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どっしりと丸いお椀のような甲羅にスンと伸びたトゲのような尻尾。カブトガニのフォルムは魅力に満ち溢れている。古生代からほとんど変わらぬ姿で生き延びてきたカブトガニは不思議な血液を持ち、不思議な泳ぎ方をし、我々人類に多大なる貢献をしてくれているのだ。
ここではカブトガニにまつわる10の事実を見ていくことにしよう。
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1. 生きた化石だけどマイナーチェンジしていた
2008年に発見された体幅25mmのルナタスピス・アウロラ(Lunataspis aurora。三日月の意)は、4億4,500万年前のマニトバ州を這い回っていた。現在、4種が知られているが、どれも遥か昔に絶滅した祖先にそっくりだ。
長い間姿を変えてこなかったカブトガニは生きた化石とも呼ばれている。かといっては進化に取り残されたわけではない。その姿は過去5億年の間に少しずつ変化している。例えば、先史時代に存在した種は足が2本に枝分かれしていたが、現存する種では1本しかない。
2. カニではない
名前にカニとついているが、カニの仲間ではない。甲殻類ですらない。カニとは違い、カブトガニには触覚がないのだ。分類学上はクモなどが含まれる鋏角亜門に属している。ここに属している生物は、体が頭胸部と腹部からなり、名前の由来ともなった鋏角(きょうかく)というペンチのような付属肢を持つ。
3. 視覚器官の巨大な配列を持つ
大きな複眼(compound eye)が甲羅の脇についている。繁殖期には、豆のような形をしたこれらの器官によって、繁殖相手を探す。その後ろには、側眼(lateral eye)という原始的な光受容器がある。甲羅の前方には小さな正中眼(median eye)2個と頭頂内眼(endoparietal eye)1個が備わる。腹側には腹眼(ventral eye)があり、おそらく泳ぐ際の移動を補助していると思われる。
科学者にとって最も興味を惹かれるのは1対の複眼だろう。比較的シンプルな接合であるために、人間自身の眼の機能を調べるには丁度いい研究素材なのだ。
4. 幼生は逆さまに泳ぐ
Horseshoe Crab Swimming in Slomo 240fps
カブトガニは海底をズリズリと這い回る。しかし、幼生の場合、逆さまになってエラを舵代わりに水中を泳ぎ回る。成長するにつれて、だんだん泳がなくなってくる。逆さまに泳ぐミニカブトガニったら超かわいい。
5. トゲトゲの尻尾はいくつか便利な使い途がある
このトゲ尻尾で攻撃したり刺したりするわけではない。方向舵にしたり、ひっくり返って動けなくなったときに元に戻るために使う。見た目は武器っぽいがきわめて平和的な尻尾なのだ。
6. 成体の好物は二枚貝
幼生も成体も水棲虫を食べる。成体は藻類や死肉も食べるが、アサリやイガイが特に大好物だ。お腹がすくと、尖った足の先端で餌を磨り潰して口の中に頬張る。
7. デラウェア湾では恒例となったランチキお見合いパーティ
Horseshoe Crabs Mating Delaware Bay, Villas, NJ
米ニュージャージー州とデラウェア州の間に位置するデラウェア湾は世界最大のカブトガニの繁殖地である。毎年5月と7月に大量のカブトガニが集う。夜、メスは浜に上がってオスからの熱烈なアタックを受ける。メスが浜に掘った穴へ産卵すると、オスがこれを受精させる。だが、卵は渡り鳥にとっては絶好のご馳走だ。北極から南米へと移動中のコオバシギは、カブトガニのパーティを最後の補給所として利用する。
8. 成体に育つのはごくわずか
メスは1度に9万個の卵を産むが、成体になれるのはその内10個程度でしかない。孵化する前に魚やウミガメ、鳥などに貪り食われてしまう。つまり、それ程多くの動物たちがカブトガニの卵に依存しているということだ。デラウェア湾やその他地域の生態系にとって、カブトガニの産卵はなくてはならないものなのだ。
9. アメリカカブトガニのメスはオスよりも25〜30%大きい
生殖についても、メスの方がゆっくりと成熟する。オスは8、9歳で交尾可能となるが、メスが性的に成熟するのは10、11歳頃だ。
10. 40歳以下でワクチン接種を受けたことがある人はカブトガニに感謝しよう
人間の血は赤いが、カブトガニの血は青い。人間の血液は鉄をベースにしたヘモグロビンで酸素を運ぶが、カブトガニの場合は銅を含んだヘモシアニンを使っているからだ。銅は酸化すると青緑に変化する。
