(月) 07:36:18.54 ID:XAVgSpr7o
冬月さんなんでそんなにのんびりとしてるんですか
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/01(月) 22:43:48.10 ID:TjbzP/lso
公園
シンジ「あああぁあああぁああ!!!!」
ラミエル「……」グリグリグリグリ!!!!!
サキエル「……」オロオロ
シャムシエル「……」ニョロニョロ
シンジ(ぼくは……ここで死ぬんだ……こんなわけの分からないところで……死ぬんだ……)
シンジ(ぼくは……母さん……)
バキッ!!
ラミエル「……」キャー
シンジ「え……」
サキエル・シャムシエル「「……!」」
レイ「碇くん、大丈夫?」
シンジ「あ、綾波……」
サキエル「……」ガオー
レイ「……私と戦うの?」
67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/01(月) 22:48:13.09 ID:TjbzP/lso
サキエル「……!」ビクッ
レイ「どうするの?」
サキエル「……」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
ラミエル「……」キャー?
サキエル「……」ダダダッ
ラミエル「……」キャー
シンジ「使徒が……去っていく……」
レイ「怪我は?」
シンジ「綾波……ありがと……う……」
レイ「碇くん?」
シンジ「……」
レイ「……」
ミサト「レイ!! シンジくんは!?」
レイ「ここに。碇くんは胸部から出血をしています。早く医療班を」
68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/01(月) 22:55:44.62 ID:TjbzP/lso
ネルフ本部
ゲンドウ「初号機の状態はどうだ」
リツコ「胸部を2針縫う程度の傷は負いましたが、許容範囲内です」
冬月「つまり、次の戦闘にも支障はないということか」
ゲンドウ「でなければ困る。初号機はこの世に1体しか存在しない」
リツコ「しかし、初号機も生身の人間です。あまり無理な稼働を強いては壊れるのも早まります」
ゲンドウ「この程度で壊れるなら、それまでのことだ。予備を用意すればいい」
ミサト「司令、それではあまりにも……」
ゲンドウ「使徒の襲撃は近くあるはずだ。初号機の修理は早急に行え。以上だ」
冬月「修理か」
ミサト「司令!!」
リツコ「やめなさい、ミサト」
ミサト「でも! リツコだって、今の命令はおかしいって思うでしょ!?」
リツコ「そうね。だけど、人類のためには時として非情にならなければいけないときもある。違う?」
ミサト「……シンジくんの様子を見てくるわ」
69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/01(月) 23:02:54.51 ID:TjbzP/lso
医務室
シンジ「……はっ」
シンジ「また、知らない天井だ」
レイ「起きた?」
シンジ「綾波……」
レイ「次の指令を伝えます。1800時に――」
シンジ「ちょっと待っ……ぐっ……」
レイ「胸の傷、まだ完治していないから」
シンジ「僕は、どれぐらい寝てたの?」
レイ「15時間ほど」
シンジ「そう……なんだ……」
レイ「その間に使徒が現れたわ」
シンジ「使徒が……」
レイ「モニターを見て。いつでも使徒の様子を見れるようになっているから」
シンジ「え……?」
70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/01(月) 23:15:59.03 ID:TjbzP/lso
サキエル『……』ガリガリ
シャムシエル『……』ニョローン
ラミエル『……』グリグリグリグリグリ!!!!!
シンジ「あれは何をしているの?」
レイ「赤木博士によると使徒三体は地面を掘って、ここネルフ本部を目指しているみたい」
シンジ「掘ってここまで来る事ができるの?」
レイ「18層に及ぶ特殊装甲があるから、あれで進むとなると79万8400時間後にはここへ到達することになる」
シンジ「ええと……日数にすると……」
レイ「90年ぐらい」
シンジ「放っておいてもいいんじゃないかな。あの正八面体の使徒なんて自分の体を回転させて掘っているし、そのうち削れていって消えちゃうかもしれないじゃないか」
レイ「でも、使徒の殲滅は命令だから」
シンジ「嫌だよ……もうあんな怖い思いをするのは……」
レイ「いやなの?」
シンジ「当たり前じゃないか!」
レイ「なら、逃げれば? あとのことは私が引き継ぐ」
71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/01(月) 23:23:00.79 ID:TjbzP/lso
シンジ「え……」
レイ「さよなら」
シンジ「綾波……」
シンジ(これでいいんだ……。綾波は強いし、きっと負けることはないはずだし……)
シンジ「でも、綾波はあの最初の使徒に負けて、大怪我をしていたような……」
シンジ「ううん。それでも、僕が戦うより綾波が戦ったほうがいいじゃないか。楽に使徒を倒せるはず」
シンジ「僕なんて……本当は必要じゃないんだ……」
シンジ「父さんが必要なのは……エヴァンゲリオン初号機で……僕じゃない……」
シンジ「……」
ラミエル『……』キャー
シンジ「なんだろう?」
レイ『それ以上、掘らせない』
シンジ「綾波!?」
ラミエル『……』キャー?
レイ『来る……』
80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 20:49:46.04 ID:jJzhT7rYo
公園
ラミエル「……」キャー
レイ「くっ……」
サキエル「……」ガオー
ミサト『一人じゃ無理よ!! 撤退しなさい!!』
シャムシエル「……」パシンッ!!!
レイ「うっ!」
ミサト『命令よ!! そこから離脱しなさい!!』
ラミエル「……」キャーッ
レイ「あ……」
ラミエル「……」グリグリグリグリグリ!!!!!!
レイ「んっ……あ……ぃ……!!」
ラミエル「……」グリグリグリグリグリ!!!!!
レイ「ん……ふ……ぁ……」
ゲンドウ『逃げろ、レイ!!』
81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 20:55:51.21 ID:jJzhT7rYo
病室
レイ『あっ……ん……うっ……』
ラミエル『……』グリグリグリグリグリグリグリ!!!!!!
シンジ「綾波が……!!」
シンジ「でも、僕が助けに行っても……結果は同じだし……意味がないよね……」
シンジ「使徒なんて倒せっこないんだ。何が初号機だよ」
シンジ「僕はただの中学生なんだ。あんなやつらに勝てるわけないじゃないか」
シンジ「父さんは……何を考えてるのか……よくわからないよ……」
ラミエル『……』グリグリグリグリグリ!!!!!!
レイ『んっ……ん……』
シンジ「僕じゃ助けられない……嫌なことや痛いことから逃げて何が悪いんだよ……」
シンジ「僕は……僕は……」
シンジ「ただ無理矢理……戦わされて……」
シンジ「それだけじゃないか……だから……」
82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 21:03:52.22 ID:jJzhT7rYo
ネルフ本部 管制室
ラミエル『……』グリグリグリグリグリグリグリ!!!!!!
レイ『あっ……は……ぃ……く……』
マヤ「エヴァ零号機の体温が上昇しています!! このままでは危険です!!」
ゲンドウ「レイ!!」
ミサト「逃げなさい! レイ!!」
マヤ「ダメです! こちらの音声、届いていません!!」
リツコ「万事休すか」
冬月「初号機は?」
マヤ「病室にいるはずです」
冬月「ここまでか。碇、零号機を破棄するときではないのか」
ゲンドウ「今ここで零号機を失えば、シナリオの大幅な変更を余儀なくされる。そのときではない」
冬月「だが」
『やめろぉぉぉ!!! 綾波を、はなせっ!!!』
ミサト「この声……!」
83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 21:08:46.87 ID:jJzhT7rYo
公園
ラミエル「……」キャー?
レイ「え……」
シンジ「うわぁああああ!!」バキッ!!!
ラミエル「……」キャァー
レイ「い、かり……くん……」
シンジ「はぁ……はぁ……あ、やなみ……」
レイ「たすけに……きえてくれたの……」
シンジ「僕にでもできることがあるかもって考えたら、いつの間にか病室を抜け出して、ここまで……」
レイ「そう……」
サキエル「……」ガオー!!!
シャムシエル「……」ニョロニョロ!!
ラミエル「……」キャー!
レイ「使徒が戦闘態勢に入ったみたい」
シンジ「ここで死ぬかもしれないね、僕たち……」
85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 21:13:39.17 ID:jJzhT7rYo
レイ「貴方は死なないわ」
シンジ「え?」
レイ「私が守るもの」
シンジ「ちょっと……」
サキエル「……」ガオー!!!
レイ「ふっ」ドゴォ!!!!
サキエル「……」グハッ
シャムシエル「……」シュンッ!!!!
レイ「無駄よ。フィールド、展開」ギィィン
シャムシエル「……!?」
レイ「目標、射程距離。攻撃、開始」バキッ!!!
シャムシエル「……」イタイ!!
シンジ「綾波……やっぱりすごく強いんだ……」
ラミエル「……」キャー!!!
シンジ「しまっ――」
86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 21:18:54.06 ID:w1oFR1xuo
ラミエルはサッカーボールみたいに思いっきり遠くに蹴っ飛ばせば何とかならないかな?ww
87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 21:19:27.34 ID:jJzhT7rYo
レイ「させない」ガシッ
ラミエル「……!?」
レイ「碇くん、今のうちに」
シンジ「え……?」
レイ「私が使徒の動きを握って止めている間に……」ギュゥゥ
ラミエル「……」キャー!!!
シンジ「わ、わかった!」
レイ「訓練を思いだして」
シンジ「目標を……センターにいれて……」
ラミエル「……」キャー!!!!
シンジ「スイッチ!」ドゴォ!!!
ラミエル「……」キャァァ…
シンジ「はぁ……はぁ……し、使徒は……?」
レイ「向こうに飛んで行ったわ。追いましょう」
シンジ「う、うんっ」
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 21:28:46.34 ID:jJzhT7rYo
シンジ「滑り台のほうにはいなかったよ」
レイ「……」
シンジ「綾波? どうしたの?」
レイ「……」
シンジ「綾波!? 綾波!! しっかりして!!」
レイ「ごめんなさい……少し、疲れて……」
シンジ「よかった……」
レイ「どうしたの?」
シンジ「安心して……それで……」
レイ「どうして泣いているの?」
シンジ「僕が逃げたせいで……綾波が危険な目にあって……でも、なんとか助けられて……綾波が無事で……安心して……嬉しくて……僕もよくわからないや……」
レイ「ごめんなさい。こういうとき、どんな顔をすればいいか、わからないの」
シンジ「笑えば、いいと思うよ」
レイ「……こう?」
シンジ「うん。そんな感じ」
89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 21:35:29.05 ID:jJzhT7rYo
ネルフ本部
マヤ「初号機、零号機。共に無事です!」
ミサト「二人の回収を急いで」
マヤ「回収班、伊吹マヤ。いってきます」
ミサト「はい。気をつけてね」
リツコ「人員が足りないと1人で何役もしないといけないから、大変ね」
ミサト「予算をカットしたヤツらに現場の大変さを教えてやりたいわ」
リツコ「そうね。人員の補充は急務ね」
ミサト「あてでもあるの?」
リツコ「一応ね。でも、応じてくれるかどうかわからないわ」
ミサト「なんでもいいから連れてきてよ。このままじゃ仕事が回らないわ」
リツコ「まずは碇司令に掛け合ってみないとね」
ミサト「お願いね、リツコ」
リツコ「ええ。それに次からはシンジくんたちも更に大変でしょうし」
ミサト「それ、どういう意味?」
90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 21:45:16.48 ID:jJzhT7rYo
司令室
冬月「弐号機の派遣か」
ゲンドウ「惣流・アスカ・ラングレー……。弐号機に選ばれた者か」
冬月「諸事情により、式波・アスカ・ラングレーに名前が変わったようだ。これが新しい名簿になる」
ゲンドウ「そうか」
冬月「私は早計だと思うがな。このタイミングでの弐号機投入はゼーレの脚本に存在していないはず」
ゲンドウ「我々の計画には入っている。多少の前後はあるが、誤差の範囲であり、修正も可能だ」
冬月「お前がそういうのなら、構わんがね」
ゲンドウ「計画に狂いはない」
冬月「使徒を三体取り逃がしている現状では、弐号機を投入せざるを得ないな」
ゲンドウ「それに、手札は多いほうがいい」
冬月「揃いすぎていると、相手に警戒されるぞ」
ゲンドウ「我々の到達する場所は同じだ。相手など、関係ない」
冬月「そうだな……」
ゲンドウ「到達するためならば、どのような札も集め、そして躊躇いなく切っていく。そう決めたはずだ」
91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 21:51:27.29 ID:jJzhT7rYo
翌日 市街
シンジ「あ……」
レイ「碇くん」
シンジ「お、おはよう」
レイ「学校、行くの?」
シンジ「うん。少し、怖いけど、行くよ」
レイ「どうして?」
シンジ「逃げたら楽だけど、楽なだけだから」
レイ「……」
シンジ「この前、綾波を助けにいったとき、なんとかなったから。その、もしかしたら色んなものも、僕が考えているほど大したことないんじゃないかって思えて」
レイ「そう」
シンジ「だから、これからは逃げずにやっていこうって、決めたんだ」
レイ「……」
シンジ「綾波、一緒に行かない?」
レイ「ええ。行きましょう」
92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 21:56:10.04 ID:jJzhT7rYo
学校
ケンスケ「今日も碇は休みか。誰かのせいで」
トウジ「なんやねん!! いつまでも引き摺る、シンジの性根が――」
シンジ「あ、ごめん……僕の所為で……」
ケンスケ「碇!」
トウジ「うぉ!?」
シンジ「ごめん。鈴原くん」
トウジ「いや、なんも言うてへん!! シンジ、あのときは命がけで守ってくれて、ホンマに感謝しとる!! 改めて、その、礼を……」
シンジ「そんな。僕のほうこそ、妹さんに怖い思いをさせちゃったし」
トウジ「あんなんはもうええっていうたやろ」
シンジ「そう、だね。えっと、鈴原くん――」
トウジ「トウジや」
シンジ「え?」
トウジ「鈴原トウジや。トウジでええ。鈴原くんなんて、気色悪いわ」
シンジ「……うん。トウジ、ありがとう」
93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 22:03:58.61 ID:jJzhT7rYo
数日後 ネルフ本部
リツコ「そう。学校へ行きだしたのね」
ミサト「ええ。友達もできたみたいよ。この前、家に帰ったら靴がたくさんあって驚いちゃった」
リツコ「いい傾向ね。このまま初号機としての技能もあげてくれたら助かるわ」
ミサト「シンちゃんをあまり兵器としてみないでくれる?」
リツコ「あら。情が移ったの? ミサトだって最初は司令の指示通りに動いていたじゃない」
ミサト「司令の指示に背くことはできなかったから、というのは少し違うわね。あのときは確かにあたしもシンジくんに初号機になってもらいたかったわ」
リツコ「そのときは兵器としてみていたでしょう」
ミサト「そうね。けど、今は違うわ。やっぱり、あたしには向いてない仕事かもね。あんたみたいに冷徹になれないもの」
リツコ「酷い言い方するわ。まるで血が流れていないみたいじゃない」
ミサト「で、アスカはいつくるわけ?」
リツコ「そうね。予定ではそろそろ到着していてもおかしくないのだけれど」
ミサト「使徒の襲撃がいつあるかわからないのに、暢気なもんよね」
リツコ「同感だけど、こればかりはね。向こうは船だから」
ミサト「早く来て欲しいわ、ホント」
95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 22:09:26.23 ID:jJzhT7rYo
海上 船 甲板
アスカ「くしゅん! あー、誰か私の噂をしているわね」
アスカ「……ん?」ググッ
マリ「お! 引いてる引いてるぅ」
アスカ「今日のディナーはこれよ!!!」
マリ「ファイトだにゃー」
アスカ「おんどりゃぁぁぁ!!!!」グイッ
マリ「こりゃ、大物かぁ?」
ザッパーン!!
ガギエル「……」ピチピチ
マリ「なにこれ、まずそー」
アスカ「ちっ。ハズレね」
マリ「どうする?」
アスカ「とりあえず、焼いてみたら? 案外美味しいかもしれないし」
ガギエル「……」ピチピチ
96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 22:15:52.87 ID:jJzhT7rYo
市街 某所
「ガギエルが、永久の旅へ出発してしまったようだね」
サキエル「……!!」
シャムシエル「……」ニョローン
ラミエル「……」キャー?
