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先日、NASAが火星に液体の水が存在する直接的な証拠を手に入れたと発表し、地球外生命体の発見がにわかに期待されることになった。だが、タコ型や爬虫類型、グレイめいた宇宙人に思いを馳せるにはまだ早そうだ。火星は大気が薄く凍てつく惑星であることは確かなのだから。
ではここに潜んでいる生命とは実際のところどのようなものだろうか?
ちょっと本気で考察している人がいたようなので見ていくことにしよう。
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仮に火星に生命が存在するのだとしたら、それはほぼ間違いなく微生物であろう。しかし、それ以上のことは実際に発見してみるまでは分からない。そこで、地球上の極限環境に生きる生物と照らし合わせながら、その姿を推測してみよう。
寒さや塩分に強い生命
NASAが発表した火星表面を断続的に液体の水が流れている「これまでで最も確かな証拠」とは、分光分析によって発見された火星クレーターの壁に筋状に残っていた過塩素酸塩だ。
氷点下で水の凍結を防ぐ最も確実な方法は、水に塩を溶かすことだ。塩素と酸素が様々な原子に結びついている過塩素酸塩は、これに強力な力を発揮する。ある種の過塩素酸塩は、-70℃でも水を液体のまま保つことができるのだ。
火星のガルニクレーターの壁に伸びる筋。火星に現在も残る液体の水の確かな証拠とされている
クレーターの壁を水が流れるとき、薄い大気の中に蒸発し、そこに塩が筋状に堆積する。その水が地下層から流れ出てきたものなのか、あるいは過塩素酸塩が大気中から水蒸気を文字通り引っ張り出したものなのか、それは今後の調査を待たねばならない。
しかし、こうした塩水が生命にとっては過酷すぎる可能性があることを忘れるわけにはいかない。地球の南極にはドンファン湖という、この惑星で最も塩分濃度の高い水体がある。だが、火星のそれはこのドンファン湖の塩化カルシウムブラインよりも濃度が高いのだ。
研究者たちは長年地球上の好塩性かつ好冷性の細菌を調査してきた。最近、塩分濃度の高い南極の湖や氷河に挟まれた水脈の中で好冷好塩菌(psychrohalophile)が発見された。これらの生物は細胞分裂なら-12℃、基礎代謝機能なら-20℃程度まで耐えられると推測されているが、詳しい限界についてはまだ明らかにされていない。サイクロモナス・イングラハミー(Psychromonas ingrahamii)という微生物は気温-12℃、塩分濃度最大20%の環境で成長することができる。
南極ヴィーダ湖の冷たく塩分濃度の高い運河で発見された細菌性細胞の電子顕微鏡写真
こうした生物は一体どのようにして過酷な環境に適応しているのだろうか? 好塩菌は、塩を盛られたナメクジのように縮んでしまうことを避けるために、積極的に塩を細胞に取り入れる。こうすることで内部に浸透勾配を作り、水分が細胞内に流れ込むようになる。これはまた細胞が凍りつくことも防ぎ、代謝を可能にする。
こうした塩分バランスの他に、好冷菌の場合は別の適応機能を持っている。好冷菌の細胞膜は、飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸が豊富である。オリーブ油とバターのようなものだ。脂肪を出入りする別の輸送タンパク質も含んでいる。また、酵素も暖かい場所の生物より柔軟な構造をしている。中には不凍化タンパク質を作り、細胞内で氷の形成を防ぐ微生物まで存在する。
※画像クリックで拡大表示
極め付けは、好冷好塩菌が膨大な「モバイルDNA成分」を有していることだ。寒冷環境に適応するための特性をコード化している遺伝子は、微生物同士で交換することができる。仮にあなたが南極で発見された好冷好塩菌だったとして、生存に不可欠な特定のタンパク質がなくて困っていたら、近所の細菌から遺伝子の設計図を分けて貰えばいいのだ。
毒物に溢れ、放射線が降り注ぐ不毛の地
地球上に存在する好冷好塩菌の適応能力は、火星の微生物のヒントになるだろう。だが、それ以外にもあらゆる生命にとっての大問題が残っている。それは火星にはオゾン層がなく、強烈な紫外線が降り注いでいるということだ。また、火星で発見された過塩素酸塩は強力な腐食性化合物で、生物にとって毒だという難問もある。
火星の生物はこれらの問題を克服しなければならないのだ。放射線については、地下に住むという方法がある。過塩素酸塩の筋はおそらく地下帯水層を示すものだろう。そこならば放射線から逃れることができるかもしれない。
しかし、これも確実な話ではない。実際、NASAは潮解によって大気から水分が引っ張られたという、過塩素酸塩形成の別の可能性ついても指摘している。すぐに再蒸発してしまうような大気から集められた塩水の中で暮らす生物など想像しにくい。
