こんにちは、宇内 一童(うない いちどう)です。
この企画では毎回ゲストの方に出演していただき、その人の「お金を積まれても売りたくないモノ」についてインタビューを行います。
今回インタビューにお答えいただくのは、「NEWSポストセブン」など数々のネットニュースの編集を手がける、中川淳一郎さんです。
中川さん行きつけの飲み屋でビールを飲みながら「売りたくないモノ」についてお話を伺ってみましょう。
売りたくないモノは「大学時代に作ったフリーペーパー」?
- 宇内
- ではさっそく、中川さんの「売りたくないモノ」を見せてください。
- 中川
- はい。これです。
- 宇内
- 世界パワーリフティング選手権……就職活動の鬼……。なんですかコレ?
- 中川
- 大学時代にプロレス研究会に入ってたんだけど、研究会のメンバーと「ベンチプレス軍団山田」っていうサークルを立ち上げて、こういうフリーペーパーを作ってサークルの勧誘をしてたんですよ。
- 宇内
- ベンチプレスやってたんですね。そういえば中川さんの昔の写真見たことあるんですけど、筋肉ムキムキでしたよね。
若かりし頃の中川さん。大胸筋がヤバいことになっている。
- 中川
- そんな思い出話はさておき、本題に入りましょうか。
- 宇内
- このくだり何だったの?
本当に売りたくないモノは「1980〜90年代のアメリカのスポーツ雑誌」
- 中川
- 本題はこっちですよ。高校時代に買ったアメリカの雑誌。NBA(北米で展開する男子プロバスケットボールリーグ)のものが多いね。
- 宇内
- そういえば、中川さんは高校時代アメリカに住んでたんですよね。
- 中川
- そうそう。あ、これ見てください。92年バルセロナオリンピックのバスケットボールアメリカ代表。
左から、ラリー・バード、マイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソン。
- 中川
- 「まさかこの3人が同じチームメイトになるなんて…!」って世界が熱狂したんだよ。「ドリームチーム」なんて言われたんだけど。
- 宇内
- 雑誌をたくさん持ってきてくれましたけど、マイケル・ジョーダンの表紙が多いですね。
- 中川
- それはね、マイケル・ジョーダンが表紙じゃないと売れない時代だったんですよ。あっ、これもすごいですよ。マイケル・ジョーダンがブルズで初優勝したときのフォトアルバム。
- 宇内
- これは記念品じゃなくて、普通にお店で売ってたんですか?
- 中川
- スーパーとかで売ってた。普通のNBAの雑誌だと各チームの戦績が載ってるんだけど、この本はブルズの情報しか載ってないの。ブルズの選手の成績が細かく書いてあって、ファンとしてはたまらなかったね。何度も読んだ。
- 宇内
- 雑誌だけじゃなくて、試合も見てたんですよね?
- 中川
- 年間200試合以上は見てた。あっ、『カルトQ』っていう番組知ってる?
- 宇内
- 知らないですね。どんな番組ですか?
- 中川
- たとえば、缶の一部を見せただけで商品名を当てちゃう缶ジュースオタクとか、そういうオタクを発掘する番組なんですよ。で、アメリカから帰国したころにちょうど「NBAオタク」を募集しててね。「俺ほどNBA見てるやつはいねぇ!優勝できる!」と思って応募したんだけど、番組が終了しちゃったの。
- 宇内
- あぁ……それは悔しいですね。ところで、今回持ってきていただいたアメリカの雑誌は、なんで売りたくないんですか?
- 中川
- 金銭的な価値はないと思うんだけど、もう手に入らないだろうからね。手放したくないんですよ。
- 宇内
- これ、国内のオークションで探し出すのは厳しそうですもんね…。
バスケと野球を見始めたのは「暇だったから」
- 宇内
- 野球の雑誌も持ってきてくれたみたいですが、野球も好きなんですか?
- 中川
- うん、野球も好きだった。ほら、これなんかすごいですよ。88年のメジャーリーグの球団。今のロゴマークと全然違う球団が結構あるんですよ。
- 宇内
- っていうか、他のページが消失してません?
