この会社には「目安箱」が設置されている。

 

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企業にとって顧客からのクレームがサービス向上の道標になることは多い。

 

目安箱も同じような目的で設置された。社員の不平不満を解消することで、組織力を高める狙いである。

 

投書は月に一度、総務部で取りまとめて会議を行うことになっている。

 

 

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部長1  

今月の投書は1件のみ。「トイレの扉の取っ手が濡れていることがあり、大変不快です」と書いてあった。解決方法について話し合おう。

 

 

 

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ライアン1  

簡単ですよ。犯人を特定して、注意すればいいじゃないですか。

 

 

部長1  

まぁ、そうなんだけどね。でも犯人を特定すると、その人が会社に居づらくなるかもしれない。悪気があって取っ手を濡らしてるわけじゃないと思うから、個人を攻撃するようなことは避けたいよね。

 

 

ライアン1  

でも、犯人はトイレで手を洗うヤツですよね。洗って拭かないから取っ手が濡れるわけで。それだけでかなり特定できちゃいますけどね。

 

 

フルシアンテ1  

先輩……もしかして手ぇ洗わないんですか?

 

 

ライアン1  

ふつう洗わねえだろ!? なんで洗う必要があるんだよ。

 

 

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キャリー1  

信じられない……手を洗わない人なんてこの世に存在するんだ……

 

 

ミラ1  

知らなかったの? 男は手を洗わない生き物よ。逆に女はみんな洗うけどね。

 

 

フルシアンテ1  

いやいやいやっ……! 僕は洗いますよ! 部長も洗いますよね?

 

 

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部長2  

もちろん。ちゃんと洗うし、ちゃんとハンカチで拭くよ。ハンカチはいつも妻が持たせてくれるんだ。

 

 

フルシアンテ1  

僕はハンカチは持ってないけど、トイレットペーパーをちぎって拭きますね。

 

 

ライアン1  

「拭きますね」じゃねえんだよ。紙がもったいねえだろ。お前みたいなヤツがいるから環境破壊が進むんだよ。

 

 

キャリー1  

っていうか、なんで洗わないんですか?