「そう。リリンにやられたんだ。あの子もまた堕天使となった。悲しみの螺旋はいつになったら終焉を迎えるのか……」
サキエル「……」
「君たちがもう少し、しっかりしていれば、こんなことにならずに済んだのにね」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「今回は関係ない? いいや、大いにある」
ラミエル「……」キャー
「リリンを倒せていれば、この犠牲は生まれなかった。違うかい?」
サキエル・シャムシエル「「……!?」」ビクッ
ラミエル「……」キャー
「次で終わりにしよう。僕だってこれ以上、誰かが怯える顔はみたくないんだ」
98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 23:57:43.48 ID:dDV5qkRLO
使徒が初めてやられたぞおい
99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/02(火) 23:59:36.62 ID:w1oFR1xuo
使徒って食えるのか…
100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/03(水) 03:16:43.70 ID:oz0Y7zPso
食ったのか……
102: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/03(水) 06:40:31.44 ID:rJ9i5DLUO
つまりS2機関が体内に……!?
104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/03(水) 17:39:02.53 ID:f19XpCoM0
焼いただけで食べたとは書いてないから丸焦げになった可能性
105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/03(水) 18:20:24.90 ID:lCbKhQZ20
ギャグっぽく仕上げてるけど、
エヴァがロボット物じゃなくて特撮ヒーロー物だったらこんな感じになってたと思う
109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/03(水) 22:10:02.38 ID:Avb4sl9Zo
学校 通学路
トウジ「でな、そのときめっちゃバランス崩してこけよってん。傑作やろ」
ケンスケ「その話はするなって」
シンジ「あはは」
レイ「碇くん」
シンジ「え?」
トウジ「お、なんや。また夫婦でデートかいな」
シンジ「そんなんじゃないって!」
レイ「緊急招集。一緒に行きましょう」
シンジ「まさか、使徒?」
レイ「いいえ。でも、すぐに来て欲しいって」
シンジ「そうなんだ。なんだろう」
レイ「葛城一尉からの伝言。会わせたい人がいるって」
シンジ「分かった。とにかく行こう、綾波。それじゃあ、またね、トウジ」
トウジ「おう。シンジ、またなー」
110: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/03(水) 22:17:10.20 ID:Avb4sl9Zo
港
シンジ「急に呼び出されたから驚きましたよ」
ミサト「いやー、ごめんね。お友達と遊ぶ約束でもしてた?」
シンジ「いえ、そんなことはないんですけど」
ミサト「これからね、新しい仲間がここへ到着するのよ。ま、その顔合わせをね」
シンジ「新しい仲間、ですか」
レイ「その仲間もエヴァンゲリオンなのですか?」
ミサト「もちのロンよ。ちょっち気の強いところもあるけど、基本的には良い子だし、なにより美人だから」
シンジ「美人……」
ミサト「そうよー。隙があれば、口説いてもいいわよん」
シンジ「そ、そんなことしませんよ!!」
アスカ「ぐーてんたーく!」
ミサト「はーい、グーテンターク、アスカ。久しぶりね」
アスカ「前に来日したのが1年前ぐらいだっけ。それはそうとミサト、ちょっと痩せた?」
ミサト「いいえ、500グラムプラスよ。それより、あなたのパートナーはどうしたの?」
111: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/03(水) 22:23:33.09 ID:Avb4sl9Zo
アスカ「ここに来る前に魚を釣ってたのよ。こっちに来るまでの食料も殆ど積めなかったし」
ミサト「あら。ごめんね。行ってくれたら郵送したのに」
アスカ「ミサトを頼ろうなんて思ってなかったわ。だから、釣りをしてたの」
ミサト「それで?」
アスカ「で、へんてこな魚を釣り上げたのよ。見た目はグロかったけど、割と大きかったし、焼いてみればなんとかなるって思ったわけ」
ミサト「食べたの?」
アスカ「ううん。焼いたらすっごい臭いで、食べる前に気分が悪くなっちゃったわよ。あれは食べられないちゅーの」
ミサト「んで、パートナーのマリは?」
アスカ「その臭いで完全にノックダウンよ。船の中でくたばってるわ」
ミサト「そうなの。それじゃ、私が介護でもしてあげようかしらね。その間にアスカは後ろの二人と挨拶を済ませておいて」
アスカ「ん?」
シンジ「あ、えっと……」
レイ「……」
アスカ「あんた、ダレ?」
シンジ「あ、あの、その、シンジ。碇シンジです。一応、エヴァンゲリオン初号機、なんだけど」
112: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/03(水) 22:35:14.80 ID:Avb4sl9Zo
アスカ「あんたが、エヴァ初号機ですってぇ?」
シンジ「う、うん」
アスカ「えー? そんな風には見えない、わねっ!」バッ
シンジ「え――」
レイ「……」ガシッ
アスカ「なによ」
レイ「今、貴方が碇くんを蹴ろうとしたから」
アスカ「足払いをしてやろうと思っただけ。あまりにも無警戒だったから」
シンジ「綾波、僕を守ってくれたの?」
レイ「……」
アスカ「女に守られて恥ずかしくないわけぇ?」
シンジ「うっ……」
アスカ「噂は聞いてるわ。親の七光りでエヴァになれただけなんでしょ、アンタ」
シンジ「七光りって……僕は……エヴァになりたくて、なったわけじゃないし……そもそも戦うことも好きじゃないんだ……」
アスカ「はぁ? アンタ、バカぁ? 七光りだろうがえこ贔屓にされていようが、エヴァになった以上は戦わないといけないの」
113: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/03(水) 22:50:06.49 ID:Avb4sl9Zo
シンジ「そんなの僕が望んだことじゃない」
アスカ「ウルトラバカなの?」
レイ「……」
アスカ「アンタもさっきからなんなの? 一年前からなんにもかわんないわね、この無表情女。少しぐらい笑ってみらればどうなのよ」
レイ「……」
アスカ「睨むんじゃないわよ」
ミサト「みんなー、おまたせー」
マリ「きぶん、わるぅ……はくぅ……はかせてぇ……」
アスカ「まだ治ってなかったわけ?」
マリ「あんな牛乳ふいたあとの雑巾が生乾きして、そのあとおっさんの唾液まで染み込ませたような臭いをかいだら、こうなるにゃー」
アスカ「軟弱よね。そんな感じだからいつまでたっても仮設5号機のままなのよ」
ミサト「改めて紹介するわね。新しい仲間の惣流・アスカ・ラングレーと真希波・マリ・イラストリアスよ」
アスカ「ミサト、違う。もう式波。式波・アスカ・ラングレー」
ミサト「ああ。ごめんなさい。そういえば……」
アスカ「パパはもう家族じゃないのっ」
115: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/03(水) 22:56:39.55 ID:Avb4sl9Zo
シンジ「式波さんって、結構大変なんだね」
アスカ「別に同情なんて欲しくないけど?」
シンジ「そ、そういうわけじゃ……」
マリ「んー? この子がゲンドウくんの?」
ミサト「そうよ。碇シンジくん。隣にいるのは綾波レイ。マリは知ってるでしょ?」
マリ「まぁねー。とくに碇シンジくんのことはよぉーく、知ってるぅ」
ミサト「どこかで聞いたの?」
マリ「うんにゃ。一度、会ってる」
ミサト「どこで?」
マリ「それは――」
ピリリリ……ピリリリ……
ミサト「はい?」
リツコ『パターン青。使徒が市街に出現したわ。現場へ急行して」
ミサト「こんなときに使徒!? ええい、折角焼肉でも行こうと思ってたのに」
アスカ「そんなのあとよ、あと。どこに使徒がでてきたの? 早く教えて、ミサト」
116: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/03(水) 23:11:11.05 ID:Avb4sl9Zo
市街
イスラフェル「……」ズンズン
サキエル「……」
アスカ「目標確認。行くわよ」
ミサト「アスカ、ちょっと待ちなさい。まだシンジくんとレイのパーツが届いていないわ。5分待ちなさい。それとも初号機と零号機なしで戦うつもり?」
アスカ「あんな弱そうなやつ私一人だけで十分よ!」ダダダッ
ミサト「待ちなさい!! アスカ!!」
マリ「あーあ、いっちゃったぁ」
シンジ「アスカは強そうだし、なんとかなるんじゃないですか?」
ミサト「どうかしら。アスカは確かに強いけど、実戦経験がゼロだし」
シンジ「そ、そんな。なら、どうしてアスカはあんなに自信満々に……?」
アスカ「この先は通行止め。引き返せばぁ?」
イスラフェル「……」
アスカ「ここを通りたかったら私を倒すことね。無理だろうけど」
117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 08:19:10.94 ID:ssYzjur4O
でもまあ使徒を初めて完全に倒したわけだし弱いわけないよね(フラグ)
118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 10:04:09.86 ID:lXJk1jBto
イスラフェル「……?」
サキエル「……」コクコクッ
アスカ「なに相談してんのよ。相談したって、このアスカ様を倒せるわけないでしょう」
イスラフェル「……」ポキポキ
アスカ「やる気ね。――コネ眼鏡!!」
マリ「りょうかーい。そーれっ」ポイッ
アスカ「ジャイアント・ストロング・エントリー!!」カチャカチャ
シンジ「どういうことですか?」
ミサト「エヴァのパーツを装着するときの掛け声みたいね」
シンジ「意味があるんですか?」
マリ「はい、最後が頭」
アスカ「装着完了!! エヴァ弐号機、見、ざ――」
イスラフェル「……」パシンッ
アスカ「あんっ」
レイ「あ……」
119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 10:13:41.91 ID:lXJk1jBto
アスカ「何よ!! 変身中は攻撃しないのが――」
イスラフェル「……」パシンッパシンッ
アスカ「あんっ、あんっ」
シンジ「ミサトさん、このままじゃあ!!」
ミサト「でも、まだ初号機と零号機のパーツが到着していないし……」
シンジ「だけど……!!」
アスカ「うぅ……変身中に攻撃するなんて……サイテー……」
マリ「これは私もいっちょやるかぁ」
アスカ「あんたなんかが加勢しても何の足しにもならないけど、変身するなら早くしなさいよね」
マリ「はいはい。そんじゃあ加勢しますよ、お姫さま!」
マリ「ファイナル・アトミック・エントリー!!」
サキエル「……」ドゴォッ
マリ「ぐっ……!? いったぁ……今のはきいたにゃぁ……」
アスカ「こいつら、手ごわいじゃない。私たちのデビュー戦としてはまぁまぁの相手ってわけね」
レイ「……」
120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 10:22:29.30 ID:lXJk1jBto
アスカ「いい気になるのはここまでよ!! これで終わりにしてやる!!」
イスラフェル「……」
アスカ「ソニックグレイヴ!!」ジャキン
シンジ「凄そうな武器だ。あれなら勝てるかも」
アスカ「おりゃぁぁあぁあぁああ!!!!」ザンッ!!
イスラフェル「……」ギャァァ
ミサト「決まった!!」
アスカ「ふん。また勝っちゃったわね。あといくつ勝利を重ねればいいのか教えて欲しいわ」
マリ「正義は勝つ!!」
サキエル「……」
レイ「まだ残っているけど」
イスラフェル「……」ゴゴゴゴッ
シンジ「な、なに、あれ……使徒が……」
イスラフェル甲乙「「……」」
ミサト「分裂した!?」
121: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 10:30:16.24 ID:lXJk1jBto
アスカ「アンタ、バカぁ? 分裂したら能力が半減するって相場がきまってんのよ!!」
マリ「そーだ、そーだ」
イスラフェル甲「……」パシンッ
アスカ「あんっ」
イスラフェル乙「……」ドゴォッ!!!
マリ「が……!?」
イスラフェル甲「……」ガシッ
アスカ「ちょっと!! どこ触ってるのよ!! このヘンタイ!! スケベ!! チカン!!」
イスラフェル甲「……」ポイッ
アスカ「いやぁぁあああ!!!」
シンジ「式波さん!!」
レイ「軽々と投げ飛ばした……」
イスラフェル乙「……」ポイッ
マリ「やーらーれーたー」
ミサト「これは撤退したほうがよさそうね。みんな、態勢を整えるわ!! 逃げて!!」
122: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 10:37:56.05 ID:lXJk1jBto
ネルフ本部
リツコ「無様ね」
アスカ「まさか分裂しても能力が落ちないなんて予想外だっただけ」
マリ「あいつ、切ったら切った分だけ分裂しそうじゃない?」
アスカ「サイズが小さくなるわけでもなさそうだし、厄介よね」
シンジ「それじゃあ絶対に倒せないってこと?」
アスカ「この世に絶対に倒せない敵はいないの。そんなこともしらないわけ?」
シンジ「ごめん……」
ミサト「……」
レイ「何か作戦は?」
ミサト「切ったら分裂してしまうのは、再生できるだけの部分が残っているからなんでしょうね」
リツコ「つまり、倒す際に再生できる余地を残さなければなんとかなるかもしれない、ということね」
ミサト「そういうこと」
リツコ「となると、使徒を倒す方法は……」
ミサト「エヴァ二機による同時攻撃以外にないかもね」
123: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 10:50:14.29 ID:lXJk1jBto
冬月「エヴァ二機でのコアを同時破壊か」
ミサト「成功確率は決して低くありません。MAGIによる回答も賛成2、条件付賛成1でした」
ゲンドウ「反対する理由はない。葛城一尉に任せる」
ミサト「ありがとうございます。では、この作戦を実行するために許可を頂きたいことがあるのですが」
ゲンドウ「なんだ」
ミサト「碇シンジ、式波・アスカ・ラングレーの両名にはしばらく共同生活してもらおうかなと思いまして」
冬月「共同生活か」
ミサト「この作戦においては何よりも二人のシンクロ率が高くなければなりません」
ゲンドウ「その二人を選出した理由は?」
ミサト「レイとシンジくんでは能力に差がありすぎますし、マリは相手に合わせることが苦手みたいなので」
冬月「消去法か」
ミサト「アスカ自身も出撃したいと強く希望していましたから」
ゲンドウ「わかった。二人が生活する部屋はどうするつもりだ」
ミサト「私の家を使います」
ゲンドウ「そうか。あとのことは頼む」
124: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 10:58:04.43 ID:lXJk1jBto
葛城宅
アスカ「ぬあんで、私が男と一緒に生活しなきゃいけないわけぇ!?」
ミサト「今回の作戦のため」
アスカ「いやよ!! 寝てる間に何かされたら誰が責任とってくれるのよ!? この七光り自身!?」
シンジ「ぼ、僕だって選ぶ権利があるよ……」
アスカ「はぁ!? あんた、私じゃ不満だっていうの!?」
マリ「やったじゃん、姫ぇ。前から、一度でいいからかっこいい男と同棲したいっていってたし」
アスカ「言ってないわよ!!」
ミサト「とにかくこれは決まったことよ、諦めなさい」
レイ「使徒の動きはどうなっているんですか」
ミサト「市街を延々とウロウロしているみたいね。多分、本部へ行くための道を探しているんだと思うわ」
シンジ「あの、使徒って何の目的でネルフ本部を目指しているんですか?」
ミサト「分からないわ。けれど、人類の敵であることは確かなの」
シンジ「そうですか」
アスカ「そんなことに疑問を持つ奴、初めてみたわ。ホント、バカね」
125: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 11:14:51.55 ID:lXJk1jBto
ミサト「早速、訓練を始めましょうか。あまり悠長にしていられないわ」
シンジ「どんな訓練をするんですか?」
ミサト「目的は使徒のコアを同時すること。動きを完璧にシンクロさせる必要があるわ」
アスカ「その動きを合わせる練習をするわけね」
ミサト「はい、正解。軽いダンスレッスンだと言えば分かりやすいかしら」
アスカ「なんで私がこんなやつと生活してダンスレッスンまで受けなきゃいけないのよ。最悪ね」
シンジ「な、なにもそこまで言わなくても……」
アスカ「私は弐号機に選ばれた超エリートなの。それが――」
レイ「そこまで言う必要、ある?」
アスカ「あんたは関係ないでしょ」
レイ「そこまで言う必要はあるの?」
アスカ「うっ……」
マリ「みんな、仲良くしたほうがいいんじゃにゃい」
ミサト「ほら、シンジくんとアスカは着替えてきて。訓練、すぐにはじめるわよん」
アスカ「はいはい。あー、メンドー」
126: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 11:29:57.06 ID:lXJk1jBto
アスカ「ジャイアント・ストロング・エントリー!!!」
シンジ「……」
アスカ「ちょっと、なにぼけっとしてるわけ?」
シンジ「え?」
アスカ「あんたもエヴァンゲリオンの端くれならあるでしょ。あんたのセンスがどんなものか私が見てあげるわ」
シンジ「どういうこと?」
