127 名前:水先案名無い人 投稿日:05/01/14 01:18:20 ID:MEqzM2JC
>>125
母はアル中だった。いつも家は汚かった。父は仕事から帰ると家事をしない母を殴っていた。
怒鳴り声が聞こえないように子供部屋に閉じこもった。
それでも聞こえるから押入れの布団を引き出して毛布に頭からくるまっていた。
ずっと耳をふさいでいた。母の泣く声が耳にこびりついていやだった。
 押入れのドアがゆれた。小さい隙間からのぞくと姉がいた。
姉は何も言わずにこげた卵焼きののったお皿を差し出した。
まだ小学二年生だった姉が自分の為に卵焼きを焼いてくれた。
 外はこげて中はまだ生で、油くさいし、すごくおいしくなかった。
けど両親は自分達の不幸さに自己陶酔しているだけだったし、
食事のことは頭になかったらしくて涙を流しながらそれを食べた。

 あれから20年。母は15年前に死んだ。父は再婚して居場所がなくて一人暮らしを始めた。
とっくに遠方に嫁いだ姉の所に結婚式以来数年ぶりに会いに行った。
 突然夜遅くにやってきた自分を姉は快く迎えてくれた。
何もないけどといって簡単な手料理を作ってくれた。
そのなかには卵焼きもあった。すごくおいしかった。
自分が幼稚園のときのあのまずい卵焼きを思い出した。
 今考えればまだ小学二年生の姉が自分のために一生懸命卵焼きを作ってくれたのだ。
自分だって悲しいはずなのにいつも自分に優しかった。
涙が止まらなかった。姉はびっくりしてたけど何も言わなかった。
 母親が死んでも悲しくなかった。これで家が酒くさくなくなると思った。
父親が死んでも悲しまないと思う。きっと自分は親不孝だと思う。
 でも姉にはずっと生きていて欲しい。旦那にも幸せにしてほしい。
 親孝行はする気になれないけど姉にはたくさんお礼がいいたい。
結局朝一番の飛行機で帰ってきた。
 姉は帰るときまで何も聞かなかった。姉に言うのはてれくさいので何も言ってない。
でも誰かにいいたいからここに書いた。
いつか照れずに本人にも言いたい。
姉は自分にとって世界一の姉ちゃんだ。