女「私、幽霊なんです」 男「そうか」
男「……で、誰を呪い殺すつもりなんだ?」
女「ちょっと、人を悪霊みたいに言わないでくださいよ!」
男「どっちも同じようなものじゃないかなー」
女「そんな、私は善良な一般霊ですよ」
男「一般霊とか言われてもこっちには何がなんだかサッパリだよ」
男「……ふぅ」
女「どうしたんですか?」
男「いや、まだ早いけど突っ込み入れていいか?」
女「突っ込みとは」
男「いきなり見知らぬ女に幽霊と言われて、信じるはずがないだろう」
女「昔からの知り合いに言われるよりは信憑性があると思いますが」
男「そりゃそうだけど、どっちにしたって同じだろ」
女「そうですか。ならどのようなシチュエーションなら良かったのでしょうか」
男「そんなシチュエーションは存在しない」
女「えぇー」
男「なら話は変わるけど、幽霊だっていう証拠を見せてくれよ」
女「証拠、と言いますと」
男「幽霊なら色々出来るだろう? 壁をすり抜けたり、宙に浮いたり」
女「あはは、そんな都合のいい存在のはずないでしょう?」
男「なんでこっちが諭されてるんだ……」
女「しかし、信じてもらえないとなると困りますね…」
男「信じてもらえるの前提だったのか……」
女「幽霊といっても、出来ることは人間とほとんど同じなんですよ。さっきの壁をすり抜ける、とか、できっこないんです」
男「……そんなんじゃあ、いつまで経っても到底信じられないぞ」
女「あ、でも話は聞いてくれるんですね」
男「断っても勝手に続けるだろう……」
女「あはは、初対面なのによく分かりましたね」
男「そんな気がしただけだ」
男「うーん、お前の言う幽霊ってのがどんな存在かハッキリしないな。俺のよく聞く幽霊とは結構違うみたいだし」
女「あれ、協力的ですね」
男「確かに。なんでこんなに協力的なんだろうな」
男「……そうだ。これも俺のよく聞く幽霊の設定なんだけど、霊感の強い奴にしか見えないとか……ないか。俺、霊感あるとか言われたことないし」
女「あ、それはあります」
男「そうなのか?!」
女「はい。と言っても、視覚的には見えるんですが、存在感が薄く感じるとか」
男「俺にとっては存在感バリバリに見えるんだが、俺は霊感が強いってことか?」
女「そうなりますね」
男「はぁ……」
男「お、もうこんな時間か」
女「おや、何か用事ですか?」
男「ん、ああ。そろそろ家に帰らないとな」
女「…………」ジーッ
男「なんだその目は。俺は『一人で』帰るぞ」
女「そんな! 帰る場所もない女の子を独りで置いていくなんて!」
男「幽霊なら幽霊らしく、夜の公園にでも潜んでればいいじゃないか」
女「ちょっと! さっきも言いましたけど、普通の人にも私は見えるんですよ!」
男「そうかい。じゃあその人に泊めてもらえ」
女「そんな無茶な……」
男「……まあ着いてくる気はしてた」
女「あはは……でも入れてくれるなんて優しいんですね、男さんって」
男「呪い殺されるよりはマシだ」
女「だから私はそんな悪霊では……」
男「……おっと、じゃあ俺そろそろ風呂入るから」
女「あ、後で私も入らせてもらえませんか?」
男「……幽霊が?」
女「幽霊じゃ駄目ですか?」
男「はぁ……別にいいよ」
女「ありがとうございます」
ー風呂ー
男(幽霊か……信じるわけではないけど、ちょっと調べてみるか)
男(確か……小学生の頃、オカルト好きの女子が同じクラスにいたな)
男(小学生の頃の知識とはいえ、霊に詳しい知り合いなんてそういないし……)
男(連絡先は…友人を辿っていけばなんとかなるか?)
男(…………)
男(あいつ、変なことしてないだろうな?)