アスカ「はぁぁ!? もしかして変身前の決め台詞すらないわけぇ?」
シンジ「そんなのあるわけないよ。綾波だって静かに装着してるし」
アスカ「無自覚もいいとこだわ。そんなことだから使徒を取り逃がすのよ。しかも三回も」
シンジ「それは式波さんだって……しかも、負けてるし……」
アスカ「いいから、まずは決め台詞からね。私がかっこいいの考えてあげるわ」
シンジ「い、いらないよ。それに、恥ずかしいし……」
アスカ「決め台詞があってこそのエヴァ。それがないなら、私は訓練なんてしないわ」
シンジ「そんな……」
アスカ「大丈夫よ。私がアンタにぴったりな決め台詞を考案するから。少し待ってなさい」
127: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 11:39:37.28 ID:lXJk1jBto
アスカ「うーん……」
シンジ「あの、そろそろ訓練を……」
アスカ「好きな言葉とかある? そういうのを入れてもいいのよね」
シンジ「だから、訓練……」
アスカ「アルティメット・ブレイブ・エントリーとか、どう?」
シンジ「えっと……」
ミサト「んぐっ……んぐっ……。ぷはぁ!! くぅー!! この一杯のために生きていると言っても過言じゃないわぁ」
マリ「あちゃぁ、ああなると姫様は長いからねぇ」
レイ「意味のないことに時間をかけるのね」
マリ「これぐらいはいいとおもうけど」
レイ「そう?」
マリ「こっちだって命がけで戦ってるわけだもん。これもらおっと」
ミサト「未成年でしょ、マリぃ」
マリ「ふふん。もう立派な大人だったりして。特にスタイルとか」
レイ「……」
128: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 13:23:33.53 ID:lXJk1jBto
ミサト「すかー……すかぁー……」
マリ「すぅ……すぅ……」
シンジ「結局、今日は訓練できなかったね」
レイ「そうね」
アスカ「バーニング・サンダー・エントリー……。しっくりこないわね」
シンジ「あの、式波さん。ミサトさんも寝ちゃったし、明日にしない?」
アスカ「邪魔しないで」
シンジ「でも、ほら、もう0時まわっちゃったから」
アスカ「これが完成しないと訓練でも実戦でも気合がはいんないでしょ」
シンジ「そんなことないよ。今までもなんとかなってきたし」
アスカ「今まではね。でも、これからは違うわ。そもそもまずは名乗りで相手をビビらせるところから戦いは始まってるんだから」
シンジ「だから、式波さんは決め台詞に拘ってるの」
アスカ「あとそのほうがヒーローっぽいでしょ」
シンジ「ヒーローになりたいんだ」
アスカ「なりたいじゃないわ。私たちはエヴァンゲリオンなのよ。ヒーローなの。人類を守る、正義のね」
129: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 13:32:01.49 ID:lXJk1jBto
シンジ「そうかもしれないけど、僕はまだ実感がなくて」
アスカ「三度も使徒を取り逃がしていればそうでしょうね」
シンジ「ごめん……」
レイ「貴方はヒーローになるためにエヴァンゲリオンになったの?」
アスカ「そうよ。ママがエヴァの研究員だったから、小さいときから憧れてた。小さいときから訓練だってやってきた」
レイ「そう」
アスカ「私はエヴァになる以外の道は見えてなかった。だからこうしてる」
シンジ「エヴァになりたくてなったんだ……。なんだか、すごいね」
アスカ「そう? 褒めても何もでないわよ」
シンジ「羨ましいよ……好きなことができる式波さんが……」
アスカ「アンタ、超絶バカね」
シンジ「え?」
アスカ「確かに私はエヴァに憧れてたし、自分から選んだ道だったけど、好きなことなんてひとっつもないわ。今だってこうしていたくもない場所にいるんだから」
シンジ「けど、自分で道を選べただけマシだよ。僕なんて、無理矢理、ここに……」
アスカ「なら、なんでこの前の戦闘で自分からこの無愛想女を助けにいったわけ?」
130: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 13:38:18.25 ID:lXJk1jBto
シンジ「どうしてそのことを知ってるのさ」
アスカ「使徒のことなんだか情報ぐらい耳にはいってくるわよ。なにせ、超エリートのアスカ様なんですから」
シンジ「あの、ときは、綾波を助けたくて……」
アスカ「それでいいじゃない」
シンジ「え?」
アスカ「戦う理由、エヴァになる理由。それで十分でしょ」
シンジ「それでって……」
アスカ「だって、あんたはその理由だけで戦いにいったんだから。バカなあんたにはそれで十分ってことよ」
シンジ「……」
アスカ「嫌な事があろうが、好きなことがなかろうが、理由があれば戦える。理由が本当にないなら、戦えないじゃない。戦うのって怖いしね」
シンジ「式波さんも、怖いって思うんだ」
アスカ「とーぜん。まぁ、私は弱くないし、負けない自信しかないけど」
レイ「貴方は今日、負けたわ」
アスカ「黙ってなさいよ!!」
シンジ「戦う理由……僕が戦う理由……エヴァになる理由……」
131: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 14:32:50.25 ID:lXJk1jBto
アスカ「ふわぁ……。流石に眠くなってきちゃったわね」
シンジ「そっか……。今はそれでいいのかもしれない」
アスカ「あ?」
シンジ「あのとき、綾波を助けられて嬉しかったのは本当だし、綾波が戦い続けるなら、僕も戦えるかもしれない」
レイ「……」
シンジ「やっぱり、僕は難しく考えてただけなのかも。式波さんの言うとおり、単純な理由でも怖いことや痛いことに立ち向かえる気がしてきた」
アスカ「そーそー。アンタみたいな単純な男には単純な理由でいいのよ。で、その戦闘の恐怖をもっとやわらげる方法があるんだけど?」
シンジ「どんな方法なの?」
アスカ「名乗りよ。自分が正義の味方になった気分になれば、緊張もしなくなるってもんよ」
シンジ「そっか、式波さんが決め台詞を言うのは怖いからっていうのもあるんだ」
アスカ「べっつに私はそこまで怖がりじゃないわよ!! 失礼ね!!」
レイ「恐怖をなくすため……でも恐怖ってなに……」
シンジ「式波さん。僕も考えるよ、決め台詞。ううん、これは僕自身が決めなきゃいけないことなんだと思う」
アスカ「やっと自覚が出てきたみたいね。そこまで言うなら付き合ってあげてもいいわよ」
シンジ「ありがとう」
133: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 16:18:13.97 ID:ssYzjur4O
急にアスカがかわいく思えてきた
134: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 18:41:45.46 ID:LHBTUyZnO
ええ娘や…
135: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 20:19:50.31 ID:lXJk1jBto
翌朝
ミサト「んー、すっかり寝ちゃったわね」
マリ「グッモーニン、ミサト」
ミサト「どうしたの、ニヤニヤしちゃって」
マリ「あれを見てたら嫌でも緩むって」
アスカ「ジャイアント・ストロング・エントリー!!」
シンジ「シャ、シャイニング・エナジー・エントリー」
アスカ「赤い魂のルフラン! エヴァンゲリオン弐号機!!」
シンジ「残酷な青のテーゼ、エヴァンゲリオン初号機」
アスカ「参、上!!」
シンジ「さんじょう」
アスカ「もう少し声を出しなさいよ。折角、ビシっと決めてるんだから」
シンジ「朝からそんなに声がでないよ」
ミサト「あら、中々良い感じにシンクロしてるわね。今回の作戦、上手くいくかも」
136: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 20:57:40.39 ID:lXJk1jBto
ネルフ本部
冬月「使徒の様子はどうなっている」
マヤ「依然として第三新東京市内をうろついています。市民から気味が悪いからなんとかして欲しいとの声が多くあがっています」
冬月「だろうな」
ゲンドウ「奴等はまだここへの道を発見していないようだな」
冬月「使徒の目的を考えれば見つければ即ここまで来るだろうからな。あれから既に五日経過していて本部が平穏を保っているということがなによりの証明になる」
ゲンドウ「ああ。葛城一尉、初号機と弐号機による同時破壊の件はどうなっている」
ミサト「順調です。想像以上に二人のシンクロ率が高く、本作戦は本日にも決行できます」
ゲンドウ「そうか。では、準備が整い次第、作戦を開始しろ」
ミサト「了解!」
冬月「しかし、碇。今回も初号機と零号機でよかったのではないか。弐号機と5号機はあくまでもバックアップのはず」
ゲンドウ「シナリオ通りにことを運んでいるだけだ」
冬月「シナリオを意識しすぎると、シナリオに操られてしまうかもしれんぞ」
ゲンドウ「構わん。利害は一致している」
冬月「なるほど。実にお前らしいな」
137: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 21:07:55.01 ID:lXJk1jBto
市街
イスラフェル「……」キョロキョロ
サキエル「……」キョロキョロ
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「そんなところを探したって、あんたたちの行きたい場所は見つからないわよ」
サキエル・シャムシエル・イスラフェル「「……!」」
アスカ「まぁ、このアスカ様がいる限り、絶対にたどり着けないけどね」
イスラフェル「……」ムカッ
サキエル「……」プンプン
アスカ「ふっふーん。前回の私とはわけが違うんだから。行くわよ、シンジ!! わかってるわね!!」
シンジ「わ、分かってるよ。62秒でケリをつける」
シャムシエル「……」ニョロロン
アスカ「あんたたちなんて62秒あれば十分なのよ!!」
イスラフェル「……」ガオー!!!
サキエル「……」プンプンッ!!!
138: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 21:12:47.49 ID:lXJk1jBto
アスカ「ジャイアント・ストロング・エントリー!!!!」
シンジ「シャイニング・エナジー・エントリー!」
イスラフェル「……」ダダダダッ
サキエル「……」ガオー
レイ「行かせない」ガシッ
サキエル「……!!」
マリ「足止めはさせてもらうにゃ」ガシッ
イスラフェル「……!!」
シャムシエル「……」ニョローン
マリ「1体、そっちにいった!!」
アスカ「ちょっとまってよ! この特殊装甲、少し付けにくいんだから!」
シャムシエル「……」シュッ
アスカ「ちっ、触手が――」
シンジ「させない!! フィールド、全開!!」ギィィン
アスカ「へぇ、やるじゃない、バカシンジのくせに」
139: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 21:18:09.50 ID:lXJk1jBto
アスカ「赤い魂のルフラン! エヴァンゲリオン弐号機!!」
シンジ「残酷な青のテーゼ、エヴァンゲリオン初号機!」
シンジ・アスカ「「参上!!」」
マリ「ひゅー、かっこいいじゃん」
レイ「……」
シャムシエル「……」
イスラフェル「……」
サキエル「……」パチパチパチ!!
アスカ「ユニゾン作戦、開始!! 各自散開!!」
シンジ「了解!!」
マリ「仕事はきっちりさせてもらうよ」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
レイ「貴方の相手は私」
サキエル「……!?」ビクッ
アスカ「まずはソニックグレイヴ!!」ジャキン
140: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 21:19:18.93 ID:9N4IffrSo
サキエル楽しんでるwwww
141: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 21:26:09.70 ID:lXJk1jBto
イスラフェル「……」ガオーン
アスカ「おんどりゃぁぁあああ!!!!」ザンッ!!!!
イスラフェル「……」ギャァァ
シンジ「よし」
アスカ「ここからが本番よ、シンジ」
シンジ「うん。僕はアスカにあわせるだけだから、好きなように動いてよ」
アスカ「ふん。この超エリートの私についてくるなんて、生意気なこといわないで!!!」
イスラフェル甲「……」ジャーン
イスラフェル乙「……」ドヤッ
アスカ「コンビネーション・プレリュード!」
イスラフェル甲乙「「……!」」
シンジ・アスカ「「アインス! ツヴァイ! ドライ!」」バキッ!!ドゴォ!!!
イスラフェル甲乙「「……」」イタイッイタイッ
アスカ「続いて、コンビネーション・シンフォニア!」
マリ「相変わらず姫のネーミングセンス、しびれるぅ」
142: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 21:36:53.73 ID:lXJk1jBto
シンジ・アスカ「「フィーア! フンフ! ゼクス!!」」
イスラフェル甲乙「「……」」ガッタイ!
イスラフェル「……」ガオー
シンジ「融合した!! アスカ!!」
アスカ「わかってるっちゅーの!! コンビネーション・フィナーレ!!」
レイ「ふっ」グキッ
サキエル「……!!!」ギブ!ギブ!!
アスカ「これでトドメよ!! エヴァンゲリオン合体攻撃、ユニゾンキック!!」
イスラフェル「……!」
シンジ・アスカ「「ズィーベン!!!」」ドゴォ!!!
イスラフェル「……!!」アンギャァ!!
ドォォォォン!!!!
アスカ「悪は潰えたわ」
シンジ「正義は勝つ」
リツコ『……恥ずかしくないの?』
143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 21:44:05.99 ID:lXJk1jBto
ネルフ本部
アスカ『恥ずかしくなんてないわよ!! これがエヴァンゲリオンのあるべき姿なんだから!!』
マリ『さっすがお姫さま。相変わらず英語とフランス語とドイツ語を織り交ぜてくるね』
アスカ『まぁ、私ぐらいになると黄金比がわかっているもの』
レイ『そういうことではないと思うけど』
シンジ『でも、楽しかった。ありがとう、アスカ』
アスカ『なんでお礼をいうわけ?』
シンジ『アスカの言うとおり、ヒーローになりきってみたら、怖くなかったから』
アスカ『でっしょ。もっと称えてくれてもいいわよ』
ミサト「みんな! よくやってくれたわ! 帰ったら、ゆっくりお風呂にでも浸かりましょう」
アスカ『いいわね。シンジが掃除しなさいよ』
シンジ『たまにはアスカがしてよ』
アスカ『ぬあんでエリートの私がお風呂掃除なんて雑用をしなきゃいけないのよ。そういうのはシンジの仕事でしょ』
シンジ『一緒に住んでるなら交代でやろうよ!!』
リツコ「それはそうと他の使徒はどこにいるの?」
144: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 21:56:53.48 ID:lXJk1jBto
市街 某所
サキエル「……」ヨロヨロ
シャムシエル「……」フラフラ
「おかえり、二人とも。今回も随分と悲壮感漂う姿をしているね」
サキエル「……!」
「ちゃんと見ていたよ。ラミエルを撫でながらね」ナデナデ
ラミエル「……」キャー♪
シャムシエル「……」ニョロー
「嫉妬は醜いね。役目を全うできない哀れな者が抱く劣情だ」
サキエル「……」
「そう。音楽を司るイスラフェルもやられたんだね。この連鎖はいつまで続くんだろう」
シャムシエル「……」
「そうか。イスラフェルは逃げ出したんだね。恐怖とは時として心を侵し、変えてしまう。仕方のないことだよ」
「ちなみに二人が逃げ出すことはできないよ。落ちた天使を監視し、使役するのが僕の役目だからね」
サキエル・シャムシエル「「……」」
145: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 22:49:47.54 ID:lXJk1jBto
市街
マリ「やっばいなぁ。姫とワンコくんの連携に見惚れたら使徒を見失っちゃったじゃん」
レイ「……」
マリ「私はともかく綾波レイまで失敗するなんてね。珍しいこともあるもんだ。なんか考え事でもしてた?」
レイ「……別に。今は使徒を探さないと」
マリ「はいはーい」
アスカ「アンタがちゃんとみてないからでしょうが!! なんで私の所為なのよ!!」
シンジ「アスカの所為とは言ってないよ。でも、決め台詞をいうときも使徒の様子はみておこうって言ったじゃないか」
アスカ「シンジがみていればいいでしょ!」
シンジ「あの位置だと使徒が見えなかったっていってるじゃないか!」
アスカ「知らないわよ!!」
リツコ『随分と仲がよくなったのね。名前で呼び合っているし』
ミサト『ぶふふふ。そうなのよ、奥さん。若いもんはいいわよねぇ』
マヤ『不潔です』
アスカ「そんなんじゃないわよ!! ふざけんな!!」
146: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 23:01:05.24 ID:lXJk1jBto
葛城宅 浴室
マリ「いい湯だな、ハハハン。いい湯だな、ハハハン。湯気が天井からポタリと背中に〜」
アスカ「あーもーサイテー!! 結局、使徒を倒せたかどうかわっかんないじゃない!!」
レイ「……」ゴシゴシ
アスカ「私の撃墜数は0のままってどうなのよ!」
マリ「つめてえな、ハハハン。つめてえな、ハハハン。ここは北国、登別の湯〜」
アスカ「あんたもいつまで暢気に歌ってるわけ?」
マリ「湯に浸かると自然と歌がでちゃうもんだって。心の洗濯ってやつ」
アスカ「成果がなかったのよ。少しは焦ればぁ?」
マリ「そういう数字には興味ないからにゃぁ。姫様と王子様がいてくれたら使徒なんて怖く無さそうだしぃ」
アスカ「エヴァとしての自覚がないやつはここにもいるわけね」
マリ「わるいねぇ」
アスカ「ちょーイライラする! なんで揃いも揃ってこんなやつばっかりなのよ!!」ガンッ!!!!
