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VAIOが大胆な事業計画発表、ロボットなど新事業をPCと同規模へ。VAIOフォンは反省 - Engadget Japanese


VAIO株式会社が、2017年度までの事業計画を発表しました。PC事業は現状の方針を継続しつつも、PC以外の新規事業を広げ「2017年度にはPC事業と新規事業の規模を1対1としたい」という大胆な計画を打ち出しています。



これは、新社長に就任した大田義実(おおたよしみ)氏による就任挨拶を兼ねたプレゼンテーションで語られたもの。これだけで終われば正直なところアグレッシブすぎる印象を受けるところですが、太田氏は続けて新記事業の核として位置づけているEMS(電子機器の受託生産)では、富士ソフトがDMM.make ROBOTSで販売中のロボット『Palmi』(パルミー)の生産を担当している点を紹介。

「新規事業」は机上計画ではなく、一部は既に動き始めている点を合わせて披露しました。


実はEMS事業に関しては、現状で既にロボットのみならずFA機器やゲーム機などの製造も始まっており、これらの製造に関して大田社長は「新規事業の有望分野」と紹介しました。

とくにロボット製造に関しては、同社の安曇野工場にはソニー時代にAIBOを手がけた技術者やそのノウハウがある点、そしてPCでの強みとしている高密度実装と高効率放熱技術が活かせる点から、今後はさらに注力していくと強調。

パルミーに関しても、単なる生産担当だけではなく、量産ラインの立ち上げから協力している点、さらに富士ソフトからは成功と評価されており、次世代モデルでの協業も進めているという点もアピールされました。



一方、3月に日本通信との協業でVAIO Phoneを発売したことから注目されていたスマートフォンやタブレットに関しては質疑応答にて回答。「通信事業への進出としては一定の評価をしている。事業規模的には他社との協業は必要だが、今後手がける場合はもっと当社の主体性を強める。自社開発製品も検討している」とコメントしています(VAIO Phoneに関しては発表当時記事を参照ください)。

日本通信とVAIO株式会社、VAIO Phone を正式発表。一括購入価格は税別5万1000円

この回答自体は「VAIOオリジナルスマホの脈アリか?」と思わせるものですが、会場で話を聞いていると、コメントは先述したように質疑応答の中で出るに留まり、またスライド資料もなかったところから、ちょっと印象が異なるものでした。少なくとも現状では、新規事業としての優先度は決して高くはなさそうに見えます。



一方で現在の中核となっているPC事業に関しては、軌道に乗りつつあることもあってか、基本的な方針を継続する点を繰り返し強調。現在の柱となっているVAIO Zシリーズなど高級モデルを中心とし、安易な低価格モデルは投入しない(数は追わない)点など、従来通り進めていくとの方針を打ち出しています。

一方で上図右上には、現状のVAIOにはない「デスクトップPC」があるのが隠れた注目点です。大田社長からの説明はされず、出席していた開発者に聞いてみたところ直近の予定にはなさそうという印象を受けるものでしたが、将来的な参入は十分ありそうです。

ただしノートPC新モデルという点では、マザーボードなどの変更はしつつも、外装デザインレベルの変更は少なくなるというコメントも出ました。現行のVAIOラインナップはユーザーからのデザイン的評価も高いだけに、そうした点は活かそうという路線のようです。



一方で、販売体制の強化については大きく紹介されました。まず、営業力の強化は今後の課題とし、自社営業部の設立とPCの海外販売開始を発表。



とくに海外販売に関しては既に準備が進んでおり、第一段として米国で10月5日からVAIO Z Canvasの販売を開始すると発表。同機は米国で開催されたAdobe MAX 2014でプレビューを行った関係もあり(下記記事を参照ください)、米国内のクリエイターからの問い合わせが多かったとのこと。

新生VAIOのタブレットPC、プロトタイプがAdobe MAX 2014で初披露



続いてブラジルにて、POSTIVO INFOMATICA社への事業委託を開始する予定と発表されました。こちらはPOSTIVO社がVAIOブランドでPC製造や販売、サービスを行う、いわゆるライセンス契約を中心とした形態。そのためVAIO側としては、着実な収益が見込めるものとなります。

米国とブラジルは(ソニー時代の)VAIOブランドの人気があった市場ですが、今後の展開も、VAIOブランドの人気が高いアジア諸国を中心に拡販予定とのこと。

なお、質疑応答ではブラジル側でのオリジナルモデルはあるのか、という質問がありました。こちらに関しては「設計権はライセンスしないため、ブラジルオリジナルのモデルは作れない」との回答です。また米国での販売台数目標に関しては、当社のスケールにあった規模ですが、具体的な数に関しては出せないという回答に留まっています。



このように事業計画を紹介してきた大田社長ですが、そのラストは「VAIOの持っている資産は活かします」とのコメントとともに映し出された、同社の安曇野工場でした。この写真をラストに持ってきたことからは、これからのVAIOはPCのみならず工場を活かした、EMS事業者としての展開を積極的に進める、という表明にも受け取れます。



こうした取り組みは、良くも悪くもソニー時代、そしてこれまでのVAIOのイメージとは異なるものですが、一方でここ1年ほどのEMS周辺市場を見渡すと、いわゆるMakerムーブメント発祥の企業を中心に、中国での生産コストが上昇している点などから生産委託を見直そうという動きにあります。

小規模ながらも高い生産技術を必要とする企業との協業が継続していけるならば、冒頭に紹介したような、大胆にも思える事業目標も達成可能なのやもしれません。なにより本誌読者としても、結果的に面白いガジェットやロボットが市場に出てくる近道となるのであれば歓迎したい、という方は少なくはないと思います。
ぜひともこうした方向に同社の力が発揮できる展開となるように、ファンの一人としても応援したいと思わせる発表でした。
VAIOが大胆な事業計画発表、ロボットなど新事業をPCと同規模へ。VAIOフォンは反省

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