男「なんでいるのさ?」
幼馴染「いちゃダメだったのかな?」
男「居てもいいけど、事前に連絡…、いや、そもそもどう入ったの?」
幼馴染「大家さんに家族ですって言ったら、入れてもらえたよ」
男「間違いじゃないけどさ」
幼姉は、僕の近所に住んでる幼馴染。それこそ家族ぐるみの付き合いで、兄弟みたいに育った間柄。「
男「でも、なんで急に?」
幼馴染「いやぁ、早く身を固めろって、お見合い写真持ってこられたら、ねぇ?」
男「逃げてきたんだ…」
幼馴染「そもそも私、まだ大学2年なのに。二人とも気が早いよ、ほんと」
はははと愛想笑いするしかない。
幼馴染「あ~、その笑い方はどうでもいいとか思ってるなぁ?」
男「思ってないよ! 大変だなぁと思っただけだよ」
幼馴染「それならいいけどね」
男「あ。でも、お見合い写真は今あったりするの?」
幼馴染「ちょっと待っててね~」
登山するようなでかいバックの中を漁る幼姉。あ、しばらく居る気まんまんだなこれは。
幼馴染「はい、これこれ」
男「見る前に一つ聞きたいんだけどね?」
幼馴染「うん、しばらく一緒に暮らすよ」
男「あはは…、でしょうね」
聞きたいことはお見通しだなぁ。とりあえず、お見合い写真見てみよう。
男「……、え、年齢差いくつ?」
もう、中年ですというようなおじさんの写真が見えます。
幼馴染「25歳ぐらい? そこそこ収入ある会社の社長のダメ息子だってさ」
男「いや、だってさって、どうなのさ」
幼馴染「嫌に決まってるでしょー」
男「あぁ、そりゃあそうだよね。ここに逃げ込んだ時点で」
一瞬他人事みたいに言うもんだから、変なこと聞いちゃったよ。
幼馴染「というわけで、居候として家事ぐらいはするからね」
男「大学はいいの?」
幼馴染「単位大体とっちゃったから、かなり暇なんだよね。それに、ここからそんな遠くもないから大丈夫!」
幼姉がそういうなら、大丈夫なんだろうけど。
幼馴染「それにしても、男君の部屋はつまらないね」
男「僕の部屋は楽しめる場所じゃないよ?」
幼馴染「エロい雑誌とかもないから、調べまわった買いがなかったよ」
男「ちょっと待とうか、幼姉」
何を勝手に僕の部屋を漁ってるんですか。
幼馴染「いやぁ、あんまり男の子の部屋に入る機会もないから。男君だって、女の子の部屋に入ったら漁りたくなるでしょ?」
男「ならないよ! 下手したら捕まるよ!」
幼馴染「あ、私の部屋は漁ったことある?」
男「だからないってば!」
そもそも、大学入る前は幼姉がちょくちょく僕の部屋に来てて、幼姉の部屋に行く機会なんてほとんどなかった。
幼馴染「じゃあ、今後の共同生活のために、役割分担しよっか」
男「…うちの親には、幼姉のこと話しとくからね?」
幼馴染「うんうん、それは大丈夫。男君のお母さんにはちゃんと説明してから来たよ」
男「嘘だとは思わないけど、確認はするからね」
幼馴染「男君がそれで納得するならいいよ~」
うん、どっちかというと自分を納得させるために、メールを母さんに送信する。
幼馴染「とりあえず、お姉ちゃんはこれぐらい寝ていたいのです」
男「ごめん、12時間以上寝てるのは気のせい?」
幼馴染「猫だって14時間ぐらい寝るんだから大丈夫だよ」
男「幼姉は人間だよね?」
幼馴染「すっごく生物誕生ぐらいまで遡れば、猫的な何かが」
無茶苦茶言うなぁ。
男「うん、うん。わかった…。しばらくは大丈夫、困ったら連絡するね。じゃ」ピッ
うん、ちゃんと幼姉は母さんに言ってあったらしい。
幼馴染「ね。言ってあったでしょ?」
男「疑ってるとかじゃなく、今後の生活があるからね」
幼馴染「問題とかあるかな?」
男「食費が二倍になると考えたら、影響でるよね」
幼馴染「どっちかというと少食だけどなぁ」
男「後は光熱費なども少し増えます」
幼馴染「あ~。やなら他行くよ?」
男「違うよ。僕が払ってるなら良いけど、母さん達だからね。許可無かった説得しなきゃいけないから」
幼馴染「あぁ、そっか。ごめんね考えたらずで」
幼姉の無鉄砲はいつものことだ。
幼馴染「そういうわけで早速!」
男「うん」
幼馴染「男君ご飯作って!」
男「………卵がけご飯で良い?」
幼馴染「幼姉はふてくされました」イジイジ
あぁ、まったくこの人は。
男「材料明日買う予定だったから、インスタントのラーメンしかないけど、良い?」
幼馴染「仕方ないなぁ、卵をつけたら許してあげるよ」
男「はいはい」
幼馴染「はいは一回!」
男「卵つけないよ?」
幼馴染「ぐぬ。それを人質にとるとは卑怯だぞ男君」
男「さて、じゃあ待ってて作っちゃうから」
幼馴染「早くお願いね!」
生煮えで出しますよ?
