真紅とウナギの怪
- § 主な登場人物紹介
真紅
ローゼンメイデン第5ドール。自己犠牲の精神でアリスゲームを制した、紛れもない究極の少女。
気高く美しい乙女だが、吐き気を催す邪悪なのが玉に瑕。ウナギを愛する心は誰にも引けをとらない。
雛苺
ローゼンメイデン第6ドール。アイスのふたの裏をふやけるまで舐める。
翠星石
イタズラが大好きな第3ドール。暇さえあればジュンの指と指の間に鉛筆を挟んでギュッとする。
蒼星石
翠星石の双子の妹の第4ドール。桜田家に贈る七夕用の笹に痺れ薬を含ませるほどの策士。
金糸雀
忘れ去られがちな第2ドール。アイスティーに睡眠薬を仕込んで自分で飲んでしまう程度の策士。
水銀燈
逆十字を捺された最凶(自称)の第1ドール。ウナギを愛する心は真紅にも負けない。
雪華綺晶
ゆるふわ愛され系第7ドール。蒲焼のタレだけでご飯を三杯も食べられるが三杯目は涙の味がする。
薔薇水晶
槐メイデン。食レポの表現の幅を広げるべく槐先生と一緒に老舗鰻屋巡り中のため今回はお休みです。
- § 土用の丑の日も近いある日の桜田家
真紅「ぬわぁ~っ! ウナギが食べたいのだわ~~っ!」ジタバタ
ジュン「落ち着け真紅!」
翠星石「暴れるなですぅ」
真紅「ウナギ食いてぇ~っ! ウナギ食わせろ~~!」アンギャー
雛苺「真紅がついに狂ったのー!」
真紅「ウナギ! ウナギ! U☆NA☆GIッ! UUUUUUNAGIEEEEーーーッッ!!! UUURRRYYYYーーッ!」
ジュン「翠星石! 縄! 荒縄を持ってこい!」
翠星石「ここにあるです! 早く真紅をふんじばれですぅチビ人間!」ササッ
ジュン「よしっ! とォりゃっ!」シュバババ
真紅「グワーッ!!?」ぎゅっ
雛苺「グルグル巻きなの! これで真紅はもう動けないのね!」
縄真紅「WRRRRRYYYーーーッ!!!」じたばた
ジュン「くそっ! まだ暴れるか!」
翠星石「囲んで棒で叩くです!」
雛苺「うぃ! 可哀想だけど真紅を大人しくするにはダメージを与えるしかないのー!」
ジュン「ええい! 本当に手の焼ける奴め!」ビシバシッ
縄真紅「ウナ…ギエピーーーーッ!!?」
- § ジュン達が真紅を囲んで棒で叩くこと小一時間
縄真紅「はっ…!!? わ、私は今まで何を…?」
翠星石「ようやく正気を取り戻したようですね真紅」
雛苺「ヒナ達も叩き疲れてきたところだったのよ」
縄真紅「こ、この荒縄は一体!? どういうこと? 集団SM?」じたばた
ジュン「ウナギの禁断症状で発狂してたんだよお前は」
雛苺「真紅が無茶苦茶に暴れまわって大変だったの」
ジュン「幽々白書の雷禅なみだったぞ」
縄真紅「まあっ…!!? 私としたことが、とんだ失態を…」
翠星石「真紅がウナギ好きなのは知ってるですが
それを食べられないからといって暴れまわらなくてもいいじゃあねーですか」
縄真紅「だって、丑の日も近いからってスーパーでもテレビでもウナギの蒲焼を大プッシュよ。
それなのにうちの食卓には、せいぜいサンマの蒲焼が出る程度」
ジュン「それを美味い美味いって言いながらご飯を三杯もおかわりしてたじゃあないか」
縄真紅「サンマも美味しいけど真紅ちゃんはウナギが食べたいのだわだわ!」
ジュン「てめぇが無駄に食いまくるせいでうちの家計カツカツなの知ってるだろうに」
雛苺「うぃ。ヒナのオヤツのうにゅーも不死屋のじゃなくて、スーパーの値きり品になってるのよね」
翠星石「みんな我慢してるのに、真紅だけわがまま言うなです」
縄真紅「わがままではないわ! ただ、欲望という名の内なる野獣を抑えきれないだけ」
ジュン「それをわがままと言うと思うんだが…」
翠星石「ともあれ真紅、夏のウナギは旬ではないとも言うです。冬の方が脂のってて美味いらしいですよ」
縄真紅「……」
ジュン「おお、そうだそうだ。夏のウナギをありがたがる人は滑稽だねぇ!
