八幡「先天性羞恥心欠乏症?」
- 2015年09月15日 23:10
- SS、やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
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人生とは恥の上塗りである。
それは人類が進化を遂げていく過程で、絶対的に必要だった“想像力”の副作用によるものだったのだろう。
他人がいて初めて起こりうる心象「恥ずかしい」。
誰だって他人に笑われたくないし、見損なわれたくないし、なにより嫌われたくない。
だが、生まれつきにそれを感じにくい者がいたとしたら?
私こと比企谷八幡はまさに、中二病とも言うべきそれを手に入れたのだった――。
道路に飛び出した犬。
入学式当日、先天性羞恥心欠乏症の俺は早めに自宅を飛び出していた。
その理由は後で説明する事になるので割愛するが、俺は自宅も飛び出し道路にも飛び出していた。
――どんっ。
黒塗りの高級車。
一般人なら誰しもが関わりたくない部類の車に轢かれた俺は、朦朧とする意識の中で、医者に言われた言葉を思い出した。
『君は他人の感情に疎い。だから、想像力も乏しい。目に見える事、目に見えた事で分かる事に対しては他人より洞察力に優れるかもしれないが、きっといつか他人に迷惑をかけるだろう』
その言葉の真意が分からなかった。人間の多くは目が見える。目が見える事に対して優れた行動ができるなら、何がいけないと言うのだろう。
『だからこの言葉を覚えておいてくれ。“君は誰かを救う為に生まれてきたんだ。誰かを貶めるためじゃないんだ”』
さらに分からなくなった。なぜカテゴリー分けする必要があるのだろう。
自分は自分の為に生まれてきたのではないのだろうか。
「きみ――、だい――ぶかっ!」
言葉がよく聞こえない。
脳震盪というやつだろうか。初めて体験するそれは、遊園地のアトラクションよりも目まぐるしく景色が動く。
医者の最後の言葉を思い出す。
『だから君は、迷惑をかけたらまずこう言うんだ。きっと君を救ってくれる』
ああ、そうだ。それを言わないと。
えっと――、
八幡「僕は、君の為に生まれてきたのかもしれ――な、い」ドサッ
そして、意識は途切れ、気づいたら病院の見知らぬ天井だった。
退院した時にはすっかり春も終わっていた。
さらに不運なことに、病院での生活は俺の精神病を悪化させた。
学校とカウンセリングの往来は、“滅多に学校に来ない比企谷八幡”を完成させるのには十分すぎた。
担任の助力と、元々1人で勉強する事が好きだった性格が幸いして、何とか進級する事はできた。
季節は春。
ろくにクラスメイトの顔も覚えられぬまま、俺は二年生になった。
――だが、悪いことばかりではない。
俺の先天性羞恥心欠乏症は、思わぬ方法で対処できる事が分かったのだった。
医者「君はどうやら、キザな台詞に対してのみ羞恥心を感じるようだ」
八幡「はぁ……?」
医者「高校生なんだし、青春を謳歌したまえ」ハハハ
比企谷八幡の暴走が、始まる。
平塚「比企谷、これはなんだ……///」バンッ
放課後、職員室に呼び出された俺は、課題で提出した小論文に難癖をつけられていた。
青春とは出会いである。
特に、一年時にもお世話になった平塚静先生との出会いは運命だ。
立場上ロミオとジュリエット並みの高い壁があるのは分かる。
だが、私は諦めないだろう。
平塚静先生と強い絆を得る為なら、太陽に羽ばたくことさえ辞さない。
【以下、二十行ほど平塚先生との出会いの讃美歌】
八幡「俺の気持ちですが」ソワソワッ
八幡(あ、少し気持ちが浮ついたような気がする)
平塚「そそそ、それは本心で言っているのか? ロミジュリとかもうあれだぞ!?」ハァハァ///
八幡「た、例えですよ。俺は先生にすごく感謝してるんです。だから、
青春とは平塚静と言っても過言じゃないですね」キリッ
平塚「///」プシューッ///
八幡「はぁ、ここですか?」
平塚「ととと、とにかくだ。君はきちんとした青春をした方が良い」
平塚(ダメだぞ静。比企谷には未来がある。いくら自分が売れ残る可能性が高いからって、彼の未来を奪ってはいけにゃい)ガラッ///
雪乃「先生、いつもノックをして、と――」
八幡「君は……」
雪乃「……あ…」カァ///
小町『説明しよう! 雪ノ下雪乃は去年の事故の時、自分が“あの台詞”を言われたと思っているのだ!』
八幡「なんて美しいんだ」ジッ
雪乃「ふぇ……」ビクッ///
平塚「は?」ギロッ
八幡「その天の川を彷彿とさせる清らかな髪。宇宙の神秘を想起させる瞳。信念がある事が一目で分かる振る舞い。どれも他の追随を許さない」ホメホメ
雪乃「あ、あの……ちょっといきなり言われても困るのだけれど…///」モジモジ
平塚「比企谷。お前はさっきの論文が嘘だと言うのか?」ガシッ
八幡「え、どういうことですか?」ジッ
平塚「うっ///」
平塚(そうだ。よく考えたら、私達の事はお世話になったとか、絆とかしか書かれていなかった。ここで容姿について問えば、私が自意識過剰みたいになってしまう!!)プルプル
平塚「い、いや……何でもない。じゃあ、雪ノ下。比企谷の事を頼んだぞ」
雪乃「あ……う…///」ジッ
八幡「………?」
雪乃(きょ、去年の事を思い出してしまうじゃない!)カァ///
雪乃「わ、分かりました。任せてください」
平塚(くそっ……これでは私の将来設計が……)ポロポロ
八幡(先生泣いてる? 何故だ?)
