195 :おさかなくわえた名無しさん :04/04/09 00:51 ID:ES5bqBQS
一週間前、ずっと一緒だった猫が死んだ。
俺が小学生の頃、下校中に道に捨てられていたのを見つけた。
手のひらに乗るほど小さくて、今にも死にそうな声で鳴いていた。

家に連れ帰ってミルクを飲ませた。一生懸命ミルクを飲む姿が愛らしかった。
親と相談して家で飼う事になって、すごくうれしかった。
名前を付けるのに一週間くらい掛かった。付けた名前は「さんご」。三月五日に会ったから。

さんごはオッドアイだった。左目が金、右目が青だった。きれいな目だった。
さんごは人懐こかった。いつも俺の部屋か、居間にいた。
さんごは賢かった。自分でドアを開け、部屋に入ることが出来た。
さんごは甘い物が好きだった。買っておいたケーキを食べられた事もあった。
さんごは暖かかった。寝る時は俺の上か、腕まくらで寝ていた。

俺の青春はさんごと一緒だった。
俺の傍にはいつもさんごがいた。
つらい時も、楽しい時も、悲しい時も、うれしい時も、
いつも近くに寄ってきて、そのきれいな目を見せてくれたんだ。


196 :おさかなくわえた名無しさん :04/04/09 00:52 ID:ES5bqBQS
さんごが居ない生活なんて考えられないほど、さんごの存在は大きかった。
だから、電話でさんごが動かなくなったって聞いた時、たちの悪い冗談だと思った。

あわてて会社を早退して動物病院に走った。
俺が到着した時、さんごは既に逝っていた。
自然死、老衰だと獣医は言った。
さんごは眠っているようだった。
あの目はもう見れないのか、と思った時、俺は泣いた。

さんごは幸せだったろうか。
さんごを埋葬し、使っていた食器をぴかぴかに磨いて墓標に添えた。
どうしようもなく悲しくなり、また泣いた。
しばらくして、初めてお別れを言った。

どこかで猫の鳴く声が聞こえた気がした。