旅人「モンスター娘に殺される話」
旅人「聞きたいか?」
旅人「聞きたくなければ、回れ右。聞きたいのなら……そうさな」
旅人「お代は、話が終わってから、頂こうか」
旅人「さて、では本日は何を話そうかね」
旅人「マンドラゴラ娘と仲良くなって、カラオケに連れてかれて殺される話がいいか」
旅人「それとも、ケルベロス娘と交際していたら、三つの首どれを愛しているかケンカになり、結果三つ股かけたとみなされ殺される話か」
旅人「あぁ、あれはいい話だぞ」
旅人「ゴーレムってのは、額のemeth(真実)の文字で使役し、不要になれば最初のeを消してmeth(死)とすることで崩壊させるのだが」
ゴーレム娘「……マスター。朝食、できました」
ゴーレム娘「おいしいですか」
ゴーレム娘「土の味がする……?」
ゴーレム娘「…………ごめんなさい」
ゴーレム娘「……? 褒め言葉? ……人間の言葉、難しいですね」
ゴーレム娘「マスター。荷物持ちます」
ゴーレム娘「いえ、こう見えて力持ちなので」
ゴーレム娘「荷物を持つのは男の役目……? ……どうしても荷物を持たせてくれない気ですか」
ゴーレム娘「だったら……」
ヒョイッ
ゴーレム娘「荷物を持ったマスターを、ボクが持ちます」
ゴーレム娘「下ろしてくれ? 知りません。家までずっと、ボクの肩に乗っていてください」
旅人「仲睦まじい主従。しかし、ゴーレムとは次第に大きくなるモノ。そしてその限度はない。……故に」
ゴーレム娘「よいしょ……」
ゴンッ
ゴーレム娘「あう。……頭ぶつけました」
ゴーレム娘「…………玄関が壊れました」
ゴーレム娘「……これ以上大きくなると、見上げられたらスカートの中身が……」
旅人「大きくなったゴーレムを壊すには、何らかの命令で、膝まづかせてeを消せばいい。そう……たとえば」
ゴーレム娘「……靴ひもを、結んで欲しい……?」
ゴーレム娘「……」
ゴーレム娘「分かりました」
ゴーレム娘(……大きくなったボクの手で、靴ひもなんて結びづらい)
ゴーレム娘(…………消され、ちゃうんだ)
ゴーレム娘(ボクが……大きくなりすぎたから)
ゴーレム娘(仕方ないよね)
ゴーレム娘(これが、ゴーレムとして生まれた、ボクの)
チュッ
ゴーレム娘「……え? 今、マスター……ボクの額に、何を」
旅人「主人は言う。『キミを消すことなんてできない……愛してるから。それがemeth(真実)さ』」
旅人「ん? で、なんで死ぬのかって?」
旅人「嬉しさのあまり力いっぱい抱き着いてきたゴーレム娘に粉砕されて死に至る」
旅人「なに、不満か?」
旅人「だったら……座敷童娘と結ばれるも座敷童娘の見た目の幼さから社会的に殺される話とか」
旅人「あと、ヤンデレのスライム娘が、どこに逃げても隠れても液状化して追ってくる話」
旅人「人魚に捕まって、永遠を共に生きる為に真珠貝の中に閉じ込められ、真珠にされちまう、なんてのも」
旅人「…………贅沢な客だな。んじゃあ、今日はとっておきの話をしてやろう」
旅人「そう。あれは…………何十年前か。時節は、今より少し涼しい頃……」
青年は、街道の脇に立っていた。人通りはない。
重たい荷物を足元に下ろし、陽射しを、手で遮る。
その視界に一つの影が現れるのと、車輪の音が聞こえだしたのは、ほとんど同時だった。
続けて、蹄の音。
二頭の馬に引かれた荷馬車。ゆるりと進んでくるそれは、やがて青年の目の前で止まる。
青年が、手を挙げて止めたのだ。
「どこへ行くのです」
青年は訊ねる。
「……」
馬車の手綱を握る大柄な男は、細く鋭い目の端で、青年を一瞥。
が、応えない。
「……あの」
「街道を行くんだ。行く先なんて決まってんだろ?」
青年が再び同じ問いを投げかけようとしたとき、声は、荷台から。
「この道はうねりながらも一本道。一山越えた街しかあるまい」
顔を出したその男は、青年よりも、いくらか歳を重ねたか、
落ち着いた雰囲気の旅人だった。
旅人は言う。
「あんたこそどうした。こんなどっち行くにも半端なところで」
苦笑、のような、青年を気遣うような、表情で
「今からじゃあ、街へ行くにも、戻って道沿いの宿に行くにも、日が暮れちまうだろう」
「えぇ、ですから一つお願いを」
「乗せて欲しいってか?」
青年は頷く。
「出会ったばかりで、不躾なお願いではありますが。どうか」
「おーい、どうするー」
旅人は荷台の中を振り返り、呼びかける。
すると中から、声が
今度は女の声がした。
「乗せてやりなよ」
澄んだ氷のような声で
「言うじゃん。ほら、旅の恥は道連れ」
「お前さん、恥じらいなんて連れてないだろ。……まともかく、主人の許しも出た」
旅人が、手を差し伸べる。
「乗れよ」
荷台は、ひどく揺れた。
どうやら車輪がガタついているようだ。
「しかし、よく乗せる気になったよなぁ」
旅人は、女に話しかけた。
女は、動き易いよう改造された鎧を着込んでいる。おそらく傭兵か何かだろう。
もたれかかる荷物の上には、それが彼女の得物か、戦鎚がほっぽってある。
「ここらも最近物騒でしょ。だからさ」
「そうなんですか」
青年は会話に割り込む。それに旅人が応えて
「あぁ、野盗だとか、山賊だとか、うろちょろしてるってな」
「あの山のふもとにある村も、焼かれたばかりだよ」
女傭兵は、来た道の向こうを指さす。
「だから、ここに放置して、野盗に殺されちゃったらさ」
「寝覚めが悪いってか?」
「そう。せっかくのさわやかな朝がね」
「寝起きは常に最悪だろうが」
「もっと悪くなんの」
「あれ以上にか? そいつは勘弁」
「でしょ。だから乗せたの」
二人の会話は、そこで一旦途切れた。