ところが、チリのアタカマ砂漠という地球上で最も乾燥し、紫外線が強い環境では、塩の結晶に付着した水分の膜の中で生きる生物が発見されている。この水分の膜は潮解によって形成されたものだとされている。
チリのアタカマ砂漠で発見された塩結晶で成長する微生物
だが、おそらく宇宙生物学者が火星での水の発見を鵜呑みにしない最大の理由は、過塩素酸塩自体にある。これは「水分活性」が非常に低い。つまり、その中の水分を生命が利用するのは簡単ではないのだ。これに加えて、ほとんどの生命にとって毒であるのだから困ったものだ。
それでも地球上には有毒な環境に適応した生物の事例がある。腐食性の酸性鉱山排水とヒ素の湖に生きる微生物がいるのだ。また、北極には水銀汚染に適応した微生物がいる。過塩素酸塩を分解できるかもしれない微生物酵素の証拠すらある。
過塩素酸塩を別にすれば、他の点では火星は生命にとって優しい環境かもしれない。火星探査機フェニックスが北極付近の土壌内で薄い水の膜を発見しているが、ここも生命発見の有望な環境だ。さらに地下深くなら放射線の脅威からも逃れられるうえに、火星内部の熱によって水が液体のまま長期間保たれている可能性もある。
有害な廃液で満たされたバークレーピットの元銅鉱山。ここにも独自の微生物の生態系が存在する
火星に液体の水が存在する証拠は、すぐさま火星に生命が存在する可能性を示しているわけではない。しかし、具体的な希望を抱くことはできる。水のある場所には生命が期待できる。その特徴については、実際に発見されるまで確かなことは言えない。だが、そのためのミッションが開始されるのはもう間もなくだ。「化学物質の化石」など、生命の証拠を採取する探査機の火星打ち上げは2020年に予定されている。
via:gizmodo・Translated hiroching
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コメント
1. 匿名処理班
どんな生態系なんだろう。
長生きしなくちゃなあ。
2. 匿名処理班
火星では地球政府から独立しようとする運動があるんだろ
3. 匿名処理班
地球でいうところの深海微生物に相当するタイプじゃないですか?
4. 匿名処理班
いやあ、普通に人類が地下にいると思うよ?。
5. 匿名処理班
掘れば全てが分かる…
実はトレマーズみたいなモンスターがウヨウヨいそうでゾクゾクする
6. 匿名処理班
まず生命の定義から確かにしなくてはならない。
7. 匿名処理班
洞窟の奥の方で鉱物、無機物を分解してエネルギーに変える微生物が発見されたそうな
こっちの生物の定義でははかりしれんのがいるんじゃねえか?
生物の定義を覆すような凄いのが
個人的にはメカ生命体ZOIDSみたいのがいいなぁ
8. 匿名処理班
火星探査機から地球の細菌が漏れ出して繁殖する。
9.
10. 匿名処理班
『広範にわたるケイ素のネットワークが年単位で思考してる』とか解っても生物と認めてくれなさそう。
11. 匿名処理班
今後付き合って行く事になりますのでビジネスの点から置いても出来れば紳士であり淑女であり容姿も出来れば怖くない風貌だと助かります。
12. 匿名処理班
本気予想すんな、いるかよ!
13. 匿名処理班
後々地球生物(人間も含め、細菌・ウイルス)が
進出してきたら駆逐されちゃうんだろうな
火星独自の生物を根絶やしにしていいものか、
それは宇宙規模の侵略ではないのか、と言う問題
14. えいりやん
隣の国にいっぱいいる。日本にも紛れ込んでる。
15. 匿名処理班
火星に有人探査船が送られるのはいつになることか…
16. 匿名処理班
火星の生命体か
かつては海も大気も充分にあったらしいからな
その時生命が生れていれば
地下に生きている可能性は高い
こう見ると
エウロパ・ガニメデのほうが
生命に適した環境なのかもね
大量の水があるのは
間違いないわけだし・・・・
エウロパ表面の氷の割れ目を
調査すれば内部の生命体が
出てきた氷漬けになってるかも
17. 匿名処理班
個人的には、人間が発見する最初の地球外生命体は、水と全く関わりのないところで見つかるんじゃないかと思っている。
数十年後には、
「当時の科学者の中には生物の発生と進化には水が必要だと考えている者も多かったが、今では生物の水に対する依存度の大きさは宇宙において普遍的なものではないことが確認されている」
とかが教科書に載って、「昔の科学者は頭が硬かったんだなぁ」とか思ったりしていそうだ。
まぁ特に根拠はないんですがね。
18. 匿名処理班
火星の調査がまだまだなのに移住計画を立てて既に募集を掛けてる鬼 民間企業
19. 匿名処理班
きっと地下にはモップの先っぽをつけた兜をかぶったマービンの巣というか帝国が・・・。バッグス・バニー助けて〜。