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深海8400メートルより下には魚はいないというミステリーがある。ナマコ、イソギンチャク、小さなワームなどはいるが、魚は一匹も見かけない。
では8370メートルだったらどうだろう? ここには魚はいる。しかし、8400メートルより深くなるといないのだ。海の一番深いところは約1万1000メートルにまで達し、広い空間が広がっている。ここは冷たく暗く、8400メートルより上とはまったく別の世界。それより下には魚が行くことができない謎めいた境界線、それが8400メートルなのだ。
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なぜ、8400メートルという数字なのかは、誰にもわからない。いつかこの境界線を突破した魚が見つかるかもしれないが、今はところは、この深海8400メートルの謎について、科学者たちによっていくつかの説がとなえられているだけだ。
まず、8400メートルより下に生息することができて、地球上でもっとも深海に棲んでいる甲殻類の一種である端脚類についてみてみよう。この生物は、グアムの南160キロのところにある、地球上でもっとも深い場所のひとつ、シレーナ海溝の深海1万500メートル地点で採取された。ここの数少ない住人のひとつだ。頭の両サイドにある黄色いものが目のようで、赤い球体の役割は謎のままだ。彼らは8400メートルより下の深海に多数生息している。
どうして、端脚類は魚が棲めないところで生き延びられるのだろう? ウィットマン大学の深海の専門家、ポール・ヤンシー教授は、この理由について考えているひとりだ。魚の見つかる8370メートルと、魚がいない8400メートルの大きな違いは水圧だ。30メートル潜るごとに、3気圧分余計に体に負担がかかってくる。プールの底に潜ろうとすると、耳がぎゅっと圧縮されて、気圧の違いを感じることができるだろう。
DNA、タンパク質、膜組織など、生物の体をつくっている材料は、圧力による影響を受けやすく、特にタンパク質には悪影響が出やすい。タンパク質は、筋肉の力を引き出すなど、細胞内での仕事を請け負っているが、高圧によって押しつぶされてしまうのだ。例えば、浅いところにいる魚の筋肉は、高圧下では正常に発達しない。だから、深海生物はなんらかの形で高圧に適応しているはずだ。
深海魚の水圧対応
ヤンシー博士は、深海の魚が高圧にうまく対応している理由について、ふたつの仮説をあげた。ひとつは中和。魚臭いあのにおいは、トリメチルアミンオキシド(TMAO)という特殊な分子が原因。TMAOと古い食塩には共通点がある。湿気の多い季節、塩を調理台にこぼしてしばらくすると、塩の粒のまわりに水滴がついているのに気づいたことはないだろうか? 塩は水分をひきつける性質があり、こうした親水性分子はオスモライト(浸透圧調節物質)と呼ばれる。TMAOもオスモライトで、浅いところにいる魚が体内に水分を蓄えるのを助けている。魚の体のまわりにある海水中の別のオスモライト、つまり塩とうまく中和して、魚の体内と圧力とのバランスをとっている。
ヤンシー博士は、TMAOが通常の圧力下で細胞の機能を助けていることを発見した。タンパク質のまわりの水の分子が壊れてしまわないよう守っていて、タンパク質安定装置の役割を果たしている。TMAOがないと、高圧のもとでは、水の分子が小さなタンパク質の中に無理やり入ろうとして、タンパク質の構造を破壊してしまう。TMAOがあれば、水の分子はタンパク質の小さな隙間を通ることができず、深海であってもタンパク質の正常な機能が損なわれない。ヤンシー博士は、このTMAOが深海で魚が生きていく助けになっているとみている。
しかし、その深さに限界があるのはどうしてだろう? 8400メートルラインの謎とどんな関係があるのだろう?
トリメチルアミンオキシド(TMAO)
魚が深海にいくほど、TMAOがより多く必要になるからだと博士は説明する。さらに水圧がかかると、細胞を正常に働かせておくために、さらに多くのTMAOが必要になるのかもしれない。ご存知のようにTMAOは、浸透圧を調整するオスモライトだ。8400メートルにいる魚は、体内に入ってこようとする水圧を相殺するTMAOをよりたくさん必要とすると仮定する。水圧から身を守ってくれる同じ分子が、最終的に水の中毒を起こすのかもし
れない。言い換えれば、TMAOの奇妙な特性が、魚がそれ以上潜ることのできない、謎めいた深海8400メートルラインの原因かもしれないのだ。
しかしながら、この仮説を証明する実験をするのは非常に難しい。博士は、自分が提案したこの深さの限界を反証する魚が別の海溝で見つかるかもしれないと認めている。もし、そんな魚がいるとしても、確かに発見するのはとても難しい。あるいは、8400メートルより深いところに棲んでいる端脚類などの生物は、まったく別の手段で高圧力に適応しているのかもしれない。8400メートルより上にいる魚にエサにされてしまう彼らにとって、幸運といっていいだろう。今のところ、彼らが備えている深海での謎めいた生き残り術のおかげで、捕食者の魚のいない冷たく暗い深淵を謳歌することができているのだから。
FVCR 2014 11 18 new species
上の動画は、深海8143メートルのところにいた深海魚。プエルトリコの海溝8370メートルのところで捕獲された、Bassogigas profundissimusという魚とともに深海魚の地位を争っている。
via:deepseanews Translated konohazuku
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コメント
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5. 匿名処理班
8400m以上の深さを根城にしてる謎の巨大生物が魚を全部食べちゃう…とかだと面白いなぁ
6. 匿名処理班
エビみたいな色してておいしそう
ほんとうに美味しいかどうかはわかんないけど・・・
7. 匿名処理班
深海と地下は地球最後のフロンティア
8. 匿名処理班
最後の動画の深海魚ちゃん。こっち向いて!
9. 匿名処理班
めっちゃ深海探検してみたい
グロい深海生物とか大好き
10. 匿名処理班
湯通ししたみたいな色
11. 匿名処理班
まるで茹で海老
12. 匿名処理班
深海怖いからいつもビクビクしながら見てるが
8km下とかいわれると怖いを通り越してもうピンとこないな
13. 匿名処理班
地上が1気圧で宇宙空間(真空)ですら0気圧なのに8400気圧ってどんな世界なんだよ・・・
14. 匿名処理班
ノミみたいだねー
15. 匿名処理班
不味そうだな
16. 匿名処理班
海老ですらエイリアンみたいな顔立ちしてるな、深海は
しかし深海魚にも潜れる深さに下限があるんだ。恐れをしらないナウでヤングな深海魚たちが、どこまで潜れるかのチキンレースを繰り広げていたりして。
17. 匿名処理班
カイコウオオソコエビだっけ
18. 匿名処理班
バッタエビと名付けよう
19. 匿名処理班
寿司屋で回ってきたら普通に頂いちゃうな
20. 匿名処理班
とりあえずこぼした塩は拭いたほうがいいと思うよ
21. 匿名処理班
赤いのは何なんだろうな