女傭兵はあくびを一つ。荷物にもたれかかったまま、目を閉じる。
「恐ろしいもの、といえばだ」
旅人は、青年に向き直って
「最近ここらにも、怪物の噂があるらしいな」
「怪物……」
「怪物。モンスターというやつよ」
青年は脳裏に浮かんだ名を挙げた。
「ゴブリンとか」
「オークとかな」
旅人も同様に。
「ゴーレムや」
「触手生物」
「炎を吐くドラゴン」
「服を溶かすスライム」
「……」
「……」
旅人が咳払いを一つ。
「まぁ、そーいう怪物の噂が、ここらでも出てきてるわけよ」
「いったいどのような」
聞き返すが、旅人は「さてね」と
「他所では、美しい歌声で海に引き込む鳥女だとか、目ぇ合わすと石にされちまう蛇女だとかいるらしいが」
呆けている青年に、口元で笑み
「女の子の怪物がいいだろ? どうせ殺されるなら」
「そうですか?」
「謎かけをしてくる獅子の女というのも聞いたことがある。……朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足。声は一つ。四本足のときに一番弱い生物は。ってな。……答え、分かるか」
青年は、しばし、考えるように首をひねり
「いいえ」
と。
「答えはな」
旅人は立てた親指で、クイと、自らをさす。
「俺だよ」
「……?」
「朝は二日酔いで這いずりながら布団をでて、昼はちどりあしながら二足歩行。夜は」
さも得意げな表情で
「ここにもう一本、美しい貴女のための足が……と。これで怪物ちゃんもイチコロよ」
「……」
「何か、言いたげだな」
「いいえ」
旅人の怪物談義は続いた。
複数の獣が合成されたような怪物。冥府から蘇りし不死者。
人から獣、あるいは獣から人となった半獣人。
そのどれもが、悲劇にしろ、喜劇にしろ、色恋の絡んだものであったが。
「そこの荷馬車、停止せよ」
声が呼び止めたのは、ちょうど、ユニコーンの雄が交尾した相手を殺すか否か、という話の佳境。
「荷物をあらためさせてもらう」
検問。気付けば、もう道のりを半分進んでいた。
旅人は、荷台の板壁をコンコン、とやり
「よろしく」
と気だるげに。
馬車が止まる。
鈍い音が、一つ。二つ。三つ。
馬車が動き出す。
止める声はない。青年が戸惑いながら荷台から顔を覗かせると、通り過ぎる道端には役人らしき者と、兵士が二人、横たわっていた。
「そういや、腹減ってきたな」
旅人はふと思い立ったように
青年に手を差し出す。
「出せよ」
「は……?」
間抜けな声が出た。旅人は構わず言う。
「食料、水。それから金目のもん。だな。ほら出せ」
「なにを」
「言っただろう」
旅人は、目を細める。
「野盗には気をつけろってな」
「衣類その他身
コメント一覧
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- 2015年08月04日 22:29
- 読み難い。
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- 2015年08月04日 22:31
- なげえ。4、5レスで纏まる話やな
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- 2015年08月04日 22:42
- ゴーレムまでで終わったら良作やった
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- 2015年08月04日 22:47
- 好き
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- 2015年08月04日 22:52
- よくわからないとこはあるけど、雰囲気はかなり好きだ
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- 2015年08月04日 23:22
- うーん…
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- 2015年08月04日 23:26
- 超音波ってことはコウモリの半獣人だったのかね
大男も何か?
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- 2015年08月04日 23:27
- 「魔物とセックスした」に相当似てる
どっちが先かはわかんないけど、こっちの方が面白くないわ
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- 2015年08月04日 23:33
- 魔物娘は家畜奴隷にして汚し尽くしたい。
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- 2015年08月04日 23:36
- ん?魔物とやったやつと同じ人が書いたやつ?
今度は男側がいろいろやられると思ってたけどなんかこれじゃない感がすごい
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- 2015年08月04日 23:39
- 何か読みづらい
背景というか描写が連想しにくいわ
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- 2015年08月04日 23:56
- 普通にいい話?
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