冬まで待ってください、本当のウナギってやつを食わせてやりますよ」
縄真紅「初期の尖りまくっていた山岡さんの真似で挑発しても無駄よジュン。
確かにウナギの旬は冬なのでしょう、けど私は夏もウナギを食べたい、と言うか今食べたいの」
雛苺「真紅があんまりウナギウナギって言うからヒナも食べたくなってきちゃったの…」
ジュン「お、おい雛苺…?」
縄真紅「ほら見なさい。雛苺の反応こそが正しいのよ。私が最近のテレビのウナギ特集で洗脳されるのも自然だわ」
翠星石「口の減らんやっちゃです」
縄真紅「そうだわ翠星石! あなた蒼星石のツテで結菱老人からウナギ奢ってもらったりできないの!!?
いえ! できないわけがない! できるでしょう!!! 今すぐウナギを食べさせなさい!」
翠星石「落ち着けですってば真紅! 目が血走ってるですよ! ドールなのに」
雛苺「それに蒼星石はウナギに見せかけた偽物料理を作るのが得意だったのよ」
縄真紅「はっ!? そ、そう言われれば! (※ 薔薇乙女と四月馬鹿 参照)」
翠星石「そんなことをよく覚えていたですねチビ苺…」
雛苺「えっへんなの!」
縄真紅「それに思い返せば…金持ちなくせにケチ臭い子だったわ蒼星石は!」
翠星石「蒼星石はそんな子じゃあねーですよ」
縄真紅「いいえ! 雛苺も言ったようにウナギの代わりにイモ出したような姉よ!」
翠星石「チビ苺と違って微妙に記憶違いを起こしているですね真紅は」
雛苺「やっぱり真紅は狂っているの」
のり「ジュンく~ん? いる~?」ガチャッ
ジュン「あっ、姉ちゃん」
翠星石「ちょうどいいですぅ、ボス猿からも真紅に言い聞かせてやって…」
のり「あらぁ? 真紅ちゃんどうしたの? 縄で巻かれちゃって? マゾの快感なの?」
縄真紅「逃れられぬカルマよ」
のり「へ?」
雛苺「真紅がウナギ食べたいって暴れるから仕方なくボコボコにしたの」
のり「そうそう! そのウナギなんだけど!」
翠星石「うん?」
のり「近所のドブ川に大きなウナギが棲んでいるって噂なの!」
ジュン「はあっ?」
翠星石「馬鹿言うなですよ、のり。確かにあのドブ川は昔から清掃活動が続けられていて
綺麗になってきてはいるですが、まだまだウナギがやってくるような川ではないはずです」
のり「でも、今までだってアシカが迷い込んだりもしたじゃない! (※ 水銀燈、間違える。 参照)」
ジュン「そういう迷い込んだ系なら有り得るかもしれないが…」
翠星石「でも胡散臭さマックスですよ。丑の日が近いからって誰かがナマズでも見間違えたんじゃあ?」
ジュン「だな。E.T.とかテレビでやった次の日はNASAへのUFOの目撃情報タレコミ倍増とも言うし」
のり「ええ~? それじゃあ嘘なのかしら…ドブ川のウナギは」
翠星石「真紅だって、こんな根も葉もナイチンゲールな噂を信じるわけないですよねェ?」
縄「……」
のり「あっ!? あれっ!? 真紅ちゃん…? いない! 縄しか残ってないわよ!」
翠星石「チビ苺もいなくなってるですよ! いつの間にですぅ!!?」
ジュン「野郎~、ドブ川に向かいやがったか? 雛苺まで引き連れて?」
翠星石「のりのウカツめですぅ! 真紅の前であんな話題を出すからです!」
のり「ご、ごめ~ん」
- § ドブ川のほとり
真紅「くっくっく! 匂う、匂うわ…。ウナギの香ばしい香りが…」
雛苺「ヒナにはドブ川のドブの臭いしか感じられないの~」
真紅「修行が足りないわね雛苺。しかし、このドブ川も大した河川ではないとはいえ
広いところだと川幅15mぐらいはある。烈海王には問題なくても私達には問題大アリだわ」
雛苺「こんな所で、ウナギを探そうだなんて砂漠でハチを探すようなものなの」
真紅「ハチじゃなくて針よ。意味的には別にどっちでも良いけど」
雛苺「うぃ、とにかく大変なのよ! どうやってウナギを捕まえるの~!!?」
