両津「なにい!? 五輪エンブレム問題だと!」
- 2015年09月02日 15:40
- SS、こちら葛飾区亀有公園前派出所
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両津「うおっす、おはよう(ドサッ)」
中川「あ、先輩、おはようございます」
麗子「あら両ちゃん、どうしたの、その大きな紙袋」
両津「駅前でオリンピックグッズの安売りやっててな、そのうち高く売れるからって言われたから買ってきた」
両津「ほら、エンブレム入りのバッヂだ、観光客にバカ売れらしいぞ」
麗子「あれ、これって……」
中川「先輩、だめですよこれ、売れません」
両津「な、なに?」
中川「先日オリンピック実行委員会が、このエンブレムの使用禁止を決定したんです」
両津「なんだと!?」
麗子「盗作とかで、イメージが悪くなったからよね」
中川「これはこれでマニアックな品にはなりますが、このエンブレム自体のイメージが悪すぎるので、売れないかと……」
両津「どうりで安すぎると思った……。キロ500円だというから5キロも買ったのに……あのオヤジめ」
中川「……というか、このバッヂもライセンス品じゃないですよね、絶対……」
両津「しかし、どうして使用中止になったんだ?」
中川「7月末のことですが、エンブレムが発表されてから数日後、ベルギーのデザイン会社が『我々がデザインしたリエージュ劇場のロゴと似ている』と主張したんです。のちにデザイナーが訴えを起こすと主張しています」
麗子「ほら、このロゴマークね」
両津「?? なんだこりゃ。似てるといえば似てるが……。ベルギーの劇場のロゴマークなんて調べられないだろ。偶然じゃないのか」
中川「この騒動が出た当初、五輪の広報担当者が『ベルギーを含めて世界中の商標を確認している』とコメントしていますからね」
中川「それに、Pinterestというサイトについても」
両津「ピスタチオ?」
中川「Pinterestです……デザイナーが、ロゴマークやデザインを共有できるサイトですね」
両津「わかった。で、そのぴんからトリオがどうしたんだ?」
中川「えー……。つまり、この五輪のエンブレムをデザインした人物についてですが、これ以外にも、ビール会社の景品ですとか、ポスターや本の装丁なんかに多数の盗作疑惑が見つかっているんです」
中川「それらのうち、多くはこのPinterestにアップされているデザインを盗用したと言われているんですが、デザイナーは当初、このサイトを見ていないと発言していたんです」
両津「ふむ」
中川「ですが、このサイトは登録制で、登録の際にメールアドレスが必要なんですね。しかし、五輪エンブレムのデザイナーの事務所のメールアドレスが、すでに登録されていたという……」
両津「じゃあ見てるんじゃないか……」
両津「というより、そのサイトを見てたからって盗作したってことにはならないだろ? あっさりバレるような嘘をつかなきゃいいのに……」
麗子「本当、そうよね」
中川「デザイナーの奥さんのインタビューでは、おもに盗作や流用を行っていたのはアシスタントであり、盗作というより監督不行き届きだった、と主張してますね」
両津「それはおかしいだろ」
両津「漫画家だってアシスタントがほとんど描いてるやつもいる、その手柄は漫画家のものになる、それは仕方ない」
両津「でもミスや盗作があったら、親である漫画家が責任をかぶる、それが当たり前だろ」
中川「たしかに」
両津「で、色々あって使用中止になったわけか」
中川「今回の騒動は、ネットが重要な役割を果たしたと言われてますね」
中川「デザイナーの過去の仕事などを洗って、さまざまな素材の流用などを突き止めています」
麗子「個人ブログの写真まで見つけてたわね。ほら、このフランスパンが描かれたトートバッグとか」
両津「……絵が描きたいからデザイナーになったんじゃないのか? 自分で書くなり写真を撮ってくる情熱はないのか……」
両津「ふーむ……」
両津「しかし、こんなシンプルなデザインならわしにも作れそうだけどな」
中川「そ、そうですかね」
麗子「だめよ両ちゃん、こういう大きなコンペに応募するには、まず別の広告賞を取らないといけないのよ」
両津「そうなのか?」
中川「そうですね、今回の五輪エンブレムの場合、東京ADC賞や、D&AD賞など世界的に権威のある賞のうち、2つ以上を受賞した者のみに応募資格があったようです」
両津「……ほう」
両津「……権威、か」
中川「104名の候補者の中から絞りこまれて……」
両津「……ちょっと出かけてくる」
中川「えっ?」
※
※
勘兵衛「なに? R・G・C(リョーツ・ゲーム・カンパニー)の仕事を手伝いたいだと?」
注・両津勘兵衛、両津の祖父、105歳にしてR・G・C(リョーツ・ゲーム・カンパニー)の社長。超神田寿司の夏春都(げぱると)は実の妹。
