173 :名無しさん@3周年 :03/06/03 01:47 ID:W9wubrLe
3年前、俺の会社がいよいよ危なくなったとき、俺の上司に人員整理役が
廻ってきた。彼は、当初会社の命令に従って対象者の選別などを
しているように見えたが、やがて数日間思い詰めたようになり、会社を辞めた。
俺は「2人も子供がいるんだし、何も辞めることはないだろう」と説得したが、
聞かなかった。俺は彼を慕っていたが、そのときの彼が俺の心の内を
見透かしたようにニヤニヤ笑っていたことに、少し腹が立った。

彼の後、俺に白羽の矢が立った。第一段階として5人切れと言われた。
リストラ候補には、俺を慕ってくれている奴の名前もあったし、俺を可愛がって
くれたオッサンの名前もあったが、俺をいじめた上司や仲の悪い奴も
5人以上含まれていた。でも俺は何だか面倒くさくなって、1人も切らずに
会社を辞めた。入ろうと思ってもそう簡単に入れないレベルの企業だったが、
何の未練も無かった。後輩が「2人も子供がいるんだし、何も辞めることは
ないだろう」と説得したが、俺は聞かなかった。

会社を辞めた日、帰宅して家族に会社を辞めたことを伝えた。このご時世に
半ば衝動的にこのような行動を取ったのだから、相当非難されることを
覚悟していたが、誰も俺を非難しなかった。俺は、どうしようもなくデキの悪い
バカ息子と、何かと反抗的なバカ娘に感謝し、泣いた。

その後、何とか地元の町工場に職を見つけた。社長の人柄なのか、
会社の雰囲気もいい。ストレスが無くなったせいか、酔って帰って家族に
当たり散らすようなことも無くなった。休日も家族揃って外出することが多くなった。
リストラ候補だった後輩数人とは今でも交流が続いている。彼等は、当時
自分が候補だったことを知っていたらしい。

苦労して得た職を失って、収入も半分になったが、それと引き換えに俺は
本当の幸せを手にしたと、今でも信じている。