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弱肉強食が繰り広げられている野生において、肉食獣と獲物に平和な交流が起きることは滅多にない。ところが、エチオピアのグアッサ高原では、草食動物であるオナガザル科のゲラダヒヒがオオカミを飼い慣らしているふしがあるという。
野犬やサーバルがゲラダヒヒを襲う中、捕食者であるオオカミは彼らを襲うことは一切ない。それどころか両者は打ち解け合っていて、仲良く暮らしているそうだ。
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オックスフォード大学のクラウディオ・シレーロ氏によれば、こうした交流は人間が初めて犬を家畜化したときの状況に似ているのかもしれないという。シレーロ氏が長年観察した結果、ゲラダヒヒはオオカミにげっ歯類などの獲物の居場所を教え狩りを助けているふしがあるそうだ。
ヒヒはオオカミを見ても逃げない。オオカミも襲わない
グアッサ高原は海抜3,600mの高地にあり、ここに暮らすゲラダヒヒの群れは700匹になる。長い牙とたてがみのおかげで、果実や種子を食べる草食傾向の割には非常に凶悪な容貌を備えている。
草原にはオオカミの他にもサーバルや野犬なども生息している。オオカミとゲラダヒヒは1、2mの距離にあっても、一度に最大2時間も事実上無関心で過ごすが、猿が自分たちを狙う野犬を見つけたときは一目散に崖まで避難する。
オオカミが群れの中に入るとき、行動を変えて、猿に敵意がないことを示す。通常、オオカミが齧歯動物を探しているときは、ジグザグに走るか敏捷な動きを見せる。しかし、周りにゲラダヒヒがいるときは、狩りの最中であってもゆっくりと穏やかに歩く。
さらに驚くべきことは、オオカミがゲラダヒヒの赤ちゃんに手を出さないことである。赤ちゃんは簡単に捕獲できる美味しい獲物のはずなのにだ。
だが、ルールには例外がある。観察期間中、研究者はまさにこれを目撃した。オオカミの1匹が猿の赤ちゃんを襲ったのだ。慌てた大人のゲラダヒヒがオオカミに殺到し追い払ったため、赤ちゃんは事なきを得た。
霊長類が他の動物と関連を持つ場面は、これまでも観察されてきた。しかし、こうした関係は稀であり、しばしば束の間の出来事である。それとは対照的に、ゲラダヒヒとオオカミとの関係は実に安定している。研究者は、数年に渡ってこうした関係を観察しており、それが終わる気配もない。
オオカミとヒヒが共生する理由
争いが減る以外にも、この共生関係には利点があるのだろうか? 観察からは、2種が一緒にいると、オオカミがげっ歯動物を捕獲する可能性が40%上がることが判明している。
研究者はその理由について、ゲラダヒヒがげっ歯動物を巣から追い出してオオカミが狙いをつけやすいようにしているのではないかと考えている。もしくは、オオカミとヒヒの体の大きさと色が似通っているために、彼らが見間違えてしまうのかもしれない。
また、オオカミが狩りを助けられている一方で、ゲラダヒヒは特に恩恵を受けてはいないようだ。オオカミがいるからといって、他の肉食動物が怯えてゲラダヒヒを襲わないということはないのだ。観察中、大勢のヒヒが野犬に殺されている。
ヒヒがオオカミを飼い慣らす進化の過程?
歴史的にオオカミは別の種の後を追いかけてきた。つまり人間だ。研究者は、オオカミは人間の集落の周辺でおこぼれを頂戴してきたと確信している。攻撃的なオオカミは人間に殺されただろうが、そうでないものは受け入れられ、やがてそのハンターや相棒としての価値に気づいた人々によって家畜化されていった。
オオカミは社会性の高い動物である。またゲラダヒヒも知能が高く、唇を鳴らしてまるで人間が会話をするように抑揚をとりながらコミュニケーションを取っていることも判明している。
Gelada lip smacks and wobbles
もしゲラダヒヒがオオカミに恩恵をもたらし続けているのならば、今後は人間がオオカミを飼い慣らしたように、ヒヒもオオカミを飼い慣らす日が来るのかもしれない。
via:dailymail・businessinsider・原文翻訳:hiroching
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コメント
1. 匿名処理班
アニメ化しよう。
2. 匿名処理班
>>慌てた大人のゲラダヒヒがオオカミに殺到し追い払った
逆にヒヒがオオカミの赤ちゃん襲って食ってそう
たしかヒヒって人間の赤ちゃんも襲うよね
3. 匿名処理班
戦争ばかりしてる人間より平和的だな
4. 匿名処理班
猿の惑星ゼロ〜すべてはここから始まった!はじめての「お手!」〜
Coming Soon!
