ポニテ「思い出消し屋……?」
- 2015年10月02日 23:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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男「思い出消し屋……?」
男「思い出消し屋、か」
少女「思い出消し屋も畳むかな」
ポニテ「……んー」
黒髪「どしたのポニテさん、ぼんやりして」
ポニテ「なーんかひっかかるような、たりないような」
黒髪「数学の課題とか?」
ポニテ「……出てたっけ?」
黒髪「……なんか昨日寝ぼけてたと思ったけど、やっぱり聞こえてなかったんだ」
ポニテ「わーっ! うつさせてーっ!」
黒髪「何とかしなよ、数学は午後なんだから」
ポニテ「うううう……」
ポニテ(……でも、それじゃなくて、何か)
ポニテ(足りない、気がする)
ポニテ(結局、課題は間に合って)
ポニテ(……いや、半分黒髪ちゃんに助けてもらいながら間に合ったけど)
ポニテ(ここのところ、なーんか、足りない)
ポニテ(いや何がかは分かんないけど、何か、足りてない)
ポニテ「……んー、友達ともいつも通りだし、彼氏ともいつも通りだし」
ポニテ「なーんだっかなー!」うがー
ポニテ(今までこんなのなかったのに。……なかった、よね?)
ポニテ「……あー」
ポニテ(わっかんないなあ、もう)
ポニテ(……って、ん?)
ポニテ(誰だろ、あれ)
ポニテ(同い年くらいの、男の人。それと小さな女の子……10歳くらい?)
ポニテ(ちょっと年の離れたきょうだい、とか? ……いやでも、男の人のほう)
男「――、?」くるっ
ポニテ「――、!」
ポニテ(どこかでみたような、じゃ、ない)
ポニテ(絶対に、見たことがある)
ポニテ(芸能人とかではない。特別かっこいいわけじゃないし)
ポニテ(顔も体格も、何か特徴があるわけじゃない。服装もどこででも売っているようなシャツとズボン)
ポニテ(しいて言うなら小さくてきれいな女の子を連れていることとか――、って)
少女「……」ぎろり
ポニテ(すっごく嫌な目で睨まれてるーっ!)
ポニテ(すごく可愛いのに! なんかごめん! でも何かしたっけ!?)
ポニテ(……あと、男の人と指を絡めて手をつないでることに気づいてしまった)
ポニテ「……んー」
ポニテ(あのひと、絶対にどこかで見た)
ポニテ(有名人とかじゃなくて、街中で背中を見つけたら思わず声をかけてしまいそうな)
ポニテ「……彼氏に、また怒られそう」ふふっ
ポニテ(――あれ)
ポニテ(最近は、あまりないけど)
ポニテ(前まで、何で怒られてたんだっけ)
ポニテ「――でも、知らない男の人に声をかけるなんてナンパみたいだし」
ポニテ「なんにしても、怒られそう」
ヴーッ ヴーッ
ポニテ「噂をすれば~♪」ススッ
ポニテ「はいはーい♪」
彼氏『や。今大丈夫かな』
ポニテ「大丈夫大丈夫。……課題以外は」
彼氏『うん、やっぱりポニテだ』
ポニテ「なにさそれー!」
彼氏『ははは。何の課題?』
ポニテ「世界史。また教えてー」
彼氏『……えと、それはたぶん僕じゃないと思う』
ポニテ(――あれ)
ポニテ(誰だっけ。誰に教えてもらってたんだっけ)
ポニテ(中学からずっと、歴史は誰かに手伝ってもらってた)
ポニテ(逆に数学は、その誰かの手伝いをしてた。今日の課題は時間が足りなくて黒髪ちゃんに手伝ってもらったけど)
ポニテ(黒髪ちゃんと会ったのは高校のとき。だから中学のだれかとは別のはず――)
ポニテ(――そういえば、黒髪ちゃんとは何がきっかけで仲良くなったんだっけ)
彼氏『……ポニテ?』
ポニテ「うあ、ごめんごめん」
彼氏『考え込むなんてポニテらしくない』
ポニテ「だから私をなんだと思ってるのさー!」
ポニテ(黒髪ちゃんと仲良くなったのは、二年生の一学期)
ポニテ(同じクラスになったから、それがきっかけ?)
ポニテ(だけじゃなかったような、気がするんだけどなあ)
ポニテ(結局教科書とにらめっこしながら課題はなんとかしたけど)
ポニテ「……ねむー」
ポニテ(なーんか寝付けなかったなあ)
ポニテ(あのひと、結局誰なんだろう。印象的じゃないのに印象に残る)
ポニテ「……何を言っているのかわからねーと思うが、ってね」
ポニテ(……黒髪ちゃんに言っても通じないからなー、漫画ネタ)
ポニテ(普段、誰に対して言ってたっけ?)
