八幡「なんだ、かわ……川越?」沙希「川崎なんだけど、ぶつよ?」【前半】
- 2015年08月02日 21:40
- SS、やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
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八幡「やめてください死んでしまいます」
沙希「あんたが名前間違えるからでしょ」
八幡「それより何か用じゃないのか?」
沙希「そうだった、あんたにまた依頼があるんだけど」
八幡「依頼なら雪ノ下に頼めよ」
沙希「あんたにしか頼めない、個人的な頼みなの」
八幡「めんどくせえ」
沙希「答えは『はい』か『YES』なんなら『承知しました』でもいいよ」
八幡「断る権利ねえじゃねえか」
沙希「んじゃ付いて来て」
八幡「なんなんだ一体」
八幡「どこに向かってるのか知らねえけど依頼内容くらいは教えてくれても良いだろ?」
沙希「そうだね。前もって言っておかないといけないか……そ、その、あたしの彼氏になって欲しいんだけど!」
八幡「は? …………はああああ!?」
沙希「か、勘違いしないで! フリだよフリ!」
八幡「え? あ、ああ」
沙希「実は最近ちょっとしつこく言い寄られてる相手がいてさ、その、断るのに『もう彼氏がいるから!』って言っちゃって……」
八幡「ああ、お前外見いいもんな、可愛いっつーか綺麗系だけど。モテるのも大変だな」
沙希「っ……また、あんたはそういう事を平然と……そ、それでしばらく彼氏のフリをしてほしいんだけど……」
八幡「なんで俺に依頼するんだよ? お前なら俺なんかより全然良い男に頼めるだろ」
沙希「こんなこと頼める知り合いなんかいないよ」
八幡「そういやお前もぼっちだったな……まあ困ってるみたいだし俺なんかでいいなら構わないが」
沙希「ほ、ほんと!? もうキャンセルは効かないよ!?」
八幡「有無を言わさず了承させようとしといて何を今更……」
沙希「う……だってこんなにあっさり引き受けてくれるなんて思わなくて……じゃ、じゃあしばらくの間頼むよ」
八幡「へいへい。んで、期間は?」
沙希「とりあえず一週間くらいでいいかな」
八幡「は? そんなもんでいいのか? いや、さっさと終わるに越したことはないが」
沙希「相手はたぶんそこまで本気じゃないからね、無理だってわかったらすぐに対象が移るさ。以前他の女子に声をかけてるのも見たし」
八幡「可愛いやつに手当たり次第声をかけてんのかそいつは……」
沙希「か、かわっ……コホン、じゃあ早速あんたを見せに行くから」
八幡「え、今からか?」
沙希「『放課後に紹介する』って言ったからね。だからまあ……ちょっと強引だったのは謝る」
八幡「いいさそのくらい。行こうぜ」
八幡「……なんかすげえ悔しがってたなあいつ。『何でこんな野郎に!』みたいな顔をしてた。いや、気持ちは分かるが」
沙希「そこはわかっちゃうんだ……」
八幡「だって俺だぞ? どうやっても釣り合いが取れてねえよ。いや、俺なんかに釣り合う女がこの世に存在するかどうかも……」
沙希「比企谷!」
八幡「うわっ、な、何だよ?」
沙希「あまり自分を卑下しないでよ。少なくともあたしはあんたの良いところをいっぱい知ってるし、釣り合いが取れてなくなんかない」
八幡「お、おう」
沙希「だから自分のことを『なんか』って言わないで。周りが何と言おうとあたしは比企谷を充分良い男だと思ってるから」
八幡「そ、そうか……その、ありがとうな」
沙希「う、うん」
八幡(川崎は俺を励ましてくれてるだけ、だよなきっと……)
沙希(あうう、勢いに任せてあたしは何てことを……)
八幡「……で、今後はどうするんだ? あのフられ野郎がお前に興味をなくすまでは依頼が続くんだろ」
沙希「フられ野郎って……まあそうだね、しばらくはあいつの前でだけでもそれっぽく振る舞ってくれるとありがたいんだけど」
八幡「それっぽくって、その、恋人同士みたく、ってことだよな?」
沙希「う、うん、無理に、とは言わないけど」
八幡「いや、一度引き受けたんだ、やるだけやってみるさ。でも期待はするなよ? 今までそういうことなんてゲームか妄想でしか経験ないんだからな」
沙希「あたしだって経験ないよ。その、ゲームとかだと何をするの?」
八幡「えーっと、一緒に登下校したりメシ食ったり、休日にデートしたり、かな。まあ友達がもっと仲良くなった、くらいの感覚でいいんじゃねえか? 俺友達いないけど」
沙希「デ、デート…………でも休日にあいつと出くわすことはないだろうしそこまでは……というか普段もそこまで気にする必要はないのかな」
八幡「でも慣れておかないといざ本番って時に戸惑うかもしれないぜ。ソースは文化祭の劇で予行演習に呼ばれなかった村人Aの俺」
沙希「なんで役割与えられてるのに呼ばれないのさ……じゃ、じゃあ適当に頼むよ。悪かったね、部活あるのに呼び出しちゃって」
八幡「いいさ、これも依頼の一環だ。雪ノ下だってちょっと遅刻したくらいでそこまで怒ったりしないだろ」
沙希「そうか、前もってあっちにも言っておくべきだったね。ホントごめん、あたしの名前出しちゃっていいから」
八幡「まあその辺は上手くやるさ。んじゃそろそろ行くわ」