雪乃「………」
八幡「………」ジッ
雪乃「………」
八幡「………」ジーッ
雪乃「ま、まずはこの部活が何をする所か当ててもらいましょうか」アセアセ
雪乃(そんなに見つめられたら恥ずかしくて倒れそうだわ///)
八幡「美しい君を眺めつづける部活……かな?」ジッ
雪乃「」フラッ///
雪乃「あ、あなたは初対面の人間にそんな浮ついた言葉ばかり言って、恥ずかしくないのかしら?」ファサッ///
八幡「ああ、(病気のせいで)恥ずかしくない」
雪乃「……ぅ///」
八幡「むしろ、君の事を誉めれば誉めるほど、知れば知るほど俺は生きている事を実感できるんだ!(病気のせいで)」
雪乃「はうっ///」
八幡「だからこの部活はそう! きっと俺と君が出会う為にあったんだ!(特に俺が)(病気を和らげるために)」
雪乃「」プシューっ///
八幡「違う……か?」
雪乃「そ、それでいいわ」ファサ///
雪乃(あの後何度見舞いに訪れても面会謝絶だった反動で、彼に対する気持ちが大きくなりすぎてる気がするわ……///)
翌日。
八幡「結局、部活としては何をするんだ?」
雪乃「……その前に、言う事はないのかしら?」ポニーテール
八幡「言う事……?」
雪乃「………」サワサワ
八幡「………?」
雪乃「……もう良いわ」シュン…
八幡「………?」
小町『説明しよう! 羞恥心を理解できないお兄ちゃんは、相手の誉めて欲しいと言う欲求も理解できないのだ!』
雪乃「それよりも、部活よね。部活」
八幡「君を眺めつづけて良いのなら、そうするけど」ジッ
雪乃「だ、ダメよ。ダメ///」プイッ
八幡「そうか」シュン…
雪乃(可愛い……)
雪乃「この部活は奉仕部と言って、簡単に言えば他人の為にある部活よ」
八幡「俺が君の為に生まれてきたみたいなものか」
雪乃「そ、それはそれとして、少し違うわ……///」
八幡「違うのか?」
雪乃「私たちはあくまで方法を教えるだけよ。魚の釣り方は教えても、実際に釣るのは――」
八幡「君の手を汚さないように、俺が魚をとればいいんだな?」
雪乃「た、例え話よ、ばか///」プイッ
八幡「ああ、すまん」
――がらっ。
結衣「す、すみませーん……」オドオド
雪乃「あなたは……由比ヶ浜結衣さんね?」
結衣「あ、うん、雪ノ下さん……だよね」
雪乃「奉仕部への依頼かしら?」
結衣「うん、そうなんだ……け、ど」チラッ
八幡「君は……」
結衣「ひひひ、ヒッキーっ///」カァ///
雪乃「……?」イヤナヨカン
八幡「俺の事を特別な愛称で呼んでくれる大切なクラスメイト。奉仕部に依頼って何の依頼だ?」ギュッ
結衣「うっ、うぅ///」プシューっ
結衣(休憩ごとに抱きつかれてるけど、全然なれないよぉ……///)
雪乃「どどど、どういうことかしら?」プルプル
・
・
・
結衣「……という訳なんだ」
雪乃「先天性羞恥心欠乏症……」
雪乃(それで、恥ずかしい台詞を堂々と……)
結衣「ヒッキーの所為で、事情の知らない何人の女の子が誤解してる事か」ハァ…
雪乃「被害は甚大という訳ね……」
結衣「ううん、ヒッキーってば、誰かれ構わず言うし、男の子にも言うからけっこう裏で人気があるんだ」
雪乃「そ、そう……(複雑だわ…)」
結衣「特にあたしみたいなモテない女子からは人気があるんだ」
雪乃「あなたがモテないというのは卑屈すぎるけど、男性に免疫のない人は嬉しいわよね」
雪乃(私とか……)
結衣「それより、ヒッキーも奉仕部なの?」
八幡「ああ、そうだ」コクリ
雪乃「依頼は何かしら?」
結衣「あ、あのさ……クッキーの作り方、教えて欲しいな……って」モジモジ///
雪乃「……(もしかして比企谷君に作るのかしら)」モヤモヤ
八幡「女の子らしい由比ヶ浜にぴったりだな。お菓子作りって」ナデナデ
結衣「//////」プシューっ///
雪乃(ずるいわ由比ヶ浜さんばかり……)モヤモヤ
雪乃「分かったわ。じゃあ早速教えるわね」
結衣「え、良いの!? 明日でも――」
雪乃「善は急げよ」キッパリ
コメント一覧
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- 2015年09月15日 23:23
- 久しぶりだな俺ガイルss
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- 2015年09月15日 23:38
- 女子が恥じらいを捨てていきなり脱ぎだすのを期待してたのに…
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- 2015年09月15日 23:45
- ふつう
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- 2015年09月15日 23:57
- こんな実在しないような奇病にかかってる人たちのラノベとか読んでみたいかも