■弘前市長と飲もう
そんなわけで市内をぶらぶらしたあと、今度は居酒屋さんにやってきました。
何故なら冒頭で言った通り、ここで弘前市長と飲む約束をしているからです。
今回の企画が持ち上がった時に、「市長と一回飲んでみたい」とお願いをした所、「弘前をアピールするためなら」という事で本当に来てくれる事になったのだ。
でも本当に、市長が来るの……?
「いやー、どうもどうも!お待たせしました!」
「うわぁ。市長だ……!ちょっと引くわ」
「市長ってマジで存在する生き物なんだ。マイク・ハガーしか知らなかった」
※マイク・ハガー カプコンのゲーム「ファイナルファイト」の主人公。市長
葛西憲之(かさいのりゆき)
弘前市長。1946年弘前市出身。国立函館工業高等専門学校卒業。70年青森県庁入庁、県土整備部長など歴任。2010年4月弘前市長に就任。11年秋、第6回マニフェスト大賞(首長部門)最優秀賞を受賞。現在2期目。
「本日はよろしくお願いします」
「あの、本日の様子は記事に書き起こすんですが、原稿の下書きはもちろんチェックして頂きます。市長ともなると言っちゃマズいやつとかは当然色々あるとは思いますが、今日はその辺はあんまり深く考えずに、ざっくばらんにお答え頂ければ!考えすぎて無難な事しか言えない、っていう方が困るんで、ヤバいやつは後からカットしてください!」
「なるほど。わかりました!」
「あと、僕、高確率で失礼な事を言うと思うのですが、お酒の席という事でご容赦頂ければ!とりあえず飲みましょう!」
乾杯~~~~~!
■前代未聞の「市長飲み」がはじまった
「市長、お酒めっちゃ強いって聞いてますけど」
「いや別にそんな大した事ないですけど、お酒は好きですね」
「普段はやっぱりこの、弘前の夜の街である鍛冶町周辺で飲むんですか?」
「いや、それがこういう所で飲むと、だいたい次の日のFacebookとかブログとかで『市長が来た!市長が酒飲んでる!』って書かれちゃうんで、あんまり調子良く無いですね。写真も撮られるし……」
「まあ確かに横で市長が飲んでたら笑うもんな……。でも今日はせっかくの機会なんでね、市長にもリラックスして飲んで頂いて、むしろ僕が潰してやろうと思ってます!」
市長あるあるその1:街で飲んでるとネットに書かれる
「ちなみにヨッピーさんはお酒強いんですか?」
「弱いです」
この日のおつまみも弘前名物「いがめんち」
ビールに合います!
■市長とケンカして市長になった
「そもそも、なんで市長になろうと思ったんですか?」
「別にね、市長になりたいなんて思ってなかったんですよ。元々ね、私は中学まで弘前に居て、高校は函館の高専に行って寮生活してて。で、卒業してゼネコンに入って、それからゼネコン辞めて県庁に入ったんです。県庁勤めが長くておかげさまでまあまあ偉くなりましてね。県庁を退任してから『副市長やってくれ』って当時の弘前市長に依頼されたんですよ」
「おお。順調に出世してますね。豊臣秀吉みたい」
「で、副市長になったのは良いけど、これがね、その当時の市長とソリが合わないんですよ。政策どうするかで意見が合わなくてね。それが新聞に書かれちゃうんですよ。『市長と副市長が大ゲンカ!』みたいな。その内今度は新聞に『弘前経済界、次の市長選は副市長を擁立か』みたいな事も書かれてね。市長もそれ見て『ちょっと来い!』ってなるんですよね」
「ケンカじゃないですかそれ」
「そうそう。当時の市長と話をしたけど、このままじゃいかんな、と。このままの弘前では良くない、弘前を変えていかなければいかんと思い、辞表出して、次の選挙に出たんです。そしたら勝っちゃった」
「じゃあつまり、市長になった理由をまとめると、『当時の市長とケンカしたから』っていう事ですね」
「そう。負けず嫌いなの」
「笑う」
市長あるあるその2:市長は負けず嫌い
ここぞ、とばかりにリンゴのお酒「シードル」を勧めて来る市長。
市長が言うには、市長は「リーダーであり、セールスマンであり、広報マンである」そうだ。他地域に特産品を売り込むのも市長の仕事なので解説はお手のもの。
■「市長」のお仕事
段々調子があがって上着を脱ぎだした市長
「僕、常々思うんですけど、政治家って何してても文句言われる職業じゃないですか。9割の人が賛成する政策だとしても、残りの1割からは批判されますよね。特に市長ともなると批判される時は真っ先に叩かれるわけじゃないですか。ああいうの、僕ならすごいストレスになる気がするんですけど市長は嫌になったりしないんですか?」