男「上がったぞー……おい、何してるんだ」
女「へ!? ああ、あはは、そうですか。早いですね……」
男「本棚を漁ったまま言っても、全然ごまかせないぞ」
女「い、いやー、こういう時、何かいけない物がないか探すのはお決まりじゃないですか」
男「いけない物を隠してるなら俺は家に入れん」
女「……意外です。てっきりたくさんあるのかと」
男「会ったばかりなのに失礼だな。今からでも追い出すぞ?」
女「呪い殺しますよ?」
男「やっぱり悪霊じゃないか」
女「と、とにかく、私も入りますね!」
男「逃げたか」
女「……上がりましたよー」
男「おう、布団は用意しておいたぞ」
女「おや、一緒な布団で寝ますか?」
男「そんなはずがないだろう、俺はこっちのソファで寝るよ」
女「え、そんな。悪いですよ」
男「こっちにもプライドがあるんだよ。それに本棚漁っておいて今更悪い、もないだろう」
女「あはは、そうですね……ありがとうございます」
男「……じゃあ、早いけど寝るか」
男(俺、いつの間にか幽霊って認めてるな…)
ー翌日ー
女「おはようございます」
男「ああ、おはよう。俺、朝食食うけど……」
女「…………」グゥー
男「その様子だと幽霊でも腹は減るようだな……仕方ない、お前の分も用意するよ」
女「え、いいですよ。そんな」
男「どうせ長い付き合いにはならないだろうし、別にいいよ」
女「…………」
男「……こんなこと聞くのもなんなんだが、お前、その……どんな風に死んだんだ?」
女「おや、認めてくれるんですか」
男「……もうそれでいいから、どうだったんだ?」
女「ええと……自殺ですよ、自殺」
男「自殺!? どうして?!」
女「よく覚えてないです。生前の記憶が曖昧なんです。だから今のこの姿も、生前の私と同じかどうか……」
男「……じゃあ、幽霊になった原因とかは?」
女「それは、死んだからじゃないですか?」
男「……あのな」
女「冗談です。私も分かりませんけど、何か、したいことがあったような……」
男「したいこと、か……」
女「男さんは今日どうするんです?」
男「俺は……幽霊とかに詳しい人とかにあたってみるよ」
女「そうですか……では、お気をつけて」
男「おう、漁っても何も出てこないぞ」
女「もうしませんよ」
男「……じゃあ行ってくる」
ーファミレスー
男「……というわけなんだ」
友「……あの子ねぇ。悪いけど、連絡先分からないんだ」
男「あのお前が?」
友「いや、俺達の小学校の連中、地区の関係でほとんど○○中に行っただろ? そこの奴らなら分かるんだけど……」
男「……そういや別の学校行ったんだっけ。困ったなぁ…」
友「小学校でもそんなに仲が良かったわけじゃないし…」
男「まあ、結構浮いてたからな」
友「それよりさ……」
男「ん?」
友「お前、その幽霊の言う話、信じてるの?」
男「……別に、信じちゃいねーさ」
友「なのに家に入れてやってるわけか。お前も変わってるよなぁ。それとも、なにか下心があったとか」
男「そんなんじゃねーよ……それじゃ俺そろそろ帰るよ。付き合わせて悪かったな」
友「俺も色々あたってみるよ」
ー帰宅ー
女「あ、お帰りなさい。何か分かりましたか?」
男「いや、そいつの連絡先分からなくてさ。友人にも聞いたんだけど、そいつも分からないみたいで」
女「そう……ですか」
男「まあ、色々と調べてみるよ。で、そっちは何か思い出したりしたか?」
女「いえ……特に思い出したことは……」
男「そうか……まあ友人も他をあたってくれてるみたいだし、もう少し気長に待つか」
女「あ、今日は一緒な布団で寝ますか?」
男「寝ない」
ー翌日ー
友「男ー、いるかー?」
男「……なんだ、こんな早くから」
友「いや、あの件の女子は見つからなかったけどさ。役に立つかもしれない人を連れてきたんだ」
男「役に立つかもしれない人?」
女B「……久しぶり。覚えてる?」
男「あ、ああ! 女Bか! 久しぶりだな」
女B「本当、久しぶりね」
男「とにかく、二人共上がってくれ」
女B「……そこにいるのが、話題の幽霊?」
女「はじめまして。幽霊です」
男「自称だけどな」
友「……なるほど。男が家に入れた理由も分かるな」
男「……どういうことだ」
友「いや、なんでも」
男「で、なんで女Bなんだ?」
友「女Bって、あのオカルト女子と小学校時代の友人だからさ」
男「そ、そうなのか?」
女B「そうよ。オカルトの話も少し聞いたことがあるわ」
男「へぇー。というか、それならオカルト女子にも連絡とれるんじゃないか?」
女B「卒業してすぐはよく遊んだんだけどね。受験とかで忙しくなってからは全く。今は何してるんだろうね…」
女「それで、何か分かりましたか?」
女B「ええ、そうね…」
女B「私が読ませてもらったオカルトの本にも、同じようなことが書いてあったわ。壁はすり抜けられない、とか」
友「へえ! じゃあ本当に幽霊なのか?」
女B「まだ断定はできないけどね。それで……」
女「それで……なんですか?」
女B「この子が本当に幽霊なら、その『したいこと』を成し遂げたら成仏できる。はず」
男「でも、『したいこと』が分からないんじゃな
コメント一覧
-
- 2015年07月18日 23:09
- 実体もあるし人にも見えるって…幽霊設定である必要あったの?
-
- 2015年07月18日 23:45
- ※1
女の魂が作り出したものっていってるし幽霊みたいな別の存在だったってだけでは?
完全に幽霊って設定じゃないんだろう
スポンサードリンク
ウイークリーランキング
最新記事
アンテナサイト
新着コメント
QRコード
スポンサードリンク