- 中川
- とにかく読みすぎて冊子はどっかいっちゃった。あっ、これもよく読んだ!1988年のメジャーリーグベースボールのイヤーブック。シーズン前に販売されるガイドブックね。
- 中川
- 各チームの前年の成績とか、あとは投手の防御率なんかが細かく載ってるんですよ。日本に馴染みが深い選手だとグリーンウェルっているじゃないですか。阪神に入って、金だけもらってすぐ帰国しちゃった最悪助っ人外人。
- 宇内
- 「野球を辞めろ」っていう神のお告げが聞こえたとか言って、すぐアメリカに帰っちゃった人ですよね。
- 中川
- そうそう!ただ、グリーンウェルって本当はすごい選手なんですよ。この88年のイヤーブックで見ると、打率3割5分2厘、22ホームラン、119打点って、とにかくすごかったんですよ!
- 中川
- こういう数字を見るのが本当に大好きで。ひたすら数字を暗記してた。数字オタクなんですよ、俺。
- 宇内
- じゃあ、昔の選手の成績とかまだ覚えてますか?
- 中川
- もちろん!88年のイヤーブックだと、サンドバーグが30本ホームラン打ってるはず。ちょっと見てみましょう。
- 中川
- あれ、違うな…。ちょっとすみません、暗記無理っす。
- 宇内
- おい。
- 宇内
- バスケや野球を見るようになったきっかけって何だったんですか?
- 中川
- とにかく暇だったから。アメリカの高校生って基本的に暇で、大学からいきなり頑張りだすの。宿題もないから勉強しなくていいし、夏休みだって3ヶ月もある。有り余るほど時間があるんですよ。で、時差があるから、野球は一日3試合、NBAは一日4試合とか見れるの。
- 宇内
- すごい!さすが国土が広いだけある…。ちなみに大人になった今でも試合は見続けてるんですか?
- 中川
- 日本に帰ってきてからは試合見たり雑誌買ったりすることはなくなったけど、今でも昔買った雑誌は見てますね。それって懐古主義にひたってるだけで、もう発展させる気がないってことなんだけどね。音楽だって、昔買ったジャーニーとか、「幻魔大戦」のサウンドトラックとかしか聴かないし。1995年以降に買ったCDなんて、「ファイナルファンタジーⅥ」のサウンドトラックだけですよ。それくらい保守的なの、俺。
- 宇内
- 昔のスポーツのデータを見返して、昔の音楽だけ聞いて……。確かに懐古主義だ。
とにかく数字と一緒にいたい、その気持ちが生んだ行動とは?
- 中川
- あと、数字みたいなもんなんだけど、順位を覚えるのも好きでね。中学時代はセリーグとパ・リーグの順位を手に転写して登校中に見つめてましたよ。
- 宇内
- 転写?
- 中川
- 手の甲に水つけるでしょ。で、新聞にセリーグ、パ・リーグの順位が載ってたんだけど、その順位の部分を手の甲にくっつけるんですよ。
- 中川
- こうすると転写できるの。それをうっとり眺めるんですよ。
- 宇内
- 好き過ぎでしょ。
- 中川
- うん。それだけ数字とか順位を覚えるのが好きだったんですよ。ちなみに最近はニンテンドーDSで三国志をやってるんだけどね。
- 中川
- 武力が52とか、知力が88とか、これも結局「数字」を見ちゃうんですよ。見てるだけで嬉しくなっちゃうの。今も昔も変わってないんだよね。
- 宇内
- 数字が高くても低くても関係ないんですよね?あくまでも数字を「見る」のが好きなだけで。
- 中川
- そういうこと。だからこのインタビュー記事のPVも、低かろうが高かろうがどっちでもいいの。そろそろ終わりにして本格的に飲みましょうよ!
インタビュー後の飲み会では「乳首に毛の生えた男は、乳首にコンプレックスがあるから触られても感じない説」など、いろんなお話を聞かせていただきました。Twitterではなんか怖そうな中川淳一郎さん。でも実際お会いしてみると、なんて気さくで楽しい人なんだ…!
中川さんに教わった新聞紙の転写、撮影後に試してみたんですが……
石原さとみではうまくいかず…。
人気絶頂のマツコ・デラックスで試してみたら、くっきりと転写されました。どういう仕組なの? 人気絶頂だからなの?
中川淳一郎
ネットニュース編集者、ライター、PRプランナー。インターネット黎明期から第一線で活躍中。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『夢、死ね』『内定童貞』など多数。