初めまして。ライターをしております、ボニー・アイドルと申します。
テレビで辛坊治郎を見ると、“辛抱、遅漏”と脳内変換し、「辛抱してるのは遅漏じゃなくて早漏の方だよ!」と憤ってしまうのはもちろん、ぼくが早漏気味だからだ。
三こすり半とは言わないが、腰を振るBPMが170(太鼓の達人でいえばジュディマリの「そばかす」)ぐらいになって、相手のあえぎ声も徐々に高まってきたなという矢先に暴発してしまうことがほとんど。それならテンポを落とせばいいのだろうけど、トップまで上がったギアはそう簡単に高速ピストン運動をやめようとしない。
「え、もう終わり?」
言葉には出さないものの、あまりにもあっけない幕切れに相手は拍子抜けの表情。
こっちだってなんとか射精を遅らせ、相手を満足させ、できることなら同じタイミングで絶頂を迎えたい。男なら誰しもそう思うもの。目には見えないけど、ぼくだって一応の努力はしているのだ。その努力とは……
自分にとってエロからもっとも遠いイメージを思い浮かべることによって気をそらす、である。
小学1年の頃だったか、ぼくは「ドラゴンボールカード」欲しさに親のタンスから千円をガメたことがある。それまでは息子に手を挙げることなどなかった父親だったが、盗みが発覚するやいなや家中ぼくを追い回し、ぶん殴った。
その時、父親が見せた怒りと悲しみに満ちた表情。
ぼくはそれを思い浮かべると、
「マズい、イキそうだっ!」
となってからも、1分ぐらいは堪えることができる。
今回、友人や同業者、飲み屋で隣の席になった男たちに話を訊き、このイキ急ぎを防ぐエロブレーキ機能を持った映像を集めてみた。イクのを我慢している男の頭に駆け巡る走馬灯は、実に多種多様だった。
■ 「父親の全裸」(20代後半・飲み屋で会ったバンドマン)
ぼくと同じ「父親」という答えだが、ブレーキに至る過程はまるで違う。彼はオヤジの素っ裸=自分の未来の姿のような気がして、射精へのブレーキがかかるらしい。決して、オヤジのタマキンをイマジンして自分のふるさとに思いを馳せているのではないとのこと。
■ 「おばあちゃんの部屋」(50代・西荻窪の居酒屋店主)
自分ちの近くに住んでいたおばあちゃんの部屋、それも「畳の縁の模様を思い出す」というピンポイントな意見だった。ノスタルジーには射精を抑制する効果があるのだろうか。店主の奥さんが隣にいながらの調査だったので、図らずも今後の夫婦生活の向上に一役買ってしまった感がある。
■ 「臨終間際のおじいちゃん」(30代・オモコロ編集長原宿さん)
やはり、おじいちゃん、おばあちゃんネタはテッパンのようだ。原宿さんは小さい頃から自分をかわいがってくれたおじいちゃんが病院のベッドで酸素吸入器をつけている姿を思い出し、刹那のあいだに性と死を交錯させるのだと言う。ご先祖様は、天国で自分がエロブレーキに使われていることも見守っているのだろうか。
■ 「みさえ」(20代・本屋で働く20代男子)
『クレヨンしんちゃん』のみさえである。大人向けマンガだった連載初期の頃を知るぼくにとって、みさえはけっこうイイ女で、エロブレーキとは真逆のイメージなのだが、「それすら通り越して女として見れない」らしい。
■ 「仕事」(30代後半・某百貨店SE)
「これといって決めてないけど、あえて挙げるなら仕事のことかなァ」という返事だった。同時に、イキそうになったら足の小指に力を入れて堪えることもあるという。どうでもいいことだが、「職業・SE」の人は名刺に“X”を付け足して遊んでいるのでないかと疑ってしまうのはぼくだけだろうか。
■ 「壁掛け時計を見る」(20代後半・総務)
時計を見て、「挿入してからまだ1分も経ってないよ」と焦るのではなく、数字盤を見ながら四則演算を試みるらしい。冷静になる効果が