サンダルフォン「……」ギャー!!!
アスカ「ん? げ、なんか潰しちゃった。なにこれ、虫? きもちわるっ。シンジのやつ、お風呂掃除手を抜いたわね」
147: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 23:09:36.60 ID:lXJk1jBto
リビング
ミサト「楽しそうな声がお風呂場から聞こえてくること」
シンジ「すみません。使徒をまた……」
ミサト「いいから、気にしないで。ちゃんと撃退はできたんだし」
シンジ「そうかもしれないですけど……」
ミサト「そうそう。碇司令から伝言があるの」
シンジ「父さんから?」
ミサト「よくやったな。だってさ」
シンジ「……」
ミサト「シンちゃん、うれしい?」
シンジ「そ、そんなことは……」
ミサト「嘘つかないの。嬉しいときは素直に喜びなさい」
アスカ『ちょっとシンジー!! 気持ち悪い虫がお風呂場にいたんだけどー!! 手で潰しちゃったじゃない!! どうしてくれるわけー!? 責任取りなさいよー!!』
シンジ「お風呂にはいってるんだから、洗えばいいじゃないか」
アスカ『そういう問題じゃないのよ!! ほんっとにバカシンジなんだから!!』
148: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 23:28:02.16 ID:+i8RZNn00
サンダルフォン…
149: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/04(木) 23:57:58.52 ID:M5xGxau20
早くシンジにオフロダイバーさせなきゃ(使命感)
シャムシェルが生きてるってことは4号機は作られないしアメリカは爆発しないし量産機は作られないってことかしら
153: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/05(金) 18:14:58.33 ID:BzJPwo3ko
いい加減にしろ(褒め言葉)
154: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/05(金) 18:45:12.97 ID:mWfSgb3Ho
アスカが地味にキルカウント増やしてるww
156: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 19:37:18.79 ID:iRs1N69bo
翌日
シンジ「よっと。ミサトさーん、アスカー」
ミサト「あさごはんー?」
アスカ「ねむ……」
シンジ「はい。急いで食べてくださいね」
ミサト「はぁーい、いただきまーす」
アスカ「朝はパンがいいって言ってるでしょ」
シンジ「いいじゃないか、別に。僕が作ってるんだし」
アスカ「なによ! リクエストに応えられないなんてシェフ失格ね! ふんっ」
シンジ「なら、アスカは食べなくてもいいよ」
アスカ「食べるわよ!」
ミサト「大体、アスカはここに住む必要ないのよ? レイやマリみたいに家だってこっちが用意してあげるのに」
アスカ「また荷物を移動させるなんて面倒じゃないの」
シンジ「僕と住むのは嫌っていってなかったっけ」
アスカ「引越しの面倒さとアンタと一緒に住むのを天秤にかけただけよ。別にバカシンジとなんて住みたくないわっ」
157: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 19:47:47.56 ID:iRs1N69bo
学校
シンジ「おはよう」
トウジ「おー、おはようさん。昨日は大活躍やったみたいやのう。いや、昨日もか」
シンジ「そんなことないよ。あれはアスカがいたからで」
ケンスケ「お、いつの間にか名前で、しかも呼び捨てなんて。二人にどんな変化があったのか気になるところだ」
トウジ「なんやなんや。第二の嫁かいな。かー、エヴァってモテるんやな」
シンジ「そ、そんなのじゃないよ!!」
アスカ「またあの3バカがなにか言ってるわね」
ヒカリ「あの、式波さん」
アスカ「ん? ヒカリだっけ? アスカでいいわよ」
ヒカリ「え、あ、いいの?」
アスカ「それで、何か用事?」
ヒカリ「えっと、今日のお昼、一緒に食べない? その、アスカとは色々お話したいなって思ってて」
アスカ「ふぅーん。そういうことならもっと早く言ってくれたらよかったのに」
ヒカリ「任務のことで忙しそうだったし、話しかけにくかったんだ。でも、これからは遠慮しないようにするね」
158: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 20:32:53.48 ID:iRs1N69bo
屋上
レイ「……」
マリ「考え事かにゃ」
レイ「何か用?」
マリ「なんにも変わんないね。昔よりは少し可愛げが出てきた気もするけど」
レイ「私は何も変わらないわ。そう思うなら貴方が変わっただけ」
マリ「そう? 昔のあんただったら、一緒にお風呂なんて絶対に入らなかったと思うな」
レイ「……」
マリ「変わったのはあんたのほうじゃない、綾波レイ」
レイ「私は何も変わらない。私はエヴァ零号機としてここにいるだけ。そう言われた」
マリ「ゲンドウくんに?」
レイ「みんなに」
マリ「ま、あんたがそう思ってるならいいけど、そういうのって面白くなくない?」
レイ「別に。私は使徒と戦うだけだから」
マリ「そーいうのが面白くないって言ってんだけどなぁ」
159: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 20:51:26.17 ID:iRs1N69bo
ネルフ本部
冬月「これで撃退できた使徒は4体。2体の欠番は予定外だな」
ゲンドウ「構わん。欠番が出たところで我々の計画に支障はない」
冬月「しかし、また欠番が出てくるようならば、考えなくてはならないぞ」
ゲンドウ「……」
冬月「そのとき、お前がどのような結論を出すのか、楽しみでもあるが」
ゲンドウ「使徒の目的は確実に地下に眠る鍵だ。それを奪われなければ何も起こりはしない」
冬月「使徒が何故、あのような姿で人間の前に現れたのかも、見当がついているのか」
ゲンドウ「ああ。奴等もまた進化し現代に目覚めた者だ。その時代に適応する」
冬月「巨人では住みにくい世界になったということか」
ゲンドウ「第三新東京市が要塞都市になったときに奴等は進化した。ここへ容易に侵入できるようにな」
冬月「その結果、奴等は本来の力を失いながらも、エヴァンゲリオンの開発を阻止したということか」
ゲンドウ「だが、シナリオ通りにことは進まなくてはならない」
冬月「そのためのチルドレンだからな」
ゲンドウ「シンジたちならばエヴァがなくても成し遂げる。間違いなく」
160: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 20:57:39.13 ID:iRs1N69bo
食堂
ミサト「いやー、順調ねー」
リツコ「なんの話?」
ミサト「使徒のことに決まってるでしょ」
リツコ「そうね。予想以上の成果ではあるわ」
ミサト「レイだけなら、ここまで上手くいかなかったでしょうしね」
リツコ「そもそも使徒に対して人類では敵わないとされてきた。人の手に余る存在をこうも簡単に撃退できるのは少し肩透かしね」
ミサト「それがいいんじゃないの。平和が一番よ」
リツコ「その平和の犠牲が子どもの精神なら安いものね」
ミサト「言い方が悪くない?」
リツコ「事実よ。アスカやマリにしてもそれなりのストレスはもっているはずだもの」
ミサト「そのケアをあたしたち、大人がやればいいんでしょう」
リツコ「ミサトにそれができるとは思え――」
バンッ!!
ミサト「え!? なに、停電!?」
162: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 21:03:02.42 ID:iRs1N69bo
管制室
冬月「何があった」
マヤ「分かりません! 突然、全ての電力がダウンしました!!」
冬月「修復作業を急げ」
マヤ「ですが、整備班は二人だけです! 大規模のものだととても手が回りません!」
ゲンドウ「それでも急がせろ。冬月」
冬月「分かっている」
マヤ「副司令、どちらに?」
冬月「本部のことならば任せろ」
マヤ「さ、流石です!」
ゲンドウ「原因を調べろ」
マヤ「電力が復旧するまでは無理です!」
ゲンドウ「なんとかしろ」
マヤ「無理です!」
ゲンドウ「……」
163: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 21:08:28.45 ID:iRs1N69bo
ネルフ本部 入口
アスカ「なんで開かないのよ!!」ガンッ
シンジ「やめなよ、アスカ」
マリ「んー、電気が通ってないんじゃない?」
レイ「……」
アスカ「何かあったのかしら?」
シンジ「ミサトさんに連絡してみよう」
レイ「使徒……」
マリ「え、マジぃ? それだと結構ピンチじゃん」
シンジ「あ、ミサトさん? あの、僕たち本部の入口まで着ているんですけど」
ミサト『ごめんなさい。今、原因不明の停電ででんてこまいなの。またあとで連絡するわ」
シンジ「え!? ちょっと待ってください!! ミサトさん!!」
アスカ「なんだって?」
シンジ「本部が停電しているんだって。原因はわからないみたい」
アスカ「なによそれ。マズいじゃないの。なんとかして中に入るわよ」
164: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 21:17:41.31 ID:iRs1N69bo
送電室
リツコ「この大規模なシステムダウンの原因が判明したわ」
ミサト「なんだったわけ?」
リツコ「何者かによって発電施設及び送電施設を破壊されていたみたいね。予備発電のものも丁寧にね」
ミサト「ここって完全に独立したものだったはずでしょ? ってことは、本部に侵入して破壊したってことになるわよ」
リツコ「そうよ」
ミサト「まさか。そんなことをする理由がどこにもないじゃない。今現在のネルフはただの貧乏組織よ」
リツコ「それでも確実に成果は出しているわ。それをよく思わない組織がいるということね」
ミサト「そんな奴がいるわけ」
リツコ「いるからこうなったんじゃないかしら」
ミサト「ちっ。面倒ね」
リツコ「それより、シンジくんたちはどうしたの? ここへ来ているんでしょう?」
ミサト「さぁ、あとで連絡するって言っておいたから、家に戻ってるんじゃない?」
リツコ「そうね。ここにいるよりはまだ安全かもしれないわね」
ミサト「さてと、とりあえずは施設の復旧を急がないと、なんにもできないわ。ほら、リツコも手伝って」カチャカチャ
165: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 21:25:57.40 ID:iRs1N69bo
通気口内
マリ「しあわせはーあるいてこないーだーからあるいていくんだねぇ。いちにち、いっぽ、みっかでさんぽ、さーんぽすすんでにほさがるぅ」
レイ「……」
アスカ「ふっふーん。一度、やってみたかったのよね。通気口から侵入するの」
シンジ「これどこに続いてるの?」
アスカ「知らない」
シンジ「それならどこにでるか分からないじゃないか」
アスカ「中に入ればあとは庭みたいなもんでしょ」
シンジ「本部はすごく広いんだよ。アスカだってまだこっちにきて一週間ちょっとだし、見てないところもたくさんあるでしょ」
アスカ「なんとかなるわよ。黙って私についてきたらいいのよ」
シンジ「めちゃくちゃだね……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
アスカ「きゃぁ!! このスケベ!!!」ドガッ
シンジ「いた! なにするんだよ!!」
アスカ「今、私のお尻を触ったからでしょうが! このエロシンジ!!」
166: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 21:33:08.29 ID:iRs1N69bo
シンジ「どうして僕がアスカのお尻を触らなくちゃいけないんだ。触れって言われても触らないよ」
アスカ「なによそれ、ムカつくぅ!」
シンジ「なんでそこで怒るんだよ」
マリ「乙女心は密の味ってね」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「んっ……」ビクッ
マリ「お?」
レイ「……」
マリ「誰かにお尻、触られた?」
レイ「貴女じゃないの?」
マリ「私はこうやって鷲づかみにする!」モミモミッ
レイ「やめて」
アスカ「何かがいるみたいね。とにかくここを抜けるわよ」
シンジ「はやく進んでよ、アスカ」
アスカ「私に命令しないでっ」
167: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 21:43:36.68 ID:iRs1N69bo
送電室
冬月「送電線が溶けているな」
ミサト「切られているんじゃないんですか?」
冬月「一見しただけだと鋭利な刃物で切られたようだが、よく見ると……」
ミサト「切断面が溶けてる……」
冬月「となれば答えは一つしかあるまい」
ミサト「テロ、ですね」
リツコ「やはり人の手によるものだったわね」
冬月「人類にとって最大の敵は人類ということか」
ミサト「しかし、ネルフを直接的に攻撃する理由がないように思えます」
リツコ「言ったはずよ。私たちの活躍が気に入らない誰かだと」
冬月「その可能性が高いだろうな」
ミサト「戦自の連中だってこっちに丸投げしてるのに?」
リツコ「もっと上の人間じゃないかしら」
冬月「経費の大幅削減のツケが回ってきたか」
169: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 21:50:14.78 ID:iRs1N69bo
格納庫
アスカ「よっと! はー、出てこれたー」
シンジ「ここはエヴァンゲリオンの格納庫、だよね」
レイ「正確には格納庫になるはずだったところね」
マリ「シャバの空気、サイコー」
アスカ「さ、ミサトのところまでいそぐわよ!!」
シンジ「どうやって行くの? 電力が通ってないなら、ドアも開かないし」
アスカ「手動でなんとかなるわよ」
シンジ「でも……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
アスカ「きゃぁ!?」
マリ「姫、お尻にでっかいクモが這ってる」
アスカ「いやー!! シンジ、とりなさいよ!!」
シンジ「こ、こんなに大きなクモには触りたくないよ」
アスカ「あんたそれでも男なの!?」
170: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 21:54:04.78 ID:iRs1N69bo
シンジ「そんなこと言われても……」
アスカ「いいからとって!!」
レイ「はい」
アスカ「お……」
レイ「とれたわ」
マトリエル「……」ジタバタ
マリ「クモに似てるけど、クモじゃないっぽい」
シンジ「な、なんていう虫なんだろう……」
レイ「見たことないわ」
アスカ「とりあえず、殺しなさいよ。気持ち悪い」
レイ「それは……」
マトリエル「……」ジタバタ
レイ「……」
アスカ「なにしてるわけ?」
シンジ「綾波は可哀相だから殺したくないって思ってるんじゃないかな?」
171: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 21:58:22.24 ID:iRs1N69bo
アスカ「はぁ? なんでそうなるわけ? この女にそんな慈悲深い考えがあるとは思えないけど」
シンジ「綾波だってそういう優しいところはあるよ」
マリ「あったんだぁ」
レイ「分からない。でも、そういうことはあまりしたくないって思ってる」
アスカ「自分のことが分からないってこと?」
レイ「そうかもしれないわ」
アスカ「変なの」
レイ「そうね。私、変かも」
アスカ「やっと気づいたわけ? アンタ、バカぁ?」
シンジ「そこまでいうことないじゃないか」
アスカ「はぁ? この女の味方するの? いいじゃない、お似合いね。結婚でもすればぁ?」
シンジ「どうしてそうなるんだよ!」
マリ「ふふーん。やっぱり、可愛げあるじゃん」
レイ「どうして……こんな気持ち……わからない……」
マトリエル「……」ジタバタ
172: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 22:03:55.55 ID:iRs1N69bo
数時間後 管制室
ミサト「復旧作業、終了しました!!」
ゲンドウ「予定より2時間早まったようだな。よくやった」
ミサト「ありがとうございます!!」
マヤ「さすが、先輩ですね!」
リツコ「殆ど、副司令がやってくれたけどね」
ゲンドウ「冬月もよくやってくれたな」
冬月「これぐらいのことはする」
ゲンドウ「使徒の可能性は?」
冬月「ないとは言えんがあまり考えなくてもいいだろう」
ゲンドウ「奴等がここへ侵入したとなれば既に事は始まっているか」
冬月「ああ。電力だけをダウンさせるのもおかしい」
ゲンドウ「内部に犯人がいるかもしれん。頼む」
冬月「既に犯人探しは始まっている」
ゲンドウ「そうか」
173: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 22:13:09.30 ID:iRs1N69bo
シンジ「ここかな?」
ミサト「あ、シンジくん!」
シンジ「ミサトさん!!」
アスカ「なーんだ、ここだったんだ」
マリ「いやー、迷いに迷った」
アスカ「一年前に弐号機の実験で松代に寄っただけだったのがいけなかったわね。ここの案内もさせるべきだったわ」
ミサト「あれ、レイは一緒じゃないの?」
シンジ「えっと、綾波は……その……」
アスカ「えこ贔屓なら帰ったわよ」
ミサト「貴方たちだけここに来たってこと?」
マリ「そーそー。ミサトが心配でね」
ミサト「嬉しいこといってくれるじゃない」
シンジ「心配したのは本当ですよ」
ミサト「シンちゃんったら、かわいいんだから、もー」ギュゥゥ
アスカ「ちょっと! 保護者がそんなことしてもいいの!?」
174: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 22:19:21.83 ID:iRs1N69bo
綾波宅
レイ「……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「今日からここがあなたの部屋」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「どうしてあなたを拾ったのか、まだわからないけれど、これでよかったと思う」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「他人になんて興味なかったのに。他の生き物に触れようと思ったこともないのに」
レイ「変わったのは私……? どうして……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「碇くんに出会ってから……」
レイ「碇くん……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「碇くんのことを考えるとポカポカする……」
レイ「わからない……何もわからない……」
175: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 22:20:53.71 ID:7w1wWnL9o
飼うのかよww
176: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 22:27:53.96 ID:iRs1N69bo
市街 某所
「そうか。また星になったんだね。さようなら」
ラミエル「……」キャー?
