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・1973~1978年に福岡本拠地の「極貧球団」


プロ野球、西鉄ライオンズの後を受け、1973年から78年まで福岡を本拠地にした太平洋クラブ、クラウンライターライオンズにスポットが当たっている。
6年間の軌跡を追った本がこの夏、相次いで出版されたのだ。
奇抜なユニホームが注目され、大リーグの「大物」獲得で話題を作り、資金難で西武に身売りした福岡最後のライオンズ。
甲子園のベスト8、九州国際大付高の楠城徹監督もプレーしたこの球団の何が今、注目されているのか？

ノンフィクション作家、長谷川晶一さんの「極貧球団　波瀾の福岡ライオンズ」（日刊スポーツ出版社）は、主力選手をはじめ多くの球団関係者を取材して球団誕生のドタバタから、買収され福岡を離れるまでの歩みをたどった。
東尾修さん、土井正博さん、竹之内雅史さん、真弓明信さん、永射保さんといった個性的な選手たちのプレーをよみがえらせるとともに、
西鉄時代晩年の八百長疑惑「黒い霧」、73～74年にかけてのロッテとの遺恨試合、77年ドラフトでの江川卓投手指名に端を発した「空白の一日」など、野球ファン以外の関心を集めた事件も織り込んだ。

ベースボール・マガジン社の「俺たちの太平洋・クラウン」はビジュアルなムック本。
各年のペナントレースの戦いぶりを写真で振り返り、東尾さん、土井さん、吉岡悟さんらタイトルホルダーのインタビューも載せている。在籍したすべての選手の名鑑、公式戦全試合の成績も収録し、資料性が高い。


・『金がないなら根性でカバーだ』


両書が強調するのは太平洋、クラウンの「貧しさ」だ。親会社を持たないため球団経営はいつも火の車、練習場所は大学や公共のグラウンドを転々とし、ボールも他球団から拝借する。身売りのうわさが常につきまとった。
「極貧－」では生活苦のため、シーズンオフに郵便局で年賀状の仕分けをした若菜嘉晴さんや、自衛隊に入隊した永射さんのエピソードがつづられている。今では考えられない環境で選手たちはプレーしていた。

「金のためじゃなく、好きな野球をやるため。プロとしての誇りを持ちながら、たくましくプレーを続けた選手たちがいたことを伝えたかった」と長谷川さんは語る。
「一度も優勝できなかったが、“金持ち球団”と互角に渡り合った。『金がないなら根性でカバーだ』という反骨心が、スマートさが優先される今の私たちに響いてくる」

近年のペナントレースを見ると、球団の財力のあるなしが成績に反映している印象が強い。日本の「格差社会」の縮図のようでもある。「野球はスポーツではなく、マネーゲームになってないか」。
太平洋、クラウンが注目されるのはノスタルジーだけではなく、そんなリアルな問い掛けを発しているからではないだろうか。


◆西日本新聞－Yahoo！ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150901-00010006-nishinp-spo