広島大学が、わずか数分で長さ20mの橋がかけられる「モバイルブリッジ」の架橋および通行試験を実施、成功しました。
モバイルブリッジは基礎工事が不要なうえ少人数で短時間に設置が可能。災害で橋が流された集落などに物資を供給するといった活用に期待がかかります。
モバイルブリッジは、広島大学の有尾一郎助教授と数社の企業による産学共同研究プロジェクト。通常、災害で橋が流されたという場合は、設置に数日かかる鉄骨製の仮設橋が組まれたりします。一方、緊急度が高い場合は自衛隊への要請によって07式機動支援橋や92式浮橋などが用意されることもあります。ただこれらは数十トンの重機も通れる反面、設置にはトラック数台の資材にくわえてそれなりの作業人数が必要となります。
モバイルブリッジの場合は、折りたためば 5.8 x 3m ほどの大きさになるため、トラック1台で運搬できます。さらに別途クレーンが必要ないため簡単に川岸へ下ろせるため、わずかな人員で設置が可能。最新のバージョン 4.0 では橋の長さが20mにまで伸び、オペレーター1人で橋を渡すことが可能となりました。
設置に必要な時間はトータルで1時間あまり。シザーズ構造で伸縮する橋の本体部分に限れば、わずか5分ほどで対岸に届きます。
シザーズ構造はその強度も高く、4トン以下の自動車が通行可能。ただ構造上、橋の骨組みがトンネル状になっているため、車高が1995mmを超える背の高い車の場合は通行できません。たとえばトヨタハイエースの場合は標準ボディなら大丈夫ですが、ハイルーフ仕様は全高が2mを超えるため通れません。
最近はゲリラ豪雨や爆弾低気圧、超大型台風などといった暴力的とも言える大雨により、各地で橋が流されるケースが増えています。特に過疎化した地方の集落では、その地に通じる橋が1本しかないということもざらにあり、そうした場所でこそモバイルブリッジは活躍するはずです。ただ残念なことに、モバイルブリッジの実用化の時期はまだ決まっていません。