158 名前:名前欄にスレ名入力推奨@自治スレ[] 投稿日:2015/07/15(水) 03:13:37.61 ID:M/IN1jRv0.net [1/3]
夜中に思い出した事を。

蕎麦屋で働いていた5年前。
その日は週末土曜で、
お昼ピークを迎える11時前後。
店員は私(勤務半年くらい)と古参の主婦T(63歳)さんとでフロアを担当してた。
滅多に来ない70歳くらいのお爺様が来て、エビ天そばを食べてた。
因みに間隔あくけど、くる頻度はあったから、常連さん。
そのお爺様が帰り際、レジを担当した私に耳打ちした。
爺「あの店員さん、ずいぶん長く勤めてるねえ。」
私「そうですね、かれこれ…爺「半世紀は働いてんじゃねいか?いやー長いこと見かけるんだよねぇ」
お爺様は私を遮り、そう宣う。
え、そうなんですか?!
と、私はびっくりして、Tさんに確認した。
Tさんは、そんなわけ無いでしょっ
と、半ギレで答えた。
一部始終を聞いてた社員さんは、「この店はまだ出来てから20年しか経たないよ。
Tさんは初期からのパートさんだけどね」って。
お爺様はテヘッて笑って帰られた。
Tさんは、「あの人はいつもそう、人をおちょくって!!」
って言う割にお爺様に手を振って見送ってた。
あぁ、お爺様も初期からの常連さんなのか、と合点がいったらなんか和んだ。





159 名前:名前欄にスレ名入力推奨@自治スレ[] 投稿日:2015/07/15(水) 03:38:44.18 ID:M/IN1jRv0.net [2/3]
続き。

お爺様はしばらくの間、一人で来る事が多かったから独り身かと思ってた。
でも、勤めてから3年くらいたったある日。また週末土曜、今度は夕方だった。
奥様といらっしゃった。
仲よさそうに、手をつないで店の階段をユックリ登ってきたのがわかった。
出迎えたら照れ笑いで、
爺「エビ天ふたつね、ばぁさんが好きなんだよ、エビ天そば。」
そう言いながら席に着く。
奥様を気遣ってるのがよくわかった。
お爺様は、心底楽しそうに笑ってるのを初めて見た。
Tさんとの絡みは良くあったけどね。


160 名前:名前欄にスレ名入力推奨@自治スレ[] 投稿日:2015/07/15(水) 03:39:38.83 ID:M/IN1jRv0.net [3/3]
続きの続き

さて、エビ天そばを提供して間もなく
「あわわわわ」
と聞こえた奥様の声。
事情は聞くまでもなく、真っ赤に染まったエビ天そばがテーブルにあって、
奥様は丸っと開けた一味を持っていた。
奥「どうしましょう、どうしましょう」
と慌てっぷりが可愛くてしかたなかったので、
「作り直しましょう、一味蕎麦は私がいただきます。」
休憩間際だったので、私の作成途中のたぬき蕎麦を急遽、エビ天そばに変更し、
奥様に提供し直した。
奥様は大層お礼を言ってくださったが、お爺様は一味の使い方を説明しそびれたのを悔やんでいる様子。
するど、一味をかけて食べたい奥様は、
奥「一味はどうしたら上手く使えますかね?」
とお爺様に聞いていた。
ぱぁっと表情が明るくなり、お爺様は奥様に蓋の開け方を一生懸命教えていた。
私は老夫婦の仲の良さに憧れを抱いたよ。
ご夫婦は食べ終わってから、再度お礼を言われ、帰路に。
私は一味にむせ込みながら、完食しましたとさ。

終わり