561 名前:水先案名無い人[sage] 投稿日:04/11/17 18:52:05 ID:8Wzf61cZ
親父が事業に失敗した。法的整理は免れたが、取引先・銀行から見捨てられ、身動きできない状態に。
社長であった親父が経営意欲を失い、会社にも出てこなくなるという異常事態に。
すったもんだの末、何と20台半ばの俺が経営のバトンを受け継ぐ事になってしまった…

経営知識などほぼゼロに近い状態なので、親戚・OBなど、信頼できる人に話を聞きまくった。
なんとか状況を整理したところ、業務を大幅に縮小してやれば何とか会社を運営できるようだった。
それ以外の選択肢だと、ゆくゆくは会社が行き詰ってしまう可能性が非常に高い状態。

取引先にも頭を下げ、銀行にも状況を再度説明する。何とかいけそうだ。
しかし、担当の税理士が、このままでは駄目だという。
「親父」が「会社」に貸し付けた多額の金。これが帳簿上に残っているうちは、金融機関との付き合いは絶望的だと。
解決策を聞いてみたら、「親父」が「会社」に対し債権放棄し、得られた利益を累積赤字と相殺するといいと言う。
親父も、その金を返してもらおうとは思っていないとの事だ。

しかし、この方法だと一つ問題がある。「親父」の個人資産が一気に消え去ってしまうという事だ。
つまり、本来相続できるはずの親父の財産が霧散してしまうのだ。
俺は会社と一蓮托生だから別にかまわない。母も責任を感じているのか、それでいいという。
だが、俺には妹がいる。文句なしに財産の4分の1を相続できる立場の。

これは妹の承諾なしに決めるわけにいかない。そう思った俺は、進学して家にはいない妹に会いにいった。
夕食に連れだし、事情をなるべくわかりやすく説明した。だが、まだ妹には難しい話だろう。
ひとまず話を切り上げて、じっくり考えてもらおうと思った矢先。俺の話をさえぎるように、妹が口を開いた。

「お兄ちゃん、私は親の財産なんて全然あてにしていないよ」
「・・・・・」
「だから、私の事は考えなくてもいいから」

妹。ありがとう。面と向って言うのは恥ずかしいから言わなかったが、心の底から感謝している。
お前が反対したらどうしようと思ったりもしたが、俺は本当にいい妹をもったよ。
この先、何が起こるかわからないお互いの人生だが、俺はお前を何があってもずっと守り続けるから。