ポニテ(わかんないこと、ばっかだ)
ポニテ「ねーねー黒髪ちゃん」
黒髪「何? 午後の課題は特になかったと思うけど」
ポニテ「じゃなくて。……なんか最近、ものたりないこととか、ない?」
黒髪「……ものたりない、こと?」
ポニテ「うまく言えないんだけど、いつも通りのはずなのに何か足りてないっていうか」
黒髪「んー……、そんなことないと思うけど」
ポニテ「例えば、ええと」
ポニテ(――そう、もう一人)
ポニテ「お昼。一緒にお弁当食べてたのって、私たちだけじゃなくて」
ポニテ「もう一人いなかったっけ?」
黒髪「もう、ひとり?」
黒髪「……いつも、こんな感じだったと思うけど」
ポニテ「じゃ、じゃあさ、私たちが仲良くなったのって何がきっかけだっけ?」
黒髪「……なんだっけ?」
ポニテ(やっぱり、よく覚えてない。私と同じように)
黒髪「でもそれ、たいしたことじゃないよね?」
ポニテ「まあ、そうなんだけどさ」
ポニテ(あんまり気にしてないみたいだけど)
ポニテ(でも、ひっかかる)
ポニテ「――あ、やっほー」
彼氏「や。ちょっと顔を見たくなって」
ポニテ「電話はできるけど、学校違うと会えないからねー」
彼氏「……部活推薦、蹴っておけばよかったかな」
ポニテ「またそれー。得意なんだから推してかないと」
彼氏「中学はちょっと学区が違ったから仕方ないにしても、高校くらいは――」
ポニテ「大丈夫大丈夫。平気、へっちゃらです! だから生きるのをあきらめないでッ!」
彼氏「死にたいとまでは言ってないって」
ポニテ(……んー)
ポニテ(楽しいけど、んー)
ポニテ「――、あ、また」
男「――、――」
少女「――、!」
彼氏「……うわ、なんか犯罪のにおいがする組み合わせ」
ポニテ「……あの男の人、なーんかどっかで見たことあるんだよね」
彼氏「昔の知り合い、とか?」
ポニテ(昔の、知り合い)
ポニテ「確かになんか、すごく懐かしいような」
ポニテ「……ずっと昔に会ったことがあるような、つい最近会ったような」
彼氏「……そういう人は、一人だけにしてほしかったんだけど」
ポニテ「――、ひとり?」
彼氏「ほら、最近話に出ないけど――」
彼氏「男くん、だっけ?」
ポニテ「――、あ」
ポニテ(中学一年で会って)
ポニテ(何度席替えをしても、何度クラス替えをしても隣の席で)
ポニテ(高校に行っても隣の席でありつづけて)
ポニテ(私に歴史を教えてくれて、私が数学を教えた)
ポニテ(生き物の話とか好きで、私の漫画ネタを拾ってくれて)
ポニテ(――私に告白してくれた、男)
ポニテ(私にふられたあとも、仲良くしてくれた、男)
ポニテ「……ちょっとごめん!」だっ
彼氏「あ、ちょっとっ」
ポニテ(何で忘れてた! 何で思い出せなかった!)たたっ
ポニテ(何で、何で、何で!)
ポニテ(ずっと一緒の、友達なのに!)
男「……!」
ポニテ(っ、気づいた!)
ポニテ「おーい! おと――
フッ
ポニテ(――っ、え)
ポニテ「消え、た?」
ポニテ(いきなり、消えた)
ポニテ(一瞬霧がかかったようにぼやけて、そのまま周囲に融けるようにもやがひろがって)
ポニテ「なん、で――」
少女「――おい、そこの女狐」
ポニテ「めぎつねっ!?」
少女「私と奴とのデートを邪魔したのだ」
少女「確かによそから見れば私と奴は月とスッポン、否、月とヘドロ団子……参った、私の美しさの比喩としてふさわしいものがないぞ」ふむ
少女「まあ奴と私では釣り合うわけがないが、だからといって邪魔をされるのは困るのだが」
ポニテ「は、はぁ……」
少女「……ふむ、貴様――」
ポニテ「え、あ、はい、なんでしょう」
ポニテ(思わず敬語になっちゃってるけど、でも)
ポニテ(改めて近くで見ると、見惚れて何も言えなく――)
少女「いや、構わん。以後気を付けろ」
少女「道で私を見てもサインをねだるなよ。美少女ではあるが芸能人ではないのだ」
ポニテ「あ、はい。それでは――」
ポニテ「じゃなくてっ! あの、男のこと」
少女「――私の恋人が、どうかしたのか?」
ポニテ(――、っ)
ポニテ(確かに、私が二人の邪魔をしてしまったのは本当のこと)
ポニテ(けど、それ以上に)
ポニテ「男は、私の友達なんだ!」
少女「……これまで忘れていたのに?」
ポニテ(――っ)
少女「どこまで知人でどこから友達かは貴様の定義次第だがな」
少女「少なくともその程度の友人に水を差されるのはたまったものじゃないな」
ポニテ「……」
ポニテ(確かに、その通りだ)
ポニテ(何か引っかかっていたとはいえ、確かに忘れていたんだ、私は男のことを)
ポニテ「って、あれ?」
ポニテ「何で、私が忘れていたことを知ってるの?」
少女「……、あ」
少女「あーっと、その、なんだ」
少女「まあ気にすることじゃあないさ。気にしなくなるがいい」
ポニテ(すう、と伸びてくる手)
ポニテ(それさえどこかで見たことがあるような気がすると思った時には)
ポニテ(私は、女の子から飛びのいていた)
少女「――、貴様」
少女「何故、思い出した」
少女「おのれあの脂肪塊、手を抜いたか?」
少女「そもそもあんな出涸らしの集積所のような能力に期待するのが間違いであったのだ」
ポニテ「……ええと?」
?「そ――、きょ――が、――で――?」
ポニテ(途切れ途切れの声が聞こえて、そちらを向くと)
ポニテ(――気絶しそうになった)
ポニテ(砂嵐とブロックノイズの混ぜ物のような何かが、
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