両津「そう、それもデザインの仕事がいいな。以前ちょっとしたキャラデザやイメージイラストを描いてやったこともあるだろ」
勘兵衛「いま忙しい時期だから助かるが……」
勘兵衛「なにか企んでるんじゃないだろうな?」
両津「うっ(ドキッ)」
両津「た、単なる気まぐれだ、心配いらん」
勘兵衛「……じゃあ、このゲームのロゴでも描いてみるか? いま開発中の『魔法使いと黒いねこの地図』というスマホアプリだが」
両津「ふむふむ、まかせろ(さらさら)」
勘兵衛「ほう、けっこう上手いな」
両津「だてに色々やってない、マーカーだが簡単に色も塗っておくぞ」
勘兵衛「じゃあこれで決定でいいな」
両津「ちょっと待て」
両津「まずロゴを社内コンペにかけるんだ」
勘兵衛「社内コンペ?」
勘兵衛「しかし、うちの社員は老人ばかりだからな、確かに専門のデザイナーもいるが……」
両津「田河水泡のアシスタントやってたやつだな。そのデザイナーには審査員として参加させる」
勘兵衛「? じゃあ、コンペやってもお前の優勝になるだけじゃないか?」
両津「それでいい、それとこれだけ大きな会社なら、他の会社と共同でやってる企画あるだろ?」
勘兵衛「今はバンダイナ◯コと共同でやってる企画があるが……。前にこち亀のゲームを出してくれた縁でな」
両津「その企画に2社共同のデザインコンペを立ち上げるんだ。ロゴマークでもキャラデザでも何でもいい」
勘兵衛「?」
両津「そのコンペにはわしが審査員として参加する、これは別に実力勝負でいい」
勘兵衛「やっぱり何か企んでるだろお前……」
※
※
部長「両津のやつは今日も休みか?」
中川「最近、お爺さんの会社を手伝ってるとか言ってましたが……」
麗子「大変! 両ちゃんがテレビに出てるわ!」
部長「何だと!?」
両津『デザインとは寿司だと思うのです。いいものを思いついたらパッと握ってサッと出す、それが一番新鮮な驚きを得られるんです』
部長「アロハシャツなんか着て、何やってるんだこいつ…?」
麗子「新人デザイナーの特集みたい。名前も変わってるわ。日系三世のハワイ・グアム・勘吉ですって」
中川「聞いたことありますよ……まさか先輩だったとは」
インタビュアー『勘吉氏は、ゲーム関係の様々なデザインコンペで受賞されていますね。また、多数の組合を立ち上げ、その理事を務めておられます』
両津『そうです。ゲームデザイナーは社員の延長でしかなく、今まで地位が低かった。最近になってゲーム音楽は作曲者の顔が見えるようになってきましたが、デザイナーも同様に世間に注目されるべきなのです』
イ『なるほど。勘吉氏のデザインはゆったりとした、言ってみれば粗雑な作品が多いとも言われてますが』
両津『ちょっと下手に、がミソなのです。完璧すぎるものは人に嫌われるのです』
両津『一見すると誰でも書けそうですが、ゼロから思いつくのは難しいのです』
イ『なるほど』
部長「したり顔で何を言ってるんだこのバカ」
中川「この受け答え、どこかで見たような……」
両津「やあやあ、私(わたくし)の番組を見てくれているのかな」
麗子「あっ、両ちゃん」
中川「先輩!」
部長「こら両津! 勝手に休んで副業をやっているとは!」
両津「待ってください部長」
両津「今日は警官を辞めるつもりで来たのです」
全員「えっ!?」
両津「もともと私は絵を描くのが好きだったのです」
両津「子供の頃からロウ石で道に落書きしたり」
両津「珍吉のノートを最後のページまで落書きで埋め尽くしたり」
両津「すさまじくリアルなクモの絵を黒板に描いて女子を泣かせたり」
部長「ロクな子供じゃなかったな」
麗子「泣かされた女子がかわいそう」
中川「子供の頃から変わってないんですね」
両津「シャアラアアアアアップ!(汗)」
両津「と、とにかく、今後はデザイナーとして食っていくつもりなのです!」
両津「制服と退職願です。長い間お世話になりました」
部長「……本当にいいんだな?」
両津「ええ、もちろん」
中川「でも先輩、よくデザイナーになれましたね。短い間に」
両津「わしは気づいた」
両津「この業界、身内で権威を与えてまわる世界だ」
中川「え?」
両津「そもそもデザインの世界は技術的な天井が低い」
両津「なにしろ土俵が狭いからな。あまりゴチャゴチャ描き込んでも誰も見てくれん」
両津「素人を集めて大々的に公募したら、プロのデザイナーでも毎回優勝なんて絶対に無理だ」
両津「だから自分のところでコンペを開いて審査員も身内のデザイナーを紛れ込ませて、同じやつを何度も優勝させることで、人間そのものにハクをつけてるんだ」
両津「すべて大手の広告代理店の演出のうちだ、その仕組が分かれば取り入ることも簡単だ」
中川「ま、まあ、そういう側面もあるかも……」
両津「ところで中川、本とか出す予定ないか? 安く装丁のデザインしてやるぞ(にやり)」