だが、驚くべきはその奇妙な血の色だけではない。海底の堆積物1gには10億もの細菌が潜んでいる。人間と違い、カブトガニには感染症と戦う白血球がない。その代わりに変形細胞という特殊な細胞が備わっており、これが体内にネバネバしたバリアを張ることで、病原菌からカブトガニの身体を守っている。
1956年にジョンズ・ホプキンス大学のフレデリック・バンがこの特徴を発見して以来、これは多くの医学者に利用されてきた。ワクチンや注射薬が安全であるか確かめるために、変形細胞をサンプルの中に注入するのだ。
細胞がネバネバを放出し始めると、それは細菌が潜んでいる証拠であるために、その製品はまだ使えない。1970年代、アメリカ食品医薬局は実験中の薬やインプラントに対してこの試験の実施を義務化した。カブトガニがいなければ過去40年間で無数の人たちが非衛生的な注射によって命を落としていただろう。
しかもカブトガニの血液は非常に安価で、毎年60万匹もの「ドナー」から抽出される血液は約1ℓあたり180万円ほどだ。カブトガニはそれぞれ血液の30%を抜かれて、48時間以内に還される。だが、不幸にも、多くは長く生きられない。捕獲されたカブトガニの10〜15%が処理中に死に、生き残った個体もやがて昏睡状態になる。もちろん科学者もこの問題を無視しているわけではない。彼らは合成変形細胞の開発に挑戦している。
人類の命を救う。カブトガニの青い血の採取工場を訪ねて。
via:mentalfloss・Translated hiroching
そんなカブトガニだが近年では環境汚染によって各地でその数を激減させており、絶滅危惧I類に分類されている。
かつて日本にも、瀬戸内海と九州北部の沿岸部に広く生息していたが、現在では生息地の環境破壊が進み生息数・生息地域ともに激減した。佐賀県伊万里市、岡山県笠岡市の繁殖地が国の天然記念物に、愛媛県西条市の繁殖地が県の天然記念物に指定されている。
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コメント
1. 匿名処理班
甲殻類じゃなかったのか・・・
2. 匿名処理班
知らなかった。カブトガニさん達、ありがとうm(__)m
3. 匿名処理班
蟹じゃないのか…どんな味なんだろう
4. 匿名処理班
天然記念物なのか 実はカブトガニは美味しいらしいね。
どんな味なんだろう
5.
6. 匿名処理班
ガキの頃、隣の家の家族がどこかへ旅行に行った際にカブトガニを一匹捕まえてきた。生きたカブトガニを直に触れたのは貴重な体験だったかもしれない
7. 匿名処理班
>>おそらく泳ぐ際の移動を補助していると思われる。
まるでロボットものの設定や戦闘機のセンサーだな
8. 匿名処理班
愛護団体はかわいい動物を保護するのもいいけど真に保護するべき生き物はこいつらだよ
9. 匿名処理班
泳ぐ幼生がフェイスハガーにしか見えない・・・
10. 匿名処理班
医学の分野では、絶対必須の生物。
環境テロリスト達が、カブトガニの保護を訴えている所を見たことはないが、
(恐らく、見た目が可愛くないから、寄付金が集まらないために保護を訴えないのだと思う)
このカブトガニこそ、人間にとって最も重要な共存すべき種の一つであることは間違いない。
注:ここで言う、"最も重要な共存すべき種"とは、牛・豚・ニワトリや犬・猫のような人類にとっての必要不可欠レベルの重要度だと思って貰って構わない。
彼らを畜産できないか、割りとマジで考えて欲しい。
(海洋畜産は、とてつもなく勝ち目の薄い”博打”だということも、分かってるけどね…)
11. 匿名処理班
しかもガンの薬だったけ?彼らの血清が役にたってるとか。
12. 匿名処理班
たしか水銀で汚染されて繁殖できなくなった海岸もあると聞いたが何処だっただろうか
13. 匿名処理班
子供の頃九州地方で海岸を見たらカブトガニの死骸があがっててびっくりした覚えがあった。 もうそういう光景は見れないようだね。
14. 匿名処理班
狭い水槽の中じゃかわいそうだと思って床の上を歩かせる。
その刺激が産卵行動を誘発するとは誰も思いつかなかっただろうな。
さかなクンさんでさえも。
偶然になされる新発見って本当に面白い。
15. 匿名処理班
カブトガニをタイで食べたけど、おいしくないよ。
ていうか、食べる部分がないよ。
卵をサラダにして食べたけど、珍しいものっていう位置づけだと思う。
足を折っても肉はごくわずか・・・
16.
