産経
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150915-00000098-san-bus_all
■内側から開く設計／扉閉まらぬスイッチ／注意シール
　東京都内で６月、ドラム式洗濯乾燥機に閉じ込められた男児（７）が窒息死する事故が起きたことをきっかけに、
メーカー各社が対応策を施した製品を９月に相次いで発売する。パナソニックは、
洗濯していないときに内側から子供の力でも扉が開くよう設計を改良。
日立製作所は、オンにすると扉が完全に閉まらず、運転もできなくなるスイッチをつけた。
ドラム式の売り上げが頭打ちになる中、事故を防ぐ機能で安全をアピールしている。（牛島要平）

　◆改良や新機能
　パナソニックは９月２５日発売の製品から、洗濯していない電源オフのときにはふたの内側から
子供の力でも開けられるよう改良した。洗濯が始まると扉にロックがかかり、勢いよく回転する
洗濯物や水流の圧力でも開かなくなる。１１月上旬発売の最新製品にもこの設計を取り入れている。

　日立は９月１９日発売の新製品に新しいスイッチをつけた。オンにしておくと扉が完全に閉まらず、
運転もできなくなる。大人向けではなく、子供に分かりやすいデザインや言葉で注意を呼びかけるシールも貼る。

　東芝は今月発売の新製品から、子供が閉じ込められないよう注意喚起のチラシを操作パネルに
貼って出荷している。最初に使う際に必ずチラシを目にするよう工夫した。

　◆対策の背景
　対策の背景にあるのが事故だ。６月８日未明、扉が閉まったドラム式洗濯機内で男児がぐったり
しているのを母親が見つけ、病院に運ばれたが死亡が確認された。洗濯機は扉が閉まると内側からは
開けられない設計で、警視庁は男児が誤って中に入り、閉じ込められて呼吸ができなくなったとみて調べている。

　「どうして扉を内側から閉めたのか分からない」。事故のあった洗濯機のメーカーは公表されていないが、
インターネット上で製造元と名指しされたメーカーの担当者は、そう首をかしげる。

　ただ、ある機種は扉を勢いよく開け放すとその反動で、手で押さなくてもふたの重みで閉まるケースがあるようだ。
このメーカーには消費者から「使い続けて大丈夫か」などと不安の声が殺到した。

　◆配慮するも
　韓国や米国などで子供がドラム式洗濯機に閉じ込められるなどの死亡事故が相次いだことを受け、
消費者庁は昨年８月、「洗濯機に子供が入り死亡する事故が海外で発生している」と注意喚起をホームページなどに掲載した。

　各メーカーも以前から事故の危険性に配慮し、取り扱い説明書や本体の添付シールで注意喚起しているほか、
チャイルドロック機能もほぼ導入している。設定すると解除しない限り扉が開かない仕組みで、
事故は防げたはずだった。ただ、閉じ込められた場合の対策は後手に回った。

　ドラム式洗濯機は縦型に比べ節水性に優れ、洗濯物を取り出しやすいメリットがあるとして１５年ほど前から
購入する家庭が増えた。業界団体の日本電機工業会（ＪＥＭＡ）によると、洗濯乾燥機の中でドラム式と縦型は
出荷台数ベースで約５０％ずつの割合を占める。

　ただ、ドラム式は価格が縦型より割高で近年は売り上げが頭打ちの状態。国内のドラム式洗濯乾燥機の
出荷台数は平成１９年度の７４万３千台をピークに２６年度には５０万８千台（前年度比２６・５％減）となった。
事故がドラム式の売り上げをさらに低迷させるのではとの懸念がメーカーに対応を迫っている。