「ええ、嫌になりますよ。新しい事しようと思ってるのに、なーんでこう後ろ向きな事ばっかり言うかなぁって」
「笑う」
「他にもやっぱり、色々あるからね。大きな災害が起こったりとか。そういう時は市長として責任を感じるから落ち込みますよ」
「なるほど。市長でも落ち込むんですね」
「落ち込みますよ。ただまあ人前では出さないようにしますね。落ち込んでる市長とか頼りないじゃないですか。市長が落ち込んでたら市民が不安に思いますからね。そういう時こそ毅然としていないと」
「落ち込んだ時に吐き出す場所ってあるんですか?」
「ええ。家で家内に愚痴を言って、慰めて貰って、次の日に弁当持たされて『頑張って行っておいで』って送り出されます」
「中学生みたい」
「そういう時にお酒を飲むんですね。さっき言ったように外ではあんまり飲めないので、子供ももう独立してるし家内と二人で飲みますね」
市長あるあるその3:落ち込んだ時は奥さんに慰めて貰うらしい
ビール、シードルと続いて今度は日本酒。
弘前には酒蔵が多いらしいが、この日のお酒「松緑」は飲みやすくてグイグイ飲んでしまうのでそろそろ危ない。
■弘前市のこと
ねぷたのミニチュアを自慢してくる市長。ノリノリである。
「弘前の人はね、弘前にはお城もあるし津軽十万石の城下町だ!って言ってプライドが高いんですよ。岩木山っていう独立峰があって、弘前市民は『こんなに美しい山は他にない!』って思ってたり。でも、美しいのは文句のないところだけど独立峰だから高さを感じるんですよ。他の県にはもっと高い山がいっぱいあるんですよね。だから『自分達の文化を誇るだけじゃなくて、もっと他の優れたものにも目を向けようよ』というような話を市長に就任した時にしたんですよ」
「つまり、市長に就任した日に『お前らあんまり調子に乗るなよ』っていう話をしたってこと?」
「そう。いやいや…。どうしてそんなにかどのある言い方にさせたがるの?」
「その方が面白いかと思って……。でも、弘前の人はプライドが高いって聞いてましたよ」
「そうですね。えふりこき(見栄っ張り)、もつけ(調子乗り)、じょっぱり(頑固者)っていうのが弘前の人の特性で、見栄っ張りですぐ調子に乗って色んなものをどんどんやる。どんどんやるんだけど、頑固に変えない部分もある。ねぷた祭りなんてそうですよね。あんなに派手なのって、見栄っ張りで調子乗りのお祭り。でもそれを変えずにずっと受け継いで行く頑固さもあるっていう。見栄っ張りで調子乗りだから先頭に立てるし、頑固者でもあるから受け継いで行けるっていうね。だから弘前には明治時代の文物もたくさん残ってるんです」
弘前人の気質が受け継いできたねぷた祭り。
観光客でごった返す。
■市長の初キス
だいぶデキあがってきた一行。僕の顔色がおかしい。
「突然ですが、市長の初キッスっていつですか?」
「は、初キッス?」
「はい。初キッス」
「記憶にないなぁ。ま、それは、胸の奥に秘めておくものだと思いますよ」
「ヤバかったら後からカットしますから!そこをなんとか!」
「ま、いいか。高校生の頃だな」
「おお、市長の年代だと結構早いんじゃないですかそれ。どこで知り合った人ですか?」
「なんか、ペースに乗せられてない?ええと、当時バレーボールやってて、他の高校に試合に行ったりしててそこで知り合った人」
「場所は?」
「函館の見晴公園(香雪園)」
市長の初キッスの場所。函館の見晴公園(香雪園)。
「うわ!めっちゃ綺麗な所や!」
「でしょ。何となく雰囲気がそうしなければという場所ですよ。だから函館の市長に『恋人の聖地とかでもっと見晴公園(香雪園)をアピールしろ!』って言ってんの」
「初キッスの場所を売り出そうとするな!ちなみに初体験はいつですか?」
市長あるあるその4:初キッスの場所をプッシュしてくる
「初体験はね・・・」
(以下、事情により割愛させていただきます)
■弘前市の魅力
「あのね、今の青森県のPRって『田舎暮らし』とかを押してるのよ。『田舎で、みんなで仲良く』みたいな。もちろんそれもあるんだけど、違うんです。弘前って文化度がすごく高いんですよ。オーケストラが3つあって、能の流派が3つあって、オペラがある。それが全部独立してやってるんだから。18万人くらいの都市で、そんなのって無いでしょう?」
「いや多すぎですよそれ」
「フランス料理店も人口18万人の街に10店舗ありますからね。桜もあるし大きなお祭りもあるし、大学が6つあって学園都市です、と。お医者さんだって人口10万人あたり約440人居るのって全国でも有数なんですよ。それのどこが田舎暮らしなんだっていう…、ちょっと自慢しすぎた?