沙希「うん、あたしは図書室寄って帰るから。またね」
~奉仕部~
八幡「うっす」ガラガラ
結衣「ヒッキー遅いよ!」
雪乃「遅れるならその連絡くらいするべきでしょう。遅刻谷くんはその程度の配慮もできないのかしら?」
八幡「あー、悪かったな。ちょっと色々あってさ、依頼を引き受けていたんだ」
結衣「え、依頼? ヒッキーに? ヒッキーが?」
八幡「疑問符多過ぎだろ……まあ相談を受けたんだが女子のお前らには言いにくい内容だったからな、俺個人に依頼が来たわけだ」
雪乃「そう、とすると色恋沙汰関係かしら? 確かにあなたなら他に漏れる心配は少ないものね」
八幡「それは俺の口が固いって意味だよな? 言いふらす相手がいないって意味じゃないよな?」
雪乃「そんなの決まってるじゃない」ニコッ
八幡「いい笑顔で曖昧にしようとするな。いややっぱりいい、何も言うな」
雪乃「あなたには言いふらす友達がいないものね」
八幡「言うなっつっただろ! ……まあそんなわけだから依頼内容は一応秘密な」
雪乃「まああなたならともかく依頼人のプライバシーをおいそれと侵害するわけにはいかないわね」
八幡「おいこら俺ならともかくってどういうことだ……まあ難しい内容でもないしお前らの手を煩わすことはないから」
結衣「うん。でも何かあったら言ってね?」
八幡「ああ」
平塚「全員揃ってるか?」ガラガラ
雪乃「平塚先生、ノックを」
平塚「おお、すまんすまん。ところで今晩急遽近隣学校の若手教師の集まりが催されることになってな、私もそちらに行かなければならなくなった。面倒くさいが若手だからな! 私は若手だから仕方ないのだ! どんな出逢いがあるかもわからんし一度帰宅して気合いを入れた格好にしないといかん」
結衣「先生……」
八幡(早く誰か貰ってあげてください)
平塚「そんなわけで今日は部活はもう終わりでいいぞ。鍵は私がここで預かろう」
雪乃「ではお願いします」
結衣「ゆきのん一緒に帰ろー。ヒッキーも昇降口まで行こ」
雪乃「ええ」
八幡「へいへい」
結衣「でさー」
雪乃「そうなのね」
八幡(廊下で前を行く二人が楽しそうにお喋りをしている。あれ? 俺いらなくね?)
八幡(一緒にいる意味あんのかよ、って思ったがそれは部室でも同じことでしたね)
八幡(まあぼっちなんて慣れてるし別に……って、あそこに歩いてるのは川崎?)
八幡(図書室への用事が終わったのか。まあいちいち声をかける必要も……げっ、グラウンドにいるのあのフられ野郎じゃねえか。しかも目が合っちまった!)
八幡(ここで川崎に声をかけないのは恋人として不自然すぎる……雪ノ下達がいるが仕方ない、あとでワケを話すとして今は川崎だ)
八幡「おーい川崎、一緒に帰ろうぜ!」
結衣「えっ!?」
雪乃「!?」
川崎「比企谷? あ……」
八幡(あいつに気付いたみたいだな)
八幡「自転車取ってくるから校門で待っててくれよ」
沙希「あ、いや、一緒に行くよ」
八幡「そっか、よし行こうぜ。じゃあな雪ノ下、由比ヶ浜」
雪乃「」
結衣「」
八幡(二人とも固まってやがる……ま、当然だろうな)
沙希「いいのかい、二人を置いて来ちゃって」
八幡「あそこであいつらに構ってる方が不自然だろ」
沙希「でも二人にはちゃんと説明してないんでしょ、勘違いされるんじゃない? その、あたしたちがそういう仲だって」
八幡「まあ明日あたり適当に説明しとくさ、川崎が俺なんかとそういう……」
沙希「だから! なんかって言うのは禁止!」
八幡「お、おう」
沙希「それと勘違いってのはあたしじゃなくてあんたのことなんだけど」
八幡「ああ、どんな弱みを握ったんだとか罵倒される姿が目に浮かぶぜ」
沙希「もう……わざと言ってないかい?」
八幡「?」
沙希「ま、いいや。説明するのはいいけど演技ってのは外に漏れないようにしてね。あいつの耳に入るとやっかいだし」
八幡「ああ、その辺は言い含めておくさ。俺は言いふらす相手もいないが」
八幡「そういえば川崎も自転車通学じゃなかったか? さっき歩いて校門に向かってたけど」
沙希「ああ、実はあたしの自転車壊れちゃってね。バイトでもして新しいのを買おうかと思ってるんだけどしばらくはバスか徒歩だよ」
八幡「そうなのか……よっ、と。どうする? 今なら妹限定の後ろの席に乗せてやってもいいぞ?」
沙希「シスコンめ……いや、いいよ。学校を出てちょっと先まで一緒にいれば大丈夫でしょ」
八幡「そうか、なら……悪ぃ、やっぱり後ろに乗ってくれるか?」
沙希「え?」
八幡「校門のとこで雪ノ下たちが待ち構えてやがる。たぶん俺達に話を聞こうとしてるんだろうが……あそこじゃマズい。突っ切るから」
沙希「わ、わかった……よいしょ、と」
八幡「よし、ちゃんと掴まっとけよ」
沙希「うん」ギュ
八幡(う、柔らかいモノが背中に……平常心平常心)
沙希(比企谷の背中……大きくてあったかいな)
八幡「じゃ、行くぞ」
沙希「ん」
八幡(漕ぎ出すと雪ノ下たちはこっちに気付いたようだが、構わずに突進だ)
八幡「話は明日だ! じゃあな!」
雪乃「比企谷くん!」
結衣「ヒッキー!」
沙希(あたしは眼中にないんだろうか? ……いやまあ当然といえば当然か、だって……)
八幡「ふう、脱出成功だな。ついでだしこのままお前の家まで送ってってやるよ」
沙希「いや、それはさすがに悪いよ。確かあんたんち