「また一つ、儚い生命が空に上がっていったよ。悲しいね。この世界は運命の輪の中にいる。リリンも僕たちも鳥かごの鳥と同じだ」
ラミエル「……」キャー…
「大丈夫だよ、ラミエル。悲劇を繰り返さないために、僕は、僕たちはいるのだからね」
ラミエル「……」キャー♪
サキエル「……?」
「第8の使者、サンダルフォンが既にこの世の輪廻から外れたのは知っているね。マトリエルも今や囚われの身」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「そして、たった今、10番目の使者であるサハクィエルが大気圏で燃え尽きたよ。あの小さな体躯では地上へ墜ちることもできなかったようだ」
サキエル「……」
「けれど絶望は今、希望へと昇華した。僕たちの光はまだ閉ざされてはいない」
ラミエル「……」キャーッ
「ああ、次の使者が必ず……僕たちの悲願を……」
179: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 22:51:06.04 ID:iRs1N69bo
サキエル「……」カタカタカタ
「準備はできたかい?」
サキエル「……」コクッ
「では、リリンの巣に送り込むんだ」
サキエル「……」ポチッ
ラミエル「……」キャー?
「彼は姿が見えないほど小さく、リリンが作り出した電回路網を渡り歩くことができる」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「そうさ。リリンの巣がどこにあるのかはわかった。そしてリリンの僕となった者たちの居所もね。あとは出来うる限り、外から壁を排除しなくてはいけない」
サキエル「……」
「力だけが全てではないからね。リリンは知恵の果実を口にした者達だ。力で屈することはない」
サキエル「……」
「今までもただ巣を探していただけのはずだよ。僕たちは力による侵略はしていない」
シャムシエル「……?」
「僕も犠牲は出したくないんだ。まだ、ね」
180: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 22:55:57.53 ID:iRs1N69bo
ネルフ本部
マヤ「先輩、少しいいですか?」
リツコ「どうしたの?」
マヤ「外部からハッキングを受けているようなんですけど」
リツコ「ここを狙うなんて大胆ね」
マヤ「MAGIの演算速度に勝てると思っているのでしょうか?」
リツコ「思っているからこういうことができるんじゃないかしら」
マヤ「どうします?」
リツコ「そうね。まずはブロックしてみましょう」カタカタ
マヤ「あ、ウイルスを送り込まれたみたいです」
リツコ「MAGIには自浄できるプログラムもあるから心配ないわ」
マヤ「ホントですね。ウイルスが死滅していきます」
リツコ「もう大丈夫みたいね。マヤ、食事でもどう?」
マヤ「いきますっ!」
リツコ「ふふ。それじゃあ、行きましょう」
182: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/06(土) 23:02:13.93 ID:iRs1N69bo
市街 某所
サキエル「……」
「ダメだったんだね。イロウル、君のことは忘れないよ」
ラミエル「……」キャー…
シャムシエル「……」ニョローン
「この拾った機械の箱一つではリリンの頭脳に太刀打ちできないようだね」
サキエル「……!」
「イロウルもよくやってくれたと思うけれど、やはり性能の差には敵わないのさ」
サキエル「……」
「落ち込むことはないよ。イロウルは生きていた証を僕たちに残してくれた」
サキエル「……?」
「メールの受信ボックスに何か届いていないかい?」
サキエル「……」カタカタ
イロウル:サヨナラ サキ ニ イキマス ツイシン カギ ハ アソコ ニ アルミタイ デス
「ありがとう、イロウル。これでまた一つ、僕たちは前に進める」
186: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 01:06:30.63 ID:VAAVPkpfo
うーんこの無能指揮官
188: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 07:29:38.26 ID:b70NDu/80
このマトリエルはゴキブリとか駆除してくれそうだな
189: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 08:56:44.84 ID:yK2/6nVDO
マトリエル軍曹か、頼りになるな……
192: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 17:49:32.41 ID:ctUT+kR2o
ネルフ本部 トレーニングルーム
アスカ「はっ! でぇい!!」
シンジ「くっ……!」
アスカ「チャーンス! これで最後よ!! アスカパーンチ!!」
シンジ「これぐらいなら!」ガッ
アスカ「なっ! バカシンジのくせに私の必殺技を受けるなんてしゃらくさい!!」
シンジ「や!!」バキッ
アスカ「きゃぁ!?」
ミサト『はーい、そこまでー。シンちゃんのかちー』
シンジ「やった……アスカに勝った……」
アスカ「ちっ。ちょっと油断しちゃったわね。もう一度よ!」
ミサト『トレーニングはもうおしまいよ、アスカ。また明日にしなさい』
アスカ「でも! 私がシンジに負けたままなんて!!」
ミサト『シンちゃんだって強くなっている証拠よ』
アスカ「むぅ……。ふんっ! 総合力じゃ私が上なんだから!! 私がシンジより弱いわけじゃないの!! そこは間違えないでよね!!」
193: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 17:55:51.63 ID:ctUT+kR2o
シンジ「それは分かってるよ。今のは偶々上手くいっただけだし」
アスカ「そうよ。よく分かってるじゃない。でも、男としてはてんでダメね。そこは否定しなきゃ」
シンジ「アスカはほんと、難しいよね」
アスカ「簡単な女じゃないって言いなさい」
レイ「碇くん」
シンジ「あやな――」
マトリエル「……」カサカサカサカサ
アスカ「ちょっと! あんた、何連れてきてるのよ!!」
レイ「この子はお留守番、できないと思って」
シンジ「か、可愛がってるんだね」
レイ「わからないけど、この子と一緒にいると落ち着く気がする」
マトリエル「……」カサカサカサ
アスカ「気持ち悪い」
シンジ「そのクモ……かな? 名前とか決めたの?」
レイ「名前……。名前をつけないといけないの?」
194: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 18:02:40.04 ID:ctUT+kR2o
シンジ「いけないってわけじゃないけど、呼ぶときとか困らないかな?」
レイ「そうね……」
アスカ「別にクモでいいじゃない」
シンジ「綾波は大切にしてるみたいだし、そういう言い方はしなくてもいいじゃないか」
レイ「ペ、ペンペン、とか」
シンジ「え?」
アスカ「ペンペン?」
レイ「……ダメ?」
シンジ「う、ううん! 良い名前だとおもうよ! 可愛いし!!」
アスカ「なんでペンペンなの?」
レイ「出会ったとき、お尻を触られたから。お尻から連想できる音はペンペン」
アスカ「あんたって本当に変なやつね」
シンジ「僕は良いと思うよ。これからは僕もペンペンって呼ぶから」
レイ「ありがとう、碇くん。ペンペンをよろしく」
マトリエル「……」カサカサカサカサ
195: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 18:09:34.42 ID:ctUT+kR2o
シンジ「それじゃあ綾波、また明日、学校でね」
レイ「ええ」
アスカ「ペンペンを学校まで連れてこないでよ」
レイ「わかったわ」
アスカ「ホントにわかってんの」
シンジ「流石に綾波も学校までは連れてこないよ」
アスカ「どーだか」
レイ「ペンペン……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサ
レイ「……」
マリ「へー、笑えるようになったんだ」
レイ「なに?」
マリ「自然に『ありがとう』まで言っちゃってるし。随分と可愛くなったじゃん。一年前とは大違い」
レイ「ありがとう、感謝の言葉、初めての言葉……。そうね、私は変わってしまったみたい」
マリ「人としては良いことだけど、それが綾波レイとして良い方に向かうかは別の話かもね」
196: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 18:18:55.96 ID:ctUT+kR2o
翌日 学校
トウジ「やっぱりエヴァになると色々と特典とかあるんか?」
シンジ「特典って?」
ケンスケ「あの葛城ミサトさんからごほうびのキスとか!」
トウジ「伊吹マヤさんから抱きしめてもらえるとか!!」
シンジ「そ、そんなのないよ!」
アスカ「まーた、あの3バカは、朝からバカな話をしているわね」
ヒカリ「ちょっと鈴原! そういう話は慎みなさいよ!」
トウジ「うっさいわい! これは男にとっては大事な話なんや!!」
レイ「おはよう」
シンジ「え……」
ケンスケ「綾波が……」
トウジ「おはようって……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
アスカ「げ!?」
197: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 18:27:03.35 ID:ctUT+kR2o
ヒカリ「きゃー!!!」
トウジ「なんや、あれ!!」
ケンスケ「クモ、いや、ザトウムシっぽいなぁ。あんなに大きなのは初めてみたけど」
シンジ「あ、綾波!!」
レイ「なに?」
アスカ「ペンペンを連れてこないでって言ったでしょうが!!」
レイ「私も何度かついて来ちゃダメって言ったのだけど、どうしてもついてくるから……ごめんなさい……」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
ヒカリ「いやー!! クモー!!」
アスカ「ほら! 大パニックよ!! どう落とし前つけるつもり!?」
レイ「大丈夫。ペンペン、まて」
マトリエル「……」ピタッ
シンジ「止まった……」
トウジ「なんや、このクモ、躾けられとるんかい」
ケンスケ「すごい。虫を躾けるなんて普通できないのに」
198: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 18:35:25.33 ID:ctUT+kR2o
レイ「ペンペンは言葉を理解できるみたいだから」
ケンスケ「益々すごい!! 虫に人間の言葉がわかるなんて!!」
マトリエル「……」
トウジ「天才蜘蛛か、こいつ」
アスカ「ホントにクモなの?」
レイ「ペンペン、躍って」
マトリエル「……」クイックイッ
シンジ「こんな芸まで!? 綾波、一晩でこんなに仕込んだんの!?」
レイ「鏡の前で踊っていたから、そのときに「躍れるの?」ってか聞いたら、「躍れる」って」
シンジ「ペンペンがそういったの?」
レイ「そう言った気がするだけ」
ケンスケ「でも、実際に綾波の言葉で躍りだすなら理解しているのは確実ってことになる」
トウジ「とりあえず天才なクモってことやろ。しかし、言葉を理解できるならなんか可愛くみえてくるな」
レイ「そう、思う?」
トウジ「やっぱり、こっちの言葉に反応してくれるのは嬉しいで」
199: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 18:42:44.01 ID:ctUT+kR2o
レイ「嬉しい……。ありがとう」
トウジ「え……」
レイ「そう思ってくれるだけで、嬉しい」
トウジ「あ、ああ、まぁ、あれや、正直な感想をいうただけやしな」
ケンスケ「お、トウジが照れてる」
トウジ「いうな!!」
シンジ「綾波があんなに自然と笑ってるところ、学校だとはじめて見たかも」
アスカ「むっかつくわね。無愛想女って呼べなくなるじゃない」
シンジ「それは最初から呼ばないであげてよ」
アスカ「はいはい。シンジ様は綾波レイに惚れこんでるものねー」
シンジ「ち、ちがうよ!!」
レイ「噛んだりしないし、毒ももっていないわ。多分」
ヒカリ「多分ってなに!?」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
ヒカリ「やっぱりダメー!!!」
200: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 18:50:43.14 ID:ctUT+kR2o
ネルフ本部
マヤ「市民の目撃情報からこのような物体を確認しました。モニターに出します」ピッ
レリエル『……』フワフワ
ミサト「なに、あの白黒のバルーンみたいなの。使徒なの?」
マヤ「パターンはオレンジです。A.T.フィールドも確認できません」
リツコ「対象物の詳細は不明ね」
ミサト「突いたら割れるんじゃないの?」
リツコ「やってみたら? 私はしないけれど」
ミサト「そんなのあたしだってしたくないわよ」
ゲンドウ「エヴァを出せ」
ミサト「司令、対象物の詳細が判明するまでは様子を見たほうが……」
ゲンドウ「奴は使徒だ。何らかの方法でこちらの目を誤魔化そうとしている」
ミサト「そう結論を出すのは早計では」
ゲンドウ「これは命令だ、葛城一尉」
ミサト「……分かりました。エヴァを発進させます」
201: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 19:00:39.89 ID:ctUT+kR2o
市街
レリエル「……」
アスカ「目標を肉眼で確認。赤きサイクロンチーム。いつでもいけるわ」
シンジ「いつからそんなチーム名になったの」
ミサト『ごめんなさいね。もう少し時間をかけて情報収集をしてから貴方たちには動いて欲しかったんだけど』
アスカ「いいわよ、別に。あんなの使徒以外にないじゃない」
シンジ「僕もそう思います」
ミサト『そうね。貴方たちに第三新東京市の未来を託すわ』
アスカ「いっくわよ!!」
シンジ「うん!」
マリ『こっちもオッケー』
レイ『指示を』
アスカ「零号機と5号機はその場で待機! また使徒が仲間をつれてきている可能性があるわ!!」
マリ『そのときはまた時間稼ぎね。りょーかい』
レイ『了解』
203: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 19:06:13.96 ID:ctUT+kR2o
アスカ「赤い魂のルフラン! エヴァンゲリオン弐号機!!」
シンジ「残酷な青のテーゼ、エヴァンゲリオン初号機!」
シンジ・アスカ「「参!! 上!!」」
レリエル「……」
アスカ「反応がないわね」
シンジ「どうするの?」
アスカ「あれできめるわよ!」
シンジ「わかったよ」
アスカ「フォーメーション!! デルタ!!」
シンジ「スーパーダイナミック……」
アスカ「ボンバァァァァ!!!」
レリエル「……」スッ
シンジ「消えた……!?」
アスカ「なによこいつ!!」
マヤ『パターン青!! 使徒です!! 初号機と弐号機の直下に出現しました!!』
204: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 19:11:36.52 ID:ctUT+kR2o
シンジ「直下って……?」
ミサト『逃げて! シンジくん!! アスカ!! その影が使徒よ!!』
アスカ「影ですって!?」
シンジ「うわっ!? なんだよこれ!!」
アスカ「引き摺り込まれる……!!」
マリ「助けて欲しいかな、お姫さま?」
アスカ「さっさと引きあげなさいよ!!」
マリ「はいはい」
レイ「碇くん、手を」
シンジ「綾波、ありがとう」ギュッ
レイ「ふっ……!」ググッ
マリ「よっこいせーのせー」ググッ
アスカ「ちょっと!! しっかりひっぱってよ!!」
シンジ「このままだと綾波たちまで――」
レイ「あ……」ズルッ
205: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 19:17:12.14 ID:ctUT+kR2o
ネルフ本部
ミサト「シンジくん……たちは……」
マヤ「完全にロスト……。反応がなくなりました……」
リツコ「こちらから呼びかけてみて」
マヤ「ダメです。こちらから幾ら呼びかけても音声は届いていません」
リツコ「そう」
ミサト「そんな……!!」
リツコ「エヴァ4機の消失は大きな痛手ね」
ミサト「違う! 失ったのは子どもたちのほうでしょう!? エヴァじゃないわ!!」
リツコ「そうね」
ミサト「リツコ……どうしてあなたは冷静なの……」
リツコ「こういう事態は想定しているべきよ。あなたみたく取り乱さないようにね」
ミサト「そうね……それができれば……どんなにこの仕事が楽か……」
冬月「碇、いいのか」
ゲンドウ「ここでエヴァを失ったときは、人類の最後というだけだ」
206: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 19:22:55.82 ID:ctUT+kR2o
虚数空間
シンジ「ん……ここは……?」
アスカ「シンジー、みてみてー」
シンジ「アスカ、無事だったんだ」
アスカ「ここ浮けるわよ。一度で良いから重力と言う名の楔を引きちぎって飛んでみたかったのよね」
シンジ「……」
マリ「ここは使徒の胃袋ってところか。まいったね」
シンジ「使徒に取り込まれたってこと?」
マリ「しょーゆーこと。出口も入口もない場所って感じがする」
シンジ「僕たち、ここから出ることができないの?」
マリ「あるいはそうかもしれない」
シンジ「そんなことって……」
レイ「脱出する方法を探しましょう」
シンジ「綾波……」
レイ「早く出ないと……ペンペンのごはんが……」