そういう意味でね、弘前には『都市』としての暮らしも出来るし、田舎暮らしも出来るっていう多様性を持った生活があるんですよ」
「なるほど、確かに昼間弘前市内うろうろしてましたけど、田舎って感じは全然無いですもんね。ただこんな事言うのもアレですけど、冬は雪がほら……」
「雪か……」
「やっぱり雪は弱点なんだ」
「まあぶっちゃけ、雪には覚悟してね、っていうのはありますね、自然の事なので。ただ、除雪に関しては先進地になろうと思っていて色々対策をしてます。地熱を利用したり、効率化したり。その分、雪が溶けたあとの桜の季節は最高ですよ」
「桜まつりは有名ですもんね」
「そうそう。死ぬまでに行きたい!世界の絶景にも選ばれてるんです」
「なにこれ。綺麗すぎ」
「なんでこの時期に呼んでくれなかったんですか」
「まあまあ。四月の下旬くらいから桜が咲くので改めて来て下さい。お濠に桜の花びらが散ったら、そのままお濠の水を堰き止めると綺麗な桜色のじゅうたんが出来るんです。それが花筏」
「やることがいちいちオシャレだな……」
■市長は楽しいか
ますます元気になる市長とそろそろヤバくなってきている僕たち。
「まあ、つらいこともありますけど楽しいですよ。市長って」
「意外だな。さっきから聞いてたら辛そうだし、大阪市長の橋下さんとかもいっつも怒ってるからだいぶ疲れるのかなぁと」
「いや疲れますよ。でも単純に、市民の笑顔を見るのは至上の喜びですからね。街と、そこに居る人達にどうやったら生き甲斐を持って貰うかとか健康をどうするかとか。大阪とか東京みたいな大都市に比べるともっと市民が身近ですしね。そのぶん反応も見えるから楽しい事もたくさんあります」
「ふむふむ。突然ですけど市長、司馬遼太郎好きですよね、たぶん」
「おお……!そうなんですよ……!大好きなんです……!」
「ですよね。僕も大好きなんです。司馬遼太郎の本はだいたい全部読みましたよ。島津斉彬っていう単語が市長の口から出た時にピンと来ました」
「いや、良いですね。坂の上の雲とかね。いやーー、若者と司馬遼太郎の話が出来るのは嬉しいなーーー!」
「ぼくは司馬遼太郎の本とかあんまり読まないんでわかんないんですけど、ヨッピーさんすごいですね」
「市長くらいの年代の政治家だったら8割くらいは司馬遼太郎読んでると思うよ。ちょろいわ」
市長あるあるその5:だいたい司馬遼太郎を読んでる
しかしながら……
市長、酒めっちゃ強い。
全然勝てない。
「じゃあまた!今度は自宅の庭を見に遊びに来てください!」
「はい!」
ちなみにこの日のお会計はワリカン。
市長が出すにしても僕らが出すにしても色々と問題があるらしい。
やっぱり市長は大変だなぁ。
ちなみに市長をお見送りしてる人、やたら多いと思いません?
実はこの対談の裏で、市役所の人達がめっちゃ働いてたんです。
さすがに市長ともなると一人でブラブラ行動するわけにはいかないらしい。
僕らが「市長と飲んでみたい」ってワガママ言ったせいで、こうやってたくさんの人が動くハメになった。
なるほど、みんな大変なんだなぁ。
市長あるあるその6:市長が動くと色んな人がついてくる
※次は、「学生と街歩き」編、9月3週目に掲載予定です。
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あの「トクマルシューゴ」さんの楽曲にあわせて、ヒロとサキが・・・。
担当 ひろさき未来戦略研究センター 人口減少対策担当
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