真紅「根流しすっぺ」
雛苺「ねながし…? 何それ? ワタガシの仲間なの?」
真紅「いいえ、違う。根流し、毒もみとも言うわね。川に毒をまいて魚を獲るのよ。日本に限らず
世界各地に古来からある伝統漁法。現代日本では犯罪だけど、私達はドールだから平気デース」
雛苺「すごいのー! 真紅は賢いのね! でも毒はどうするの?」
真紅「シキミやエゴノキとかの有毒な木の皮をはいで、それをポコポコ叩いた上で川に放り込むの」
雛苺「毒のある木とかヒナ分からないの。真紅は分かるの?」
真紅「もちろん、だけれどもこの辺りにはそんな都合の良い木は生えてない」
雛苺「じゃあ、どうするのー! 毒がなければ根流しってのできないのよ!」
真紅「あせらないで雛苺。先日、蒼星石が譲ってくれた笹を持ってきているわ」ゴソッ
雛苺「?」
真紅「覚えてないの? この笹には痺れ薬がたっぷり含まれている! (※ 爆走メイデン翠&蒼 参照)」
雛苺「おおお、思い出したのー! ヒナ、そのせいで二時間ぐらい痙攣しっぱなしだったのよー!」
真紅「ふふふ、その通り。これを根流しに用いればウナギの大漁間違いなしだわ」
雛苺「わぁい! 真紅、早く早くぅ! 根流し! 根流し!」
真紅「分かってるわ、そ~れっと!」ドボン
雛苺「わくわく! わくわく!」
真紅「これで、すぐにでも痺れ薬で麻痺した魚たちが浮かんでくるはず」
- § 30分経過
雛苺「全然、魚さんが浮かんでこないのよ真紅?」
真紅「……」
雛苺「ねぇ真紅! どういうことなの! すぐウナギが取れるはずじゃなかったの!」
真紅「う、うるさいわね! どうやら蒼星石の痺れ薬の有効期限(※)が切れていたようだわ。詰めの甘い姉ね!」
※実際には蒼星石の痺れ薬は人形にだけ効果を発揮するのである。ワザマエ。
雛苺「だったら、もうバンジージャンプなのね」
真紅「それを言うならバンジージャンプじゃなくて万事休す」
雛苺「そ、そうとも言うの! とにかく、もう方法がないってことなの!」
真紅「やれやれだわ雛苺。私達にはまだ、お父様から頂いた立派な二本の腕や足があるじゃない」
雛苺「…腕、足?」
真紅「つまり体を使うのよ! とうっ!」ザッパーン
雛苺「ああっ!!? 真紅が準備体操もせずに川に飛び込んだのーっ!」
真紅「雛苺! そこに荒縄の端っこがあるでしょ? ジュンの部屋から出てくる時に少し持って来たの!」
雛苺「これのこと?」ヒョイ
真紅「そうよ。それを掴んでいて頂戴! もう片端は私の命綱として胴に結んであるから!」スイスイー
雛苺「うぃー!」ギュッ
- § 10分経過
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- :-:2015/07/16(木) 21:45:08
- 相変わらず酷い(これ以上無い賛辞)
- :-:2015/07/16(木) 21:47:39
- >気高く美しい乙女だが、吐き気を催す邪悪なのが玉に瑕
玉より瑕のほうが大きいんですがそれは…
- :-:2015/07/16(木) 21:51:26
- ウナギは2~3日水中に放置し、溜め込んだ泥を吐かせましょう。
生の血に毒があるのは薔薇乙女も知っての通りなのでよく火を通し、好みでタレをつけていただきます。
- :-:2015/07/16(木) 22:12:29
- 吐き気を催す邪悪と言うか邪悪が吐き気を催してる
- :-:2015/07/16(木) 22:14:08
- 二人っきりだと水銀のことおねえちゃんって呼ぶカナも可愛いしなんだかんだでいつもカナとつるんでる水銀もカワイイだ
- :-:2015/07/16(木) 22:49:08
- 吐き気を催す邪悪ってそういう意味かよワロタ
桜田家がドブ臭くなりそう…