中川「い、いえ、今は特に……」
両津「麗子、神戸に新しいホテルができるとか言ってたよな、秋本グループの」
麗子「そ、そうね、でももうホテルのロゴはできてるから」
両津「なあに、ロゴ以外にも山ほどデザインするものはあるだろ、食器とか、制服とか」
部長「……どうやら、辞めに来たというより、身内に仕事をたかりに来たようだな……」
※
※
専務「社
コメント一覧
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- 2015年09月02日 16:04
- 相変わらずはえーよ
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- 2015年09月02日 16:09
- 構成がうまいなぁ。こち亀の感じだ
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- 2015年09月02日 16:38
- 面白くて過去作も一気に読んじまった…
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- 2015年09月02日 16:41
- 主義主張の話をするのに、他人のキャラを使うなよ。
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- 2015年09月02日 16:48
- 確かにこの問題で一番重要なのは電通と博報堂だよな
大して才能のない佐野がいかにしてカリスマデザイナーに仕立てられたか、ここが問題だ
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- 2015年09月02日 17:33
- ※4
その主張には同意するがこの話はエンブレム問題を批判するというより、両さんが時事ネタで金儲けを思いつき失敗するテンプレ話が主だからそこまで気にはならなかったぞ
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- 2015年09月02日 18:04
- 構成、文章は素晴らしいと思うが、
両さんが、佐野氏のスケールダウン版に収まってるのが残念。
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- 2015年09月02日 18:33
- というか昨日今日のニュースじゃないか、早いな
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- 2015年09月02日 19:03
- この内容のどこに主義主張があるんだ?
スレタイ妄想コメントか?
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- 2015年09月02日 19:25
- ※9
ほら、意味もなく批判したい年頃なんだろう。察してやれよ。
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- 2015年09月02日 19:39
- こち亀本編でもその内取り上げそうだよなぁ
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- 2015年09月02日 20:04
- ※4はかっこいい言葉を使って批評したいだけのガキ
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- 2015年09月02日 20:10
- ※12 …きみのような勘のいいガキは嫌いだよ(´・ω・`)
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- 2015年09月02日 21:05
- 劣化コピーじゃん
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- 2015年09月02日 21:09
- 本編でもありそうだな……。
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- 2015年09月02日 21:38
- 先週は国立競技場の風刺やってたからな
でも今回はどうかな、広告代理店がらみの問題だから、編集部が許すかどうか
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- 2015年09月02日 22:47
- いい風刺SSだ
おーぷんもやるなぁ
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