5. 匿名処理班
ヒヒには「捕食者が1種減る」というメリットが有ると思う
6. 匿名処理班
>>また、オオカミが狩りを助けられている一方で、ゲラダヒヒは特に恩恵を受けてはいないようだ。
ここ読むと逆にオオカミがサルを飼い慣らしているみたいにも思える
7. 匿名処理班
オオカミの軍勢を率いて人間に復讐する気なんだろうな
8. 匿名処理班
「犬猿の仲」は猿の勝利をもって幕を閉じたということか
9. 匿名処理班
いわゆる共生というヤツか
しかしヒヒの方のメリットが襲われないだけというのも何だか…
10.
11. 匿名処理班
おもしろーい!
いぬと人間が仲良しである歴史も、考えられている時代よりもっと昔から深い繋がりがあったのかもね。
12. 匿名処理班
オオカミは自宅警備員じゃないかw
13. 匿名処理班
凶暴なイメージしかなかったけど、草食のヒヒなんかいるんだな。
猿なんかみんな雑食だと思ってた。
14. 匿名処理班
ヒヒが飼いならしているのではなく、オオカミがヒヒの群れを利用してるだけだよねコレ。
15. 匿名処理班
猿は狼を裏切らない
狼も猿を裏切らない
16. 匿名処理班
以前はジャッカルの仲間と思われていたエチオピアオオカミだね
オオカミにしては小型で獲物も小さいから大人のヒヒにはさほど脅威でもないのかもしれない
17. 匿名処理班
ヒヒとげっ歯類のエサが競合している場合、狼がげっ歯類を減らすことでヒヒたちが確保するエサが増えるというメリットがある。
競合していない場合は知らん。
18. 匿名処理班
案外、近くにオオカミがいることを見て
襲撃を諦めた捕食者もいるかもわからんね。
19.
20. 匿名処理班
オオカミと暮らしていない群れと比較しても全く差が無いのかね
普通、捕食者も別の縄張りの個体を見かけたら警戒するもんだけど
21. 匿名処理班
※3 ヒヒによって追い立てられオオカミの餌食になる
げっ歯類の視点からどう見えるか一切考えてない時点で
こういう片側からしか見ないタイプが戦争を引き起こすんだなと思った
22. 匿名処理班
ジャッカルに見えるんだけれど・・・・。
※16
え、これオオカミの亜種とされたの????
23. 匿名処理班
この狼は、自分の事を猿だと思い込んでるんじゃないか?
24. 匿名処理班
ごみ山に住む猿が野良の子犬を無理矢理拉致→最初は嫌がり逃げ出そうとする子犬と乱暴ながら世話する猿達→数ヵ月後、そこには立派に猿達の用心棒として共同生活する犬が…!
こんなドキュメントのワンシーンを見た覚えがある。賢すぎて猿コワイと思ったよ。オオカミを飼い慣らすというのも強ち間違ってないかもしれない
25. 匿名処理班
人類もこうやって徐々に犬との信頼関係を構築してったんだなと想像すると、なんか色々迸るw
26. 匿名処理班
オオカミ?
これエチオピアンジャッカルじゃない?
いや、別名がシミエンウルフだから間違いじゃないか(汗
27. 匿名処理班
「お前らって全然狩り失敗しないよな? いつもいつも良く餌見つかるなぁ」
「ワフフ、私たちにはさるお方が後ろ盾についているのだよ」
28. 匿名処理班
猿の惑星
29. 匿名処理班
「ゲラダ組の親分とは盃交わした間じゃけぇのう」
30. 匿名処理班
これは猿に集団と野犬の集団の間でよく起こることだよね。
猿が野犬の集団から子犬をさらって、番犬にする事例は珍しくない。
31. 匿名処理班
※21
言いたいことはわからんでもないけど話題が飛躍し過ぎというか…
何を怒ってるの?げっ歯類なの?
32. 匿名処理班
猫と人間の関係を考えると分かりやすい
猫は人間のそばにいることで食事にありつける確率が上がる
一方、人間は特に恩恵を受けていないようだ