17. 匿名処理班
カブトガニ血液採集の様子は残酷だが未来的だったなぁ
18. 匿名処理班
大洗水族館で触ってきたけど足が全部ハサミなんだよね
裏は触らないでくださいって係りのおねいさんに半ギレされた思い出(´・ω・`)
19. 匿名処理班
岡山県笠岡市にカブトガニ博物館があるよ
みんな瀬戸内においで
20. 匿名処理班
悲しい現実だなぁ。
21. 匿名処理班
日本にもいるんかい
22. 匿名処理班
※4
昔、カブトガニ研究してる日本人が東南アジアで食べてるのを
テレビで見たな。どの国かは忘れた。たまに毒が有る個体がいるそうな。
23. 匿名処理班
タイでは甲羅に火を通して卵を食べるんですが、蟹ミソみたいな味ですね。
卵といえどもプチプチ感はあまりありません。
部位によっては毒があるらしく、ときどき死人が出ます。
タイらしいといえば、タイらしいが
なんで市場に普通に流通してるんだろうか。
24. 匿名処理班
「カブトガニの血液は約1ℓあたり180万円で安価」ってのは正しいのか?
同じような物を薬品で代用するといくらになるのか書いてくれないとよくわからんのだが
25. 匿名処理班
>だが、不幸にも、多くは長く生きられない。捕獲されたカブトガニの10〜15%が処理中に死に、生き残った個体もやがて昏睡状態になる。
←そうだったんですか?比較的すぐに回復するって話を見たことがあるから安心してた。激減している彼らがもしこのまま絶滅なんてことになれば、人類はとっても困っちゃうわけで、もちろん利益のある存在だからってだけじゃないけど、もっと必死になって保護に力入れるべきですね。
26. 匿名処理班
裏側の画像でびくっとした
表側だけ見てるとポケモンぽくて可愛いんだが
27. 匿名処理班
30%も抜くから死ぬんじゃないの?
28. 匿名処理班
小学生の頃、尻尾の方が頭であれは角だと思っていた
29. 匿名処理班
永く人間に利用され続ける事によって今後何かしら生態に変化が顕われるんじゃない?
血を抜かれて生き長らえた固体が今頃は「あいつ等ヤバイぞ!」って対策を協議してると思う
30. 匿名処理班
増えすぎてるクジラなんかよりカブトガニの方がよほど逼迫した問題じゃないの
31. 匿名処理班
※29
抜かれても死ににくい個体が選別されるな
32. 匿名処理班
なんか目の付いてる位置が架空戦闘機みたいだな。ほぼ全方向の光学情報が得られるとかコフィンシステムか何か?
33. 匿名処理班
三日月型のカブトガニの化石があって、今でも生きているだろうとインド辺りを探している日本人がいるというTV番組を見た記憶がある。
34. 匿名処理班
宮島水族館が改装する前に持ったことがあるなー
裏側は結構フェイスハガーみたいでかわいい
35. 匿名処理班
カブトエビならよく捕まえたな
36. 匿名処理班
なぜだか部屋にカブトガニの標本がある
tachypleus tridentatus leach 1819
3−1975 日本の岡山県瀬戸内海産らしい
37. 匿名処理班
何だか変で面白そうな生き物だよな。
何とか乗りきって絶滅しないでもらいたいね。
38. 匿名処理班
※23
たしか普通のカニ(もちろんカブトと関係ない奴)も食べてはいけない部位があったような
39. 匿名処理班
数年前にどこで読んだか忘れたが、
「カブトガニは特に何も役に立たない」事を滔々と述べていたあの記事は出鱈目だったのか…
めっちゃ有益なヤツじゃん。
誤解していてゴメンよ、カブトガニ。
40. 匿名処理班
腹見せて泳ぐって凄く狙われそうなのにそこは進化できんかったんか
泳いでる姿めっさ可愛いんだが溺れてるように見えてしまうw