207: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 19:31:13.84 ID:ctUT+kR2o
アスカ「4回転宙返りからのスーパーサンダーキック!!」
マリ「姫様、遊んでないで一緒に脱出する方法を考えない?」
アスカ「こういうのは中からは脱出できないって相場が決まってるのよ。ミサトがなんとかしてくるのを待ったほうがいいわね」
マリ「それが無理なら私たちは王子様を取り合って子孫を残しあいっこしなきゃいけなくなるなぁ」
アスカ「な……」
マリ「王子様には側室が付き物だけど、大丈夫かなぁ。体、もつかぁ?」
アスカ「な、なんで私がシンジとそんな、こと、しなくちゃいけないのよ!!!」
マリ「そんなことってどんなこと?」
アスカ「うっさい!! 脱出方法を探すわよ!! コネ眼鏡!!!!」
マリ「えー? アダムとイブ×3でいいじゃん?」
アスカ「私をイブにいれんな!!」
シンジ「ダメだ……上も下も右も左もない……」
レイ「ここには境目がないのね」
シンジ「こんなのどうやって出れば……」
レイ「分からないわ」
208: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 19:46:10.16 ID:ctUT+kR2o
マリ「ここに取り込まれてから、もうすぐ5時間ってところかな」
アスカ「まだ、出れないわけ……?」
マリ「外からでも開けられそうにないってことかにゃ」
アスカ「……」
シンジ「なんだか、寒くなってきた気がする……」
レイ「特殊装甲には一応生命維持装置がついているから、それが切れかけているのかもしれないわ」
シンジ「そ、そんなのがあったんだ」
レイ「体温を一定に保つだけみたいだけれど」
シンジ「それならもし、装置が切れたら……」
レイ「低温度で死ぬかもしれないわね」
アスカ「嫌!!」
シンジ「アスカ?」
アスカ「死ぬのは嫌!! 出して!! ここからだして!!」
シンジ「アスカ!! 落ち着いてよ!!」
アスカ「死ぬのはいやぁ!!」
209: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 19:54:02.62 ID:ctUT+kR2o
マリ「姫様、まだ時間はあるって。焦ることないから」
アスカ「でも……でも……!! こんなのもう無理じゃない!! 私たち、ここは出れないのよ!?」
マリ「ヘーキ、ヘーキ。正義の味方は不死身なんだし」
アスカ「ちがう! 私は普通の人間だもん!! こんなところにいたら死んじゃうじゃない!!」
シンジ「アスカ……」
レイ「彼女の本当の姿なのね」
マリ「虚勢を張っている分、脆いところもあるの。大目にみてくれると助かる」
レイ「私は気にしないわ」
マリ「それでいいよ。サンキュ」
アスカ「ママにあわせて!! あわせてぇ!!!」
シンジ「落ち着いて、まだ僕たちは生きてるから。なんとかなるよ」
アスカ「なによ!! それならシンジがなんとかしてよ!! ここから出してよ!!」
シンジ「……」
アスカ「出来もしないのにそんなこといわないで!! うぅ……うっ……」
シンジ「ごめん……」
210: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 20:01:52.29 ID:ctUT+kR2o
マリ「あーあ、ここまでかぁ。短い人生だったけど、それなりに充実してたし、まぁ、いいかなぁ」
シンジ「そういう考え方ができるって凄いね」
マリ「そう? ま、仮設5号機としてもう少し活躍したかったっていうのはあるけど」
シンジ「マリさんはどうしてエヴァになったの?」
マリ「運命って信じる方?」
シンジ「どういうこと?」
マリ「碇シンジくん。君と一度、会ってる」
シンジ「そう、なの?」
マリ「エヴァンゲリオンの研究員でもあった碇ユイとその夫、碇ゲンドウに連れられて、エヴァを見に来てたよね」
シンジ「え……?」
マリ「そのとき、私も傍にいた。それだけ」
シンジ「どうして……そういえば……そんなことも……でも、それって……すごく小さいときだったような……」
マリ「あの場には姫様もいたし、綾波レイもいた。だから、これは運命って奴」
シンジ「運命……」
アスカ「ここで死ぬのも……運命なの……?」
211: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 20:11:31.07 ID:ctUT+kR2o
マリ「そうなるにゃー。そろそろ腹をくくってもいいんじゃない? かなり寒くなってきてるし」
アスカ「死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……死ぬのはイヤ……」
シンジ「諦めるしかないのかな」
レイ「ペンペンが心配……」
マリ「動物の心配をする綾波レイが見れただけでも、この世界に生まれた甲斐はあったかな」
レイ「貴女は一体……」
マリ「そだっ! どーせ死ぬなら、これを見せておくか」
シンジ「こんなときに何」
マリ「冥土の土産っていうんでしょ、こういうの」
シンジ「その端末は?」
マリ「昔、あまりにも微笑ましいから記念に撮影しておいたのがあるわけ。その動画がはいってる。私の宝物」
シンジ「何を撮影したの?」
マリ「まぁまぁ、みんなで見てよ」
アスカ「興味ない……」
マリ「いーから、いーから。はい、再生」ピッ
212: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 20:15:36.07 ID:ctUT+kR2o
アスカ『わたしなのー!!』
レイ『わたしがさき』
アスカ「これ……私……?」
レイ「私、なの?」
マリ「可愛いじゃん」
シンジ「あの、この子ってもしかして……」
アスカ『シンジはわたしとけっこんするのー!』
レイ『わたしがさきにけっこんする』
シンジ『やめてよー』
『シンジはモテモテね』
『いいねぇ。将来はプレイボーイかぁ?』
アスカ「ぶふっ!!」
レイ「……」
シンジ「あ、えーと……どうして、こうなったんだろう……」
213: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 20:20:29.00 ID:ctUT+kR2o
ネルフ本部
ミサト「いいから!! どうしたら助けられるか考えて!!」
リツコ「現段階ではサルベージできる可能性は0に近いといっているわ。つまり、助ける術がないの」
ミサト「それを考えるのが貴女の仕事でしょ!?」
リツコ「無駄なことは考えないようにしているの」
ミサト「リツコ!!」
リツコ「現実をみなさい、ミサト。消えたエヴァよりも新たなエヴァを用意するほうが――」
ミサト「……!!」パシンッ!!!
リツコ「……私をぶっても何も変わらないわよ、葛城一尉」
ミサト「くっ……」
マヤ「大変です!! 使徒から高エネルギー反応が!!」
ミサト「え……」
リツコ「なんですって?」
レリエル『……』ピキピキピキ
ミサト「あの白黒のバルーンに亀裂が……なにが起こるの……?」
215: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 20:25:21.22 ID:ctUT+kR2o
レリエル『……』ピキピキピキッ
『ああぁぁああぁぁぁぁ……!!!!』
ミサト「この声は……」
アスカ『あぁあぁぁあああぁぁぁぁ!!!!』バリーン!!!!
マヤ「エヴァ弐号機を確認!!!」
リツコ「暴走、しているの?」
アスカ『私はあんなこといわないんだからぁぁぁぁ!!!!』
マヤ「使徒、消滅!!」
ミサト「どういうこと!?」
マヤ「使徒内部より強力なA.T.フィールドを確認しました!」
リツコ「そのフィールドが使徒のフィールドを打ち破ったということね」
冬月「心の壁を打ち破るのはやはり心の壁か」
ゲンドウ「ああ」
アスカ『いやぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!』
ミサト「アスカになにがあったっていうの……」
216: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 20:31:47.31 ID:ctUT+kR2o
市街
シンジ「う……ん……ここは……」
ミサト「シンジくん! 気が付いたのね!?」
シンジ「ミサトさん……? 僕は……」
ミサト「ここで気を失っていたのよ。痛いところはある?」
シンジ「いえ、それより、他のみんなは……」
ミサト「みんな生きているわ」
シンジ「よかった……」
リツコ「シンジくん。少しいいかしら」
シンジ「え?」
ミサト「あとにして」
リツコ「使徒の内部で何があったのか覚えている?」
シンジ「あ……えと……覚えていません……」
リツコ「そう」
ミサト「やめて、リツコ。今はシンジくんたちを休ませるほうが先よ」
217: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 20:41:43.64 ID:ctUT+kR2o
ネルフ本部 司令室
マリ「こうして面と向かってお話しするのは久しぶりだね、ゲンドウくんっ」
ゲンドウ「何も変わらないな。時間が止まっているかのようだ」
マリ「事実、私の体はあのときのまま。エヴァのプロトタイプとして呼ばれたときから」
ゲンドウ「そうだな」
マリ「感謝したほうがいいかにゃ。若い体を維持できる今を」
ゲンドウ「それはお前自身に任せる」
マリ「碇ユイはずっと謝ってたけど、ゲンドウくんは非を認めないよね。まぁ、そうでなきゃゲンドウくんじゃないけど」
ゲンドウ「ここへお前を呼んだのはほかでもない。使徒内部で何があったかを報告してもらうためだ」
冬月「黙秘権はないと思ってくれ」
マリ「冬月先生も相変わらずで少し安心した。あの虚数空間から脱出できたのは、これのおかげ」
ゲンドウ「これをシンジに見せたのか」
マリ「死ぬって思ったからね。知らないで死ぬのは可哀相でしょ」
ゲンドウ「……」
冬月「碇の息子が感付くのも時間の問題か」
218: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 20:46:32.79 ID:ctUT+kR2o
医務室
アスカ「……」
シンジ『あの……入ってもいいかな……?」
アスカ「あいてる」
シンジ「お邪魔します……」
アスカ「……アンタ、覚えてる?」
シンジ「な、なにを?」
アスカ「あの中で何があったのか」
シンジ「ええと……その……」
アスカ「覚えてるのね」
シンジ「ごめん……」
アスカ「なんでコネ眼鏡があんなもの持ってたのかはわかんないけど、あれは、あれよ。わかるわね」
シンジ「わ、わかってるよ。む、昔のことだもんね」
アスカ「そうよ。昔のことなの。いいわね」
シンジ「う、うん……」
219: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 20:51:42.40 ID:ctUT+kR2o
通路
レイ「ペンペン、ごめんなさい。はい、ごはん」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
レイ「嬉しいのね」
シンジ「はぁ……僕はどうしたら……」
レイ「碇、くん」
シンジ「あ、綾波……」
レイ「……」
シンジ「あの……」
レイ「ペンペン、行きましょう」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
シンジ「綾波! 待ってよ!!」
レイ「今、ペンペンの散歩中だから、ごめんなさい」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサカサカサカサ
シンジ「あ、そ、それなら仕方ないね……」
220: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 21:01:35.17 ID:ctUT+kR2o
市街 某所
「レリエルまで世界の輪から外れてしまうなんてね。リリンはとても強く健やかにこの世界を蹂躙している」
サキエル「……」
「そう。レリエルは僕たちに残してくれたものがあるんだ。それもまた一つの光となるよ」
シャムシエル「……」ニョロニョロ
「13の天使は既に放たれている。イロウルの残した情報によれば、また一つリリンの僕がこの特異点に召喚されることになっているみたいだね」
ラミエル「……」キャー
「ラミエルの言う通りだよ。僕たちは屍の上を進むしかない。もう一度、やり直すためにね」
サキエル「……」
「レリエルが遺したもの、イロウルが遺したもの、マトリエルが遺したもの。これらはパズルのピースのようなものさ」
「一つ一つは何の意味も持たない欠片だけど、あわせたときに1枚の大きな絵が完成する」
「その絵を見て、バルディエルは動き出した」
サキエル「……」ガオー
「いいね。そうしよう。終焉のときは確実に近づいているのだから」
ラミエル「……」キャ-ッ
221: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 21:06:00.79 ID:ctUT+kR2o
葛城宅
ミサト「……」
シンジ「あの、アスカ……ごはん……」
アスカ「あとで食べる」
シンジ「そ、そう……ごめん……」
アスカ「謝らないでよ。気持ち悪い」
シンジ「ごめん……」
ミサト「ねえ、シンちゃん。最近、アスカとなにかあった?」
シンジ「え? な、なにもないですよ」
ミサト「それにしてはよそよそしいというか」
シンジ「気のせいですよ。アスカはいつもあんな感じだったじゃないですか」
ミサト「そうだったかしら?」
シンジ「そうですよ。それより、ミサトさん、お酒のみますか?」
ミサト「のむ!」
シンジ「はい、どうぞ」
222: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 21:10:36.44 ID:ctUT+kR2o
学校 教室
レイ「ペンペン、ジャンプ」
マトリエル「……」ピョンピョン
レイ「上手よ」
シンジ「おはよう」
トウジ「おはようさん」
ケンスケ「おはよう、碇」
レイ「……」
シンジ「あ、綾波、おはよう」
レイ「……」コクッ
シンジ「……」
トウジ「最近、綾波がまた喋らんようになってきたな」
ケンスケ「確かに。前の状態とはちょっと違う気がするけど」
トウジ「シンジだけを避けとる感じやな」
ケンスケ「碇はアスカともここ数日は話してない気がするなぁ」
224: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 21:18:06.28 ID:ctUT+kR2o
ネルフ本部 トレーニングルーム
シンジ「はっ!」ポカッ
アスカ「痛い」
シンジ「ごめん……」
アスカ「気をつけなさいよ」
シンジ「ごめん……」
リツコ「最近のアスカ、どうしたの? 全然、訓練に身が入ってないみたいだけど」
ミサト「それがさっぱり。あの一件以降、変なのよね」
リツコ「何かあったのは間違いないけれど、私たちじゃ調べようがないわね」
ミサト「どうにかしないとね……。シンジくんも様子がおかしいし」
リツコ「……気分転換になるかはわからないけど、アスカにやってもらいましょうか」
ミサト「なにをよ」
リツコ「3号機のパーツがもうすぐ届くことになっているのよ。その性能を試すための実験をね」
ミサト「3号機までこっちで見るわけ?」
リツコ「各国のネルフ支部は順番に随時解体されているもの。手に余るものが本部に回ってくるのは道理よ」
225: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 21:27:40.28 ID:ctUT+kR2o
司令室
冬月「遂に来たな」
ゲンドウ「ああ。3号機が我らの手の中に入れば終わりだ」
冬月「全ての手札が揃ったか」
ゲンドウ「あとは使徒の出方次第だ」
冬月「使徒の欠番は4体にも及ぶ。のんびりはしていられんな」
ゲンドウ「問題ない。若干の修正が必要になるだけだ」
冬月「これで奴等動かなければ、終わりだな」
ゲンドウ「動かぬわけがない。使徒が出現していることは既に周知されている」
冬月「では、やはり……」
ゲンドウ「エヴァシリーズは完成しつつある」
冬月「そうか。運命とは恐ろしいものだな。碇の息子とて例外ではなかったか」
ゲンドウ「輪廻の渦中にいるのがシンジだ」
冬月「世界の命運は碇の息子に託されたか」
ゲンドウ「エヴァ初号機となったときから、託されている」
226: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 21:30:42.72 ID:ctUT+kR2o
休憩室
アスカ「3号機の機能実験?」
ミサト「そ。アスカが適任だって、リツコが推薦したの」
アスカ「ふぅん」
シンジ「危なくないんですか?」
マリ「お。未来の旦那さまが心配してるぅ」
アスカ「……」
マリ「こわっ。睨まれた」
ミサト「やる?」
アスカ「……やるわ」
ミサト「ありがと。実験は松代でやるから」
アスカ「ああ。弐号機の実験をしたところね」
ミサト「そうよ。当日は一緒にいきましょ」
アスカ「わかったわ」
シンジ「アスカ……」
227: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 21:34:39.84 ID:ctUT+kR2o
レイ「ペンペン、おすわり」
マトリエル「……」クイッ
レイ「良い子ね」
シンジ「あ、綾波」
レイ「……」
シンジ「えっと、今度、アスカが松代で3号機の実験に参加するんだって」
レイ「……」
シンジ「それで、あの、心配だから、一緒にいかない?」
レイ「それは命令?」
シンジ「違うけど」
レイ「なら、行く必要はないわ」
シンジ「そ、そんなこといわないで……」
レイ「ごめんなさい。今は碇くんと話したくないの……。胸が苦しくなるから……」