幼馴染「やっぱりサッポ○一番は最高だね!」チュルル
男「インスタントで喜んでくれるなら楽だよ」
幼馴染「夕飯が更に楽しみだね!」
男「役割分担とか言ってたのに、自分がやろうとは思いませんか~?」
幼馴染「今日はまだ客人だもん」ズズッ
ああいえばこういう。
男「確か、卵の特売あるから、オムライスでも作るよ」
幼馴染「作れるんだ~、楽しみ!」
男「聞いておくんだけどさ」
幼馴染「なにかな?」チュルル
男「幼姉は何が作れるの」
幼馴染「え~っと………卵がけごはんかな」
男「個人的にそれを料理とは認めないよ」
幼馴染「え~」
男「ここが普段使ってるスーパーだよ」
幼馴染「いい広さだねぇ」
男「食事が面倒な時は、夜10時ぐらいに来れば、惣菜は安売りしてる」
幼馴染「そればっかりじゃ体に悪いからね?」
男「…幼姉に聞きたいんだけどさ」
幼馴染「なになに?」
男「料理のレパートリーないんだよね?」
幼馴染「そうだね、男君には悪いけど」
男「多分だけど、幼姉の方が惣菜買ったろうね。一人暮らししたら」
幼馴染「そんなことはー…、ないかなー」
はっきり言えないのがその証拠です。
幼馴染「ここはスーパーの惣菜と、フードコートの別の惣菜屋さんがあるんだね」
男「そうだね」
幼馴染「いつも思うんだけど、スーパーの惣菜コーナーの人とガチにならないのかな?」
男「店側としては、フードコートのテナント料みたいなのでお金落ちるから、大げさにはどっちでもいいんじゃないかな?」
幼馴染「私はそうは思えないね」
なんか妙に自信満々だなぁ。
幼馴染「だって考えてみてよ、さっき通ったフードコートでも、この惣菜コーナーでもから揚げが2種類ずつあるよ」
男「あ、うん。あるね」
幼馴染「これはうまいから揚げはどっちかで争ってる証拠だよ!」
男「幼姉、ちょっと声のトーン落そうか」
幼馴染「ごめん」
男「はい、オムライス」
幼馴染「おぉ、オムライスだ!」
男「ソースなんてものは作ってませんので、このケチャップをどうぞ」
幼馴染「こういうのは、なんてかくのかが楽しみだよね!」ブチュー
男「そうだね」
幼馴染「なので、太陽にしました」
男「あ~」
多分そうじゃないのはわかってるんだけど。
男「どう突っ込んでほしいの?」
幼馴染「何を?」
男「何でもないよ、うん」
幼姉に絵心なんてなかったね。
幼馴染「オムライスってこうだよね」
男「何がこうなのかわからないんだけど」
幼馴染「卵なんて固く焼いてあって、ライスは油でべちょべちょしてる感じ」
男「口に合わなかった?」
幼馴染「ううん。小学校の頃、お母さんがお昼に作ってくれたのがこんなのだったなーって」
男「あぁなるほど」
そういえば、そんなオムライスを食べたかも。
幼馴染「今どきの流行から考えたら、美味しくないって言われそうなオムライスだけど、私は好きだなぁ」
男「そうだね」
幼馴染「あ、ちょっとライスもーらい」
男「なんと」
幼馴染「あづいー」
男「扇風機を独占して言うことはそれかい?」パタパタ
幼馴染「エアコンあるんだから、使おうよ」
男「電気代の無駄、それにまだ今日は30℃だし」
幼馴染「何度だったらいいの?」
男「35℃かな」
幼馴染「お天道様、なにとぞもっと熱くなってください」
男「今日は禁止します」
幼馴染「なんでー!?」
熱中症は大変なんだよ。
幼馴染「はへ~、涼しい~」コォー
男「まさか本気で37℃まで行くとはね」
幼馴染「太陽さんとは仲良しだからねー」
うん、幼姉は晴れ女だからね。
男「はい。とりあえず水は飲んでね」
幼馴染「氷が入ったキンキンの水、いえー」ゴクゴク
男「幼姉さ、大学でもそんな感じ?」
幼馴染「わりとおしとやかなお嬢様で通ってる」
男「猫かぶりか」
幼馴染「男君にはしなくていいから楽だよー」
幼馴染「夕方になったら、温度下がったね」
男「じゃあ切ります」ピッ
幼馴染「私は要冷蔵なんだから、切っちゃだめだよ!」
男「幼姉は常温保存が効くから大丈夫だよ」
幼馴染「最近、男君が厳しい気がしますね」
幼姉が少しだらしないだけです。
男「さて、涼しいうちに材料買いにいかないと」
幼馴染「スルーですか、スルーですか?」
男「一緒に行かないの?」
幼馴染「あ、いくいく。ちょっと待ってねー」
幼馴染「これもいつも思うんだけど」
男「うん?」
幼馴染「店員さんが長袖着なきゃいけないレベルの冷房を利かせるよね、スーパーとかデパートとか」
男「店員さんは要冷蔵なんだよ」
幼馴染「男君が流してひどいよ…」
男「ごめん、ちょっと吟味中」ジー
幼馴染「……」プスー
男「これでいいかな。ごめんね、幼姉」
幼馴染「べつにー」プスー
男「アイス買ってあげるから」
幼馴染「あ、食べる食べる!」