19 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:05/02/02 12:29:47 ID:iGLUD1nW
母親は赤が大好きで、昔は物干し場がまるで町中の赤い服を集めた様な光景だったらしい。
どこへ行くにも赤い服を着ていたから人混みで見失ってもすぐ見つけられた。
それ程鮮やかな赤ばかりだった。
口癖は「綺麗だから赤が似合うのよ」だった。
母親と似ても似つかない私はいつの間にか決して赤を着ないようになっていた。
「若いんだから赤も着てみるもんだよ」と言われても頑として聞き入れなかった。
初めてのバイト代が出た時、ちょうど冬だった事もあって母親に半纏を買ってやろうと思った。
店には青い半纏しかなく、仕方なく「青で悪いけど」と言い渡した。
母親は「こんな高い物着れんわ、入院する時着る」と言って20年来のぼろい半纏を着続けた。
「真夏に入院したらどうすんの」と言ったら「クーラーつけて着る」と言っていた。
そんな母親が去年癌が見つかり入院した。
早期発見の為手術はするものの三ヶ月程度の入院で済んだ。
ある日着替えを届けに行った時、母親は半纏を着てベッドで寝ていた。
蝉の声がくそやかましい八月の半ばに。
クーラーがんがんにかけて。うっすら汗までかいてるのに。看護師も珍しげに見てた。
もともと病気のデパートみたいな体で人生の半分は病院通いをしている母親、
見に行った時は手術前だというのにやつれ、随分年老いて情けなく見えた。
普段着ない青い半纏が全く似合っていなかったからかもしれない。
急に「綺麗だから赤が似合うのよ」と言う言葉を思い出した私はやるせなくなって
「赤を着ろ!赤じゃないと駄目だ!」と持ってきた着替えの赤い服を着せてやった。
赤い服を着た母親はやっぱり綺麗だった。
20 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:05/02/02 12:47:51 ID:iGLUD1nW
幸い癌は術後経過も良かったけどその後心臓発作起こしてそのまま逝ってしまった。
母親の知り合いの葬儀屋が気を利かしてくれ、赤い花ばかりの葬式だった。
しばらくして遺品を整理しようと母親の部屋の箪笥やクローゼットを開けた。
一面の赤一色に呆れながら片付けていると、箪笥の奥に大き目の袋があった。
中には若い子向けの赤い服が何着も入っていた。有名なブランドのもあった。
「こんな高い物まで」と思ったが、サイズを見て一目で母親の物ではないと分かった。
母親がいつか着てくれる時の為にと私に買っておいてくれた服だった。
よく見ると随分小さい子向けの服まであった。小学生位の子が着るカーディガンまで。
ボタンまで真っ赤な服を見て「ばかだなぁ、着ないの分かってて」と思いつつ泣けて泣けて仕方が無かった。
今、私のクローゼットには何枚かの赤い服がある。
私も母親には及ばずとも自信を持って赤い服が着れるようになりたい。
母親は赤が大好きで、昔は物干し場がまるで町中の赤い服を集めた様な光景だったらしい。
どこへ行くにも赤い服を着ていたから人混みで見失ってもすぐ見つけられた。
それ程鮮やかな赤ばかりだった。
口癖は「綺麗だから赤が似合うのよ」だった。
母親と似ても似つかない私はいつの間にか決して赤を着ないようになっていた。
「若いんだから赤も着てみるもんだよ」と言われても頑として聞き入れなかった。
初めてのバイト代が出た時、ちょうど冬だった事もあって母親に半纏を買ってやろうと思った。
店には青い半纏しかなく、仕方なく「青で悪いけど」と言い渡した。
母親は「こんな高い物着れんわ、入院する時着る」と言って20年来のぼろい半纏を着続けた。
「真夏に入院したらどうすんの」と言ったら「クーラーつけて着る」と言っていた。
そんな母親が去年癌が見つかり入院した。
早期発見の為手術はするものの三ヶ月程度の入院で済んだ。
ある日着替えを届けに行った時、母親は半纏を着てベッドで寝ていた。
蝉の声がくそやかましい八月の半ばに。
クーラーがんがんにかけて。うっすら汗までかいてるのに。看護師も珍しげに見てた。
もともと病気のデパートみたいな体で人生の半分は病院通いをしている母親、
見に行った時は手術前だというのにやつれ、随分年老いて情けなく見えた。
普段着ない青い半纏が全く似合っていなかったからかもしれない。
急に「綺麗だから赤が似合うのよ」と言う言葉を思い出した私はやるせなくなって
「赤を着ろ!赤じゃないと駄目だ!」と持ってきた着替えの赤い服を着せてやった。
赤い服を着た母親はやっぱり綺麗だった。
20 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:05/02/02 12:47:51 ID:iGLUD1nW
幸い癌は術後経過も良かったけどその後心臓発作起こしてそのまま逝ってしまった。
母親の知り合いの葬儀屋が気を利かしてくれ、赤い花ばかりの葬式だった。
しばらくして遺品を整理しようと母親の部屋の箪笥やクローゼットを開けた。
一面の赤一色に呆れながら片付けていると、箪笥の奥に大き目の袋があった。
中には若い子向けの赤い服が何着も入っていた。有名なブランドのもあった。
「こんな高い物まで」と思ったが、サイズを見て一目で母親の物ではないと分かった。
母親がいつか着てくれる時の為にと私に買っておいてくれた服だった。
よく見ると随分小さい子向けの服まであった。小学生位の子が着るカーディガンまで。
ボタンまで真っ赤な服を見て「ばかだなぁ、着ないの分かってて」と思いつつ泣けて泣けて仕方が無かった。
今、私のクローゼットには何枚かの赤い服がある。
私も母親には及ばずとも自信を持って赤い服が着れるようになりたい。
何故好きなのか分からないけど、他の色とはテンションが全然違うんだよね
取りつかれたように赤ばかりに目がいく
だからお母さんの気持ち分かるわ
最後にちゃんと赤い花を飾ってくれて凄く嬉しかったと思う…