シンジ「あ……そ、そう……なんだ……ごめん……」
レイ「さよなら」
228: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 21:39:33.21 ID:ctUT+kR2o
数日後 葛城宅
ミサト「アスカー、準備できたー? もういくわよん」
アスカ「オッケー。いきましょ、ミサト」
シンジ「えっと……」
アスカ「なに?」
シンジ「気をつけてね」
アスカ「ふんっ」
ミサト「ねえ、アスカ? シンジくんと大喧嘩したの?」
アスカ「べっつに」
ミサト「嘘でしょー。二人の様子、おかしすぎるもの」
アスカ「シンジのことは話題にしないで!!」
ミサト「なにがあったの? いい加減に話してくれない?」
アスカ「シンジのことは一瞬でもいいから忘れたいの!!!」
ミサト「そこまでのことがあったのね。いいわ。当人たちで解決して。もしできないなら、すぐに相談すること」
アスカ「相談なんてできるわけないわよ……まったく……」
229: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 21:48:25.61 ID:ctUT+kR2o
実験施設
ミサト『アスカー。準備はいい?』
アスカ「ええ。3号機のパーツ、悪くないわ」
ミサト『よろしい。実験内容は頭に入ってるわね』
アスカ「とどのつまりは使徒との戦闘を想定した模擬戦でしょ」
ミサト『それを理解しているのならいうことなしよ。がんばってね』
アスカ「はいはい」
アスカ「ふぅー……」
アスカ「ミサトにまで気を遣われるなんて、私もヤキが回ったわね」
アスカ「……いつまでも逃げていても仕方ないもの。帰ったらシンジを話してみないと」
アスカ「よしっ。いくわよ、アスカ」
アスカ「――漆黒のビューティフルワールド、エヴァンゲリオン3号機!!!」
バルディエル『……』オォォォォン
アスカ「え……なにこれ……体が……しめつけ、られ……」
アスカ「いや……はいってこないで……!!」
230: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 21:54:03.97 ID:ctUT+kR2o
ネルフ本部
マヤ「松代実験施設より緊急入電!!」
ゲンドウ「どうした」
ミサト『すみません、司令!! アスカ、いえ、エヴァ3号機が実験施設を抜け出しました!!』
ゲンドウ「3号機の行方は?」
ミサト『不明です! ただいま全力で探しているのですが……』
ゲンドウ「3号機を追跡しろ。信号がでているはずだ」
マヤ「はい!」
ゲンドウ「葛城一尉は他のスタッフをつれ、こちらに帰還しろ」
ミサト『了解!』
冬月「使徒か」
ゲンドウ「ああ。それしか考えられん」
冬月「先手を打たれたか」
ゲンドウ「構わん。使徒ならば殲滅するだけだ。エヴァ出撃準備」
マヤ「はい! エヴァを呼び出します!」
231: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 21:58:22.33 ID:ctUT+kR2o
葛城宅
シンジ「今頃、アスカは実験中なのかな」
ピリリリ……
シンジ「はい、碇です」
マヤ『シンジくん! 今すぐ本部に来てください!』
シンジ「使徒ですか?」
マヤ『いえ、そうじゃ……あぁ……!?』
シンジ「どうしたんですか?」
マヤ『パターン青!! 使徒です!! 使徒がシンジくんの近くまで迫っています!!』
シンジ「ここに来るんですか!?」
マヤ『早くそこを離れてください!! 危険です!!』
シンジ「わ、わかりました!!」
シンジ「急がなきゃ……!! 使徒が……!!」
アスカ「――ただいま」
シンジ「ア、スカ……? お、おかえり……。どうしたの、エヴァになったままだけど……」
232: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 22:01:26.53 ID:ctUT+kR2o
アスカ「……」
シンジ「どうしたの? それ、重くない?」
アスカ「ねえ、シンジ。キス、しよっか?」
シンジ「え……?」
アスカ「したくない?」
シンジ「えっと、その……どうしちゃったの……アスカ……」
アスカ「私はしたいな……」
シンジ「ちょ、ちょっと、アスカ……」
アスカ「ねえ、シンジ。キス、しよ」
シンジ「な、なんで……」
アスカ「シンジのことが好きだからよ」
シンジ「なっ……」
ゲンドウ『シンジ、聞こえるか』
シンジ「父さん!?」
ゲンドウ『目の前にいるのは使徒だ。殲滅しろ』
233: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 22:07:04.19 ID:ctUT+kR2o
シンジ「使徒って……アスカだよ……」
ゲンドウ『間違いなく、使徒だ。やれ、シンジ』
シンジ「そ、そんなこと……」
アスカ「お父さんもやれっていってるし、やろっか?」
シンジ「なにを!?」
アスカ「わかってるくせに。意地悪なシンジ。ふふ」
シンジ「アスカ!! 待ってよ!! こんなのおかしいよ!!」
アスカ「おかしくないわ。私はずっとシンジのことが好きだったのよ」
シンジ「正気に戻ってよ!! アスカ!!」
アスカ「最初は頼りない奴だって思ってたけど、結構かっこいいところあるし、優しいし、気も合うし……」
シンジ「アスカが何を言っているのかわからないよ!!」
アスカ「小さいときに結婚の約束までしてるし……これって運命だと思うの……」
シンジ「やめてよ!! こんなのアスカじゃないよ!!」
アスカ「ねえ、シンジぃ、わたしとやるの?」
ゲンドウ『早くやれ、シンジ』
234: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 22:11:11.23 ID:XVmPc96kO
ゲンドウが変態に見えてきた
235: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 22:13:38.55 ID:ctUT+kR2o
シンジ「できるわけないよ!!!」
マヤ『もうすぐパーツが届きます!! それまで耐えてください!!』
アスカ「シンジ、おねがい。いいことしよ」
シンジ「きっとこの3号機がアスカをおかしくしてるんだ!! これを引き剥がせば……!!」ベリッ
アスカ「あんっ。そんなに私のが見たいの? いいわよ、シンジだけ特別にみせてあげるわ」ベリベリ
シンジ「え……え……」
アスカ「みて、この下にはなにも着けてないの」ベリベリ
シンジ「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ゲンドウ『シンジ、何をしている。躊躇うな』
アスカ「恥ずかしいけど、シンジになら見せてもいいわ」ベリベリ
シンジ「やめてよ!!! アスカ!!! うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
バンッ!!!!
シンジ「え!?」
アスカ「ダレ!?」
レイ「……」
236: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 22:19:55.51 ID:ctUT+kR2o
マヤ『エヴァ零号機、到着!! 初号機のパーツを持っている5号機はまだですか!?』
シンジ「綾波……」
アスカ「ふん。誰かと思えば泥棒猫じゃない。私とシンジの時間を邪魔しないでくれる?」
レイ「……」
アスカ「早く出て行きなさいよ!!!」
レイ「……」
アスカ「なによ、その目! 文句でもあるわけぇ!?」
レイ「……ない」
アスカ「あん?」
レイ「……渡さない」
アスカ「なんですって? よくきこえなーい」
レイ「碇くんは、貴女に渡さない」ドゴォッ!!!
アスカ「ごっ……!? やったわね……!! おんどりゃぁぁ!!!」ドゴォッ!!!
レイ「ぐっ……!」
シンジ「やめて……やめてよ……」
237: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/07(日) 22:26:48.76 ID:ctUT+kR2o
市街
マヤ『5号機! 応答してください!!』
マリ「それは無理な注文だ!」
サキエル「……」ガオー
シャムシエル「……」パシンッ
マリ「おっと! ここはこいつでいくかぁ」ジャキン
ラミエル「……」キャー
マリ「ちっ! まだいるってかぁ!?」
ラミエル「……」グリグリグリグリグリグリグリ!!!!!
マリ「んぎぃ! そこはきくぅ!」
マヤ『5号機!! 応答してください!!』
ラミエル「……」グリグリグリグリグリグリグリ!!!!!
マリ「ん……あっ……そこ、マジで……やめてぇ……」ビクビクッ
シャムシエル「……」パシンッ!!!
マリ「あんっ。こりゃ、ダメだ……。初号機パーツは届けられそうにないにゃぁ……」
238: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 00:07:24.87 ID:cGKDUY/+0
地球の隅っこでなーにやってだこいつらは
240: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 02:14:51.87 ID:UHn7E38go
ラミエルがローターに見えてきた
243: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 21:06:48.28 ID:MX1MrRbZo
葛城宅
アスカ「私はシンジのことが好きなの! 愛しているの!! 邪魔しないで!!」バキッ!!!
レイ「ずっ……。好きとか、愛しているとか、分からないけれど、貴女にだけは碇くんを渡したくない」
アスカ「はんっ。自分の感情すらわからない女はそのまま指をくわえて私とシンジが愛し合うところをみていればいいのよ」
レイ「私が碇くんのことをどう想っているのか、どう感じているのかは分からない。でも、碇くんのことを考えるとぽかぽかする」
アスカ「はぁ?」
レイ「胸のあたりがぽかぽかする」
アスカ「それって好きってことじゃない!!」ブンッ
レイ「そうなの?」ガッ
アスカ「こいつ……! 私の拳を……!!」
レイ「好きってこういう気持ちなの? 分からないわ」ドゴォッ
アスカ「ごっほ……!?」
レイ「好きがどういうものなのかは知らない。けれど、使徒に碇くんは渡さない」
アスカ「嫉妬は見苦しいわよ。シンジは私と愛し合ってるの!! あんたを選んだりもしないの!! 諦めたらぁ!?」バキッ
レイ「うっ……ぐ……。絶対に渡さないわ」ドゴォ!!!
244: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 21:14:34.25 ID:MX1MrRbZo
ネルフ本部
アスカ『きえろぉぉ!!! 泥棒猫ぉ!!!』ベキッ!!!
レイ『私は消えない』ボキッベキッ
アスカ『あぁあぁぁぁあああ!!!』
シンジ『父さん!! 聞こえてるんだろ!? 二人を止めてよ!!!』
マヤ「酷い……」
リツコ「これが女の戰いね」
冬月「いいのか、碇?」
ゲンドウ「ふっ。止める理由などない」
アスカ『ころしてやる……ころしてやる……ころしてやる……ころしてやる……ころしてやる……!!!』
レイ『貴女じゃ、無理』
アスカ『こちとら、10年以上前からシンジと婚約してるんだからぁぁぁぁぁ!!!!』
レイ『そんなの関係ないわ』
シンジ『とまれとまれとまれとまれとまれとまれ……!!』
リツコ「シンジくん。祈るだけでは止まらないと思うけど」
245: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 21:21:09.33 ID:MX1MrRbZo
葛城宅
アスカ「シンジは私のものなんだからぁぁぁ……!!!」グニーッ
レイ「ふぃふぁふぃふんふぁふぁふぁふぁふぁふぃ」
アスカ「黙れ!!」ガンッ!!!
レイ「いっ……」
アスカ「こいつでラストぉぉぉぉぉ!!!!」
レイ「くっ……回避が……」
シンジ「やめてよ、アスカ!!」ガッ
アスカ「シンジ……!! どうして……どうして……その女を守るわけ……」
シンジ「僕は……その……」
アスカ「そう、やっぱり……シンジはそいつのほうが、好きなのね……」
シンジ「違う!! そうじゃなくて!!」
レイ「……違うの?」
シンジ「あ、そういう違うじゃなくて!」
レイ「なら、どういう違うなの?」
246: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 21:31:51.11 ID:MX1MrRbZo
シンジ「だから、それは……」
アスカ「ここではっきりさせるのもいいわね。シンジはとーぜん、私のことが好きでしょ? ねぇ」ギュゥゥ
シンジ「あの……」
レイ「離れて」ググッ
アスカ「はにゃれりゅもんですかぁー!!」
シンジ「やめてよ!! 二人とも!!」
マヤ『シンジくん、結論を出せば、アスカの暴走は止まるかもしれません!!』
シンジ「本当ですか!?」
リツコ『半分は賭けね。悪化する事態も考えられるもの』
シンジ「だったら、答えなんて出せないですよ!!」
ゲンドウ『シンジ、何故戦わない。奴は使徒だ。お前の知っている者ではない。ならば、答えは一つしかあるまい』
シンジ「勝手なことばかり言わないでよ!!」
アスカ「あんたもシンジに近づかないで!!」ググッ
レイ「ふぁふぁふぃふぁふぃふぃふぉ」
シンジ「僕は……僕は……!!」
247: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 21:39:11.56 ID:MX1MrRbZo
マリ「はぁ……はぁ……やーっと、たどりつけたぁ……。流石に使徒三体はきっついなぁ」
サキエル「……」ヨロヨロ
マリ「しつこい、なっ!!」ドゴォッ!!!
サキエル「……」ギャー!!!
マリ「ごっめーん。ちょっとおくれたー、みんな無事ー?」
シンジ「……」
マリ「おぉ、王子様は無傷っぽいね」
シンジ「マリ……さん……」
マリ「なんかあった?」
シンジ「あれ……」
マリ「んー?」
レイ「まだ、やるの?」
アスカ「ぐ……ぅ……ごほっ……ま、だ……よ……まだ……あきらめ……な……い……」
レイ「……」
マリ「あっりゃー、どっちも血だらけで、顔も腫れあがってんじゃん。ナイス、キャットファイト」
248: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 21:51:17.87 ID:MX1MrRbZo
シンジ「どうにかして二人を止めてよ!! 僕じゃ無理なんだ!! 僕じゃ……」
マリ「しゃーない。ミサトー。使徒がパーツにとりついてる説は信頼できんの?」
ミサト『まず間違いないわ。実験開始直後にパーツから使徒の反応がでていたもの』
マリ「だったら、パーツをひん剥くしかないじゃん」
シンジ「え? それって……」
マリ「ひめー、ちょいとごめんよ」
アスカ「なにを――」
マリ「おりゃー」ベリベリベリベリ!!!!!!
アスカ「お……」
シンジ「う……わ……」
レイ「……」
マリ「なんで、何も着てないの?」
アスカ「あ……あぁ……あぁぁ……」
シンジ「アスカ、だ、だいじょうぶ――」
アスカ「いやぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
249: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 21:58:51.69 ID:MX1MrRbZo
ネルフ本部
マリ「こいつが今回の使徒っぽいね」ドサッ
バルディエル「……」タスケテー
リツコ「このパーツに使徒がいるのね」
ミサト「これは厳重に封印したほうがよさそうね」
リツコ「そうね。貴重なサンプルではあるけれど、このままにはできないわ」
マリ「ゲンドウくんとしては残念だったかな」
ゲンドウ「3号機のパーツは凍結させる。その後、使用を禁ずる。以上だ」
リツコ「分かりました」
バルディエル「……」ヤメテー
マヤ「これで使徒は倒せたと言って良いですけど……」
ミサト「問題はアスカね」
マリ「姫のことは気にしても仕方ないって。派手に告白したんなら、あとは開き直るか引きこもるかしかない」
ミサト「前者であることを祈るわ」
マリ「姫の性格的に後者になりそうだけどにゃ。さーどうなるか、たっのしみぃ」
250: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 22:19:32.75 ID:MX1MrRbZo
葛城宅 アスカの部屋
アスカ「……」
『アスカー、起きてよ。綾波も今日見た事は忘れるって言ってるから』
アスカ「……」
『ごはんも出来たよ。一緒に食べよう』
アスカ「……」
『綾波も心配してるから』
アスカ「……」
『僕も忘れるよ。全部。今日のことはもう忘れるよ。それでいい?』
『碇くん、どう?』
『ダメ。返事もしてくれない』
『そう……』
『綾波、帰るならおくっていくけど』
アスカ「……」
アスカ「うぅー!!」バタバタ!!
251: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 22:25:05.54 ID:MX1MrRbZo
翌日
『ちょっと、アスカー? 学校へは行かないの? シンちゃんは先に行ったわよー』
アスカ「……」
『あんなことがあったばかりだから、無理にとは言わないけど、気にしないほうがいいわよ。あれは全部、使徒の仕業なんだから』
アスカ「……」
『貴女は今までに何度もこの街を救ってきたヒーローなのよ。そんな小さなことに躓いちゃダメよ』
アスカ「……」
『シンちゃんもレイもマリもみーんな、アスカの心配をしてるんだから。いい加減、声ぐらいは聞かせて』
アスカ「……」
『アスカ!』
アスカ「……」
『……ごはんは冷蔵庫の中にあるわ。温めて食べるのよ。それじゃ、行ってきます』
アスカ「……」
アスカ「うぅ……」
アスカ「うぅー!!」バタバタ!!!
252: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 22:33:08.33 ID:MX1MrRbZo
学校
トウジ「式波は休みか?」
シンジ「うん。色々あって」
ヒカリ「もしかして大怪我したの?」
シンジ「怪我……なのかな……あれは……」
ヒカリ「心配だわ。今日の帰り、お見舞いに行ってもいい?」
シンジ「うん。アスカもきっと喜ぶと思うよ」
ケンスケ「今の言い方だと式波は普通の怪我じゃないってことか」
シンジ「そうだね……」
トウジ「エヴァになると大変なんやな」
ケンスケ「肉体よりも精神的な負担のほうが大きいだろうからなぁ」
トウジ「そうやなぁ。なんていってもシンジはワシらの街を守ってくれてる英雄やいわれてしまうし、そのプレッシャーは半端なもんやないしな」
シンジ「トウジ……」
トウジ「感謝してるで。ホンマに。だから、なんかあったらすぐに相談せぇよ。できることならなんでもしたる! これは男の約束や!!」
シンジ「ありがとう……」
253: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 22:40:35.50 ID:MX1MrRbZo
ネルフ本部
リツコ「現状ではエヴァ弐号機の稼動は絶望的といえます」
ゲンドウ「そうか」
マヤ「これからは零号機、初号機、仮設5号機だけの運用になりますね」
ゲンドウ「仮設5号機を弐号機に書き換えろ」
ミサト「ちょっと待ってください! それは事実上の更迭では……」
ゲンドウ「使えぬエヴァに用はない」
ミサト「アスカは今、ほんの少し気持ちの整理がつかないだけです!! もう少し時間をください!!」
ゲンドウ「弐号機のパーツは5号機に回せ。これからは5号機を弐号機として運用する」
ミサト「司令!!」
リツコ「ダメよ」
ミサト「けど!!」
リツコ「次の使徒がいつ来るか分からない以上、こうするしかないでしょう。事実、5号機のパーツよりも弐号機のパーツは高性能。眠らせておく理由がないわ」
ミサト「アスカは、どうなるの? アスカだって、今までがんばってきたじゃない。使えないからってここで見捨てるわけ?」
リツコ「人類に残された時間は少ないのよ。作戦本部長の貴女がそんなことでどうするの?」
254: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 22:47:44.14 ID:MX1MrRbZo
トレーニングルーム
シンジ「え……それ……どういうことですか……?」
ミサト「言ったとおりよ。今後、アスカは戦力として考えないように。訓練も貴方たち3人だけでやっていきなさい」
レイ「……」
マリ「弐号機は私に回してくれんの?」
ミサト「ええ。これからマリが弐号機よ。がんばってね」
マリ「オッケー」
シンジ「待ってください、ミサトさん!! アスカはどうなるんですか!?」
ミサト「……ネルフの財政を考えれば、もうここにはいられないわね」
シンジ「どうして急にそんなことになるんですか!?」
ミサト「すぐに出撃できないエヴァは使えないからよ」
シンジ「アスカだってエヴァとして街を守ってきたじゃないですか!! 見捨てるなんておかしいですよ!!!」
ミサト「これは司令の命令なの。覆すことはできないわ」
シンジ「父さんが……? わかりました。僕が父さんに直接言ってきます」
ミサト「シンジくん!!」
255: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 22:55:12.33 ID:MX1MrRbZo
司令室
ゲンドウ「……入れ」
シンジ「失礼します」
ゲンドウ「何か用か」
シンジ「アスカのことです」
ゲンドウ「なんだ」
シンジ「弐号機はアスカです。どうしてマリさんが弐号機になるんですか」
ゲンドウ「現弐号機が戦える状態ではないからだ」
シンジ「あんなことがあったんです。しばらくは仕方ないじゃないですか」
ゲンドウ「即戦力にならん者を置いておけるほどの余裕はない」
シンジ「アスカは命がけで戦ってきたんです。本当は怖いのにそれを誤魔化しながら戦ってきたんです」
ゲンドウ「だからなんだ」
シンジ「な……」
ゲンドウ「動けぬエヴァなど、邪魔だ」
シンジ「どうしてだよ……どうしていつも……父さんは……」
256: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 23:01:59.36 ID:MX1MrRbZo
ゲンドウ「用件はそれだけか、ならば出て行け」
シンジ「どうして父さんはいつもそうなんだよ!! 僕のことだって邪魔だっていって親戚におしつけて……!! 次は邪魔だからって必死に戦ってきたアスカを見捨てるの!?」
ゲンドウ「今はお前が必要であり、現弐号機は不必要だ」
シンジ「そうやって父さんは自分の都合で他人に迷惑をかけるんだ」
ゲンドウ「これ以上、お前と話すことはない。出て行け」
シンジ「父さんにとって、必要なのは僕じゃなくて、エヴァなんだろ」
ゲンドウ「そうだ」
シンジ「……っ」
ゲンドウ「初号機であるお前が必要だ」
シンジ「そう……やっぱり……薄々は気づいていたけど……やっぱり、そうなんだ……。父さんが必要なのは……僕じゃないんだ……」
ゲンドウ「これからの予定もある。早く出て行け」
シンジ「……てやる」
ゲンドウ「なに?」
シンジ「エヴァなんてやめてやる」
ゲンドウ「……」
257: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 23:10:04.95 ID:MX1MrRbZo
シンジ「これ以上、父さんの思い通りになんてさせるもんか」
ゲンドウ「子どもの駄々に付きあうほど暇ではない」
シンジ「僕は本気だよ、父さん」
ゲンドウ「大人になれシンジ。今、ここを離れてもお前は自己満足するだけだ」
シンジ「それでいいよ。こんなところに、父さんがいるところにいたくない。エヴァなんて、苦しいだけだし、ずっと辞めたかった」
ゲンドウ「また逃げるのか?」
シンジ「逃げて何が悪いの。父さんは初号機がいなくなると困るんだろうけど、僕には関係ない。少しは困ればいいんだ」
ゲンドウ「考え直せ、シンジ。使徒の脅威は全人類を飲み込むほどのものだ」
シンジ「知らないよ。僕はエヴァなんてしたくない。なりたくもない」
ゲンドウ「……」
シンジ「父さんの言いなりになんてならない」
ゲンドウ「そうか。では、貴様は用済みだ。早急に出て行け」
シンジ「言われなくても出て行きますよ」
ゲンドウ「好きにしろ」
シンジ「しますよ」
258: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 23:22:38.24 ID:MX1MrRbZo
市街 某所
「バルディエルも堕落してしまった。これで全ての希望は光を失い、闇へと染められた」
サキエル「……」
「君たちの失敗が主な要因であるけどね」
シャムシエル「……」ニョローン
「もういいんだよ。誰も苦しまなくていい。終焉と収束の扉は開いた」
ラミエル「……」キャー?
「終わりの始まり。始原にして終極。輪廻の根源となる『力』を司る天使が舞い降りる」
サキエル「……!」
「その名はゼルエル。全てを『力』のみで制す天使が動くんだ」
シャムシエル「……!」ニョロニョロ
「もう遅いよ。終末は既に僕らの頭上にある」
ラミエル「……」キャー!
「さぁ、ゼルエル。奏でるんだ。この世に捧げる鎮魂歌をね」
サキエル「……」ガタガタガタ
259: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 23:29:58.68 ID:MX1MrRbZo
葛城宅
シンジ「アスカ、それじゃあ僕は先に行くよ。気が向いたら、電話してほしい」
ミサト「シンジくん、本当に行くのね」
シンジ「はい」
ミサト「話を聞いたときは驚いたわ。アスカのためにエヴァを辞めるなんて」
シンジ「別にアスカのためじゃないです。僕は前から辞めたかっただけです。正直、訓練だって痛いし、苦しいだけだし、楽しいことなんて何一つありませんでした」
ミサト「アスカに勝ったとき、喜んでいたように見えたけど」
シンジ「気のせいじゃないですか」
ミサト「司令が貴方を褒めていたって言ったら、喜んでいなかったの?」
シンジ「いませんよ」
ミサト「……そう」
シンジ「今まで、お世話になりました。ミサトさんたちと過ごした毎日は……」
ミサト「つまらなかった?」
シンジ「……はい」
ミサト「そうよね……。さようなら、シンジくん。私は、楽しかったわ」
260: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 23:33:56.80 ID:MX1MrRbZo
市街
シンジ「……」
トウジ「シンジー!!」
ケンスケ「いかりー!!」
シンジ「あ……」
トウジ「はぁ……はぁ……。ど、どういうことや!?」
ケンスケ「急に転校ってどういうことだよ」
シンジ「僕はもうエヴァをやめたから。ここにいる理由がなくなったんだ」
トウジ「エヴァをやめたんか」
ケンスケ「やめたって……」
シンジ「うん。もういいかなって。エヴァになるのも疲れたんだ」
トウジ「そうなんか――」
ドォォォォン!!!
シンジ「うっ!? この爆発は……!?」
トウジ「なんや!? 使徒か!?」
261: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 23:39:00.05 ID:MX1MrRbZo
ネルフ本部
マヤ「パターン青!! 使徒です!! モニター、出ます!!」
ゼルエル『……』ドヤァ
冬月「来てしまったな。最強の使徒。最強の拒絶タイプが」
ゲンドウ「零号機と弐号機を出せ」
マヤ「弐号機は既に出撃準備が整っています!!」
マリ『こっちはいつでもいけるにゃぁ』
マヤ「弐号機、出撃してください」
マリ『いっちょ、いくかぁ!』
ミサト「遅れました! 状況は!?」
リツコ「今、始まったところよ」
ミサト「マリだけ? レイはどうしたの?」
マヤ「まだ更衣室から出てきていません」
ミサト「何をしているのよ、レイは」
リツコ「流石に更衣室に監視カメラは置けないから、分からないわね」
262: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 23:46:09.84 ID:MX1MrRbZo
市街
ゼルエル「……」ピカッ!!!
ドォォォォン!!!
ゼルエル「……」ドヤァ
マリ「そのドヤ顔もここまでにしない?」
ゼルエル「……?」
マリ「んー。姫の使っていたパーツ、やっぱりいいなぁ。5号機も気に入ってたけど、やっぱ使うなら性能が良いほうだよね」
ゼルエル「……」ゴゴゴッ
マリ「お。やる気かぁ? こっちはもう後には退けないから、やるだけのことはやってやるぞぉ」
ゼルエル「……」ピカッ!!!
マリ「おぉ。きたきたぁ。まずは、ソニックグレイヴで!!」ジャキン!!!
ゼルエル「……!」
マリ「ファーストアタックはもらったぁ!!」
ゼルエル「……」ギィィィン
マリ「A.T.フィールド、厚っ! にゃろぉ、反則染みてるなぁ」
264: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 23:52:45.56 ID:MX1MrRbZo
ゼルエル「……」ピカッ!!!
ドォォォォン!!!
マリ「ほいっと。強烈な光線だ。今までの使徒とはノリが違うね」
ゼルエル「……」イラッ
マリ「次はこいつで!」
ゼルエル「……」シュルルル!!!
マリ「な――」
ゼルエル「……」バキィ!!!
マリ「あぅ!?」
ゼルエル「……」ドヤァ
マリ「腕を伸ばせるなんてきいてなーい!」
ゼルエル「……」ゴォォォ
マリ「はやっ」
ゼルエル「……」ドゴォ!!!!
マリ「ぐっ……ぇ……!?」
265: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/08(月) 23:57:20.09 ID:MX1MrRbZo
ネルフ本部 更衣室
レイ「……」
マトリエル「……」カサカサカサカサ
レイ「行かなきゃ。5号機の人も戦ってる」
マトリエル「……」
レイ「ペンペンはここにいて」
マトリエル「……」クイッ
レイ「良い子ね。私は必ず、戻ってくるわ」
マトリエル「……」カサカサカサカサカサ
レイ「碇くんが戦わなくていい世界にする」
レイ「それが今の私の気持ち。私の想い」
レイ「そして私は……」
マトリエル「……」カサカサカサカサ
レイ「私は今、生きたいと思っている。碇くんのいるこの世界で。だから、戦う。それが私の戦う理由」
レイ「零号機。出撃します」
266: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/09(火) 00:04:28.96 ID:oWbuNst3o
市街
ゼルエル「……」ガンッ!!!
マリ「が……ぐっ……!! いったぁ……このままじゃ、かてないにゃ……」
マリ「仕方ない。あれを使うとしますか。あんまり好きじゃないけど」
ゼルエル「……?」
マリ「モード反転!! 裏コード!! ザ・ビースト!!」
ミサト『マリ!! 何をしているの!?』
リツコ『それを使えば人でいられなくなるのよ!?』
マリ「知ってるっつーの。だから、使うんだってば」
ゼルエル「……」
マリ「ウゥゥゥ……!! ワンワン!! ワンワン!!」
ゼルエル「……!?」
マリ「ガァァァウ!!!」ガブッ!!!
ゼルエル「……」イテー
リツコ『あれが人の理性を捨て、本能だけになったエヴァの姿……』
271: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/10(水) 00:46:06.57 ID:RrS7IPlNo
マリ「ワンワンワンワンワンワンワン!!!!」
ゼルエル「……」
マヤ『弐号機!! 使徒の周りを回り始めました!!』
ミサト『威嚇しているの!?』
リツコ『彼女は既に本能だけで生きている獣と化しているわ。何を考えているかなんてわかるはずがない』
マリ「ワオワオォォン!!!」
ゼルエル「……」パシンッ!!!!
マリ「キャン!!」
ミサト『やっぱりダメか……』
レイ「――零号機、行動を開始します」
ミサト『レイ!』
レイ「ここで使徒を倒して、碇くんが困らない世界にする」
ゼルエル「……」ペシンッ
レイ「あぅ」
マヤ『零号機! 行動不能!!』
272: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/10(水) 00:51:28.79 ID:RrS7IPlNo
葛城宅 リビング
アスカ「……」
チンッ
アスカ「いただきます」
『第三新東京市民のみなさん!! 見てください!! あれが使徒です!!』
アスカ「使徒……」
『あの使徒はいたるところを破壊しながらどこかへと向かっています!! 近隣のみなさんは避難してください!!』
アスカ「……」
ゼルエル『……』ゴゴゴゴゴッ
『し、使徒がこちらに……!!』
レイ『させない』
『エヴァンゲリオンです!! エヴァンゲリオンが私たちを守ってくれるようです!!』
ゼルエル『……』ペシンッ
レイ『くっ……!!』
アスカ「はむっ……」モグモグ
273: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/10(水) 01:01:40.00 ID:RrS7IPlNo
市街
シンジ「なんだか大変なことになっているみたいだね」
トウジ「ほんまにこのまま街からでるんか? 使徒がこの街を壊しとる、こんな状況で」
シンジ「僕はもうエヴァじゃないんだ。使徒と戦う理由もないよ」
トウジ「……」
シンジ「軽蔑するならしたらいいよ。でも、僕は――」
トウジ「軽蔑なんてするかい、ボケ。感謝してもしきれんぐらいや」
シンジ「え……」
ケンスケ「碇は今までずっとここを守ってくれてたじゃないか。お礼はしても、軽蔑なんてしない」
シンジ「でも……僕は苦しいことから逃げるのに……」
トウジ「逃げたらええやろ。シンジはようやった。ここまで疲れさせたのはワシらの所為でもある」
ケンスケ「碇がここを離れるっていうなら、全力で守らないとね」
トウジ「その通りや。ダチが折角しんどいことから解放されるんや。使徒なんかに邪魔させるかい」
シンジ「何をするつもりなの?」
トウジ「ここにはもうワシらの知ってるヒーローはおらん。おるのは、親友だけ。親友を守るのは男の仕事や。まかせとけ」
274: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/06/10(水) 01:11:48.94 ID:RrS7IPlNo
シンジ「使徒は普通の人間じゃ勝てないってミサトさんが言ってたんだ」
トウジ「シンジも普通の人間やんけ」
シンジ「僕はエヴァンゲリオンになれたからで……」
トウジ「シンジはワシらとアホなことで笑いあってた。アホなこと言い合って、いいんちょに怒られた。十分、普通や」
シンジ「違う……」
トウジ「違わん!! はよ、いけ。ここに使徒がきても、シンジが街を出るまではとめたる!!」
ケンスケ「来ないことに越したことはないけどね」
トウジ「ふん。来るならきたらええねん!」
シンジ「やめてよ……僕はそこまでしてもらえるほどのことなんて……何もしていないのに……」
トウジ「なんやと?」
シンジ「僕は綾波、ううん、みんなを守れる自分が好きだった。かっこいいって思ってた。だから、エヴァになって戦ってたんだ」
ケンスケ「……」
シンジ「……それも違う。僕はただ父さんに認めてもらいたくて、エヴァになっていただけなんだ。トウジたちを助けたくて、守りたくて戦ってたわけじゃないんだ」
トウジ「そう、なんか」
シンジ「だけど、結局父さんは僕のことなんて見てくれてなかった。だから、僕はエヴァをやめたんだよ。僕はヒーローなんかじゃないんだ」